(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自己位置推定手段と、障害物検出手段とによる各処理は、撮像手段により撮像された同一の画像データ中のそれぞれに対応して設定された範囲内のデータを用いて実行される
ことを特徴とした請求項2記載の電気掃除機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1ないし
図4において、11は自律走行体としての電気掃除機であり、この電気掃除機11は、この電気掃除機11の充電用の基地部となる基地装置としての充電装置(充電台)12とともに自律走行体装置としての電気掃除装置(電気掃除システム)を構成するものである。そして、電気掃除機11は、本実施形態において、走行面としての被掃除面である床面上を自律走行(自走)しつつ床面を掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナ(掃除ロボット)である。この電気掃除機11は、例えば掃除領域内などに配置された中継手段(中継部)としてのホームゲートウェイ(ルータ)14との間で有線通信あるいはWi−Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線通信を用いて通信(送受信)することにより、インターネットなどの(外部)ネットワーク15を介して、データ格納手段(データ格納部)としての汎用のサーバ16や、表示端末(表示部)である汎用の外部装置17などと有線あるいは無線通信可能となっている。
【0011】
そして、この電気掃除機11は、中空状の本体ケース20を備えている。また、この電気掃除機11は、走行部21を備えている。さらに、この電気掃除機11は、塵埃を掃除する掃除部22を備えている。また、この電気掃除機11は、有線、あるいは無線によりネットワーク15を介して通信する情報送信手段としてのデータ通信手段としてのデータ通信部23を備えている。さらに、この電気掃除機11は、画像を撮像する撮像部24を備えている。さらに、この電気掃除機11は、センサ部25を備えている。また、この電気掃除機11は、コントローラである制御手段としての制御部26を備えている。さらに、この電気掃除機11は、画像処理プロセッサ(GPU)である画像処理手段としての画像処理部27を備えている。また、この電気掃除機11は、外部装置との間で信号が入出力される入出力部28を備えている。そして、この電気掃除機11は、給電用の電池である二次電池29を備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向に沿った方向を前後方向(
図2に示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
【0012】
本体ケース20は、例えば合成樹脂などにより形成されている。この本体ケース20は、例えば扁平な円柱状(円盤状)などに形成されていてもよい。また、この本体ケース20には、集塵口である吸込口31などが床面に対向する下部などに設けられていてもよい。
【0013】
走行部21は、駆動部としての駆動輪34を備えている。また、この走行部21は、駆動輪34を駆動させる駆動手段である図示しないモータを備えている。すなわち、電気掃除機11は、駆動輪34と、この駆動輪34を駆動させるモータとを備えている。なお、この走行部21には、旋回用の旋回輪36などを備えていてもよい。
【0014】
駆動輪34は、電気掃除機11(本体ケース20)を床面上で前進方向および後退方向に走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものである。本実施形態では、この駆動輪34は、例えば本体ケース20の左右に一対設けられている。なお、この駆動輪34に代えて、駆動部としての無限軌道などを用いることもできる。
【0015】
モータは、駆動輪34に対応して配置されている。したがって、本実施形態では、このモータは、例えば左右一対設けられている。そして、このモータは、各駆動輪34を独立して駆動させることが可能となっている。
【0016】
