(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、凝集性が低いという問題点がある。特許文献3に記載の技術では、常温で貯蔵した場合、短期間で増粘が起こるため、使い勝手が悪いという問題点がある。特許文献4に記載の技術では、塩基度の上昇とともに残留アルミニウムの減少が見られるが、それに伴って凝集性が低くなる傾向がある。しかも、生産工程において反応液の増粘が発生するため、反応のコントロールが難しい。特許文献5に記載の技術では、脱塩工程を必要とすることから、製造コストの上昇を避けることができない。特許文献6に記載の技術では、アルミナゲル懸濁液が溶解する前に硫酸アルミニウムを添加するため、反応液の増粘が発生し、反応のコントロールが難しいという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、経時安定性および凝集性に優れ、かつ、反応液の増粘や製造コストを低減することのできる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、Al
2O
3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%の塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを混合してアルミナゲル懸濁液を調製する第1工程と、前記アルミナゲル懸濁液を加熱して溶解させる第2工程と、前記第2工程で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる第3工程と、
を有し、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリとアルカリ金属炭酸塩とを用い、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、前記塩基性塩化アルミニウム溶液の一部、および前記アルカリ金属炭酸塩を同時に反応容器に添加、混合した後、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、前記塩基性塩化アルミニウム溶液の残部、および前記アルミン酸アルカリを同時に前記反応容器に添加、混合して前記アルミナゲル懸濁液を調製することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る製造方法において、アルミナゲル懸濁液を調製した以降、加熱する際、加熱温度が高い程、および加熱時間が長い程、増粘しにくくなるが、凝集性能が低下する。これに対して、アルミナゲル懸濁液を調製した以降、加熱する際、加熱温度が低い程、および加熱時間が短い程、増粘しやすくなるが、凝集性能が上昇する。また、加熱する際、硫酸濃度が高い程、増粘しやすくなる。そこで、本発明では、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程までは、硫酸根が存在しない状態あるいは硫酸根の濃度が低い状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、加熱温度が低く、加熱時間が短くても、反応液の増粘を抑えることができる。すなわち、アルミナゲル懸濁液が溶解する前の第2工程までに最終濃度まで硫酸根を添加すると、反応液が増粘するが、本発明では、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程で硫酸根の最終濃度を調整するため、反応液の増粘を抑制することができる。従って、反応のコントロールが容易である。また、粘度上昇を抑えるために長時間の加熱や高温での加熱を行う必要がないので、生産性およびエネルギーコストを向上することができる。また、脱塩工程を必要としない。それ故、製造コストを低減することができる。また、最終的な硫酸根の濃度を調整した第3工程で熟成を行うので、凝集性が高いとともに、未溶解のゲルが部分的に残ることを回避することができる。また、第3工程では、硫酸根の添加後に熟成を行うため、経時安定性を向上することができる。また、第3工程において、硫酸根の添加後の熟成を過剰な温度で行うと、沈澱を生じやすいが、本発明では、第3工程での熟成時の温度を80℃以下に設定してあるため、沈殿の発生が起こりにくい。
また、塩基性塩化アルミニウム溶液の中和にアルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリを使用するため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくしても、溶解性に優れるアルミナゲルを得ることができる。また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減することができるので、アルカリ金属を脱塩処理によって除去しなくても、アルカリ金属炭酸塩に起因する硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の経時安定性の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記第2工程では、前記アルミナゲル懸濁液を塩基性塩化アルミニウム溶液と混合して加熱する態様を採用することができる。第1工程で、所望の塩基度のアルミナゲル懸濁液が得られる場合、第2工程での塩基性塩化アルミニウム溶液の添加を行わなくてもよいが、第2工程でも塩基性塩化アルミニウム溶液の添加を行えば、第1工程で、所望の塩基度のアルミナゲル懸濁液が得られない場合でも、塩基度が例えば50%〜80%の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を得ることができる。この場合、第2工程で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、塩基度が30%を超え、55%未満でよい。
【0009】
本発明において、前記第2工程では、前記アルミナゲル懸濁液を前記塩基性塩化アルミニウム溶液と混合した状態で50℃から80℃の温度で加熱する態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記第2工程では、前記塩基性塩化アルミニウム溶液を予め加温しておき、前記第2工程で加温された前記塩基性塩化アルミニウム溶液に対して前記アルミナゲル懸濁液を加える態様を採用することができる。ここで、塩基性塩化アルミニウム溶液を予め加温する際の温度は、例えば、50℃から80℃までである。
【0011】
