特許第6814635号(P6814635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814635安定化されたケイ酸塩組成物及び制汗剤組成物としてのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814635
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】安定化されたケイ酸塩組成物及び制汗剤組成物としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20210107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20210107BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20210107BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/02
   A61K8/36
   A61K8/44
   A61K8/34
   A61K8/60
   A61K8/41
   A61K8/39
   A61Q15/00
【請求項の数】31
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-551224(P2016-551224)
(86)(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公表番号】特表2017-505791(P2017-505791A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】GB2015050410
(87)【国際公開番号】WO2015121667
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】1402669.4
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】バストス,カルロス・アンドレ・パッソス
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ジョナサン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,ヌーノ・ジョルジ・ロドリゲス
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−190542(JP,A)
【文献】 特開2006−176473(JP,A)
【文献】 特開2010−235431(JP,A)
【文献】 特表2011−529973(JP,A)
【文献】 特表平09−508349(JP,A)
【文献】 特開2010−162342(JP,A)
【文献】 特表2005−514299(JP,A)
【文献】 特公昭48−033152(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K31/33−33/44
A61P1/00−43/00
A61K31/00−31/327
C12P 1/00−41/00
C01B33/00−33/193
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物を供給するためのデバイスであって、
ここにおいて、前記制汗剤組成物は、対象に適用する前に3.0ないし5.0間のpHを有し、そしてここにおいて、前記制汗剤組成物の対象への適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これは、ゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、
ここにおいて、前記ポリケイ酸は、20nm又はそれより小さい平均直径を有するポリケイ酸のナノ粒子又はクラスターの形態として存在し、そして、
ここにおいて、制汗剤組成物を供給するためのデバイスは、エアゾールデバイス、ポンプ式分注ビン、ロールオン塗布器、多孔性壁を備えたデバイス、又は棒状の道具(スティック)から選択される;そして、
ここにおいて、前記ポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも25%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、ここにおいて、前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、
前記制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項2】
ポリケイ酸組成物が、成長遅延剤によって安定化される、請求項1に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項3】
前記pHの変化が、5より上、そして8より下のpHへの変化である、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項4】
前記pHの変化が、5.5より上ないし6.5のpHへの変化である、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項5】
前記pHの変化が、皮膚の細孔で起こり、そして細孔内のケイ酸塩ゲルの製造を起こす、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項6】
前記組成物のpHが、pH3.0ないし4.5の間である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項7】
前記組成物のpHが、pH3.5ないし4.0の間である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項8】
ケイ酸塩が、少なくとも一つの成長遅延剤によって安定化される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項9】
前記成長遅延剤が、カルボン酸、アミノ酸、無機アニオン、ポリオール、糖類及び/又は第四アンモニウムカチオンである、請求項8に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項10】
