(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814625
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ロボットポリッシャ
(51)【国際特許分類】
A47L 11/16 20060101AFI20210107BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20210107BHJP
A47L 11/283 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
A47L11/16
A47L9/28 E
A47L11/283
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-246895(P2016-246895)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-99293(P2018-99293A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】小浦 健太郎
【審査官】
柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−518073(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/104187(WO,A1)
【文献】
特開2016−019974(JP,A)
【文献】
特開平06−154143(JP,A)
【文献】
特開2014−204921(JP,A)
【文献】
特開2005−143625(JP,A)
【文献】
特開2003−000505(JP,A)
【文献】
特開2008−259331(JP,A)
【文献】
実開昭55−016884(JP,U)
【文献】
特開2013−169490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/00−11/40
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具用のバッテリを搭載して自律走行可能な本体部に、床面に摺接する清掃体を備えてなるロボットポリッシャであって、
前記清掃体は、前記本体部の前後方向の中央部に配置されて回転駆動する左右一対のブラシであり、
前記本体部は、走行用の左右一対の車輪を備え、各前記車輪は、各前記ブラシの中央に形成した開口内に設けられて、それぞれ車輪モータによって回転することを特徴とするロボットポリッシャ。
【請求項2】
前記ブラシは、互いに逆方向へ回転することを特徴とする請求項1に記載のロボットポリッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走しながら床面の清掃を行うロボットポリッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内蔵したモータで車輪を回転駆動させて自走しながら床面上の塵埃をブラシで回収して清掃を行う自走式集塵ロボットが知られている。
一方、床面等の磨き、つや出し用として、非特許文献1に開示されるポリッシャが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「マキタ総合カタログ2016−10」、[online]、第93頁、[平成28年12月1日検索]、インターネット<URL:http://ecatalog.makita.co.jp/flash/administrator/20/#92>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自走式集塵ロボットは、塵埃の回収を行うのみで、床面の拭き掃除や磨き等の清掃作業が行えない。従来のポリッシャは、作業者が本機を把持してブラシを床面等にあてがう手動作業となり、時間や手間がとられる。
【0005】
そこで、本発明は、床面の清掃を自動で行えるロボットポリッシャを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電動工具用のバッテリを搭載して自律走行可能な本体部に、床面に摺接する清掃体を備えてなる
ロボットポリッシャであって、
清掃体は、本体部の前後方向の中央部に配置されて回転駆動する左右一対のブラシであり、
本体部は、走行用の左右一対の車輪を備え、各車輪は、各ブラシの中央に形成した開口内に設けられて、それぞれ車輪モータによって回転することを特徴とする。
請求項
2に記載の発明は、請求項
1の構成において、ブラシは、互いに逆方向へ回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、電動工具用のバッテリを搭載して自律走行可能な本体部に、床面に摺接する清掃体を備えたことで、床面の清掃作業を自動で行うことができる。
特に、清掃体を回転駆動する左右一対のブラシとしたことで、床面を効率よく清掃することができる。
また、ブラシを本体部の前後方向の中央部に配置したことで、本体部からのブラシの平面視での突出量が少なくなって狭い空間でも方向転換がしやすくなり、スムーズに走行することができる。
さらに、車輪をブラシの中央に形成した開口内に設けたことで、ブラシの回転に起因する走行時の振れを最小限に軽減することができる。
