特許第6814234号(P6814234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814234部位特異的uPAR標的化のための177−Lu標識ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814234
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】部位特異的uPAR標的化のための177−Lu標識ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20201228BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20201228BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20201228BHJP
   A61P 13/08 20060101ALN20201228BHJP
   A61K 47/64 20170101ALN20201228BHJP
   A61K 33/24 20190101ALN20201228BHJP
   A61K 41/00 20200101ALN20201228BHJP
   A61K 47/42 20170101ALN20201228BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   C07K1/13
   !A61P35/00
   !A61P1/00
   !A61P13/08
   !A61K47/64
   !A61K33/24
   !A61K41/00
   !A61K47/42
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-5811(P2019-5811)
(22)【出願日】2019年1月17日
(62)【分割の表示】特願2015-510647(P2015-510647)の分割
【原出願日】2013年5月3日
(65)【公開番号】特開2019-77712(P2019-77712A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】PA201200321
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】61/644,059
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519449725
【氏名又は名称】ティアールティ イノベーションズ エイピーエス
【氏名又は名称原語表記】TRT INNOVATIONS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ケアー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】パーション、モーテン
(72)【発明者】
【氏名】プロウ、ミカエル
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/134274(WO,A1)
【文献】 Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging,2008年,Vol. 35,p. 53-64
【文献】 J. Nucl. Med.,2012年 1月,Vol. 53, No. 1,p. 138-145
【文献】 Nucl. Med. Biol.,2012年 5月,Vol. 39,p. 560-569,Epub 2011 Dec 14
【文献】 J. Nucl. Med.,2004年,Vol. 45, No. 9,p. 1542-1548
【文献】 J. Clin. Oncol.,2012年 4月 1日,Vol. 30, No. 10,p. 1100-1106
【文献】 Nucl. Med. Biol.,2003年,Vol. 30,p. 101-109
【文献】 Cancer Treat. Rev.,2007年,Vol. 33,p. 521-527
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00 − 7/66
A61K 41/00 − 41/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
177−Lu標識uPAR結合ペプチドコンジュゲートであって、以下の式
【化1】

を有する177−Lu標識ペプチドコンジュゲート。
【請求項2】
医薬品としての使用を目的とする、請求項1に記載の177−Lu標識ペプチドコンジュゲート。
【請求項3】
癌の治療における使用を目的とする、請求項1に記載の177−Lu標識ペプチドコンジュゲート。
【請求項4】
結腸直腸癌又は前立腺癌の治療における使用を目的とする、請求項1に記載の177−Lu標識ペプチドコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)の部位特異的標的化のための177−Lu標識ペプチドに関する。より具体的には、本発明は、高uPAR発現に関連する任意の癌疾患の治療に関する。特に、本発明は、177−Lu標識ペプチドの有効量を患者に投与することによる、限定されないが、前立腺癌、乳癌及び結腸直腸癌の治療を目的とする。
【背景技術】
【0002】
治療用放射性核種の部位特異的標的化のために、種々の放射性標識ペプチド組成物が開発され又は開発途中にある。一般原則は、臓器又は組織が治療用放射性同位元素によって処置され得るように、選択された放射性核種を、特定の臓器又は組織に高い特異性を有するペプチドに結合させることを伴う。この研究分野は、腫瘍画像化及び治療に特に適用可能であることが示されている。特に望ましい生物学的部位としては、限定されないが、腹部腫瘍などの神経内分泌腫瘍、並びに小細胞肺癌、脳腫瘍、前立腺腫瘍、乳腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍が挙げられる。
【0003】
DOTA(1,4,7,10−テトラキス(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン)及びその誘導体は、これらが、種々の二価及び三価の金属イオンに非常に安定して適合するために、生物医学的な用途のためのキレート剤の重要な部類を構成している。発展段階にある分野は、診断及び治療腫瘍核医学の種々の分野における、放射性金属との標識化のためのキレート剤コンジュゲート型生理活性ペプチドの使用である。NODAGA及びその誘導体は、生物医学的用途のキレート剤の別の重要な部類を構成している。
【0004】
核種標的化療法のための177Lu標識ペプチドは、神経内分泌腫瘍の治療に成功裏に導入されていて、インテグリン、Her−2、ガストリン放出ペプチド(GRP)、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含む様々な新種の標的が、前臨床モデルで現在評価されている。
【0005】
uPAR PET画像法は、小直鎖DOTA−コンジュゲート型ペプチド、64Cuで放射標識されたDOTA−AE105(Perssonら、2011)及び68Gaで放射性標識化されたDOTA−AE105(Perssonら、2012)を使用して、数種のヒトの癌異種移植モデルで活用されている。
【0006】
悪性腫瘍は、周辺の細胞外マトリックスを分解することが可能であり、局所浸潤又は転移を結果として生じる。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)及びその細胞表面受容体(uPAR)は、インビトロ及びインビボの双方における細胞表面関連プラスミノーゲン活性化についての中心的分子である。多種多様なヒトの癌におけるuPA及びuPARの高発現は、悪性腫瘍の増殖に相関し、かつ予後不良に関連し、このことは、癌の進行及び転移におけるuPA/uPAR系の原因物質としての役割を場合により示唆している。免疫組織化学的方法又はインサイチュ・ハイブリダイゼーションによる研究は、uPA系からの成分の発現レベルは、正常な組織及び良性病巣中では一般的に非常に低いことを示している。uPA/uPAR系は、ビトロネクチンに対する接着受容体として作用することによって、並びにインテグリン機能を調整することによって、細胞−細胞外マトリックス相互作用を調節することに関与することが報告されている。これら特性に基づくと、結果的にuPA/uPAR系は、癌療法に魅力的な標的であると考えられる。
