(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術においては、作業者がハンマでまくらぎを打撃しながら、ポータブルマイクでまくらぎが発生する音を取得することから、作業者のスキルによってはマイクを適切にPCまくらぎに向けることができず、適切な集音が行えない結果、精度よく損傷を検知できない場合があった。
また、加振及び打音計測は、作業者がハンマやマイクを手持ち、あるいは首から提げて運搬し、軌道上にかがみこんだ姿勢で行うことから、作業環境が劣悪であるとともに、多大な労力を要する。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、容易かつ高精度にまくらぎの損傷を検出可能な損傷まくらぎ検知装置及び損傷まくらぎ検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の損傷まくらぎ検知装置は、鉄道車両が走行するレールを支持するまくらぎの損傷を検知する損傷まくらぎ検知装置であって、前記まくらぎを加振する加振手段と、前記まくらぎが加振された後に発生する音を取得する音声取得手段と、前記音声取得手段が取得した音から前記まくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出手段と、前記固有振動数検出手段が検出した前記固有振動数に基づいて前記まくらぎの損傷を判別する損傷判別手段とを備え、前記音声取得手段は、音源の方向に応じて感度が異なる指向性を有し、前記音声取得手段の感度が最高となる方向が前記まくらぎを加振した際のたわみ3次モードにおける変位が極大となる箇所又はその近傍の方向となるように前記まくらぎと前記音声取得手段との相対位置関係を規制する位置規制手段を有することを特徴とする。
これによれば、音声取得手段の感度が最高となる方向がまくらぎのたわみ3次モードにおける振幅が大きい箇所(振動の腹)の方向となるように、音声取得手段とまくらぎとの位置関係を規制する位置規制手段を設けることによって、作業者の個人差の影響を受けることなく適切な音の取得を行うことが可能となり、損傷まくらぎの検知精度を向上することができる。
また、音声取得手段を音の取得中に作業者が手持ちする必要がないため、作業者の労力を軽減することができる。
【0008】
本発明において、前記まくらぎが発生する音以外の外部騒音から前記音声取得手段を遮蔽する遮音手段を有する構成とすることができる。
これによれば、例えば保線作業中に用いられる発電機等の機械等が発生するノイズの混入を防止して、まくらぎが発生する音の集音効率を高め、固有振動数を検出する際のS/N比を高めて、固有振動数の検出精度を高めることができる。
【0009】
本発明において、前記位置規制手段は、前記レール上を転動可能な車輪と、前記車輪を回転可能に支持するとともに前記音声取得手段が固定される構造体とを有する構成とすることができる。
これによれば、損傷まくらぎ検知装置を車輪により移動可能として、取り扱いを容易化し、損傷検知作業の作業性を向上することができる。
【0010】
本発明において、前記加振手段は、前記構造体に取り付けられ前記まくらぎの長手方向における所定の打撃箇所に打撃を与える打撃手段を有する構成とすることができる。
これによれば、加振手段を音声取得手段と共通の構造体に取り付けることによって、集音範囲と打撃箇所との位置関係を固定することができ、まくらぎが発生する音をより精度よく取得することができる。
【0011】
本発明において、前記打撃手段は、前記まくらぎの長手方向における中央部又はその近傍に打撃を与える構成とすることができる。
これによれば、たわみ3次モードの腹となるまくらぎの中央部を加振することにより、3次モードの振動を確実に励起させ、固有振動数の検出精度をより高めることができる。
【0012】
本発明において、前記加振手段は、前記打撃手段を予め設定された所定の打撃力となるように前記まくらぎに衝突させるアクチュエータを有する構成とすることができる。
これによれば、アクチュエータにより打撃力が実質的に一定となるように制御することが可能となり、まくらぎに発生する3次モードの固有振動の再現性を高め、固有振動数の検出精度をさらに高めることができる。
【0013】
本発明において、複数のまくらぎに関してそれぞれ検出した前記固有振動数に関するデータを蓄積するデータ記憶手段を備え、前記損傷判定手段は、前記固有振動数が相対的に低い前記まくらぎの一群に対して損傷判定を成立させる構成とすることができる。
これによれば、相対評価により劣位のまくらぎに対して損傷判定を成立させることにより、まくらぎの交換の優先度を適切に設定することができ、効率的な維持管理を行うことができる。
【0014】
本発明において、前記損傷
判別手段は、健全時の前記まくらぎの固有振動数に対する検出された前記固有振動数の低下量が所定の閾値よりも大きい場合に損傷
の判別を成立させる構成とすることができる。
これによれば、固有振動数の抽出後、直ちに損傷
の判別を成立させることができる。
【0015】