前記カルボン酸が、2−10カルボン酸であり、前記アミノ酸は、アスパラギン酸であり、前記ポリオールが、モノマーのポリオール又はポリアルキレングリコールであり、或いは前記ポリオールは、糖類であり、或いは前記第四アンモニウムカチオンがコリンである、請求項9に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項11】
(a)ポリケイ酸粒子が、一つ又はそれより多いポリアルキレングリコールを含んでなる制汗剤組成物或いは化粧品製剤に組込まれる、あるいは
(b)ポリケイ酸の粒子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる制汗剤組成物或いは化粧品製剤に組込まれる、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項12】
前記ポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも30%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、
前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項13】
前記ケイ酸塩組成物が、多価のカチオンを含んでなり、
前記多価のカチオンが、0.01Mないし1.0M間の最終濃度を伴う、ケイ酸塩組成物を提供するために加えられる、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項14】
前記ケイ酸塩組成物が、非水性溶媒によって安定化される、及び/又は、前記非水性溶媒が10ないし70容量/容量%間で加えられる、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項15】
前記非水性溶媒が、エタノールである、請求項14に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項16】
前記組成物が、一つ又はそれより多い更なる制汗剤活性剤、体臭防止剤、揮発性又は非揮発性油、シリコーン及び炭化水素基剤皮膚軟化性油、懸濁剤、香料又は芳香剤、有機物粉末、及び/又は水非混和性有機液相及び前記相を構築するための少なくとも一つの薬剤を含んでなる、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項17】
前記組成物が、アルミニウム又はジルコニウム塩を含まない、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を供給するためのデバイス。
【請求項18】
ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物の、ヒトの対象の発汗を処置するための非治療的化粧法における使用であって、
ここにおいて、前記制汗剤組成物は、pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を提供し、そして、対象への前記制汗剤の適用の前に、pHを3.0ないし5.0間のpHに低下させることを含む方法によって得ることができ、
ここにおいて、前記制汗剤組成物の対象への適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供し、
ここにおいて、前記ポリケイ酸は、20nm又はそれより小さい平均直径を有するポリケイ酸のナノ粒子又はクラスターの形態として存在する、そして、
前記ポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも25%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、
前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、
前記使用。
【請求項19】
前記制汗剤組成物が、請求項1−17のいずれか1項に定義されている通りである、請求項18に記載の制汗剤組成物の使用。
【請求項20】
ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物の有効な量を、ヒトの対象の皮膚の表面に適用することを含んでなる、ヒトの発汗を処置するための非治療的化粧法であって、
ここにおいて、前記制汗剤組成物は、pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を提供し、そして、対象への前記制汗剤の適用の前に、pHを3.0ないし5.0間のpHに低下させることを含む方法によって得ることができ、
ここにおいて、対象への前記制汗剤組成物の適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供し、
ここにおいて、前記ポリケイ酸は、20nm又はそれより小さい平均直径を有するポリケイ酸のナノ粒子又はクラスターの形態として存在する、そして、
前記ポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも25%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、
前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、
前記方法。
【請求項21】
前記制汗剤組成物が、請求項1−17のいずれか1項に定義されている通りである、請求項20に記載のヒトの発汗を処置するための非治療的化粧法。
【請求項22】
前記方法がヒトの身体の臭いを処置するためである、請求項20又は請求項21に記載の非治療的化粧法。
【請求項23】
ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物を用いて、過剰な発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置する方法において使用するための制汗剤組成物であって、
ここにおいて、前記制汗剤組成物は、前記制汗剤の有効な量の対象の皮膚への適用の前に、pHが3.0ないし5.0間であり、
ここにおいて、対象への前記制汗剤組成物の適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供し、そして、
ここにおいて、前記ポリケイ酸は、20nm又はそれより小さい平均直径を有するポリケイ酸のナノ粒子又はクラスターの形態として存在する、そして、
前記ポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも25%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、