【0007】
特許文献1は、診断用又は治療用に標識付けされたuPAR標識化タンパク質及びペプチドを記載している。このペプチド又はタンパク質は、uPAのuPAR結合部位の残基13〜30を含む、少なくとも38個のアミノ酸残基を含む。
【0008】
特許文献2は、診断的な標識にコンジュゲートされ得るuPAR標的化環式ペプチド化合物を記載している。このペプチドは、uPAのアミノ酸残基20〜30に基づいている。
【0009】
特許文献3はまた、uPARに対して親和性を有する環式ペプチドを目的としている。このペプチドは、検出可能な標識を担持することができる。このペプチドは、結合ユニットによって結合した11個のアミノ酸を含む。
【0010】
非特許文献1は、本明細書に記載されているアミノ酸配列を含むuPAR標的化ペプチドを記載しているが、画像法に関しては記載していない。同様な開示は、特許文献4に提供されている。
【0011】
非特許文献2は、213−Bi標識uPAR結合ペプチドコンジュゲートを開示していて、このペプチドは、DOTAによって213−Biに結合されている。このペプチドは、癌の治療に使用される。
【0012】
非特許文献3は、177−Luなどの放射活性金属が、放射線免疫療法における使用に、抗体を標識付けするために使用されることを開示している。この文献は、放射活性金属が、金属キレート剤によって、uPAR結合ペプチドなどの官能性結合剤にコンジュゲートされ得ることを更に記載している。
【0013】
非特許文献4は、放射性金属キレート剤DOTAを介して177−Luで放射性標識付けされている、インテグリン受容体に結合するよう操作されたシステインノットペプチド、並びにインテグリン陽性腫瘍の放射線療法へのかかるペプチドの使用を開示している。
【0014】
特許文献5は、177−LuにコンジュゲートされたuPARに結合する配位子の使用による、癌幹細胞を殺す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第01/25410号
【特許文献2】米国特許第6,277,818号明細書
【特許文献3】米国特許第6,514,710号明細書
【特許文献4】米国特許第7,026,282号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/134274A2号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】プロウグ(Ploug)ら著、バイオケミストリー(Biochemistry)2001年、第40巻、12457−12168頁
【非特許文献2】ダダコバ(DADACHOVA),E.「α放射体標識ペプチドによる癌治療法(Cancer Therapy with Alpha−Emitters Labeled Peptides)」、セミナース・イン・ニュークリア・メディスン(Seminars In Nuclear Medicine)(2010年)、第40巻、第3号、204−208頁
【非特許文献3】グハ(GUHA),A/C.ら「腫瘍生物学に誘導された放射線療法治療計画:腫瘡容積対機能性腫瘍容積(Tumor Biology−Guided Radiotherapy Treatment Planning:Gross Tumor Volume Versus Functional Tumor Volume)」、セミナース・イン・ニュークリア・メディスン(Seminars In Nuclear Medicine)(2008年)、第38巻、第2号、105−113頁
【非特許文献4】ジアング(JIANG)L.ら「インテグリン受容体標的化放射性核種療法のための(177)Lu標識ノッティンペプチドの予備評価(Preliminary evaluation of (177)Lu−labeled knottin peptides for integrin receptor−targeted radionuclide therapy)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュークリア・メディスン・アンド・モルキュラー・イメージング(Eur.J.Nuci.Med.Mol.Imaging)(2011年)、第38巻、第4号、13−22頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特定のコンジュゲート系内で特定の放射性核種を選択することは、化学的及び生理学的不確実性のために簡単ではない。例えば、213−Biはα放射体であり、したがって、β放射体である177−Luから臨床的に遠隔にあるために、213−Biを177−Luで置き換えることは理解し難い。
【0018】
uPARの効率的な標的化は、化学的に強靭かつ安定である選択的な高親和性ベクターを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、uPARに対する高親和性、細胞結合系における高い効力、及び立証された生物学的安定性を有する177−Lu標識ペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、高uPAR発現に関連する癌疾患の治療に関する。特に、本発明は、患者に177−Lu標識ペプチドの有効量を投与することによる、限定されないが、前立腺癌、乳癌及び結腸直腸癌の治療を目的とする。
【0020】
第1の態様では、本発明は、177−Lu標識uPAR結合ペプチドコンジュゲートに関し、このペプチドは、キレート剤によって、177−Luに結合する。
好ましい実施形態では、本発明は、177−Lu標識ペプチドコンジュゲートに関し、このペプチドは、キレート剤によって177−Luに結合し、前記ペプチドは、以下からなる群から選択される:
(D−Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(Ser)−(Leu)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(Gln)−(Tyr)(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(D−Glu)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Tyr)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−Leu)−(Trp)−(Ser)、
(D−Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−Leu)−(Trp)−(Ser)、
(D−Thr)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(D−Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−([ベータ]−2−ナフチル−L−アラニン)−(Ser)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(Arg)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−([ベータ]−1−ナフチル−L−アラニン)−(Ser)、
(D−Glu)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(Tyr)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Leu)−(Leu)−(Trp)−(D−His)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Leu)−(Trp)−(Ile)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)([ベータ]−1−ナフチル−L−アラニン)−(D−His)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(N−(2,3−ジメトキシベンジル)グリシン)−(D−Phe)−(N−(3−インドリルエチル)グリシン)−(N−(2−メトキシエチル)グリシン)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(N−(2,3−ジメトキシベンジル)グリシン)−(D−Phe)−(N−ベンジルグリシン)−(N−(2−[ベータ]トキシエチル)グリシン)、
