特許第6814478号(P6814478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814478
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】耐震ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/08 20060101AFI20210107BHJP
   F24B 1/02 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F24C15/08 S
   F24B1/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-158318(P2017-158318)
(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公開番号】特開2019-35556(P2019-35556A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年4月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月23日に京都大学防災研究所において試験を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】502278275
【氏名又は名称】株式会社京阪エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】川上 孝司
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224613(JP,A)
【文献】 特開平09−022483(JP,A)
【文献】 特開平01−065391(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0201922(US,A1)
【文献】 特開2007−202631(JP,A)
【文献】 特開2007−200257(JP,A)
【文献】 実開平02−070106(JP,U)
【文献】 実開昭62−027035(JP,U)
【文献】 特開平11−036716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/08
F24B 1/00 − 1/28
A47B 97/00
F16M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋内に配置され、固形燃料を燃焼させる燃焼室が設けられたストーブ本体と該ストーブ本体を床面から離間させる少なくとも1以上の脚部とを備えるストーブに用いられる耐震ユニットであって、
前記ストーブ本体の底面に取り付けられるストーブ側固定部と、
前記ストーブ本体の直下に配置されて前記床面に固定される建物側固定部と、
前記ストーブ側固定部と前記建物側固定部とを連結して、前記ストーブ側固定部を前記建物側固定部に対して固定する連結部とを備え、
前記ストーブ側固定部が、略直方体形状をなす筐体を備え、前記筐体の相対する両側面に該両側面を貫通する一対の貫通孔が所定間隔を隔てて2つ設けられて、
前記建物側固定部が、一対の略L字形状をなす板状体を備え、前記板状体の前記床面から直立する一面には上端縁部から鉛直下方に延伸する切り欠きが前記貫通孔に対応する位置に2つ設けられて、
前記連結部が、2つの棒体を備え、
前記棒体は、それぞれ前記貫通孔と前記切り欠きに挿入して配置されることを特徴とする耐震ユニット。
【請求項2】
前記ストーブ側固定部の前記ストーブ本体に近接して配置される上面の相対する両端縁部から鉛直上方に延伸する延伸部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の耐震ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーブに耐震性能を与える耐震ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、暖房器具やインテリアとして屋内に配置されるストーブに耐震安全基準は設けられていない。しかし、ストーブは約100kg〜200kg程度の重量を有するため、例えば震度4や5等の地震が発生すると、建物自体は倒壊しないがストーブが移動して建物の壁や床を傷つけたり、時には窓等を突き破って屋外に飛び出たりして建物を破損してしまう恐れがある。
【0003】
ここで、ストーブには様々な形態が存在するが、薪等の固形燃料を燃やす燃焼室が設けられたストーブ本体とストーブ本体を床面から離間した状態で支える複数の脚部とで構成されるものがある。このようなストーブにおいて上述した被害を防ぐ方法としては、脚部を床面に固定する方法が挙げられる。また、例えば特許文献1に記載されているように、基台と、ストーブの脚部を固定した状態で基台上を水平方向に移動可能な滑動板とを備える構成も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−224613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脚部を固定してしまうと、地震発生時にストーブ本体の揺れによって生じる応力が全て脚部にかかり、脚部が折れてしまうことがある。ストーブの脚部が折れると、ストーブが転倒して建物の床や壁を損傷することに加えて、ストーブ使用時であれば、倒れたストーブの燃焼室から高温の燃焼物が屋内に散らばって、火災を引き起こすおそれがあるという問題がある。
