特許第6814615号(P6814615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814615
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   F16F13/10 G
   F16F13/10 J
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-234994(P2016-234994)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-91397(P2018-91397A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 豊士
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5001688(JP,B2)
【文献】 特公昭52−016554(JP,B1)
【文献】 特開平08−145113(JP,A)
【文献】 特開2004−270815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内孔を備える筒状の本体ゴム弾性体の軸方向端面に第一の取付部材が固着されていると共に、該本体ゴム弾性体の外周面に第二の取付部材が固着されて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が該本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有していると共に、該本体ゴム弾性体の該内孔に挿入される連結対象部材が該第一の取付部材に固定されるようになっている一方、該第一の取付部材の軸方向両側には非圧縮性流体を封入された主液室と副液室が形成されており、それら主液室と副液室が該第一の取付部材に形成されたオリフィス通路を通じて相互に連通されている流体封入式防振装置において、
前記主液室が周方向に延びており、前記第一の取付部材に設けられて該主液室の外周を周方向に延びる筒状の外周拘束部が前記本体ゴム弾性体で構成された該主液室の外周壁部に固着されて、該主液室の該外周壁部の弾性変形量が該外周拘束部によって制限されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記第一の取付部材に設けられた前記外周拘束部が、該第一の取付部材から軸方向に立ち上がるように延び出して形成されて前記主液室の前記外周壁部に固着されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記第一の取付部材に設けられた前記外周拘束部が、前記主液室の前記外周壁部に対して軸方向の半分よりも広い範囲に固着されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記主液室と前記副液室が何れも全周に亘って連続する環状とされていると共に、それら主液室と副液室が軸直角方向で相互にずれた位置に配されている請求項1〜3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記主液室が前記副液室に対して軸直角方向で内周側へずれた位置に配されている請求項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記第二の取付部材の少なくとも一部が前記主液室と軸方向の投影において重なる位置に配置されている請求項1〜の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記第一の取付部材が、前記主液室と前記副液室を隔てる仕切部材と、該仕切部材の外周端部にかしめ固定される外周かしめ金具とを備えており、該副液室の壁部の一部を構成する可撓性膜の外周側に一体形成された外周シール部が、該外周かしめ金具の軸方向一方の端部と該仕切部材との間で挟持固定されていると共に、該外周かしめ金具の軸方向他方の端部には前記外周拘束部が一体形成されている請求項1〜の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項8】
前記第一の取付部材に設けられた筒状の内周拘束部が前記本体ゴム弾性体で構成された前記主液室の内周壁部に固着されて、該主液室の該内周壁部の弾性変形量が該内周拘束部によって制限されている請求項1〜の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項9】
前記本体ゴム弾性体の内周面には前記内孔に挿入される前記連結対象部材によって拘束される内周拘束面が設けられており、該本体ゴム弾性体で構成された該主液室の内周壁部の弾性変形量が該内周拘束面によって制限されるようになっている請求項1〜の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウントなどに適用される防振装置に係り、特に内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のパワーユニットを車両ボデーに防振連結するエンジンマウントなどとして、防振装置が知られている。更に、防振装置の一種としては、特許第5001688号公報(特許文献1)などに示されているように、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用などに基づく防振効果を利用する流体封入式防振装置も提案されている。