(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814532
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】実験装置におけるRFIDタグ−リーダアンテナ関連付けのための方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20210107BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
G06K7/10 104
G06K7/10 240
G06K19/07 230
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-165501(P2015-165501)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-51474(P2016-51474A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2018年8月8日
【審判番号】不服2020-4045(P2020-4045/J1)
【審判請求日】2020年3月26日
(31)【優先権主張番号】14182590.1
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ビルラー
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド・レオーネ・ベネデッティ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ホッツ
【合議体】
【審判長】
田中 秀人
【審判官】
山澤 宏
【審判官】
塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−66037(JP,A)
【文献】
特表2009−544972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06K19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個数NのRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)を備える実験装置(1)における無線周波数識別RFIDタグ−リーダアンテナ関連付けのための方法であって、
前記個数NのRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)が、個数MのRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する固有識別子UID1〜UIDMを順次読み取るステップと、
前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々からの対応する応答信号の受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを、前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の各々によって登録するステップと
を含み、
NおよびMは自然数であり、
Nは2以上であり、
Mは1以上であり、
前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々を、前記RFIDタグ(20.1〜20.M)に対応する最も強い受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを受信した前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)と関連付けるステップであって、前記関連付けは、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)と前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の相対位置を反映する関係を規定する、ステップをさらに含み、
前記受信信号強度指示を登録するステップと、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々を前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)と関連付けるステップと、の間において、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の、前記N個のリーダアンテナ(10.1〜10.N)に対する相対的な配置が変更されない、
方法。
【請求項2】
前記受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mが、前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の各々によって、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する前記固有識別子UID1〜UIDMを読み取るステップの間に登録される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mが、前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の各々によって、前記M個のRFIDタグ(20.
