【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る地中埋設管の防護構造は、地中埋設管の上面と両側面が、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材で覆われていることを特徴とする構造からなる。本発明における地中埋設管としては、その横断面形状が円形の管に加え、横断面形状が楕円形等の略円形、箱形の管が含まれ、代表的には、水道管やガス管、下水管、電力線や通信線を収納するための管等のインフラ管として用いられる管をいう。
【0011】
このような本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、地中埋設管の上面と両側面が、間隔をもって地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材で覆われているので、地中埋設管は、敷設された防護材により、地中埋設管の上方からの掘削衝撃に加え、地中埋設管の横からの掘削衝撃に耐えることができる。地中埋設管の下方からは、基本的に掘削衝撃が加わることはないので、地中埋設管は、実質的に全方位からの掘削衝撃から防護されることになる。その結果、従来構造に比べ、掘削工事時に、バックホウやスコップ、ツルハシといった掘削機器による地中埋設管の破損や損傷をより適切にかつ確実に防止できることになる。
【0012】
上記本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、防護材内面と地中埋設管外面との間隔が1cm〜30cmの範囲にあることが好ましい。この範囲内の間隔とすることにより、防護材を介して防護材外部からの掘削衝撃が直接地中埋設管に伝達されることが適切に回避され、かつ、この好適な防護構造が、地中埋設管の周囲にそれほど大きなスペースを要することなく容易に完成される。
【0013】
また、上記防護材と地中埋設管の間には適当な緩衝材が介在されていることが好ましい。緩衝材の介在により、防護材と地中埋設管が互いに支持し合うことになるので、両者の所望の形態、姿勢が容易に保たれるとともに、防護材外部からの掘削衝撃が防護材を介して地中埋設管へと伝達されようとする際、伝達されようとする衝撃エネルギーを多かれ少なかれ介在されている緩衝材で吸収させることが可能になり、その分、地中埋設管自体に加わる衝撃エネルギーが低減されて、地中埋設管の破損や損傷が一層適切にかつ確実に防止される。
【0014】
上記緩衝材としては、例えば、土(埋め戻し土、建設発生土、山砂含む)、EPS(発泡スチロール)等を用いることができ、経済性、環境性を考慮すると土とすることが好ましい。すなわち、上記緩衝材として、エネルギー吸収性能を有する防護材とは別の部材で構成することも可能ではあるが、緩衝材が土、とくに埋戻し土(一般的には、山砂や改良土)であると、特別な部材を準備することなく、容易に適切な緩衝材を介在させることができる。すなわち、埋戻し土に、地中埋設管の基礎と上記緩衝材の機能を兼ねさせる防護構造である。
【0015】
また、上記本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、防護材の断面形状としては、基本的には、下方に向けて開口された門型もしくは馬蹄型が採用されるが、本発明で規定した防護構造を満たすことができさえすれば、他の断面形状の採用も可能である。門型としては、一体型に構成されていてもよく、3枚の平板から構成されていてもよい。
【0016】
また、バックホウなどの掘削建設機械の衝撃に耐えられるように、上記防護材をなす外壁が、35J以上の耐衝撃性能を有していることが好ましい。
【0017】
また、上記防護材は、その少なくとも一部が(望ましくは全体が)繊維強化プラスチックで構成されていることが好ましい。繊維強化プラスチックで構成されていることにより、防護材を軽量化して取扱い性を改善できるとともに、防護材自体の強度、剛性を高くすることができ、さらに、防護材自体の腐食劣化の恐れを除去できる。
【0018】
上記繊維強化プラスチックとしては、少なくとも強化繊維で形成されたシートを用いて構成されているものが好ましい。強化繊維シートを用いて構成されていることにより、比較的厚みの小さい防護材でも、軽量化を達成しながら高い強度、剛性を発現させることができる。
【0019】
上記強化繊維で形成されるシートの形態としては特に限定されず、例えば、織物、フェルト、もしくはマット、あるいはこれらのいずれかの組み合わせから形成されているものを使用できる。
【0020】
また、繊維強化プラスチックの強化繊維としても特に限定されないが、防護材外部からの掘削衝撃に対し高い強度、剛性を持たせるという観点からは、それを構成する繊維強化プラスチックに高い耐衝撃性を持たせることが望ましく、これを満たすために、強化繊維として、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維もしくはガラス繊維の少なくとも一つが用いられていることが好ましい。中でも、アラミド繊維を用いた繊維強化プラスチックは優れた耐衝撃性を発現できるので、強化繊維としてはアラミド繊維を使用することが特に好ましい。繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としても特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂ではエポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂もしくはフェノール系樹脂等が使用でき、熱可塑性樹脂ではナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリイミド系樹脂等が使用できる。
【0021】
このような防護材を成形する方法として、熱硬化性樹脂を使用する場合はハンドレイアップ成形、引抜き成形、RTM(Resin Transfer Molding)成形、プレス成形もしくはオートクレーブ成形などとし、熱可塑性樹脂を使用する場合は押し出し成形、射出成形もしくはプレス成形などを用いることができる。
【0022】
なお、本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、通常、地中埋設管は長く延びるように敷設されるので、複数の防護材が地中埋設管の管軸方向に沿って連接されている構造を採用することが好ましい。連接構造の防護材同士の継ぎ目部分は、多少端部をオーバーラップさせた構造、端面同士を突き合わせた構造、端部間に微小な隙間の存在する構造のいずれも採用可能である。複数の防護材が連接される場合の一つの防護材の長さは特に限定されず、取扱い性や敷設の容易性を考慮して適宜設定すればよい。
【0023】
本発明に係る地中埋設管の防護方法は、地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材を、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の上面と両側面を覆うように地中埋設管周囲に敷設する工程を有することを特徴とする方法からなる。すなわち、この本発明に係る方法は、既設の地中埋設管に対して、管を更新することなく実施する場合にも適用できる方法である。
【0024】
溝を掘削して新たに管を敷設する場合や既設の地中埋設管を更新する場合には、例えば、上記本発明に係る地中埋設管の防護方法は、
掘削溝内に地中埋設管を敷設後に、地中埋設管周囲に地中埋設管の基礎を兼ねる土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、
上記防護材を地中埋設管周囲に敷設する工程と、
防護材を敷設した後に、掘削溝全体に土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、を有する方法として実施できる。
【0025】
このような地中埋設管の防護方法においては、上記防護材を敷設する工程において、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入する方法を採用することができる。すなわち、前述した断面形状が門型や馬蹄型の防護材の両脚部位を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入する方法である。
【0026】
このような防護材を敷設する工程において、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を挿入可能なガイド溝を形成した後、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入するようにすることもできる。このように防護材の敷設前に先にガイド溝を形成しておけば、小さい抵抗をもってより容易に防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位(防護材の両脚部位)を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入することができ、施工が容易化される。
【0027】
また、本発明に係る地中埋設管の防護方法においては、防護材の敷設に際し、防護材の上面に押し込み用治具を載置し、該治具を介して防護材を敷設する方法を採用することもできる。このようにすれば、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入するときに、バックホウ等を用い上記押し込み用治具を介して防護材を押し込むことができ、防護材敷設作業の容易化をはかることができる。防護材を目標とする位置に敷設した後には、その防護材に対しては押し込み用治具を取り外し、次に敷設予定の防護材に対して該治具を利用することができる。
【0028】
この本発明に係る地中埋設管の防護方法においても、一つの防護材の長さを取扱い性や敷設の容易性を考慮して適切に設定しておき、複数の防護材を地中埋設管の管軸方向に沿って連接していくことが好ましい。