掃除部22は、例えば床面や壁面などの被掃除部の塵埃を除去するものである。この掃除部22は、例えば床面上の塵埃を吸込口31から集めて捕集したり、壁面を拭き掃除したりする機能を有している。この掃除部22は、吸込口31から空気とともに塵埃を吸い込む電動送風機40と、吸込口31に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ41およびこの回転ブラシ41を回転駆動させるブラシモータと、本体ケース20の前側などの両側に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き集める旋回清掃部としての補助掃除手段(補助掃除部)であるサイドブラシ43およびこのサイドブラシ43を駆動させるサイドブラシモータとの少なくともいずれかを備えていてもよい。また、この掃除部22は、吸込口31と連通して塵埃を溜める集塵部を備えていてもよい。
【0017】
データ通信部23は、例えばホームゲートウェイ14およびネットワーク15を介して外部装置17と各種情報を送受信するための無線LANデバイスである。なお、例えばデータ通信部23にアクセスポイント機能を搭載し、ホームゲートウェイ14を介さずに外部装置17と直接無線通信をするようにしてもよい。また、例えばデータ通信部23にウェブサーバ機能を付加してもよい。
【0018】
撮像部24は、撮像手段(撮像部本体)としてのカメラ51を備えている。すなわち、電気掃除機11は、カメラ51を備えている。また、この撮像部24は、カメラ51に照明を付与する照明手段(照明部)としてのランプ53を備えていてもよい。すなわち、電気掃除機11は、ランプ53を備えていてもよい。
【0019】
カメラ51は、本体ケース20の走行方向である前方を、それぞれ所定の水平画角(例えば105°など)でデジタルの画像を所定のフレームレートで撮像するデジタルカメラである。このカメラ51は、単数でも複数でもよい。本実施形態では、カメラ51は、左右一対設けられている。すなわち、このカメラ51は、左右に離間されて本体ケース20の前部に配置されている。また、これらカメラ51,51は、互いの撮像範囲(視野)が重なっている。そのため、これらカメラ51,51により撮像される画像は、その撮像領域が左右方向にラップしている。なお、カメラ51により撮像する画像は、例えば可視光領域のカラー画像や白黒画像でもよいし、赤外線画像でもよい。また、カメラ51により撮像した画像は、例えば画像処理部27などにより所定のデータ形式に圧縮することもできる。
【0020】
ランプ53は、カメラ51により画像を撮像する際の照明用の光を出力するものである。このランプ53は、本実施形態では、カメラ51,51の中間位置に配置されている。このランプ53は、カメラ51により撮像する光の波長範囲に応じた光を出力するようになっている。したがって、このランプ53は、可視光領域を含む光を照明してもよいし、赤外光を照明してもよい。
【0021】
センサ部25は、電気掃除機11(本体ケース20)の走行をサポートする各種の情報をセンシングするものである。より具体的に、このセンサ部25は、例えば床面の凹凸状態(段差)や、走行の障害となる壁あるいは障害物などをセンシングするものである。すなわち、このセンサ部25は、例えば赤外線センサや接触センサなどの段差センサ、障害物センサなどを備えている。なお、このセンサ部25は、例えば各駆動輪34(各モータ)の回転数を検出することで電気掃除機11(本体ケース20)の旋回角度や進行距離を検出する光エンコーダなどの回転数センサや、床面の塵埃量を検出する光センサなどの塵埃量センサなどをさらに備えていてもよい。
【0022】
制御部26は、例えば制御手段本体(制御部本体)であるCPUやROMおよびRAMなどを備えるマイコンが用いられる。この制御部26は、図示しないが、走行部21と電気的に接続される走行制御部を備えている。また、この制御部26は、図示しないが、掃除部22と電気的に接続される掃除制御部を備えている。さらに、この制御部26は、図示しないが、センサ部25と電気的に接続されるセンサ接続部を備えている。また、この制御部26は、図示しないが、画像処理部27と電気的に接続される処理接続部を備えている。さらに、この制御部26は、図示しないが、入出力部28と電気的に接続される入出力接続部を備えている。すなわち、この制御部26は、走行部21、掃除部22、センサ部25、画像処理部27および入出力部28と電気的に接続されている。また、この制御部26は、二次電池29と電気的に接続されている。そして、この制御部26は、例えば駆動輪34すなわちモータを駆動して電気掃除機11(本体ケース20)を自律走行させる走行モードと、充電装置12を介して二次電池29を充電する充電モードと、動作待機中の待機モードとを有している。
