特許第6814039号(P6814039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814039
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20201228BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20201228BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08L23/08
   C08F210/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-251071(P2016-251071)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104531(P2018-104531A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌太
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】麻生 善昭
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−011766(JP,A)
【文献】 特開平04−239566(JP,A)
【文献】 特開平11−071439(JP,A)
【文献】 特開昭62−121710(JP,A)
【文献】 特開昭62−079260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00〜101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)を50〜99.9質量%、下記要件(b−1)〜(b−3)を満たし、100℃における動粘度が500〜1000mm2/sであるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を0.1〜5質量%含む、ポリアミド樹脂組成物。
(b−1)100℃における動粘度が90〜5000mm2/sである。
(b−2) エチレン由来の骨格単位の含有率が30〜80モル%である。
(b−3)示差走査熱量計(DSC)による融点(Tm)が観測されない。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)がナイロン6、ナイロン12、ナイロン6エラストマーおよびナイロン12エラストマーから選ばれる、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物をその一部または全部に使用してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性、柔軟性、摺動性、耐摩耗性、耐吸水性のバランスに特に優れたポリアミド樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物から得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、優れた耐熱性、耐油性、成型性、剛性、強靭性などの特徴を有しているため電動工具、一般工業部品、機械部品、電子部品、自動車内外装部品、エンジンルーム内部品、自動車電装部品などの種々の機能部品として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミドは、金属材料などに比較すると、摩擦係数が高く、摺動性が不充分であった。このため、ポリオレフィン成分などの添加物を配合させて、摺動性を向上させることが試みられている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、テレフタル酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜40モル%および/または脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とからなる芳香族ジカルボン酸成分単位(a)と、脂肪族および/または脂環族アルキレンジアミン成分単位(B)とを有する半芳香族ポリアミドと、極限粘度[η]が0.8〜35dl/gである変性ポリエチレンとからなるポリアミド組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ナイロン6などのポリアミドに配合される摺動性改良剤として、極限粘度[η]が6dl/g以上の超高分子量ポリエチレンと、極限粘度[η]が0.1〜5dl/gのポリエチレンとを含み、かつ前記超高分子量ポリエチレンおよび/またはポリエチレンが不飽和カルボン酸で変性されてなる摺動性改良剤が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−285952号公報
【特許文献2】特開平4−351647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の検討によれば、前記特許文献に示される摺動性改良剤を、超高分子量ポリオレフィンの配合量が多い領域で、ナイロン6などのポリアミドに添加した場合、摺動性、および耐摩耗性はやや向上するものの、その反面、ポリアミドが有するその他の機械物性や成形性が損なわれる場合があった。
【0008】
本発明はこれら課題を解決するものであって、ポリアミドの各種特性を損なわずに、摺動性および耐摩耗性を向上させた、ポリアミド樹脂組成物ならびに成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂(A)と、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を特定の比率で含む樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、以下の[1]〜[4]に関する。
[1] ポリアミド樹脂(A)を50〜99.9質量%、下記要件(b−1)〜(b−3)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を0.1〜5質量%含む、ポリアミド樹脂組成物。
(b−1)100℃における動粘度が90〜5000mm2/sである。
(b−2) エチレン由来の骨格単位の含有率が30〜80モル%である。
(b−3)示差走査熱量計(DSC)による融点(Tm)が観測されない。
[2]前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、100℃における動粘度が500〜2500mm2/sである、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記ポリアミド樹脂(A)がナイロン6、ナイロン12、ナイロン6エラストマーおよびナイロン12エラストマーから選ばれる、[1]または[2]記載のポリアミド樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物をその一部または全部に使用してなる成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形性、柔軟性、耐吸水性等の特性を保持し、さらに摺動性および耐摩耗性に優れたポリアミド樹脂組成物およびその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(B)とを含み、ポリアミド樹脂(A)の含有率が50〜99.9質量%、好ましくは55〜99質量%、より好ましくは60〜98質量%であり、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有率が0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは1〜3質量%である。