1〜20.M)の各々を前記対応する固有識別子UID1〜UIDMにより個別にアドレス指定することによって登録される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各リーダアンテナ(10.1〜10.N)が前記実験装置(1)の資源の装填および/または保持および/または処理位置(5.1〜5.N)に配設される、請求項1から3の一項に記載の方法であって、前記方法が、前記RFIDタグ(20.1〜20.M)の前記RFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)との前記関連付けに基づいて、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々のそれぞれの配置と前記装填および/または保持および/または処理位置(5.1〜5.N)との間の相関を提供するステップをさらに含む、方法。
【請求項5】
前記実験装置(1)と特定のRFIDタグ(20.1〜20.M)との間の通信を前記特定のRFIDタグ(20.1〜20.M)と関連付けられた前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)を通して方向付けるステップをさらに含み、各リーダアンテナ(10.1〜10.N)が前記関連付けられたRFIDタグ(20.1〜20.M)を個別にアドレス指定することによって通信する、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RFIDタグ(20.1〜20.M)が、
消耗品および/または消耗品運搬器、
試料および/または試料運搬器、
先端部および/または先端部運搬器、
ストリップおよび/またはストリップ運搬器、
試薬および/または試薬運搬器
のうちの1つまたは複数を備える前記実験装置(1)の対応する資源に取り付けられかつ/またはこれらと関連付けられる、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
2つ以上のRFIDタグ(20.1〜20.M)が各リーダアンテナ(10.1〜10.N)と関連付けられていないことを確認するステップをさらに含む、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する前記固有識別子UID1〜UIDMを読み取るステップに基づき、RFIDタグ(20.1〜20.M)の前記個数MがRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の前記個数Nよりも大きい場合に、エラー信号を生成するステップをさらに含む、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する前記固有識別子UID1〜UIDMを読み取るステップに基づき、RFIDタグ(20.1〜20.M)の前記個数Mが実験装置(1)の装填および/または保持および/または処理位置内に存在するものとして検出された資源の個数Rと異なる場合に、エラー信号を生成するステップをさらに含む、請求項1から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
個数MのRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する固有識別子UID1〜UIDMを順次読み取るように構成され、
RFIDタグ(20.1〜20.N)からの対応する応答信号の受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを登録するように各々が構成された、
個数NのRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)と、
処理ユニット(2)と
を備え、
NおよびMは自然数であり、
Nは2以上であり、
Mは1以上であり、
前記処理ユニット(2)は、前記個数MのRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々を、前記RFIDタグ(20.1〜20.M)に対応する最も強い受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを受信した前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)と関連付けるように構成され、前記関連付けは、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)と前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)の相対位置を反映する関係を規定し、
前記受信信号強度指示を登録することと、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々を前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)と関連付けることと、の間において、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の、前記N個のリーダアンテナ(10.1〜10.N)に対する相対的な配置が変更されない、