【0023】
走行制御部は、走行部21のモータの動作を制御する、すなわち、モータに流れる電流の大きさおよび向きを制御することにより、モータを正転、あるいは逆転させることで、モータの動作を制御し、モータの動作を制御することで駆動輪34の動作を制御するものである。
【0024】
掃除制御部は、掃除部22の電動送風機40、ブラシモータおよびサイドブラシモータの動作を制御する、すなわち、電動送風機40、ブラシモータ、および、サイドブラシモータの通電量をそれぞれ別個に制御することで、これら電動送風機40、ブラシモータ(回転ブラシ41)、および、サイドブラシモータ(サイドブラシ43)の動作を制御する。
【0025】
センサ接続部は、センサ部25による検出結果を取得するものである。
【0026】
処理接続部は、画像処理部27による画像処理に基づき設定される設定結果を取得するものである。
【0027】
入出力接続部は、入出力部28を介して制御コマンドを取得するとともに、入出力部28から出力する信号を入出力部28に出力するものである。
【0028】
画像処理部27は、カメラ51により撮像された画像(生画像)を画像処理するものである。より具体的に、この画像処理部27は、カメラ51により撮像された画像の中から画像処理によって特徴点を抽出することで障害物の距離および高さを検出して掃除領域の地図(マップ)を作成したり、電気掃除機11(本体ケース20)の現在位置を推定したりするものである。そして、この画像処理部27は、例えば画像処理手段本体(画像処理部本体)であるCPUやROMおよびRAMなどを備える画像処理エンジンである。この画像処理部27は、図示しないが、カメラ51の動作を制御する撮像制御部を備えている。また、この画像処理部27は、図示しないが、ランプ53の動作を制御する照明制御部を備えている。したがって、この画像処理部27は、撮像部24と電気的に接続されている。さらに、この画像処理部27は、記憶手段(記憶部)としてのメモリ61を備えている。すなわち、電気掃除機11は、メモリ61を備えている。また、この画像処理部27は、カメラ51により撮像された生画像を補正した補正画像を作成する画像補正部62を備えている。すなわち、電気掃除機11は、画像補正部62を備えている。さらに、この画像処理部27は、画像に基づき走行方向側に位置する物体までの距離を算出する距離算出手段としての距離算出部63を備えている。すなわち、電気掃除機11は、距離算出手段としての距離算出部63を備えている。また、この画像処理部27は、距離算出部63によって算出した物体までの距離に基づいて障害物を判定する障害物検出手段としての障害物検出部64を備えている。すなわち、電気掃除機11は、障害物検出手段としての障害物検出部64を備えている。また、この画像処理部27は、電気掃除機11(本体ケース20)の自己位置を推定する自己位置推定手段としての自己位置推定部65を備えている。すなわち、電気掃除機11は、自己位置推定手段としての自己位置推定部65を備えている。さらに、この画像処理部27は、走行場所である掃除領域の地図(マップ)を作成するマッピング手段としてのマッピング部66を備えている。すなわち、電気掃除機11は、マッピング手段としてのマッピング部66を備えている。また、この画像処理部27は、電気掃除機11(本体ケース20)の走行計画(走行ルート)を設定する走行計画設定手段としての走行計画設定部67を備えている。すなわち、電気掃除機11は、走行計画設定手段としての走行計画設定部67を備えている。
【0029】
撮像制御部は、例えばカメラ51のシャッタの動作を制御する制御回路を備え、このシャッタを所定時間毎に動作させることで、所定時間毎にカメラ51により画像を撮像させるように制御する。
【0030】
照明制御部は、例えばスイッチなどを介してランプ53のオンオフを制御している。
【0031】
なお、これら撮像制御部および照明制御部は、画像処理部27とは別個の撮像制御手段として構成してもよいし、例えば制御部26に設けられていてもよい。
