(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記監視回路は、更に、前記出力トランジスタの出力電流が所定の電流値以上であることを検出すると第二の電流検出信号を前記論理回路に出力する第二の電流検出回路と、を備え、
前記論理回路は、前記非飽和検出信号が入力されているときは、前記第二の電流検出信号に基づいて前記ウォッチドッグタイマに前記イネーブル信号を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の監視回路。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサ(MPU)を含む様々な組み込みシステムの監視回路としてウォッチドッグタイマが一般的に知られている。
図7は、一般的なMPUを含むシステムのブロック図である。
【0003】
一般的なMPUを含むシステムは、監視対象であるMPU10と、ウォッチドッグタイマ11と、MPU10の動作状態を検出するための電流検出回路12と、出力トランジスタ13と誤差増幅器14と帰還回路15と基準電圧源16とを有するLDOレギュレータ部と、を備えている。電流検出回路12は、センストランジスタ30と、定電流源31と、コンパレータ32と、を備えている。
【0004】
LDOレギュレータ部は、MPU10に電流を供給する。ウォッチドッグタイマ11は、MPU10から定期的に信号を受けることによって、MPU10を監視する。電流検出回路12は、MPU10に電源から流れる電流量を検出して、MPU10の動作状態、例えば動作モードとスタンバイモードを判別し、ウォッチドッグタイマ11に制御信号ENを出力する。
【0005】
このように構成した一般的なMPUを含むシステムは、電流検出回路12がMPU10のスタンバイモード時にウォッチドッグタイマ11を停止させるので、MPUを含むシステムの消費電力を小さくすることができる。
【0006】
ここで、MPU10は、例えば、動作モードでは数10mA〜数100mA程度の電流が流れるのに対して、スタンバイモードでは数10〜数100μA程度の電流が流れる。電流検出回路12は、MPU10の動作状態による電流量の違いで、例えば数mA程度にしきい値を設けて検出することで、MPU10の動作状態を判別する。電流検出回路12は、例えば特許文献1に記載の回路が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、第一の実施形態の監視回路114を備えた半導体装置100を示す回路図である。
半導体装置100は、出力トランジスタ110と誤差増幅器111と帰還回路112と基準電圧源113とを有するLDOレギュレータ部と、電流検出回路115とウォッチドッグタイマ116と非飽和検出回路117とを有する監視回路114と、を備えている。
【0015】
出力トランジスタ110は、ソースが電源端子に接続され、ゲートが誤差増幅器111の出力端子に接続され、ドレインが電圧出力端子121と帰還回路112の入力端子に接続されている。帰還回路112の出力端子は、誤差増幅器111の非反転入力端子に接続されている。基準電圧源113は、一方の端子が誤差増幅器111の反転入力端子に接続され、他方の端子が接地端子に接続されている。
【0016】
非飽和検出回路117の出力端子は、電流検出回路115の非飽和検出入力端子に接続されている。電流検出回路115は、電流検出入力端子が出力トランジスタ110のゲートに接続され、出力端子がウォッチドッグタイマ116のイネーブル端子に接続されている。ウォッチドッグタイマ116は、入力端子123と出力端子122に接続されている。
【0017】
電圧出力端子121と入力端子123と出力端子122とは、監視対象の半導体装置であるマイクロプロセッサ(MPU)101に接続されている。
ここでは最低限の接続のみについて説明しており、図示しないが、以後の説明で登場する電流検出回路115や非飽和検出回路117の具体例を構成する上で必要な接続は、それぞれの例に合わせて為されるものとする。
【0018】
第一の実施形態の半導体装置100の動作について説明する。