本発明において、前記第1工程で用いた前記塩基性塩化アルミニウム溶液、および前記第2工程で用いた前記塩基性塩化アルミニウム溶液の少なくとも一方における硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)が5質量%未満である態様を採用することができる。第2工程の溶液の硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%未満の場合、非常に増粘しにくく、凝集性能が良い。
【0012】
本発明において、前記溶液が、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる態様を採用することができる。かかる態様のように、第2工程が終
了した時点で溶液での硫酸根の濃度を制限しておけば、反応液の増粘を抑制することができる。この場合でも、最終的な硫酸根の濃度は第3工程で調整することができる。また、第2工程の溶液が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる場合、増粘しにくく、凝集性能がより良い。これに対して、第2工程の溶液の硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で10質量%以上の場合、製造中に増粘するリスクが高くなる。
【0016】
本発明
では、前記第1工程において、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリとアルカリ金属炭酸塩とを用いる場合、前記アルカリ金属炭酸塩の使用量は、最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムのAl
2O
3に対し、CO
3/Al
2O
3のモル比で0.01〜0.5となる量である態様を採用することができる。
【0019】
本発明の別態様では、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、Al2O3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%の塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを混合してアルミナゲル懸濁液を調製する第1工程と、前記アルミナゲル懸濁液を加熱して溶解させる第2工程と、前記第2工程で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる第3工程と、を有し、前記第1工程では、pHを5以下に維持しつつ、前記塩基性塩化アルミニウム溶液に前記アルカリ塩を前記アルミナゲル懸濁液の塩基度が50%〜85%となるまで添加
することを特徴とする。この場合、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩を用いることができる。かかる態様によれば、ゲルの溶解性を高めることができる。従って、省エネルギーの生産方法で、凝集性能に優れ、安定性に優れた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を得ることができる。また、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリを用いてもよい。また、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリとアルカリ金属炭酸塩とを用いてもよい。
【0020】
本
発明のさらに別態様では、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、Al2O3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%の塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを混合してアルミナゲル懸濁液を調製する第1工程と、前記アルミナゲル懸濁液を加熱して溶解させる第2工程と、前記第2工程で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる第3工程と、を有し、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリとアルカリ金属炭酸塩とを用い、前記第1工程では、pHを5以下に維持しつつ、前記塩基性塩化アルミニウム溶液に前記アルミン酸アルカリを添加した後、前記アルミナゲル懸濁液の塩基度が50%〜85%となるまで前記アルカリ金属炭酸塩を添加する
ことを特徴とする。かかる態様によれば、塩基性塩化アルミニウム溶液の中和にアルミン酸アルカリを使用し、その後、アルカリ金属炭酸塩を使用するため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくしても、溶解性に優れるアルミナゲルを得ることができる。また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくすることができるので、アルカリ金属炭酸塩に起因する硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の経時安定性の低下を抑制することができる。
【0021】
本発明において、
本発明のさらに別態様では、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法において、Al2O3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%の塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを混合してアルミナゲル懸濁液を調製する第1工程と、前記アルミナゲル懸濁液を加熱して溶解させる第2工程と、前記第2工程で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる第3工程と、を有し、前記第1工程では、前記塩基性塩化アルミニウム溶液および前記アルカリ塩を同時に混合手段に供給して瞬間的に混合し、前記混合手段による部分中和混合によって、前記塩基性塩化アルミニウム溶液と前記アルカリ塩とを反応させる
ことを特徴とする。この場合、前記混合手段としては、例えば、ヒューガルポンプ、ラインミキサー、ホモミキサー等を用いることができる。これらの混合手段を用いれば、第1工程に要する時間を短縮することができる。また、第2工程において溶解性に優れるアルミナゲル懸濁液を得ることができる。
