特許第6814092号(P6814092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814092固体絶縁母線の防水構造、及び固体絶縁母線の接続構造
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  • 特許6814092-固体絶縁母線の防水構造、及び固体絶縁母線の接続構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814092
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】固体絶縁母線の防水構造、及び固体絶縁母線の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/013 20060101AFI20201228BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H02G15/013
   H01R4/70 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-96863(P2017-96863)
(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公開番号】特開2018-195410(P2018-195410A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 稔之
(72)【発明者】
【氏名】丹治 義和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智
(72)【発明者】
【氏名】田中 康博
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−289049(JP,A)
【文献】 特開平6−98439(JP,A)
【文献】 実開昭62−26129(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/013
H01R 4/70
H02G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体の端部に接続される端子と、前記導体及び前記端子側から外側に向かって順に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層が積層された被覆部とを有する固体絶縁母線と、
前記端子に接続される導体引出棒と、
前記導体引出棒の外周を覆うブッシング本体部と、前記ブッシング本体部からその径方向外方に突出するブッシングフランジとを有するブッシングと、
前記固体絶縁母線の端面と前記ブッシングフランジとの間に介在される防水フランジを有する防水部とを備える固体絶縁母線の防水構造。
【請求項2】
前記防水部は、
前記防水フランジと前記ブッシングフランジとの間をシールするシール部材と、
前記防水フランジの前記ブッシングフランジ側の面に形成され、前記シール部材が嵌め込まれるシール溝とを備える請求項1に記載の固体絶縁母線の防水構造。
【請求項3】
前記ブッシングフランジの外周部は、前記防水フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向外方に位置する請求項1又は請求項2に記載に固体絶縁母線の防水構造。
【請求項4】
前記ブッシング本体部は、前記固体絶縁母線の内部に挿入される挿入領域を備え、
前記防水フランジの内周面と前記ブッシング本体部の外周面とで形成される領域には、前記被覆部が入り込んでいる圧入領域と、前記被覆部が入り込んでいない空間領域とを備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体絶縁母線の防水構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体絶縁母線の防水構造と、
前記導体引出棒を介して前記固体絶縁母線に接続される相手機器と、
前記ブッシングフランジにおける前記相手機器側の面と、前記相手機器との間に介在される取付フランジとを備える固体絶縁母線の接続構造。
【請求項6】
前記ブッシングフランジは、
前記防水フランジ側に開口する防水側ボルト穴と、
前記取付フランジ側に開口する取付側ボルト穴とを備え、
前記防水側ボルト穴は、前記取付側ボルト穴よりも前記ブッシングフランジの径方向外方に位置する請求項5に記載の固体絶縁母線の接続構造。
【請求項7】