本発明において、前記まくらぎの上面部を含む画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像に基づく画像認識によりひび割れを検出するひび割れ検出手段を備え、前記損傷
判別手段は、前記ひび割れ検出手段が前記ひび割れを検出した場合は、前記固有振動数に関わらず損傷
の判別を成立させる構成とすることができる。
これによれば、固有振動数による損傷検知とともに、まくらぎの上面部に発生したひび割れを画像認識により検出することにより、損傷検知精度をより向上することができる。
特に、3次モードの固有振動数による損傷検知はレール下部底面のひび割れ検出に有効であり、画像認識による損傷検知はまくらぎ中央部の上面のひび割れ検出に有効であることから、これらを組み合わせることにより各手法の弱点を補完することができる。
【0016】
本発明において、前記損傷
判別手段が前記損傷
の判別を成立させた前記まくらぎにマーキングを行うマーキング手段を有する構成とすることができる。
これによれば、損傷
の判別を成立させたまくらぎにマーキングを施すことにより、交換などの保守作業を容易化することができる。
【0017】
また、上述した課題を解決するため、本発明の損傷まくらぎ検知方法は、鉄道車両が走行するレールを支持するまくらぎの損傷を検知する損傷まくらぎ検知方法であって、前記まくらぎを加振し、前記まくらぎが加振された後に発生する音から前記まくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出し、前記固有振動数に基づいて前記まくらぎの損傷を判別するとともに、前記まくらぎが発生する音を、音源の方向に応じて感度が異なる指向性を有する音声取得手段によって取得し、前記音声取得手段の感度が最高となる方向が前記まくらぎを加振した際のたわみ3次モードにおける変位が極大となる箇所又はその近傍の方向となるように前記まくらぎと前記音声取得手段との相対位置関係を規制する位置規制手段を用いることを特徴とする。
本発明において、前記音声取得手段により前記音を取得する際に、前記まくらぎが発生する音以外の外部騒音から前記音声取得手段を遮蔽する遮音手段を設ける構成とすることができる。
本発明において、前記位置規制手段は、前記レール上を転動可能な車輪と、前記車輪を回転可能に支持するとともに前記音声取得手段が固定される構造体とを有する構成とすることができる。
本発明において、前記まくらぎの加振を、前記構造体に取り付けられ前記まくらぎの長手方向における所定の打撃箇所に打撃を与える打撃手段により行う構成とすることができる。
本発明において、前記打撃手段は、前記まくらぎの長手方向における中央部又はその近傍に打撃を与える構成とすることができる。
本発明において、前記打撃手段をアクチュエータにより予め設定された所定の打撃力となるように前記まくらぎに衝突させる構成とすることができる。
本発明において、複数のまくらぎに関してそれぞれ検出した前記固有振動数に関するデータを蓄積し、前記固有振動数が相対的に低い前記まくらぎの一群に対して損傷
の判別を成立させる構成とすることができる。
本発明において、健全時の前記まくらぎの固有振動数に対する検出された前記固有振動数の低下量が所定の閾値よりも大きい場合に損傷
の判別を成立させる構成とすることができる。
本発明において、前記まくらぎの上面部を含む画像を撮像し、撮像した画像に基づく画像認識によりひび割れが検出された場合は、前記固有振動数に関わらず損傷
の判別を成立させる構成とすることができる。
本発明において、損傷
の判別が成立した前記まくらぎにマーキングを行う構成とすることができる。
以上説明した各発明においても、上述した損傷まくらぎ検知装置の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、容易かつ高精度にまくらぎの損傷を検出可能な損傷まくらぎ検知装置及び損傷まくらぎ検知方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した損傷まくらぎ検知装置、及び、損傷まくらぎ検知方法の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置は、第1実施形態の損傷まくらぎ検知方法に用いられるものである。
第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置は、軌道上を走行するトロ(保線作業用の小型台車)状に構成されている。
図1は、第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置をレール長手方向から見た模式図である。
図2は、第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置をまくらぎ長手方向から見た模式図である。
【0021】
図1に示すように、鉄道車両が走行する軌道は、レールR、まくらぎS、バラストB等を有して構成されている。
左右一対のレールRは、所定の軌間だけ相互に離間させて実質的に平行に、鉄道車両の走行方向に沿って延在している。