前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、
前記制汗剤組成物。
【請求項24】
前記制汗剤組成物が、請求項1−17のいずれか1項に定義されている通りである、請求項23に記載の、過剰な発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
【請求項25】
前記医学的症状が多汗症である、請求項23又は請求項24に記載の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
【請求項26】
前記過剰な発汗が、先端巨大症、不安症、白血病及び非ホジキンリンパ腫を含む癌、カルチノイド症候群、心内膜炎、心臓発作、甲状腺機能亢進症、物質乱用、肥満症、糖尿病、心臓病、HIV/AIDS、甲状腺機能亢進症、肺病、薬物療法、閉経期、パーキンソン病、褐色細胞腫、脊髄損傷、脳卒中、ストレス、結核、発熱又は感染によって起こされる、請求項23又は請求項24に記載の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
【請求項27】
安定化されたポリケイ酸を製造するための方法であって:
(a)pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を用意し;
b)成長遅延剤をアルカリ性ケイ酸塩溶液に加え;
(c)酸を加えることによってpHを≦4.0に低下して、ポリケイ酸を含んでなる組成物を形成し;
(d)多価カチオン及び/又は成長遅延剤を加え;
(e)塩基を加えることによって組成物のpHを生理学的に受容可能なpHに上昇し、これによってポリケイ酸を含んでなる安定化された組成物を形成し;
(f)組成物の安定性を増加することが可能な成長遅延剤を加え;
(g)組成物の安定性を増加することが可能な非水性溶媒を加え;そして、
(h)ポリケイ酸組成物を制汗剤組成物又は化粧品処方製剤に組込む、
ことを含んでなる、
ここにおいて、前記ポリケイ酸は、20nm又はそれより小さい平均直径を有するポリケイ酸のナノ粒子又はクラスターの形態として存在する、
前記方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
(a)工程(c)において、pHが、60秒より少ない、30秒より少ない、10秒より少ない、又は5秒より少ない時間をかけて低下される;及び/又は
(b)工程(c)において、pHがpH≦3.0に低下される;及び/又は
(c)前記ケイ酸塩溶液の濃度が、0.05Mないし3.0M間である;及び/又は
(d)前記ケイ酸塩組成物が、6ヶ月又はそれより多く、12ヶ月又はそれより多く、或いは24ヶ月又はそれより多く安定である;及び/又は
(e)前記ポリケイ酸粒子が、20nmより小さい;及び/又は
(f)前記安定化されたケイ酸塩組成物が、新しく調製された試料中で、4.0mPa・秒より小さい;及び/又は
(g)工程(a)において、アルカリ性ケイ酸塩溶液のpHが、11.5である;及び/又は
(h)少なくとも一つの成長遅延剤が、工程(b)において加えられる;及び/又は
(i)前記成長遅延剤が、カルボン酸、アミノ酸、無機アニオン、ポリオール、糖類及び/又は第四アンモニウムカチオンである、そして、
前記カルボン酸が、C2−10カルボン酸であり、前記アミノ酸は、アスパラギン酸であり、前記ポリオールが、モノマーのポリオール又はポリアルキレングリコールであり、或いは前記ポリオールは、糖類であり、或いは前記第四アンモニウムカチオンがコリンである;及び/又は
(j)工程(c)において、組成物のpHがpH≦1.5に低下される;及び/又は
(k)前記多価のカチオンが、Ca2+、Mg2+、Fe3+、Cu2+及び/又はZn2+である;及び/又は
(l)前記多価のカチオンが0.01Mないし1.0M間の最終濃度を得るために加えられる、又は、前記多価のカチオンが0.05Mないし0.5M間の最終濃度を得るために加えられる;及び/又は
(m)工程(e)において、前記組成物のpHが、3.0ないし5.0間のpHに上昇される、及び/又は、ここにおいて、pHは、前記塩基が水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムである、塩基によって上昇される;及び/又は
(n)前記非水性溶媒が、アルコールである、及び/又は、前記非水性溶媒が、10ないし70容量/容量%間で加えられる、
前記方法。
【請求項29】
制汗剤組成物を製造するための方法であって、請求項27又は請求項28に記載の方法によって安定化されたケイ酸塩組成物を製造し、制汗剤組成物を製造するための一つ又はそれより多い更なる成分を伴う安定化されたコロイド状ケイ酸塩組成物を処方する更なる工程を含んでなる、前記方法。
【請求項30】
前記安定化されたポリケイ酸粒子が、一つ又はそれより多いポリアルキレングリコールを含んでなる制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込まれる、そして、前記安定化されたポリケイ酸粒子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記更なる成分が、一つ又はそれより多い更なる制汗剤活性剤、体臭防止剤、揮発性又は非揮発性から選択される油、シリコーン及び炭化水素基剤皮膚軟化性油、懸濁剤、有機物粉末及び/又は水非混和性有機液相並びに前記相を構築するための少なくとも一つの薬剤を含んでなる、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化されたケイ酸塩組成物に、そして更に特にポリケイ酸を含んでなり、所望により成長遅延剤によって安定化された組成物及びこれを製造する方法、並びに制汗剤組成物としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
制汗剤は、典型的には身体から放出される汗を遮断することによって、又はある場合には汗の生産を阻害することによって、発汗を阻害する化合物である。制汗剤は、発汗自体を減少するより、発汗によって起こされる体臭を減少又は遮蔽することを目的とする体臭防止剤と混同してはならない。50年以上、アルミニウム化合物が制汗剤の主要な活性成分であり続けている。
【0003】
