特許第6814575号(P6814575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6814575-地中埋設管の防護構造および防護方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814575
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】地中埋設管の防護構造および防護方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/11 20060101AFI20210107BHJP
   E03F 3/02 20060101ALI20210107BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F16L1/11
   E03F3/02
   F16L57/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-175471(P2016-175471)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-53489(P2017-53489A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-178429(P2015-178429)
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】岡本 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】山本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】細野 一弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷 康平
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−311131(JP,A)
【文献】 特開平10−152828(JP,A)
【文献】 実開平05−079160(JP,U)
【文献】 実開平06−043461(JP,U)
【文献】 米国特許第05962809(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0673485(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0118369(KR,A)
【文献】 特開2009−041738(JP,A)
【文献】 特開2011−114940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/11
E03F 3/02
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材を、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の上面と両側面を覆うように地中埋設管周囲に敷設する工程を有し、
掘削溝内に地中埋設管を敷設後に、地中埋設管周囲に地中埋設管の基礎を兼ねる土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、
前記防護材を敷設する工程と、
防護材を敷設した後に、掘削溝全体に土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、を有し、
防護材を敷設する工程において、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、前記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入することを特徴とする、地中埋設管の防護方法。
【請求項2】
防護材を敷設する工程において、前記地中埋設管の基礎を兼ねる土に、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を挿入可能なガイド溝を形成した後、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、前記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入する、請求項に記載の地中埋設管の防護方法。
【請求項3】
防護材の全体が繊維強化プラスチックで構成されている、請求項1または2に記載の地中埋設管の防護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設管の防護構造および防護方法に関し、とくに、掘削機器による地中埋設管の破損や損傷を適切かつ確実に防止できるようにした地中埋設管の防護構造および防護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路などの公共敷地の地中には、水道管やガス管、下水管、電力線や通信線を収納するための管等が埋設されており、都市を形成する上で重要なインフラ管網が整備されている。近年、施工性や耐久性の観点から、このようなインフラ管を構成する地中埋設管の素材がプラスチック製に変わってきた。しかし、プラスチック製管は、従来のコンクリート製や鋳鉄製のものに比べ、バックホウやスコップ、ツルハシ等の掘削機器による掘削時衝突によって破損、損傷しやすい。