まくらぎSは、左右のレールRを支持し、レールRからの鉛直方向荷重をバラストBに伝達するとともに、左右のレールRの軌間を保持する部材である。
まくらぎSは、その長手方向が平面視においてレールRと直交する方向(車両の車幅方向)に延在して配置され、車両の走行方向に沿って所定の間隔で配列されている。
レールRは、まくらぎSに、図示しない締結装置によって締結されている。
本実施形態において、まくらぎSは、プレストレストコンクリート製のプレストレストコンクリートまくらぎ(PCまくらぎ)が用いられる。
【0022】
プレストレストコンクリート製のまくらぎSとして、例えば、日本工業規格(JIS)に規定された3号まくらぎである3PR、3PO等のまくらぎを用いることができる。これらは日本における在来線(新幹線以外の路線)の一般的なPCまくらぎとして普及している。
3PRは、プレテンション方式のPCまくらぎである。
プレテンション方式は、PC鋼線に所定の引張力を与えてからコンクリートを型枠に打ち込む製法である。
3POは、ポストテンション方式のPCまくらぎである。
ポストテンション方式は、PC鋼棒を使用して、コンクリートが硬化してから鋼棒に引張力を与えてプレストレスを導入する製法である。
【0023】
バラストBは、まくらぎSと路盤との間に設けられる軌道構造(道床)を構成する砕石である。
バラストBは、まくらぎSからの鉛直荷重を路盤に広く分散させるとともに、軌道構造に一定の弾性力を与える機能を有する。
まくらぎSは、上面部を除く部分がバラストBに埋設されている。
【0024】
損傷まくらぎ検知装置1は、フレーム10、1位輪軸20、2位輪軸30、打撃装置40、マイクロフォン50、カメラ60、塗料噴射装置70、測定データ処理装置100等を有して構成されている。
フレーム10は、まくらぎ検知装置1の各構成部材が取り付けられる基部となる構造体である。
フレーム10は、例えば、平面形が矩形状である枠体の上部に、各部材が載置され固定される天板を設けて構成されている。
【0025】
フレーム10には、ハンドルバー11が設けられている。
ハンドルバー11は、図示しない作業者が損傷まくらぎ検知装置1を操作する際に把持する部材である。
作業者は、ハンドルバー11を押し、あるいは、引くことにより、損傷まくらぎ検知装置1を、レールRに沿って走行させることが可能である。
ハンドルバー11は、フレーム10の進行方向における一方(通常作業時の後方)側の端部から上方に突出して形成されている。
【0026】
1位輪軸20、2位輪軸30は、フレーム10の下部に、損傷まくらぎ検知装置1の進行方向に沿って、通常作業時の前方側から順次配列されている。
1位輪軸20は、2位輪軸30に対して、ハンドルバー11とは反対側(通常作業時の前方側)に配置されている。
1位輪軸20、2位輪軸30は、それぞれ車輪21,31、車軸22,32、車軸支持部23,33等を有して構成されている。
なお、2位輪軸30の車軸32、車軸支持部33は図示しないが、1位輪軸20の車軸22、車軸支持部23と実質的に同様の構成を有する。
【0027】
車輪21,31は、左右のレールR上を転動する円盤状の部材である。
車輪21,31は、レールRの頭部と当接する踏面部、及び、踏面部の内軌側から外径側につば状に張り出した図示しないフランジ部を有する。
車軸22,32は、両端部に一対の車輪21,31が固定された回転軸状の部材である。
車軸支持部23,33は、フレーム10の下部から下方に突出して設けられ、車軸22,32を、中心軸回りに回転可能に支持する部材である。
車軸支持部23,33は、車軸22,32の軸方向変位を規制する機能を有する。
これにより、フレーム10は、軌道に対する横方向変位が規制されている。
【0028】
打撃装置40は、損傷したまくらぎSを検知するため、まくらぎSに打撃を与えて加振し、3次モードを含むたわみ振動を励起させる加振手段である。
打撃装置40は、ハンマヘッド41、シャフト42、リターンスプリング43、アクチュエータ44、打撃スイッチ45等を有して構成されている。
【0029】
ハンマヘッド41は、まくらぎSに衝突することによって打撃を与え、まくらぎSに3次モードの固有振動を含む振動を励起させる金属製の部材である。
ハンマヘッド41は、例えば、200Hz以上を安定して励起可能な振動試験用インパルスハンマを用いることが好ましい。
シャフト42は、一方の端部にハンマヘッド41が固定された軸状の部材である。
シャフト42は、フレーム10に対して、所定の回転軸回りに揺動(回動)可能に取り付けられている。
ハンマヘッド41は、シャフト42の揺動に応じて、まくらぎSから上昇し、離間した位置と、まくらぎSに衝突し打撃を与える位置との間で移動可能となっている。
リターンスプリング43は、シャフト42を、ハンマヘッド41がまくらぎSから離間する方向(上昇する方向)に付勢するばね要素である。
リターンスプリング43として、例えば、一方の端部がシャフト42のハンマヘッド41側とは反対側の端部に接続され、他方の端部がフレーム10に接続された金属製の引張コイルばねを用いることができる。
【0030】
アクチュエータ44は、ハンマヘッド41をまくらぎSに衝突させる方向にシャフト42を回動させる駆動手段である。