この場合、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩を用いることができる。かかる態様によれば、ゲルの溶解性を高めることができる。従って、省エネルギーの生産方法で、凝集性能に優れ、安定性に優れた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を得ることができる。また、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリを用いてもよい。また、前記第1工程では、前記アルカリ塩として、アルミン酸アルカリとアルカリ金属炭酸塩とを用いてもよい。
【0022】
本発明において、前記第1工程では、前記塩基性塩化アルミニウム溶液と前記アルカリ塩との反応を50℃未満の温度で行う態様を採用することができる。
【0023】
本発明においてにおいて、前記第3工程において得られた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である態様を採用することができる。
【0024】
本発明において、前記第2工程では、前記アルミナゲル懸濁液の溶解を2時間以内とする態様を採用することができる。第2工程での溶解時間が長い程、凝集性能が低下するが、溶解時間が2時間以内であれば、凝集性能の低下を抑制することができる。但し、第2工程での溶解時間が短い方が、凝集性能が向上するので、溶解時間は1時間以内であることが好ましい。
【0025】
本発明においてにおいて、前記第3工程では、熟成時間が2時間以内である態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る製造方法において、アルミナゲル懸濁液を調製した以降、加熱する際、加熱温度が高い程、および加熱時間が長い程、増粘しにくくなるが、凝集性能が低下する。これに対して、アルミナゲル懸濁液を調製した以降、加熱する際、加熱温度が低い程、および加熱時間が短い程、増粘しやすくなるが、凝集性能が上昇する。また、加熱する際、硫酸濃度が高い程、増粘しやすくなる。そこで、本発明では、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程までは、硫酸根が存在しない状態あるいは硫酸根の濃度が低い状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、加熱温度が低く、加熱時間が短くても、反応液の増粘を抑えることができる。すなわち、アルミナゲル懸濁液が溶解する前の第2工程までに最終濃度まで硫酸根を添加すると、反応液が増粘するが、本発明では、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程で硫酸根の最終濃度を調整するため、反応液の増粘を抑制することができる。従って、反応のコントロールが容易である。また、粘度上昇を抑えるために長時間の加熱や高温での加熱を行う必要がないので、生産性およびエネルギーコストを向上することができる。また、脱塩工程を必要としない。それ故、製造コストを低減することができる。また、最終的な硫酸根の濃度を調整した第3工程で熟成を行うので、凝集性が高いとともに、未溶解のゲルが部分的に残ることを回避することができる。また、第3工程では、硫酸根の添加後に熟成を行うため、経時安定性を向上することができる。また、第3工程において、硫酸根の添加後の熟成を過剰な温度で行うと、沈澱を生じやすいが、本発明では、第3工程での熟成時の温度を80℃以下に設定してあるため、沈殿の発生が起こりにくい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面等を参照しながら、本発明の実施の形態に係る硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液(硫酸根含有ポリ塩化アルミニウム)の製造方法を説明する。本発明に係る塩基性塩化アルミニウムは、以下の一般式で表される。
Al
a(OH)
b(SO
4)
cX
dCl
3a+d−b−2c
但し、Xはアルカリ金属を表す。また、本発明における塩基度は、下式で示される。
100×b/3a
【0029】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を示す説明図である。本形態では、
図1に示す方法によって、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を製造する。また、硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である。
【0030】
(製造方法)
本形態で使用する各材料の配合比は、例えば以下の通りである。
塩基性塩化アルミニウム溶液(第1工程ST1) 521質量部
アルミン酸ナトリウム(第1工程ST1) 81質量部
炭酸ナトリウム(第1工程ST1) 5質量部
硫酸アルミニウム溶液(第3工程ST3) 132質量部
但し、
塩基性塩化アルミニウム溶液
Al
2O
3=14質量%、塩基度45%、SO
4=0%
アルミン酸ナトリウム
Al
2O
3=24質量%、Na/Alモル比=1.2
硫酸アルミニウム溶液
Al
2O
3=8質量%
【0031】
本形態では、
図1に示すように、第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液(Al
2O
3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%)とアルカリ塩を混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する。アルミナゲル懸濁液のAl
2O
3濃度は、5質量%〜15質量%の範囲が適している。アルミナゲル懸濁液のAl
2O
3濃度が5質量%未満、あるいは15質量%を超える場合、粘度が非常に高くなってしまう。第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応を、例えば、50℃未満の温度で行う。第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応温度が低いほどアルミナゲル懸濁液の溶解性が良い。従って、第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応を、例えば、50℃未満の温度で行うのが良く、好ましくは40℃未満が良い。本形態において、第1工程ST1で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)は5質量%未満、例えば、1質量%未満である。