【0003】
一般的に、水道管、ガス管、下水管などは、道路管理の都合上、近接して埋設されているために、管敷設工事時に他の敷設管を破損、損傷することがあった。特に水道管やガス管の場合のように、一定の圧力がかかっているものは、損傷によって内容物が漏洩し、近隣のインフラ配給を一時的に停止させ、環境や周辺住民のライフラインに悪影響を及ぼすことになる。
【0004】
このような掘削作業時の地中埋設管の損傷を防止する為に、管が埋設されていることを知らせる手段として道路上に埋設表示を行ったり、管自体に不織布などを巻きつけ掘削衝撃を緩和し、管の致命的損傷を防ぐようにしていた。しかしながら、表示をしていても、施工時に地中埋設管に損傷を生じさせたり、不織布を突き破り、致命的損傷を与えたりすることがある。
【0005】
例えば、特許文献1には、地中埋設管が地中ボーリング機或いは掘削機器で損傷を受けることがないように、地中埋設管上に、防護鉄板とその上部に高硬度セラミック板を配置して一緒に埋設する損傷防止装置が開示されている。しかし、この装置においては、地中埋設管の側面側は防護されていないので横からの掘削に耐えることができないこと、防護用に鉄板を埋設するので、損傷防止装置自体が腐食劣化する心配があること、また、ベースが鉄板なので重く、取扱い性がよくないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、3枚の編織布を積層し、これら編織布を、それらの中心部において、接着手段により長手方向に細線状に接着したものを管の上部に防護材として使用する方法が開示されている。しかし、この方法においては、防護材が編織布であるため、先が尖るツルハシや大型掘削機械での掘削衝撃に対しては抵抗が難しく、地中埋設管の損傷が懸念される。
【0007】
さらに、特許文献3には、金属板と樹脂層で構成される防護板を、既設の埋設管路の上方の地中に埋設する構造が開示されている。しかし、この構造においては、地中埋設管の横からの掘削に耐えることができないこと、ベースが鉄板なので重く、取扱い性がよくないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−152828号公報
【特許文献2】特開平6−337090号公報
【特許文献3】特開2011−114940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、上記のような従来技術における問題点に着目し、掘削工事時に、バックホウやスコップ、ツルハシといった掘削機器による地中埋設管の破損や損傷をより適切にかつ確実に防止でき、しかも、地中埋設管が存在していることを施工者に知らせることが可能な、さらには敷設防護材の軽量化をはかり取扱い性を改善可能で、防護材自体の腐食劣化も防止可能な、地中埋設管の防護構造および防護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る地中埋設管の防護構造は、地中埋設管の上面と両側面が、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材で覆われていることを特徴とする構造からなる。本発明における地中埋設管としては、その横断面形状が円形の管に加え、横断面形状が楕円形等の略円形、箱形の管が含まれ、代表的には、水道管やガス管、下水管、電力線や通信線を収納するための管等のインフラ管として用いられる管をいう。
【0011】
このような本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、地中埋設管の上面と両側面が、間隔をもって地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材で覆われているので、地中埋設管は、敷設された防護材により、地中埋設管の上方からの掘削衝撃に加え、地中埋設管の横からの掘削衝撃に耐えることができる。地中埋設管の下方からは、基本的に掘削衝撃が加わることはないので、地中埋設管は、実質的に全方位からの掘削衝撃から防護されることになる。その結果、従来構造に比べ、掘削工事時に、バックホウやスコップ、ツルハシといった掘削機器による地中埋設管の破損や損傷をより適切にかつ確実に防止できることになる。
【0012】
上記本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、防護材内面と地中埋設管外面との間隔が1cm〜30cmの範囲にあることが好ましい。この範囲内の間隔とすることにより、防護材を介して防護材外部からの掘削衝撃が直接地中埋設管に伝達されることが適切に回避され、かつ、この好適な防護構造が、地中埋設管の周囲にそれほど大きなスペースを要することなく容易に完成される。
【0013】