【0006】
また、ストーブはインテリアとしての美観が重視される。しかし、特許文献1の構成では、基台が建物の床面にストーブよりも大きく張り出して配置されるため、ストーブのインテリアとしての美観を損ねてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであって、震災時におけるストーブの転倒によって生じる建物の被害を防ぐとともに、ストーブのインテリアとしての美観を損ねない耐震ユニットを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の免震ユニットは、建物の屋内に配置され、固形燃料を燃焼させる燃焼室が設けられたストーブ本体と該ストーブ本体を床面から離間させる少なくとも1以上の脚部とを備えるストーブに用いられる耐震ユニットであって、前記ストーブ本体の底面に取り付けられるストーブ側固定部と、前記ストーブ本体の直下に配置されて前記床面に固定される建物側固定部と、前記ストーブ側固定部と前記建物側固定部とを連結して、前記ストーブ側固定部を前記建物側固定部に対して固定する連結部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上述の構成によれば、ストーブ本体の底面に取り付けられたストーブ側固定部を連結部を介して建物側固定部に固定することによって、ストーブ本体を建物に対して固定する。そのため、地震発生時におけるストーブ本体の揺れを制限するので、脚部にかかる応力を減らすとともにストーブが室内を移動することを防止して、ストーブによってもたらされる建物の損傷や火災などの被害を防ぐことができる。
【0010】
また、ストーブ側固定部及び建物側固定部はともにストーブ本体の直下に配置されるので、視認されにくく、ストーブのインテリアとしての美観を損ねることを防止できる。
【0011】
本発明の耐震ユニットの一実施形態としては、前記ストーブ側固定部または前記建物側固定部の少なくともいずれか一方が略直方体形状をなすものを挙げることができる。
【0012】
上述のように構成すれば、ストーブ側固定部とストーブ本体または建物側固定部と床面との接地面積をさらに広げて、より確実にストーブ本体の揺れを防止するとともに、ストーブが室内を移動することを防止することができる。
【0013】
本発明の耐震ユニットの別の一実施形態としては、前記ストーブ側固定部が略直方体形状をなし、前記ストーブ本体に近接して配置される上面の相対する両端縁部から鉛直上方に延伸する延伸部をさらに備えるものを挙げることができる。
【0014】
通常、ストーブ側固定部をストーブ本体の底面に取り付ける場合、ストーブ本体の底面が露出するようにストーブを横倒しにして作業を行う必要がある。しかしながら、上述した延伸部をさらに備えるストーブでは、横倒しになくともストーブ本体と床面との隙間から延伸部をストーブ本体に取り付ければ、ストーブ側固定部をストーブ本体に取り付けることができるので、耐震ユニットを取り付ける作業効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の耐震ユニットの別の一実施形態としては、前記連結部が、前記ストーブ側固定部と前記建物側固定部とに挿通して配置される複数の棒体で構成されるものを挙げることができる。
【0016】
上述の構成によれば、連結部がストーブ側固定部と建物側固定部とを挿通する棒体で構成される。そのため、棒体がストーブ側固定部と建物側固定部に挿通した状態であれば、ストーブ側固定部と建物側固定部の位置を変更しても、ストーブ側固定部と建物側固定部とを棒体で連結させることができる。したがって、ストーブの型番や大きさに関わらず、本発明の耐震ユニットを取り付けることが可能となる。また、複数の棒体を用いることで、地震発生時にストーブ側固定部の周方向にかかる応力を分散させることができ、ストーブ固定部がストーブ本体から外れて本発明の耐震ユニットがストーブ本体から外れることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、震災時におけるストーブの転倒によって生じる建物の被害を防ぐとともに、ストーブのインテリアとしての美観を損ねない耐震ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における耐震ユニットを示す概略図。
図2】第1実施形態における耐震ユニットを示す斜視図。
図3】第1実施形態の変形例における耐震ユニットを示す斜視図。
図4】第2実施形態における耐震ユニットを示す斜視図。
図5】第3実施形態における耐震ユニットを示す概略図。
図6】第3実施形態における耐震ユニットを示す斜視図。
図7】第3実施形態における耐震ユニットを示す平面図。
図8】兵庫県南部地震神戸波を再現した場合におけるサンプル1及びサンプル2の試験結果を示すグラフ。
図9】兵庫県南部地震神戸波を再現した加速度及び変位を示すグラフ。
図10】東北地方太平洋沖地震芳賀波を再現した場合におけるサンプル1及びサンプル2の試験結果を示すグラフ。
図11】東北地方太平洋沖地震芳賀波を再現した加速度及び変位を示すグラフ。