特許文献1の流体封入式防振装置は、円筒状のゴム弾性体の軸方向上端面に内筒金具や外筒金具で構成される第一の取付部材が固着されていると共に、ゴム弾性体の下部外周面に本体プレートが固着された構造を有している。更に、特許文献1の流体封入式防振装置は、内筒金具と外筒金具に固定されるボトムプレートと底蓋部材とオリフィス部材を挟んだ両側に、主液室と副液室が形成されていると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路が形成された構造を有している。そして、内筒金具を貫通して配された連結ロッドがパワーユニットのギヤボックスに取り付けられると共に、本体プレートが車体に取り付けられることにより、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1の流体封入式防振装置では、主液室の壁部の一部がゴム弾性体で構成されており、軸方向の振動入力に対してゴム弾性体の弾性変形による主液室の内圧変動が惹起されて、主液室と副液室の相対的な圧力差に基づいてオリフィス通路を通じた流体の流動が生じるようになっている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造では、主液室が形成されたゴム弾性体の上端部において、主液室の外周壁部を構成する部分と、主液室の内周壁部を構成する部分が、何れも径方向で薄肉となっていることから、ゴム弾性体に軸方向の圧縮力や引張力が作用すると、主液室の外周壁部および内周壁部が径方向に弾性変形することで、主液室の内圧変動が抑制されてしまう。その結果、振動入力時に生じる主液室と副液室の相対的な圧力差が小さくなることから、主液室と副液室の間におけるオリフィス通路を通じた流体流動が低減されて、流体の流動作用に基づいて発揮される防振効果を効率的に得られないおそれがあった。
【0005】
特に、主液室の外周壁部は、連結ロッドへの当接によって変形量を制限され得る内周壁部に比して、より大きな変形が許容され得ることから、主液室の内圧変動量が主液室の外周壁部の変形によって大幅に低減されて防振性能が低下する他、変形した主液室の外周壁部が周囲の他部材と干渉するといった問題も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5001688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、振動入力に対してオリフィス通路を通じた流体流動を効率的に生ぜしめて、目的とする防振効果を有効に得ることができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、内孔を備える筒状の本体ゴム弾性体の軸方向端面に第一の取付部材が固着されていると共に、該本体ゴム弾性体の外周面に第二の取付部材が固着されて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が該本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有していると共に、該本体ゴム弾性体の該内孔に挿入される連結対象部材が該第一の取付部材に固定されるようになっている一方、該第一の取付部材の軸方向両側には非圧縮性流体を封入された主液室と副液室が形成されており、それら主液室と副液室が該第一の取付部材に形成されたオリフィス通路を通じて相互に連通されている流体封入式防振装置において、前記主液室が周方向に延びており、前記第一の取付部材に設けられて該主液室の外周を周方向に延びる筒状の外周拘束部が前記本体ゴム弾性体で構成された該主液室の外周壁部に固着されて、該主液室の該外周壁部の弾性変形量が該外周拘束部によって制限されていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、主液室の外周壁部が第一の取付部材の外周拘束部によって弾性変形量を制限されていることにより、振動入力時に主液室の外周壁部が大きく弾性変形するのを防ぐことができる。これにより、振動入力時の主液室の内圧変動が、外周壁部の変形によって大きく低減されることなく惹起されることから、主液室と副液室の相対的な圧力差によってオリフィス通路を通じた流体流動が効率的に生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることができる。また、本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材に設けられた前記外周拘束部が、該第一の取付部材から軸方向に立ち上がるように延び出して形成されて前記主液室の前記外周壁部に固着されているものである。
【0011】
本発明の第の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材に設けられた前記外周拘束部が、前記主液室の前記外周壁部に対して軸方向の半分よりも広い範囲に固着されているものである。
【0012】
の態様によれば、主液室の外周壁部が軸方向の広い範囲に亘って外周拘束部で拘束されることから、振動入力時に主液室の内圧変動が効率的に惹起されて、流体の流動作用に基づく防振効果がより有利に発揮される。
【0013】