【0032】
メモリ61は、例えばカメラ51で撮像した画像のデータや、マッピング部66により作成された地図などの各種データを記憶する。このメモリ61としては、電気掃除機11の電源のオンオフに拘らず記憶した各種データを保持する、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリが用いられる。
【0033】
画像補正部62は、カメラ51により撮像した生画像のレンズの歪み補正やノイズの除去、コントラスト調整、および画像中心の一致化などの一次画像処理をする。
【0034】
距離算出部63は、既知の方法を用いて、カメラ51により撮像した画像、本実施形態では、カメラ51により撮像され画像補正部62によって補正された補正画像と、カメラ51間の距離とに基づいて物体(特徴点)の距離(深度)および三次元座標を計算する。すなわち、この距離算出部63は、
図5に示すように、例えばカメラ51の奥行きf、カメラ51とこのカメラ51により撮像された画像G1,G2の物体(特徴点)との距離(視差)、および、カメラ51間の距離lに基づく三角測量を応用し、カメラ51により撮像した各画像(画像補正部62(
図1)によって処理された補正画像)中から同一位置を示す画素ドットを検出し、この画素ドットの上下方向、左右方向および前後方向の角度を計算して、これら角度とカメラ51間の距離とからその位置のカメラ51からの距離および高さを計算するとともに物体O(特徴点SP)の三次元座標を算出する。したがって、本実施形態において、複数のカメラ51により撮像する画像は、可能な限り範囲が重なって(ラップして)いることが好ましい。なお、この
図1に示す距離算出部63は、この計算した物体の距離を示す距離画像(視差画像)を作成してもよい。この距離画像の作成の際には、計算した各画素ドットの距離を、例えば1ドット毎などの所定ドット毎に明度、あるいは色調などの、視認により識別可能な階調に変換して表示することにより行われる。したがって、この距離画像は、いわば
図2に示す電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向前方のカメラ51によって撮像される範囲内に位置する物体の距離情報(距離データ)の集合体を可視化したものである。なお、特徴点は、
図1に示す画像補正部62により補正された画像や距離画像に対して例えばエッジ検出などを行うことで抽出可能である。エッジ検出方法は、既知の任意の方法を用いることができる。
【0035】
障害物検出部64は、カメラ51により撮像された画像データに基づいて障害物を検出する。より具体的に、この障害物検出部64は、距離算出部63により距離を算出した物体が障害物であるかどうかを判定する。すなわち、この障害物検出部64は、距離算出部63により計算した物体の距離から、所定の画像範囲中の部分を抽出し、この画像範囲中に撮像されている物体の距離を、予め設定された、あるいは可変設定された閾値である設定距離と比較し、この設定距離以下の距離(電気掃除機11(本体ケース20(
図2))からの距離)に位置する物体を障害物であると判定する(Depth処理)。上記の画像範囲は、例えば
図2に示す電気掃除機11(本体ケース20)の上下左右の大きさに応じて設定される。すなわち、画像範囲は、電気掃除機11(本体ケース20)がそのまま直進したときに接触する範囲に上下左右が設定される。この画像範囲は、例えば
図6(a)および
図6(b)に示す画像G1,G2のデータ中の下部寄りの所定範囲A1,A2に設定される。言い換えると、この画像範囲は、電気掃除機11(本体ケース20(
図2))が直進した場合に本体ケース20(
図2)が通過する領域に設定される。より詳細に、この画像範囲は、カメラ51(
図1)により撮像された画像データ中の上下方向の下部で、かつ、幅方向の中央部を中心とした所定範囲A1,A2に設定され、この所定範囲A1,A2内のデータを用いて障害物検出処理が実行される。また、この
図1に示す障害物検出部64は、例えば本実施形態では
図7に示すように、カメラ51(
図1)により撮像された画像G1,G2の1フレーム毎に障害物検出処理(Depth処理DP)を実行する。すなわち、