前記ブッシングフランジの外周部は、前記防水フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向外方に位置すると共に、前記取付フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向内方に位置する請求項5又は請求項6に記載の固体絶縁母線の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体絶縁母線の防水構造、及び固体絶縁母線の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、棒状導体と短尺の撚線とを組み合わせて接続した母線と、母線の両端に接続した端末金具と、母線及び端末金具の上にモールドされた内部半導電層、絶縁層、及び外部半導電層とを備えるモールド絶縁連絡母線が開示されている。このモールド絶縁連絡母線は、電力機器間を結ぶように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−233244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外で使用される場合、モールド絶縁連絡母線(固体絶縁母線)の内部に水が浸入することを防止する対策が望まれている。しかし、特許文献1では、防水の点について検討されていない。
【0005】
そこで、固体絶縁母線の内部への水の浸入を防止できる固体絶縁母線の防水構造を提供することを目的の一つとする。また、固体絶縁母線の内部への水の浸入を防止できる固体絶縁母線の接続構造を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る固体絶縁母線の防水構造は、
導体と、前記導体の端部に接続される端子と、前記導体及び前記端子側から外側に向かって順に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層が積層された被覆部とを有する固体絶縁母線と、
前記端子に接続される導体引出棒と、
前記導体引出棒の外周を覆うブッシング本体部と、前記ブッシング本体部からその径方向外方に突出するブッシングフランジとを有するブッシングと、
前記固体絶縁母線の端面と前記ブッシングフランジとの間に介在される防水フランジを有する防水部とを備える。
【0007】
本開示に係る固体絶縁母線の接続構造は、
本開示に係る固体絶縁母線の防水構造と、
前記導体引出棒を介して前記固体絶縁母線に接続される相手機器と、
前記ブッシングフランジにおける前記相手機器側の面と、前記相手機器との間に介在される取付フランジとを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記固体絶縁母線の防水構造及び上記固体絶縁母線の接続構造は、固体絶縁母線の内部への水の浸入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る固体絶縁母線の防水構造を備える固体絶縁母線の接続構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
(1)本発明の実施形態に係る固体絶縁母線の防水構造は、
導体と、前記導体の端部に接続される端子と、前記導体及び前記端子側から外側に向かって順に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層が積層された被覆部とを有する固体絶縁母線と、
前記端子に接続される導体引出棒と、
前記導体引出棒の外周を覆うブッシング本体部と、前記ブッシング本体部からその径方向外方に突出するブッシングフランジとを有するブッシングと、
前記固体絶縁母線の端面と前記ブッシングフランジとの間に介在される防水フランジを有する防水部とを備える。
【0012】
上記構成によれば、防水フランジによって、固体絶縁母線の端面とブッシングフランジとの間から固体絶縁母線の内部に水が浸入することを防止できる。よって、上記固体絶縁母線の防水構造は、雨水に曝される可能性のある屋外環境下での使用には必要な構造である。
【0013】
(2)上記固体絶縁母線の防水構造の一形態として、前記防水部は、前記防水フランジと前記ブッシングフランジとの間をシールするシール部材と、前記防水フランジの前記ブッシングフランジ側の面に形成され、前記シール部材が嵌め込まれるシール溝とを備えることが挙げられる。
【0014】
防水部としてシール部材を備えることで、固体絶縁母線の防水構造の防水効果を高めることができる。
【0015】
(3)上記固体絶縁母線の防水構造の一形態として、前記ブッシングフランジの外周部は、前記防水フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向外方に位置することが挙げられる。
【0016】
上記構成によれば、ブッシングフランジに水がかかった場合、その水滴を防水フランジ側に導き易い。防水フランジによって固体絶縁母線の内部に水が浸入することを防止でき、防水フランジの周辺に水滴が滞留し難いため、防水部の防水効果を発揮し易い。