アクチュエータ44として、例えば、電磁ソレノイドや電動モータ等の電気式アクチュエータや、空気圧式、油圧式など各種のアクチュエータを用いることができる。
アクチュエータ44は、ハンマヘッド41を、まくらぎSに予め設定された所定の打撃力で衝突させる機能を有する。
打撃スイッチ45は、ハンドルバー11に設けられた例えば押しボタン式のスイッチである。
打撃スイッチ45は、作業者がアクチュエータ44を作動させ、ハンマヘッド41によりまくらぎSに打撃を与える操作を入力するものである。
【0031】
まくらぎSを打撃した際に、まくらぎSから放射される音を用いてまくらぎSの損傷を検知する場合、損傷時における固有振動数の低下が、1次モード、2次モードに対して比較的顕著な3次モードの固有振動数を検出することが好ましい。
そこで、打撃装置40は、3次モードの腹に相当する箇所であるまくらぎSの長手方向中央部近傍にハンマヘッド41を衝突させ、3次モードの振動を確実に励起可能なよう、フレーム10に対して位置決めされている。
【0032】
マイクロフォン50は、打撃装置40がまくらぎSに打撃を与えた直後に、まくらぎSが発生する放射音の音圧波形に関する情報を含む音声データを取得する音声取得手段である。
マイクロフォン50は、音源の方向により感度が変化する指向性を有する指向性マイクロフォンである。
マイクロフォン50は、その感度が最高となる方向が、まくらぎSの長手方向における中央部(軌間中央部)を指向するように、フレーム10に取り付けられている。
フレーム10は、マイクロフォン50とまくらぎSとの相対位置関係を、マイクロフォン50の感度が最高となる方向が、まくらぎSを加振した際のたわみ3次モードにおける上下方向変位(振幅)が極大となる箇所(たわみ3次モードの振動における腹に相当する箇所)又はその近傍の方向となるように規制する位置規制手段として機能する。
【0033】
マイクロフォン50は、まくらぎSの長手方向において、中央部を含む40cm程度の範囲(たわみ3次モードの振動の腹の部分に相当する箇所を含む範囲)から発生する音を集音可能なよう構成されている。
マイクロフォン50の集音部は、まくらぎSの上面から例えば20cm以内の高さに設置されている。
マイクロフォン50が出力する音声データは、測定データ処理装置100のA/Dコンバータ110に入力される。
【0034】
マイクロフォン50は、遮音カバー51を備えている。
遮音カバー51は、マイクロフォン50の集音部周辺から、下方側(まくらぎS側)へ突出して形成された筒状の部材である。
マイクロフォン50の集音部は、遮音カバー51の上端部付近において、遮音カバー51の内径側に挿入されている。
遮音カバー51は、下端部側において上端部側よりも拡径されたテーパ筒状に形成されている。
遮音カバー51は、まくらぎSの中央部からマイクロフォン50の集音部までの音波の伝搬経路を包囲し、まくらぎS以外から発生する外部の騒音を遮音して、マイクロフォン50の実質的な指向性をさらに高める効果を有する。
【0035】
カメラ60は、撮像範囲が下方に向くようフレーム10に取り付けられた撮像装置である。
カメラ60は、例えば、CMOS等の固体撮像素子、レンズ群やIRカットフィルタ、光学ローパスフィルタ等の光学系、及び、固体撮像素子の駆動装置及び出力処理装置などを有して構成されている。
また、撮像条件を向上するため、撮像範囲を照射する図示しない照明装置を設けてもよい。
カメラ60により撮像された画像は、まくらぎSの上面(撮像可能範囲)におけるひび割れ等の損傷を画像処理により検出することに用いられる。
また、カメラ60の画像は、損傷まくらぎ検知装置1の現在位置検出(通過したまくらぎSの本数を検出)や、打撃装置40のハンマヘッド41による打撃位置の照準を合わせるためにも用いられる。
カメラ60が出力する画像データは、測定データ処理装置100に伝達される。
【0036】
塗料噴射装置70は、測定データ処理装置100からの指示に基づいて、特定のまくらぎSに対して塗料を噴射し、マーキングを行うものである。
塗料噴射装置70は、フレーム10の下部に取り付けられている。
塗料噴射装置70は、塗料タンク71から供給される塗料を、まくらぎSの上面部に噴射する。
塗料タンク71は、フレーム10の上部であって、塗料噴射装置70の直上に設けられている。
塗料噴射装置70は、例えば、赤色、黄色など、複数色の塗料の噴射を行うことが可能となっている。
【0037】
測定データ処理装置100は、マイクロフォン50が取得した音声データ(波形データあるいはその圧縮データ等)、及び、カメラ60が撮像した画像データを処理し、損傷が発生したまくらぎSを検知する処理を行う情報処理装置である。
測定データ処理装置100は、例えば、CPU等の情報処理手段、ROM、RAM、HDD等の記憶手段、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス、バッテリ等の電源装置等を有して構成されている。
【0038】
図3は、測定データ処理装置100の構成を模式的に示すブロック図である。