図1に示す障害物検出部64による障害物検出処理は、略リアルタイムで常時実行される。
【0036】
自己位置推定部65は、距離算出部63により算出した物体の特徴点の三次元座標に基づき、電気掃除機11の自己位置、および、障害物となる物体の有無を判断するものである。また、マッピング部66は、距離算出部63により算出した特徴点の三次元座標に基づき、電気掃除機11(本体ケース20(
図2))が配置された掃除領域内に位置する物体(障害物)などの位置関係および高さを記す地図を作成する。すなわち、自己位置推定部65およびマッピング部66には、既知のSLAM(simultaneous localization and mapping)技術を用いることができる。
【0037】
マッピング部66は、カメラ51によって撮像した画像、自己位置推定部65により推定した電気掃除機11(本体ケース20)の位置、および、障害物検出部64により検出した障害物に基づいて走行場所の地図を作成するものである。具体的に、マッピング部66は、距離算出部63および自己位置推定部65の算出結果、および、障害物検出部64の検出結果に基づいて走行場所の地図を三次元データにより作成するものである。このマッピング部66は、カメラ51により撮像した画像、すなわち距離算出部63により算出された物体の三次元データに基づき、任意の方法を用いて地図ベースを作成するとともに、この地図ベースに対して障害物検出部64で検出した障害物の位置を反映させて走行場所の地図を作成するものである。すなわち、この地図のデータは、三次元データ、すなわち物体の二次元配置位置データおよび高さデータにより構成されている。また、この地図のデータは、掃除の際の電気掃除機11(本体ケース20(
図2))の走行軌跡を記す走行軌跡データをさらに含んでいてもよい。
【0038】
そして、これら自己位置推定部65による自己位置推定処理とマッピング部66による地図ベース作成処理と(これらの処理をまとめてSLAM処理という)は、障害物検出部64による障害物検出処理と同一の画像データを用いて実行される。より詳細に、自己位置推定部65による自己位置推定処理と、マッピング部66による地図ベース作成処理とは、障害物検出部64による障害物検出処理と同一の画像データ中のそれぞれに対応して設定された範囲内のデータを用いて実行される。具体的に、自己位置推定部65による自己位置推定処理と、マッピング部66による地図ベース作成処理とは、
図6(a)および
図6(b)に示す画像G1,G2のデータ中の上部寄りの所定範囲A3,A4内(所定範囲A1,A2と異なる所定範囲)のデータを用いて処理を実行される。本実施形態では、所定範囲A3,A4は、所定範囲A1,A2よりも左右幅が大きく設定されている。また、
図1に示す自己位置推定部65による自己位置推定処理およびマッピング部66による地図ベースの作成処理の実行頻度と、障害物検出部64による処理の実行頻度とは互いに異なっている。より詳細に、障害物検出部64による障害物検出処理の実行頻度が、自己位置推定部65による自己位置推定処理およびマッピング部66による地図ベース作成処理の実行頻度よりも大きく設定されている。本実施形態では、自己位置推定部65による自己位置推定処理およびマッピング部66による地図ベース作成処理は同時に実行される。具体的に、障害物検出部64が、カメラ51により撮像された画像G1,G2の1フレーム毎に障害物検出処理(Depth処理DP)を実行する(
図7)のに対して、自己位置推定部65およびマッピング部66は、複数フレーム毎(本実施形態では例えば3フレーム毎(2フレーム置き))に自己位置推定処理および地図ベース作成処理(SLAM処理SL)を実行する(
図7)。したがって、上記の3つの処理が同時に実行されるタイミング(フレームF1(
図7))と、障害物検出部64による障害物検出処理のみが実行されるタイミング(フレームF2(
図7))とが設定されている。なお、マッピング部66では、障害物検出部64による障害物検出処理と同時に、地図ベースに障害物の位置を反映させる地図作成処理を同時に行ってもよいし、この障害物検出処理とは異なるタイミングで地図作成処理を行ってもよい。
【0039】