図12】熊本地震益城波を再現した場合におけるサンプル1及びサンプル2の試験結果を示すグラフ。
図13】熊本地震益城波を再現した加速度及び変位を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の耐震ユニットは、地震発生時に建物の屋内に配置されたストーブの移動及び破損を防止するものである。以下、図面を用いてその詳細について説明する。
【0020】
まず、ストーブについて説明する。
ストーブ100は、薪等の固形燃料を燃焼させて遠赤外波長の光を放出することにより、室内の温度を温めるものである。このストーブ100は、図1に示すように、薪等の固形燃料を燃焼させる燃焼室105及び該燃焼室105に通じる透光部材で構成された窓101を備える筐体形状をなすストーブ本体103と、該燃焼室105で発生した煙を屋外へ排煙するための煙突102と、ストーブ本体103の底面の4隅からそれぞれ鉛直下方に延出して、ストーブ本体103を床面から離間させる複数の脚部104とを備えるものである。
【0021】
また、ストーブ本体103には、ストーブ本体103の底面から鉛直下方に突出して燃焼室105で生成された灰を集塵する灰取り部106が設けられている。
【0022】
<第1実施形態>
第1実施形態における耐震ユニット1は、ストーブ本体103の底面に取り付けられるストーブ側固定部2と、ストーブ本体103の直下に配置されて床面に固定される建物側固定部3と、ストーブ側固定部2と建物側固定部3とを連結して、ストーブ側固定部2を建物側固定部3に対して固定する連結部4とを備える。
【0023】
ストーブ側固定部2は、ストーブ100に固定されるものであって、図1及び図2に示すように、鉛直下方に配置される一面が開口した略直方体形状の上枠体2aを備える。この上枠体2aの鉛直上面には、ストーブ本体103に固定するための第1孔部7が複数設けられている。このストーブ側固定部2は、ストーブ本体103にボルト等の固着具を用いて取り付けられる。
【0024】
建物側固定部3は、ストーブ側固定部2の真下に配置されるとともに建物に固定されるものである。図2に示すように、鉛直方向の両面が開口する略直方体形状をなす下枠体5を備える。この下枠体5の対向する両側面には、その床面と接する一端縁からそれぞれ水平方向に延在する矩形状をなす板状体6が設けられる。この板状体6をそれぞれ建物の床面にボルト等の固着具を用いて固定することによって、建物側固定部3が建物に固定される。
【0025】
ここで、ストーブ側固定部2の上枠体2aの開口は、建物側固定部3の下枠体5よりも大きくなるように構成されるとともに、建物側固定部3の下枠体5の高さは、ストーブ側固定部2の上枠体2aの高さよりも高くなるように構成されている。そのため、ストーブ側固定部2と建物側固定部3とをそれぞれ配置すると、図2に示すように、ストーブ側固定部2の開口に建物側固定部3が嵌入して、上枠体2aの側周面と下枠体5の側周面とが重なって配置される。
【0026】
連結部4は、図1及び図2に示すように、ストーブ側固定部2と建物側固定部3とを連結して、ストーブ側固定部2を建物側固定部3に対して固定するものであって、本実施形態ではボルト等の固着具4aが用いられる。
【0027】
この連結部4は、建物側固定部3の下枠体5の側周面とストーブ側固定部2の上枠体2aの側周面とが重なった部分をそれぞれ固定することによって、ストーブ側固定部2と建物側固定部3とを連結する。
【0028】
上述のように構成された耐震ユニット1は、ストーブ本体103の底面に取り付けられたストーブ側固定部2を連結部4を介して建物側固定部3に固定することによって、ストーブ本体103を建物に対して固定する。そのため、地震発生時におけるストーブ本体103の揺れを制限することができるので、脚部104にかかる負荷を減らすとともにストーブ100が室内を移動することを防止して、ストーブ100によってもたらされる建物の損傷や火災などの被害を防ぐことができる。
【0029】
また、ストーブ側固定部2及び建物側固定部3はともにストーブ本体103の直下に配置されるので、視認されにくく、ストーブ100のインテリアとしての美観を損ねることを防止できる。
【0030】
さらに、ストーブ側固定部2及び建物側固定部3が略直方体形状をなすので、ストーブ側固定部2とストーブ本体103または建物側固定部3と床面との接地面積をさらに広げて、より確実にストーブ100の脚部104にかかる負荷を減らすとともに、ストーブ100が室内を移動することを防止することができる。
【0031】
加えて、ストーブ側固定部2と建物側固定部3とを別部材で構成し、これらを連結部4で連結する構成によって、脚部104の鉛直方向の長さが変化しても、本実施形態の耐震ユニット1を取り付けることが可能となる。
【0032】
第1実施形態の変形例としては、例えば図3に示す耐震ユニット1’を挙げられる。この耐震ユニット1’は、連結部4’をあて板8とボルト等の固着具9とで構成したものである。
【0033】
あて板8は、金属板で構成され、ストーブ側固定部2の上枠体2aの側周面から建物側固定部3の下枠体5の側周面を覆うように配置される。また、あて板8には、複数の孔部を設けられる。固着具9は、該孔部に配置され、あて板8を介してストーブ側固定部2を建物側固定部3に固定する。
【0034】