図3に示すように、測定データ処理装置100は、A/Dコンバータ110、音声データ記憶部120、固有振動数抽出部130、画像処理部140、上面ひび割れ判定部150、現在位置検出部160、損傷情報データベース170、損傷判定部180等を有する。
また、測定データ処理装置100は、ディスプレイ101を有する。
ディスプレイ101は、各種情報を作業者に対して画像やテキストとして表示する出力装置である。
また、ディスプレイ101は、作業者が手指で表示画面を触ることにより、各種入力操作が可能なタッチパネルとして構成された入力装置としても機能する。
測定データ処理装置100の操作や各種設定は、ディスプレイ101から入力することが可能となっている。
【0039】
A/Dコンバータ110は、マイクロフォン50が出力するアナログの音声データを、ディジタル変換するものである。
A/Dコンバータ110でディジタル化された音声データは、音声データ記憶部120に伝達される。
【0040】
音声データ記憶部120は、A/Dコンバータ110でディジタル化された音声データを記録する記憶装置を有する。
記録された音声データは、固有振動数抽出部130からの要求に応じて適宜読みだされる。
【0041】
固有振動数抽出部130は、音声データ記憶部120から、まくらぎSを打撃装置40によって打撃した後、所定期間(例えば約1秒間)の音声データを読み出し、例えばフーリエスペクトルに基づいて、まくらぎSのたわみ3次モードの固有振動数を抽出する。
図4は、1次から3次モードにおけるPCまくらぎの曲げ変形を、有限要素モデルを用いた数値解析によって同定した結果の一例を示す図である。
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)は、それぞれ1次モード、2次モード、3次モードを示している。
図4(a)に示す1次モードは、例えば、まくらぎの中央部が上昇する際に、両端部が下降するよう、全体が弓なり状に同一方向に湾曲するものである。
このような1次モードにおけるPCまくらぎ(健全時)の固有振動数は、一例として、158Hz程度である。
図4(b)に示す2次モードは、例えば、まくらぎ全体がS字状に湾曲するものである。
このような2次モードにおけるPCまくらぎの固有振動数は、一例として、440Hz程度である。
図4(c)に示す3次モードは、例えば、まくらぎの中央部が下降する際に、両端部も下降しかつレール直下付近が上昇するよう湾曲するものである。
このような3次モードにおけるPCまくらぎの固有振動数は、一例として、850Hz程度である。
【0042】
1次モードにおいては、おおむね損傷が深刻になるのに応じて固有振動数が低下する傾向がみられるが、一部でこの傾向と一致しない結果もみられる。
2次モードにおいては、損傷を有するPCまくらぎの固有振動数は低下する傾向にあるが、健全なPCまくらぎと、両側レール部下面にひび割れを有するPCまくらぎとの固有振動数の変化は小さく、損傷レベルが必ずしも固有振動数の低下量と相関しない場合もみられる。
また、2次モードにおいては、まくらぎからの放射音を最も測定しやすいまくらぎの中央部がたわみモードの節となることから、まくらぎの中央部からの放射音の音圧が小さく、測定が困難となることも懸念される。
【0043】
これに対し、3次モードにおいては、健全なPCまくらぎと比較して損傷を有するPCまくらぎの固有振動数がほとんどの場合低下し、さらに、損傷の程度が大きくなるほど固有振動数の低下量が大きくなる傾向を有する。
さらに、まくらぎの中央部が振動の腹に相当するため、まくらぎの中央部付近における放射音の音圧が大きく、測定も容易である。
これらのことから、損傷PCまくらぎの検知指標として、3次モードの固有振動数が有効であると考えられる。
【0044】
画像処理部140は、カメラ60が撮像した画像に対して、後述するひび割れ判定や現在位置の検出の精度が向上するよう、所定の画像処理を施すものである。
画像処理部140は、カメラ60から出力される画像に対して、明度調整、コントラスト調整、カラーバランス調整、輪郭強調、収差補正などの各種画像処理を行う。
【0045】
上面ひび割れ判定部150は、画像処理部140が出力するまくらぎSの上面部が含まれる画像データを用いた画像認識処理により、撮像されたまくらぎSの上面部にひび割れが発生しているか否かを判別するものである。
画像認識として、例えば、ひび割れが存在する場合、存在しない場合のまくらぎの画像データ(参照データ)を多数(一例として400枚程度)、事前に参照データ保持部151に蓄積しておき、これらの画像データから、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の深層学習(ディープラーニング)を利用することが可能である。
【0046】
現在位置検出部160は、画像処理部140が出力するカメラ60の撮像画像に基づいて、損傷まくらぎ検知装置1の現在位置を検出するものである。
例えば、現在位置検出部160は、現在撮像されているまくらぎSが、損傷まくらぎ検知作業を開始したまくらぎSから数えて何本目のものであるか、判別する機能を有する。
