特許第6814534号(P6814534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814534流体の流れを絞るための装置、およびこれに対応する、流体を圧送するためのピストンポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814534
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】流体の流れを絞るための装置、およびこれに対応する、流体を圧送するためのピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/10 20060101AFI20210107BHJP
   F04B 23/06 20060101ALI20210107BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F04B53/10 J
   F04B23/06
   F04B53/16 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-206012(P2015-206012)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-89827(P2016-89827A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】10 2014 222 741.0
(32)【優先日】2014年11月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シュタインガッセ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトナー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】コクーレック,ヴァクラフ
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−501889(JP,A)
【文献】 特開平05−201331(JP,A)
【文献】 特開2013−147176(JP,A)
【文献】 特開2011−005887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/10
F04B 23/06
F04B 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧送するためのピストンポンプ(1,1A)において流体の流れ方向で見て吐出バルブの後ろに設けられ、流体の流れを絞るための装置(10,10A)であって、
鉢状のベース体(14)を有していて、該ベース体(14)の底部に第1の貫流開口(14.1)が配置されており、ばね部材(18,18A)のばね力に抗して軸方向で可動に前記鉢状のベース体(14)内でガイドされた閉鎖体(16,16A)を有しており、該閉鎖体(16,16A)が第2の貫流開口(16.1)を有していて、該第2の貫流開口(16.1)は、予め設定された不動の開口横断面を有する静的な絞り箇所(11)を形成しており、前記閉鎖体(16,16A)は、前記ばね部材(18,18A)および前記第1の貫流開口(14.1)と組み合わせて、動的な開口横断面を有する動的な絞り箇所(12,12A)を形成し、該動的な開口横断面は、前記閉鎖体(16,16A)の上流側と下流側の圧力差に依存して該閉鎖体(16,16A)が前記第1の貫流開口(14.1)を閉鎖する閉鎖方向または前記第1の貫流開口(14.1)を開放する開放方向に動作されることにより、可変に調節可能である形式の装置において、
前記閉鎖体(16,16A)の閉鎖運動を的確に遅延させる遅延装置(20,20A)が設けられ、
前記遅延装置(20)は、前記閉鎖体(16)が前記第1の貫流開口(14.1)を閉鎖する閉鎖方向への運動を、該閉鎖体(16)が前記第1の貫流開口(14.1)を開放する開放方向への運動よりも遅延させる
ことを特徴とする、流体の流れを絞るための装置。
【請求項2】
前記遅延装置(20)が、リップ(22.1)を備えた摩擦部材(22)を有しており、該摩擦部材(22)は、前記閉鎖体(16)と前記鉢状のベース体(14)の内壁(14.2)との間に配置されていて、前記閉鎖体(16)の前記閉鎖方向及び前記開放方向に依存する摩擦を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記摩擦部材(22)は、該摩擦部材(22)の前記リップ(22.1)が前記鉢状のベース体(14)の前記内壁(14.2)に沿ってガイドされるように、前記閉鎖体(16)の収容部(24)内に配置されているかまたは前記閉鎖体(16)に一体成形されている
ことを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記摩擦部材(22)は、前記閉鎖体(16)の開放方向で、より低い摩擦値を有し、前記閉鎖体(16)の閉鎖方向で、より高い摩擦値を有していることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記遅延装置(20A)は、エラストマばね(22A)として構成されたばね部材(18A)を有し
