特許第6814265号(P6814265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814265時間分解光散乱分光法を使用する組織又は損傷深度の評価
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814265
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】時間分解光散乱分光法を使用する組織又は損傷深度の評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20201228BHJP
   A61B 18/02 20060101ALI20201228BHJP
   A61B 18/04 20060101ALI20201228BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20201228BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61B10/00 E
   A61B18/02
   A61B18/04
   A61B18/12
   A61B18/18
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-172040(P2019-172040)
(22)【出願日】2019年9月20日
(62)【分割の表示】特願2018-132901(P2018-132901)の分割
【原出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2020-72798(P2020-72798A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】13/796,880
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512014500
【氏名又は名称】ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】スタヴロス ジー.デモス
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−535098(JP,A)
【文献】 特表2008−520363(JP,A)
【文献】 特開平01−140690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0039379(US,A1)
【文献】 特開平04−189349(JP,A)
【文献】 特表2009−538672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 18/00 − 18/28
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのインヴィボ心臓組織損傷形成パラメータのリアルタイム評価のための光ファイバー評価システムであって、
プローブ;
光ファイバー;
スペクトルフィルター;
探知器及び信号時間分析器;
コンピュータ及び
表示部;
を備え、
第1組織部位に対する損傷形成アブレーションの間に前記第1組織部位を有する少なくとも一つのインヴィボ心臓組織の第1組織部位の第1表面上の点への光源からのインタロゲーションの相互作用から生じる誘起放射のリターン信号波の少なくとも一部は前記光ファイバーにより集光され、前記スペクトルフィルターは集光されたリターン信号波を光学的に洗浄するために使用され、前記集光されたリターン信号波の時間プロファイルは前記探知器及び信号時間分析器に検出され、
前記コンピュータは、前記時間プロファイルを記録、定量化パラメータ(QP)を分析及び評価し、前記表示部により損傷形成パラメータを表示するように構成され
前記光源は、単色光、複数波長光、及び、連続スペクトル波長の光からなる群から選択される光を照射する、光ファイバー評価システム。
【請求項2】
前記集光されたリターン信号波は、測定された強度対時間である、少なくとも一つの時間信号プロファイルを備える、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、少なくとも一つの定量化パラメータ(QP)を決定するため、少なくとも一つの信号時間プロファイルからの信号データと、少なくとも一つの参照時間プロファイルからの参照データとの間の差を定量化ように構成され
前記QPから、前記インヴィボ心臓組織の少なくとも一つの即時的状態を決定される、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項4】
前記第1組織部位のアブレーションのためのアブレーションカテーテルを更に備え、
前記アブレーションカテーテルは、前記インヴィボ心臓組織、前記損傷、前記第1表面、及び、前記第1組織部位の何れにも前記アブレーションカテーテルが侵入することなく、前記損傷を作出させるために前記インヴィボ心臓組織へアブレーションエネルギを到達させるように構成され、
前記アブレーションカテーテルは、更に、前記第1組織部位の前記第1表面上の点への前記光源からのインタロゲーション波を案内させるための少なくとも一つの光学導管を備えており、