これにより、ストーブ100の形態によっては床面とストーブ本体103との距離が長く、ストーブ側固定部2の上枠体2aの側周面と建物側固定部3の下枠体5の側周面とが重なる領域が狭い場合であっても、連結部4’のあて板8によってストーブ側固定部2と建物側固定部3とを連結することが可能となる。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態における耐震ユニット10は、ストーブ側固定部12の構造が第1実施形態と異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様であるため同一の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
ストーブ側固定部12は、ストーブ100に固定されるものであって、図4に示すように、鉛直下方に配置される一面が開口した略直方体形状をなす上枠体12aを備える。
【0037】
この上枠体12aの相対する両側面の上端縁部には、鉛直上方に延伸する延伸部13がそれぞれ設けられている。
【0038】
延伸部13には、ストーブ本体103に固定するための複数の貫通孔14が等間隔にそれぞれ形成されている。なお第1孔部7については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
第2実施形態における耐震ユニット10では、以下のような格別の効果を奏する。
【0040】
通常、略直方体形状をなすストーブ側固定部12をストーブ本体103の底面に取り付ける場合、ストーブ本体103の底面が露出するように、ストーブ100を横倒しにして作業を行う必要がある。しかしながら、第2実施形態の耐震ユニット10では、ストーブ本体103と床面との隙間から、ストーブ本体103の底面から突出する灰取り部106の側面に延伸部13をあてて、延伸部13の貫通孔14からボルト等の固着具を取り付ければ、ストーブ側固定部12をストーブ本体103に取り付けることができる。そのため、ストーブ100を横倒しにする必要がなくなり、作業効率を向上させることができる。
【0041】
<第3実施形態>
第3実施形態における耐震ユニット20について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
第3実施形態における耐震ユニット20は、図5図6及び図7に示すように、ストーブ側固定部22、建物側固定部23及び連結部24の構成が第1、第2実施形態と異なっている。
【0043】
ストーブ側固定部22は、図6及び図7に示すように、直方体形状をなす筐体22aを備える。この筐体22aの相対する両側面には、該両側面を貫通する貫通孔25が複数形成され、本実施形態では2つ設けられている。また、筐体22aの鉛直方向に相対する両面には、同位置に第1孔部7が複数設けられている。
【0044】
建物側固定部23は、図6及び図7に示すように、一対の略L字形状をなす板状体で構成された装着部材23aを備える。
【0045】
この装着部材23aの床面と接地する一面123aには楕円形状をなす縦長の第2孔部26が両端部に2つ設けられ、床面から直立する一面123bには端縁部から鉛直下方に延伸する半楕円形状をなす縦長の切り欠き27が2つ設けられている。
【0046】
この2つの切り欠き27は、ストーブ側固定部22の2つの貫通孔25が設けられた間隔と同程度の間隔となるように構成され、貫通孔25の開口幅と切り欠き27の開口幅も同程度をなすものである。
【0047】
連結部24は、複数の円筒形状をなす棒体24aで構成されており、この棒体24aの横断面の直径は、上述した貫通孔25及び切り欠き27の開口径よりも小さくなるように構成されている。また、棒体24aの軸方向の長さは、ストーブ側固定部22の筐体22aの両側面に形成された貫通孔25を十分貫くことができる程度に長く構成されている。なお、図示していないが、この棒体24aにはネジ切りがその側周面全体に渡って形成されている。
【0048】
上述のように構成した耐震ユニット20の取付け方法について説明する。
【0049】
まず、図7に示すように、ストーブ側固定部22の貫通孔25に連結部24の棒体24aをそれぞれ挿通させて、棒体24aの両端部を筐体22aの貫通孔25から突出させる。この状態で、ストーブ側固定部22をストーブ本体103に固定する。
【0050】
次に、ストーブ側固定部22を挟めるだけの十分な間隔をあけて、建物側固定部23を床面に配置して、床面と接地する一面123aに設けられた第2孔部26からボルト等の固着具を挿入して床面と建物側固定部23とを固定する。
【0051】
この状態で、ストーブ側固定部22に取り付けた連結部24の棒体24aを建物側固定部23の床面から直立する一面123bの切り欠き27に嵌めこみ、ボルト等の固着具を用いて棒体24aを建物側固定部23に固定する。これによって、ストーブ側固定部22と建物側固定部23とが連結部24によって連結される。
【0052】
第3実施形態における耐震ユニット20では、棒体24aを介してストーブ側固定部22と建物側固定部23を連結するので、棒体24aがストーブ側固定部22と建物側固定部23に挿通された状態であれば、ストーブ側固定部22と建物側固定部23との位置を変更しても棒体24aでストーブ側固定部22と建物側固定部23とを連結することができる。そのため、ストーブ100の型番や大きさに関わらず、本発明の耐震ユニット20を取り付けることができる。また、複数の棒体24aを用いることで、ストーブ側固定部22の周方向にかかる力を分散させて、ストーブ固定部22が建物側固定部23から外れることを防止できる。