本発明の第の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記主液室と前記副液室が何れも全周に亘って連続する環状とされていると共に、それら主液室と副液室が軸直角方向で相互にずれた位置に配されているものである。
【0014】
の態様によれば、主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を渦巻き状に形成するなどして、オリフィス通路の通路長をより長く設定することが可能となって、オリフィス通路のチューニング自由度を大きく得ることができる。
【0015】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記主液室が前記副液室に対して軸直角方向で内周側へずれた位置に配されているものである。
【0016】
の態様によれば、本体ゴム弾性体の外径寸法を大きくすることなく、本体ゴム弾性体における主液室の外周壁部を構成する部分の厚さを大きく設定し易くなることから、仮に本体ゴム弾性体の自由表面である外周面に僅かな亀裂が生じるなどしても、主液室に封入された流体の外部への漏れが防止されて、信頼性の向上が図られる。
【0017】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材の少なくとも一部が前記主液室と軸方向の投影において重なる位置に配置されているものである。
【0018】
の態様によれば、第一の取付部材と第二の取付部材の間に軸方向の振動が入力される際に、主液室が第一の取付部材と第二の取付部材の間で軸方向に圧縮されることから、主液室の内圧変動がより効率的に惹起されて、流体の流動作用に基づく防振効果をより有利に得ることができる。
【0019】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材が、前記主液室と前記副液室を隔てる仕切部材と、該仕切部材の外周端部にかしめ固定される外周かしめ金具とを備えており、該副液室の壁部の一部を構成する可撓性膜の外周側に一体形成された外周シール部が、該外周かしめ金具の軸方向一方の端部と該仕切部材との間で挟持固定されていると共に、該外周かしめ金具の軸方向他方の端部には前記外周拘束部が一体形成されているものである。
【0020】
の態様によれば、可撓性膜の仕切部材への取付けと主液室の外周壁部の拘束が、外周かしめ金具によって何れも実現されることから、部品点数を少なくすることができる。しかも、例えば外周かしめ金具の他方の端部を仕切部材から離れるように傾斜させることによって、外周拘束部を容易に構成することが可能である。
【0021】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材に設けられた筒状の内周拘束部が前記本体ゴム弾性体で構成された前記主液室の内周壁部に固着されて、該主液室の該内周壁部の弾性変形量が該内周拘束部によって制限されているものである。
【0022】
の態様によれば、振動の入力時に主液室の内圧変動が内周壁部の変形によって大きく低減されることなく有効に惹起されて、オリフィス通路を通じた流体流動が効率的に生ぜしめられることから、流体の流動作用に基づく防振効果が有利に発揮される。
【0023】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記本体ゴム弾性体の内周面には前記内孔に挿入される前記連結対象部材によって拘束される内周拘束面が設けられており、該本体ゴム弾性体で構成された該主液室の内周壁部の弾性変形量が該内周拘束面によって制限されるようになっているものである。
【0024】
の態様によれば、本体ゴム弾性体の内孔に挿通される連結対象部材によって主液室の内周壁部の弾性変形量が制限されることから、主液室の内圧を増大させる方向で本体ゴム弾性体の弾性変形を許容しつつ、主液室の内圧を減少させる方向では本体ゴム弾性体の弾性変形を制限することができる。それ故、主液室の内圧変動によるオリフィス通路を通じた流体流動を効率的に生ぜしめて、防振性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、主液室の外周壁部が第一の取付部材の外周拘束部によって弾性変形量を制限されていることにより、振動入力時に外周壁部の弾性変形によって主液室の内圧変動が低減されるのを防ぐことができて、流体の流動作用による防振効果を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2のI−I断面に相当する図。
図2図1に示すエンジンマウントの平面図。
図3図1に示すエンジンマウントを構成する仕切部材本体の横断面図。
図4】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1,2には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が、本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として図1中の上下方向を言う。
【0029】
より詳細には、第一の取付部材12は、厚肉の略円環板形状とされた仕切部材18と、仕切部材18の外周部分にかしめ固定される外周かしめ金具20と、仕切部材18の内周部分にかしめ固定される内周かしめ金具22とを、備えている。
【0030】