出力トランジスタ110と誤差増幅器111と帰還回路112と基準電圧源113を有するLDOレギュレータ部は、電源端子の電圧Vinを基準電圧Vrefに基いて電圧出力端子121の出力電圧Voutを出力する。出力電圧Voutが低下すると、帰還回路112の出力する帰還電圧Vfbが低下する。誤差増幅器111は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefの誤差に基いて出力トランジスタ110のゲートを制御し、出力電圧Voutを上昇させる。逆に、出力電圧Voutが上昇すると、誤差増幅器111は、出力トランジスタ110のゲートを制御し、出力電圧Voutを低下させる。このように負帰還回路を構成することで、LDOレギュレータ部は出力電圧Voutが基準電圧Vrefに基いた所定の電圧となるように制御する。MPU101は、電源端子が電圧出力端子121に接続され、電源電圧はLDOレギュレータ部により一定に制御される。MPU101の電源電流は、出力トランジスタ110の出力電流により供給される。帰還回路112の入力端子に流れ込む電流に対してMPU101の電源電流が十分に大きい場合、MPU101の電源電流と出力トランジスタ110の出力電流はほぼ等しくなる。
【0019】
非飽和検出回路117は、出力トランジスタ110が非飽和状態になる可能性を検出すると、非飽和検出信号131を電流検出回路115の非飽和検出入力端子に出力する。非飽和検出回路117は、例えば、電源電圧Vinが低下して所定の出力電圧Voutに近付いたことにより出力トランジスタ110が非飽和状態になる可能性を検出する。
【0020】
電流検出回路115は、非飽和検出入力端子に非飽和検出信号131が入力されていない時、出力トランジスタ110の出力電流が所定の電流値より大きくなったことを検出すると、MPU101が動作モードであると判別し、ウォッチドッグタイマ116のイネーブル端子にイネーブル信号132を出力する。また、出力トランジスタ110の出力電流が所定の電流値より小さくなったことを検出すると、MPU101がスタンバイモードであると判別し、ウォッチドッグタイマ116のイネーブル端子へのイネーブル信号132を停止する。そして、電流検出回路115は、非飽和検出入力端子に非飽和検出信号131が入力されている時は、出力トランジスタ110の出力電流の大きさに関わらず、イネーブル信号132を停止する。
【0021】
ウォッチドッグタイマ116は、イネーブル端子に信号が入力されるとイネーブル状態となり、MPU101の監視動作を行う。また、イネーブル端子へ入力される信号が停止するとディスエーブル状態となり、MPU101の監視動作を停止する。ウォッチドッグタイマ116は、イネーブル状態であるとき、外部のMPU101から入力端子123に入力された監視信号に基きMPU101の暴走の可能性を検出すると、MPU101をリセットするために出力端子122にリセット信号を出力する。ウォッチドッグタイマ116は、ディスエーブル状態であるとき、MPU101の監視を停止する。
【0022】
このように、第一の実施形態の監視回路114によれば、電源電圧Vinが低下して出力トランジスタ110が非飽和状態になったとしても、非飽和検出回路117の出力により電流検出回路115の出力するイネーブル信号132を停止させてウォッチドッグタイマ116の監視を停止するため、電流検出回路115の電流検出精度の悪化の影響を受けることなく、消費電力を小さくすることが出来る。
【0023】
なお、MPU101の仕様によっては、電流検出回路115は、非飽和検出信号131が入力されると、出力トランジスタ110の出力電流の大きさに関わらず、ウォッチドッグタイマ116へイネーブル信号132を出力するようにしてもよい。
【0024】
図2は、非飽和検出回路117の一例を示す回路図である。
図2の非飽和検出回路117は、コンパレータ171と、基準電圧源172と、を備えている。
【0025】
コンパレータ171は、反転入力端子が出力トランジスタ110のゲートに接続され、非反転入力端子が基準電圧源172に接続され、出力端子は非飽和検出回路117の出力端子に接続される。
【0026】
電源電圧Vinが低下して所定の出力電圧Voutに近付くと、出力トランジスタ110は、ドレイン・ソース間電圧Vdsが小さくなり非飽和状態に近くなっている。この時、出力電圧Voutが低下するので、誤差増幅器111は、出力トランジスタ110のゲートの電圧を低下させる。即ち、コンパレータ171の反転入力端子の電圧が低下し、基準電圧源172の基準電圧Vref2を下回ると、コンパレータ171は非飽和検出信号131を出力する。
【0027】
電源電圧Vinが上昇して所定の出力電圧Voutより高くなると、出力トランジスタ110は、ドレイン・ソース間電圧Vdsが大きくなり飽和状態に近くなる。この時、誤差増幅器111は、出力電圧Voutが所定の電圧になるように出力トランジスタ110のゲートの電圧を制御する。基準電圧Vref2はこの出力トランジスタ110のゲート電圧より低く設定されているので、コンパレータ171は非飽和検出信号131の出力を停止する。