前記エラストマばね(22A)は、ストロークの増加する過程における反発力が該ストロークの減少する過程における同じストロークであるときの反発力に比較して大きくなるヒステリシス特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記閉鎖体(16A)の閉鎖運動の遅延が、前記エラストマばね(22A)の材料選択および/または幾何学形状選択によって予め設定されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
流体を圧送するためのピストンポンプ(1,1A)であって、ピストンと、ポンプシリンダ(5)と、吸入バルブと吐出バルブとの間に配置された圧力室とを有しており、流体の流れ方向で見て前記吐出バルブの後ろに、流体の流れを絞るための手段(10)が設けられている形式のピストンポンプにおいて、
前記絞り手段が、請求項1から6までの少なくともいずれか1項に記載の流体の流れを絞るための装置(10)として構成されていることを特徴とする、流体を圧送するためのピストンポンプ。
【請求項8】
前記遅延装置(20,20A)は、ピストンポンプ(1,1A)の第1の運転形式において、前記流体の流れが、ポンプストロークの所定回数後に静的な絞り箇所(11)において制限されて、動的な絞り箇所(12,12A)により形成されたバイパスによって架橋されるように、設計されていることを特徴とする、請求項7に記載のピストンポンプ。
【請求項9】
前記遅延装置(20,20A)は、第2の運転形式において前記静的な絞り箇所(11)が接続されて、圧力に依存することなしに流体の流れを絞るように、設計されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前文に記載した流体の流れを絞るための装置に関する。また本発明は、このような絞り装置を備えた、流体を圧送するためのピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ABS機能および/またはESP機能(ABS:アンチロックシステム、ESP:エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)を有する液圧式のブレーキシステム内で圧力媒体を圧送するためのピストンポンプは、従来技術により様々な実施例のものが公知である。例えば車両ブレーキ装置に、圧力媒体を圧送するための複数のポンプ部材を備えたラジアルピストンポンプがしばしば使用され、このラジアルピストンポンプにおいては、少なくとも1つのピストンが偏心体によって往復移動せしめられる。一般的に、このようないわゆるポンプ部材は、ピストンと、しばしばシリンダとして構成されたピストン摺動面と、吸入および吐出バルブ並びにシール部材とから成っている。これらのバルブは、ピストンのポンプ運動の際の流体制御のために用いられる。この場合、吸入バルブは、流体が圧縮段階中に吸入室内に逆流しないようにするために用いられ、吐出バルブは、流体が吐出側からポンプ内室内に逆流するのを阻止する。さらに、ピストンポンプの吐出バルブの後ろに、静的および動的な絞り箇所を備えた絞り装置が設けられており、この絞り装置は、流量に応じて若しくは流量に基づく圧力差に応じて開閉する。静的な絞り箇所によって、ピストンポンプのNVHパフォーマンス(NVH:Noise,Vibration,Harshness,ドイツ語:Geraeusch「雑音」,Vibration「振動」,Rauheit「粗さ」)に関する利点が得られるが、最大可能な体積流量に関する欠点も得られる。何故ならば、各ポンプストローク後に動的な絞り箇所が再び閉鎖し、組み込まれた静的な絞り箇所を通って体積が流されるからである。これによって、圧力生成パフォーマンスの際の損失が発生し得る。
【0003】
特許文献1には、例えば液圧式の車両ブレーキ装置内で流体を圧送するためのピストンポンプが記載されている。ここに記載されたピストンポンプは、シリンダと、このシリンダ内で可動に支承されたピストンと、吸入バルブと吐出バルブとの間に配置された圧力室とを有している。圧力室は、カバーによって画定されている。流体の流れ方向で吐出バルブの後ろに、流体の流れを絞るための絞り部材が設けられており、この絞り部材は、ばね弾性的なディスクとして構成されている。ばね弾性的なディスクは、カバー内に取り付けられており、この場合、カバー内にセンタリング手段が設けられており、このセンタリング手段はカバー内で絞り部材を予備センタリングするように作用する。ここに記載されたピストンポンプは、差圧に依存することなく開放された、所定の一定な流過横断面を有する貫通開口を備えた第1の絞り箇所と、差圧に依存して開放された、差圧に依存する動的な流過横断面を有する貫通開口を備えた第2の絞り箇所とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102011079876号明細書
【発明の概要】
【0005】
これに対して、独立請求項1の特徴を有する、車両のための流体の流れを絞るための、本発明による装置は、高いモータ速度における最大の圧送効率を、低いモータ速度におけるNVHパフォーマンスを変えることなく、安価に高めることができる、という利点を有している。
【0006】