【0017】
(4)上記固体絶縁母線の防水構造の一形態として、前記ブッシング本体部は、前記固体絶縁母線の内部に挿入される挿入領域を備え、前記防水フランジの内周面と前記ブッシング本体部の外周面とで形成される領域には、前記被覆部が入り込んでいる圧入領域と、前記被覆部が入り込んでいない空間領域とを備えることが挙げられる。
【0018】
防水フランジの内周面とブッシング本体部の外周面とで形成される領域に被覆部が入り込むのは、ブッシング本体部の挿入領域を固体絶縁母線の内部に挿入(圧入)する際に、被覆部の構成材料の一部が弾性変形したためである。この被覆部の弾性変形により、防水フランジは、固体絶縁母線の端面により強固に固定されるため、固体絶縁母線の防水構造の防水効果を高めることができる。
【0019】
(5)本発明の実施形態に係る固体絶縁母線の接続構造は、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の固体絶縁母線の防水構造と、
前記導体引出棒を介して前記固体絶縁母線に接続される相手機器と、
前記ブッシングフランジにおける前記相手機器側の面と、前記相手機器との間に介在される取付フランジとを備える。
【0020】
上述した固体絶縁母線の防水構造を備えることで、固体絶縁母線を介して電力機器間を接続するにあたり、固体絶縁母線の各端部で防水できるため、雨水に曝される可能性のある屋外環境下で接続構造を構築することができる。
【0021】
(6)上記固体絶縁母線の接続構造の一形態として、前記ブッシングフランジは、前記防水フランジ側に開口する防水側ボルト穴と、前記取付フランジ側に開口する取付側ボルト穴とを備え、前記防水側ボルト穴は、前記取付側ボルト穴よりも前記ブッシングフランジの径方向外方に位置することが挙げられる。
【0022】
防水側ボルト穴が取付側ボルト穴よりもブッシングフランジの径方向外方に位置することで、ブッシングフランジに対して防水フランジを固定するボルトを防水フランジの径方向外方側に設けることができる。そうすることで、防水フランジをブッシングフランジに固定し易く、かつ防水フランジと固体絶縁母線の端面とを密接することができ、防水フランジと固体絶縁母線との間のシール性を確保できる。
【0023】
(7)上記固体絶縁母線の接続構造の一形態として、前記ブッシングフランジの外周部は、前記防水フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向外方に位置すると共に、前記取付フランジの外周部よりも前記防水フランジの径方向内方に位置することが挙げられる。
【0024】
取付フランジに水がかかった場合、その水滴をブッシングフランジを介して防水フランジ側に導き易い。防水フランジによって固体絶縁母線の内部に水が浸入することを防止できるため、防水フランジに導かれた水滴は、固体絶縁母線から流れ落ちる。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
≪全体構成≫
図1を参照して、実施形態に係る固体絶縁母線の防水構造1、及び固体絶縁母線の接続構造100について説明する。実施形態に係る固体絶縁母線の接続構造100は、相手機器110となるガス絶縁開閉装置(Gas insulated switchgear:GIS、図1の左側に位置するが図示せず)と変圧器(トランス、図1の右側に位置するが図示せず)とを固体絶縁母線2を介して接続するものである。実施形態に係る固体絶縁母線の防水構造1は、GISとトランスとを固体絶縁母線2を介して接続するにあたり、GISと固体絶縁母線2との接続部分、及びトランスと固体絶縁母線2との接続部分の防水を行うものである。以下の説明では、各構成部材におけるGISに近い側をGIS側、トランスに近い側をトランス側と呼ぶ。以下、固体絶縁母線の防水構造1について説明し、その後に固体絶縁母線の接続構造100について説明する。
【0027】
≪固体絶縁母線の防水構造≫
固体絶縁母線の防水構造1は、固体絶縁母線2と、固体絶縁母線2に備わる端子21に接続される導体引出棒3と、導体引出棒3の外周に設けられるブッシング4とを備える。固体絶縁母線2は、導体20と、導体20の端部に接続される端子21と、導体20及び端子21の外周に被覆される被覆部22とを備える。ブッシング4は、導体引出棒3の外周を覆うブッシング本体部40と、ブッシング本体部40からその径方向外方に突出するブッシングフランジ42とを備える。実施形態に係る固体絶縁母線の防水構造1は、固体絶縁母線2の端面とブッシングフランジ42との間に介在される防水フランジ50を有する防水部5を備える点を特徴の一つとする。
【0028】
〔固体絶縁母線〕