【0032】
第1工程ST1では、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの一方、あるいは双方を用いることができる。第1工程ST1において、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、およびアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの双方を用いた場合、アルカリ金属炭酸塩の使用量は、例えば、最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムのAl
2O
3に対し、CO
3/Al
2O
3のモル比で0.01〜0.5となる量、好ましくは0.01〜0.2となる量である。
【0033】
かかる第1工程ST1では、張水下、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを同時に添加、混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する方法を採用することができる。この場合、特にpHを7〜11、より好ましくは8〜10のアルカリ側に維持することで、第2工程ST2における未溶解分が極めて少量となる。従って、残渣をほとんど含まない硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムが得られるため、濾過等により残渣を除去する工程が不要となる。また、第1工程ST1では、pHを5以下に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液にアルカリ塩をアルミナゲル懸濁液の塩基度が50%〜85%となるまで添加する方法を採用してもよい。
【0034】
また、アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリの双方を用いる場合、第1工程ST1では、張水下、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液の一部、およびアルカリ金属炭酸塩を同時に反応容器に添加、混合した後、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液の残部、およびアルミン酸アルカリを同時に反応容器に添加、混合してアルミナゲル懸濁液を調製する方法を採用することができる。かかる方法によれば、塩基性塩化アルミニウム溶液の中和にアルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリを使用するため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくしても、溶解性に優れるアルミナゲルを得ることができる。また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を低減することができるので、アルカリ金属を脱塩処理によって除去しなくても、アルカリ金属炭酸塩に起因する硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の経時安定性の低下を抑制することができる。この場合、塩基性塩化アルミニウム溶液およびアルカリ塩を同時に混合手段に供給して瞬間的に混合し、混合手段による部分中和混合によって、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを反応させる。この場合、混合手段としては、例えば、ヒューガルポンプ、ラインミキサー、ホモミキサー等を用いることができる。これらの混合手段を用いれば、第1工程に要する時間を短縮することができる。また、第2工程において溶解性に優れるアルミナゲル懸濁液を得ることができる。
【0035】
また、アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリの双方を用いる場合、第1工程ST1では、pHを5以下に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液にアルミン酸アルカリを添加した後、アルミナゲル懸濁液の塩基度が50%〜85%となるまでアルカリ金属炭酸塩を添加してもよい。かかる方法によれば、塩基性塩化アルミニウム溶液の中和にアルミン酸アルカリを使用し、その後、アルカリ金属炭酸塩を使用するため、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくしても、溶解性に優れるアルミナゲルを得ることができる。また、アルカリ金属炭酸塩の使用量を少なくすることができるので、アルカリ金属炭酸塩に起因する硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の経時安定性の低下を抑制することができる。
【0036】
次に、第2工程ST2では、アルミナゲル懸濁液を第1工程ST1での加熱温度より高い温度まで加熱して溶解させる。本形態では、例えば、アルミナゲル懸濁液を50℃〜80℃の温度、例えば65℃の温度に加熱しながら撹拌し、アルミナゲル懸濁液を溶解させる。本形態において、第2工程ST2では、アルミナゲル懸濁液の溶解を例えば2時間以内とする。第2工程ST2での溶解時間が長い程、凝集性能が低下するが、溶解時間が2
時間以内であれば、凝集性能の低下を抑制することができる。但し、第2工程ST2での溶解時間が短い方が、凝集性能が向上するので、溶解時間は1時間以内であることが好ましい。第1工程ST1および第2工程ST2を行う際、アルミナゲル懸濁液は、調製直後〜48時間以内に溶解させる方が好ましい。調製直後は溶解性が良いが、経時で徐々に溶解性が悪くなる。常温でおよそ48時間以上経過すると、第2工程ST2での溶解に長時間を要し、そのため凝集性が低下しやすい。
【0037】
次に、第3工程ST3では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる。但し、第3工程ST3での熟成温度は低い方が、凝集性が高いので、熟成温度は70℃以下であることが好ましい。本形態において、第3工程ST3では、熟成時間が例えば2時間以内である。従って、本形態では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、65℃の温度で1時間熟成させる。
【0038】