実験装置(1)。
【請求項11】
前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)が、個数MのRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する前記固有識別子UID1〜UIDMを読み取るステップの間に、前記受信信号強度指示(RSSI.1.1〜RSSI.N.M)を登録するように構成される、請求項10に記載の実験装置(1)。
【請求項12】
前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)が、前記受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々を前記対応する固有識別子UID1〜UIDMにより個別にアドレス指定することによって登録するように構成される、請求項10に記載の実験装置(1)。
【請求項13】
前記実験装置(1)の資源のための装填および/または保持および/または処理位置(5.1〜5.N)をさらに備え、前記RFIDタグ(20.1〜20.M)が対応する資源に取り付けられかつ/またはこれらと関連付けられ、また、前記N個のRFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)のうちの1つが装填および/または保持および/または処理位置(5.1〜5.N)に配設されかつ/またはこれらと関連付けられる、請求項10から12の一項に記載の実験装置(1)。
【請求項14】
前記処理ユニット(2)が、前記RFIDタグ(20.1〜20.M)の前記RFIDリーダアンテナ(10.1〜10.N)との前記関連付けに基づいて、前記M個のRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々のそれぞれの配置と前記装填および/または保持および/または処理位置(5.1〜5.N)との間の相関を提供するようにさらに構成される、請求項13に記載の実験装置(1)。
【請求項15】
前記処理ユニット(2)が、前記実験装置(1)と特定のRFIDタグ(20.1〜20.M)との間の通信を前記特定のRFIDタグ(20.1〜20.M)と関連付けられた前記リーダアンテナ(10.1〜10.N)を通して方向付けるようにさらに構成され、各リーダアンテナ(10.1〜10.N)が前記関連付けられたRFIDタグ(20.1〜20.M)を個別にアドレス指定することによって通信する、請求項10から14の一項に記載の実験装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験装置(laboratory device)におけるRFIDタグ−リーダアンテナ関連付けのための方法に関する。本発明はさらに、開示される方法を使用してRFIDタグをRFIDリーダアンテナと関連付けるように構成された実験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実験装置の消耗品などの資源の追跡能力の信頼性を拡げるために、光学的に読み取り可能な識別子(identifier)(たとえばバーコードまたはQRコード(登録商標))は、無線周波数の電磁場の使用によって読み取り可能な識別子によって、置き換えられまたは補完されつつある。特に普及しているのは、ワイヤレスで非接触の自動的な識別およびデータ捕捉を可能にする、無線周波数RFIDタグである。
【0003】
RFIDタグは、識別子とリーダとの間の直接的な見通し線(line of sight)の必要がないことなど、光学的に読み取り可能な識別子と比較して大きな利点を提供する一方、RFID技術は、いくつかの欠点/困難性も導入する。そのような欠点の1つは、RFIDリーダアンテナがその範囲内の全てのRFIDタグと同時に通信できること、およびしたがって、それらの個々の識別/位置特定が、光学的に読み取り可能な識別子に関するほど単純ではないことの結果生じる。在庫管理(inventory)作業などのいくつかのシナリオでは、RFIDタグの有/無のみが判定されることになるので、この点は問題とはならない場合がある。
【0004】
しかしながら、対象物の確かな配置(location)またはRFIDリーダアンテナに対する相対的な配置が識別されるべき場合など、多くの状況において、正しい識別子がアドレス指定され(address)ることが非常に重要である。具体的な分野の1つは、複数のRFIDリーダアンテナを有する実験装置の消耗品などの資源を、この資源の装填/保持/処理位置(たとえばラック位置など)において識別するための、RFIDタグの使用である。資源のこれらの装填/保持/処理位置は通常、互いに対して比較的密に近接して配設されるので、特定のRFIDリーダアンテナが配設されている位置と隣り合う位置のRFIDのアドレス指定は、一般的な関心事である。この問題に対処するための知られている手法の1つは、RFIDリーダアンテナがその近傍にある全てのRFIDタグをアドレス指定し、最も強い戻り信号を提供するRFIDタグをそのRFIDリーダアンテナの直近に配設されたタグとして識別することである。