また、上記防護材と地中埋設管の間には適当な緩衝材が介在されていることが好ましい。緩衝材の介在により、防護材と地中埋設管が互いに支持し合うことになるので、両者の所望の形態、姿勢が容易に保たれるとともに、防護材外部からの掘削衝撃が防護材を介して地中埋設管へと伝達されようとする際、伝達されようとする衝撃エネルギーを多かれ少なかれ介在されている緩衝材で吸収させることが可能になり、その分、地中埋設管自体に加わる衝撃エネルギーが低減されて、地中埋設管の破損や損傷が一層適切にかつ確実に防止される。
【0014】
上記緩衝材としては、例えば、土(埋め戻し土、建設発生土、山砂含む)、EPS(発泡スチロール)等を用いることができ、経済性、環境性を考慮すると土とすることが好ましい。すなわち、上記緩衝材として、エネルギー吸収性能を有する防護材とは別の部材で構成することも可能ではあるが、緩衝材が土、とくに埋戻し土(一般的には、山砂や改良土)であると、特別な部材を準備することなく、容易に適切な緩衝材を介在させることができる。すなわち、埋戻し土に、地中埋設管の基礎と上記緩衝材の機能を兼ねさせる防護構造である。
【0015】
また、上記本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、防護材の断面形状としては、基本的には、下方に向けて開口された門型もしくは馬蹄型が採用されるが、本発明で規定した防護構造を満たすことができさえすれば、他の断面形状の採用も可能である。門型としては、一体型に構成されていてもよく、3枚の平板から構成されていてもよい。
【0016】
また、バックホウなどの掘削建設機械の衝撃に耐えられるように、上記防護材をなす外壁が、35J以上の耐衝撃性能を有していることが好ましい。
【0017】
また、上記防護材は、その少なくとも一部が(望ましくは全体が)繊維強化プラスチックで構成されていることが好ましい。繊維強化プラスチックで構成されていることにより、防護材を軽量化して取扱い性を改善できるとともに、防護材自体の強度、剛性を高くすることができ、さらに、防護材自体の腐食劣化の恐れを除去できる。
【0018】
上記繊維強化プラスチックとしては、少なくとも強化繊維で形成されたシートを用いて構成されているものが好ましい。強化繊維シートを用いて構成されていることにより、比較的厚みの小さい防護材でも、軽量化を達成しながら高い強度、剛性を発現させることができる。
【0019】
上記強化繊維で形成されるシートの形態としては特に限定されず、例えば、織物、フェルト、もしくはマット、あるいはこれらのいずれかの組み合わせから形成されているものを使用できる。
【0020】
また、繊維強化プラスチックの強化繊維としても特に限定されないが、防護材外部からの掘削衝撃に対し高い強度、剛性を持たせるという観点からは、それを構成する繊維強化プラスチックに高い耐衝撃性を持たせることが望ましく、これを満たすために、強化繊維として、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維もしくはガラス繊維の少なくとも一つが用いられていることが好ましい。中でも、アラミド繊維を用いた繊維強化プラスチックは優れた耐衝撃性を発現できるので、強化繊維としてはアラミド繊維を使用することが特に好ましい。繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としても特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂ではエポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂もしくはフェノール系樹脂等が使用でき、熱可塑性樹脂ではナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリイミド系樹脂等が使用できる。
【0021】
このような防護材を成形する方法として、熱硬化性樹脂を使用する場合はハンドレイアップ成形、引抜き成形、RTM(Resin Transfer Molding)成形、プレス成形もしくはオートクレーブ成形などとし、熱可塑性樹脂を使用する場合は押し出し成形、射出成形もしくはプレス成形などを用いることができる。
【0022】
なお、本発明に係る地中埋設管の防護構造においては、通常、地中埋設管は長く延びるように敷設されるので、複数の防護材が地中埋設管の管軸方向に沿って連接されている構造を採用することが好ましい。連接構造の防護材同士の継ぎ目部分は、多少端部をオーバーラップさせた構造、端面同士を突き合わせた構造、端部間に微小な隙間の存在する構造のいずれも採用可能である。複数の防護材が連接される場合の一つの防護材の長さは特に限定されず、取扱い性や敷設の容易性を考慮して適宜設定すればよい。
【0023】
本発明に係る地中埋設管の防護方法は、地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材を、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の上面と両側面を覆うように地中埋設管周囲に敷設する工程を有することを特徴とする方法からなる。すなわち、この本発明に係る方法は、既設の地中埋設管に対して、管を更新することなく実施する場合にも適用できる方法である。