【0013】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有率が上記下限値以上であることは摺動性および耐摩耗性の点で好ましく、上記上限値以下であることはポリアミドの本来持つ機械的特性を維持するために好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂(A)の含有率が上記下限値以上であることは、ポリアミドの本来持つ機械的特性を維持するために好ましく、上記上限値以下であることは、上記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)による作用を確保するために好ましい。
【0015】
[ポリアミド樹脂(A)]
ポリアミド樹脂(A)としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンなどのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸類との重縮合によって得られるポリアミド;ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミド;あるいはこれらの成分からなる共重合ポリアミド;さらにはこれらのポリアミドの混合物などが挙げられる。このポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6110、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11、芳香族ナイロン等が挙げられる。
【0016】
また、ポリアミド樹脂(A)としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであってもよく、代表的なものとして、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエステルまたはポリオールからなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。このポリアミド系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ナイロン6エラストマー、ナイロン12エラストマー等の、上述したポリアミドの具体例のエラストマー、さらに具体的にはナイロン12/ポリエーテルブロックポリマー等が挙げられる。
【0017】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(B)]
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、下記要件(b−1)〜(b−3)を満たす。
要件(b−1) 100℃における動粘度が90〜5000mm2/sである。
【0018】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の100℃における動粘度は、好ましくは500〜3500mm2/s、より好ましくは500〜2500mm2/s、さらに好ましくは500〜1000mm2/sである。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の100℃における動粘度が上記範囲にあることは、得られる組成物の摺動性が向上する点で好ましい。
要件(b−2) エチレン由来の骨格単位の含有率が30〜80モル%である。
【0019】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の前記含有率は、好ましくは40〜75モル%、より好ましくは40〜60モル%である。エチレン由来の骨格単位の含有率が上記範囲であると、得られる組成物の摺動性が向上する点で好ましい。前記含有率が上記範囲にあることで、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は非晶性または低結晶性となり、これにより得られる組成物の摺動性が向上すると考えられる。
【0020】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、13C−NMR法で測定することができ、例えば後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163〜170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。また、この方法により求められた試料を既知試料として、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)を用いて測定することも可能である。
【0021】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を構成するα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1などの炭素数3〜20のα−オレフィンなどを例示することができる。これらα−オレフィンを2種以上併用してもよい。これらのα−オレフィンの中では、重合体組成物に良好な柔軟性、制振性、耐候性を与える点で、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0022】
要件(b−3) 示差走査熱量計(DSC)による融点(Tm)が観測されない。
ここで、融点(Tm)が観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)(単位:J/g)が実質的に計測されないことをいう。融解熱量(ΔH)が実質的に計測されないとは、示差走査熱量計(DSC)測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。α−オレフィン(共)重合体の融点(Tm)および融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC)測定を行い、−100℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで150℃まで昇温したときに、DSC曲線をJIS K7121を参考に解析し求めた。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の融点(Tm)が観測されないと、ポリアミド樹脂との混合が容易になる点で好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、通常1.0〜3.0、好ましくは1.4〜2.5である。
