(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
害虫忌避成分(A)を0.1〜50質量%、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)を0.1〜20質量%、および溶剤(C)を99.8〜30質量%含有することを特徴とする、害虫忌避剤組成物。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、5〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは5〜9であってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、n=0かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム付加重合している。)
害虫忌避成分(A)を0.1〜50質量%、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)を0.1〜20質量%、および溶剤(C)を99.8〜30質量%含有することを特徴とする、害虫忌避剤組成物。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、1〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは1〜9であってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、0≦n≦3(n=0を除く)かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム付加重合している。)
【背景技術】
【0002】
害虫忌避剤は、ダニ、蚊、ハエ、アブ、ノミ、シラミ等の飛来、吸血性害虫から人体を守るために使用される。害虫忌避成分としては、一般的に、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、ピレスロイド剤、植物由来の精油等が使用されており、中でも、蚊に対する忌避効果が高いDEETをエタノール等の溶剤で可溶化したものが最も汎用的に使用されている。
【0003】
しかしながら、これらの害虫忌避成分は揮発性を有しており、かつ、経皮吸収もされ易いことから、皮膚表面から消失して効果が持続しにくいという課題があった。また、持続性を改善するために、忌避成分の配合量を増やすと、べたつきが生じたり、経皮吸収された忌避成分による刺激が生じたり、製剤の安定性が悪化するという課題があった。
【0004】
特許文献1では、害虫忌避成分とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤と組み合わせることにより、油性成分である害虫忌避成分の製剤安定性を改善できることが記載されている。しかし、こうした界面活性剤の添加は害虫忌避成分の経皮吸収を促進することになり、皮膚刺激が懸念される。
【0005】
また、特許文献2では、害虫忌避成分と特定のグリコールまたはグリコールエーテルを組み合わせることにより、噴霧後数時間にわたり優れた害虫忌避効果を発揮できることが記載されている。しかし、低分子のグリコールエーテルを使用した場合、それ自身が皮膚内部へ浸透して皮膚刺激を引き起こす可能性がある。
【0006】
一方、特許文献3では、特定構造のモノマーを構成単位とする共重合体を組み合わせることで、害虫忌避効果の持続性に優れ、べたつきやてかりが少ない害虫忌避剤が開示されている。しかしながらこの組成物は、製剤の安定性が十分では無く、特に、害虫忌避成分の配合量が多い場合に安定性が悪化する場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、害虫忌避効果の持続性に優れ、皮膚に対する刺激が少なく、塗布後の感触が滑らかで、経時安定性に優れる害虫忌避剤組成物の開発には至っていなかった。
【0009】
本発明の課題は、害虫忌避効果の持続性に優れ、皮膚に対する刺激(ひりひり感)が少なく、塗布後の感触が滑らかで、経時安定性に優れる害虫忌避剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、害虫忌避成分と特定構造を有するアルキレンオキシド重合体を特定の割合で含有する害虫忌避剤組成物によって、上記課題を解決できることの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の[1]〜[6]である。
[1] 害虫忌避成分(A)を0.1〜50質量%、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)を0.1〜20質量%、および溶剤(C)を99.8〜30質量%含有することを特徴とする、害虫忌避剤組成物。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、5〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは5〜9であ
ってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、n=0かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム
付加重合している。)