【0024】
溝を掘削して新たに管を敷設する場合や既設の地中埋設管を更新する場合には、例えば、上記本発明に係る地中埋設管の防護方法は、
掘削溝内に地中埋設管を敷設後に、地中埋設管周囲に地中埋設管の基礎を兼ねる土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、
上記防護材を地中埋設管周囲に敷設する工程と、
防護材を敷設した後に、掘削溝全体に土を埋め戻し、該埋め戻した土を締め固める工程と、を有する方法として実施できる。
【0025】
このような地中埋設管の防護方法においては、上記防護材を敷設する工程において、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入する方法を採用することができる。すなわち、前述した断面形状が門型や馬蹄型の防護材の両脚部位を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入する方法である。
【0026】
このような防護材を敷設する工程において、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を挿入可能なガイド溝を形成した後、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を、上記地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入するようにすることもできる。このように防護材の敷設前に先にガイド溝を形成しておけば、小さい抵抗をもってより容易に防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位(防護材の両脚部位)を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入することができ、施工が容易化される。
【0027】
また、本発明に係る地中埋設管の防護方法においては、防護材の敷設に際し、防護材の上面に押し込み用治具を載置し、該治具を介して防護材を敷設する方法を採用することもできる。このようにすれば、防護材の地中埋設管の両側面を覆う部位を地中埋設管の基礎を兼ねる土に貫入するときに、バックホウ等を用い上記押し込み用治具を介して防護材を押し込むことができ、防護材敷設作業の容易化をはかることができる。防護材を目標とする位置に敷設した後には、その防護材に対しては押し込み用治具を取り外し、次に敷設予定の防護材に対して該治具を利用することができる。
【0028】
この本発明に係る地中埋設管の防護方法においても、一つの防護材の長さを取扱い性や敷設の容易性を考慮して適切に設定しておき、複数の防護材を地中埋設管の管軸方向に沿って連接していくことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る地中埋設管の防護構造および防護方法によれば、地中埋設管周囲に特定の防護材を介在させることで、実質的にあらゆる方向からの外力に対して高い耐衝撃性を持った地中埋設管の防護構造を達成することができ、掘削工事時における、バックホウやスコップ、ツルハシといった掘削機器による地中埋設管の破損、損傷を適切かつ確実に防止できる。
【0030】
また、防護材を介在させることで、掘削工事中に地中埋設管が存在していることを工事作業者に気付かせることが可能になり、地中埋設管の破損、損傷を一層確実に防止できる。
【0031】
さらに、防護材を繊維強化プラスチックで構成することにより、防護材を軽量化して取扱い性、施工性を改善できるとともに、防護材自体に高い強度、剛性、耐久性を持たせることができ、さらに、防護材自体の腐食劣化の恐れを除去してメンテナンスフリー化をはかることもできる。とくに、繊維強化プラスチックに、アラミド繊維等の特定の強化繊維を使用することで、防護材自体に優れた耐衝撃性を付与することができ、地中埋設管を一層適切に防護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明における防護材の例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施態様に係る地中埋設管の防護方法を示す施工工程図である。
図3】本発明において防護材用ガイド溝を形成する場合の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る地中埋設管の防護構造および防護方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る地中埋設管の防護構造は、地中埋設管の上面と両側面が、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材で覆われていることを特徴とする構造であり、本発明に係る地中埋設管の防護方法は、地中埋設管の管軸方向に沿って延びる防護材を、地中埋設管との間に間隔をもって地中埋設管の上面と両側面を覆うように地中埋設管周囲に敷設する工程を有することを特徴とする方法である。
【0034】