更に、前記アブレーションカテーテルは、前記インヴィボ心臓組織の第2組織部位からの前記誘起放射を集光させるための少なくとも一つの光学導管を備え、前記インヴィボ心臓組織の前記第2組織部位は、前記第1組織部位とは異なる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の光ファイバー評価システム。
【請求項5】
前記損傷形成アブレーションは、(i)前記インヴィボ心臓組織への高周波(RF)エネルギ放射、(ii)前記インヴィボ心臓組織への低温エネルギ放射、(iii)前記インヴィボ心臓組織への光エネルギ放射、更に、(iv)前記インヴィボ心臓組織への熱放射、からなる群から選択される工程により生じる、請求項1乃至4の何れか1項に記載の光ファイバー評価システム。
【請求項6】
前記光源からの前記波は、複数波長光及び連続スペクトル波長の光からなる群から選択され、
前記コンピュータは、更に、前記少なくとも一つの信号時間プロファイルをn個のスペクトルバンドへ分割するように構成され、前記スペクトルバンドの各々のスペクトルバンドnは各々時間プルファイルT(n)を備える、請求項5記載の光ファイバー評価システム。
【請求項7】
前記コンピュータは、少なくとも一つの定量化パラメータ(QP)を決定するために、少なくとも一つの信号時間プロファイルからの信号データと、少なくとも一つの参照時間プロファイルからの参照データとの間の差を定量化ように構成され、
前記QPから、前記インヴィボ心臓組織の少なくとも一つの即時的状態を決定され、
前記損傷形成アブレーションは、(i)前記インヴィボ心臓組織への高周波(RF)エネルギ放射、(ii)前記インヴィボ心臓組織への低温エネルギ放射、(iii)前記インヴィボ心臓組織への光エネルギ放射、更に、(iv)前記インヴィボ心臓組織への熱放射、からなる群から選択される工程により生じ、
前記光源からの前記波は、複数波長の光及び連続スペクトル波長の光からなる群から選択され、
前記コンピュータは、更に、前記少なくとも一つの信号時間プロファイルをn個のスペクトルバンドへ分割するように構成され、前記スペクトルバンドの各々のスペクトルバンドnは各々時間プルファイルT(n)を備え、
前記信号データは、前記各々のスペクトルバンドnの少なくとも一つのための少なくとも一つの離散データ点セットP{T(n)}を備えている、請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の光ファイバー評価システム。
【請求項8】
1以上の前記少なくとも一つの離散データ点セットP{T(n)}は、1以上の前記少なくとも一つの信号時間プロファイルのデジタル表現を形成し、前記少なくとも一つのデジタル表現は所定の遅延時間での信号強度値を与え、前記差を定量化することは、予め定められた離散データ点セットで前記少なくとも一つデジタル表現の少なくとも一部を分割すること、又は、予め定められた離散データ点セットで前記少なくとも一つデジタル表現の少なくとも一部を規格化すること、を選択的に備え、前記QPは、所定の遅延時間において少なくとも一つの規格化された離散データ点セットを備える、請求項7記載の光ファイバー評価システム。
【請求項9】
前記予め定められた離散データ点セットは、前記参照データの少なくとも一部を備える、請求項8記載の光ファイバー評価システム。
【請求項10】
前記コンピュータは、損傷形成アブレーション前の前記第1組織部位から、又は、予め存在するデータベースから、少なくとも一つの参照時間プロファイルを得るように構成される、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項11】
前記即時的状態は深さAでの即時的損傷深さを備え、前記コンピュータは、更に、
前記深さAへの前記損傷形成の速度(心臓組織アブレーションの速度)を決定
前記速度から、深さAよりも深い深さBを備える損傷を形成するために必要なアブレーション時間を外挿するように構成される、請求項3記載の光ファイバー評価システム。
【請求項12】
前記心臓組織アブレーションの速度は損傷形成の速度を備え、少なくとも一つの前記即時的損傷深さ及び前記損傷形成の速度は、心臓アブレーション損傷深さと、8mmまでの損傷深さに対する集光されたリターン信号の少なくとも一つの定量化パラメータとの間の実質的線形の関係を使用して計算され又は心臓アブレーション損傷深さと、8mmまでの損傷深さに対する集光されたリターン信号の少なくとも一つの定量化パラメータとの間の単調関係を使用して計算される、請求項11記載の光ファイバー評価システム。
【請求項13】
前記定量化パラメータは、損傷深さが変化するにつれて単調に変化する、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項14】
損傷を作出する工程の間における異なるスペクトルバンドでの前記少なくとも一つの定量化パラメータの時間的発達を観察することにより、少なくとも一つのスチームポップの発生を検出するように構成される、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項15】
単位時間あたりの前記損傷深さの変化を観察することにより、組織アブレーションの速度を決定するように構成される、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項16】