【0028】
以上説明したように構成された非飽和検出回路117によれば、簡単な回路により出力トランジスタの非飽和を検出する回路が実現できる。
なお、
図2の非飽和検出回路117は、コンパレータ171と基準電圧源172を備えた構成で説明したが、オフセットコンパレータで構成しても良い。オフセットコンパレータで構成した場合は、電源端子の電圧と出力トランジスタの出力端子の電圧を比較するようにしても良い。
【0029】
電源電圧Vinが低下して所定の出力電圧Voutに近付くと、出力トランジスタ110のドレイン・ソース間電圧Vdsが低下する。出力トランジスタ110は、出力トランジスタのしきい値電圧をVth、ゲート・ソース間電圧Vgsとすると、式1の飽和条件を満たさない時、非飽和状態となる。
Vds≧Vgs−Vth (1)
【0030】
オフセットコンパレータは、出力トランジスタ110のドレイン・ソース間電圧Vdsが小さくなり入力端子間の電圧の差が所定のオフセット電圧以下まで小さくなったことを検出して、出力トランジスタの非飽和を検出する。
この場合は、出力トランジスタのVdsの低下を直接検出することが出来るため、比較的早く非飽和検出信号131を出力することが出来るという利点がある。
【0031】
図3は、非飽和検出回路117の他の例を示す回路図である。
図3の非飽和検出回路117は、センストランジスタ173と、電圧検出回路174と、抵抗175と、を備えている。
【0032】
センストランジスタ173は、ゲートが出力トランジスタ110のゲートに接続され、ソースが電源端子に接続され、ドレインが抵抗175の一方の端子と電圧検出回路174の入力端子に接続される。電圧検出回路174の出力端子は、非飽和検出回路117の出力端子に接続される。
【0033】
センストランジスタ173は、出力トランジスタ110のドレイン電流に比例したドレイン電流を流す。抵抗175は、センストランジスタ173のドレイン電流によってその両端に電圧を発生する。
【0034】
非飽和検出回路117は、抵抗175の電圧と電圧検出回路174の閾値電圧によって出力トランジスタ110の非飽和を検出し、非飽和検出信号131を出力する。
例えば、出力トランジスタ110の出力電流が小さい時はセンストランジスタ173のドレイン電流が小さくなるように設定し、電圧検出回路174を定電流制限付きのインバータで構成して定常的な回路電流が流れないようにすることで、非飽和検出回路117の消費電流を小さくすることが出来る。また、抵抗175の代わりに定電流源を用いても同様の作用が得られる。
【0035】
図3の回路を用いれば、
図1の監視回路114の非飽和検出回路117を簡単な回路により実現でき、更に、
図2の非飽和検出回路117よりも消費電流の少なくすることができる。
【0036】
図4は、本実施形態の監視回路114の電流検出回路115の一例を示す回路図である。
図4の電流検出回路115は、センストランジスタ151と、スイッチ152と、抵抗153と、基準電圧源154と、コンパレータ155と、を備えている。
【0037】
センストランジスタ151は、ソースが電源端子に接続され、ゲートが出力トランジスタ110のゲートに接続され、ドレインがスイッチ152の一方の端子に接続される。スイッチ152の他方の端子は、抵抗153とコンパレータ155の非反転入力端子に接続される。コンパレータ155は、反転入力端子が基準電圧源154に接続され、出力端子が電流検出回路115の出力端子に接続される。スイッチ152は、非飽和検出回路117からの非飽和検出信号が停止していると導通状態となり、非飽和検出信号が入力されると非導通状態となる。
【0038】
電流検出回路115は、非飽和検出回路117から非飽和検出信号131が入力されている時、スイッチ152は非道通状態となるため、コンパレータ155はイネーブル信号132の出力を停止する。
【0039】
このように、電流検出回路115に非飽和検出信号131が入力されている時に非道通状態になるスイッチ152を用いることで、出力トランジスタ110が非飽和状態のときにウォッチドッグタイマ116の監視を停止させる監視回路114を容易に実現できる。
【0040】
図5は、第二の実施形態の監視回路214を備えた半導体装置200を示す回路図である。
第一の実施形態の半導体装置100と同じ箇所については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