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(N−(2,3−ジメトキシベンジル)グリシン)−(D−Phe)−(N−(メチルナフタリル)グリシン)−(N−(2−メトキシエチルグリシン)、及び
(Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(N−(2,3−ジメトキシベンジル)グリシン)−(D−Phe)−(N−(2,3−ジメトキシベンジル)グリシン)−(Ile)。
【0021】
好ましくは、キレート剤は、DOTA、NOTA、NODAGA又はCB−TE2Aであり、好ましくは、ペプチドは(D−Asp)−([ベータ]−シクロヘキシル−L−アラニン)−(Phe)−(D−Ser)−(D−Arg)−(Tyr)−(Leu)−(Trp)−(Ser)である。
【0022】
特に好ましいものは、以下の式
【0023】
【化1】
【0024】
を有する177−Lu標識ペプチドコンジュゲートである。
他の態様では、本発明は、医薬品として使用するための上記で定義した177−Lu標識ペプチドに関し、癌、特に、限定されるものではないが、前立腺癌、乳癌及び結腸直腸癌の治療用の医薬品の製造のための上記177−Lu標識ペプチドの使用に関し、並びに本発明の177−Lu標識ペプチドを含む医薬組成物に関する。類似の治療法も本発明により包含される。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の177−Lu標識ペプチドがインビボで安定であり、腫瘍内で細胞毒性効果を誘導することができるが、周辺の組織内では誘導しないことを見出した。したがって、本発明の177−Lu標識ペプチドは、小さな腫瘍病巣及び/又は播種性転移性疾患の治療に最適な放射性核種を構成する。本発明の177−Lu標識ペプチドは、ヒト結腸直腸癌モデルにおけるuPAR陽性癌細胞、特に、最も攻撃的な(転移性の)細胞を特異的に標的とする。
【0026】
更には、本発明のペプチドは、PET画像法を使用して、uPARの発現レベルの非侵襲的検出及び定量化に使用することが可能である。177−標識ペプチドを使用して、更にSPECT画像法も可能である。したがって、本発明の177−Lu標識ペプチドによる全身的な放射線療法は、uPAR PET画像法を用いて特定されたuPAR発現の高レベルを確認されている癌患者において、新しい治療法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、177Lu−DOTA−AE105の化学構造、並びにHT−29腫瘍異種移植片担持ヌードマウスの選択された臓器及び原発腫瘍病巣内の177Lu−DOTA−AE105の生体分布を示す。
図2図2は、ヌードマウス体内のHT−29腫瘍異種移植片のPET/CT及びガンマ線平面撮像と、これと共に比較のために定量的腫瘍取り込みデータを示す。
図3図3は、2×20MBqの177Lu−DOTA−AE105、対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut、又は溶媒対照のいずれかを投与された動物体内の平均腫瘍体積及びuPAR発現レベルを示す。
図4図4は、177Lu−DOTA−AE105の治療の有効性についての予測因子としての18F−FLT PETの使用を示す。
図5図5は、試験中の各マウスの体重に従って、並びに腎臓のH&E染色を使用して評価された、177Lu−DOTA−AE105、対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut、又は溶媒対照を投与された動物における毒性を示す。
図6図6は、18F−FLT PET/CT試験からの生データを示す。
図7図7は、切除したHT−29腫瘍のuPAR免疫組織化学染色を示す。
図8図8は、「uPARセラノスティック(theranostic)ペア」の化学構造及び播種性−転移性前立腺癌試験における実験セットアップの図を示す。
図9図9は、播種性−転移性前立腺癌試験における試験2日〜30日に発生した転移性病巣の総数の代表的生物発光画像及び定量分析を示す。
図10図10は、播種性−転移性前立腺癌試験における無遠隔転移生存率を示す。
図11図11は、小さい転移性病巣の同定のためのuPAR PET撮像を示す。
図12図12は、播種性−転移性前立腺癌試験中の各マウスの体重のモニタリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
驚くべきことに、非修飾カルボキシ末端アミノ酸を有する本発明の放射性標識ペプチドは、カルボキシ末端アミノ酸でカルボン酸を除去するように特異的に修飾された対応する放射性標識ペプチドと比べると、改善されたインビボ特性を呈する。特に、本発明の放射性標識ペプチドは、改善された血液及び肝臓クリアランス並びに改善された生物学的部位取り込み及び保持時間を示す。
【0029】
本発明の放射性医薬品における使用のために選択されたペプチドは、キレート剤をペプチドに結合させることによって、放射性標識化される。このキレート剤は、選択された放射性核種をそれに結合させることができる。キレート剤及び放射性核種は、ペプチドの結合特性又は特異性に干渉しない、又はこれらに悪影響を及ぼさない方法で、ペプチドに結合する。ペプチドを放射性標識化するための種々のキレート剤の使用は、当該技術分野において周知である。好適なキレート剤として、一般的には、既知のNS及びN配位子などの、金属放射性核種に結合するために利用可能な少なくとも1つのイオウ基を有する四配座配位子を含有するものが挙げられる。より具体的には、本発明のペプチドと共に使用され得るキレート剤としては、2,3−ビス(メルカプトアセトアミド)プロパノエート(米国特許第4,444,690号明細書)、S−ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(米国特許第4,861,869号明細書)、DTPA及びEDTA並びにこれらの誘導体などの二環式二無水物(米国特許第4,479,930号明細書)、キレート形成動態を増強するためにアミノ基を含有するNSキレート化合物(米国特許第5,310,536号明細書)、米国特許第4,965,392号明細書に記載されているNキレート化合物、米国特許第5,120,526号明細書に記載されているNSキレート化合物、並びに米国特許第5,175,257号明細書に記載されている切断可能なリンカーを含有するNキレート化合物が挙げられる。キレート剤は、本発明の分野において既知の標準的な手法によって、ペプチドに結合され、ペプチドの生物学的活性に悪影響を及ぼすことがない条件で、ペプチド上の任意の位置で付加されてもよい。好ましくは、キレート基は、ペプチドのアミノ末端アミノ酸に共有結合する。キレート基は、固相ペプチド合成中にペプチドに有効に連結されることができるか、又はペプチドが得られた後に、溶液相化学によって付加されることができる。好ましいキレート基としては、DOTA、NOTA、NODAGA又はCB−TE2Aが挙げられる。
【0030】
本発明で使用されるペプチドの合成に関しては、米国特許第7,026,282号明細書を参照することができる。
本発明のペプチド/キレートコンジュゲートは、このコンジュゲートを177−Lu放射性核種に、例えば、好ましくは水溶性の金属塩として、反応させることによって、標識化される。この反応は、当該技術分野において既知の方法によって行われる。
【0031】
好ましくは、本発明の放射性医薬組成物は、キットで提供され、そこには、放射性核種が1つのバイアル内に提供され、ペプチド/キレート基コンジュゲートが第2のバイアル内に提供され、内容物が、投与の直前に混合される。混合物は、完全な標識をもたらすために必要に応じて加熱されてもよい。かかるキット形態内の放射性標識複合体の供給及び最終放射性標識製品の調製は、核医学の分野においては標準的かつ日常的である。最終放射医薬製品は、高い放射化学純度であるべきであり、当該技術分野において既知の標準プロトコールによって決定されるように、好ましくは95%を超え、少なくとも90%を超えるべきである。
【0032】