【0047】
損傷情報データベース170は、損傷まくらぎ検知装置1が診断を行った複数のまくらぎSについて、固有振動数抽出部130が抽出したたわみ3次モードの固有振動数、及び、上面ひび割れ判定部150における画像認識処理による判定結果をそれぞれ記録し、データベース化するものである。
【0048】
損傷判定部180は、損傷情報データベース170に蓄積された固有振動数及び画像認識結果に基づいて、診断対象となった個々のまくらぎSについて、損傷判定の成立、不成立を判定するものである。
この点について、後に詳しく説明する。
【0049】
図5は、第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置を用いた損傷まくらぎ検出処理の手順を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0050】
<ステップS01:損傷まくらぎ検知装置移動>
作業者は、損傷まくらぎ検知装置1を、損傷を検知すべきまくらぎSの診断を行う位置である診断位置を移動させる。
診断位置は、マイクロフォン50の感度が相対的に高くなる方向が、診断対象となるまくらぎSの中央部に向けられるように、マイクロフォン50とまくらぎSとの位置関係が設定されるとともに、打撃装置40のハンマヘッド41がまくらぎSの中央部付近を打撃可能な位置である。
打撃装置40及びマイクロフォン50は、フレーム10に対して固定されていることから、軌間方向(まくらぎSの長手方向)においては、まくらぎSとの相対位置は規制されている。
したがって、診断位置の調整は、専らレールRの長手方向(損傷まくらぎ検知装置1の前後方向)においてのみ行えばよい。
【0051】
ディスプレイ101は、作業者が損傷まくらぎ検知装置1を診断位置に位置決めすることを補助するため、以下説明するガイド画面を作業者に対して表示する機能を有する。
図6は、ガイド画面の表示の一例を模式的に示す図である。
図6に示すように、ガイド画面102には、カメラ60から撮像されたレールR、まくらぎS、バラストBの画像が表示される。
また、ガイド画面102には、集音範囲マーカ103、打撃箇所マーカ104が表示されるようになっている。
集音範囲マーカ103は、指向性を有するマイクロフォン50が比較的高い感度を有する範囲を表示する指標である。
打撃箇所マーカ104は、打撃スイッチ45を操作した場合に、ハンマヘッド41が衝突する箇所を示す指標である。
カメラ60がフレーム10に対して既知の相対位置関係で設置され、カメラ60の撮像範囲(画角)が既知である場合には、集音範囲マーカ103、打撃箇所マーカ104は、基本的にガイド画面102の同一の箇所に表示され続けることになる。
【0052】
作業者は、ガイド画面102において、集音範囲マーカ103、及び、打撃箇所マーカ104がともに診断対象となるまくらぎSの中央部と重なって見える位置で、損傷まくらぎ検知装置1を停止させる。
その後、ステップS02に進む。
【0053】
<ステップS02:まくらぎ打撃実行>
作業者は、打撃スイッチ45を操作し、打撃装置40によるまくらぎSの打撃を行う。
打撃スイッチ45の操作に応じて、アクチュエータ44は、シャフト42を回動させ、ハンマヘッド41をまくらぎSの上面部における中央部に、予め設定された所定の強度で衝突させる。
ハンマヘッド41の衝突後、シャフト42は、リターンスプリング43の付勢力により初期位置まで復帰し、ハンマヘッド41はまくらぎSから離間する。
その後、ステップS03に進む。
【0054】
<ステップS03:音声データ取得>
打撃スイッチ45の操作と連動して、音声データ記憶部120は、A/Dコンバータ110を介して、マイクロフォン50が集音した音声(音圧波形)に係る音声データを取得し、記憶(録音)する。
この録音は、例えば、打撃直後から所定の時間(例えば1秒)が経過するまで行われる。
その後、ステップS04に進む。
【0055】
<ステップS04:3次モード固有振動数抽出>
固有振動抽出部130は、ステップS03において音声データ記憶部120に録音された音のフーリエスペクトルに基づいて、まくらぎSが発生する放射音における3次モードの固有振動数(例えば、700Hz乃至900Hzの帯域におけるピーク)を抽出する。
図7は、打撃後におけるまくらぎの放射音の時間と音圧との相関、及び、周波数と音圧との相関の一例を示すグラフである。
図7(a)は、時間と音圧との相関を示しており、横軸は時間、縦軸は音圧をそれぞれ示している。
図7(a)に示すように、音圧は打撃直後にピーク値をとった後、時間の経過とともに減衰して音圧は低下する。
ステップS03における録音時間は、このような減衰の早さに基づいて設定することができる。
図7(b)は、周波数と音圧との相関を示しており、横軸は周波数、縦軸は音圧をそれぞれ示している。
図7(b)に示すように、700乃至800Hz付近において、明確な3次モードのピークが現れることがわかる。
固有振動数抽出部130による3次モード固有振動数の抽出が終了した後、ステップS05に進む。
【0056】
<ステップS05:固有振動数所定回数抽出完了判断>