仕切部材18は、金属や合成樹脂などで形成された硬質の部材であって、厚肉の略円環板形状とされた仕切部材本体24の上面に、薄肉の略円環板形状とされた蓋板部材26を重ね合わせた構造を有している。また、仕切部材本体24は、図3に示すように、渦巻き状に延びる周溝28を備えている。この周溝28は、仕切部材本体24の上面に開口しながら周方向へ1周を越える長さで延びており、内周側に位置する端部の底壁部には上下に貫通する下連通孔30が形成されている。また、図1に示すように、仕切部材本体24の上面に重ね合わされる蓋板部材26には、厚さ方向に貫通する上連通孔32が形成されており、上連通孔32が周溝28の一方の端部に重ね合わされて、周溝28の一方の端部が上連通孔32を通じて上方へ開放されている。
【0031】
外周かしめ金具20は、薄肉の金属板で形成されており、仕切部材18の外周部分の下面に重ね合わされる円環板状の外周当接部34を備えている。更に、外周当接部34の外周端部には、上方へ延び出して仕切部材18の外周面に重ね合わされる外周筒部36が一体形成されていると共に、外周筒部36の上端部には、外周かしめ金具20の軸方向一方の端部を構成する円環板状の外周かしめ片38が、内周側へ突出して一体形成されている。
【0032】
さらに、外周当接部34の内周端部には、外周かしめ金具20の軸方向他方の端部を構成する外周拘束部40が、外周当接部34から下方へ延び出して一体形成されている。この外周拘束部40は、突出先端側(下側)へ行くに従って内周側へ傾斜しており、下方へ行くに従って小径となる筒状とされている。なお、本実施形態の外周拘束部40は、外周筒部36よりも上下寸法が小さくされている。
【0033】
内周かしめ金具22は、薄肉の金属板で形成されており、仕切部材18の内周部分の下面に重ね合わされる円環板状の内周当接部42を備えている。更に、内周当接部42の内周端部には、上方へ延び出して仕切部材18の内周面に重ね合わされる内周筒部44が一体形成されており、内周筒部44の上端部には、内周かしめ金具22の軸方向一方の端部を構成する円環板状の内周かしめ片46が、外周側へ突出して一体形成されている。
【0034】
さらに、内周当接部42の外周端部には、内周かしめ金具22の軸方向他方の端部を構成する内周拘束部48が、下方へ延び出して一体形成されている。この内周拘束部48は、突出先端側(下側)へ行くに従って外周側へ傾斜しており、下方へ行くに従って大径となる筒状とされている。なお、本実施形態において、内周拘束部48は、内周筒部44よりも上下寸法が小さくされていると共に、外周拘束部40と略同じ上下寸法で形成されている。
【0035】
また、本実施形態では、外周かしめ金具20の外周当接部34が、内周かしめ金具22の内周当接部42よりも、径方向寸法を大きくされている一方、外周かしめ金具20の外周かしめ片38が、内周かしめ金具22の内周かしめ片46よりも、径方向寸法を小さくされている。これにより、仕切部材18の下側における外周かしめ金具20と内周かしめ金具22の径方向間の隙間が、仕切部材18の上側における外周かしめ金具20と内周かしめ金具22の径方向間の隙間に対して、内周側にずれて位置している。なお、本実施形態では、外周当接部34が外周かしめ片38よりも径方向で幅広とされていると共に、内周当接部42が内周かしめ片46よりも径方向で狭幅とされている。
【0036】
そして、外周かしめ金具20の外周当接部34と外周筒部36が、仕切部材18の下面と外周面に直接的に重ね合わされると共に、外周かしめ片38が後述する外周シール部78を介して仕切部材18の上面に間接的に重ね合わされることにより、外周かしめ金具20が仕切部材18の外周部分に取り付けられている。また、内周かしめ金具22の内周当接部42と内周筒部44が、仕切部材18の下面と内周面に直接的に重ね合わされると共に、内周かしめ片46が後述する内周シール部80を介して仕切部材18の上面に間接的に重ね合わされることにより、内周かしめ金具22が仕切部材18の内周部分に取り付けられている。これらにより、仕切部材18と外周かしめ金具20と内周かしめ金具22とを組み合わせて成る第一の取付部材12が構成される。なお、外周かしめ金具20と内周かしめ金具22の仕切部材18への装着状態において、外周当接部34と内周当接部42が径方向で相互に離れて配置されて、外周拘束部40と内周拘束部48が径方向で相互に対向して配置されていると共に、外周かしめ片38と内周かしめ片46が径方向で相互に離れて配置されている。
【0037】
一方、第二の取付部材14は、金属で形成された板状の部材であって、図1に示すように、略円筒形状とされた筒状部50の上端部に、外周へ広がるフランジ部52が一体形成された構造を有している。筒状部50は、上下に延びる段付き円筒形状とされており、上下中間部分に設けられた段差部54を挟んで上側が小径部56とされていると共に、下側が大径部58とされている。フランジ部52は、図2に示すように、全周に亘って連続して形成されていると共に、周方向の複数箇所において上下に貫通するボルト孔60が形成されている。
【0038】
そして、図1に示すように、第一の取付部材12が第二の取付部材14に対して略同一中心軸上で上方に離れて配置されて、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、上下に貫通する内孔62を備えた略円筒形状とされており、上端部が第一の取付部材12に加硫接着されていると共に、下部の外周面が第二の取付部材14の筒状部50の内周面に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16の内孔62は、第二の取付部材14の大径部58への固着部分に形成された下部が、上部よりも大径の収容部64とされており、ゴム弾性体で形成された筒状のストッパ部材66が収容部64に挿入配置されている。