【0023】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造方法]
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、バナジウム、ジルコニウム、チタニウムなどの遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および/またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンとを共重合させる方法が挙げられる。このような方法は、例えば国際公開00/34420号パンフレット、特開昭62−121710号公報に記載されている。また、国際公開15/147215号パンフレットに記載されているような方法でも製造することができる。
【0024】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を併用してもよい。
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、グラフト変性等によって何らかの極性基を付与されたものであってもよい。
【0025】
[その他の成分]
本発明のポリアミド樹脂組成物、およびそれを構成するポリアミド樹脂(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、本発明の目的を損ねない範囲であれば、通常の熱可塑性樹脂に添加される添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤などの安定剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、フィラー、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、ワックスなどを含有していてもよい。本発明のポリアミド樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)以外の重合体、たとえばポリエチレンを無水マレイン酸等によりグラフト変性することによって得られる変性ポリエチレン等を含有していてもよい。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、無機フィラーを1〜49.9質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%含んでも良い。このようなフィラー含有ポリアミド樹脂組成物は、成形体の機械的強度をさらに向上させたい場合、あるいは調整された線膨張率(成形収縮率)を持つ成形体が必要な用途で有用である。
【0027】
フィラーとしては、例えば、繊維状充填剤、粒状充填剤、板状充填剤等の充填剤が挙げられる。繊維状充填剤の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられ、ガラス繊維の好適な例としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド等が挙げられる。粒状又は板状充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。
【0028】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、例えば、ポリアミド樹脂(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とを溶融混練する方法が挙げられる。この方法においては、ポリアミド樹脂(A)と、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のいずれもが溶融する温度で混練すればよく、その温度は特に限定されないが、通常、200〜300℃、好ましくは200〜270℃の温度で溶融混練すればよい。混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー等を使用して行うことができる。
【0029】
[成形体]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来種々公知の方法、具体的には、例えば、射出成形法、異形押出成形法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により、容器状、トレー状、シート状、棒状、フィルム状または各種成形体の被覆物などに成形することができる。得られた成形体は、各種用途に広く使用できるが、特に耐摩耗性、衝撃強度などの特性のバランスに優れているので、これらが要求される用途に好適である。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物をその一部または全部に含む成形品の例としては、ラジエータグリル、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベント・グリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダーおよびバックドア等の自動車用外装部品;シリンダーヘッド・カバー、エンジンマウント、エアインテーク・マニホールド、スロットルボディ、エアインテーク・パイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプ・インレット、ウォーターポンプ・アウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルター・ハウジング、オイルフィラー・キャップ、オイルレベル・ゲージ、タイミング・ベルト、タイミング・ベルトカバーおよびエンジン・カバー等の自動車用エンジンルーム内部品;フューエルキャップ、フューエルフィラー・チューブ、自動車用燃料タンク、フューエルセンダー・モジュール、フューエルカットオフ・バルブ、クイックコネクタ、キャニスター、フューエルデリバリー・パイプおよびフューエルフィラーネック等の自動車用燃料系部品;シフトレバー・ハウジングおよびプロペラシャフト等の自動車用駆動系部品;スタビライザーバー・リンケージロッド等の自動車用シャシー部品;ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイド・ドアミラー・ステー、アクセルペダル、ペダル・モジュール、シールリング、軸受、ベアリングリテーナー、ギアおよびアクチュエーター等の自動車用機能部品;ワイヤーハーネス・コネクター、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイルおよびディストリビューター・キャップ等の自動車用エレクトロニクス部品;インパネカバー、エアコン吹出し口、各種操作パネル、筐体等の自動車用内装部品;汎用機器(刈り払い機、芝刈り機およびチェーンソー等)用燃料タンク等の汎用機器用燃料系部品;ならびにコネクタおよびLEDリフレクタ等の電気電子部品、電気電子部品、建材部品、各種筐体、外装部品などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明の実施例および比較例における物性値の測定方法は以下の通りである。
<MFR>