放射性標識複合体は、標準放射性医薬品線量決定に従って、個体に対して、動物では約1〜100MBqの間の、好ましくは約20MBqの、ヒトでは約2〜20GBqの間の、好ましくは約7.4GBqの放射能線量を提供するよう調製される。本明細書で使用するとき、「診断的有効量」とは、シンチグラフィー手段によりその検出を可能にするのに十分な放射性医薬品の量を意味し、「治療的有効量」とは、標的とされた生物学的部位において治療処置に影響を及ぼすのに十分な量を意味する。放射性標識ペプチドは、静脈内注射についての任意の従来の媒質中で静脈内投与され得る。生物学的部位の画像撮影は、注射後約2〜5分以内で行うことができるが、注射の数時間後に行われてもよい。診断目的のための任意の従来の画像撮影法が利用されてもよい。
【0033】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を記載している。本明細書の特許請求の範囲内の他の実施形態は、明細書又は本明細書に開示されている本発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかになるであろう。
【0034】
<実施例>
図1は、177Lu−DOTA−AE105の化学構造並びにHT−29腫瘍異種移植片担持ヌードマウス中の選択された臓器及び原発腫瘍病巣内の177Lu−DOTA−AE105の生体分布を示している。マウスを、注射後0.5、1.0、2.0、4.0及び24.0時間に屠殺し、心臓から引き出された血液を含む、臓器のパネルを回収し、秤量し、放射能含量について分析した。各ポイントで3匹のマウスから得たグラム当たりの注入線量の平均パーセンテージ(%ID/g)±SEMが提示される。A:177Lu−DOTA−AE105の化学構造である。B(上図):0.5時間〜24.0時間の間の選択された臓器/組織中の177Lu−DOTA−AE105の生体分布である。B(下図):0.5時間〜4.0時間の間の選択された臓器/組織中の177Lu−DOTA−AE105の生体分布についての初期の時点の増加した時間分解能を示している。
【0035】
図2は、比較のために定量的腫瘍取込データと共に、ヌードマウス体内のHT−29腫瘍異種移植片のPET/CT及びガンマ線平面撮像を示している。PET/CT撮像については、1匹のマウスに64Cu−DOTA−AE105を注射し、注射後1時間でスキャンした。ガンマ線平面撮像は、177Lu−DOTA−AE105の注射後1時間に、別のマウスで行った。定量的データは、PET/CTデータに関する関心領域のマニュアル描画に基づき、平面データについてガンマカウンターを使用して分析された全腫瘍組織から得た。A:HT−29腫瘍異種移植片のPET/CT(左側)及びガンマ線平面(左側)撮像後の代表的な画像である。白い矢印は、腫瘍異種移植片を示している。B:0.86±0.03%のID/g及び0.61±0.15%のID/gの腫瘍体積取り込みが、64Cu−DOTA−AE105(PET)及び177Lu−DOTA−AE105(ガンマ線)について認められた。定量的腫瘍取り込みは、3匹の動物を基準として、%ID/g±SEMで表わされる。
【0036】
図3は、2×20MBqの177Lu−DOTA−AE105、対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut又は溶媒対照のいずれかを投与した動物における平均腫瘍体積及びuPAR発現レベルを示している。A:対照群と比較して、腫瘍体積に及ぼす177Lu−DOTA−AE105の有意な効果が、6日(p<0.05)及び8日(p<0.01)に認められた。試験終了時の14日では、腫瘍体積における有意差は認められなかった。平均腫瘍体積を、CT画像上の腫瘍病巣のマニュアル描画によって計算した。結果は、平均±SEM、n=12 腫瘍/群で表わしている。B:全腫瘍抽出物でのELISAを使用して、uPAR発現レベルを、試験終了の14日に決定した。対照群と比較して、有意に低下したuPARレベルが、177Lu−DOTA−AE105を投与した動物の群で認められた(p<0.05)。溶媒群と対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut群との間では、差が認められなかった。
【0037】
図4は、177Lu−DOTA−AE105治療の有効性についての予測因子としての18F−FLT PETの使用を示している。177Lu−DOTA−AE105を投与された動物の群中の全てのマウスを、18F−FLTで、試験0日と6日にPET/CTスキャンした。A:6日対0日の18F−FLTの平均腫瘍取り込みの間の差と、0日〜14日までの腫瘍体積における差との間の有意な相関は、14日の最終腫瘍体積を6日〜0日の間の腫瘍取り込みにおける差に基づいて予測する18F−FLT PETの可能性を例証している。各点は、単一の腫瘍を表す。B:0日(左側)及び6日(右側)に18F−FLTの注射後1時間のHT−29腫瘍異種移植片を担持するヌードマウスの代表的PET/CT画像(アキシャル像、上部)、(サジタル像、下部)である。白い矢印は、腫瘍病巣を示している。
【0038】
図5は、試験中の各マウスの体重に従って、並びに腎臓でのH&E染色を使用して評価された、177Lu−DOTA−AE105、対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut又は溶媒対照を投与した動物における毒性を示している。A:各処置群の間で、平均体重における有意差は観察されなかった。結果は、平均±SEM、n=6 動物/群で表わしている。B:腎臓部分のH&E染色は、各処置群から得た腎臓上皮(上部)及び腎糸球体(下部)を表している。腎臓の組織病理学試験は、いずれの処置群においても、肉眼的形態変化がないことを明らかにした。1匹の動物/群から一対の腎臓を染色した。棒目盛り=25μm、40倍拡大。
【0039】
図6は、18FLT−PET/CT試験からの生データを示している。A/B:非結合対照ペプチド177Lu−DOTA−AE105mut(A)及び溶媒(B)でそれぞれ投与されたマウスの群における、0日と6日の腫瘍の18F−FLT取り込みにおける差と、14日の腫瘍サイズとの間の相関である。C:0、1、3及び6日の腫瘍の18F−FLT取り込みの平均群値である。いずれの群間でも有意差は認められなかった。結果は、平均±SEMとして表した。
【0040】
図7は、切除されたHT−29腫瘍におけるuPAR免疫組織化学染色を示している。各処置群から2つの腫瘍(1匹のマウス)を切除し、uPARについて染色した。群間で染色強度における有意差は認められなかった。全ての切除した腫瘍は、腫瘍の周辺部で主としてuPAR陽性染色を有し、既に発表された観察[25]と一致した。棒目盛り=50μm、20倍の拡大。
【0041】
図8は、A)「uPARセラノスティックペア」、64CU−DOTA−AE105(PET診断薬)及び177Lu−DOTA−AE105(治療薬)の化学構造を示している。AE105は、アミノ酸配列:Asp−Cha−Phe−ser−arg−Tyr−Leu−Trp−Serを有する9merペプチドであり、この残基は、uPARとの相互作用についてのホットスポットである。Chaは、非天然アミノ酸シクロヘキシル−(L)−アラニンである。ser及びargは、双方ともにD−配置で存在する。B)試験の実験セットアップの図である。合計で36匹のマウスが、最初の投与前14日と1日に、心内注射によって、uPAR陽性で、ルシフェラーゼでトランスフェクトされたヒト前立腺癌細胞系PC−3M.Lucを接種された。12匹マウスの3つの群で、最初の投与が行われる14日前及び1日前に、6匹が接種された。各群は、およそ1週間の間隔で、およそ18Mbq/投与又は溶媒を3回投与された。スキャン前10分にルシフェリンを注射することによって、生物発光撮像法(光学的撮像)を用いて、転移性病巣の腫瘍負荷/数を監視した。uPAR PETの転移性病巣を同定するための可能性を例証するために、試験日31日に、64CU−DOTA−AE105を用いてuPAR PETスキャンを、各処置群から1匹のマウスで行った。
【0042】
図9は、A)試験での処置の各群についての代表的生物発光画像を示している。uPAR標的化放射性核種治療薬(177Lu−DOTA−AE105)を投与されたマウスの群と比較して、転移病巣の数の増加が、2つの対照群で観察された。B)試験日2日〜30日で発生した転移性病巣の総数の定量的分析であり、この観察と一致した。一元配置ANOVA法を用いて、2つの対照群と比較して、転移性病巣の数における有意な減少が、177Lu−DOTA−AE105群で認められた(p=0.0193、N=12/群)。