かかる第3工程ST3において、第2工程ST2で得られた溶液に対する硫酸塩の添加量は、第3工程において得られた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%となるように設定される。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程ST2までは、硫酸根が存在しない状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程ST3において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、反応液の増粘を抑えることができる。すなわち、アルミナゲル懸濁液が溶解する前の第2工程ST2で硫酸根を添加すると、反応液が増粘するが、本形態では、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程ST3で硫酸根を添加するため、反応液の増粘を抑制することができる。従って、反応のコントロールが容易である。また、粘度上昇を抑えるために長時間の加熱や高温での加熱を行う必要がないので、生産性およびエネルギーコストを向上することができる。また、脱塩工程を必要としない。それ故、製造コストを低減することができる。また、最終的な硫酸根の濃度を調整する第3工程ST3で熟成を行うので、凝集性が高いとともに、未溶解のゲルが部分的に残ることを回避することができる。また、第3工程ST3では、硫酸根の添加後に熟成を行うため、経時安定性を向上することができる。また、第3工程ST3において、硫酸根の添加後の熟成を過剰な温度で行うと、沈澱を生じやすいが、本形態では、第3工程ST3での熟成時の温度を80℃以下に設定してあるため、沈殿の発生が起こりにくい。
【0040】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係る硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を示す説明図である。本形態でも、実施の形態1と同様、
図2に示す方法によって、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を製造する。また、硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である。
【0041】
本形態で使用する各材料の配合比は、例えば以下の通りである。
塩基性塩化アルミニウム溶液(第1工程ST1) 197〜235質量部
アルミン酸ナトリウム(第1工程ST1) 120質量部
炭酸ナトリウム(第1工程ST1) 11質量部
塩基性塩化アルミニウム(第2工程ST2) 270〜307質量部
硫酸アルミニウム溶液(第3工程ST3) 91質量部
但し、
塩基性塩化アルミニウム溶液(ST1、ST2)
Al
2O
3=14質量%、塩基度=45%、SO
4=0%
アルミン酸ナトリウム
Al
2O
3=21質量%、Na/Alモル比=1.4
硫酸アルミニウム溶液
Al
2O
3=8質量%
【0042】
本形態では、
図2に示すように、第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液(Al
2O
3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%)とアルカリ塩を混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する。アルミナゲル懸濁液のAl
2O
3濃度は、5質量%〜15質量%の範囲が適している。第1工程では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応を、例えば、50℃未満の温度で行う。第1工程ST1で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)は5質量%未満、例えば、1質量%未満である。
【0043】
第1工程ST1では、実施の形態1と同様、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの一方、あるいは双方を用いることができる。第1工程ST1において、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、およびアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの双方を用いた場合、アルカリ金属炭酸塩の使用量は、例えば、最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムのAl
2O
3に対し、CO
3/Al
2O
3のモル比で0.01〜0.5となる量、好ましくは0.01〜0.2となる量である。
【0044】
本形態でも、実施の形態1と同様、アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリの双方を用いる場合、第1工程ST1では、張水下、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液の一部、およびアルカリ金属炭酸塩を同時に反応容器に添加、混合した後、pHを5〜11の範囲に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液の残部、およびアルミン酸アルカリを同時に反応容器に添加、混合してアルミナゲル懸濁液を調製する。また、アルカリ塩として、アルカリ金属炭酸塩およびアルミン酸アルカリの双方を用いる場合、第1工程ST1では、pHを5以下に維持しつつ、塩基性塩化アルミニウム溶液にアルミン酸アルカリを添加した後、アルミナゲル懸濁液の塩基度が50%〜85%となるまでアルカリ金属炭酸塩を添加してもよい。
【0045】
次に、第2工程ST2において、アルミナゲル懸濁液を第1工程ST1での加熱温度より高い温度まで加熱して溶解させる。本形態では、アルミナゲル懸濁液を塩基性塩化アルミニウム溶液と混合して加熱する。その際、塩基性塩化アルミニウム溶液を予め加温しておき、第2工程では、加温された塩基性塩化アルミニウム溶液に対してアルミナゲル懸濁液を加える。第2工程ST2で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)は5質量%未満、例えば、1質量未満である。また、第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、例えば、塩基度が30%を超え、55%未満である。かかる塩基性塩化アルミニウム溶液は、例えば、塩酸と水酸化アルミニウムを加圧加熱反応した液や、金属アルミニウムを塩酸または低塩基度の塩化アルミニウムに溶解した液等を用いることができる。