前記コンピュータは、更に、損傷を作出する工程の間における異なるスペクトルバンド
での前記少なくとも一つの定量化パラメータの時間的発達を観察することにより、前記損傷において血塊及び焦げの少なくとも一つが存在するか決定するように構成される、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項17】
前記光源からの前記インタロゲーション波は600nmから1500nmまで又は600nmから970nmまでの範囲内の波長を含有する、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項18】
前記コンピュータは、更に、前記少なくとも一つの定量化パラメータの変化の速度から、1.5cmまでアブレーションの深さを外挿するように構成される、請求項3記載の光ファイバー評価システム。
【請求項19】
前記コンピュータは、更に、前記少なくとも一つの定量化パラメータから、正常組織又は異常組織が存在するかどうか決定するように構成され、正常組織が存在するか決定する工程は、予め存在するデータベースから得られる規格化された参照時間プロファイルと前記QPを比較することを含み、異常組織が存在するか決定する工程は、前記予め存在するデータベースから得られる規格化された参照時間プロファイルと前記QPを比較することを含む、請求項3記載の光ファイバー評価システム。
【請求項20】
前記コンピュータは、更に、前記アブレーションカテーテルの正常組織への不適切接触の存在を決定するため、前記少なくとも一つの定量化パラメータの1以上の変化を利用するように構成され、その利用する工程は、予め存在するデータベースから得られる規格化された参照時間プロファイルと前記QPを比較することを含む、請求項4記載の光ファイバー評価システム。
【請求項21】
前記コンピュータは、更に、損傷を作出する工程の間において1以上のスペクトルバンドでの前記少なくとも一つの定量化パラメータの時間的発達の変化を測定するように構成され、前記コンピュータは、更に、影響を受けた組織での少なくとも一つのマイクロバブルの形成をリアルタイムで検出する前記変化を利用することを更に含むように構成され、
前記マイクロバブルはスチームポップとも呼ばれるガスを放出する前駆体を形成する、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【請求項22】
前記深さAは8mmである、請求項11又は12に記載の光ファイバー評価システム。
【請求項23】
前記連続スペクトル波長又は前記複数波長は、600nmから1500nmまで又は600nmから970nmまでのいずれか1つの範囲内の波長を有する、請求項1記載の光ファイバー評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年4月27日に出願された発明の名称が“組織改変の光ファイバー評価”である米国出願11/414009号の一部継続出願であり、参考として本願に引用されており、この出願は、2005年11月17日に出願された発明の名称が“心臓組織アブレーションの光ファイバー評価”である米国出願11/281853号の一部継続出願であり、参考として本願に引用されており、この出願の請求項の優先権は、2004年11月17日に出願された発明の名称が“心臓組織アブレーション及び光学分光の光ファイバー評価”である米国仮出願60/629166号に基づくものであり、参考として本願に引用されている。
連邦支援研究又は開発に関する言及
米国政府は、米国エネルギー省とローレンス・リバモア国立研究所の運用であるローレンス・リバモアナショナル・セキュリティーLLCとの間の契約DE-AC52-07NA27344についての本件発明に関する権利を有している。
背景技術
発明の分野
本願発明は病理診断に関する。より詳細には、本願発明は医療処置におけるリアルタイムで組織改変を調べるための光学インタロゲーション形状に関する。
従来技術
通常組織の分野における損傷の存在は、異なる組織要素と関連する光路の変化によって探知される。例えば、外科医の視覚による評価は、異なる組織要素によるスペクトルの可視部での光散乱の変化により決められる。スペクトルの近赤外光(NIR)部の光により、組織要素の構造及び生物学的要素における差異を探知することも可能である。NIR光の周知の性質は、主として血液での吸収減少のみならず散乱減少による数センチ単位の組織への更なる浸透である。異なる組織要素での波長の巻数としての光子の平均浸透深さの依存性は、参考として本願に引用され、損傷評価のNIR分光の使用が記載されている、発明の名称が“組織改変の光ファイバー評価”である米国出願11/414009号(親事件)の基礎を形成する。詳細には、本願発明は、典型的なアブレーションカテーテルでの光ファイバープローブの使用を取り入れることにより、特に心臓組織の高周波(RF)アブレーション間の使用に適切である、リアルタイムでの臨界パラメータを特性化する新規手法を提供する。RFアブレーションは、心臓の異常な鼓動の結果として心臓内組織に発生し、不整脈として知られる異常電気信号の原因となる心臓状態である心房細動の治療に通常使用されます。RFエネルギーは、局所麻酔下で大腿骨、上腕、鎖骨下動脈、又は、内頸静脈にて経皮的に挿入されたアブレーション電極カテーテルを経由して到達され、心臓内に位置します。現在の手法は、リアルタイムでの損傷形成パラメータの測定や関連する悪条件では限られた効果を有する。