【0053】
また、切り欠き27を縦長に構成することによって、棒体24aを建物側固定部23に固定する場合に、脚部104の鉛直方向の長さに応じて適宜その固定位置を変化させることができる。
【0054】
本発明は、上述した構成に限定されるものではない。
例えば、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態ともに、ストーブ側固定部の構成と建物側固定部の構成をそれぞれ入れ替えたものであっても構わない。また、ストーブ固定部をストーブに固定するものや建物側固定部を建物に固定するものは固着具に限らず、接着剤等を用いることもできる。また、固着具の個数も適宜自由に変更できる。
【0055】
さらに、第3実施形態における連結具を構成する棒体の個数は、2以上の棒体を用いても構わない。また、第1孔部、第2孔部、貫通孔、切り欠き等の数や形状は適宜変更することができる。
【0056】
加えて、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態で記載した構成を種々組み合わせても構わない。
【0057】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【0058】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限られたものではない。
【実施例】
【0059】
本発明の耐震ユニットの耐震性能について調べるため、以下の試験を行った。
【0060】
試験に供するサンプルとして以下のものを用いた。
[サンプル1]
ストーブとしてネスターマーチン社製S―43を使用し、そのストーブ本体に、本発明の耐震ユニットとして第3実施形態に記載した耐震ユニットを取り付けた。
[サンプル2]
ストーブとしてネスターマーチン社製S―43を使用し、このストーブの脚部を全て床面に固定した。
【0061】
[試験方法]
上述のように構成したサンプル1及びサンプル2に対し、京都大学の防災研究所に設置されている強震応答試験装置を用いて、以下3種類の地震を再現した模擬地震を起こしてサンプルの耐震試験を行った。
(1)兵庫県南部地震「神戸波」
(2)東北地方太平洋沖地震「芳賀波」
(3)熊本地震「益城波」
【0062】
具体的には、強震応答試験装置において上述した地震を模擬した加速度及び変位を再現し、振動台に載置されたサンプルのX方向及びY方向における脚部のひずみ量を測定した。
この測定のため、サンプルであるストーブの正面(Y方向)及び側面(X方向)であって、ストーブ本体と脚部との境界部分の2箇所にそれぞれセンサを取り付けた。このセンサはひずみセンサであって、ストーブ本体と脚部との境界をまたぐように両端部が取り付けられる長尺な金属片と該金属片に固定されるセンサ本体とで構成される。また、このセンサは増幅器及びA/Dコンバータに接続されている。この構成により、地震の揺れで脚部に力がかかると金属板が曲がりまた戻ろうとするため、この変化をセンサ本体が抵抗値として検知する。この検知された信号は増幅器を用いて増幅された後にA/Dコンバータ等を用いてデジタル変換されて出力された後、ひずみ量として算出される。
【0063】
以下に、(1)(2)(3)の地震を模擬した場合における試験結果をそれぞれ示す。
【0064】
(1)兵庫県南部地震「神戸波」の試験結果
まず、兵庫県南部地震「神戸波」の試験結果を図8及び図9に示す。
図8に示すように、脚部だけを固定したサンプル2は、図9に示す振動台の変位や加速度に比例して、脚部にひずみが生じているのに対し、本発明の耐震ユニットを設置したサンプル1はほとんど脚にひずみが生じていないことが分かる。
【0065】
(2)東北地方太平洋沖地震「芳賀波」
次に、東北地方太平洋沖地震「芳賀波」の試験結果を図10及び図11に示す。
図10に示すように、脚部だけを固定したサンプル2は、(1)と同様にX方向及びY方向ともに図11に示す振動台の変位や加速度に比例して、脚部にひずみが生じているのに対し、本発明の耐震ユニットを設置したサンプル1はほとんど脚部にひずみが生じていないことが分かる。
【0066】
(3)熊本地震「益城波」
最後に、熊本地震「益城波」の試験結果を図12及び図13に示す。
図12に示すように、脚だけを固定したサンプル2は、(1)や(2)と同様にX方向及びY方向ともに図13に示す振動台の変位や加速度に比例して、脚部にひずみが生じているのに対し、本発明の耐震ユニットを設置したサンプル1はほとんど脚部にひずみが生じていないことが分かる。
【0067】
以上(1)、(2)、(3)の試験結果から、本発明における耐震ユニットを用いた場合、脚部にひずみが生じておらず、脚部にかかる応力を大幅に低減することが明らかとなった。そのため、本発明による耐震ユニットを用いれば、地震の揺れによって脚部が折れることを防止して、震災時におけるストーブの転倒によって生じる建物の被害を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0068】
1、10、20・・・耐震ユニット
2、12、22・・・ストーブ側固定部
3、13、23・・・建物側固定部
4、14、24・・・連結部
100・・・ストーブ
103・・・ストーブ本体
104・・・脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13