固体絶縁母線2は、中心に配置される導体20と、導体20の端部に接続される端子21と、導体20及び端子21の外周に被覆される被覆部22とを備える。被覆部22は、導体20及び端子21側から外側に向かって順に、内部半導電層221、絶縁層222、外部半導電層223が積層されている。
【0029】
導体20は、例えば、棒状導体や、棒状導体と短尺の撚線とを組み合わせた複合導体等が挙げられる。端子21は、例えば、端子21付きスリーブを導体20の端部に圧縮接続等により取り付けることで構成される。
【0030】
内部半導電層221及び外部半導電層223は、例えば、半導電性のシリコーンゴム等の半導電性ゴム材料で構成される。絶縁層222は、例えば、絶縁性のシリコーンゴム等の絶縁性ゴム材料で構成される。
【0031】
固体絶縁母線2は、例えば、成形用金型を用いて、導体20及び端子21の外周にゴム材料をモールドすることで得られるモールド成型品である。具体的には、第一金型内に端子21付き導体20を配置し、第一金型と導体20及び端子21との間に半導電性ゴム材料を注入して、導体20及び端子21の外周に内部半導電層221を有する第一中間部材を得る。次に、第二金型内に第一中間部材を配置し、第二金型と第一中間部材との間に絶縁性ゴム材料を注入して、導体20及び端子21の外周に内部半導電層221及び絶縁層222を有する第二中間部材を得る。最後に、第三金型内に第二中間部材を配置し、第三金型と第二中間部材との間に半導電性ゴム材料を注入して、導体20及び端子21の外周に内部半導電層221、絶縁層222、外部半導電層223を有する固体絶縁母線2を得る。
【0032】
被覆部22は、ブッシング4の一端部と接続される接続用開口部25を備える。接続用開口部25は、被覆部22のうち絶縁層222及び外部半導電層223によって形成された凹部である。接続用開口部25の底面には、端子21が露出している。この接続用開口部25には、後述する導体引出棒3を内部に有するブッシング本体部40が挿入(圧入)される。接続用開口部25の底面に端子21が露出しているため、接続用開口部25にブッシング本体部40が挿入されることで、接続用開口部25の内部で、端子21と導体引出棒3とが接続される。接続用開口部25の内周面は、開口側から底面側に向かって先細る円錐台状の傾斜面で構成されている。
【0033】
本例では、固体絶縁母線2は、GIS側端部2Gの形状とトランス側端部2Tの形状とが異なる。トランス側端部2T(図1の右側)は、導体20の長手方向に沿って被覆部22が設けられており、導体20の長手方向の延長線と同軸上に接続用開口部25が開口している。トランス側端部2Tは、被覆部22の厚さが、固体絶縁母線2の中央部分よりも厚くなっており、外径が、固体絶縁母線2の中央部分よりも大きくなっている。一方、GIS側端部2G(図1の左側)は、導体20の長手方向と交差(本例では、直交)方向に被覆部22のうち絶縁層222及び外部半導電層223が延設されており、導体20の長手方向と交差(直交)する方向に接続用開口部25が開口している。また、GIS側端部2Gは、導体20の長手方向と交差(直交)する方向で、接続用開口部25と反対側に作業用開口部26が開口している。作業用開口部26は、被覆部22のうち絶縁層222及び外部半導電層223によって形成された凹部である。作業用開口部26の内周面も、開口側から底面側に向かって先細る円錐台状の傾斜面で構成されている。
【0034】
〔導体引出棒〕
導体引出棒3は、一端部が固体絶縁母線2の端子21に接続され、他端部が相手機器(GIS又はトランス)のリード導体(図示せず)に接続される。固体絶縁母線2のGIS側端部2G及びトランス側端部2Tのそれぞれで、導体引出棒3を介して端子21と相手機器のリード導体とが電気的に接続されることで、固体絶縁母線2を介してGISとトランスとが電気的に接続される。
【0035】
本例では、固体絶縁母線2のトランス側端部2Tの端子21と導体引出棒3との接続は、導体引出棒3の端子21側の端部に形成された挿入孔に端子21を挿入し、圧接接続を行っている。また、固体絶縁母線2のGIS側端部2Gの端子21と導体引出棒3との接続は、端子21に板状の接続部210を取り付け、この接続部210の面と導体引出棒3の端面とを接続させて、両者をボルト211で固定して行っている。固体絶縁母線2の作業用開口部26は、このボルト211を締結するために設けられている。
【0036】
〔ブッシング〕
ブッシング4は、導体引出棒3の外周を覆うブッシング本体部40と、ブッシング本体部40からその径方向外方に突出するブッシングフランジ42とを備える。ブッシング本体部40とブッシングフランジ42とは、一体成型品である。ブッシング4は、例えば、エポキシ樹脂で構成される。
【0037】
〈ブッシング本体部〉