この防護構造および防護方法における防護材は、例えば、図1に示すように構成される。図1(A)に例示する防護材1は、平板状の頂部1aと平板状の両脚部1bを有する門型の断面形状を有しており、図1(B)に例示する防護材2は、湾曲板状の頂部2aと平板状の両脚部2bを有する馬蹄型の断面形状を有している。このような防護材1,2が、地中埋設管の上面が防護材1,2の頂部1a、2aで、地中埋設管の両側面が防護材1,2の両脚部1b、2bでそれぞれ地中埋設管との間に間隔をもって覆われるように、地中埋設管周囲に敷設される。
【0035】
上記のような防護材1,2は、その少なくとも一部が(望ましくは全体が)繊維強化プラスチックで構成されていることが好ましい。繊維強化プラスチックの強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維もしくはガラス繊維の少なくとも一つが用いられていることが好ましく、中でも、アラミド繊維を用いられていることが好ましい。繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂ではエポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂もしくはフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂や、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリイミド系樹脂等の熱可塑性樹脂の使用が可能である。
【0036】
上記のような防護材1,2は、例えば図2に示すように、地中埋設管周囲に敷設される。
図2は、地中埋設管3とその周囲部を示しており、4は、管3を埋設するために掘削された掘削溝部分を示している。図2に示す例では、まず図2(A)に示すように、掘削溝4内に地中埋設管3が敷設された後に、地中埋設管3の周囲に地中埋設管3の基礎を兼ねる土が埋め戻され(埋戻し土5)、その埋戻し土5が締め固められ、その状態で防護材1が準備される(防護材設置準備工程)。防護材1は、目標とする位置に位置決めされて所定の姿勢にて準備され、図示例では、防護材1の上面に押し込み用治具6が載置される。治具6の材質は特に限定されないが、取扱い性等を考慮すると、例えば木製のものを使用できる。
【0037】
次に、図2(B)に示すように、防護材1を地中埋設管3の周囲に敷設する(防護材敷設工程)。図示例では、バックホウ7が用いられて治具6に下方に向けて圧力が加えられ、治具6を介して、防護材1の地中埋設管3の両側面を覆う部位(つまり、防護材1の両脚部1b)が埋戻し土5に貫入されるように、防護材1が敷設される。
【0038】
そして、図2(C)に示すように、防護材1が敷設された後に治具6が除去され、掘削溝4全体に土が埋め戻され、特に、治具6が除去された後の表面に現れていた防護材1の頂部1aの上部に土が埋め戻され(仕上げ用の埋戻し土8)、埋戻し土8が振動具9等により締め固められる。
【0039】
上記のような防護材1の敷設においては、防護材1の設置前の作業として、例えば図3に示すように、埋戻し土5に、防護材1の地中埋設管3の両側面を覆う部位(つまり、防護材1の両脚部1b)を挿入可能なガイド溝10を形成しておくこともできる。図示例では、ガイド溝10は、鉄板等によって構成されたガイド溝形成具11を埋戻し土5に貫入させ、貫入後に抜き取ることによって形成される。ガイド溝10を予め形成しておくことで、防護材1の両脚部1bは容易に埋戻し土5に貫入される。
【0040】
上記のように敷設された防護材1が、地中埋設管3の管軸方向に沿って、必要な数だけ連接される。
【0041】
以下、本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明する。
<実施例1>
1.防護材(繊維強化プラスチック:FRP)の仕様
(1)強化繊維シート
・繊維 : アラミド繊維“ケブラー”(登録商標)3300dtex
・織組織 : 平織
・目付 : 461(g/m2
【0042】
(2)マトリックス樹脂
・使用樹脂 : エポキシ樹脂(後述の表1では「EP」と表示)
・塗布量 : 1.1(kg/m2)(“ケブラー”(登録商標)織物1層に対して)
【0043】
(3)防護材の形状および寸法
・形状 : 門型
・寸法 : 300mm×300mm×300mm×1500mm
【0044】
2.“ケブラー”(登録商標)FRPの作製方法
(1)専用金型(門型)使用
(2)下塗り→“ケブラー”(登録商標)織物積層→含浸作業→上塗り→含浸作業の繰り返しで5層分
(3)繊維含有率: 20〜30%
【0045】
3.防護すべき対象物としての地中埋設管
外径200mm(200A)のポリエチレン製のガス管
※200A管の場合には、上記1.(3)の寸法が適用される。
【0046】
4.施工方法
(1)土中にガス管を設置し、土を埋め戻した後、上から“ケブラー”(登録商標)FRPの防護材をバックホウにて貫入した。
(2)ガス管と防護材の間には、押し込められた土砂が上面10cm、両側面5cm程度の間隔になるよう敷設した。
(3)防護材敷設後、土を埋め戻し、締め固めた。
【0047】
5.バックホウ衝撃試験
(1)試験方法