【0039】
さらに、本体ゴム弾性体16は、第二の取付部材14のフランジ部52の内周部分にも加硫接着されており、第一の取付部材12と第二の取付部材14のフランジ部52との軸方向対向面間にも配されている。第一の取付部材12と第二の取付部材14のフランジ部52との軸方向間に配された部分の外周面は、外周側へ向けて凹んだ湾曲面で構成されており、本体ゴム弾性体16の外周面の面積が大きく確保されている。
【0040】
更にまた、本体ゴム弾性体16の上端部は、第一の取付部材12を構成する外周かしめ金具20と内周かしめ金具22に加硫接着されている。すなわち、本体ゴム弾性体16の上端部の外周部分が、外周かしめ金具20の外周当接部34および外周拘束部40に加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の上端部の内周部分が、内周かしめ金具22の内周当接部42に加硫接着されている。要するに、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12を構成する外周かしめ金具20および内周かしめ金具22と、第二の取付部材14とを備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0041】
さらに、本体ゴム弾性体16の上端部には、環状凹溝68が形成されている。環状凹溝68は、外周かしめ金具20の外周拘束部40と内周かしめ金具22の内周拘束部48の径方向間において、本体ゴム弾性体16の上面に開口して全周に亘って連続して延びている。また、環状凹溝68の外周壁部70には、外周かしめ金具20の外周拘束部40が埋設状態で固着されていると共に、環状凹溝68の内周壁部72には、内周かしめ金具22の内周拘束部48が埋設状態で固着されている。更に、外周拘束部40と内周拘束部48の上下寸法は、環状凹溝68の上下寸法の1/2倍よりも大きくされていることが望ましく、本実施形態では、環状凹溝68の上下寸法と略同じか僅かに小さい程度とされている。
【0042】
そして、本体ゴム弾性体16の上端部に固着された外周かしめ金具20と内周かしめ金具22が、仕切部材18に取り付けられることにより、環状凹溝68の上開口が仕切部材18によって覆われて、周方向へ延びる環状の主液室74が形成されている。この主液室74は、非圧縮性流体が封入されていると共に、壁部の一部が本体ゴム弾性体16によって構成されており、本体ゴム弾性体16の弾性変形によって内圧変動が惹起されるようになっている。なお、主液室74に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、たとえば、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などが好適に採用される。更に、主液室74に封入される非圧縮性流体は、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、0.1Pa・s以下の低粘性流体であることが望ましい。
【0043】
さらに、主液室74の少なくとも一部が、上下方向の投影において、第二の取付部材14のフランジ部52と重なっていることが望ましい。本実施形態では、主液室74が、外周端から径方向の3/4以上の範囲に亘って、上下方向の投影で第二の取付部材14のフランジ部52と重なっている。
【0044】
また、第一の取付部材12には、可撓性膜76が取り付けられている。可撓性膜76は、ゴムや樹脂エラストマなどで形成された薄膜であって、下方へ向けて凹となる逆溝形断面をもって周方向へ延びる環状とされている。更に、可撓性膜76の外周側壁部には、下端部から外周側へ広がる円環板状の外周シール部78が一体形成されていると共に、可撓性膜76の内周側壁部には、下端部から内周側へ広がる円環板状の内周シール部80が一体形成されている。なお、内周シール部80は、外周シール部78よりも径方向に幅広とされている。
【0045】
この可撓性膜76は、外周かしめ金具20の軸方向一方の端部を構成する外周かしめ片38と、内周かしめ金具22の軸方向一方の端部を構成する内周かしめ片46との径方向間に配置されている。そして、可撓性膜76の外周側に一体形成された外周シール部78が外周かしめ片38と仕切部材18の間に挟持されていると共に、可撓性膜76の内周側に一体形成された内周シール部80が内周かしめ片46と仕切部材18の間に挟持されていることにより、可撓性膜76が第一の取付部材12に非接着で取り付けられている。
【0046】
このように可撓性膜76が第一の取付部材12に取り付けられることにより、可撓性膜76と仕切部材18の間に環状の空所が形成されており、この空所に主液室74と同じ非圧縮性流体が封入されている。これにより、壁部の一部が可撓性膜76で構成されて、可撓性膜76の変形による容積変化を許容された副液室82が、可撓性膜76と仕切部材18の間に形成されている。本実施形態の副液室82は、周方向へ全周に亘って連続して延びる環状とされている。なお、外周シール部78が仕切部材18と外周かしめ片38の間で挟み込まれていると共に、内周シール部80が仕切部材18と内周かしめ片46の間で挟み込まれていることにより、副液室82が外部空間に対して流体密に画成されて、副液室82に非圧縮性流体が封入されている。