【0002】
親ケースでは、リアルタイムで評価される損傷の形成を導く過程の臨界パラメータを可能とし、そのようなパラメータとしては、カテーテル組織接近、損傷形成、損傷浸透深度、組織での損傷断面領域、アブレーション間の焦げの形成、非焦げ組織からの焦げ認識、アブレーションサイト周囲の凝固形成、非凝固血液からの凝固分化、健康組織からアブレートされた分化、及び、スチームポップを防止するための組織中のマイクロバブル形成の認識が包含される。光を到達させ後方散乱光を集光するファイバーを組み込むことにより、アブレーションカテーテルの先端からのびまん型反射光の分光学的特徴を解析することでこれらの評価は達成可能となる。
【0003】
心臓不整脈のほとんどの原因は、心房又は心室壁近くの心臓内組織に生じる電気信号の異常なルーチンである。カテーテルアブレーションは、不整脈が薬物で制御できない又はこれらの薬物を使用できない患者の場合を取り扱うために使用される。通常は高周波エネルギー(RF)の形態で、エネルギー照射部材を有するアブレーションカテーテル又は同様のプローブを使用することで、十分量のエネルギーがこの電気失弧の疑義ある中心部へ到達し、損傷形成となる。異常電気活性領域間に非伝導的障壁を形成することにより、これらの損傷は心臓の不整脈を停止させることを目的とする。治療の成功は、損傷の空間的特徴と同様に心臓内のアブレーションの位置に依存する。
【0004】
カテーテルと組織との接触は、損傷の形成にとって臨界的である。手術の間の適切な接触の確立を提供するために種々の方法が試された。これらの手段は、カテーテルの先端での温度を監視するとともに、カテーテル電極と分散電極との電気的インピーダンス(血液と心内膜との間の抵抗の差を利用する)の監視を含む。しかしながら現在の手法ではこれらの方法は、カテーテルと組織との適切な接触を決定するための信頼できる手段を提供するものではない。結果として手続を行う電気生理学者の経験と技が、臨床転帰の主要な部分を占めることになる。
【0005】
損傷治療の有効性は、心臓での電気信号を監視するポストアブレーションによって評価される。不整脈の原因となる信号が依然として存在する場合(損傷が適切に形成されていないことを示唆する)、付加的な損傷が異常な血液の流れを防止するための損傷ラインを形成するために設けられる。しかしながら現在のところ、リアルタイムで損傷の形成過程を評価する方法はない。アブレーションの工程は、組織の焦げ、局在化血液凝集、並びに、スチームポケットの形成につながる組織水の蒸発及び合併症の原因ともなる続く内破(スチームポップ)といったような好ましくない副作用の原因ともなりうる。操作者がその進行に気がついた場合、これら全ての副作用は、カテーテルのRFパワーを調節することにより軽減される。好ましくないアブレーション副作用の進行に関して外科医がマイナー知識を有している場合、付加的な医療手続による訂正を要するため、ポストアブレーションによる評価での限定は明らかに好ましくない。このようにリアルタイムで組織に形成される損傷形成パラメータの評価に有益なガイダンスツールを開発する必要がある。
【0006】
心筋の熱凝集によりその光学的性質に重大な変化が生じる。RFアブレーションによる心筋の凝集の場合について、スワートリングらは、近赤(NIR)スペクトル領域での光学的性質の変化は、散乱係数の増加(5%増加)、散乱異方性要因の微細減少(2%減少)、及び吸収係数の増加(20%増加)を包含することを報告している。我々は、RFアブレーション照射された心臓組織の光学的性質の変化が、損傷形成パラメータのインヴィボ観察に利用できると仮定した。NIRスペクトル領域での血液及び心筋による吸収が最小であることを考慮して、インヴィボ観察はNIR光散乱分光に基づくと仮定した。
このような手法は、好ましくはRFアブレーションカテーテルへの光ファイバー付属品としての血管系を通して実行される。
【0007】
本願においては、近赤(NIR)光散乱分光を使用するリアルタイムでのRF(又は別タイプの)アブレーションによる損傷形成の評価方法が示される。分光放射及びカテーテルの先端で損傷が形成される際に組織と接触する受光ファイバーを組み込むためにアブレーションカテーテルが改変された。受光ファイバーにより集光された光の分光分析により、カテーテルの組織との接触、損傷形成の開始、損傷浸透の深さ、及び、アブレーションの間の焦げ又は凝集の形成といった鍵となるパラメータの探索が可能となる。
【発明の概要】
【0008】
本願発明は、損傷深度を探知できる能力を向上させた新しい光学的手法を提供する。これらの深度は、より正確且つ向上した探知限定により達成される。より詳細には、本願発明の実施例に記載されているように、ノイズと思われる数値分布が存在する一方で損傷深度の探知能力は約5mmに限定される。ノイズは従前の技術の本質的欠点であるが、深度探知制限を支配するメカニズムにより、光学的情報を用い深度情報へ変換される。所定の深度に到達する光の強度が深度とともに指数関数的に減少するにつれて、異なる深度から探知される信号は急速に減少する。このように大半の信号は組織の最上層(1−2mm)から探知される。結果として、損傷深度が増加するにつれて、探知された信号が継続的に減少し、約5−8mmよりも深い損傷深度を特徴付ける能力が制限され、データにおいて“ノイズ”が観察されることになる。この問題を解決するために、本願発明は、十分に広いスペクトル範囲に対して所定のスペクトル領域を覆う十分広域なスペクトル又はパルスで光の超短パルスを生み出すパルス照明光源(またはシンクロナイズレーザー光源)を使用することによる時間情報で、深度評価のための分光学的情報の分析を補完する新規手法を提供する。