固有振動数の抽出は、診断対象となるまくらぎSの個々について、それぞれ予め設定された所定回数(例えば3回)行われ、その平均値が診断に用いられる。
直近に固有振動数の抽出を行ったまくらぎSに関して、固有振動数の抽出が所定回数完了している場合はステップS06に進み、未了である場合にはステップS02に戻って以降の処理を繰り返す。
なお、2回目以降の打撃は、打撃スイッチ45の操作によらず、自動的に行われるようにしてもよい。
【0057】
<ステップS06:まくらぎ上面画像撮像>
カメラ60は、まくらぎSの上面を画角内に含む画像を撮像する。
撮像された画像データは、画像処理部140を介して、上面ひび割れ判定部150に伝達される。
その後、ステップS07に進む。
【0058】
<ステップS07:上面ひび割れ判定>
上面ひび割れ判定部150は、ステップS06において取得した画像データを画像認識してまくらぎSの上面にひび割れが発生しているか否かを判別する。
その後、ステップS08に進む。
【0059】
<ステップS08:データ記憶>
損傷情報データベース170は、診断対象であるまくらぎSに関して、抽出された固有振動数(所定回数の平均値)、及び、画像認識によるひび割れ発生有無に関するデータを、個々のまくらぎSに割り当てられた識別子(例えば個々のまくらぎSにそれぞれ割り当てられた識別番号)とともに記憶する。
その後、ステップS09に進む。
【0060】
<ステップS09:データ取得完了判断>
作業者は、診断対象となる一連のまくらぎS群のすべてについて、固有振動数及び画像認識結果のデータ取得が完了したか否かを判断する。
データ取得が完了した場合はステップS10に進み、その他の場合はステップS01に戻り、次にデータ取得すべきまくらぎSを打撃可能な位置まで損傷まくらぎ検知装置1を移動させて以降の処理を繰り返す。
【0061】
<ステップS10:損傷まくらぎ検知結果出力>
損傷判定部180は、損傷情報データベースに蓄積された情報に基づいて、損傷まくらぎ検知結果を出力する。
損傷判定部180は、画像認識結果に基づいて、上面にひび割れが検出されたまくらぎSに関しては、固有振動数に関わらず損傷判定を成立させる。
その後、上面にひび割れが検出されなかったまくらぎS群を、固有振動数の低下が小さかった順(健全あるいは損傷が小さいと推定される順)にソートし、下位の所定のパーセンテージ(例えば5%)のまくらぎSについて、損傷判定を成立させる。
その後、一連の処理を終了させる。
【0062】
損傷まくらぎ検知装置1は、上述した損傷まくらぎ検知処理が終了した後、損傷判定が成立したまくらぎSに対して、交換作業を行う際の目印となる指標をマーキングする機能を有する。
損傷まくらぎ検知処理が終了した後、作業者が損傷まくらぎ検知装置1を診断済みのまくらぎSの上を再度通過させるよう移動させると、カメラ60により損傷判定が成立したまくらぎSが検出された際に、塗料噴射装置70は、当該まくらぎSの上面に、例えば赤い塗料をスプレーしてマーキングを施す。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)マイクロフォン50の感度が最高となる方向が、まくらぎSのたわみ3次モードにおける振幅が大きい箇所(振動の腹)の方向となるように、マイクロフォン50とまくらぎSとの位置関係を規制するフレーム10、1位輪軸20、2位輪軸30等の位置規制手段を設けることによって、作業者の個人差の影響を受けることなく適切な音の取得を行うことが可能となり、損傷まくらぎの検知精度を向上することができる。
また、損傷検知作業時にマイクロフォン50を作業者が手持ちする必要がないため、作業者の労力を軽減することができる。
(2)マイクロフォン50に遮音カバー51を設けることによって、例えば保線作業中に用いられる発電機等の機械等が発生するノイズの混入を防止し、まくらぎSが発生する音の集音効率を高め、固有振動数を検出する際のS/N比を高めて検出精度を高めることができる。
(3)マイクロフォン50の位置規制をフレーム10及びフレーム10がレール上を走行可能なよう設けられた1位輪軸20、2位輪軸30によって行うことによって、損傷まくらぎ検知装置1を車輪により容易に移動可能として、取り扱いを容易化し、損傷検知作業の作業性を向上することができる。
(4)フレーム10に取り付けられたハンマヘッド41によってまくらぎSを打撃することによって、マイクロフォン50の集音範囲と打撃箇所との位置関係を固定することができ、まくらぎSが発生する音をより精度よく取得することができる。
(5)ハンマヘッド41がまくらぎSの長手方向における中央部近傍を打撃することによって、たわみ3次モードの腹となるまくらぎSの中央部を加振することにより、3次モードの振動を確実に励起させ、固有振動数の検出精度をより高めることができる。
(6)ハンマヘッド41がアクチュエータ44により駆動されてまくらぎSを打撃することによって、打撃力が実質的に一定となるように制御することが可能となり、まくらぎSに発生する3次モードの固有振動の再現性を高め、固有振動数の検出精度をさらに高めることができる。