【0005】
しかしながら、経験上、この手法が多くの場合満足とはいえない結果をもたらすこと、すなわちいくつかの状況において、誤った資源が特定の装填/保持/処理位置に存在するものとして識別されることが示されている。2つの異なる試薬などの2つの異なる消耗品が、実験装置の特定の配置にあるものとして誤って識別されることの結果は、極めて深刻であり、そのような取り違えは、一連の分析全体を無効にする可能性を有し、またはさらにはこの取り違えが認識されていない場合は、実験装置によって偽である結果が報告される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開示される方法/装置の実施形態はしたがって、実験装置におけるRFIDタグのRFIDリーダアンテナへの改善された関連付けを提供することを、また特に、実験装置の資源をそれぞれの装填/保持/処理位置に関して正しく識別することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の手法(すなわちRFIDリーダアンテナの近傍にある全てのRFIDタグをアドレス指定し、最も強い戻り信号を提供するRFIDタグをこのリーダアンテナの直近に配設されたタグとして識別すること)の満足とはいえない結果の主な原因は、個々のRFIDタグからの受信信号の強度のばらつき(variation)であると特定されている。受信信号のこの強度のばらつきは、以下のうちの1つまたは複数の結果である:
− たとえば様々な製造者からの、様々なバッチ/改版(revision)/世代、材料、および/または製造公差からの、様々な種類のRFIDタグおよび特にRFIDタグアンテナ、
− RFIDタグが動作する際の様々な周囲条件、たとえば液体との接触、様々な周囲温度、自体の品質に影響する可能性のあるRFIDタグの様々な年齢、
− 無線周波数信号の透過性に影響する、実験装置の装填/保持/処理位置の物理的な環境条件、たとえば金属の存在、
− RFIDタグの集積回路ICの、様々なバッチ/改版/世代、材料、および/または製造公差、
− RFIDタグのICとRFIDリーダアンテナとの間の電気的接触が不完全な/弱いRFIDタグ。
【0008】
受信信号の強度のこのばらつきは、複数のRFIDタグからの一貫性のない受信信号強度指示(received signal strength indication)RSSIにつながる。したがって、受信信号の強度は、もはやリーダアンテナに対する特定のRFIDタグの位置(たとえば距離)の、精確な指示物ではない。たとえば、より高い感度を有するRFIDタグからの応答信号は、このRFIDタグが、実際にリーダアンテナの直近にあるRFIDタグであるより低い感度の第2のRFIDタグよりも、リーダアンテナの近くに配設されていると、誤って示す可能性がある。
【0009】
この問題は、資源(たとえば消耗品)が様々な供給者/ベンダから発している可能性があるため、実験装置の資源に取り付けられたRFIDタグの品質が多くの場合、実験装置の製造者/使用者に制御できないということによって、さらに増幅される。さらに、実験装置の長い寿命の間の、RFIDタグの製造における予期しない変化にも対応しなければならない。
【0010】
したがって、本発明は、複数のRFIDタグからの受信信号強度指示RSSIの絶対値の直接の比較が、これらのRFIDタグの相対的な配置に関する結論を引き出すための信頼できる手段ではない、という認識に基づく。
【0011】
実験装置においてRFIDタグの配置とRFIDリーダアンテナとの間の正確な関連付けを提供するために、本発明は以下の主要な段階によって概念上要約され得る:
− 全ての固有識別子を取得するための、各RFIDリーダアンテナによる、それらのそれぞれの到達距離内にある全てのRFIDタグの、(リーダの衝突を回避するための)順次の目録作成(inventory)、
− RFIDリーダアンテナの各々による、各RFIDタグからの受信信号強度指示の登録、
− 各RFIDタグの、その特定のRFIDタグから最も強い信号を受信したRFIDリーダアンテナとの関連付け。
【0012】
受信信号強度の登録とその関連付けとの間に、RFIDリーダアンテナに対するRFIDタグの相対的な配置が変更されないべきであることに留意されたい。代替として−すなわち、RFIDリーダアンテナに対するRFIDタグの相対的な配置が変化した場合−、リーダアンテナに対する各RFIDタグのそれぞれの配置の間のいずれの相関も、そのような変化を考慮に入れねばならない。
【0013】
したがって、1つの実施形態では、個数NのRFIDリーダアンテナを備える実験装置におけるRFIDタグ−リーダアンテナ関連付けのための開示される方法は、
− 個数MのRFIDタグの各々に対応する固有識別子を読み取るステップ(step)と、
− N個のRFIDリーダアンテナの各々により、各RFIDタグからの対応する応答信号の受信信号強度指示を登録するステップと、
− 各RFIDタグを、そのRFIDタグに対応する最も強い受信信号強度指示を受信したRFIDリーダアンテナと関連付けるステップと、を含み、
ここで、
− NおよびMは自然数であり、
− Nは2以上であり、
− Mは1以上である。
【0014】
