特許第6814618号(P6814618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814618
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】コンセントの速結端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20210107BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20210107BHJP
   H01R 13/633 20060101ALI20210107BHJP
   H01R 13/641 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01R4/48 A
   H01R4/48 Z
   H01R13/46 303Z
   H01R13/633
   H01R13/641
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-236952(P2016-236952)
(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2018-92846(P2018-92846A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−258086(JP,A)
【文献】 特開2001−35596(JP,A)
【文献】 特開平4−36969(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3069754(JP,U)
【文献】 特開2001−203011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0187670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 13/633
H01R 13/641
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに形成された挿入孔から挿入された電線をコンセント刃受けに電気的に接続するための前記ハウジング内に形成されたコンセントの速結端子であって、
挿入された電線に弾性接触する連結部と、前記連結部の前記挿入孔側で電線挿入方向に傾倒し、挿入された電線に傾倒した先端が係止して電線の抜け止めを図る抜け止め片とを有し、略S字状に折り曲げ形成されて前記コンセント刃受けに電気的に接続された速結バネと、
前記抜け止め片の電線への係止作用を解除する係止解除部材とを有し、
前記係止解除部材は、前記挿入孔に隣接する部位に突出配置されたリリースボタンと、
当該リリースボタンの背部に連続形成されて、電線挿入方向に延設されて前記ハウジング内を摺動する摺動部と、
前記摺動部の側部に形成されて、前記抜け止め片に当接する解除片とを有し、
前記リリースボタンが押し込み操作されて、前記摺動部が摺動して前記ハウジングの内部へ移動すると、前記解除片が前記抜け止め片を更に傾倒させて電線係止作用を解除し、電線の引き抜きが可能となることを特徴とするコンセントの速結端子。
【請求項2】
前記速結端子に電線が確実に接続されたことを表示するための表示部材を有し、
前記表示部材は、前記リリースボタンに隣接する部位で前記ハウジングから露出した差込表示部を先端に有して、
前記差込表示部の背部から電線挿入方向に延設されて、前記連結部を越える位置に至る長さを有する連結片と、
前記連結片の延設した端部から折り曲げ形成されて、前記挿入孔の底部に配置されて挿入された電線の先端が当接する電線当接片とを有する一方、
前記電線当接片の背部には、前記電線当接片が前記ハウジングの内部方向への移動を可能とする隙間を有して、
挿入された電線の先端が前記電線当接片を押圧して前記ハウジングの内部へ移動させることで、前記差込表示部の露出量が変化し、この変化で電線の挿入完了を把握できることを特徴とする請求項1記載のコンセントの速結端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面等に設置されるコンセントに対して電線を接続するため速結端子に関する。
【背景技術】
【0002】
主に壁面に設置されるコンセントでは、電線の接続に速結端子が使用されている。速結端子は、電線を差し込むだけで電気的接続を図ることができ、ネジ止め等しなくても抜けることがないので、簡易な操作で接続でき普及している。この速結端子は、引き抜くためのリリースボタンが設けられており、このボタンを操作して、速結端子の電線抜け止め作用を解除して電線を引き抜いた。
【0003】
図5はこの従来の速結端子の一例を模式的に示している。図5に示すように、リリースボタン50は電線を挿入する挿入孔51に隣接して配置され、このリリースボタン50を矢印A3に示す方向に傾倒操作することで、速結バネ52の電線53への係止を解除させて、電線53の引き抜きを可能とした。
例えば特許文献1では、速結端子近くのハウジング内部にリリースボタンが配置され、ハウジングに形成された窓からドライバー等で操作する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−140093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンセントに設けられている上記従来の速結端子は、図5ではリリースボタン50を誇張して記載しているが、特許文献1に開示されているように、僅かなスペースに設けられており、操作部が小さいし解除操作する荷重も重く、操作性が悪かった。