(7)複数のまくらぎSに関して検出した固有振動数のデータベースを作成し、相対的に固有振動数が低いまくらぎSの一群に対して損傷判定を成立させることによって、まくらぎSの交換の優先度を適切に設定することができ、効率的な維持管理を行うことができる。
(8)カメラ60で撮像した画像を画像認識処理してまくらぎSの上面のひび割れ発生を判定することによって、主にレール下部底面のひび割れ検知に効果的な固有振動数による損傷検知と併せて、まくらぎSの上面部に発生したひび割れを適切に検知して損傷検知精度をより向上することができる。
(9)塗料噴射装置70により、損傷判定が成立したまくらぎSに対して塗料をスプレーしてマーキングすることによって、交換などの保守作業を容易化することができる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した損傷まくらぎ検知装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同様の箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0065】
図8は、第2実施形態の損傷まくらぎ検知装置をまくらぎ長手方向から見た模式図である。
図8に示すように、損傷まくらぎ検知装置1Aは、第1実施形態における2位輪軸30に相当する箇所に設けられた輪軸30Aの1軸のみを有するとともに、フレーム10の全長を短縮した点で第1実施形態の損傷まくらぎ検知装置1と相違する。
損傷まくらぎ検知装置1Aは、まくらぎSの打撃、集音時に姿勢を保持する図示しないスタンドを有する。
【0066】
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果に加え、装置自体を軽量化、小型化し、作業者の負担をよりいっそう軽減することができる。
【0067】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
(1)損傷まくらぎ検知装置、損傷まくらぎ検知方法の構成は、上述した実施形態の構成に限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、まくらぎを加振するための加振手段や、まくらぎが発生する音を取得する音声取得手段の構成は、上述した構成に限らず適宜変更することができる。
(2)実施形態においては、診断結果が下位5%のまくらぎに対して損傷判定を成立させているが、複数段階の損傷判定を行うようにしてもよい。例えば、最下位の所定の割合のまくらぎに対して第1の損傷判定を成立させ、下位から次順位の所定の割合のまくらぎに第1の損傷判定よりもシビアではない損傷を示す第2の損傷判定を成立させるようにしてもよい。
この場合、各段階の損傷判定に応じて、それぞれ異なったマーキングを施すようにしてもよい。例えば、第1の損傷判定が成立したまくらぎに赤マーキングを行い、第2の損傷判定が成立したまくらぎに黄マーキングを行うようにしてもよい。
(3)実施形態のように固有振動数の相対評価により損傷判定を成立させることに代えて、健全なまくらぎに対する固有振動数の低下量が所定の閾値以上である場合に、直ちに損傷判定を成立させる構成とすることもできる。
この場合、まくらぎの種類毎に事前に閾値を設定し、診断対象となるまくらぎの種類に応じて適宜閾値を切り換える構成とすることが好ましい。
また、同一のまくらぎを前回診断した際の固有振動数に関する情報をデータベースとして保持し、前回診断時の固有振動数からの低下量に基づいて損傷判定を成立させるようにしてもよい。
(4)実施形態においては、作業者が手動により損傷まくらぎ検知装置を移動させる構成としているが、これに限らず、例えば少なくとも一部の輪軸にモータ等の駆動手段を設けて、損傷まくらぎ検知装置が自走する構成としてもよい。
この場合、診断対象となるまくらぎに対する位置決め、打撃、発生音の取得、画像認識用の画像撮像などの一連の処理を自動的に行うようにしてもよい。
(5)実施形態においては、測定データ処理装置を、トロ状の損傷まくらぎ検知装置に搭載しているが、全ての処理を損傷まくらぎ検知装置の機上で行う必要はなく、データの取得のみを現場で行い、その処理や損傷判定は遠隔(例えば地上等)に設けられた装置を用いて行う構成としてもよい。
(6)損傷判定が成立したまくらぎにマーキングする手法は、実施形態のように塗料(ペンキ)をスプレーするものに限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、レーザを用いて損傷判定が成立したまくらぎに刻印(レーザ照射痕)を施すようにしてもよい。
(7)実施形態においては、まくらぎが発生する音のフーリエスペクトルを用いて3次モードの固有振動数を抽出しているが、固有振動数を抽出、検出する方法はこれに限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、ハンマに加速度センサを設けて、まくらぎが発生する音のフーリエスペクトルを、ハンマの加速度センサから測定される加振力で除したアクセレランスから、3次モードの固有振動数を抽出するようにしてもよい。