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1234に従い、230℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0032】
<エチレン由来の骨格単位の含有率(mol%)>
日本分光社製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−610またはFT/IR−6100を用い、長鎖メチレン基の横揺れ振動に基づく721cm-1付近の吸収とプロピレンの骨格振動に基づく1155cm-1付近の吸収との吸光度比(D1155cm-1/D721cm-1)を算出し、予め作成しておいた検量線(ASTM D3900での標準試料を使って作成)よりエチレン由来の骨格単位の含有率(重量%)を求めた。次に、得られたエチレン由来の骨格単位の含有率(重量%)を用い、下記式に従ってエチレン由来の骨格単位の含有率(mol%)を求めた。
【0033】
【数1】
【0034】
<分子量分布>
分子量分布は、東ソー株式会社HLC−8320GPCを用いて以下のようにして測定した。分離カラムとして、TSKgel SuperMultiporeHZ−M(4本)を用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはテトラヒドロフラン(和光純薬社製)を用い、展開速度を0.35ml/分とし、試料濃度を5.5g/Lとし、試料注入量を20マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製(PStQuick MP−M)のものを用いた。汎用校正の手順に従い、ポリスチレン分子量換算として重量平均分子量(Mw)並びに数平均分子量(Mn)を算出し、これらの値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0035】
<粘度特性>
100℃における動粘度は、JIS K2283に記載の方法により、測定、算出した。
【0036】
<不飽和結合量>
o−ジクロロベンゼン−d4を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅20ppm、パルス繰り返し時間7.0秒、かつパルス幅6.15μsec(45°パルス)の測定条件下にて、1H−NMRスペクトル(400 MHz、日本電子ECX400P)を測定した。ケミカルシフト基準には、溶媒ピーク(オルトジクロロベンゼン 7.1ppm)を用い、0〜3ppmに観測されるメインピークと、4〜6ppmに観測されるビニル、ビニリデン、二置換オレフィンおよび三置換オレフィンに由来するピークの積分値の比率より、炭素原子1000個当たりの不飽和結合量(個/1000C)を算出した。
【0037】
<融点>
セイコーインスツルメント社X−DSC−7000を用い、簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのエチレン−α−オレフィン共重合体を入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点(Tm)とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量(ΔH)とした。ピークが観測されないか、融解熱量(ΔH)の値が1J/g以下の場合、融点(Tm)は観測されないとみなした。融点(Tm)、および融解熱量(ΔH)の求め方はJIS K7121に基づいた。
【0038】
<曲げ試験>
ASTM D790に準拠して、試験片形状を12.7mm(幅)×3.2mm(厚さ)×127mm(長さ)とし、曲げスパン48.0mm、試験速度5.0mm/minにより、曲げ強度および曲げ弾性率(FM)(MPa)を求めた。
【0039】
<シャルピー衝撃強度>
ISO−179に準拠して、ノッチ付き多目的試験片を用いてシャルピー衝撃強度を測定した。
【0040】
<摩擦係数および比摩耗量>
摩擦係数および比摩耗量は、JIS K 7218「プラスチックの滑り摩耗試験A法」に準拠し、松原式摩擦摩耗試験機を使用して測定した。試験条件は、相手材:S45C、速度:50cm/秒、距離:3km、荷重:15kg(摩擦係数)または2.5kg(比摩耗量)、測定環境温度:23℃、150℃とした。
【0041】
<限界PV値>
限界PV値は、ステップワイズ法〔JIS K7218(SUSリング/樹脂シート)〕により評価した。具体的には、摺動速度:0.2m/s、試験荷重:0.25〜25MPa(0.25MPa毎ステップ)、試験温度:23℃として、試験荷重による樹脂の摩耗による融着、変形による摩擦係数上昇、発熱温度上昇までの試験荷重と摺動速度から限界PV値を算出した。
【0042】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造]
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は以下の製造例1および2に従い製造した。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の水添操作は下記方法で実施した。
【0043】
<水添操作>
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに0.5質量%Pd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mLおよびエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌をしながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水添反応を実施した。
【0044】
<メタロセン化合物の合成>
<合成例1>
[メチルフェニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル)(η5−2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
(i)6−メチル−6−フェニルフルベンの合成
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコにリチウムシクロペンタジエン7.3g (101.6mmol)および脱水テトラヒドロフラン100mLを加えて攪拌した。溶液をアイスバスで冷却し、アセトフェノン15.0g(111.8mmol)を滴下した。その後、室温で20時間攪拌し、得られた溶液を希塩酸水溶液でクエンチした。ヘキサン100mLを加えて可溶分を抽出し、この有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を留去し、得られた粘性液体を、ヘキサンを移動相として用いたカラムクロマトグラフィーで分離し、目的物である6−メチル−6−フェニルフルベンを赤色粘性液体として得た。
【0045】
(ii)メチル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)(フェニル)メタンの合成