開示される方法/装置の実施形態は、この方法が、個々のRFIDタグの感度の予測できないばらつきに関係なく、最も近いRFIDリーダアンテナへのRFIDタグの正確な関連付けを可能にするので、特に有利である。最も近いRFIDリーダアンテナへのRFIDタグの正確な関連付けは、異なるRFIDリーダアンテナから受信された同じRFIDタグからの応答信号を、常時比較することにより達成される。個々のRFIDリーダアンテナの感度の一貫性は、非常に高い程度まで保証され得かつ(RFIDタグの感度と対照的に)実験装置の製造者の完全な制御下にあるので、異なるRFIDリーダアンテナの同じ発生源(同じRFIDタグ)から入来する受信信号の比較は、全面的に信頼することができる。したがって、開示される方法/装置の実施形態は、配設されることになる実験装置の資源に取り付けられたRFIDタグのばらつきにおける大きな適応性をもたらし、同時に実験装置内の装填/保持/処理位置に対応するRFIDリーダアンテナとのそれらの関連付けの高度な正確度を保証する。
【0015】
開示される方法/装置のさらなる特徴および利点は、その説明によりかつ図面を参照することによって、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】開示される研究室の実施形態の概略ブロック図である。
【
図2】カルーセルの各位置に対してRFIDリーダアンテナがある状態の、カルーセル状のカセット保持器の弧に沿って配置された実験装置のための試薬カセットに取り付けられた複数のRFIDタグの上面図である。
【
図3】ラックの各位置に対してRFIDリーダアンテナがある状態の、ラック状のカセット保持器に対応して直線的に配置された実験装置のための試薬カセットに取り付けられた複数のRFIDタグの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
注:図面は縮尺通りに描かれておらず、これらは例示としてのみ提供され、またよりよい理解のためにのみ役立つものであり、開示される方法/装置の範囲を規定するために役立つものではない。これらの図面から、開示される方法/装置のいかなる特徴の限定も推断されるべきではない。
【0018】
本特許出願においていくつかの用語が使用されるが、本特許出願の定式化は、選択された特定の用語によって限定されるのではなく、その特定の用語の背後にある一般概念に関連するものとして解釈されるべきである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「実験装置」の用語は、医療、化学、生物学、免疫学、または製薬の分野などにおける実験作業で使用するための、任意の種類の、自動化された、半自動化された、または手動の装置を指す。そのような実験装置は、とりわけ、分析機器(たとえば医療化学分析器、凝析化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器)、移送装置(たとえばコンベヤ、把持器、磁気移送表面)、保管ユニット、液体処理ユニット(たとえばピペット操作ユニット)、プロセッサ(たとえば試料調製装置)、ユーザインターフェース、混合ユニット(たとえば攪拌器、振盪器、または揺動器(agitator))、調節装置(たとえば加熱器/冷却器)、廃棄物ステーション、等分器(aliquoter)、データ管理システム、研究室情報システムLIS、などのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0020】
開示される方法の文脈で使用される場合、「RFIDタグ」の用語は、情報を含むパッシブ型のRFIDタグ(特にHF領域、すなわち13.56MHzなど100MHz未満で動作するRFIDタグ)を指す。RFIDタグまたは応答機は、コイルまたはアンテナ、およびRFIDリーダによって読み取られかつ/または書き込まれ得るRFIDチップ上に格納された何らかの情報を含む。これに対応して、RFIDタグは読み取りのみされ得るか、または読み取り/書き込みされ得、また、RFIDタグと関連付けられた情報は、製造のときにまたはそれより後のいずれかのときに、RFIDタグ内にハードコードされ得る。RFIDタグ上に格納された情報は、少なくとも1つの固有識別子UIDを含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「RFIDリーダ」の用語は、RFIDタグから情報を読み取ることのできる、および/またはRFIDタグに情報を書き込むことのできる、および/またはRFIDタグ上の情報をロックする(すなわちRFIDタグ上の情報の改変を防止する)ことのできる装置を含む。RFIDリーダは、リーダアンテナならびにこのアンテナを用いて信号を送信および受信するための回路を備えるか、またはこれらに接続される。RFIDリーダアンテナは電磁場を生成し、このことによってエネルギーをタグに伝送する。RFIDタグの設計に依存して、タグに伝送されるエネルギーの一部分は、タグによって吸収されることになり、この吸収の調整によって、タグについての情報がリーダに戻される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「個別にアドレス指定する」の用語−RFIDタグを個別にアドレス指定するRFIDリーダに関する場合−は、個別にアドレス指定されたRFIDタグのみが応答するようにする、RFIDタグをアドレス指定する任意のモードを指すものとする。RFIDタグを個別にアドレス指定するモードは、いずれもRFIDタグを個別にアドレス指定するためにそのUIDを使用する、「アドレス指定モード」および「選択モード」を備えるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用される場合、RFIDリーダアンテナの近傍にあるRFIDタグに関する「近傍」の用語は、(ISO15693規格によって定義されるような)最大約1〜1.5メートルの距離を意味するものとする。