【0009】
この概念を評価するために、組織への光伝播の速度を考察する必要がある。組織の屈折率が約1.4でt=0で侵入する光子は、複数の散乱が無い砲弾伝播のみ想定すると、5mmの損傷の底部に到達し、探知部(集光ファイバー)に反射してもどるための全行程において少なくとも45psを要する。このように測定目的が表面下5mmの位置(通常とアブレーション心臓組織との間の相互作用)にある特徴の深度情報を検索することにある場合、約45psよりも早期に到着する全ての信号は有益情報を包含しない。
【0010】
通常からアブレーション損傷へ変化するにつれての組織の散乱性質の変化は、伝播光路と受光信号の時間プロファイルに影響を与える。これは、損傷形成開始から始まる受光信号の時間プロファイルの継続的変化につながる。本願発明は、アブレーション損傷の容量及びその他の形成パラメータに直接関係する時間プロファイルの変化の定量的パラメータを産出するこの方法を使用する。
【0011】
組織内にある組織要素又はその他の特徴の探索は、NIRスペクトルの光学的性質における波長依存性の変化の存在に基づく。RFアブレーションにより形成された損傷深度の決定は、一つの重要な潜在的適用である。この適用により、組織の加熱から生じるマイクロバブルの探索を包含する、RFアブレーション(又は、高温又は低温の適用といったその他のアブレーション)の間に伴う過程に関係するその他の特徴を探知する技術が教示される。これらの探知は、組織と受光信号の時間プロファイルの変化により捕捉されるマイクロバブルの内側にあるスチームとの間の屈折率の大きな差による光子路の変化に基づく。
【0012】
このようなマイクロバブルの形成は文献にて仮定されており、スチームポップの形成につながる。これはアブレーション処理の間における好ましくなく工程である。本願発明のその他の適用では、組織深度の評価(区画のような)が包含される。
【0013】
本願で記載されている時間分解アプローチの実施形態は、パルス又は強度調節光及び時間分解探知スキームを利用する。このような時間分解測定の実行方法は複数存在し、科学文献にも見受けられる。この理由のため、本願発明のかかる面の実行の正確なスキームはここでは記載されない。しかしながら、定常状態も時間分解測定も両方ともを実行可能な装置は有益であり、それゆえ従来発明及び本願書類に記載された発明に記載された利点は、単一系に統合される。
【0014】
レーザー及び光源における最近の進歩により、光子ファイバー又はその他の非線形物質によるスーパーコンティニウムの産出を経由する広域スペクトルの短パルスを生み出す複数の手法が得られる。また、異なる波長でのコンパクト超短レーザー光源の操作は可能で有り、そのコストは急速に減少している。加えて、早い反応時間での探知器は複数製造されて広く利用可能となっている。そのため、本願発明を実行するためのコストは現在適度なものとなっており、将来は更に減少することが期待される。
【0015】
本願発明に組み込まれ開示の一部を形成する添付の図面により、明細書の記載と共に発明の実施形態と理論が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1A図1Cは、組織試料から発生する光パルスの3つの異なる時間プロファイルを示す実験測定を示す。
図1B図1A図1Cは、組織試料から発生する光パルスの3つの異なる時間プロファイルを示す実験測定を示す。
図1C図1A図1Cは、組織試料から発生する光パルスの3つの異なる時間プロファイルを示す実験測定を示す。
図2A図2Aは、光源が単色の場合における、本願発明の光ファイバー評価システムのメイン要素を示す。
図2B図2Bは、光源が2以上の波長で発光する場合におけるメイン要素を示す。
図2C図2Cは、光源が相対的に広いスペクトル範囲で発光する場合におけるメイン要素を示す。
図3A図3Aは、1nsのオーダーであるが、理想的には数ps以下のオーダーである投入光パルスの時間プロファイルを示す。
図3B図3Bは、図1と同様に示される配置を使用する探知光の対応する時間プロファイルを示す。
図4A図4Aは、光源が単色の場合、通常組織に対応する最初の時間プロファイルを示す。
図4B図4Bは、アブレーションの間、探知された時間プロファイルの改良を示す。
図4C図4Cは、測定された時間プロファイルを、組織改良の変化の定量のために使用される参照プロファイルにより割った比を示す。
図5A図5A及び5Bは、波長の関数としての組織における異なる散乱係数及び吸収係数に起因して、各々の波長からの時間プロファイルが異なることを示す。
図5B図5A及び5Bは、波長の関数としての組織における異なる散乱係数及び吸収係数に起因して、各々の波長からの時間プロファイルが異なることを示す。