アルミニウム基剤制汗剤は、この加水分解性金属の化学的特質に依存し、これは、低いpHにおいて可溶性のままであるが、しかし皮膚上に存在する中性又は弱酸性の条件に曝露された場合、固体の鉱物に重合する。制汗剤として使用される場合、活性なアルミニウム剤は、これが貯蔵中に可溶性のままであることを確実にするために、低いpHで、典型的にはpH<4(幾つかの薬剤はpH2のように低いことを要する)で処方される。皮膚に適用された時点で、可溶性アルミニウム種は、エクリン汗腺に拡散し、ここでこれは概略6のpHに遭遇し、これは加水分解性重合を誘発し、そしてその後のゲルのプラグの形成は、細孔を遮断し、そしてこれは、汗が放出されるのを妨害する。この機械的妨害過程に対するこの重要な側面は、アルミニウム種が制汗剤製剤(例えばロールオン塗布器)中で可溶性のままであり、そして細孔中でのみ重合(及びゲル化)するものであることである。
【0004】
米国特許第7,303,767号(J.M.Huber Corporation)は、パーソナルケア組成物中で使用するためのマイクロ粒子状の金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウムの使用を開示している。これらの物質は、使用された場合に臭いを吸着するための親水性フィルムで被覆された大きい粒子(>1μm)からなり、この被覆は、更に被覆されていないケイ酸カルシウムの高いpHレベルから使用者の皮膚を保護するために役立つ。これらの組成物において、マイクロ粒子の金属ケイ酸塩は、体臭防止剤として役立ち、一方、制汗剤活性成分は、伝統的なアルミニウム又はジルコニウム塩、例えばハロゲン化アルミニウム、ヒドロキシハロゲン化アルミニウム、オキシハロゲン化ジルコニウム(zirconyl oxyhalides)及びヒドロキシハロゲン化ジルコニウム(zirconyl hydroxy−halides)である。
【0005】
米国特許第5,468,473号(Mullen)は、制汗剤スティックのためのゲル化剤としてのケイ酸塩の使用を開示している。ケイ酸塩は、処方の役割のみを有し、そして従って、これらの組成物中の有効な単一の制汗剤活性物質であるアルミニウム又はジルコニウム塩との組合せで、5.8ないし6.0の範囲のpHで使用される。
【0006】
米国特許出願公開2007/148113(Lemoine et al.)は、カチオンで安定化された表面を持つコロイド状シリカ(SiO)を使用し、カチオンは、好ましくはアルミニウム、ジルコニウム又はハフニウムである。開示された物質は、ケイ酸の完全に縮合された形態であり、即ち−OH基は実質的に非存在であり、そして従って、好ましくない特徴である生体残存性である可能性がある。更に、米国特許出願公開2007/148113中に開示されている物質は、pH4.5ないしpH7でそのコロイド状の形態で安定であり、そしてpH6でゲルを形成しない。
【0007】
アルミニウムのそれと類似の化学的挙動を伴う他の加水分解性金属を、制汗剤として試みた。然しながら、低い効力(即ち、不良な物理的特性を持つゲル)、高い費用、及び/又は潜在的毒性が、その開発を妨げている。現時点で、ジルコニウムは、アルミニウム以外の唯一の加水分解性金属であり、これは、制汗剤として商業的に使用されているが、しかしその使用は、その毒性に対する懸念のために非常に制限されている。
【0008】
アルミニウム基剤制汗剤の定期的な使用は、皮膚中のこの非必須金属の高いレベルに導き、これは、全身性の毒性であることが心配になるほど知られている。更に、制汗剤は、定期的に、そして数十年にわたって使用されるために、その使用に伴う認知された危険度は、確実に上昇し、そして研究は、乳癌及びアルツハイマー病に対する制汗剤の使用2,3に関連している。然しながら、アルミニウムに対する現時点の代替物は存在せず、そして従って、他の制汗剤に移動する圧力は、現時点では非常に制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,303,767号;
【特許文献2】米国特許第5,468,473号;
【特許文献3】米国特許出願公開2007/148113
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Markey,Botulinum A exotoxin in cosmetic dermatology.Clinical and Experimental Dermatology,25(3):173−175,2000;
【非特許文献2】Tomljenovic,Aluminum and Alzheimer’s Disease:After a Century of Controversy,Is there a Plausible Link? Journal of Alzheimers Disease,23(4):567−598,2011;
【非特許文献3】Darbre,Aluminium,antiperspirants and breast cancer.Journal of Inorganic Biochemistry,99(9):1912−1919,2005。
【発明の概要】
【0011】
大まかには、本発明は、ケイ酸塩(又はポリケイ酸組成物)が、非常に生体適合性であり、そして強力な透明なゲルを形成することが可能であり、このことが、これらがアルミニウム及びジルコニウム塩の使用に伴う不利益の幾つかを克服するものであるために、これらを制汗剤中で使用するために適当であるものにするという本発明者らの洞察に基づく。然しながら、適した生体適合性のゲルの形成におけるケイ酸塩の望ましい特性の利益を得るために、本発明は、ケイ酸塩の化学的性質が、これらが、pH10.5ないし11.0より上でのみ可溶性のままであり、そしてこのような腐食性溶液(caustic solution)は、皮膚に直接適用することができないために、これらを、明白な制汗剤物質にしないという基本的な問題と取り組む。他方、ケイ酸塩溶液のpHが、更に許容可能なレベル(例えばpH8.0)に低下された場合、重合が急速に進行し、そして汗腔中ではなく、処方された制汗剤物質内で起こるものであることが見いだされている。更に、ケイ酸塩の溶解性を、より低いアルカリ度まで広げることができたとしても、皮膚の緩衝能力が、酸性溶液に対するそれ、例えばアルミニウム制汗剤のそれより弱アルカリ溶液に対して遥かに低いことに対する更なる挑戦が存在し、従って汗腔中の重合を誘発するために必要なpHの変化は、アルミニウム及びジルコニウム塩を使用する場合に必要なものより達成することが困難である。従って、一つの側面において、本発明は、ポリケイ酸を含んでなる、安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物に関し、ここにおいて、対象に対する制汗剤組成物の適用は、pHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する。
【0012】