【0024】
本明細書で使用される場合、RFIDリーダアンテナに近接するRFIDタグに関する「近接」の用語は、(ISO14443規格によって定義されるような)最大約10センチメートルの距離を意味するものとする。
【0025】
本明細書で使用される場合、「関連付け」の用語−RFIDタグおよびRFIDリーダアンテナに関する場合−は、RFIDタグとリーダのアンテナとの間の、これらの互いに対する相対位置を反映する関係を規定することを指す。1つの実施形態では、RFIDタグ−リーダアンテナ関連付けは、コンピュータメモリに格納されたルックアップテーブルの形態で表され、このテーブルは、各RFIDタグに対応しかつテーブルセル値としてそのRFIDタグに最も近いものと判定される特定のアンテナの識別子を有する、テーブルセルを備える。この関連付けを表し得る方法の多くの変形形態が、開示される方法/装置の範囲から逸脱することなく採用され得ることが、理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「資源」の用語は、実験装置の試薬/試薬カセット、または消耗品を指す。「試薬」の用語は、試料の処理のために必要とされる組成物を示すために使用される。試薬は、たとえば反応を起こさせるためにまたは検出を可能とするために、試料および/または他の試薬と混合される必要のある任意の液体、たとえば溶媒または化学溶液とすることができる。試薬はたとえば、水を含め、希釈液とすることができ、これは有機溶媒含むことができ、これは洗浄剤を含むことができ、これは緩衝剤とすることができる。試薬は、たとえば試料、別の試薬、または希釈液によって溶解されるように適合された、乾性の試薬とすることもできる。試薬は、その用語のより厳密な意味においては、反応物質を、典型的には、たとえば試料中に存在する1つまたは複数の検体に結合できるかまたはこれを化学的に変容させることのできる化合物または作用物質を含む、液体溶液とすることができる。反応物質の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク結合分子、核酸結合分子、抗体、キレート剤、促進剤、阻害剤、エピトープ、抗原、等である。「試薬カセット」は、液体または試薬の懸濁液を備える容器を指し得る。または、試薬カセットは、液体または試薬の懸濁液を備える容器を保持するための保持器とすることができる。
【0027】
「消耗品」は、分析試験における利用のために実験装置に反復的に導入される装置であるものと理解される。消耗品は1回使用されてから交換され得るか、または、これは複数回使用され得る。消耗品の例は、ピペット先端部、先端部ラック、液体容器(vessel)、試薬容器、等を含む。
【0028】
開示される方法/装置の実施形態によれば、RFIDタグ20.1〜20.Mは、以下(非網羅的なリスト)のうちの1つまたは複数を備える実験装置1の対応する資源に取り付けられ、かつ/またはこれらと関連付けられる:
− 消耗品および/または消耗品運搬器、
− 試料および/または試料運搬器、
− 先端部および/または先端部運搬器、
− ストリップ(strip)および/またはストリップ運搬器、
− 試薬および/または試薬運搬器。
【0029】
本明細書で使用される場合、「装填/保持/処理位置」の用語は、以下を指すものとする:
− 装填位置:資源を装填/受容するように構成された、実験装置の物理的または機能的配置、たとえば投入トレイまたはラック、
− 保持位置:資源を保持/保管するように構成された、実験装置の物理的または機能的配置、たとえば試薬用の保管ラック、冷却ユニットなど、
− 処理位置:資源の処理(たとえばピペット操作)を可能にするように構成された、実験装置の物理的または機能的配置。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、装填および/または保持および/または処理位置が一致する可能性がある、すなわち、資源は、実験装置の同じ物理的または機能的配置において、装填および/または保持および/または処理され得る。
【0031】
図1は、開示される方法/装置の1つの実施形態による実験装置1を示し、実験装置1は、資源のためのN個の保持位置5.1〜5.Nと関連付けられた個数NのRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nを有する。RFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nは、それぞれの保持位置5.1〜5.N内に装填された個数MのRFIDタグ20.1〜20.Mから情報を読み取るように配置および構成された、知られている種類のRFIDアンテナである。