【0046】
本形態では、例えば、アルミナゲル懸濁液と塩基性塩化アルミニウム溶液との混合液を50℃〜80℃の温度、例えば65℃の温度に加熱しながら撹拌し、アルミナゲル懸濁液を溶解させる。本形態において、第2工程ST2では、アルミナゲル懸濁液の溶解を例えば2時間以内とする。第2工程ST2での溶解時間が長い程、凝集性能が低下するが、溶解時間が2時間以内であれば、凝集性能の低下を抑制することができる。但し、第2工程ST2での溶解時間が短い方が、凝集性能が向上するので、溶解時間は1時間以内である
ことが好ましい。
【0047】
次に、第3工程ST3では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる。但し、第3工程ST3での熟成温度は低い方が、凝集性が高いので、熟成温度は70℃以下であるであることが好ましい。本形態において、第3工程ST3では、熟成時間が例えば2時間以内である。従って、本形態では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、65℃の温度で1時間熟成させる。
【0048】
かかる第3工程ST3において得られた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である。
【0049】
このように構成した場合も、実施の形態1と同様、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程ST2までは、硫酸根が存在しない状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程ST3において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、反応液の増粘を抑えることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0050】
また、本形態では、第2工程ST2でも塩基性塩化アルミニウム溶液の添加を行うので、塩基度が例えば50%〜80%の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を得ることができる。
【0051】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3に係る硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を示す説明図である。本形態でも、実施の形態1と同様、
図3に示す方法によって、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を製造する。また、硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である。
【0052】
但し、実施の形態1、2では、第2工程ST2で得られた溶液が硫酸根を含んでいなかったが、本形態では、第2工程ST2で得られた溶液が、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる。本形態では、以下に説明するように、第1工程ST1で調整したアルミナゲル懸濁液が、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる。
【0053】
本形態では、
図3に示すように、第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液(Al
2O
3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%)とアルカリ塩を混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する。アルミナゲル懸濁液のAl
2O
3濃度は、5質量%〜15質量%の範囲が適している。第1工程では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応を、例えば、50℃未満の温度で行う。本形態でも、実施の形態1と同様、第1工程ST1では、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの一方、あるいは双方を用いることができる。第1工程ST1において、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、およびアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの双方を用いた場合、アルカリ金属炭酸塩の使用量は、例えば、最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムのAl
2O
3に対し、CO
3/Al
2O
3のモル比で0.01〜0.5となる量、好ましくは0.01〜0.2となる量である。
【0054】
本形態において、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、硫酸根が濃
度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%である。かかる塩基性塩化アルミニウム溶液は、塩基性塩化アルミニウム溶液に、所定量の水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つを添加することによって調製することができる。また、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液として、第3工程ST3で得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液より硫酸根の濃度が低い硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を用いてもよい。
【0055】