本発明者らは、ケイ酸塩が弱酸性のpH、例えばpH2.5又は3.0ないし5.0においてポリケイ酸として安定化されるケイ酸塩組成物を製造することが可能であることを実現することによって、これらの問題に取り組む。本明細書中に開示される方法は、組成物が制汗剤組成物として処方されるために十分に安定であるように、ゲルの形成に導くポリケイ酸の成長過程の速度を減少することが可能であることを意味する。然しながら、pHが、pH約6.0又はそれより上に上昇した場合、組成物が皮膚に適用された場合に起こるように、成長の阻害は逆転し、そしてケイ酸塩組成物はゲルを形成し、この反応は典型的には5ないし30分の間に起こる。疑義の回避のために、本明細書中に開示される物質は、in situで、即ち皮膚の条件下でゲルを形成し、そしてケイ酸塩が事前に形成されたゲルとして適用される組成物と区別される。更に、本発明の制汗剤組成物は、従来の技術、特に加水分解性アルミニウム及びジルコニウム塩の使用に対して、一つ又はそれより多い以下の利益をを有することができる。
【0013】
最初に、本発明の安定化されたケイ酸塩組成物は、米国特許出願公開2007/148113に開示されたカチオンで安定化された表面を持つコロイド状シリカ(SiO)とは異なっている。後者の物質は完全に縮合され、そして従って、pH6の対象の皮膚に適用された場合、pHの変化に反応してゲルを形成することが不可能である。米国特許出願公開2007/148113に開示されたカチオンで安定化された表面を持つコロイド状シリカ(SiO)と対照的に、好ましくは、本発明のポリケイ酸は、カチオンで所望により改変された場合でも、表面に存在する幾つかの表面ヒドロキシル基を有することも一般的に好ましい。例として、好ましくは、表面の酸素基の少なくとも0.01%が、更に好ましくは少なくとも0.1%、更に好ましくは少なくとも1%、更に好ましくは少なくとも5%、そして更に好ましくは少なくとも10%が、ヒドロキシル基(−OH)として存在するものである。
【0014】
本発明の安定化されたケイ酸塩組成物の特性は、制汗剤として使用するために十分適合される。ポリケイ酸が皮膚によって許容され、そしてアルミニウム塩と異なって、全身性の毒性に関する安全性の問題は存在しないものであるために、組成物の安全性は優れている。更に、初期組成物のpH(2.5又は3.0ないし5.0)及びゲルの形成が起こるpH、即ちpH6は、生理学的に受容可能な条件である。更に、ゲル形成反応は、短い時間内に、典型的には5ないし30分の間に起こる。組成物のpH変化によって製造されるゲルは、無臭及び無色であり、そして従って皮膚又は衣類に目立った染みを残さない。更に、非晶質のケイ酸塩物質は、低い毒性と見做され、そしていずれもの全身性に吸収されたものは、ケイ酸に溶解され、これは例えば、結合組織の健康のために、生物学的に望ましいと考えられている。pHの変化は、5より上ないし8より下のpH、好ましくは5.5ないし6.5、そして更に好ましくは約6.0までのpHであってもよい。
【0015】
従って、一つの側面において、本発明は、安定化されたポリケイ酸を製造するための方法を提供し、この方法は:
(a)pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を用意し;
(b)所望により成長遅延剤をアルカリ性ケイ酸塩溶液に加え;
(c)酸を加えることによってpHを≦4.0に低下して、ポリケイ酸を含んでなる組成物を形成し;
(d)所望により多価カチオンを加え;
(e)塩基を加えることによって組成物のpHを生理学的に受容可能なpHに上昇し、これによってポリケイ酸を含んでなる安定化された組成物を形成し;
(f)所望により組成物の安定性を増加することが可能な成長遅延剤を加え;
(g)所望により組成物の安定性を増加することが可能な非水性溶媒を加え;そして
(h)所望により制汗剤組成物又は化粧品処方製剤に組込むこと;
を含んでなる。
【0016】
更なる側面において、本発明は、制汗剤組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、本発明の方法による安定化されたケイ酸塩組成物を製造し、一つ又はそれより多い更なる成分を伴う安定化されたコロイド状ケイ酸塩組成物を処方して、制汗剤組成物を製造する更なる工程を含んでなる。
【0017】
更なる側面において、本発明は、本明細書中に開示される方法によって得ることが可能なような安定化されたケイ酸塩組成物を提供する。
更なる側面において、本発明は、本明細書中に開示される方法によって得ることが可能なような安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物を提供する。更なる側面において、本発明は、ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物を提供し、ここにおいて、制汗剤組成物は、2.5(又は3.0)ないし5.0間のpHを有し、そしてここにおいて、対象への制汗剤組成物の適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これは、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する。
【0018】
更なる側面において、本発明は、本明細書中に開示されるような制汗剤組成物のヒトの対象における発汗を処置するための美容法における使用を提供し、ここにおいて、対象への制汗剤組成物の適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する。
【0019】
更なる側面において、本発明は、ヒトの対象の皮膚の表面に有効な量の本明細書中に開示されるような制汗剤組成物を適用することを含んでなるヒトの発汗を処置するための化粧法を提供し、ここにおいて、対象への制汗剤組成物の適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する。
【0020】
更なる側面において、本発明は、過剰な発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置の方法において使用するための制汗剤組成物を提供し、この方法は、対象の皮膚の表面に有効な量の本明細書中で定義されるような制汗剤組成物を適用することを含んでなり、ここにおいて、対象への制汗剤組成物の適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する。
【0021】
更なる側面において、本発明は、過剰の発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置のための医薬の調製における本明細書中で定義されるような制汗剤組成物の使用を提供する。