図5C図5Cは、第1波長での測定された時間プロファイルを別の波長での時間プロファイルで割った比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明は、リアルタイムで損傷空間パラメータをより正確に特により深いアブレーション損傷にて評価する異なる方法を開示する。本願方法は、カテーテルの先端にて光学要素(概ね、1以上の発射及び1以上の受光ファイバーからなる)を組み込む、親出願と同じカテーテルデザインを使用する。配置において光ファイバーを組み込む本願発明にとって最適なアブレーションカテーテルの図は、親出願の図2(a)及び2(b)に示されている。本願方法は、親出願と同じように組織への発射光をも使用する。即ち、親出願では損傷深度を評価するために受光のスペクトルプロファイルを使用する方法を開示したが、本願発明では損傷深度を評価するために受光パルスの時間プロファイルを使用する。
【0018】
図1A図1Cは、組織試料からの光パルス照射の3つの異なる時間プロファイルを示す実験測定を示す。全てのケースにおいて、探知光パルスは、半値全幅(FWHM)での約6.5ps時間で1064nmの単一光パルスの投入に続く結果である。特に、図1Aに示されるプロファイルは、5mm厚組織試料を通過する照射された光パルスの時間プロファイルを示す。約50ps遅延のピーク位置にて、発射光パルスの時間プロファイルが元のパルスよりも広域であるが、光のほとんどは300psよりも長く遅延して発射される。図1Bは、15mm厚み組織試料を通過する発射光パルスの時間プロファイルを示す。大半の光が依然として1000psよりも長く遅延する場合、発射パルスの時間プロファイルは、約300ps遅延のピークを示す本ケースにおいてより長い。光パルスが組織へ投入された場合、発射光パルスは遅延し組織へ伝播する際に広がることを上記の例は示す。図1Cは、光パルスの投入に続く、背後への反射光の時間プロファイルを示す。大半の光は約50psよりも短い時間で反射する。背後の散乱方向に照射される前に、5−10mmのオーダーの深さに到達する光子もあることは公知である。しかしながら、光子のこの群は数百psのオーダーでより遅延して到達する。早期に到達する光子が組織表面に近い構造についての情報のみをもたらす一方で、組織中へより深く到達するこれらの光子は、組織中へより深く位置する組織構造についての情報をもたらす。組織における光の伝播を制御する潜在メカニズムの適切な使用により、本願発明は、組織改変(RF組織アブレーションのような)の間におけるリアルタイムでの損傷深度に関する情報をもたらすために、照射光パルスの時間特性を使用する方法を開示する。
【0019】
本願発明の光ファイバー評価システムの簡易図は、図2A−Cに示される。特に、図2Aは、光源10が単色の場合におけるメイン要素を示す。本願において、コンピュータ12は光源パルストリガー/タイミング電子機器14を制御し、光源10からの単色パルス(光学インタロゲーション放射)は、組織へのプローブ及びアブレーションエネルギーを伴うアブレーションカテーテル16を通して光ファイバー11により導かれる。ここで議論されるように、インタロゲーションパルスを伝播すると同時に組織をアブレーションする工程の前に、参照信号は組織から得られる。参照信号を得るその他の技術はここで議論される。インタロゲーション放射による誘起放射を、インヴィボ心臓組織の少なくとも一つの現在の状況が決定される1以上の定量化パラメータを産出する参照信号と比較する工程が記載される。誘起放射は光ファイバー13にて集光される。スペクトルフィルター18は、集光された誘起放射を光学的に洗浄するために使用される。光は、探知器及び信号時間分析器20により探知され、その後、その時間プロファイルがソフトウェア22により続いて記録される。続いて、信号が分析され、定量化パラメータが評価され、対応する損傷形成パラメータが表示部24により表示される。図2Bは、光源30からの2以上の波長を除き、図2Aと同じ要素を示す。本件では、探知器及び複数チャンネル信号時間分析器34による探知光の異なる波長を光学的に分割するために、スペクトル分析器32が使用され、続いてその時間プロファイル記録され表示される。図2Cは、光源40が相対的に広域スペクトル範囲にわたるブロードバンド光を照射する際に伴うメイン要素を示す。本ケースにおいて、時間ゲートアレイ分析器42に探知される光の異なる波長域を分光学的に分別するために、スペクトル分析器が使用され、それらの時間プロファイルが続いて記録され、損傷形成パラメータが表示される。図2A−2Cのシステムが説明される。他のシステムは当業者にとって明らかである。
【0020】
図3Aは、1nsのオーダーであるが理想的には数ps以下のオーダーである、注入光パルスの時間プロファイルを示す。親出願の図2(a)(b)に図示されたものと同じ配置を使用する、探知光の対応する時間プロファイルは、図3Bに示される。序盤に記述されたように、探知光パルスは時間通りに遅延し、元のパルスよりも持続時間が長い。受光ファイバーにより集光される前に組織内側により深く到達する光子は、より遅延して照射される。
【0021】