【0043】
図10は、無遠隔転移生存率を示している。最初の転移性病巣(心臓を除く)までの時間を分析することによって、無遠隔転移生存の延長の明確な傾向が、uPAR処置群(177Lu−DOTA−AE105)について認められた。177Lu−DOTA−AE105)を投与されたマウスの65%において、最初の投与後64日で、遠隔転移は存在しなかった。同様な観察は、177Lu−DOTA−AE105mut(対照)及び溶媒対照群のそれぞれの24%及び33%のみに見られた。黒い矢印は、投与日を示している。
【0044】
図11は、小さい転移性病巣の同定のためのuPAR PET撮像法を示している。64CU−DOTA−AE105を用いるuPAR PETは、高コントラストで、各マウス体内の各腫瘍病巣を同定することができ、uPAR PETと対応する生物発光撮像法との間の明確な相関性が観察された。このことは、この新しい「uPARセラノスティックペア」の診断薬及び治療薬の双方についての能力を例証している。uPAR PETは、尾静脈中の約5MBqの64Cu−DOTA−AE105の静脈内注射、その後の注射後22時間のスキャンによって行われた。
【0045】
図12は、いずれかの処置誘発毒性を検討するために、試験全体にわたる、各マウスの体重のモニタリングを示している。各処置群中の全てのマウスの平均体重間の有意差は、最初の投与後37日間にわたって観察されず、このことは、177Lu−DOTA−AE105の1週間間隔の約18MBqの3回の投与は、忍容性良好であることを示唆している。黒い矢印は、投与日を示している。
【0046】
全ての化学物質は、特記しない限り、シグマアルドリッチデンマーク A/S社(Sigma−Aldrich Denmark A/S)から購入した。177Luは、パーキンエルマー社(PerkinElmer)(ボストン(マサチューセッツ州)、米国)から購入した。全ての溶液は、超純水(<0.07 μシーメンス/cm)を使用して作成した。逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、Waters 2489UV/可視検出器(ウォーターズコーポレーション(Waters Cooperation)、ミルフォード(マサチューセッツ州)、米国)及びCaroll Ramsey Assosiates 105 S−1放射活性検出器(カリフォルニア州、バークレー、米国)を装備したWaters Alliance 2795 Separationsモジュールで実施した。RP−HPLCカラムは、Luna C18、HST、50×2mm、2.5μm(フェノメネックス社(Phenomenex)、カリフォルニア州、トーランス、米国)であった。移動相は、5%(v/v)のアセトニトリル/0.1%(v/v)のTFAを含む95%(v/v)の水及び95%(v/v)アセトニトリル/0.1%(v/v)のTFAを含む5%(v/v)の水であった。TLCを、ベータ−検出器を装備したRaytest MiniGita Star(シュトラウベンハルト(Straubenhardt)、ドイツ)TLC−スキャナーで実施した。TLC溶出液は、50%(v/v)のメタノール水溶液中の酢酸アンモニウム(0.65M)であり、TLCプレートは、アルミニウムフォイル上のSilica60(シグマアルドリッチデンマーク A/S(Sigma−Aldrich Denmark A/S))であった。
【0047】
組換えヒトuPARは、記載されたように生成し、精製した[29、30]。ポリクローナルウサギ抗−uPAR抗体は、チャイニーズハムスター卵巣細胞中で発現された精製された組換えuPARを抗原として使用して[31]、社内で調製した。2−(4,7,10−トリス(2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1−イル)−酢酸(DOTA−トリス(tBu)エステルは、ケマテック社(CheMatech)(ディジョン、フランス)から購入した。18F−FLTは、生成し、患者でこのトレーサを使用することの認定を受けたコペンハーゲン大学病院(Copenhagen University Hospital)、核医学&PET部門(Department of Nuclear Medicine & PET)における生産物から得た。
【0048】
<ペプチド合成及び放射性標識化>
以前に記載されているような、2つの9−merDOTAコンジュゲートペプチド、すなわち、DOTA−AE105(DOTA−Asp−Cha−Phe−(D)Ser−(D)Arg−Tyr−Leu−Trp−Ser−CONH)(図1A)及びDOTA−AE105mut(DOTA−Asp−Cha−Glu−(D)Ser−(D)Arg−Tyr−Leu−Glu−Ser−CONH)(図1A)を使用した[25]。64CUによるDOTA−AE105の放射性標識化は、以前に報告されているように行った[25]。177LuによるDOTA−AE105及びDOTA−AE105mutの放射性標識化は、177LuCl(0.05MのHCl中の水溶液、25μl 約500MBq)を、0.05MのHCl水溶液(450μl)中、ペプチド(4.65ナノモル)及びアスコルビン酸ナトリウム(56mg、0.28ミリモル)を含有する溶液に添加することによって行った。この混合物を、80℃で60分間加熱し、その後、周囲温度に到達させた。この混合物をC18 SepPakカートリッジを通過させて、非標識Lu3+を、水(5ml)で溶出させた。放射性標識ペプチドを、0.5mLのエタノールで最終的に溶出させ、注射できるように、エタノール濃度が5%未満になるように水で希釈した。放射化学純度を、RP−HPLCで決定し、非標識177Lu3+の量を、薄層クロマトグラフィで決定した。この合成は、典型的には、300MBqの放射性標識ペプチドを、95〜97%の放射化学純度で産生した。非標識Lu3+の量は、最終生成物で1%未満であった。
【0049】
<細胞系及び動物モデル>
皮下結腸直腸癌異種移植モデル
HT−29結腸直腸癌細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culrure Collection(バージニア州、マナサス、米国)から入手し、培養培地は、インビトロジェン社(Invitrogen Co.)(カリフォルニア州、カールスバッド、米国)から入手した。細胞系を、10%(v/v)のウシ胎児血清及び1%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシンを補足したマッコイの(Mc.Coy’s)標準培地で、37℃及び5%のCOで培養した。ヒトHT−29結腸直腸癌細胞の異種移植片を100μlのマトリゲル(Matrigel)(BD バイオサイエンス(BD Biosciences)、カリフォルニア州、サンノゼ、米国)中に懸濁させた200μlの細胞(1×10細胞/ml)を、ヒプノルム(Hypnorm)/ドリクム(doricum)による麻酔下で、タコニック社(Taconic)から得た雌NMRIヌードマウスの左右の側腹部に皮下注射することによって構築した(試験日−3日)。全ての動物実験は、デンマーク法務省実験動物研究委員会(Animal Research Committee of the Danish Ministry of Justice)によって承認されたプロトコールの下で実施された。
【0050】
<播種性前立腺癌モデル>
ヒト前立腺癌細胞でトランスフェクトされたPC−3M.Lucルシフェラーゼは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culrure Collection(バージニア州、マナサス、米国)から入手し、培養培地は、インビトロジェン社(Invitrogen Co.)(カリフォルニア州、カールスバッド、米国)から入手した。細胞系を、10%(v/v)のウシ胎児血清及び1%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシンを補足したMEMS標準培地で、37℃及び5%のCOで培養した。
【0051】