【0022】
更なる側面において、本発明は、過剰の発汗によって特徴づけられる医学的症状を処置する方法を提供し、この方法は、本明細書中で定義されるような制汗剤組成物を、過剰の発汗によって特徴づけられる医学的症状に対する処置を必要とする対象に適用することを含んでなる。
【0023】
本発明の態様は、例として非限定的に、そして付属する図面に対する言及しながら、ここに記載されるものである。然しながら、本発明の各種の更なる側面及び態様は、本開示の観点から、当業者にとって明白となるものである。
【0024】
“及び/又は”は、本明細書中で使用される場合、他方を伴う又は伴わない二つの規定された特徴又は要素のそれぞれの具体的な開示と解釈されるべきである。例えば、“A及び/又はB”は、それぞれが本明細書中に個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBのそれぞれの具体的開示と解釈されるべきである。
【0025】
文脈が他に指示しない限り、先に記載した特徴の記載及び定義は、いずれかの本発明の特定の側面及び態様に制約されず、そして記載される全ての側面及び態様に同等に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、25℃におけるpHに対する水中のケイ酸の溶解度である。
図2図2は、ケイ酸塩溶液に対するpHの影響である。ケイ酸塩溶液(0.5M)は、pH11.5で無制限に可溶性のままであるが、しかしpH8.0に調節された殆ど直後に、ゲルである。目視検査により、pH8.0で形成されたゲルは、アルミニウム基剤のゲルより強固であった。
図3図3は、ポリケイ酸の成長に対するpHの低下の速度の影響である。ケイ酸塩溶液(0.5M)のpHは、pH12からpH4に、5秒未満、1分又は2分以内に低下された。粘度の増加は、ゲルの形成に導くポリケイ酸の漸進的成長に相関する。
図4図4は、pH4におけるポリケイ酸(0.5M)の成長である。溶液のpHは、pH12からpH4まで5秒未満で低下された。粘度の増加は、ポリケイ酸の漸進的成長と相関し、そして8mPa・秒より上の粘度は、完全に形成されたゲルに対応する。
図5図5は、異なった遅延剤の存在中の時間の関数としての粘度の増加である。成長遅延剤は対照には加えられず、一方、0.1Mのグルコン酸、0.1Mのアジピン酸、又は0.05Mのコハク酸が、0.5Mのケイ酸塩溶液に、pH4に低下される前に加えられた。
図6図6は、安定化されたポリケイ酸組成物のpHを4.0から6.0に上げた時点のゲルの形成である。ポリケイ酸組成物(0.5M)は、pH4においてキシリトール(1.5M)によって、pHを増加する前に安定化された。アッセイは、20容量/容量%のエタノールが蒸発されるものである噴霧による適用を模倣することを意図するために、エタノールを加えなかったことに注意されたい。いずれにせよ、ゲル化は、エタノールが存在するか否かに関わらず、pH6で起こるものであった。
図7図7は、ポリケイ酸の非安定化懸濁液(0.5M)のpHを、pH1.0からpH4まで増加した時の粒子サイズの変化である。
図8図8は、スクロース(1.5M)で安定化されたポリケイ酸の懸濁液(0.5M)のpH4における過渡的粒子サイズ安定性である。
図9図9は、PEG(合成:0.5MのSi+1.0MのPEG)で安定化された本発明のポリケイ酸の溶解速度(三角)及び市販の縮合ケイ酸塩(Ludox SM30(登録商標))の比較である。溶解の速度は、本明細書中に記載されるモリブデン酸アッセイによって決定した。
図10図10は、非安定化及び非銅含有ポリケイ酸に対する異なった安定化された銅含有ポリケイ酸の存在中の、時間をかけたE.coli増殖曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
安定化されたケイ酸塩組成物
当技術において公知であるように、ケイ酸及び漸増的に縮合するケイ酸塩種、即ち、ジ−及びトリ−ケイ酸、ポリケイ酸並びにシリカ粒子間の平衡が存在する。ケイ酸の溶液からの形成及び成長の過程は、単一の単位が、サイズを大きくし、そして並行して、そして合成条件によって、構造的配置を、更に縮合し(即ち、より不安定な、可溶性及び/又は溶融性ではない)そして、従って、加えられるアルカリの非存在においてSi(OH)に戻る少ない可能性で増加する成長を含む。成長は、可溶性種の表面沈着による重合、凝集、集合又はサイズの増加を含んでもよい。ポリケイ酸の成長は、最終的に適した条件下のゲル形成に導く。例えば、pH≦9.5の条件下で、Si濃度が比較的高い(約≧150mM)場合、粒子種は、ゲル構造に向かわせるものである。これらの因子は、ケイ酸塩水溶液のこれらの濃度より上で、そして生理学的に関連するpHにおいてケイ酸塩組成物を安定化することを極めて困難にする。
【0028】
本発明のポリケイ酸組成物は、ポリケイ酸クラスター又はポリケイ酸ナノ粒子或いはコロイドの形態のケイ酸塩を含んでなる。幾つかの場合、ポリケイ酸組成物は、ナノスケールの凝集物の形態であるものである。ポリケイ酸クラスターは、二つ又はそれより多いケイ酸塩(ケイ酸)モノマーを含んでなるケイ酸塩ポリマーである。好ましくは、ポリマーのクラスターの半径は、比較的小さく、従って、ケイ酸塩は比較的非縮合であり、例えばここで、ポリマーのクラスターの半径は10Åより大きくない。好ましくは、本発明のポリケイ酸は、ゾル、コロイド状分散物、或いは粒子状ポリケイ酸が、好ましくは100nmより小さい、更に好ましくは10nm又はそれより小さい、更に好ましくは5nm又はそれより小さい、4nm又はそれより小さい、3nm又はそれより小さい、2nm又はそれより小さい、或いは1nmの平均直径を有する個別の非凝集粒子として存在する分散物として存在する。本発明のポリマーのケイ酸組成物は、可溶性ポリケイ酸、及び20nm又はそれより小さい平均直径を、そして幾つかの場合、更に好ましくは10nmより小さい、更に好ましくは5nm、4nm、3nm、2nm或いは1nmより小さい平均直径を有するポリマーのケイ酸のナノ粒子を含んでなる。幾つかの態様において、粒子は、約1nmから約2nmまで、又は約1nmから約3nmまで、又は約1nmから約4nmまで、又は約1nmから約5nmまで、又は約1nmから約10nmまで、又は約1nmから約15nmまで、又は約1nmから約20nmまで、又は約5nmから約20nmまで、又は約5nmから約15nmまで、又は約5nmから約10nmまで、又は約10nmから約15nmまで、又は約10nmから約20nmまで、或いは約15nmから約20nmまでの範囲であってもよい。一般的に、粒子が、5nm又はそれより小さい平均直径を有することが好ましい。小さいサイズ(例えば5nmより小さい)のポリマーのポリケイ酸は、これらがポリケイ酸の汗腔への急速な拡散を容易にし、制汗剤効力を増加するために一般的に望ましい。然しながら、大きいサイズが望ましい種類の使用が存在することができる。これらは、非安定化ポリケイ酸のpHの一次的増加(図7)によって達成可能である。長期の安定性は、pHにおける1滴及び/又は安定剤の添加によって、その後達成される。