最初に光源が単色の場合を想定する。この場合、通常組織に対応する第1の時間プロファイルが図4Aに示される。臨床現場において、アブレーション及び損傷形成の開始前にこのプロファイルは測定されるか、組織アブレーションからの通常組織の信号を示す参照プロファイルとなる。アブレーションの間、組織の性質は継続的に改変され、結果として探知された時間プロファイルの改変となる(図4Bに示される)。この変化は損傷特性に直接的に関連する。時間プロファイルのこの変化の定量化により、損傷パラメータの直接的な情報が得られる。これらの損傷パラメータは、組織アブレーションの手順の間、継続的に監視される。図4Cに示される実施例では、測定時間プロファイルを参照プロファイルで割った比が、組織修正の変化の定量(損傷定量化パラメータ)のために使用される。その他の数式及び/又は方法が、時間プロファイルの変化を定量化するために使用される。図4Cに示される実施例において、定量化パラメータ(QP)は時間プロファイルである。しかしながら、QPは、遅延時間に沿う単一点又は一連の値を形成する遅延時間に沿う複数点である。これら一連の数値は、比又はより少数の数値で組織改変を定量化(損傷パラメータ)するその他の数式を形成するために更に使用される。
【0022】
第二に光源が複数波長の場合を想定する。この場合、各々の波長は前記の場合と同様に扱われる。加えて、各々の波長からの時間プロファイル(図5A及び5Bに記載される)は、波長の関数としての組織における異なる散乱及び吸収係数に起因して相違する。アブレーションの間、組織の性質は継続的に改変され、それは結果として、各々の波長で記録された探知時間プロファイルの修正となる。この変化は損傷特性に直接関係する。各々の波長での時間プロファイルの変化の定量化は、損傷パラメータの形成に直接的につながる。これらのパラメータは、組織アブレーション手続の間において継続的に監視される。図5Cに示される実施例において、第1波長での測定時間プロファイルを別の波長での時間プロファイルで割った比が、組織修正の変化の定量化(損傷パラメータ)のために使用される。その他の数式及び/又は方法が、時間プロファイルの変化を定量化するために用いられる。図5Cに示される実施例において、定量化パラメータ(QP)は時間プロファイルである。しかしながら、QPは、遅延時間に沿う単一点又は一連の値を形成する遅延時間に沿う複数点である。これら一連の数値は、比又はより少数の数値で組織改変を定量化(損傷パラメータ)するその他の数式を形成するために更に使用される。
【0023】
光源がブロードバンド発光の場合、同じ方法が単一の信号を分析するために使用される。この場合、ブロードバンドスペクトルが、前述と同様に扱われる適当数のより小さいスペクトル領域に分割される(図5A−Cの実施例参照)。
【0024】
リアルタイムでの損傷評価は、これらの予め定義された定量化パラメータ(QP)を監視することによりなされる。前述したように、これらのQPは発光波長の数値に依存して異なる。典型的には、複数の波長の発光の場合、各々の波長はそれ自身の探知時間プロファイルを与える。各々の時間プロファイルに沿った1以上の点の間、又は、同じ遅延若しくは予め決定された遅延のために異なる波長のプロファイルから産生されるデータ点の間の数式(比のような)を適用することにより、付加的なQPが産生されるため、この方法は付加的な次元に到達する。二つの発光波長が使用される単純な例を想定するに、1以上の所定の予め定められた遅延での探知信号の強度比は、損傷形成を監視するために使用される。その他の組み合わせが同じ課題を解決するために使用される。定量化パラメータを産生する参照データが予め決定され、データベースに記録される。参照データは組織状態と相関する。この教示に基づき、参照データ及びQPは種々の方法にて決定することができる。データベースで使用可能な典型的なデータは親出願にて記載されている。参照データ及びQPを得る及び使用する他の方法は、この理解及び示唆から当業者にとって明白である。
【0025】
従って、この開示によりインヴィボ心臓組織形成パラメータのリアルタイム評価のための光学時間分解法が教示される。インヴィボ心臓組織の損傷を産生する工程と同時に、光学インタロゲーション照射パルスがインヴィボ心臓組織の第1の組織に導かれる。誘起放射は少なくとも一つの信号時間プロファイルを備え、それは強度対時間の測定である。信号時間プロファイルから得られる信号データと、少なくとも一つの参照時間プロファイルからの参照データとの間の差を定量化することにより、少なくとも一つの定量化パラメータ(QP)が決定され、そしてインヴィボ心臓組織の少なくとも一つの現在の状態が前記QPから決定される。親出願で記載されているカテーテルが、アブレーションエネルギーをインヴィボ心臓組織へ照射して損傷を産生するために使用される。この場合、カテーテルは、心臓組織の第1組織に光学インタロゲーション放射パルスを導くための少なくとも一つの光路を組み込み、更に、心臓組織の第2組織からの誘起放射を集光するための少なくとも一つの光路を包含する。インヴィボ心臓組織へのRFエネルギー、低温エネルギー、光エネルギー、又は、熱を適用することにより、損傷が産生される。
【0026】
インヴィボ心臓組織のインタロゲーションのために使用されるパルスは、種々のパルス持続時間及びフォーマットを有することが可能である。パルス持続時間は10nsまであるが、光学的には10ps以下のオーダーである。単色発光、複数波長光、又は、連続スペクトル光が、パルス光のために使用される。約600nmから約1500nmの範囲内の波長が特に有益であることが判明している。パルスが複数の波長又は連続スペクトル波長から構成される場合、信号時間プロファイルはn数のスペクトルバンドに分割され、ここで、各々のスペクトルバンドn、即ち特定の又は所定のスペクトルバンドの時間プロファイル、はT(n)として参照される時間プロファイルを備える。時々、信号データを探知又は各々のスペクトルバンドnのための個々のデータ点へ分割することが望ましい。このように、所定のスペクトルバンドの時間プロファイルの個々のデータ点は、本件出願においてP{T(n)}として時々参照される。従って、この個々のデータ点P{T(n)}は、特定のシグナル時間プロファイルであるデジタル表現を形成し、このデジタル表現は一連の遅延時間においてシグナル強度値を提供する。