【0032】
アンテナ10.1〜10.Nの個数Nは、資源を受容するための装填/保持/処理位置5.1〜5.Nに対応し、これらの資源に対して、個数MのRFIDタグ20.1〜20.Mが取り付けられるので、以下のことに留意されたい:
− NおよびMは自然数(1、2、3・・・)であり、
− Nは2以上であり、
(1つのアンテナしか、すなわち1つの保持位置しか存在しない場合、配置を判定する必要がないため)、
− Mは1以上である。
【0033】
本発明による方法の第1のステップでは、実験装置1内に装填された全てのRFIDタグのUIDのリスト/目録(inventory)を取得するために、個数MのRFIDタグ(20.1〜20.M)の各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mが読み取られる。
【0034】
いくつかの実施形態では−たとえば
図1に示すように−、RFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nは、装填および/または保持および/または処理位置5.1〜5.Nにある個数MのRFIDタグ20.1〜20.Mの各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mを読み取るように、各々構成される。
【0035】
さらに、N個のRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nは、RFIDタグ20.1〜20.Nからの対応する応答信号の受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを登録し、これらに基づいてRFIDタグ−リーダアンテナ関連付けを行うように、各々構成される。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mは、N個のRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nの各々によって、同じ段階(step)において/M個のRFIDタグ20.1〜20.Mの各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mを読み取る間に、登録される。言い換えれば、受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mは、固有識別子UID
1〜UID
Mを担持する応答と同じ応答から登録される。
【0037】
さらなる実施形態によれば、受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mは、N個のRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nの各々によって、別個の段階において、特にM個のRFIDタグ20.1〜20.Mの各々を対応する固有識別子UID
1〜UID
Mにより個別にアドレス指定することによって登録される。
【0038】
代替の実施形態−図面には示されない−では、固有識別子UID
1〜UID
Mは、識別されることになる各資源が最初に通過することになる場所(たとえば開いているドアまたは試薬カセット装填用の引き出しなどの資源用の引き出しのところ)である、実験装置1の異なる配置に位置付けられたRFIDリーダにより読み取られる。
【0039】
代替の実施形態−図面には示されない−では、実験装置1によって備えられたまたはこれに通信可能に接続されたコンピュータメモリから、個数MのRFIDタグ20.1〜20.Mの各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mが読み取られる。
【0040】
図1に示されるように、実験装置1は、各RFIDタグ20.1〜20.Mを、RFIDタグ20.1〜20.Mに対応する最も強い受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを受信したリーダアンテナ10.1〜10.Nと関連付けるように構成された処理ユニット2をさらに備える。
【0041】
本発明によるいくつかの実施形態では、この関連付けは、RFIDタグ20.1〜20.Nからの対応する応答信号の受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mが登録される表に基づき、この表は、1つの実施形態では以下の表1に類似する。
【0043】
表1は、本明細書によって開示された方法が、感度の異なる複数のRFIDタグから生じる問題をどのように克服するかを、非常に良好に例示する。たとえば上記の表におけるように、第2のリーダアンテナ10.2は、第2のRFIDタグ20.2(相対的に弱いタグ)に対するよりも第1のRFIDタグ20.1(相対的に強いタグ)に対して、より高いRSSI値を記録する。この場合、従来の知られている方法であれば、第1のRFIDタグ20.1が第2のリーダアンテナ10.2の最も近くに配設されていると、誤って結論付けるであろう。しかしながらこれは正しくなく、知られている方法を使用するこのエラーは、第2のアンテナ10.2に最も近いものであるにも関わらず、それより離れている第1のRFIDタグ20.1よりもわずかに弱いRSSI値を有する応答を送信する第2のRFIDタグ20.2の、より低い感度に起因するものと考えられる。