請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1の効果に加えて、ブラシは互いに逆方向へ回転するので、床面とブラシとの摩擦抵抗が走行の妨げになりにくくなり、正確な自律走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】ブラシ部分の説明図で、(A)は斜視、(B)は断面をそれぞれ示す。
【
図5】変更例のロボットポリッシャの底面図である。
【
図6】
図5における車輪及びブラシ部分の斜視図である。
【
図7】変更例のロボットポリッシャの底面からの斜視図である。
【
図8】変更例のロボットポリッシャの側面図である。
【
図9】変更例のロボットポリッシャの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ロボットポリッシャの一例を示す上方からの斜視図、
図2は平面図、
図3は底面図である。
ロボットポリッシャ1は、平面視が円形の箱状の本体部2内に、左右のバッテリ3と、バッテリ3を電源としてそれぞれ回転駆動する左右の車輪モータ(図示略)と、各車輪モータによって単独で正逆回転可能な走行用の左右一対の車輪4,4とを備えている。車輪4,4は、本体部2内で上下動可能に保持されて、床面に設置すると、本体部2の底面から車輪4,4の下部を下方に突出させて本体部2を床面から浮かせた状態で支持する。本体部2の底面後部には、回転可能な左右一対のキャスタ5,5がそれぞれ設けられている。
【0010】
本体部2は、主に底面を形成する下側ハウジング6と、後面及び上面から側面にかけて形成される上側ハウジング7とを有する。本体部2の前部周面には、前方の障害物を非接触で検出する障害物センサ9,9・・を内側に有すると共に、障害物との当接によって後退して内側の図示しない衝突センサをONさせるセンサカバー8が取り付けられている。
本体部2の前側下部で下側ハウジング6には、清掃体として左右一対のブラシ10,10が下向きに取り付けられている。このブラシ10は、
図4に示すように、平面視が円形のブラシベース11の下面で中央部を除いたリング状のエリアに、多数の樹脂製のブラシ毛を下向きに植設してなるブラシ部12を設けたもので、ブラシベース11の上面には、ギヤボックス13が設けられている。
【0011】
ギヤボックス13は、ケーシング14の上側にモータ15を、回転軸16を下向きに組み付けて、ケーシング14内に、回転軸16のピニオン17に噛合する第1ギヤ18と、第1ギヤ18に噛合する第2ギヤ19と、第2ギヤ19に噛合する第3ギヤ20とをそれぞれ平行に設けている。第3ギヤ20の下端に設けた出力軸21は、ケーシング14から下方に突出して、ネジ22によってブラシベース11の中心へ着脱可能に連結されている。
このギヤボックス13,13が下側ハウジング6の上側でネジ止めされることで、ブラシ10,10は、
図3に示すように、ブラシ部12が互いに隣接する状態で本体部2の前側下部に支持されて、それぞれ矢印A方向へ回転する。
【0012】
さらに、本体部2の底面には、床面の有無を検出する複数の落下防止センサ23,23・・が設けられている。
一方、本体部2の後部中央で上側ハウジング7には、電源ボタン25及びバッテリ3の残量表示部26,26に加えて、走行パターンの選択ボタン等の各操作ボタンを備えた操作部24が設けられている。
【0013】
そして、操作部24の左右には、バッテリ3,3の装着部27,27が切欠き状に形成されている。この装着部27は、本体部2の前後方向の中心線に対して左右対称に配置されている。装着部27に装着されるバッテリ3は、電動工具の電源として使用されるリチウムイオンバッテリ(バッテリパック)で、装着部27は、電動工具に設けられる装着部と同様の構造を有している。すなわち、装着部27の最奥には、バッテリ3の結合部に設けたレールに外側から嵌合する図示しない一対のガイドレールが上向きに形成されると共に、ガイドレール間に正負の端子板を備えた図示しない端子台が上向きに設けられている。よって、バッテリ3は、装着部27に対して上方から差し込むことで、レールがガイドレールに嵌合して結合されると共に、端子台がバッテリ3の結合部に設けた接続端子に電気的に接続される。このように電動工具用のバッテリ3を電源として使用するため、機種ごとに異なる電池を用意する必要がなく、汎用性が得られてコストや管理の手間が掛からない。
【0014】
ここでの装着部27は、バッテリ3が結合される最奥の面が本体部2の接線方向に沿うように前後方向から傾けて形成されて、バッテリ3,3の装着状態では、本体部2の中心を向くように設定されている。このようにバッテリ3を傾けて放射状に装着するようにしたことで、本体部2の外形状に沿ってバッテリ3を最外に配置でき、バッテリ3の外側に無駄なスペースが生じなくなる。
さらに、バッテリ3は本体部2の前後方向の中心線に対して左右にバランスよく配置されるので、バッテリ3が2つあっても重心の偏りは生じない。特にキャスタ5,5が、装着したバッテリ3,3の真下に位置することになるため、走行時の安定性もよく、一方のバッテリ3が未装着であっても直進性が悪化することはない。
【0015】
以上の如く構成されたロボットポリッシャ1においては、装着部27にそれぞれバッテリ3を装着して床面上にセットした状態では、左右のブラシ10,10のブラシ部12,12がそれぞれ床面に当接する。ここで操作部24の電源ボタン25を押して運転モードを選択すると、車輪モータが駆動して車輪4,4が回転し、操作部24内に設けた回路基板上のマイコンの記憶部に設定されたプログラムに従って床面上を走行する。同時にモータ15が駆動してブラシ10,10がそれぞれ回転する。よって、床面は、回転するブラシ10,10の各ブラシ部12によって清掃される。