心内播種性モデルを、20μlの細胞(10細胞/ml)を、ヒプノルム(Hypnorm)/ドリクム(doricum)による麻酔下で、タコニック社(Taconic)から得た雄NMRIヌードマウスの左心室に注射することによって構築した(試験日−14日及び−1日)。全ての動物実験は、デンマーク法務省実験動物研究委員会(Animal Research Committee of the Danish Ministry of Justice)によって承認されたプロトコールの下で実施された。
【0052】
<放射性核種療法試験>
皮下結腸直腸癌異種移植モデル
腫瘍細胞接種(試験0日)後3日目に、それぞれの側腹部でヒト結腸直腸癌異種移植片HT−29を担持する18匹のヌードマウスを、それぞれ6匹の動物からなる3つの群に無作為に分けた。20MBqの177Lu−DOTA−AE105、177Lu−DOTA−AE105mut又は溶媒のいずれかを投与する前に、各群の全ての動物に対し、18F−FLTで最初のベースラインPET/CTスキャンを行った(0日)。その後、試験1、3及び6日に、各群中の全てのマウスの18F−FLTによるPET/CTスキャンを繰り返した。第2の処置線量(20MBq)を、7日に投与し、その後、8、10及び14日にCTスキャンを行い、再構築画像上のマニュアルROI描画を使用して、腫瘍体積を測定した。14日目に、全ての動物を安楽死させて、腫瘍及び腎臓を採集し、更なる分析のために−80℃で保持した。
【0053】
<播種性前立腺癌モデル>
全てのマウスを3群に分け、0、7及び14日に、セボフルラン麻酔中に、177Lu−DOTA−AE105(18.3±1.1MBq)、177Lu−DOTA−AE105mut(17.9±3.1MBq)又は溶媒のいずれかを、尾静脈内注射によって投与した。試験期間中に、全ての動物を週に二回秤量し、食物/水を自由に摂取させた。週に一回、生物発光撮像法(BLI)を使用して、腫瘍病巣の数を推定した。BLIについては、マウスに、D−ルシフェリン(150mg/kg体重)を腹腔内注射した。IVIS 100(Caliper/Xenogen)を使用して、画像を収集した。D−ルシフェリンの注入後10分で画像が取得され、病巣の総数を計算した。病巣は、バックグラウンドの2倍高いフラックス(ps−1)として定義された。心臓(注入部位)内のいかなる病巣も、これが実際の転移性病巣の反映ではないために、この試験には含まれなかった。
【0054】
<MicroPET/CT撮像>
10分間の静態PETスキャンを、セボフラン麻酔中に、約10MBqの64Cu−DOTA−AE105又は18F−FLTのいずれかの静脈内注射の1時間後に、microPET Focus 120スキャナー(シーメンスメディカルソルーションズ社(Siemens Medical Solutions)、ペンシルバニア州マルバーン)で獲得した。全てのPET/CT設定は、以前に詳細に記載されているものを用いた[25]。全ての結果を、Inveonソフトウェア(シーメンスメディカルソルーションズ社(Semens Medical Solutions))を用いて解析し、PETデータを組織1グラム当たりの注入線量のパーセント(%ID/g)として表し、これと共に、CT−データを、立方ミリメートル(mm)で表わした。
【0055】
<ガンマ線平面撮像>
1匹のマウス(処置試験プロトコールに登録されていない)に、177Lu−DOTA−AE105(20MBq、200μLのPBS)を静脈内注射し、注射後1時間で屠殺した。16mm(5/8インチ)のNaI(TI)結晶を有するMillenium VG(ジェネラルエレクトリック社(General Electric)、ハイファ イスラエル)を用いて、ガンマカメラによる静態画像を作成した。画像は、4.0のズーム倍率で、256×256の行列で24時間にわたって獲得され、エネルギー窓は、113±10%及び208±10%keVに設定した。
【0056】
<生体分布試験>
生体分布試験を、以前に記載された通りに実施した[25]。簡単に言うと、HT−29異種移植片を担持するヌードマウスに、2〜3MBqの177Lu−DOTA−AE105又は177Lu−DOTA−AE105mutを尾静脈内に注射した。トレーサ注入後0.5、1、2、4及び24時間に、全てのマウスを安楽死させた。血液、腫瘍及び主要な臓器を採集し(湿重量で)、パーキンエルマー社((Perkin Elmer)、マサチューセッツ州、米国)から入手したγカウンタを使用して、放射能を測定した(N=4匹のマウス/群)。
【0057】
<線量測定>
線量計算用に、組織1グラム当たりの滞留時間を得るために、臓器取り込み値を時間積分した。0時間〜24時間の間の積分は、トラペゾイド法によって行われた。全ての時間ポイントを二重指数関数(2−コンパートメントモデル)に適合するよう使用し、これは、24時間から無限大までの滞留時間を推定するために使用された。全ての臓器/組織における推定面積は、腎臓(36.1%)及び脾臓(30.0%)を除いて、計算された総面積の<17%であった。177Luの放射性崩壊は、主として低エネルギーβ粒子を生じる。以前に記載されている通りに、1gの球体についてのS値(0.0233mGy/MBq s)を、それを臓器滞留値に掛けることによって、臓器線量を計算するために用いた[20]。
【0058】
<切除されたHT−29腫瘍におけるuPAR発現の定量化及び可視化>
以前詳細に記載された通りに、uPAR ELISAを切除されたHT−29腫瘍で行った[25]。全ての結果は、2回の測定で実施した。ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織中のuPARの発現を、以前に発表された通りに、免疫組織化学染色によって評価した(図7)[25]。一般組織病理学的検査を、H&Eで染色された腎臓組織(各処置群からの1匹の動物から得た一対の腎臓)で実施し、これは訓練された病理医(ODL)によって行われた。
【0059】
<統計解析>
全ての定量的データは、平均±SEM(平均値の標準誤差)として表され、平均値は、一元配置ANOVA法を用いて比較される。相関統計は、線形回帰分析を用いて行われた。≦0.05のp値を統計的に有意とみなした。
【0060】
177Lu−DOTA−AE105の生体分布及び特異性>
結腸直腸HT−29腫瘍担持動物における177Lu−DOTA−AE105の生体内薬物動態の試験は、切除後に観察された、血液及び全ての臓器からの速いクリアランス速度を明らかにした(図1B)。放射能の最高レベルは、腎臓、腫瘍及び血液中で認められた。腫瘍中の放射能のレベルは、1.78±0.21%ID/gで、0.5時間後にピークに達し、4時間で0.17±0.02%ID/gに、24時間後には0.057±0.02%ID/gに急激に減少した(表1)。177Lu−DOTA−AE105の最も高い腫瘍/筋肉比(T/M)は、注射後1時間で12であって、投与後24時間で3.3まで徐々に減少した。177Lu−DOTA−AE105と比べて有意に減少した腫瘍取り込み(p<0.001)は、0.5時間後に、非結合対照ペプチド(177Lu−DOTA−AE105mut)の投与後に観察され、したがって、uPAR標的化ペプチドの特異性を確認した(表1)。
【0061】
【表1】
【0062】
<uPAR PET及びガンマ線平面撮像>
以前に立証されたように、ポジトロン放出放射性核種によるDOTA−AE105の標識化は、uPAR陽性腫瘍を局所化させるためのPET撮像の使用を可能にする[25、26、28]。このことは、図2A(左側)に図示され、ここでは、結腸直腸HT−29腫瘍を担持するマウスが、64Cu−DOTA−AE105を用いてPET/CTスキャンされた。このPETトレーサを使用する最高の取り込みは、肝組織及び腫瘍組織で見られ、したがって、以前に発表されたデータと一致した[25、26]。図2A(右側)に示すものは、177Lu−DOTA−AE105の注射後のHT−29腫瘍担持マウスの代表的平面画像である。融合PET/CT画像に基づくマニュアルROI分析を使用して、64Cu−DOTA−AE105については、注射後1時間の0.86±0.03%ID/gの腫瘍取り込みが確認され、これと共に、177Lu−DOTA−AE105の対応する取り込みは、ガンマカウンター分析に基づいて、0.61±0.15%ID/gであった。腫瘍(白い矢印)は、PET撮像法を使用して、明らかに目視できたが、一方平面画像は、鮮明さに劣る画像品質を有した。
【0063】
<HT−39異種移植の実験的放射性核種療法>