また、挿入された電線が確実に速結バネ52に接続されているか表示する部材が無く、電線の接続確認はテスター等で確認するしかなかった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、接続された電線のリリース操作を比較的弱い力で行うことができ、また差し込まれた電線が速結バネに接続されていることを表示する差込表示部を省スペースで設けたコンセントの速結端子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ハウジングに形成された挿入孔から挿入された電線をコンセント刃受けに電気的に接続するためのハウジング内に形成されたコンセントの速結端子であって、挿入された電線に弾性接触する連結部と、連結部の挿入孔側で電線挿入方向に傾倒し、挿入された電線に傾倒した先端が係止して電線の抜け止めを図る抜け止め片とを有し、略S字状に折り曲げ形成されてコンセント刃受けに電気的に接続された速結バネと、抜け止め片の電線への係止作用を解除する係止解除部材とを有し、係止解除部材は、挿入孔に隣接する部位に突出配置されたリリースボタンと、当該リリースボタンの背部に連続形成されて、電線挿入方向に延設されてハウジング内を摺動する摺動部と、摺動部の側部に形成されて、抜け止め片に当接する解除片とを有し、リリースボタンが押し込み操作されて、摺動部が摺動してハウジングの内部へ移動すると、解除片が抜け止め片を更に傾倒させて電線係止作用を解除し、電線の引き抜きが可能となることを特徴とする。
この構成によれば、挿入された電線の抜け止めを解除する操作は、抜け止め片を電線挿入方向へ押すため、押し込み量に応じて抜け止め片の先端寄りに力点が移動する。よって、軽い荷重即ち弱い押し込み力でリリース操作できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、速結端子に電線が確実に接続されたことを表示するための表示部材を有し、表示部材は、リリースボタンに隣接する部位でハウジングから露出した差込表示部を先端に有して、差込表示部の背部から電線挿入方向に延設されて、連結部を越える位置に至る長さを有する連結片と、連結片の延設した端部から折り曲げ形成されて、挿入孔の底部に配置されて挿入された電線の先端が当接する電線当接片とを有する一方、電線当接片の背部には、電線当接片がハウジングの内部方向への移動を可能とする隙間を有して、挿入された電線の先端が電線当接片を押圧してハウジングの内部へ移動させることで、差込表示部の露出量が変化し、この変化で電線の挿入完了を把握できることを特徴とする。
この構成によれば、表示部材は連結片と電線当接片とを例えばL字状に形成でき、然も薄い部材で作製可能であるため、僅かなスペースに組み込むことが可能となる。よって、設置スペースが小さいコンセントの速結端子であっても、無理なく組み込むことができ、挿入された電線が速結バネに接続されていることを把握できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、挿入された電線の抜け止めを解除するリリースボタン操作は、抜け止め片を電線挿入方向へ押すため、押し込み量に応じて抜け止め片の先端寄りに力点が移動する。よって、軽い荷重即ち弱い押し込み力でリリース操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るコンセントの速結端子の一例を示す断面説明図である。
図2図1のコンセントの速結端子に電線を差し込んだ状態の説明図であり、(a)は電線が係止されている状態、(b)は係止が解除された状態を示している。
図3】コンセントの速結端子の他の例を示す説明図であり、(a)は断面説明図、(b)は正面説明図である。
図4図3のコンセントの速結端子のリリースボタンを押下した説明図であり、(a)は断面説明図、(b)は正面説明図である。
図5】従来のコンセントの速結端子を示す説明図であり、(a)は電線差し込み前の状態、(b)は電線を差し込んだ状態、(c)はリリースボタンを操作した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るコンセントの速結端子の一例を示す断面説明図であり、1はコンセントのハウジング、2は電線11を挿入する挿入孔、3は挿入された電線11と図示しないコンセント刃受けとを電気的に接続させる速結バネ、4は電線11の引き抜きを可能とするリリースボタン4aを備えた係止解除部材、5aは電線11の差し込み状態を表示する差込表示部であり、速結端子10はコンセントのハウジング1の内部に形成されている。
尚、7はコンセント刃受けに連結されている端子金具であり、速結バネ3と接触状態にある。また、挿入孔2の形成面をハウジング1の前面として以下説明する。
【0012】
速結バネ3は帯状金属片を略S字状に折り曲げて形成した弾性を有するバネ片であり、挿入された電線と電気的接続を図るために曲面で形成された連結部3aと、挿入された電線の抜けを防止するために金属片の端部で形成された抜け止め片3bとを有し、抜け止め片3bを挿入孔2側に配置し、連結部3aをハウジング1の奥部に配置している。
抜け止め片3bは、ハウジング1の前面近くから矢印A1で示す電線挿入方向に折り曲げられて傾倒配置され、先端は連結部3aの近傍に配置されている。
【0013】
リリースボタン4aは、挿入孔2に隣接して配置された係止解除部材4の先端部であり、ハウジング1から突出している。係止解除部材4は、リリースボタン4aの背部に連続形成されて、電線挿入方向(矢印A1の方向)に摺動可能にハウジング1内に配置された摺動部4bを有し、この摺動部4bの側部に抜け止め片に当接する解除片4cが突設されている。
そして、摺動部4bとハウジング1との間には、摺動部4bを前方に付勢するコイルバネ20が配置され、リリースボタン4aが押下されて摺動部4bがハウジング1内へ摺動しても、復帰動作するよう構成されている。
【0014】