本発明の核心は、閉鎖体内に的確な慣性を組み込むという点にある。これによって、動的な絞り箇所の閉鎖特性を遅延させることができる。動的な絞り箇所の遅延された閉鎖特性によって、少ない回数のポンプストローク後に、静的な絞りの遮断が得られる。バルブの、組み込まれた慣性は、的確に組み込まれた、方向に依存する摩擦を介してまたはエラストマばねを介して得られる。組み込まれた慣性は、動的な絞り箇所の迅速な閉鎖を妨げる。ヒステリシスを有する閉鎖特性が生じ、動的な絞り箇所の閉鎖が時間をずらして行われる。
【0007】
本発明の実施例により提供された、流体の流れを絞るための装置は、鉢状のベース体を有していて、このベース体の底部に第1の貫流開口が配置されており、また、ばね部材のばね力に抗して軸方向で可動に前記鉢状のベース体内でガイドされた閉鎖体を有しており、この閉鎖体は第2の貫流開口を有していて、この第2の貫流開口は、予め設定された不動の開口横断面を有する静的な絞り箇所を形成している。この閉鎖体は、ばね部材および第1の貫流開口と組み合わせて、動的な開口横断面を有する動的な絞り箇所を形成し、この動的な開口横断面は、圧力差に依存して可変に調節可能である。本発明によれば、閉鎖体の閉鎖運動を的確に遅延させる遅延装置が設けられている。
【0008】
また、流体を圧送するためのピストンポンプが設けられており、このピストンポンプは、ピストンと、ポンプシリンダと、吸入バルブと吐出バルブとの間に配置された圧力室とを有している。流体の流れ方向で見て吐出バルブの後ろに、流体の流れを絞るための手段が設けられており、この手段は、本発明に従って、流体の流れを絞るための装置として構成されている。
【0009】
従属請求項に記載した手段および実施態様によって、独立請求項1に記載した、流体の流れを絞るための装置、および独立請求項7に記載した、流体を圧送するためのピストンポンプの好適な改善が可能である。
【0010】
特に好適には、遅延装置が、リップを備えた摩擦部材を有していてよく、該摩擦部材は、閉鎖体と鉢状のベース体の内壁との間に配置されていてよく、方向に依存する摩擦を発生させることができる。摩擦部材は例えば、この摩擦部材のリップが鉢状のベース体の内壁に沿ってガイドされ得るように、閉鎖体の収容部内に配置され得るかまたは閉鎖体に一体成形され得る。閉鎖体がプラスチック射出成形部として構成されていれば、方向に依存する摩擦部材は、好適な形式で、大した費用をかけることなしに射出成形部内に直に組み込むことができる。また、摩擦部材は、閉鎖体の開放方向で、より低い摩擦値を有していてよく、閉鎖体の閉鎖方向で、より高い摩擦値を有していてよい。
【0011】
本発明による装置の選択的な構成によれば、遅延装置は、エラストマばねとして構成されたばね部材を有していてよい。閉鎖体の閉鎖運動の遅延は、この実施例では、エラストマばねのための適当な材料選択および/または幾何学形状選択によって簡単に、予め設定され得る。
【0012】
本発明によるピストンポンプの好適な実施態様によれば、遅延装置は、ピストンポンプの第1の運転形式において、ポンプストロークの所定回数後に静的な絞り箇所が遮断されて、動的な絞り箇所により形成されたバイパスによって架橋され得るように、設計され得る。また、遅延装置は、第2の運転形式において静的な絞り箇所が接続されて、圧力に依存することなしに流体の流れを絞ることができるように、設計され得る。ピストンポンプは、好適な形式で、第1の運転形式では、より高い圧送効率を有し、第2の運転形式では、より低い圧送効率を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】流体の流れを絞るための、本発明による装置の第1実施例を有する、流体を圧送するための、本発明によるピストンポンプの第1実施例の一部の概略的な断面図である。
図2図1に示した流体を圧送するための、本発明によるピストンポンプの概略的な詳細図である。
図3】流体の流れを絞るための、本発明による装置の第2実施例を有する、流体を圧送するための、本発明によるピストンポンプの第2実施例の一部の概略的な断面図である。
図4図1または図3に示した、流体の流れを絞るための本発明による装置の、力とストロークに関する特性曲線である。
図5】対応するピストンポンプの第1のストロークにおける、図1または図3に示した流体の流れを絞るための、本発明による装置の流量と圧力差に関する特性曲線である。
図6】対応するピストンポンプの第2のストロークにおける、図1または図3に示した流体の流れを絞るための、本発明による装置の流量と圧力差に関する特性曲線である。
図7】対応するピストンポンプの第3のストロークからの、図1または図3に示した流体の流れを絞るための、本発明による装置の流量と圧力差に関する特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例が図面に示されていて、以下に詳しく説明されている。図面中、同じ若しくは類似の機能を有する構成部材若しくは要素には同じ符号が付けられている。
【0015】
図1図3に示されているように、図示の本発明による、流体の流れを絞るための装置10,10Aの実施例は、底部に第1の貫流開口14.1が配置された鉢状のベース体14と、ばね部材18,18Aのばね力に抗して軸方向で可動に前記鉢状のベース体14内でガイドされた閉鎖体16,16Aとを有している。この閉鎖体16,16Aは第2の貫流開口16.1を有しており、この第2の貫流開口16.1は、予め設定された不動の開口横断面を有する静的な絞り箇所11を形成する。この場合、閉鎖体16,16Aは、ばね部材18,18Aおよび第1の貫流開口14.1と組み合わせて、圧力差に依存して可変に調節可能な動的な開口横断面を有する動的な絞り箇所12,12Aを形成する。本発明によれば、遅延装置20,20Aが設けられており、この遅延装置20,20Aは、閉鎖体16,16Aの閉鎖運動を的確に遅延させる。