ブッシング本体部40は、その長手方向の一端部と他端部とを貫通し、上記導体引出棒3が挿通する挿通孔40hを備える筒状部材である。ブッシング本体部40の内部には、導体引出棒3が一体に成形されている。つまり、ブッシング本体部40(ブッシングフランジ42を含むブッシング4)と導体引出棒3とは、成形用金型を用いて、導体引出棒3の外周にブッシング4の構成材料をモールドすることで得られるモールド成形品である。
【0038】
ブッシング本体部40は、固体絶縁母線2の接続用開口部25に挿入される挿入領域を備える。ブッシング本体部40の挿入領域の外周面は、接続用開口部25の内周面に沿っており、端部に向かって先細る円錐台状の傾斜面で構成されている。ブッシング本体部40の挿入領域の外径は、接続用開口部25の内径よりも若干大きい。そのため、ブッシング本体部40の挿入領域を接続用開口部25に挿入(圧入)すると、ブッシング本体部40の挿入領域が接続用開口部25内に圧接状態で固定されることになる。
【0039】
本例では、GIS側ブッシング4Gとトランス側ブッシング4Tとで、ブッシング本体部40の形状が異なる。トランス側ブッシング4Tは、ブッシングフランジ42を挟んで挿入領域と反対側の領域が、GIS側ブッシング4Gにおける相当領域よりも長く、その外周に複数の鍔部を有する。鍔部により、沿面距離を確保している。
【0040】
〈ブッシングフランジ〉
ブッシングフランジ42は、ブッシング本体部40の長手方向の途中でブッシング本体部40の径方向外方に突出する板状部材である。ブッシングフランジ42は、ブッシング本体部40の周方向全周に亘って設けられている。本例では、ブッシングフランジ42は、円環状に設けられている。ブッシングフランジ42は、その外周部が、固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)よりも固体絶縁母線2の径方向外方に位置するように突出している。また、ブッシングフランジ42は、その外周部が、後述する防水フランジ50の外周部よりも防水フランジ50の径方向外方に位置するように突出している。
【0041】
ブッシングフランジ42は、図1の拡大図に示すように、表裏面にそれぞれボルト穴42a,42bを備える。ボルト穴42aは、後述する防水フランジ50側に開口する凹部であり、ブッシングフランジ42に防水フランジ50を固定するボルト54がねじ込まれる。ボルト穴42bは、後述する取付フランジ120側に開口する凹部であり、ブッシングフランジ42に取付フランジ120を固定するボルト124がねじ込まれる。ボルト穴42a,42bの内面には、それぞれ埋込電極42ae,42beが埋設されている。防水フランジ50側に開口する防水側のボルト穴42aは、取付フランジ120側に開口する取付側のボルト穴42bよりもブッシングフランジ42の径方向外方に位置している。また、防水側のボルト穴42aと取付側のボルト穴42bとは、ブッシングフランジ42の周方向に透視的に見ると、各ボルト穴42a,42bの先端部分がオーバーラップしている。ボルト穴42a,42bは、それぞれ周方向に均等にブッシングフランジ42に設けられている。ボルト穴42a,42bの寸法並びにブッシングフランジ42の肉厚等の寸法の制約等により、互いに周方向にずれた位置に設けられる場合もある。
【0042】
〔防水部〕
防水部5は、固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)とブッシングフランジ42との間に介在される防水フランジ50を備える。また、防水部5は、防水フランジ50とブッシングフランジ42との間をシールするシール部材52と、防水フランジ50のブッシングフランジ42側の面に形成されるシール溝51とを備える。
【0043】
防水フランジ50は、円環状部材である。本例では、防水フランジ50は、ブッシングフランジ42に取り付けた際に、ブッシング本体部40の外周に位置し、ブッシング本体部40の外周面との間に空間領域(図1で示す空間領域8bはその一部)を形成する内周面を有する円環状部材である。防水フランジ50は、その外周部が、ブッシングフランジ42の外周部よりもブッシングフランジ42の径方向内方に位置する。防水フランジ50は、例えば、黄銅(Cu−Zn合金)で構成される。
【0044】
防水フランジ50は、ブッシングフランジ42側の面に形成される凹状のシール溝51を備える。シール溝51は、防水フランジ50の外形に沿って円環状に形成されている。このシール溝51には、シール部材52が嵌め込まれる。シール部材52は、例えば、ニトリルゴム製のOリングである。シール溝51の幅や深さは、シール部材52を嵌め込め、そのシール部材52によって防水フランジ50とブッシングフランジ42との間をシール可能であれば、適宜選択できる。
【0045】
