特許第6814587号(P6814587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814587
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】バッグ
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/02 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   A45F3/02 400
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-196078(P2016-196078)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-57518(P2018-57518A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】594054520
【氏名又は名称】株式会社ユニチカテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 謙市郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正史
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−226573(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3191886(JP,U)
【文献】 特開2003−113562(JP,A)
【文献】 特開2002−339206(JP,A)
【文献】 特開2003−183957(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0075027(US,A1)
【文献】 独国実用新案第29519199(DE,U1)
【文献】 実開平01−097721(JP,U)
【文献】 特開2005−193024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00− 3/50
A45C 1/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に接する部分の表面の少なくとも一部に、ダブルラッセル編地にて構成された凹凸部が形成されており、
前記凹凸部のダブルラッセル編地は、細幅編物が間隔をおいて形成されたものであり、
前記細幅編物は、その長手方向に沿って太幅部と細幅部とを交互に複数有することを特徴とするバッグ。
【請求項2】
細幅編物は横断面が半円状であることを特徴とする請求項1記載のバッグ。
【請求項3】
背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向に配列されるものであることを特徴とする請求項1または2記載のバッグ。
【請求項4】
背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向と交差する方向に配列されるものであることを特徴とする請求項1または2記載のバッグ。
【請求項5】
背負い式であるとともに、肩紐に凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば背負い式のバッグは、その表面が使用者の背中へ密接する。このために、蒸れが生じたり、同表面が汗で濡れたりするなどの問題がある。
【0003】
この問題を解決するために特許文献1では、身体への接触部分が立体構造ネットで構成されたバッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−148006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、立体構造ネットは、空隙率がたとえば90%以上と高いが、身体と接する部分において身体と生地との間にスペースを確保しにくく、このため湿気を移動させて放出させるための空気の流れを確保することが困難である。その結果、見た目で想像するほどの効果が得られていないのが実情である。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、バッグにおける身体との接触部の湿気を確実に外部に放出することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のバッグは、使用者の身体に接する部分の表面の少なくとも一部に、ダブルラッセル編地にて構成された凹凸部が形成されており、前記凹凸部のダブルラッセル編地は、細幅編物が間隔をおいて形成されたものであり、前記細幅編物は、その長手方向に沿って太幅部と細幅部とを交互に複数有することを特徴とする。
【0008】
本発明のバッグによれば、細幅編物は横断面が半円状であることが好適である。
【0009】
また本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向に配列されるものであることが好適である。
【0010】
また本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向と交差する方向に配列されるものであることが好適である。
【0011】