【0029】
本発明のポリケイ酸組成物は、大きいナノ粒子(例えば、好ましくは50nmより大きい、そして更に好ましくは20nmより大きい平均サイズを有する)、ポリケイ酸ゲル及び−OH基が実質的に非存在であるケイ酸の完全に縮合された形態である二酸化ケイ素(SiO)を含む更に縮合されたケイ酸塩の形態と対比することができる。ポリケイ酸の粒子のサイズは、動的光散乱法を使用して決定してもよく、そして測定が新しく調製された試料に対して行われることが好ましい。当業者にとって理解されるものであるように、ポリケイ酸は、他のケイ酸塩種と平衡にあるものである。例えば、そして存在する実施条件によるが、これは、少量の可溶性ケイ酸を含んでもよい。
【0030】
好ましくは、本発明のポリマーのケイ酸塩組成物は、吸収性である特性を有し、即ち、これらは不良に縮合された非晶質ケイ酸塩であり、これらは、投与の時点で治療的に有用な時間スケール中に溶解を受けることが可能である。ポリマーのケイ酸組成物の非晶質の特質及び異なったレベルの縮合、及び非晶質の鉱物相によって示すことができる固相に対応する構造配列は、XRD分析(又は同等物)によって区別不能であることがあり得る。従って、本発明において、縮合のレベルは、適当なin vitroの溶解アッセイによって決定してもよく、これによって、不良に縮合された非晶質ケイ酸塩は、同等の粒子サイズの縮合された非晶質ケイ酸塩と比較して、より早い溶解速度を示す。
【0031】
一つの例において、溶解アッセイは、ポリマーのケイ酸塩組成物の試料を採取し、そして緩衝液中で希釈することを含いいでもよい。モリブデン酸アッセイを用いて、アッセイの時間経過にわたる緩衝液のアリコート中に存在する可溶性ケイ酸塩の濃度を決定してもよい。実施例に示すように、組成物を10mMのHEPES緩衝液中に希釈し、そしてpHを6.7−7.0に調節してもよい。例示的なモリブデン酸アッセイは、100μLの試験溶液又は標準液(Sigma Aldrich Si ICP標準液から調製、1000mg/L)及び200μLのモリブデン酸着色溶液(0.6105gのNHMo・4HO、15mLの0.5NのHSO、85mLのHO)を使用する。アッセイ溶液をウェルプレートに移し、そして10分間混合する。インキュベーション後、吸光度(405nm)を測定し、そして可溶性ケイ酸の濃度を、標準曲線を使用して決定してもよい。例として、“不良に縮合された”ポリマーのケイ酸塩組成物は、例えばin vitroの溶解アッセイ中で決定されるように、吸収性であるものであり、ここにおいて、組成物の少なくとも25%、そして更に好ましくは少なくとも30%、そして更に好ましくは少なくとも35%、そして更に好ましくは少なくとも40%、そして更に好ましくは組成物の少なくとも50%が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解する。
【0032】
本発明の安定化されたケイ酸塩物質は、準安定性であり、即ち、組成物は、その意図される使用、例えば制汗剤としての保存時間の目的に適合する安定性を保有し、そしてこれが対象に適用されるまでは、ゲルを形成するためのいずれもの有意な程度には成長しない。然しながら、対象への制汗剤組成物の適用は、pHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発して、これによって、対象の汗腔内のゲルの形成により制汗剤の活性成分を提供する。例示として、本発明のケイ酸塩組成物が、6ヶ月より多く、好ましくは12ヶ月又はそれより多く、そして更に好ましくは24ヶ月又はそれより多く安定であることが好ましい。従って、本発明のポリケイ酸は、ケイ酸(又はケイ酸塩)分子の部分的縮合によって製造してもよい。これらの物質は、個別の非凝集ポリケイ酸として準安定性であり、そして生理学的誘因に曝露された場合、ゲルの形成に導く成長の過程を受ける。この生理学的誘因は、典型的には、例えばケイ酸塩組成物が対象の皮膚に適用された場合に起こるようなpHの変化であるものであるが、しかし他の誘因、例えば制約されるものではないが、イオン強度の変化、塩の組成、温度の増加、又は内因的に製造された分子(例えば乳酸)への曝露も、更に使用することができることは当業者にとって明白となるものである。
【0033】
都合よくは、ゲル形成の方向に向かう成長、そして従ってケイ酸塩組成物の安定性の進行は、組成物の粘度を測定することによって決定してもよい。本明細書中に記載される実験において、25℃における8.0mPa・秒より上の粘度は、完全に形成されたゲルに対応する。好ましくは、本発明の安定化されたケイ酸塩組成物は、4.0mPa・秒より少ない、更に好ましくは3.0mPa・秒より少ない、そしてなお更に好ましくは2.0mPa・秒より少ない25℃で測定された粘度を有する。当技術において公知であるように、粘度は、低周波振動法使用して、例えばSV−10バイブロビスコメーター(A&D Ltd,Japanから)を使用して測定してもよく、ここにおいて、二つの金メッキされたパドルが30Hzの音叉状に配置されている。振動の振幅は、物質の粘度に依存し、これはリアルタイムで測定される。測定が、新しく調製された試料で行われることが好ましい。
【0034】
本明細書中に記載される組成物は、オルトケイ酸のポリ縮合の方法により製造される。この縮合の方法は、不完全であり、そして二酸化ケイ素(SiO)とは異なる物質を製造し、そしてこれは、次の一般的組成式:[SiO(OH)4−2xによって定義することができ、ここで0<x<2である。
【0035】
安定化されたケイ酸塩組成物を製造する方法
本発明は、安定化されたポリケイ酸を製造するための方法を製造するための方法に基づき、この方法は:
(a)pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を用意し;
(b)所望により成長遅延剤をアルカリ性ケイ酸塩溶液に加え;
(c)酸を加えることによってpHを≦4.0に低下して、ポリケイ酸を含んでなる組成物を形成し;
(d)所望により多価カチオンを加え;
(e)塩基を加えることによって組成物のpHを生理学的に受容可能なpHに上昇し、これによってポリケイ酸を含んでなる安定化された組成物を形成し;