[2] 前記成分(B)の5質量%水溶液の曇点が15℃以上であることを特徴とする、[1]の害虫忌避剤組成物。
[3] 前記害虫忌避成分(A)がN,N−ジエチル−m−トルアミドであることを特徴とする、[1]たは[2]の害虫忌避剤組成物。
[4] 害虫忌避成分(A)を0.1〜50質量%、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)を0.1〜20質量%、および溶剤(C)を99.8〜30質量%含有することを特徴とする、害虫忌避剤組成物。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、1〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは1〜9であ
ってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、0≦n≦3(n=0を除く)かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム
付加重合している。)
[5] 前記成分(B)の5質量%水溶液の曇点が15℃以上であることを特徴とする、[4]の害虫忌避剤組成物。
[6] 前記害虫忌避成分(A)がN,N−ジエチル−m−トルアミドであることを特徴とする、[4]または[5]の害虫忌避剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、害虫忌避効果の持続性に優れ、皮膚に対する刺激(ひりひり感)が少なく、塗布後の感触が滑らかで、経時安定性に優れる害虫忌避剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、さらに詳細に本発明の説明をする。
本発明の害虫忌避剤組成物は、害虫忌避成分(A)、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)、および溶剤(C)を含有する。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、5〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは5〜9であ
ってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、n=0かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム
付加重合している。)
あるいは、本発明の害虫忌避剤組成物は、害虫忌避成分(A)、下記の式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体(B)、および溶剤(C)を含有する。
Z−{O(PO)k(EO)m−(BO)nH}a ・・・(I)
(式(1)において、
Zは、1〜9個の水酸基を有する化合物からすべての前記水酸基を除いた残基であり、
aは1〜9であ
ってかつ前記化合物から除かれた前記水酸基の数と同じであり、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、
k、mおよびnは、それぞれ、オキシプロピレン基、オキシエチレン基および炭素数4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1≦k≦40、0≦m≦40、0≦n≦3(n=0を除く)かつ(k+m+n)×a≧8であり、
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部であり、
mが1以上の場合、POとEOはランダム付加重合している。)
【0014】
<害虫忌避成分(A)>
本発明に用いる害虫忌避成分(A)は、害虫を寄せ付けない作用を有する薬剤で、例えば、ピレトリン、ジャスモリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、シフルトリン、ビフェントリン、シラフルオフェン等のピレスロイド剤、プロポクスル、フェノブカルブ等のカーバメート剤、ジクロルボス、フェンチオン、フェニトロチイオン等の有機リン剤、イミダクロプリド、アセタミプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系等の害虫駆除成分、また、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、ピカリジン、2,3,4,5−ビス−(δ−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール(MGK−11)、イソシンコメロン酸ジ−n−プロピル(MGK−326)等の化学合成忌避成分、ナフタリン、しょうのう、パラジクロロベンゼン等の衣類用防虫剤、ユーカリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ハッカ油、ゼラニウム油、ローズマリー油、タイム油等の精油、p−メンタン−3,8−ジオール、L−メントール、シネオール、α−ピネン、シトロネラール、カンファー、リナロール等の精油由来の害虫忌避成分が挙げられる。
【0015】
中でも、安全性、害虫忌避効果の観点から、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、ピカリジン、精油が好ましく、より好ましくはN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)である。