防水フランジ50は、表裏面を貫通する貫通孔53を備える。この貫通孔53には、防水フランジ50をブッシングフランジ42に固定するボルト54が貫通する。この貫通孔53は、シール溝51よりも防水フランジ50の径方向外方に位置する。防水フランジ50のブッシングフランジ42側の面は、全面に亘ってブッシングフランジ42の面に接触する。一方、防水フランジ50の固体絶縁母線2(接続用開口部25)側の面は、内方側が固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)と接触し、外方側が固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)と非接触で外部に露出する。貫通孔53がシール溝51よりも防水フランジ50の径方向外方に位置することで、防水フランジ50をブッシングフランジ42にボルト54で固定し易く、そのボルト54の頭部が防水フランジ50と固体絶縁母線2の端面との接触の邪魔になることを防止できる。
【0046】
防水フランジ50は、ブッシングフランジ42に対してはボルト54で固定され、固体絶縁母線2に対しては圧接により固定される。具体的には、防水フランジ50は、ボルト54を防水フランジ50の貫通孔53に貫通させると共に、そのボルト54をブッシングフランジ42のボルト穴42aにねじ込むことで、ブッシングフランジ42に固定される。ブッシングフランジ42に防水フランジ50が固定されたブッシング4は、ブッシング本体部40の挿入領域を接続用開口部25に挿入(圧入)することで、ブッシング本体部40の挿入領域が接続用開口部25内に圧接状態で固定されると共に、防水フランジ50が固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)に圧接状態で固定される。
【0047】
固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)とブッシングフランジ42との間に防水フランジ50が固定された状態では、防水フランジ50の内周面とブッシング本体部40の外周面とで形成される領域に、被覆部22が入り込んでいる圧入領域8aと、被覆部22が入り込んでいない空間領域8bとを備える。防水フランジ50の内周面とブッシング本体部40の外周面とで形成される領域に被覆部22が入り込むのは、ブッシング本体部40の挿入領域を接続用開口部25に挿入すると、ブッシング本体部40の挿入領域の外径が接続用開口部25の内径よりも若干大きいため、上記挿入時に、被覆部22の構成材料の一部が弾性変形したためである。この被覆部22の弾性変形により、防水フランジ50は、固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)に圧接状態で固定される。
【0048】
〔その他〕
固体絶縁母線2のGIS側端部2Gに形成された作業用開口部26は、絶縁栓7を有する密封フランジ6が取り付けられる。絶縁栓7は、例えば、エポキシ樹脂で構成され、密封フランジ6は、例えば、黄銅で構成される。
【0049】
絶縁栓7は、その外周面が作業用開口部26の内周面に沿っており、一端から他端に向かって先細る円錐台状の傾斜面で構成されている。絶縁栓7の外径は、作業用開口部26の内径よりも若干大きい。そのため、絶縁栓7を作業用開口部26に挿入(圧入)すると、絶縁栓7が作業用開口部26内に圧接状態で固定されることになる。絶縁栓7には、端子21に取り付けられた接続部210と導体引出棒3とを接続するボルト211の近傍、及び密封フランジ6との固定具の近傍に、埋込電極71,72が埋設されている。
【0050】
密封フランジ6と固体絶縁母線2の端面(作業用開口部26の端面)の間には、防水フランジ55が介在される。この防水フランジ55は、固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)とブッシングフランジ42との間に介在される防水フランジ50と同じ構成である。
【0051】
≪固体絶縁母線の接続構造≫
固体絶縁母線の接続構造100は、GISとトランスとを固体絶縁母線2を介して接続するものであり、上述した固体絶縁母線の防水構造1と、導体引出棒3を介して固体絶縁母線2に接続される相手機器110(GIS又はトランス)と、取付フランジ120とを備える。
【0052】
〔相手機器〕
相手機器110は、GIS又はトランスであり、導体引出棒3を介して固体絶縁母線2に接続される接続対象(リード導体等)112と、接続対象112を収容する筐体114とを備える。ブッシング本体部40のうち、ブッシングフランジ42を挟んで挿入領域と反対側の領域が、筐体114内に収容され、導体引出棒3と接続対象112とは、筐体114内で接続される。
【0053】
〔取付フランジ〕
取付フランジ120は、ブッシングフランジ42における相手機器側の面と、相手機器の筐体114との間に介在される。取付フランジ120は、円環状部材である。取付フランジ120は、その外周部が、ブッシングフランジ42の外周部よりもブッシングフランジ42の径方向外方に位置する。取付フランジ120は、例えば、黄銅で構成される。