走行計画設定部67は、マッピング部66により作成した地図、および、自己位置推定部65により推定した自己位置に基づいて、最適な走行ルートを設定する。ここで、作成する最適な走行ルートとしては、地図中の掃除可能な領域(障害物や段差などの走行不能な領域を除く領域)を最短の走行距離で走行できるルート、例えば電気掃除機11(本体ケース20(
図2))が可能な限り直進する(方向転換が最も少ない)ルート、障害物となる物体への接触が少ないルート、あるいは、同じ箇所を重複して走行する回数が最小となるルートなど、効率的に走行(掃除)を行うことができるルートが設定される。なお、本実施形態において、走行計画設定部67により設定する走行ルートは、メモリ61などに展開されたデータ(走行ルートデータ)をいうものとする。
【0040】
入出力部28は、図示しないリモコンなどの外部装置から送信される制御コマンドや、本体ケース20(
図2)に設けられたスイッチ、あるいはタッチパネルなどの入力手段から入力される制御コマンドを取得するとともに、例えば充電装置12(
図2)などに対して信号を送信するものである。この入出力部28は、例えば充電装置12(
図2)などへと無線信号(赤外線信号)を送信する例えば赤外線発光素子などの図示しない送信手段(送信部)、および、充電装置12(
図2)やリモコンなどからの無線信号(赤外線信号)を受信する例えばフォトトランジスタなどの図示しない受信手段(受信部)などを備えている。
【0041】
二次電池29は、走行部21、掃除部22、データ通信部23、撮像部24、センサ部25、制御部26、画像処理部27、および、入出力部28などに給電するものである。また、この二次電池29は、例えば本体ケース20(
図2)の下部などに露出する接続部としての充電端子71(
図3)と電気的に接続されており、これら充電端子71(
図3)が充電装置12(
図2)側と電気的および機械的に接続されることで、この充電装置12(
図2)を介して充電されるようになっている。
【0042】
図2に示す充電装置12は、例えば定電流回路などの充電回路を内蔵している。また、この充電装置12には、二次電池29(
図1)の充電用の充電用端子73が設けられている。この充電用端子73は、充電回路と電気的に接続されており、充電装置12に帰還した電気掃除機11の充電端子71(
図3)と機械的および電気的に接続されるようになっている。
【0043】
図4に示すホームゲートウェイ14は、アクセスポイントなどとも呼ばれ、建物内に設置され、ネットワーク15に対して例えば有線により接続されている。
【0044】
サーバ16は、ネットワーク15に接続されたコンピュータ(クラウドサーバ)であり、各種データを保存可能である。
【0045】
外部装置17は、建物の内部では例えばホームゲートウェイ14を介してネットワーク15に対して有線あるいは無線通信可能であるとともに、建物の外部ではネットワーク15に対して有線あるいは無線通信可能な、例えばPC(タブレット端末(タブレットPC))やスマートフォン(携帯電話)などの汎用のデバイスである。この外部装置17は、少なくとも画像を表示する表示機能を有している。
【0046】
次に、上記一実施形態の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0047】
一般に、電気掃除装置は、電気掃除機11によって掃除をする掃除作業と、充電装置12によって二次電池29を充電する充電作業とに大別される。充電作業は、充電装置12に内蔵された充電回路を用いる既知の方法が用いられるため、掃除作業についてのみ説明する。また、外部装置17などからの指令に応じてカメラ51により所定の対象物を撮像する撮像作業を別途備えていてもよい。
【0048】
まず、掃除の開始から終了までの概略を説明する。電気掃除機11は、掃除開始を開始すると充電装置12から離脱し、メモリ61に地図が記憶されていない場合にはカメラ51により撮像した画像に基づいてマッピング部66により地図を作成し、この地図に基づいて走行計画設定部67により設定された走行ルートに沿って走行するように制御部26が電気掃除機11(本体ケース20)を制御しながら掃除部22により掃除をする。メモリ61に地図が記憶されている場合には、この地図に基づいて走行計画設定部67により設定された走行ルートに沿って走行するように制御部26が電気掃除機11(本体ケース20)を制御しながら掃除部22により掃除をする。この掃除の最中に、カメラ51により撮像した画像に基づいてマッピング部66により物体の二次元配置位置および高さを検出し、地図に反映させてメモリ61に記憶していく。そして、掃除が終了すると、制御部26が電気掃除機11(本体ケース20)を充電装置12へと帰還させるように走行制御し、充電装置12に帰還した後、所定のタイミングで二次電池29の充電作業に移行する。