【0016】
本発明による、流体の流れの絞り装置10,10Aの実施例は、図示の実施例では、流体を圧送するためのピストンポンプ1,1A内に嵌め込まれており、このピストンポンプ1,1Aは、ピストンと、ポンプシリンダ5と、吸入バルブと吐出バルブとの間に配置された圧力室とを有している。この場合、絞り装置10,10Aは、流体の流れ方向でピストンポンプ1,1Aの吐出バルブの後ろに配置されている。ポンプシリンダ5は、図示の実施例では、相応の流体通路3.1,3.2を有する流体ブロック3の収容孔内に嵌め込まれている。絞り装置10,10Aの遅延装置20,20Aは、より高い圧送効率および高いモータ速度を特徴とするピストンポンプ1,1Aの第1の運転形式で、静的な絞り箇所11がポンプストロークの所定回数後に遮断されて、動的な絞り箇所12,12Aにより形成されたバイパスによって架橋されるように、設計されている。さらに、遅延装置20,20Aは、より低い圧送効率および低いモータ速度を特徴とするピストンポンプ1,1Aの第2の運転形式において、静的な絞り箇所11が接続されて、圧力に依存することなしに流体の流れを絞るように、設計されている。
【0017】
できるだけ高い圧送効率を得られるようにするために、始めは静的な絞り箇所11は、それぞれのポンプストロークにおいて可能な限り「遮断」される。しかしながら、良好なNVHパフォーマンスにとっては、制御状態で雑音を発生させる操縦が行われる低いモータ速度において流体の流れを絞るために、まさにこのような静的な絞り箇所11が非常に重要である。低いモータ速度においては、本発明に従って組み込まれた慣性が絞り装置10,10Aの閉鎖特性に影響を及ぼすことはない。各ポンプストロークは、低いモータ速度において互いに大きく離れており、動的な絞り箇所12は組み込まれた慣性にも拘わらず閉鎖することができる。高い圧送効率が要求される場合の高いモータ速度において、動的な絞り箇所12はもはや閉鎖することはできない、何故ならば、組み込まれた慣性は大きすぎて、動的な絞り箇所12は短時間でもはや閉鎖できなくなるからである。これによって、ダイレクトなバイパスが得られ、静的な絞り箇所11は「遮断」される。
【0018】
さらに図1および図2に示されているように、遅延装置20は、本発明による絞り装置10の図示の第1実施例では、リップ22.1を備えた摩擦部材22を有しており、この摩擦部材22は、閉鎖体16と鉢状のベース体14の内壁14.2との間に配置されていて、方向に依存して摩擦を発生させる。図示の第1実施例では、摩擦部材22は、摩擦部材22のリップ22.1が鉢状のベース体14の内壁14.2に沿ってガイドされるように、閉鎖体16に環状の溝として形成された収容部24内に配置されている。このように構成されたリップ22.1によって、摩擦部材22は、閉鎖体16の開放方向で、閉鎖体16の閉鎖方向におけるよりも低い摩擦値を有している。従って、摩擦部材22は閉鎖方向で、開放方向におけるよりも高い摩擦値を有している。図示していない選択的な実施例において、閉鎖体16はプラスチック射出成形部として構成されており、このプラスチック射出成形部に直に摩擦部材22が一体成形されている。
【0019】
さらに図3に示されているように、本発明による絞り装置10Aの図示の第2実施例の遅延装置20Aは、エラストマばね22Aとして構成されたばね部材18Aを有している。閉鎖体16Aの閉鎖運動の遅延は、エラストマばね22Aのための適当な材料選択および/または幾何学形状選択によって簡単に予め設定することができる。
【0020】
さらに図4に示されているように、第1実施例による組み込まれた摩擦部材22若しくは第2実施例による嵌め込まれたエラストマばね22Aは、本発明による絞り装置10,10Aの図示された力とストロークに関する特性曲線のヒステリシスに影響を及ぼす。
【0021】
さらに図5に示されているように、高い圧送効率における第1のポンプストロークを表す、第1の流量と差圧に関する図示の特性曲線H1は、低い圧力差において明らかに静的な部分を有している。さらに図6に示されているように、高い圧送効率における第2のポンプストロークを表す、第2の流量と差圧に関する図示の特性曲線H2は、低い圧力差において、より小さい静的な部分を有しており、この小さい静的な部分は、図7に示した、高い圧送効率における第3のポンプストロークを表す、第3の流量と差圧に関する特性曲線H3においては、ほぼ完全に消失している。後続のポンプストロークのための流量と差圧に関する特性曲線の変化は、流量と差圧に関する図示の第3の特性曲線H3の変化に相当する。
【符号の説明】
【0022】
1,1A ピストンポンプ
3 流体ブロック
3.1,3.2 流体通路
5 ポンプシリンダ
10,10A 絞り装置
11 静的な絞り箇所
12,12A 動的な絞り箇所
14 ベース体
14.1 第1の貫流開口
14.2 内壁
16,16A 閉鎖体
16.1 第2の貫流開口
18,18A ばね部材
20,20A 遅延装置
22 摩擦部材
22.1 リップ
22A エラストマばね
24 収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7