【0054】
取付フランジ120は、ブッシングフランジ42側の面に形成される凹状のシール溝121aと、相手機器側の面に形成される凹状のシール溝121bとを備える。シール溝121a,121bは、取付フランジ120の厚み方向に重複する位置に設けられており、ブッシングフランジ42の外形に沿って円環状に形成されている。シール溝121aには、取付フランジ120とブッシングフランジ42との間をシールするシール部材122aが嵌め込まれ、シール溝121bには、取付フランジ120と相手機器(筐体114)との間をシールするシール部材122bが嵌め込まれる。シール部材122a,122bは、例えば、ニトリルゴム製のOリングである。
【0055】
取付フランジ120は、表裏面を貫通する貫通孔123を備える。この貫通孔123には、取付フランジ120をブッシングフランジ42に固定するボルト124が貫通する。この貫通孔123は、取付フランジ120をブッシングフランジ42に固定した状態で、ボルト124の頭部が取付フランジ120の表面よりも内側に位置するように形成されている。よって、取付フランジ120をブッシングフランジ42に固定した状態では、取付フランジ120の表面は全面に亘って筐体114の外面と接触することになる。また、貫通孔123は、シール溝121a,121bよりも取付フランジ120の径方向内方に位置する。
【0056】
≪効果≫
上述した固体絶縁母線の防水構造1は、防水部5の防水フランジ50によって、固体絶縁母線2の端面(接続用開口部25の端面)と、ブッシングフランジ42との間から固体絶縁母線2の内部に水が浸入することを防止できる。また、防水フランジ55によって、被覆部22に形成された開口部の端面(作業用開口部26の端面)と、密封フランジ6との間から固体絶縁母線2の内部に水が浸入することも防止できる。よって、上記固体絶縁母線の防水構造1は、屋外等の雨水に曝される環境下でも使用することができる。特に、66kV以上といった高電圧用途であった場合でも、高い防水効果を発揮することができる。よって、上記固体絶縁母線の防水構造1を備えることで、雨水に曝される可能性のある屋外環境下で固体絶縁母線の接続構造100を構築することができる。
【0057】
防水フランジ50は、その外周部が、ブッシングフランジ42の外周部よりもブッシングフランジ42の径方向内方に位置しているため、ブッシングフランジ42にかかった水を防水フランジ50側に導くことができる。また、ブッシングフランジ42は、その外周部が、取付フランジ120の外周部よりも取付フランジ120の径方向内方に位置しているため、取付フランジ120にかかった水をブッシングフランジ42を介して防水フランジ50側に導くことができる。防水フランジ50によって防水でき、防水フランジ50の周辺に水滴が滞留し難いため、防水部5の防水効果を発揮し易い。
【0058】
防水フランジ50及び取付フランジ120は、それぞれブッシングフランジ42にボルト54,124により固定され、ブッシングフランジ42の表裏面には、それぞれボルト54,124がねじ込まれるボルト穴42a,42bが形成される。防水フランジ50側のボルト穴42aが取付フランジ120側のボルト穴42bよりも外方に位置することで、ボルト54をシール部材52よりも外方に配置でき、防水フランジ50をブッシングフランジ42に固定し易く、防水フランジ50と固体絶縁母線2の端面とを圧接することができ、両者50,42間のシール性を効果的に確保できる。また、ボルト穴42bに対向する反対側の面にシール部材52を配置することができると共に、ボルト穴42aに対向する反対側の面にシール部材122aを配置することができ、ブッシングフランジ42の厚み方向の大型化を抑制できると共に、効果的に各部材間のシール性能を確保できる。
【符号の説明】
【0059】
1 固体絶縁母線の防水構造
2 固体絶縁母線
2G GIS側端部
2T トランス側端部
20 導体
21 端子
210 接続部
211 ボルト
22 被覆部
221 内部半導電層
222 絶縁層
223 外部半導電層
25 接続用開口部
26 作業用開口部
3 導体引出棒
4 ブッシング
4G GIS側ブッシング
4T トランス側ブッシング
40 ブッシング本体部
40h 挿通孔
42 ブッシングフランジ
42a,42b ボルト穴
42ae,42be 埋込電極
5 防水部
50,55 防水フランジ
51 シール溝
52 シール部材
53 貫通孔
54 ボルト
6 密封フランジ
7 絶縁栓
71,72 埋込電極
8a 圧入領域
8b 空間領域
100 固体絶縁母線の接続構造
110 相手機器
112 接続対象
114 筐体
120 取付フランジ
121a,121b シール溝
122a,122b シール部材
123 貫通孔
124 ボルト
図1