【0016】
このとき、左右のブラシ部12,12は常に床面と接して回転する摺接状態となるが、ブラシ10,10は互いに逆方向に回転するので、床面とブラシ部12,12との摩擦抵抗が軽減されて、安定した自律走行が可能となっている。
走行中は、障害物センサ9による走行方向の障害物の事前検出、落下防止センサ23による床面の有無の検出、衝突センサによる衝突の検出等をそれぞれ行って障害物のない略平坦な床面上を走行できるようにマイコンが車輪モータを制御している。
【0017】
一方、バッテリ3,3は、片方ずつ順番に電源として使用されるようになっており、バッテリ3の残容量は操作部24に設けた残量表示部26,26によって表示される。よって、先に一方のバッテリ3の残容量がなくなった場合は、当該バッテリ3を装着部27から抜き外して、外部の充電器によって充電できる。この場合他方のバッテリ3のみで駆動可能であるが、前述のように左右対称にキャスタ5,5が設けられているので、1つのバッテリ3で本体部2の重心が偏ることがあっても、左右のキャスタ5,5によって安定した走行が可能である。
【0018】
このように、上記形態のロボットポリッシャ1によれば、電動工具用のバッテリ3を搭載して自律走行可能な本体部2に、床面に摺接する清掃体(ブラシ10)を備えたことで、床面の清掃作業を自動で行うことができる。
特にここでは、清掃体を回転駆動する左右一対のブラシ10,10としているので、床面を効率よく清掃することができる。
また、ブラシ10,10は互いに逆方向へ回転するので、床面とブラシ10,10との摩擦抵抗が走行の妨げになりにくくなり、正確な自律走行が可能となる。
【0019】
なお、上記形態では、左右のブラシを本体部の前側に配置しているが、
図5に示すロボットポリッシャ1Aのように、車輪4,4の位置にブラシ10,10を設けることもできる。ここでは
図6に示すように、ブラシベース11の中心に開口28を形成し、車輪4を開口28から下方へ突出させるように支持して、車輪4とブラシ部12とが同時に接地するようにしている。29は、車輪4が連結され、図示しない車輪モータ及びギヤ部を内蔵する駆動ユニットである。この場合、ブラシ10は真上のギヤボックス13で回転させることができないので、例えばブラシベース11の外周上面に設けたリング状のラック部を、モータから回転伝達される横向きのベベルギヤに噛合させて回転させることが考えられる。駆動ユニット29内のギヤを下方へ露出させてラック部に噛合させることも考えられる。
【0020】
このようにブラシ10,10を本体部2の前後方向の中央に配置すれば、本体部2からのブラシ10,10の平面視での突出量が少なくなって狭い空間でも方向転換がしやすくなり、スムーズに走行することができる。
また、車輪4,4をブラシ10,10の中央に形成した開口28,28内に設けているので、ブラシ10,10の回転に起因する走行時の振れを最小限に軽減することができる。
一方、清掃体としてはブラシに限らず、例えば不織布等で形成した円盤状のパッドやモップを採用して、磨き作業やつや出し作業を可能としてもよい。この場合、パッドやモップもブラシと同じ取付構造とすれば、必要に応じて交換することができる。
【0021】
さらに、
図7〜9に示すロボットポリッシャ1Bのように、回転するブラシやパッド等ではなく、清掃体として板状のパッドを設けることも可能である。ここでは本体部2の前側下面に、平面視が半月状で所定厚さを有する不織布製等のパッド30を、面ファスナ31によって着脱可能に装着している。32は、前側中央の落下防止センサ23を露出させるための窓、33は左右の落下防止センサ23を露出させるための切欠きである。
このパッド30は、下面全体が車輪4と同時に接地するようになっており、走行することでパッド30の下面全体が床面と摺接し、広範囲で清掃することができる。この場合、本体部2内に洗剤のタンク等を収容して、所定量ずつパッド30に供給するようにしておけば、より効果的である。これはブラシやパッドでも採用できる。パッド30が汚れたら面ファスナ31から外して洗ったり交換したりできる。
【0022】
一方、回転する2つのブラシやパッド等を用いる場合、本体部内に加速度センサを設けて走行時の振動を検出し、検出した振動に応じて2つのブラシ等の回転数を個別に制御することで、走行時の振動の軽減を図ることもできる。
その他、塵埃を掻き上げる横向きのブラシを併用して本体内に塵埃の貯留部を設けて、塵埃の回収を同時に行うようにしてもよい。
さらに、バッテリの数は2つに限らず、左右にバランスよく配置できれば3つ以上用いることもできる。但し、バッテリは電動工具用のものではなく、専用のバッテリを内蔵したものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1,1A,1B・・ロボットポリッシャ、2・・本体部、3・・バッテリ、4・・車輪、5・・キャスタ、6・・下側ハウジング、7・・上側ハウジング、8・・センサカバー、10・・ブラシ、11・・ブラシベース、12・・ブラシ部、13・・ギヤボックス、14・・ケーシング、15・・モータ、23・・落下防止センサ、24・・操作部、25・・電源ボタン、27・・装着部、30・・パッド。