第二の実施形態の半導体装置200の監視回路214は、ウォッチドッグタイマ116と、非飽和検出回路117と、電流検出回路215と、論理回路218と、を備えている。電流検出回路215は、電流検出回路115からスイッチ152を削除した構成である。
【0042】
電流検出回路215が出力するイネーブル信号132は、論理回路218の第一の入力端子に入力される。非飽和検出回路117の出力する非飽和検出信号131は、論理回路218の第二の入力端子に入力される。論理回路218の出力するイネーブル信号133は、ウォッチドッグタイマ116のイネーブル端子に入力される。
【0043】
論理回路218は、非飽和検出信号131が入力されている場合、電源電圧Vinが低下して電流検出回路115の電流検出精度が悪化していると判断し、イネーブル信号132の入力の有無に関わらず、ウォッチドッグタイマ116にイネーブル信号133を出力しない。
このように構成した第二の実施形態の半導体装置200によれば、第一の実施形態の半導体装置100と同様の効果を得ることが出来る。
【0044】
図6は、第三の実施形態の監視回路314を備えた半導体装置300を示す回路図である。
第二の実施形態の半導体装置200と同じ箇所については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
第三の実施形態の半導体装置300の監視回路314は、ウォッチドッグタイマ116と、非飽和検出回路117と、電流検出回路215と、第二の電流検出回路である電流検出回路315と、論理回路318と、を備えている。
【0046】
電流検出回路315は、出力トランジスタ110が非飽和状態である時に、出力トランジスタ110の出力電流が所定値以上かどうかに基いて第二の電流検出信号134を出力する。
【0047】
電流検出回路315は、例えば、反転入力端子が電源端子に接続され、非反転入力端子が電圧出力端子121に接続されたオフセットコンパレータで構成される。出力トランジスタ110が非飽和状態になると、出力トランジスタ110の出力電流は、ドレイン・ソース間電圧Vdsにほぼ比例する。従って、オフセットコンパレータで出力トランジスタ110のドレイン・ソース間電圧Vdsを監視することで、出力トランジスタ110の出力電流を検出することが出来る。ここで、電流検出回路315は、出力トランジスタ110のドレイン・ソース間電圧Vdsがオフセットコンパレータのオフセット電圧以上になると、第二の電流検出信号134を出力する。
【0048】
論理回路318は、非飽和検出信号131が入力されている場合、電源電圧Vinが低下して電流検出回路115の電流検出精度が悪化していると判断し、イネーブル信号132の入力の有無に関わらず、ウォッチドッグタイマ116にイネーブル信号133を出力しない。また、論理回路318は、非飽和検出信号131が入力されている場合であっても、第二の電流検出信号134が入力されている場合はウォッチドッグタイマ116にイネーブル信号133を出力する。
【0049】
このように、第三の実施形態の監視回路314を備えた半導体装置300によれば、電源電圧Vinが高く出力トランジスタ110が飽和状態である時は、電流検出回路215によりMPU101が動作モードかスタンバイモードかを判別可能であり、電源電圧Vinが低下して出力トランジスタ110が非飽和状態になったとしても、第二の電流検出回路119によりMPU101が動作モードかスタンバイモードかを判別可能である。そのため、広い電源電圧VinにわたってMPU101の動作状態に基いてウォッチドッグタイマ116を制御可能であり、監視動作を安定させることが出来る。
【0050】
以上説明したように、本発明の監視回路によれば、出力トランジスタが非飽和状態になる可能性を非飽和検出回路により検出し、電流検出回路あるいはウォッチドッグタイマを停止制御するため、半導体装置の消費電力を抑えることが出来る。また、出力トランジスタが非飽和状態になっても、ウォッチドッグタイマの監視動作を安定させることが出来る。
【0051】
なお、実施形態で示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、電流検出回路は、スイッチ回路を備えて、非飽和検出信号によってコンパレータの動作電流の供給が遮断されるように構成しても良い。また例えば、非飽和検出回路や電流検出回路が備えるコンパレータや電圧検出手段は、入力信号のノイズに対して出力が安定するように、ヒステリシスを設けても良く、また出力にノイズフィルタを設けてもよい。