次に、第2工程ST2において、アルミナゲル懸濁液を第1工程ST1での加熱温度より高い温度まで加熱して溶解させる。本形態では、アルミナゲル懸濁液を塩基性塩化アルミニウム溶液と混合して加熱する。その際、塩基性塩化アルミニウム溶液を予め加温しておき、第2工程では、加温された塩基性塩化アルミニウム溶液に対してアルミナゲル懸濁液を加える。第2工程ST2で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)は5質量%未満、1質量%未満である。但し、第1工程ST1で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液は、硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%であるため、第2工程ST2で得られた溶液は、硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%である。ここで、第2工程ST2で得られた溶液の硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で10質量%以上の場合、製造中に増粘するリスクが高くなる。また、第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、例えば、塩基度が30%を超え、55%未満である。
【0056】
本形態では、例えば、アルミナゲル懸濁液と塩基性塩化アルミニウム溶液との混合液を50℃〜80℃の温度、例えば65℃の温度に加熱しながら撹拌し、アルミナゲル懸濁液を溶解させる。本形態において、第2工程ST2では、アルミナゲル懸濁液の溶解を例えば2時間以内とする。第2工程ST2での溶解時間が長い程、凝集性能が低下するが、溶解時間が2時間以内であれば、凝集性能の低下を抑制することができる。但し、第2工程ST2での溶解時間が短い方が、凝集性能が向上するので、溶解時間は1時間以内であることが好ましい。
【0057】
次に、第3工程ST3では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる。但し、第3工程ST3での熟成温度は低い方が、凝集性が高いので、熟成温度は70℃以下であるであることが好ましい。本形態において、第3工程ST3では、熟成時間が例えば2時間以内である。従って、本形態では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、65℃の温度で1時間熟成させる。
【0058】
かかる第3工程ST3において得られた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%となる。
【0059】
このように構成した場合も、実施の形態1と同様、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程ST2までは、硫酸根が少量存在する状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程ST3において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、反応液の増粘を抑えることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0060】
なお、本形態では、実施の形態2において、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)を5質量%〜10質量%としたが、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液、および第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液の双方の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)が、例えば5質量%〜10質量%であってもよい。また、実施の形態1において、第1工程ST1で用
いる塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)を5質量%〜10質量%としてもよい。
【0061】
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3では、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)を5質量%〜10質量%としたが、第1工程ST1、および第2工程ST2の一方または双方において、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つを加えて、第1工程ST1で得られたアルミナゲル懸濁液や、第2工程ST2で得られた溶液に硫酸根を含ませてもよい。
【0062】
[実施の形態4]
図4は、本発明の実施の形態4に係る硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液の製造方法を示す説明図である。本形態でも、実施の形態1と同様、
図4に示す方法によって、塩基度が50%以上の硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を製造する。また、硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%である。
【0063】
但し、実施の形態1、2では、第2工程ST2で得られた溶液が硫酸根を含んでいなかったが、本形態では、第2工程ST2で得られた溶液が、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる。本形態では、以下に説明するように、第2工程ST2で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液が、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%の硫酸根を含んでいる。
【0064】
本形態では、
図4に示すように、第1工程ST1では、塩基性塩化アルミニウム溶液(Al
2O
3濃度が10質量%〜20質量%、かつ塩基度が30%〜65%)とアルカリ塩を混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する。アルミナゲル懸濁液のAl
2O
3濃度は、5質量%〜15質量%の範囲が適している。第1工程ST1で用いた塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)は5質量%未満、例えば1質量%未満である。
【0065】
第1工程では、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩との反応を、例えば、50℃未満の温度で行う。本形態でも、実施の形態1と同様、第1工程ST1では、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの一方、あるいは双方を用いることができる。第1工程ST1において、アルカリ塩として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、およびアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリの双方を用いた場合、アルカリ金属炭酸塩の使用量は、例えば、最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウムのAl
2O
3に対し、CO
3/Al
2O
3のモル比で0.01〜0.5となる量、好ましくは0.01〜0.2となる量である。
【0066】
次に、第2工程ST2において、アルミナゲル懸濁液を第1工程ST1での加熱温度より高い温度まで加熱して溶解させる。本形態では、アルミナゲル懸濁液を塩基性塩化アルミニウム溶液と混合して加熱する。その際、塩基性塩化アルミニウム溶液を予め加温しておき、第2工程では、加温された塩基性塩化アルミニウム溶液に対してアルミナゲル懸濁液を加える。第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、例えば、塩基度が30%を超え、55%未満である。
【0067】
本形態において、第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液は、硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%である。従って、第2工程ST2で得られた溶液は、硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で5質量%〜10質量%である。ここで、第2工程ST2で得られた溶液の硫酸根が濃度比(SO
4/Al
2O
3)で1
0質量%以上の場合、製造中に増粘するリスクが高くなる。かかる塩基性塩化アルミニウム溶液は、塩基性塩化アルミニウム溶液に、所定量の水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つを添加することによって調製することができる。また、第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液として、第3工程ST3で得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液より硫酸根の濃度が低い硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液を用いてもよい。
【0068】
本形態では、例えば、アルミナゲル懸濁液と塩基性塩化アルミニウム溶液との混合液を50℃〜80℃の温度、例えば65℃の温度に加熱しながら撹拌し、アルミナゲル懸濁液を溶解させる。本形態において、第2工程ST2では、アルミナゲル懸濁液の溶解を例えば2時間以内とする。第2工程ST2での溶解時間が長い程、凝集性能が低下するが、溶解時間が2時間以内であれば、凝集性能の低下を抑制することができる。但し、第2工程ST2での溶解時間が短い方が、凝集性能が向上するので、溶解時間は1時間以内であることが好ましい。
【0069】
次に、第3工程ST3では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、30℃〜80℃の温度で熟成させる。但し、第3工程ST3での熟成温度は低い方が、凝集性が高いので、熟成温度は70℃以下であるであることが好ましい。本形態において、第3工程ST3では、熟成時間が例えば2時間以内である。従って、本形態では、第2工程ST2で得た溶液に、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つの硫酸塩を加え、65℃の温度で1時間熟成させる。
【0070】
かかる第3工程において、第2工程ST2で得られた溶液に対する硫酸塩の添加量は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で10質量%〜20質量%である。従って、第3工程ST3において得られた硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根は、濃度比(SO
4/Al
2O
3)で15質量%〜30質量%となる。
【0071】
このように構成した場合も、実施の形態1と同様、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程ST2までは、硫酸根が少量存在する状態としておき、アルミナゲル懸濁液が溶解した後の第3工程ST3において、最終的な硫酸根の濃度を調整する。このため、アルミナゲル懸濁液を溶解させる第2工程において、反応液の増粘を抑えることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0072】
[実施の形態4の変形例]
実施の形態4では、第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液の硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)を5質量%〜10質量%としたが、第1工程ST1、および第2工程ST2の一方または双方において、水溶性硫酸塩、硫酸アルミニウムおよび塩基性硫酸アルミニウムの少なくとも1つを加えて、第1工程ST1で得られたアルミナゲル懸濁液や、第2工程ST2で得られた溶液に硫酸根を含ませてもよい。
【0073】
[他の実施の形態]
第1工程ST1で塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩とを同時に添加、混合し、アルミナゲル懸濁液を調製する際、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩の供給口をそれぞれ3点以上に分ける方法を採用してもよい。かかる態様によれば、塩基性塩化アルミニウム溶液とアルカリ塩の供給が分散され、均一に混合しやすくなり、第2工程ST2において溶解性に優れるアルミナゲル懸濁液を得ることができる。
【0074】
実施の形態3の第1工程ST1で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液、および実施の形態4の第2工程ST2で用いる塩基性塩化アルミニウム溶液については、硫酸根の濃度比
(SO
4/Al
2O
3)を5質量%〜10質量%としたが、他の材料の配合量等や最終的に得られる硫酸根含有塩基性塩化アルミニウム溶液における硫酸根濃度によっては、硫酸根の濃度比(SO
4/Al
2O
3)が、例えば5質量%〜35質量%の塩基性塩化アルミニウム溶液を用いてもよい。