【0027】
所定の遅延時間での個々のデータ点は、様々な手法で規格化される。ある方法は、個々のデータ点の予め定められたセットによりデジタル表現の少なくとも一つの点を割ることである。このようにQPは、所定の遅延時間において規格化された少なくとも一セットの個々のデータ点を包含する。デジタル表現の少なくとも一部及び予め定められた個々のデータ点のセットの関数として、規格化は概ね実行される。このような個々のデータ点の予め定められたセットは、しばしば参照データの少なくとも一部を包含する。損傷が産生される又は予め存在するデータベースから得られる前に、参照時間プロファイルは、組織部位から得られる。データベース内のデータは、本件発明の技術分野における当業者が種々の方法にて集光及び蓄積が可能である。
【0028】
信号時間プロファイルから得られるシグナルデータと、少なくとも一つの参照時間プロファイルからの参照データとの間における差の定量化は、種々の方法にて実行可能である。本件出願には、定量化の手法の実施例が記載されている。実施例により当業者は他の手段も理解可能である。例えば、定量化工程は、多数の各々のスペクトルバンドnのためのデータ点P{T(n)}のセットの少なくとも2つの点の間における数式を使用する工程を有する。その工程は、各々のスペクトルバンドnの異なるスペクトルバンドのためのデータ点P{T(n)}のセットの少なくとも2つの点の間における数式を使用することにより達成される。その工程を実行する別方法は、各々のスペクトルバンドnのためのデータ点P{T(n)}のセットのためのフィッティングパラメータを産生する方法である。差を定量化する別の方法は、各々のスペクトルバンドnの異なるスペクトルバンドからのデータ点P{T(n)}のセットの遅延時間に対応するデータ点の間における数式適用により産生されるデータセットに、フィッティングパラメータを産生する手法を包含する。差を定量化する別例は、対応の所定の遅延時間での異なるスペクトルバンドからのデータ点の間における数式の適用に続き、1以上の所定の遅延時間での個々の値を産生することを包含する。
【0029】
現在の組織の状態は、付加的な情報を導くために更に使用される。例えば、現在の状態が特定の深さAにおける現在の損傷深度のために決定される場合、損傷を産生する時間が公知であるため、深さAに対する損傷形成速度(心臓組織アブレーションの比)が決定され、深さBの損傷を形成するために必要なアブレーション時間比が外挿される。ある有益な実施例では、この方法により約4mmの深さでの現在の深さが決定され、次いで約8mmの深さへの損傷形成速度が決定され、最後に、この速度から、深さAより深い深さBの損傷を形成するために必要なアブレーション時間が外挿される。別の実施例では、損傷形成速度が、心臓アブレーション損傷深度と、約8mmまでの損傷深度のための集光放射の少なくとも一つの定量化パラメータとの間における実質的線形関係を用いて評価される。別の重要な実施例では、現在の損傷深度及び損傷形成速度の少なくとも一つが、心臓アブレーション損傷深度と、約8mmまでの損傷深度のための集光放射の少なくとも一つの定量化パラメータとの間における単調な関係を用いて評価される。本実施例及びその他の実施例において、定量化パラメータは損傷深度が変化するにつれて単調に変化する。
【0030】
本開示により、QPが組織状態についての有益情報を決定するために判断されることの重要な実施例が得られる。本開示における示唆により、当業者はQP判断のその他の手法を認識可能である。例えば、スチームマイクロバブルの形成は、損傷が産生される際の異なるスペクトルバンドにおける1以上の定量化パラメータの時間的発達を監視することにより探知される。単位時間当たりの損傷の深さの変化を監視することにより、組織アブレーション比が決定される。損傷における凝集の存在は、損傷形成の間に異なるスペクトルバンドにおける1以上の定量化パラメータの時間的発達を監視することにより決定される。また、損傷形成の間に異なるスペクトルバンドにおける1以上の定量化パラメータの時間的発達を監視することにより、焦げが損傷にて探知される。更に、1以上の定量化パラメータの変化割合が、アブレーション深度、即ち約1.5cmまで、を外挿するために使用される。通常組織、異常組織、及び、アブレーションカテーテルの適切若しくは不適切接触、又は、その他のエネルギー源の存在は、QPを、予め存在するデータベースから得られる規格化された参照時間プロファイルと比較することにより決定される。
【0031】
本件発明の前述の記載は説明のためのものであり、発明を限定するものではない。上述の示唆の点から多数の改変例及び変形例が可能である。開示された実施形態は本件発明の理念を説明することのみを意図しており、その実際の適用においては当業者ならば種々の改変を伴う応用が可能で有る。発明の範囲は次に記載される請求項の記載によって規定される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C