解除片4cは、摺動部4bの側部から速結バネ3方向に突出形成され、途中挿入された電線11が接触しないよう迂回する形状を成して、先端は抜け止め片3bの途中に当接している。この解除片4cは、リリースボタン4aが押し込み操作を受けると、傾倒配置されている抜け止め片3bを更に傾倒させ、抜け止め片3bの電線11への係止を解除させる。
【0015】
差込表示部5aは、リリースボタン4aに隣接して配置された表示部材5のハウジング1から露出した先端部であり、表示部材5は電線挿入方向に延設された連結片5bと、挿入された電線11の先端が当接する電線当接片5cを有している。連結片5bは、速結バネ3の連結部3aを越える位置に至る長さを有し、電線当接片5cは連結片5bの端部から横方向に延びて挿入孔2の底部に至る長さを有している。結果、表示部材5は全体で略L字状に形成されている。
【0016】
また、電線当接片5cの背部には、電線当接片5cがハウジング1の内部方向への移動を可能とする、即ち表示部材5のハウジング1の内部への移動を可能とする隙間Sが設けられている。そして、電線当接片5cの背部には表示部材5を前方へ常時付勢するコイルバネ21が配置されている。
こうして速結端子10は、ハウジング1の挿入孔2の一方の側に速結バネ3が配置され、他方の側にリリースボタン4a、差込表示部5aの順に配置され、表面上は一直線に並べて配置されている。
【0017】
図2はこの速結端子10に電線11を挿入した説明図であり、(a)は電線11が係止されている状態、(b)は係止が解除された状態を示している。
図2(a)に示すように、挿入孔2から挿入された電線11は、速結バネ3に接触係合した後、挿入孔2の底部にある電線当接片5cに当接し、更に電線当接片5cを押し込んで挿入完了となる。こうして電線当接片5cは、当接した電線11の押圧力で隙間Sの奥に移動し、差込表示部5aの突出量が減少し僅かとなる。
また、挿入された電線11により速結バネ3は弾性変形し、その復元力で連結部3aが電線11に密着して弾性接触状態を維持するし、電線当接片3bは抜け止め作用を発揮する。
【0018】
この状態で、リリースボタン4aが押下されると、図2(b)に示すように、解除片4cが抜け止め片3bを更に折り曲げるため、電線11への係止作用が解除され、電線11の引き抜きが可能となる。その際、リリースボタン4aを押し込むに従い、解除片4cの抜け止め片3bへの係合点が先端寄りに移動する。
こうして係止が解除された状態で電線11を抜き取ると、表示部材5がコイルバネ21の作用で元の位置に復帰し、差込表示部5aが突出する或いは突出量が増加する。また、リリースボタン4aも、押下が解除されるとコイルバネ20の作用で元の位置に復帰する。
【0019】
このように、挿入された電線11の抜け止めを解除する操作は、抜け止め片3bを電線挿入方向へ押すため、押し込み量に応じて抜け止め片3bの先端寄りに力点が移動する。よって、軽い荷重即ち弱い押し込み力でリリース操作できる。
また、表示部材5はL字状に長いが薄い板材で形成でき、僅かなスペースに組み込むことが可能であり、設置スペースの少ないコンセントの速結端子であっても、無理なく組み込むことができ、電線11が速結バネ3に接続されていることを把握できる。
【0020】
図3,4は、コンセントの速結端子の他の例を示す説明図であり、2つの速結端子10,10を1つのリリースボタン40aで操作する構成を示している。図3は電線挿入前の状態、図4はリリースボタン40aを押下して挿入した電線11を引き抜き可能とした状態を示し、いずれも(a)は断面説明図、(b)は正面説明図である。
図示するように、2つの速結端子10、10が対称線Mを中心に互いに対称配置され、速結バネ3が背中合わせ状態で配置されている。そして、リリースボタン40aが一体に形成されている。
【0021】
以下、速結バネ3、表示部材5は上記形態と同様であるため説明を省略し、リリースボタン40aについて説明する。
リリースボタン40aは、2つの挿入孔2,2に跨がる幅を有して形成され、このリリースボタン40aの背部には、挿入孔2の位置に合わせて配置された一対の摺動部40bを有する係止解除部材40が形成されている。
【0022】
摺動部40bは、矢印A2で示す電線挿入方向であるハウジング1の内部に向けて形成され、後端側部に抜け止め片3bに当接する解除片40cが形成されている。結果、係止解除部材40全体は略コ字状に形成されている。
そして、リリースボタン40aを押下すると、解除片40cが抜け止め片3bを更に折り曲げるため、電線11への係止作用が解除され、電線11の引き抜きが可能となる。
尚、上記形態と同様に、リリースボタン40aにも常時前方に付勢するコイルバネがハウジング1との間に設けられているが省略してある。
【0023】
このように、2つの速結端子を対称に配置すれば、リリースボタン40aを省スペースで一体にでき、設置スペースを更に削減できる。また、差込表示部5aも省スペースで設けることができる。そして、挿入された電線11の抜け止めを解除する操作は、抜け止め片3bを電線挿入方向へ押すため、押し込み量に応じて抜け止め片3bの先端寄りに力点が移動するため、軽い荷重即ち弱い押し込み力でリリース操作できる。
【0024】
尚、上記実施形態は、何れも電線11が確実に接続されたことを表示するための表示部材5を設けているが、この表示部材5は無くても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・ハウジング、2・・挿入孔、3・・速結バネ、3a・・連結部、3b・・抜け止め片、4・・係止解除部材、4a・・リリースボタン、4b・・摺動部、4c・・解除片、5・・表 示部材、5a・・差込表示部、5b・・連結部、5c・・電線当接片、10・・速結端子、11・・電線、20,21・・コイルバネ、40・・係止解除部材、40a・・リリースボタン、40b・・摺動部、40c・・解除片。
図1
図2
図3
図4
図5