【0047】
以上のように、主液室74が仕切部材18の下側に形成されていると共に、副液室82が仕切部材18の上側に形成されており、主液室74と副液室82が仕切部材18を挟んだ上下各一方の側に配されている。更に、主液室74と副液室82は、何れも周方向へ全周に亘って連続して延びる環状とされていると共に、相互に異なる直径で形成されて、軸直角方向で相互にずれた位置に配置されており、本実施形態では、主液室74が副液室82よりも小径の環状とされて、主液室74が副液室82よりも内周側へずれた位置に配されている。なお、本実施形態では、軸方向の投影において主液室74の全体が副液室82と重なり合わないように、主液室74と副液室82が径方向で相互に離れた位置に配されている。
【0048】
また、仕切部材本体24と蓋板部材26が、外周かしめ金具20と内周かしめ金具22によって上下方向で密着するように重ね合わされた状態で保持されることにより、仕切部材本体24に形成された周溝28の上開口が蓋板部材26によって覆われた状態に保持されて、仕切部材本体24と蓋板部材26の間にトンネル状の流路が形成されている。このトンネル状の流路は、一方の端部が下連通孔30を通じて主液室74に連通されていると共に、他方の端部が上連通孔32を通じて副液室82に連通されており、主液室74と副液室82を相互に連通するオリフィス通路84が、第一の取付部材12に形成されている。なお、オリフィス通路84は、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することによって、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が調節されており、本実施形態では、オリフィス通路84のチューニング周波数がエンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数に設定されている。
【0049】
かくの如き構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付部材12に連結対象部材としてのインナ連結部材86が取り付けられると共に、第二の取付部材14に対してアウタ連結部材88が取り付けられる。そして、インナ連結部材86が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、アウタ連結部材88が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対してエンジンマウント10を介して防振連結されるようになっている。なお、インナ連結部材86とアウタ連結部材88は、図1において二点鎖線で仮想的に図示されている。
【0050】
より具体的には、インナ連結部材86が本体ゴム弾性体16の内孔62に下方から差し入れられて、インナ連結部材86の上端部に設けられたボルト部90が第一の取付部材12に挿通されると共に、ボルト部90の下方に一体形成されたボルト部90よりも大径の挿入軸部92が、本体ゴム弾性体16の内孔62に挿入状態で配される。そして、第一の取付部材12よりも上方へ突出するボルト部90の先端部分にナット94が螺着されて、第一の取付部材12の内周端部が挿入軸部92とナット94の間で軸方向に挟まれることにより、第一の取付部材12がインナ連結部材86に取り付けられる。
【0051】
なお、インナ連結部材86の挿入軸部92の下端部は、上部に比して軸直寸法を大きくされており、エンジンマウント10の車両への装着状態において、挿入軸部92の下端部がストッパ部材66の内周側へ挿入されることにより、軸直角方向のストッパが構成されている。
【0052】
一方、第二の取付部材14のフランジ部52がアウタ連結部材88に重ね合わされて、フランジ部52のボルト孔60に挿通される連結ボルト96がアウタ連結部材88に螺着されることにより、第二の取付部材14がアウタ連結部材88に取り付けられる。
【0053】
このような車両への装着状態において、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が上下方向に入力されると、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間で本体ゴム弾性体16が弾性変形することにより、主液室74の副液室82に対する相対的な内圧変動が惹起される。そして、主液室74と副液室82の相対的な圧力差に基づいて、それら両室74,82間でオリフィス通路84を通じた流体流動が生ぜしめられて、流体の共振作用などの流動作用に基づく防振効果が発揮される。
【0054】
ここにおいて、主液室74の外周壁部70に外周かしめ金具20の外周拘束部40が固着されていることから、主液室74の外周壁部70の弾性変形量が外周拘束部40によって制限されている。これにより、振動入力時に主液室74の内圧変動が外周壁部70の弾性変形によって低減されるのを防ぐことができることから、オリフィス通路84を通じた流体流動が効率的に生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮される。
【0055】