また本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、肩紐に凹凸部が形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバッグによれば、使用者の身体に接する部分の表面の少なくとも一部に、ダブルラッセル編地にて構成された凹凸部が形成されており、この凹凸部のダブルラッセル編地は、細幅編物が間隔をおいて形成されたものであり、細幅編物は、その長手方向に沿って太幅部と細幅部とを交互に複数有するものであるため、身体に接したときに凹凸部のうちの凹部において身体と生地表面との間に細幅編物の長手方向の空間が形成されることになって、湿気を含んだ空気が円滑に移動できることになる。このため、使用者の蒸れ感を大幅に改善することができる。また汗ばんだ状態でも凹凸部は全面接触するような場合と比べて身体に対する接触面積が少ないことから、肌離れが良好であって身体の不快感を大幅に軽減することができる。
【0013】
さらに凹凸部のうちの凸部としての細幅編物が、その長手方向に沿って太幅部と細幅部とを交互に複数有するため、細幅編物が一定幅である場合と比べて、その形状が複雑になって、倒れにくくなるとともに、凹部は長さ方向に沿って部分的に狭くなるだけであるため、空気の通りを確保することができる。この倒れにくくなることによる効果は、細幅編物の横断面が半円状であることによって、いっそう確実なものとなる。
【0014】
本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向に配列されるものであることによって、凹凸部においては湿気を含んだ空気をいっそう良好に移動させることができるとともに、身体に対しバッグが横方向にずれようとするときに、凹凸部が抵抗となって、そのようなずれの発生を効果的に防止することができる。
【0015】
本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、背負われたときに凹凸部が背負った使用者の身長の方向と交差する方向に配列されるものであることにより、身体に対しバッグが重みで上下にずれようとするときに、凹凸部が抵抗になって、そのようなずれの発生を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明のバッグによれば、背負い式であるとともに、肩紐に凹凸部が形成されている構成であることによって、肩紐においても上記と同様の効果を奏することができるのみならず、肩紐の作用によりバッグ側の重量が肩によって受け止められたときに、肩に凹凸部が当たることによって肩の血流を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態のバッグの立体図である。
図2図1のバッグにおける凹凸部の要部の模式的平面図である。
図3図1のバッグにおける凹凸部の要部の模式的断面図である。
図4】本発明の他の実施の形態のバッグの立体図である。
図5】本発明のさらに他の実施の形態のバッグの立体図である。
図6図5のバッグの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態にかかる背負い式のバックを示す。このバッグは、バッグ本体11と、一対の肩紐12とを備える。バッグ本体11における背当ての部分と、肩紐12における使用者の身体側の表面部とには、それぞれ凹凸部13が形成されている。
【0019】
凹凸部13は、特定のダブルラッセル編地によって構成されている。図2および図3において詳細に示すように、この凹凸部13を構成する特定のダブルラッセル編地は、一般的なダブルラッセル編物とは異なる特殊な構造となっている。詳細には、凹凸部13を構成するダブルラッセル編地は、凹凸部13における凸部としての、横断面が半円状の細幅編物14が間隔をおいて複数配設された構成の表地と、平坦な編物で構成された裏地15とが、連結糸16で一体化されたものである。細幅編物14は、図示のようにバッグを背負う使用者の身長の方向に、互いに間隔をおいて形成されているか、または他の任意の方向に、互いに間隔をおいて形成されている。これにともない、隣り合う細幅編物14同士の間には、凹凸部13における凹部としての溝17が形成されている。
【0020】
図2に示すように、細幅編物14は、その長手方向に沿って、すなわち図1の例ではバッグを背負う使用者の身長の方向に、太幅部18と細幅部19とを交互に複数有する。その理由を説明する。凹凸部13は、図3に示すように細幅編物14と溝17とが交互に形成されている。凹凸部13を形成するときに、細幅編物14を狭く形成するとともに溝17を広く形成すると、細幅編物14に負荷、たとえばバッグ本体11からの重量が加わったときに、細幅編物14が倒れて溝17を塞いでしまう。すると、溝17によって形成された空間を流れる空気によって、使用者の身体からの湿気が外部へ逃げることが、阻害されてしまう。反対に、細幅編物14を広く形成するとともに溝17を狭く形成すると、溝17における空気および湿気の通りが悪くなる。これに対し、上述のように細幅編物14が太幅部18と細幅部19とを交互に有することで、細幅編物14は一定幅である場合と比べて、その形状が複雑になって、倒れにくくなるとともに、溝部17は長さ方向に沿って部分的に狭くなるだけであるため、空気および湿気の通りを確保することができる。細幅編物14の横断面が半円状であることで、倒れにくくなる効果がいっそう確実なものとなる。
【0021】
凹凸部13における表地および裏地は、一般的なマルチフィラメント糸を用いて編成される。一般的なマルチフィラメント糸の代表例としては、ポリエステルマルチフィラメント糸やその仮撚加工糸が挙げられる。マルチフィラメント糸は、55デシテックス/24フィラメント〜400デシテックス/150フィラメントの範囲内で適宜選択されるのが好適である。連結糸16には、剛性のあるモノフィラメント糸が用いられる。剛性のあるものが用いられる理由は、細幅編物14を立てた状態として、溝17を確保するためである。モノフィラメント糸としては、ポリエステルモノフィラメント糸が好ましく、特に20〜100デシテックス程度の繊度のものが好ましい。