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,7−ジ−t−ブチルフルオレン2.01g(7.20mmol)および脱水t−ブチルメチルエーテル50mLを添加した。氷浴で冷却しながらn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液 (1.65 M) 4.60mL(7.59mmol)を徐々に添加し、室温で16時間攪拌した。6−メチル−6−フェニルフルベン1.66g(9.85mmol)を添加した後、加熱還流下で1時間攪拌した。氷浴で冷却しながら水50mLを徐々に添加し、得られた二層の溶液を200mL分液漏斗に移した。ジエチルエーテル50mLを加えて数回振った後水層を除き、有機層を水50mLで3回、飽和食塩水50mLで1回洗った。無水硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。少量のヘキサンを加えて得た溶液に超音波を当てたところ固体が析出したので、これを採取して少量のヘキサンで洗浄した。減圧下で乾燥し、白色固体としてメチル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)(フェニル)メタン2.83gを得た。
【0046】
(iii)[メチルフェニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル)(η5−2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
窒素雰囲気下、100mLシュレンク管にメチル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)(フェニル)メタン1.50g(3.36mmol)、脱水トルエン50mLおよびTHF 570μL(7.03mmol)を順次添加した。氷浴で冷却しながらn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.65M)4.20mL(6.93mmol)を徐々に添加し、45℃で5時間攪拌した。減圧下で溶媒を留去し、脱水ジエチルエーテル40mLを添加して赤色溶液とした。メタノール/ドライアイス浴で冷却 しながら四塩化ジルコニウム 728mg(3.12mmol)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら16時間攪拌したところ、赤橙色スラリーが得られた。減圧下で溶媒を留去して得られた固体をグローブボックス内に持ち込み、ヘキサンで洗浄した後、ジクロロメタンで抽出した。減圧下で溶媒を留去して濃縮した後、少量のヘキサンを加え、−20℃で放置したところ赤橙色固体が析出した。この固体を少量のヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥することにより、赤橙色固体として[メチルフェニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル)(η5−2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド1.20 gを得た。
【0047】
[製造例1]重合体1の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製重合器にデカン250mLを装入し、系内の温度を130℃に昇温した後、エチレンを25L/hr、プロピレンを75L/hr、水素を100L/hrの流量で連続的に重合器内に供給し、撹拌回転数600rpmで撹拌した。次にトリイソブチルアルミニウム0.2mmolを重合器に装入し、次いでMMAO1.213mmolと[メチルフェニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル)(η5−2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00402mmolをトルエン中で15分以上予備混合したものを重合器に装入することにより重合を開始した。その後、エチレン、プロピレン、水素の連続的供給を継続し、130℃で15分間重合を行った。少量のイソブチルアルコールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のモノマーをパージした。得られたポリマー溶液を、0.2mol/lの塩酸100mLで3回、次いで蒸留水100mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥し、エチレン・プロピレン共重合体(重合体1)0.77 gを得た。重合体1のエチレン由来の骨格単位の含有率は48.8mol%、Mw/Mnは1.6、100℃における動粘度は102mm2/sであった。また、重合体1の水添操作後の不飽和結合量は0.1個/1000C未満であった。また、重合体1は、DSCによる融点(Tm)は観測されなかった。
【0048】
[製造例2]重合体2の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘプタン710mLおよびプロピレン145gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.40MPa、エチレン0.27MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次にトリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[メチルフェニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル)(η5−2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド 0.0001mmolおよびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.001mmolを窒素で圧入し、攪拌回転数を400rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られたポリマー溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥し、エチレン−プロピレン共重合体(重合体2)52.2gを得た。重合体2のエチレン由来の骨格単位の含有率は53.1mol%、Mw/Mnは1.8、100℃における動粘度は605mm2/sであった。また、重合体2の水添操作後の不飽和結合量は0.1個/1000C未満であった。また、重合体2は、DSCによる融点(Tm)は観測されなかった。
【0049】
[製造例3]変性ポリエチレン(重合体3)の製造
<固体状チタン触媒成分の調製>
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン398.4gおよび2−エチルヘキシルアルコ−ル306gを140℃で6時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中に安息香酸エチル17.6gを添加し、更に130℃にて1時間攪拌混合を行なった。
【0050】