しかも、筒状の外周拘束部40が主液室74の外周壁部70に対して全周に亘って連続的に固着されており、外周壁部70の弾性変形量が全周に亘って外周拘束部40で制限されていることから、振動入力に対する主液室74の内圧変動がより効率的に惹起される。
【0056】
さらに、主液室74の内周壁部72に内周拘束部48が埋設状態で固着されており、内周壁部72の弾性変形量が内周拘束部48によって制限されている。これにより、主液室74の内周壁部72の内周側への弾性変形によって主液室74の内圧変動が低減されるのを防ぐことができることから、振動入力による主液室74の内圧変動を大きく得ることでオリフィス通路84を通じた流体流動を効率的に生ぜしめて、流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることができる。
【0057】
しかも、筒状の内周拘束部48が主液室74の内周壁部72に対して全周に亘って連続的に固着されており、内周壁部72の弾性変形量が全周に亘って内周拘束部48で制限されていることから、主液室74の内圧変動がより効率的に惹起される。
【0058】
更にまた、外周拘束部40と内周拘束部48は、何れも主液室74の上下寸法の半分よりも大きな上下寸法で形成されており、本実施形態では、主液室74の上下寸法と略同じか僅かに小さい程度の上下寸法で形成されている。そして、外周拘束部40と内周拘束部48が、主液室74の外周壁部70と内周壁部72に対して、上下方向の半分よりも広い範囲に亘って固着されていることにより、外周壁部70と内周壁部72が、外周拘束部40と内周拘束部48によって、上下方向の広い範囲に亘って弾性変形量を制限されている。その結果、振動入力時に主液室74の内圧変動を効率的に得ることができて、目的とする防振効果を有利に得ることができる。
【0059】
また、第二の取付部材14の筒状部50が段付き円筒形状とされて、上部が小径部56とされていると共に、フランジ部52が小径部56の上端から外周へ広がるように一体形成されており、上下方向の投影において、第二の取付部材14のフランジ部52が主液室74と重なっている。これにより、上下方向の振動入力によって第一の取付部材12と第二の取付部材14が上下方向で相対的に接近する際に、主液室74が第一の取付部材12の仕切部材18と第二の取付部材14のフランジ部52の上下対向面間で圧縮されることから、主液室74の内圧変動が効率的に惹起される。
【0060】
また、主液室74と副液室82が何れも周方向に延びる環状とされていると共に、主液室74の直径と副液室82の直径が相互に異なっており、それら主液室74と副液室82が軸方向で相互に重なり合わないように、軸直角方向で相互にずれた位置に配置されている。それゆえ、主液室74と副液室82を相互に連通するオリフィス通路84を、例えば渦巻き状に延びるように形成することにより、オリフィス通路84の通路長さを長く確保することができて、オリフィス通路84のチューニング周波数の設定自由度を大きく得ることができる。
【0061】
さらに、主液室74が副液室82よりも小径の環状とされていることにより、本体ゴム弾性体16の外径寸法を大きくすることなく、主液室74の外周壁部70を含む本体ゴム弾性体16の外周部分を厚肉にすることができる。それゆえ、大型化を防ぎながら本体ゴム弾性体16の耐久性やばね特性の設定自由度の向上などが図られると共に、例えば、本体ゴム弾性体16の自由表面である外周面に亀裂が生じても、亀裂が主液室74まで達し難く、主液室74の封入流体が漏れ出すのを防ぐことで信頼性の向上が図られる。
【0062】
また、本実施形態のエンジンマウント10では、可撓性膜76と一体形成された外周シール部78を仕切部材18に対して固定する外周かしめ金具20に対して、主液室74の外周壁部70を拘束する外周拘束部40が一体形成されている。これにより、外周かしめ金具20を仕切部材18にかしめ固定することにより、外周拘束部40を備えた第一の取付部材12を簡単に得ることができる。同様に、内周拘束部48が内周かしめ金具22に一体形成されていることにより、内周拘束部48を第一の取付部材12に簡単に設けることができる。
【0063】
さらに、可撓性膜76の外周側に一体形成された外周シール部78が仕切部材18の外周部分と外周かしめ金具20の外周かしめ片38との間で上下に挟持されると共に、可撓性膜76の内周側に一体形成された内周シール部80が仕切部材18の内周部分と内周かしめ金具22の内周かしめ片46との間で上下に挟持されることにより、仕切部材18の上面に開口する周溝28の上開口周縁部が流体密に封止されて、オリフィス通路84が形成されている。従って、外周シール部78と内周シール部80が、可撓性膜76の第一の取付部材12への取付構造と、オリフィス通路84の上開口周縁部のシール構造との両方を構成しており、部品点数の削減や製造工程数の削減などが実現される。
【0064】
図4には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント100が示されている。エンジンマウント100は、主液室74の内周壁部72を拘束する内周拘束部48が省略されていると共に、内周壁部72の内周面が後述するインナ連結部材104によって変形を制限される内周拘束面102とされている。
【0065】
すなわち、本実施形態のエンジンマウント100では、主液室74の内周壁部72に内周拘束部48が固着されていないことから、車両に装着される前のエンジンマウント100の単体状態では、内周壁部72の弾性変形が許容されている。