【0016】
害虫忌避成分(A)の添加量は、害虫忌避剤組成物に0.1〜50質量%とする。害虫忌避成分(A)の添加量が0.1質量%未満の場合は、十な害虫忌避効果が得られない。このため、害虫忌避成分(A)の添加量は、0.1質量%以上とするが、1質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましい。また、害虫忌避成分(A)の添加量が50質量%を上回ると、塗布時の感触が悪化したり、皮膚刺激を生じたりする場合がある。このため、害虫忌避成分(A)の添加量は、50質量%以下とするが、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0017】
<アルキレンオキシド誘導体(B)>
本発明に用いるアルキレンオキシド誘導体(B)は、本発明の課題を達成するための必須成分であり、式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体である。このアルキレンオキシド誘導体は、塗布後に滑らかな感触を付与することができ、成分(A)の揮発を抑制すると共に成分(A)の経皮吸収を抑制することにより、害虫忌避成分による皮膚刺激を低減しつつ害虫忌避効果の持続性を向上させることができる。さらに、成分(B)は成分(A)の溶剤への可溶化を促進することにより、製剤の安定性を向上させることができる。
【0018】
アルキレンオキシド誘導体(B)は、5質量%水溶液の曇点が15℃以上であるものが、さらに製剤の経時安定性、害虫忌避効果の持続性、塗布後の滑らかさが改善するため好ましい。アルキレンオキシド誘導体(B)5質量%水溶液の曇点は、より好ましくは25℃以上であり、さらに好ましくは35℃以上である。
この曇点は、JIS K 3211「界面活性剤用語」にて、「界面活性剤水溶液の温度を上昇させたとき、白濁し始める温度である。通常は、白濁し相分離が起こる。」と定義されており、以下の方法で測定することができる。アルキレンオキシド誘導体の5質量%水溶液を試験管に約40mmの高さまで入れた後、温度計をこの中に入れ、曇りを生ずる温度より約2〜3℃高い温度まで温度計でよく撹拌しなから加温し、再びよく撹拌しながら空冷し、透明になったときの温度を、曇点とすることができる。また、室温で溶液が曇りを生じている時は、溶液が透明になるまでよく撹拌しながら冷却し、再びよく撹拌しながら濁りを生ずる温度まで徐々に加温し、次に徐々に撹拌しながら冷却し、透明になった時の温度を測定し、曇点とすることができる。
【0019】
前記の式(I)において、Zは、炭素数1以上で1〜9個の水酸基を有する化合物から前記水酸基をすべて除いた残基である。aは、Zの化合物の水酸基の数であり、1〜9である。つまり、前記した1〜9個の水酸基を有する化合物の化学式は、Z(OH)aとなる。
【0020】
1〜9個の水酸基を有する化合物Z(OH)aとしては、a=1であればメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、a=2であればエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、a=3であればグリセリン、トリメチロールプロパン、a=4であればエリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、アルキルグリコシド、a=5であればキシリトール、a=6であればジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、a=8であればショ糖、トレハロース、a=9であればマルチトール等が挙げられる。また、これらを混合して用いても良い。
【0021】
aが10以上であると、べたつき感が生じることがある。このため、aを9以下とするが、8以下が更に好ましく、6以下が最も好ましい。また、aは1以上とするが、3以上が更に好ましい。aが3〜6であると、塗布時の滑らかさと製剤の経時安定性がさらに改善する。
【0022】
前記の式(I)において、kはPOの平均付加モル数であり、1≦k≦40であり、好ましくは1≦k≦20で、より好ましくは1≦k≦5である。kが0であると、害虫忌避効果の持続性、製剤安定性が悪化し、さらに、害虫忌避成分の経皮吸収を抑制できなくなり、刺激が生じる場合がある。kが40を越えると、塗布後の滑らかさが低下する。
【0023】
mはEOの平均付加モル数であり、0≦m≦40であり、好ましくは2≦m≦20、より好ましくは2≦m≦10である。mが40を越えると、べたつき感が生じてしまう。
【0024】
POとEOの合計量を100質量部としたとき、POの質量割合は、25〜100質量部とする。POの質量割合が25質量部未満であると、害虫忌避効果の持続性が悪化し、刺激を生じる場合があり、製剤の経時安定性も悪化する場合があるので、POの質量割合を25質量部以上とするが、30質量部以上とすることが好ましく、40質量部以上とすることが更に好ましい。また、POの質量割合は、70質量部以下が好ましく、60質量部以下が更に好ましい。
【0025】
EOの平均付加モル数mが0より大きいときには、POとEOはランダム状に結合している必要がある。EOの平均付加モル数mが0より大きいときにPOとEOがブロック状に結合していると、害虫忌避成分の浸透を抑制できないだけでなく、アルキレンオキシド誘導体(B)により、皮膚刺激を生じる場合があり、さらに、塗布後の滑らかさが悪化する。
【0026】
BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシ(1−エチルエチレン)基、オキシ(1,1−ジメチルエチレン)基、オキシ(1,2−ジメチルエチレン)基である。BOは、特に好ましくは1,2−ブチレンオキシド由来のオキシ(1−エチルエチレン)基である。
【0027】
nは、BOの平均付加モル数であり、0≦n≦3である。nが3を越えると製剤の安定性が悪化する場合があるので、nを3以下とするが、2以下とすることが更に好ましい。また、nは好ましくは1以上である。式(1)においては、nが0でない場合には、(BO)nが末端水素原子に結合していることが必要である。
【0028】
EO、PO、BOの各付加モル数は、(k+m+n)×a≧8の関係を満足する。(k+m+n)×aは、EO、PO、BOの総付加モル数に相当する。(k+m+n)×aが8未満であると、塗布後にひりひり感を感じる場合があり、塗布後の滑らかさも悪化する。(k+m+n)×aの上限は特にないが、塗布後の滑らかさの観点からは、150以下であることが好ましく、さらに好ましくは80未満である。
【0029】
本発明の式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、1個以上の水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを付加重合した後、炭素数4のアルキレンオキシドを反応させることによって得られる。ただしBOは、EO、POの付加重合後に反応させる必要がある。
【0030】
アルキレンオキシド誘導体(B)の含有量は、害虫忌避剤組成物中に0.1〜20質量%とする。アルキレンオキシド誘導体(B)の含有量が0.1質量%未満の場合は、害虫忌避効果の持続性が十分でなく、さらに害虫忌避成分の経皮吸収による皮膚刺激が生じる場合があり、塗布後の感触も十分でなく、製剤の安定性が悪化する場合があるので、0.1質量%以上とするが、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、成分(B)の配合量が20質量%を上回ると、塗布後の滑らかさが悪化するので、20質量%以下とするが、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0031】
本発明の害虫忌避剤組成物は、成分(A)、成分(B)および更に溶剤(C)の合計量を100質量%とする。すなわち、成分(C)の量は、成分(A)および成分(B)の残部であり、99.8〜30質量%含有されている。
【0032】
溶剤(C)としては、水、水溶性有機溶媒、および水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が好ましく、水と水溶性有機溶剤の質量比率が3:1〜1:1の混合溶媒がさらに好ましい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を例示できる。水溶性有機溶剤の中でもメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールが好ましく、さらに好ましくはエタノールである。
【0033】
本発明の害虫忌避剤組成物に対しては、通常添加可能な添加剤を更に加えることができる。こうした添加剤としては、界面活性剤、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油等の油分、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等の防腐剤、エチレンジアミン四酢酸塩、エデト酸等のキレート剤、ジステアリン酸エチレングリコール等のパール化剤、パラメトキシケイ皮酸エステル、メトキシジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤、増粘剤、酸化防止剤、pH調整剤、植物抽出物、アミノ酸、ビタミン類、色素、香料を適宜配合することができる。
【0034】
本発明の害虫忌避剤組成物は、常法に従って製造できる。また、その剤型は任意であり、透明系液体状、パール系液体状、ペースト状、クリーム状、ゲル状、固形状、エアゾール型スプレー、非エアゾール型のスプレー状として使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を説明する。
〔合成例1〕
(合成例1)
[ポリオキシエチレン(9モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ブチルエーテルの合成]
1−ブタノール74gと触媒として水酸化カリウム4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド396gとプロピレンオキシド580gの混合物を滴下させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸でpHを中性とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、化合物B−1を得た。
【0036】
(合成例2)
[ポリオキシブチレン(3モル)ポリオキシエチレン(7モル)ポリオキシプロピレン(5モル)グリセリンエーテルの合成]