【0022】
凹凸部13を構成するダブルラッセル編地は、公知のダブルラッセル編機を用いて編成される。ただ、糸使いが異なり、表地編成のために供給する糸を適宜の間隔で抜くとともに、この糸で編成されるべき表地を連結するための連結糸を抜くことにより、凹凸すなわち細幅編物14と溝17とが編成される。つまり、表地を編成するための糸および連結糸16を供給するためのガイド列において、糸を供給しないガイド(糸抜きするガイド)を適宜の間隔で設けることにより、編成が行われる。これによって、本来ウエール方向に編成されるべき表地が編成されずに、溝17が形成される。一方、編成された表地は、ウエール方向の両側縁が裏地15側に巻き込まれて、横断面が半円状の細幅編物14となる。ウエール方向の両側縁が裏地15側に巻き込まれる理由は、連結糸16によって両側縁が裏地15側に引っ張られるためである。裏地15は、糸抜きがされずに、通常と同様に編成されることにより、平坦な編物となる。
【0023】
詳しい編成方法は、表地を編成するときにおいて、5〜15ウエールに対して1〜3ウエールだけ、表地を編成するための糸と連結糸16とを糸抜きすることによって、横断面が半円状である細幅編物14が間隔をおいて配設された表地と、平坦な編物で構成された裏地15とが、連結糸16で一体化された、ダブルラッセル編地を得ることができる。また、裏地15を編成するための糸として伸縮性のある仮撚加工糸を用い、編成後にコース方向に引っ張って固定すれば、細幅編物14間に形成される溝17の幅を拡大することができる。このような編成方法によって得られたダブルラッセル編地は、細幅編物14の幅が2〜8mm程度となり、溝17の幅が3〜10mm程度となる。溝17の深さは、1〜5mm程度となる。細幅編物14の編成組織としては、コード組織やデンビー組織を採用することができる。裏地15となる平坦な編物の編成組織としては、鎖編糸列を挿入糸で連結した鎖編組織を採用することができる。
【0024】
太幅部18と細幅部19とは、編成時の糸の供給量を増減することにより、形成することができる。糸の供給量を増やすと太幅部18が形成され、減らすと細幅部19が形成される。これを繰り返すことによって、太幅部18と細幅部19とが交互に形成される。糸の供給量の調整は、たとえばカールマイヤー社製のエレクトロ・ビーム・コントロール方式により連結糸16の供給量を変化させることによって行うことができる。あるいは、糸の張力を一定に保ちながら、その巻き取りや送り出しビームをコントロールするMSSコントロール方式によっても、行うことができる。
【0025】
図1に示す背負い式のバッグによれば、使用者がこのバッグを背負って凹凸部13が身体に接したときに、凹凸部13の溝17において身体と生地表面との間に細幅編物14の長手方向の空間が形成される。この空間は、図示の例では使用者の身長の方向すなわち上下方向に形成される。このため、湿気を含んだ空気が円滑に移動できることになって、使用者の蒸れ感を大幅に改善することができる。また汗ばんだ状態でも、凹凸部13は、全面接触するような場合と比べて身体に対する接触面積が少ないことから、肌離れが良好であって身体の不快感を大幅に軽減することができる。なお、図1のバッグでは背当ての部分のほぼ全面に凹凸部13が形成されているが、凹凸部13は、必ずしも背当ての部分の全面に形成される必要はなく、その要部のみに形成されることもできる。
【0026】
図1に示すバッグでは、肩紐12にも凹凸部13が形成されているため、この肩紐12においても背当ての部分と同様の効果を得ることができる。そればかりか、バッグ側の重量が使用者の肩によって受け止められたときに、凹凸部13が肩に当たることによって肩の血流を確保することができる。この血流を確保することができる効果は、肩紐12において顕著であるが、背当ての部分の凹凸部13によっても同様に発揮することができる。
【0027】
凹凸部13は、細幅編物14の長手方向には、上述のように湿気を含んだ空気を移動させやすいとともに、身体に対する良好な滑り性を発揮することができる。かつ、細幅編物14の長手方向と交差する方向、特に細幅編物14の長手方向と直交する方向については、身体に対する滑り止めの効果を発揮することができる。このため、細幅編物14の長手方向を適宜の方向とすることにより、それと交差する方向、特に直交する方向において、人体に対するずれ防止効果を発揮することができる。たとえばトレイルランニングなどの激しい上下動を伴う運動を行うときに使用するバッグでは、図4の本発明の他の実施の形態に示すように凹凸部13を横向きにすることで、身体に対するバッグの相対的な上下動を軽減することができる。
【0028】
図5は、本発明のさらに他の実施の形態の、ワンショルダー・タイプのバッグに凹凸部13を形成した例を示す。図示の例では、背当ての部分の凹凸部13は、バッグの上下方向に対して適当角度に、たとえば30度に傾斜した方向に形成されている。
【0029】
図6は、図5のバッグが使用者によって背負われた状態を、使用者の胸側から、使用者の身体を透かせて見た図である。肩紐12は、使用者の胸側において、使用者の右肩から左脇腹に向けて掛けられている。図5のようにバッグの上下方向に対して適当角度に傾斜して形成された凹凸部13は、図6のように背負われた状態においては、使用者の身長の方向に方向づけられて、上述の各機能を発揮できることになる。
【0030】
本発明のバッグとして、背負い式以外のバッグを挙げることもできる。そのようなバッグであっても、同様に凹凸部13を形成して、同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0031】
13 凹凸部
14 細幅編物
17 溝
18 太幅部
19 細幅部
図1
図2
図3
図4
図5
図6