【0066】
そして、エンジンマウント100は、第一の取付部材12が、図示しないパワーユニットに固定される連結対象部材としてのインナ連結部材104に取り付けられると共に、第二の取付部材14が、図示しない車両ボデーに固定されるアウタ連結部材88に取り付けられることにより、車両へ装着される。
【0067】
インナ連結部材104は、ボルト部90よりも下方に設けられて本体ゴム弾性体16の内孔62へ挿入される挿入基部106を備えており、挿入基部106が略一定の直径と断面形状で上下方向へ直線的に延びている。そして、挿入基部106の内孔62への挿入状態において、挿入基部106の上端面が第一の取付部材12の内周端部の下面に当接状態で重ね合わされて、インナ連結部材104が第一の取付部材12に対して軸方向で位置決めされるようになっている。更に、挿入基部106の内孔62への挿入状態において、挿入基部106の上端部の外周面が、本体ゴム弾性体16の内周拘束面102に重ね合わされるようになっている。
【0068】
本実施形態では、パワーユニットの分担支持荷重が作用しない車両装着前の状態において、インナ連結部材104の挿入基部106の外周面と本体ゴム弾性体16の内周拘束面102の間に空間が形成されていると共に、パワーユニットの分担支持荷重によって本体ゴム弾性体16が上下方向に圧縮されることで、挿入基部106の外周面と内周拘束面102が全周に亘って当接状態で重ね合わされるようになっている。尤も、挿入基部106の外周面と内周拘束面102は、パワーユニットの分担支持荷重が入力されていない状態で予め当接していても良いし、分担支持荷重の入力状態でもそれら挿入基部106の外周面と内周拘束面102の隙間が保持されるようにしても良い。
【0069】
かくの如きエンジンマウント100の車両への装着状態において、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間に振動が入力されると、主液室74の壁部を構成する本体ゴム弾性体16が弾性変形することで、主液室74に内圧変動が生ぜしめられる。ここにおいて、主液室74の外周壁部70が外周拘束部40によって弾性変形量を制限されていると共に、主液室74の内周壁部72は、内周拘束面102がインナ連結部材104の挿入基部106に押し当てられることによって、弾性変形量を制限されるようになっている。
【0070】
このように、エンジンマウント100は、車両への装着状態において、主液室74の外周壁部70と内周壁部72の弾性変形量が制限されることにより、振動入力時の主液室74の内圧変動が、外周壁部70と内周壁部72の不要な変形によって低減されることなく惹起される。これにより、オリフィス通路84を通じた流体流動が効率的に生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が有利に発揮される。
【0071】
しかも、本実施形態では、主液室74の内周壁部72が内周拘束面102のインナ連結部材104への当接によって弾性変形量を制限されるようになっていることから、軸方向の圧縮入力に対して主液室74の壁部が変形し易く、主液室74の内圧変動が有効に生じると共に、内周壁部72の内周側への変形量が制限されることで、主液室74の内圧変動のロスも低減される。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、外周拘束部40は、必ずしも第一の取付部材12に一体形成されている必要はなく、たとえば第一の取付部材12を構成する外周かしめ金具20の外周当接部34に対して、合成樹脂などで形成される外周拘束部を固着して設けることもできる。また、外周拘束部は、仕切部材本体24の下面に突設することもできる。更に、外周拘束部や内周拘束部は、実質的に変形しない硬質なものには必ずしも限定されず、外力の作用に対して主液室74の壁部よりも変形し難く、主液室74の壁部の変形を拘束し得るものであれば、例えば弾性体で構成することもできる。
【0073】
外周拘束部40の軸方向寸法は、主液室74の軸方向寸法の半分より大きいことが望ましいが、半分以下であっても良いし、主液室74の軸方向寸法より大きくされていても良い。また、外周拘束部40は、仕切部材18の下面に対して略直交して下方へ突出していても良いし、下方へ行くに従って外周へ傾斜するように設けられていても良い。
【0074】
また、第一の実施形態に示すような内周拘束部48と、第二の実施形態に示すような内周拘束面102を組み合わせて採用することもできる。
【0075】
主液室74は、副液室82よりも小径とされて内周側に位置していることが望ましいが、副液室82よりも大径とされて外周側に位置していても良い。また、主液室74は、周方向に延びる形状とされていれば、必ずしも全周に亘って連続する環状に限定されるものではない。同様に、副液室82の形状も環状に限定されない。
【符号の説明】
【0076】
10,100:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第一の取付部材、14:第二の取付部材、16:本体ゴム弾性体、18:仕切部材、20:外周かしめ金具、40:外周拘束部、48:内周拘束部、62:内孔、70:外周壁部、72:内周壁部、74:主液室、82:副液室、84:オリフィス通路、86,104:インナ連結部材(連結対象部材)、102:内周拘束面
図1
図2
図3
図4