連続的CTスキャンに基づく腫瘍サイズにおける有意差が、放射性標識ペプチドの非結合型(177Lu−DOTA−AE105mut)又は溶媒(対照)のいずれかを投与される対照群と比較して、0日及び7日に177Lu−DOTA−AE105の単回用量を投与された後の、6日(P=0.04)及び8日(p=0.002)の腫瘍(n=12)について観察された(図3A)。10日及び14日では、有意差は観察されなかった。14日で試験が終了するときには、平均腫瘍サイズは、溶媒対照、177Lu−DOTA−AE105mut及び177Lu−DOTA−AE105のそれぞれで、287±44mm、286±32mm及び218±22mmであった(p=0.09)。
【0064】
その後、腫瘍が、14日の試験終了時に切除され、uPAR発現について分析されたときには、14日の腫瘍サイズにおいて有意差がなかったにもかかわらず、有意に減少したuPAR発現(p=0.02、n=10腫瘍/群)が、非標的化177Lu−DOTA−AE105mut及び溶媒群に比べて、177Lu−DOTA−AE105を投与されたマウスの間で観察された(図3B)。免疫組織化学法によりuPARに関する追加の情報を提供するために、各処置群から1匹のマウス(2つの腫瘍を有する)を、臓器切除用に選択した。ELISAデータ(図3B)で認められたように、uPAR発現レベルにおいて観察される差は、これら組織学的切片においても認められず(図6)、これは、2つの非標的化群について観察されたuPAR発現レベルにおける大きな生物学的変動及び各群から1匹の動物のみを組み入れる選択に起因する可能性が高い。
【0065】
<初期応答マーカーとしての18F−FLT PET撮像>
18F−FLT PET撮像をuPAR標的化放射性核種療法に応答する指標として使用する能力が、この療法試験においても検討された。全てのマウスを、177Lu−DOTA−AE105を投与する前0日にベースライン18F−FLT PET/CTスキャンし、その後、1、3及び6日に18F−FLT PET/CTスキャンを行った。177Lu−DOTA−AE105を投与されているマウスの群におけるベースラインから6日までの18F−FLTの腫瘍取り込みにおける差と、試験期間(14日間)における総腫瘍増殖との間に有意な相関が認められた(p=0.001、R=0.71)(図4A)。同様な有意な相関は、2つの対照群でも認められた(図6A、B)。
【0066】
14日の腫瘍サイズを予測するための能力は、早くも3日で認めることができたが(p=0.02、R=0.49)、一方、かかる相関は、1日では観察されなかった(データ図示せず)。HT−29腫瘍モデル中の18F−FLTの相対的な腫瘍取り込みは、PET/CT分析については、腫瘍病巣を明らかに目視できる状態で、高い腫瘍対バックグラウンド比を結果として生じた(図4B)。この試験では、各処置群間の18F−FLT腫瘍取り込みにおける有意差は観察されなかった(図6C)。
【0067】
<線量測定>
177Lu−DOTA−AE105の生体分布データに基づいて、線量の推定値を計算した(表1)。放射能の最高の累積被曝量は、腎臓(52.9mGy/MBq)で見られ、次いで腫瘍組織(5.8mGy/MBq)、脾臓(5.5mGy/MBq)及び血液(4.9mGy/MBq)であった。しかしながら、HT−29腫瘍のuPAR陽性分画は、腫瘍の周辺部に位置するに過ぎないことが以前に見出されている[25]。同じ発現パターンが本試験で観察され(図7A)、uPAR−陽性癌細胞は、全腫瘍の約10%の分画であるに過ぎなかった。このこと並びに177Luβ放射の小さい透過範囲(<2mm)の知識を踏まえ、本発明者らは、約58mGy/MBqの局所的uPAR−陽性腫瘍分画線量の推定値を計算し、したがって、観察された全ての臓器/組織についての最高の被爆を結果として得た。
【0068】
<毒性>
試験中に、いずれの群においても動物は早期に死亡しなかった。動物の体重における差は、いずれの群間でも観察されず(図5A)、したがって、177Lu−DOTAS−AE105の2回の投与(2×25MBq)後に、いかなる急性毒性もないことを示している。生体分布データ及び線量推定値に基づくと、腎臓は、任意の正常な臓器の蓄積放射能の最高レベルを有し、したがって、この処置からの毒性の最高リスクを有した。しかしながら、H&E染色後に、各処置群から試験した一対の腎臓において、著しく異常な組織病理的変化は観察されなかった(図5B)。
【0069】
<インビトロ及び細胞結合における配位子−uPAR相互作用>
配位子のIC50値は、表2に示すように、非コンジュゲートペプチドAE105及びDOTA−コンジュゲート型(DOTA−AE105)の双方に対して6.7nMであることが見出された。uPARに対する結合に重要であることが既知である2つのアミノ酸を置換することによって(すなわち、Phe−>Glu及びTrp−>Glu)、IC50値における顕著な低減が観察された(IC50>10nM)。PC−3Mを用いるインビトロ細胞結合試験により、177Lu−DOTA−AE105の高い特異性でヒトPARに結合する能力が確認された。スクランブル型(177Lu−DOTA−AE105mu)と比較して、有意に高い結合が認められた(p<0.01)。
【0070】
<微小転移発生に関するuPAR標的化放射性療法の有効性>
PC−3M細胞を、心内注射によって接種し(PC−3M細胞は、播種性転移性疾患に関する十分に説明されたモデルであり、PC−3M細胞系はルシフェラーゼを安定して発現するので)、全ての3つの処置群において、微小転移の形成を、BLIで追跡した。各群についての代表的画像を図3Aに示している。腫瘍病巣数の増加の明確な傾向が、それぞれ溶媒及び177Lu−DOTA−AE105mut群の双方で観察された。このことはまた、それぞれのマウスにおいて、2日〜30日の腫瘍病巣の数の平均的変化を分析することによって確認された(図9B)。腫瘍病巣の数/マウスにおける有意な減少が、177Lu−DOTA−AE105を投与されている群で観察され(−0.44±0.33)、一方、増加が、それぞれ177Lu−DOTA−AE105mut(0.63±0.53)及び溶媒(1.55±0.51)群の双方で観察された(p<0.05)。更には、無遠隔転移生存期間の延長の明らかな傾向が、最初の転移性病巣(心臓以外で)が存在するまでの時間を分析することによって、uPAR標的化処置群(177Lu−DOTA−AE105)について確認された(図10)。177Lu−DOTA−AE105を投与されたマウスの65%において、最初の投与後65日で存在する遠隔転移はなかった。同様な観察は、177Lu−DOTA−AE105mut(対照)及び溶媒対照群では、それぞれ24%及び33%で見られたにすぎなかった。無転移期間の中央値は、溶媒、177Lu−DOTA−AE105mut及び177Lu−DOTA−AE105について、それぞれ12.5日間、16日間及び>65日間であった。全ての主要な所見は、表3に提示されている。
【0071】
<インビボの微小転移の同定のためのuPAR PET撮像法>
64Cu−DOTA−AE105を配位子として使用して、微小転移性病巣を同定するためのuPAR PET撮像の能力を、試験中に(試験日31日)、多数のマウスにおいて初めて探索した。各動物を、まず初めにBLIを用いてスキャンし、続いてuPAR PETスキャンを行った。各診断法を用いて提示された微小転移性病巣の数を、それぞれの動物について比較した。BLIを用いて提示された全ての腫瘍病巣は、uPAR PET撮像法を用いても検出された(4/4)(図11)。
【0072】
<毒性学>
処置誘発毒性は、本試験の処置群のいずれにおいても観察されず、このことは、マウス重量曲線でも観察された(図12)。
【0073】
<考察>
本試験において、発明者らは、ヒト結腸直腸癌モデル及び播種性転移性前立腺癌モデルにおける、特異的uPAR標的化放射性核種配位子177Lu−DOTA−AE105を用いる放射性核種療法の生体内有効性についての実験的証拠の最初の概念実証を報告する。本発明者らは、この放射性核種療法が、uPAR陽性癌細胞の数における有意な減少及び転移性病巣の数の減少の双方を引き起こして、腫瘍の増殖速度に有意な影響を有することを見出した。相当な数の試験により、異なる癌の反応性腫瘍の間質性部位内で、uPARが強く上方調節されること、並びに侵潤性癌の前線で発現され、予後不良に関連することを特定したために、これらの結果は非常に有望である。更には、この結果は、uPAR発現腫瘍及び転移を局在化させるために、並びに18F−FLT−PETを使用する、177Lu−DOTA−AE105投与後の後続の治療応答の予測のためのPET撮像法の可能性も例示している。
【0074】