このようにして得られた均一溶液を室温まで冷却した後、この均一溶液50mLを、0℃に保持した四塩化チタン200mL中に一定の撹拌速度で攪拌しつつ1時間にわたって全量滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を2.5時間かけて80℃に昇温し、80℃になったところで混合液中に安息香酸エチル2.35gを添加し、2時間同温度にて攪拌下保持した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を100mLの四塩化チタンにて再懸濁させた後、90℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、温度90℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分はデカンスラリーとして保存した。
【0051】
ICP法で分析したところ、固体状チタン触媒成分中、Ti成分が3.5質量%含まれていた。ベックマン・コールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置で測定した触媒粒子の平均粒径は7μm、最大粒径は18μmであった。
【0052】
<ポリエチレンの重合>
充分に窒素置換された攪拌機付24Lのオートクレーブに12Lの精製n−デカンを添加した後、トリエチルアルミニウムをアルミニウム換算で14ミリモル、上記固体状チタン触媒成分をチタン換算で0.3mmol加え、十分に撹拌しながら45℃まで昇温しつつ、4.2L/分の速度でエチレンを供給して重合を開始した。オートクレーブの内圧は6kg/cm2・Gに保持した。重合温度は45〜46℃に維持した。エチレンを880L供給した時点でエチレンの供給を一旦停止し、内圧が3kg/cm2・Gとなるまで温度を一定に保持した後、速やかに常圧まで脱圧した。この段階で、得られたスラリーを少量サンプリングし、デカンとヘキサンとで洗浄して白色固体サンプル(1)を得た。次いで水素を41L導入し、温度を85℃に上げつつエチレンを11.6L/分の速度で供給しながら2段目の重合を開始した。全圧を6.4kg/cm2・G、温度は85℃に保持した。
【0053】
エチレンを3800L供給したところで、エチレンの供給を停止し、内圧が3kg/cm2・Gになるまで温度は85℃に保持し、その後、常圧、常温まで脱圧、冷却し、重合終了とした。
【0054】
重合終了後、得られたスラリーから固体状白色固体を分離し、デカン、ヘキサンで洗浄した後、これを80℃で減圧乾燥した。得られた白色固体(ポリエチレン(PE−1))のASTM D1505に準拠して測定された密度は967kg/cm3、極限粘度[η]は5.73dl/gであった。
【0055】
一方、白色個体サンプル(1)は、極限粘度[η]が28dl/gであった。また、エチレンの供給量より、第1段目で製造した超高分子量ポリエチレンの含有量は19.0質量%である。第2段目で生成した重合体の極限粘度は下記式より推算すると、0.5dl/gであった。
[η]all=[η]A×wtA+[η]B×wtB
[η]all:ポリマー全体(ポリエチレンPE−1)の極限粘度(dl/g)
[η]A:超高分子量ポリエチレンの極限粘度(dl/g)
wtA:超高分子量ポリエチレンの含有量(質量%)
[η]B:低分子量ないし高分子量ポリエチレンの極限粘度(dl/g)
wtB:低分子量ないし高分子量ポリエチレンの含有量(質量%)
【0056】
なお、極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定される値である。すなわち、サンプル(約20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈した後、前記と同様に比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、オレフィン重合体の濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値をオレフィン重合体の極限粘度[η]とした。
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0057】
<変性ポリエチレン(重合体3)の製造>
上記で得たポリエチレン(PE−1)100質量部、無水マレイン酸0.8質量部、および有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名パーヘキシン−25B]0.07質量部、をヘキシェルミキサーで混合し、得られた混合物を270℃に設定した100mmφの二軸押出機で、混練時間1分30秒程で溶融グラフト変性することによって、変性ポリエチレン(重合体3)を得た。
[PTFE]
PTFEとして、株式会社喜多村製PTFE KTL610を使用した。
【0058】
[実施例1〜4]
ポリアミド樹脂であるPA6(東レ(株)製、アミラン、CM1007)と、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)である重合体1または重合体2とを、あるいはPA6と重合体1または重合体2とその他の樹脂である重合体3とを、表1に示す質量比率にて配合し、46mmφのベント式二軸スクリュー押出機を用いて200〜240℃のシリンダー温度条件で溶融混合してポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。こうして得られたペレットを用いて射出成型試験片を作製し、上記の物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
PA6担体を用いて射出成型試験片を作製し、上記の物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
PA6と重合体3とを表1に示す質量比率にて配合し、実施例1と同様にペレットを製造した。このペレットを用いて射出成型試験片を作製し、上記の物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例3]
PA6とPTFEとを表1に示す質量比率にて配合し、実施例1と同様にペレットを製造した。このペレットを用いて射出成型試験片を作製し、上記の物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すとおり、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を含有する実施例1〜4のポリアミド樹脂組成物は、比較例1のポリアミド樹脂単体に比較して、機械物性を損なうことなく、摩擦係数および比摩耗量を大幅に低減することができた。実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1のポリアミド樹脂組成物は、比較例2のポリアミド樹脂と変性ポリエチレン(重合体3)とからなるポリアミド樹脂組成物に比較して、高い流動性を維持することができた。実施例2〜4の結果が示す通り、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)と変性ポリエチレンとの配合比率を変えたり、変性ポリエチレンと組み合わせるエチレン・α−オレフィン共重合体の100℃における動粘度を変えたりすることで、流動性を任意に調整することができた。
【0064】
更に、比較例3に示すポリアミド樹脂とPTFEとからなるポリアミド樹脂組成物は低摩擦係数を実現できることで知られているが、これと比較して、実施例のポリアミド樹脂組成物は摩擦係数の低減に加え、摩耗量の低減も実現できた。