【0044】
これとは対照的に、開示された方法/装置の方法を使用して、複数のRFIDリーダアンテナによって受信された第2のRFIDタグ20.2に関するRSSI値を比較することによって、処理ユニット2は、第2のRFIDタグ20.2を第2のリーダアンテナ10.2に最も近いものとして正しく関連付ける。
【0045】
1つの実施形態では、エラーを減らすためのさらなるステップとして、方法は、2つ以上のRFIDタグ20.1〜20.Mが各リーダアンテナ10.1〜10.Nと関連付けられていないことを確認するステップをさらに含む。
【0046】
各RFIDタグ20.1〜20.Mを、RFIDタグ20.1〜20.Mに対応する最も強い受信信号強度指示RSSI.1.1〜RSSI.N.Mを受信したリーダアンテナ10.1〜10.Nと関連付けるステップに加えて、いくつかの実施形態は、RFIDタグ20.1〜20.MのRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nとの関連付けに基づいて、M個のRFIDタグ20.1〜20.Mの各々のそれぞれの配置と装填および/または保持および/または処理位置5.1〜5.Nとの間の相関を提供するステップをさらに含む。関連付けおよび相関を提供するステップが、同時に単一の動作/段階としてさえ実行され得ることに留意されたい。
【0047】
正しいRFIDタグ20.1〜20.Mと通信されることを保障するために、関連付けが提供された後で、実験装置1と特定のRFIDタグ20.1〜20.Mとの間の通信は、特定のRFIDタグ20.1〜20.Mと関連付けられたリーダアンテナ10.1〜10.Nを通して方向付けられ、各リーダアンテナ10.1〜10.Nは、関連付けられたRFIDタグ20.1〜20.Mを個別にアドレス指定することによって、すなわちいわゆるRFIDアドレス指定モードコマンドによって、通信する。
【0048】
開示された方法/装置のさらなる実施形態によれば、M個のRFIDタグ20.1〜20.Mの各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mを読み取ることに基づき、RFIDタグ20.1〜20.Mの個数MがRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nの個数Nよりも大きい場合に、エラー信号が生成される。このことは、資源から落ちたRFIDタグのラベルが実験装置内に「貼り付いて」いること、または資源に誤って2つ以上のRFIDタグが取り付けられていることに起因している可能性がある。
【0049】
開示された方法/装置のさらなる実施形態では、M個のRFIDタグ20.1〜20.Mの各々に対応する固有識別子UID
1〜UID
Mを読み取ることに基づき、RFIDタグ20.1〜20.Mの個数Mが、実験装置1の装填および/または保持および/または処理位置内に存在するものとして検出された資源の個数Rと異なる場合に、エラー信号が生成される。1つの資源が、1つのRFIDタグ20.1〜20.Mと関連付けられる/これらによって識別されることになるので、RFIDタグよりも多い資源の存在は、少なくとも1つの資源が識別され得ないことを示している。このことは、資源がRFIDタグを有していない、欠陥のあるRFIDタグが取り付けられている、または資源が誤って装填されこの結果RFIDタグがRFIDリーダアンテナの範囲内にない場合である可能性がある。検出される資源の個数Rは、光学的検出によって、重量測定によって、電気機械的接触(スイッチ)によって、等のように、資源のRFIDタグから独立した手段によって判定され得る。
【0050】
図2は、各保持位置5.1〜5.Nに対してRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nがある状態の、弧に沿って配置された、実験装置1のための資源(消耗品、たとえば試薬カセット)に取り付けられた複数のRFIDタグ20.1〜20.Mの上面図を示す。本明細書に記述される実施形態では、保持位置5.1〜5.Nは、試薬カセットなどのためのカルーセル状のカセット保持器の位置である。この図に様々な点線で例示されるように、1つのリーダアンテナ10.1〜10.Nの読み取り範囲は十分に広いので、2つ以上のRFIDタグ20.1〜20.Mがその中に配設され得る。
【0051】
図3は、ラックの各保持位置5.1〜5.Nに対してRFIDリーダアンテナ10.1〜10.Nがある状態の、実験装置1のための試薬カセットに取り付けられた複数のRFIDタグ20.1〜20.Mがラック状のカセット保持器に対応して直線的に配置された、さらなる実施形態の上面図を示す。
【0052】
上記された特定の構造に基づいて、以下の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形形態が採用され得ることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0053】
1 実験装置
2 処理ユニット
5.1〜5.N 保持位置、処理位置、装填/保持/処理位置、装填および/または保持および/または処理位置
10.1〜10.N RFIDリーダアンテナ
20.1〜20.M RFIDタグ