1つの試験が、以前に検討されており、これはインビトロだけであるが、播種性卵巣癌に対する、AE105標的化ペプチドの213B−標識及び二価変異体を使用するα−放射性核種uPAR標的化細胞毒性の使用である[32]。この試験では、前述のとおり、有効性が細胞培養物上でインビトロでのみ評価され、観察された細胞毒性が、uPAR標的化作用によって実際に引き起こされたかどうかを評価するための対照が含まれていなかった。それにもかかわらず、そのリード化合物、213Bi−P−P4Dについての生体分布を構築し、腹腔内移植された卵巣癌細胞系OV−MZ−6を担持するマウスで、注射後45分の、0.2の腫瘍対腎臓比を報告している。インビトロでのOV−MZ−6細胞の生存率の減少と213Bi−P−P4Dの線量の増加との間の明確な相関性が、コロニー形成アッセイによって確立されている。
【0075】
CRC(結腸直腸癌)における177Lu−DOTA−AE105標的化療法の今後の臨床的用途の潜在効果は、主として、原発腫瘍の浸潤性病変の前線で、uPAR−陽性癌細胞及び反応性間質細胞を根絶するためのものであろう。他の処置療法と併用して、本療法は、病巣の転移性播種を弱めることができた。それでも、1つ注意することは、本発明者らが本試験で使用した異種移植CRC動物モデルは、臨床的に困難な課題を示す複雑なヒトCRCについての理想的なモデルではないと考えねばならないことである。今後の試験は、このuPAR標的化放射性核種療法の能力を全面的に探索することが明らかに必要とされるが、それでも、本発明者らは、本モデルにおいて、比較的小さな腫瘍病巣において、かかる処置療法の効果を立証した。
【0076】
ペプチド−受容体放射性核種療法を使用する臨床における線量制限毒性は、一般的に腎毒性によって引き起こされる[33]。この場合、腎臓はまた、線量測定計算に基づいて、高レベルの放射能に曝される(表1)。しかしながら、各処置群から得たH&E染色された部位の組織病理検査は、それでも3つの群間で肉眼的な形態的差異を表しておらず、このことは、本発明者らが使用した放射線量は、重篤な腎毒性を生じなかったことを示している(図5B)。更に、臨床現場では、放射性標識ペプチドの注射直後に注射される、ゲロフシン(Gelofusine)などの種々の腎臓保護溶液及び種々のアミノ酸溶液の使用が、放射能誘起損傷から腎臓を保護することが示されている[34]。一般毒性の指標として、本発明者らは、各処置群内の全ての動物の体重を測定し、2回の投与(2×25MBq)後に、群間の有意な体重差を見出さず、これは、放射からの重大な急性毒性がないことを示している。しかしながら、177Lu−DOTA−AE105投与後の腎毒性の程度は、今後のヒトの臨床試験では注意深く評価される必要がある。
【0077】
本試験では、本発明者らは、ベースラインから6日の間の18F−FLT腫瘍取り込みにおける変化と14日の最終腫瘍体積との明確な相関を認めることができた。ベースライン0日と比べて6日に最高取り込み値を有するこれら腫瘍は、処置の最低応答を有する腫瘍でもあった。増殖状態に基づいて、腫瘍応答を予測するために18F−FLT PETを使用することは、マウスでの新しい実験的治療について[35]、並びにヒトでの種々の臨床的承認薬について[36、37]、以前にも例示されていて、これら試験は、18F−FLT PETのペプチド受容体放射性核種療法における使用の証拠を提供している。本試験で見出された明確な相関性に基づいて、新しい放射性核種療法は、増殖速度の低減を誘導すると考えられ、これは、直接的β線イオン化と、更に、腫瘍内の全てのHT−29 CRC細胞の約10%のみがuPAR−陽性であるために[25]、隣接するuPAR−陰性癌細胞に相当量の放射線量をもたらす、177Luの既知のバイスタンダー効果[24]との双方に起因する可能性がある。このことはまた、2つの対照群と比較して、177Lu−DOTA−AE105を投与されたマウスにおいて、6日及び8日に認められた、観察された腫瘍サイズの顕著な減少を説明することができる(図3A)。
【0078】
新しく構築されたuPAR PET撮像法を使用して、将来的にuPARの高い腫瘍発現レベルを有するCRC患者、したがって予後不良を有する患者を選択する能力は、臨床的観点から、非常に魅力的でもある。今日、採血及び腫瘍生検などの侵襲的処置が、患者でのuPAR発現のレベルを確立するための唯一の方法である。血中uPARレベルは、腫瘍組織中のレベルの間接的指標にすぎず、一方腫瘍病巣から採取されるいずれの生検も、多くの場合、腫瘍病巣全体を代表するものではなく、最高の発現レベルを有する区域が範囲でないならば、場合により、誤った低い結果を生じる。更に、転移性病巣からの生検は、多くの場合、得ることが非常に難しく、既知の病巣が検討されるに過ぎない。非侵襲的uPAR PET撮像法を使用することは、身体全体がスキャンされるために、生検処置の必要性に取って代わり、uPAR発現レベルのより代表的な画像を供与する可能性があり、したがって、いかなるuPAR−陽性転移性病巣の同定ももたらすことができる。177Lu−DOTA−AE105が直接的ガンマ線撮像を可能にするにもかかわらず、9.7%のみがガンマ線放射線であることに起因する定量化選択肢の欠如及び撮像特性の低下は、患者の選別及び療法のモニタリングの双方にわたるuPAR PET撮像法の有用性をさらに強調する。uPARに対する新しい「セラノスティック」ペアの導入によって、このシナリオは、医療機関における将来の患者管理のための現実的な選択肢であり得る。
【0079】
要約すると、uPARを標的化する新しい放射性核種ペプチド療法全体が立証された。高度にuPAR特異的な細胞毒性効果が、ヒト結腸直腸異種移植癌モデルにおいても、播種性前立腺癌モデルにおいても認められた。uPARが原発腫瘍の浸潤の前線で高く発現されることを確立している広範な文献に基づいて、本発明者らは、浸潤性癌を特異的に同定しかつ標的化するための可能性を有する新しいセラノスティック診断法を開発したと考える。
【0080】
【表2】
【0081】
表2では、ヒトuPARに対して対応する結合親和性を有するそれぞれのペプチドコンジュゲートのアミノ酸配列が示されている。太字の残基は、uPARとの相互作用に重要である。これら重要なアミノ酸の2つ(Phe及びTrp)のGluによる置換は、uPARに対する親和性の完全な消失をもたらす。このことは、標的化ペプチドコンジュゲート(すなわち、DOTA−AE105)の6.7nMと比較して、10Mより高いIC50値によって示されている。重要なことは、非コンジュゲートペプチドAE105とコンジュゲート型DOTA−AE105との間の同一のIC50値で示されたように、N末端中のDOTAキレート剤のコンジュゲートによって、親和性の減少が生じないことである。
【0082】
【表3】
【0083】
表3では、播種性ヒト前立腺癌マウスモデルにおける、177Lu−DOTA−AE105の抗転移効果の概要が示されている。uPAR標的化177Lu−DOTA−AE105を投与された群の非常に多数のマウスが、進行性症状に対して、安定した症状/応答を有した。対照群(溶媒)では、11匹のうち7匹が進行性の症状を有し、一方この状態は、177Lu−DOTA−AE105群では、9匹のうち1匹でのみ認められた(p=0.028)。177Lu−DOTA−AE105及び非結合対照ペプチドコンジュゲート177Lu−DOTA−AE105mutを比較すると、治療応答における有意差も見出された(p=0.049)。2つの対照群の間では、治療有効性での有意な差は観察されなかった(p=0.100)。更に、各マウスで最初の転移性病巣(心臓を除く)が存在するまでの時間を分析することによって、無遠隔転移生存期の延長の明らかな傾向が、uPAR標的化処置群(177Lu−DOTA−AE105)について見出された。177Lu−DOTA−AE105を投与されたマウスの65%では、遠隔転移は、最初の投与後65日で存在しなかった。同様な観察は、177Lu−DOTA−AE105mut(対照)及び溶媒対照群でそれぞれ24%及び33%に見られるに過ぎなかった。無転移時間中央値は、溶媒、177Lu−DOTA−AE105mut及び177Lu−DOTA−AE105について、それぞれ12.5日、16日及び>65日であった。
【0084】
【表4-1】
【0085】
【表4-2】
【0086】
【表4-3】
【0087】
【表4-4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12