0.45m3のバックホウを用いて、防護材の上面と側面から、およそ70kNの衝撃荷重で衝撃を加え、ガス管の損傷具合を確認した。
(2)評価基準
表1に評価基準を示した。
【0048】
6.耐衝撃性能
JIS K 7211に準拠して、規定寸法の試験片にて衝撃破壊が発生する際の耐衝撃値を単位(J)にて測定した。バックホウなどの掘削建設機械の衝撃に耐えられる耐衝撃値として、35J以上が必要であるとした。
【0049】
結果を表2に示す。
【0050】
<実施例2〜7、比較例1、2>
各種条件を変更して試験した。実施例2では、マトリックス樹脂を不飽和ポリエステル(後述の表2では「UP」と表示)に変更し、実施例3では、マトリックス樹脂をビニルエステル(後述の表2では「VE」と表示)に変更し、それ以外はすべて実施例1と同様とした。実施例4では,強化繊維を“ケブラー”(登録商標)(後述の表2では「KV」と表示)とガラス繊維のマット(後述の表2では「GF」と表示)のハイブリット構成とし、実施例5では,そのKV層/GF層の積層数を増加させ、実施例6では,そのKV層/GF層の積層数を減少させ、実施例7ではハイブリット構成におけるガラス繊維のマットの代わりに超高分子量ポリエチレン(後述の表2では「PE」と表示)を用いて試験した。また、比較例1では、実施例1〜7におけるガス管を囲う(覆う)タイプとは異なり、防護材をガス管に巻き付けるタイプとして試験した。比較例2では、上面だけを防護する防護板を実施例1と同様の方法で作製し、土中にガス管を設置し、土を半分程度埋め戻した後、防護板を設置し、さらに上から土10cm程度かぶせ、締め固めて試験した。これら実施例、比較例の結果を、併せて表2に示す。
【0051】
なお、比較例1における巻付タイプの仕様は以下の通りである。
(1)強化繊維 : PP(ポリプロピレン)
(2)不織布 : PET(ポリエチレンテレフタレート)
(3)積層構成 : 強化繊維と不織布の2層組合せ
(4)形状および寸法
・形状 : 巻付
・寸法 : 幅800mm
施工方法については、ガス管に防護材をあらかじめ2重で巻き付け、その後溝を掘削して該ガス管を設置し、土を埋め戻し、締め固めた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、実施例1〜7では、すべて35J以上の耐衝撃性能が得られ、バックホウ衝撃試験においても、比較例1、2に比べ、優れた結果が得られた。
【0055】
<実施例8〜10>
次に、主として防護材とガス管との間隔、緩衝材の種類、防護材の断面形状を変更した試験を行った。防護材とガス管との間隔の変更に関しては、前述の実施例2を比較対象として、実施例8でガス管の上面との間隔を20mmに変更し、緩衝材の種類の変更に関しては、前述の実施例4を比較対象として、実施例9で緩衝材をEPS(発泡スチロール)に変更し、防護材の断面形状の変更に関しては、前述の実施例4を比較対象として、実施例10で馬蹄型の断面形状に変更して、試験した。これらの試験結果を表4に示す。なお、これらの試験においては、後述の実施例11、12とも関連して、施工性を評価するために、防護材の押し込みに要する押し込み時間を評価した。この施工性評価のための押し込み時間の評価基準を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示すように、実施例8では、実施例2に比べ、緩衝材設置部の広間隔化でガス管に発生するキズは皆無となった。また、実施例9では、実施例4に比べ、緩衝材としてEPSを使用することで、防護材設置がより容易になり、押し込み時間が減少した。また、実施例10では、実施例4に比べ、防護材の断面形状を馬蹄型に変更した結果、押し込み時間が増加した。したがって、押し込み時間の観点からは、断面形状として門型の方が好ましいことが分かった。
【0059】
<実施例11、12>
次に、前述の実施例4を比較対象として、実施例11、12で施工冶具を使用して、施工性評価のための押し込み時間を評価した(評価基準は表3)。実施例11では、ガイド溝形成用の冶具を使用した結果、防護材設置は容易になるが、防護材両側面の貫入箇所のガイド溝形成に時間を要するため、施工性評価のための押し込み時間が実施例4のBランクからAランクに改善されるにとどまった。実施例12では、押し込み冶具を使用した結果、防護材の押し込みがより容易になり、施工時間(施工性評価のための押し込み時間)が大幅に減少した。これら施工冶具の検討では、施工試験の結果から、この実施例12における押し込み時間が最も短時間であった。これらの結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る地中埋設管の防護構造および防護方法は、掘削機器による地中埋設管の破損や損傷を適切かつ確実に防止することが求められるあらゆる場合に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1、2 防護材
1a、2a 防護材の頂部
1b、2b 防護材の脚部
3 地中埋設管
4 掘削溝部分
5 埋戻し土
6 押し込み用治具
7 バックホウ
8 仕上げ用の埋戻し土
9 振動具
10 ガイド溝
11 ガイド溝形成具
図1
図2
図3