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム6gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド308gとプロピレンオキシド290gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。さらに滴下装置によりブチレンオキシド216gを滴下させ、2時間攪拌し反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、化合物B−4を得た。
【0037】
(合成例3〜11)
合成例1または合成例2と同様に、表1に示す化合物B−2、3、5〜11の合成を行った。合成した各化合物の5質量%水溶液を調製し、JIS K 3211に準じて曇点を測定した。
【0038】
更に、化合物B−12として、トリプロピレングリコールを準備し、化合物B−13として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを準備した。更に、POE(20)POP(8)セチルエーテル(ブロックポリマー)および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体を準備した。
【0039】
<実施例1〜10および比較例1〜6>
表2,表3に示した各成分を所定の比率で配合し、害虫忌避剤組成物を下記の方法で調製した。
【0040】
<調製法>
成分(A)、(B)および(C)を表2、表3に示した比率となるように室温にて均一になるまで混合し、液状の害虫忌避剤組成物を得た。
【0041】
<評価法>
(a)塗布後の感触
パネラー10名が、本発明品および比較品を皮膚に塗布した際の感触を、それぞれ、下記評価基準にて評価した。10名のパネラーの評価の平均が3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
4:非常に皮膚表面が滑らかな感触であると判断。
3:皮膚表面が滑らかであると判断。
2:滑らかであるが、ややべたつきがあると判断。
1:皮膚表面がべたつく感触であると判断。
0:皮膚表面が非常にべたつく感触であると判断。
【0042】
(b)害虫忌避効果の持続性
パネラー10名が本発明品および比較品を使用した際の害虫忌避効果の持続性を下記評価基準にて評価し、評点をつけた。10名のパネラーの評価の平均が3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
4:害虫忌避効果が一日中持続していると判断。
3:害虫忌避効果が8時間程度持続していると判断。
2:害虫忌避効果が4時間程度持続していると判断。
1:害虫忌避効果の持続性が数時間であると判断。
0:害虫忌避効果が持続しないと判断。
【0043】
(c)塗布後の皮膚刺激(ひりひり感)
10名のパネラーが、本発明品、および比較品50μLを前腕に30分間閉塞貼付した。30分以内に貼付部に感じた刺痛をスティンギングとして、下記評価基準で評価し、評点をつけた。10名のパネラーの評価の平均が2.0以上を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
3点:貼付部に刺痛を感じなかった場合。
1点:貼付部に僅かに刺痛を感じた場合。
0点:貼付部に明らかに刺痛を感じた場合。
【0044】
(d)製剤の経時安定性
本発明品および比較品の害虫忌避剤50mLを透明ガラス容器に入れて密封し0℃、25℃および40℃で1ヶ月間保存した。1ヵ月後それぞれの外観を観察して、下記の基準で判定した。
○:安定性が非常に良好(いずれの温度条件においても外観の変化がなかった場合)。
△:安定性が良好(いずれかの温度条件において僅かに析出、固化または分離するが、25℃で静置後6時間以内に復元した場合)。
×:安定性が不良(いずれかの温度において析出、固化、分離または変色が著しかった場合)。
【0045】
実施例1〜10より、本発明の害虫忌避剤組成物は、いずれも塗布後の感触が良好で、害虫忌避効果の持続性に優れ、皮膚刺激が低く、製剤の経時安定性も良好であった。
【0046】
一方、比較例1〜6では十分な効果が得られていない。
比較例1では、本願の成分(B)に相当するアルキレンオキシド誘導体がPOを有していないため、害虫忌避効果の持続性、塗布後のひりひり感、製剤の経時安定性が不十分で、塗布後の滑らかさも十分ではない。
比較例2では、成分(B)に相当するアルキレンオキシド誘導体のPO比率が25質量%未満であるため、塗布後のひりひり感を抑制する効果が不十分で、害虫忌避効果の持続性、製剤の経時安定性が十分でない。
【0047】
比較例3では、本願の成分(B)に相当するアルキレンオキシド誘導体の総AO付加モル数(k+m+n)×aが8未満であるため、塗布後のひりひり感を抑制する効果が不十分で、害虫忌避効果の持続性、塗布後の滑らかさも十分満足できるものではなかった。
比較例4では、本願の成分(B)に相当するアルキレンオキシド誘導体のEOとPOがブロック状に結合しているため、塗布後のひりひり感を抑制する効果、滑らかさが不十分であった。
比較例5では、本願の成分(B)に相当する成分がPOを有しておらず、総AO付加モル数(k+m+n)×aも8未満であるため、塗布後の滑らかさ、ひりひり感を抑制する効果、製剤の経時安定性が不十分であった。
比較例6では、本願の成分(B)以外の水溶性ポリマーが配合されているため、製剤の経時安定性が不十分で、塗布後のひりひり感を抑制する効果も十分ではなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】