【0049】
より詳細に、電気掃除機11は、例えば予め設定された掃除開始時刻となったときや、リモコンまたは外部装置17によって送信された掃除開始の制御コマンドを入出力部28によって受信したときなどのタイミングで、制御部26が待機モードから走行モードに切り換わり、この制御部26(走行制御部)がモータ(駆動輪34)を駆動させ充電装置12から所定距離離脱する。
【0050】
次いで、電気掃除機11は、メモリ61を参照し、メモリ61に地図が記憶されているか否かを判断する。メモリ61に地図が記憶されていない場合には、電気掃除機11(本体ケース20)を走行(例えば旋回)させながら、マッピング部66により、掃除領域の地図を作成し、この地図に基づいて走行計画設定部67により最適な走行ルートを作成する。そして、掃除領域全体の地図を作成すると、後述する掃除モードに移行する。
【0051】
一方、メモリ61に予め地図が記憶されている場合には、地図を作成せず、メモリ61に記憶されている地図に基づいて、走行計画設定部67により最適な走行ルートを作成する。
【0052】
そして、走行計画設定部67により作成した走行ルートに沿って、電気掃除機11は掃除領域内を自律走行しつつ掃除をする(掃除モード)。この掃除モードにおいて、掃除部22では、例えば制御部26(掃除制御部)により駆動された電動送風機40、ブラシモータ(回転ブラシ41)、あるいはサイドブラシモータ(サイドブラシ43)により床面の塵埃を、吸込口31を介して集塵部へと捕集する。
【0053】
自律走行の際には、概略として、電気掃除機11は、掃除部22を動作させながら、走行ルートに沿って進みながらカメラ51により進行方向前方の画像を撮像しつつ、障害物検出部64により障害物となる物体を検出するとともにセンサ部25により周辺をセンシングし、自己位置推定部65によって定期的に自己位置を推定する動作を繰り返していく。このとき、カメラ51により撮像した画像に基づいて、マッピング部66が特徴点の詳細情報(高さデータ)や障害物となる物体を地図に反映させることで地図を完成していく。また、自己位置推定部65による電気掃除機11(本体ケース20)の自己位置の推定により、電気掃除機11(本体ケース20)の走行軌跡データを作成することもできる。
【0054】
このとき、以上説明した一実施形態によれば、本体ケース20の走行中に、自己位置推定部65と、障害物検出部64とによる各処理のいずれかのみを実行するタイミングと、これら処理を全て同時に実行するタイミングとを設定したので、これらの処理を常時同時に実行する場合と比較して、画像処理部27での画像処理の負荷を軽減しつつ、形成した地図に沿って、障害物を検出しながら電気掃除機11(本体ケース20)が自律走行するので、確実に自律走行できる。
【0055】
また、自己位置推定部65と、障害物検出部64とによる各処理は、カメラ51により撮像された同一の画像データを用いて実行されることで、これらの処理それぞれで画像データを取得する必要がなく、画像データの取得が短時間にあるため、より高速な処理が可能になる。
【0056】
具体的に、自己位置推定部65と、障害物検出部64とによる各処理は、カメラ51により撮像された同一の画像データ中のそれぞれに対応して設定された範囲内のデータを用いて実行されることで、同一の画像データの中からそれぞれの画像データの処理範囲を分け、処理に必要なデータの範囲のみのデータを用いることによりデータ数を低減でき、より高速処理が可能となる。
【0057】
より詳細に、自己位置推定部65(およびマッピング部66による地図ベース作成処理)は、カメラ51により撮像された画像データ中の上部寄りのデータを用いて処理を実行することで、例えばテーブルやベッドの脚部、壁、天井、棚、あるいは家具などから特徴点を抽出して処理が可能となり、障害物検出部64は、この画像データ中の下部寄りのデータを用いて処理を実行することで、電気掃除機11(本体ケース20)の大きさに相当する範囲内に走行の障害物となる対象物があるか否かを判断することが可能になる。
【0058】
すなわち、障害物検出部64は、カメラ51により撮像された画像データ中の上下方向の下部で、かつ、幅方向の中央部を中心とした所定範囲A1,A2内のデータを用いて処理を実行することで、前進したときの電気掃除機11(本体ケース20)の大きさに相当する範囲内に走行の障害となる対象物があるか否かを判断するための必要充分な画像データを用いることができ、より高速処理を可能としつつ、走行の障害となる障害物を確実に検出できる。
【0059】
自己位置推定部65による処理の実行頻度と、障害物検出部64による処理の実行頻度とを異ならせることで、それぞれ同じ頻度で同時に実行する場合と比較して、画像処理部27での画像処理の負荷をより軽減できる。
【0060】
具体的に、障害物検出部64による処理の実行頻度を、自己位置推定部65による処理の実行頻度より大きくすることで、走行中の障害になるものを逐次検出する必要がある障害物検出処理を頻繁に実行して障害物を確実に検出して走行しつつ、地図の作成や走行軌跡の把握など処理頻度が比較的低くてもよい処理の頻度を低減して画像処理部27での画像処理の負荷を低減できる。
【0061】
すなわち、充分な実行頻度が必要になる障害物検出部64による障害物検出処理は、毎フレーム実行する一方で、実行頻度が比較的低くてもよい自己位置推定部65による自己位置推定処理およびマッピング部66による地図ベース作成処理は、複数フレーム毎に実行するので、画像処理部27の機能を効果的に用いながら、画像処理の負荷を低減できる。
【0062】
また、自己位置推定部65による自己位置推定処理およびマッピング部66による地図ベース作成処理は、同一の範囲内のデータを用いて実行するので、同時に実行しても画像処理部27による画像処理の負荷が必要以上に大きくなることがない。
【0063】
この結果、高速処理が必要な画像処理部27(プロセッサ)が不要となり、比較的安価な画像処理部27を用いても上記の各処理を実行させることが可能になり、安価な構成で電気掃除機11を実現できる。
【0064】
設定された走行ルートを完走すると、電気掃除機11は、充電装置12に帰還する。そして、この帰還の直後や、帰還から所定時間経過したとき、あるいは所定時刻になったときなど、適宜のタイミングで制御部26が走行モードから充電モードに切り換わって、二次電池29の充電に移行する。
【0065】
なお、完成した地
図Mは、
図8に視覚的に示すように、掃除領域(部屋)が所定の大きさの四角形状(正方形状)などのメッシュに分割され、メッシュ毎に高さデータが関連付けられて記憶されている。物体の高さは、カメラ51により撮像した画像に基づいて距離算出部63により取得される。例えば、
図8に示す地
図Mは、床面に凸段差を生じさせる障害物であるカーペットC、電気掃除機11(本体ケース20)が下部に進入可能な高さを有する障害物であるベッドB、電気掃除機11(本体ケース20)が下部に進入可能な高さを有する障害物であるソファS、走行不可能な障害物である棚R、ベッドBやソファSの障害物である脚部LG、および、掃除領域を囲む走行不可能な障害物である壁Wなどを有している。この地
図Mのデータは、メモリ61だけでなく、データ通信部23を介して、ネットワーク15を経由してサーバ16に送信して記憶したり、外部装置17に送信して外部装置17のメモリに記憶したりすることができる。
【0066】
なお、上記一実施形態において、距離算出部63は、複数(一対)のカメラ51によりそれぞれ撮像した画像を用いて特徴点の三次元座標を算出したが、例えば1つのカメラ51を用い、本体ケース20を移動させながら時分割で撮像した複数の画像を用いて特徴点の三次元座標を算出することもできる。
【0067】
また、自己位置推定部65と、障害物検出部64とによる各処理のいずれかのみを実行するタイミングと、これら処理を全て同時に実行するタイミングとが設定されていれば、そのタイミングは問わない。
【0068】
さらに、自己位置推定部65による自己位置推定処理とマッピング部66による地図ベース作成処理とは同時に限定されず、互いに異なるタイミングで実行されてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。