(f)所望により組成物の安定性を増加することが可能な成長遅延剤を加え;
(g)所望により組成物の安定性を増加することが可能な非水性溶媒を加え;そして
(h)所望により制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込むこと;
を含んでなる。
【0036】
上記の方法の工程の幾つかの順序を替える及び/又は工程の幾つかを同時に行うことが可能であることは当業者にとって明白であるものである。他の工程は、先に示すように任意であり、そして以下で更に説明される。
【0037】
本発明に導く作業において、本発明者らは、アルカリ性のケイ酸塩溶液のpHが低下される速度、成長遅延剤として働くことが見いだされた化合物の包含、多価カチオンの添加及び/又は非水性溶媒の添加を含む多くの因子がケイ酸塩組成物の安定性に寄与することを見出した。従って、本発明の方法は、これらの方法を、単独で又はいずれかの組合せで、例えば制汗剤としての使用のために十分な安定性を有するケイ酸塩組成物を製造するために使用してもよい。
【0038】
これらの因子のうち、以下の実験は、工程(c)においてアルカリ性ケイ酸塩溶液のpHが低下される速度が、得られたポリケイ酸組成物の安定性に有意な影響を有することを示す。好ましくは、pHは、60秒より少ない、更に好ましくは30秒より少ない、更に好ましくは10秒より少ない、又は最も好ましくは5秒より少ない時間をかけて低下される。
【0039】
ガラス電極が、ポリケイ酸(即ち、クラスター、コロイド等)の存在によって被毒され、従って誤ったpHの結果を得ることがあり得ることは当業者にとって明白であるものである。従って、これらの測定を行う場合、非常な注意を払わなければならず、そしてpHの結果は、本明細書中に記載される作業において行うように高品質のpH片を使用して確認すべきである。
【0040】
工程(a)において、アルカリ性ケイ酸塩溶液の濃度が、0.05Mないし1.0M間であり、そして更に好ましくは0.1Mないし1.0M間であることが好ましい。ケイ酸塩の溶解性を維持するために、9.5より高いpHの使用も、更に好ましく、そして好ましくは工程(a)において、アルカリ性ケイ酸塩溶液のpHは、約10.5又はそれより上、そしてなお更に好ましくは約11.5又はそれより上のpHである。
【0041】
本発明は、更に、pHが低下される前にケイ酸塩溶液中に少なくとも一つの成長遅延剤を含めることが、組成物の安定性を促進することを援助することの発見に基づく。当業者は、どの成長遅延剤がいずれもの所定の状況で最良に働くかを決定するためにルーチン試験を行うことができ、そして一つより多い異なった成長遅延剤の組合せを、例えば二つ、三つ、四つ又は五つ或いはそれより多い成長遅延剤を、例えばこれらを工程(b)において加えることによって使用することが可能である。例として、成長遅延剤は、ポリカルボン酸、例えばポリアクリル酸を含むカルボン酸、アミノ酸、無機アニオン、ポリオール、例えばポリアルキレングリコール及び/又は第四アンモニウムイオン、例えばコリンを含む。成長遅延剤は、一般的に0.01Mないし3.0M間、そして更に好ましくは0.1Mないし1.5M間の濃度で加えられる。
【0042】
成長遅延剤としてカルボン酸を使用する本発明の態様において、カルボン酸は、C2−10カルボン酸、例えばジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸又はピメリン酸、或いはこれらのイオン化された形態(即ち対応するカルボン酸塩)、例えばアジピン酸塩であってもよい。或いは例えばモノカルボン酸、例えばグルコン酸。成長遅延剤の更なる例は、式HOOC−R−COOH(又はそのイオン化された形態)によって表すことができるジカルボン酸であり、ここで、Rは所望により置換されたC1−10アルキル、C1−10アルケニル又はC1−10アルキニル基である。一般的に、RがC1−10アルキル基である、そして更に好ましくはC2−6アルキル基であるカルボン酸の使用が好ましい。R基の好ましい所望による置換基は、、例えばリンゴ酸中に存在するような、一つ又はそれより多いヒドロキシル基を含む。好ましい態様において、R基は、直鎖アルキル基である。カルボン酸の更に好ましい群は、アジピン酸(又はアジピン酸塩)、グルタル酸(又はグルタル酸塩)、ピメリン酸(又はピメリン酸塩)、コハク酸(又はコハク酸塩)、及びリンゴ酸(又はリンゴ酸塩)を含む。カルボン酸が、酸として存在するか、或いは部分的に又は完全にイオン化され、そしてカルボン酸アニオンの形態で存在しているかは、因子の範囲、例えば物質が製造及び/又は回収されるpH、製造後の処置の使用、又は製剤工程に、そして如何にカルボン酸が、安定化されたポリケイ酸組成物に組込まれることになったかに依存するものである。疑義の回避のために、本発明によるカルボン酸成長遅延剤の使用は、全てのこれらの可能性、即ち、成長遅延剤が、非イオン化形態で、部分的にイオン化された形態で(例えば、成長遅延剤がジカルボン酸である場合)、又はカルボン酸塩イオンとして完全にイオン化されて、及びこれらの混合物としてのカルボン酸として存在することを包含する。
【0043】
適したアミノ酸成長遅延剤の例は、アスパラギン酸を含む。ポリオール、即ち多重ヒドロキシル化アルコールである成長遅延剤の例は、モノマーのポリオール、例えばグリセロール、エチレングリコール、キシリトール、プロピレングリコール、又はポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを含む。糖(糖類)である成長遅延剤の例は、ダイマー、トリマー及びポリマーの糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレイトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール又はアドニトールを含む。
【0044】
本発明において、ポリマーのケイ酸塩組成物は、ポリアルキレングリコールである成長遅延剤を含む。ポリアルキレングリコールは、ポリエーテル化合物のファミリーであり、これは、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコールを含む。幾つかの態様において、一つより多い異なったポリアルキレングリコール、例えば二つ、三つ、四つ又は五つ或いはそれより多い糖又はポリアルキレングリコールの組合せを、例えばこれらを工程(a)及び/又は(b)で加えることによって使用することが可能である。ポリアルキレングリコール成長遅延剤は、一般的に、0.01Mないし3.0M間、そして更に好ましくは0.03ないし2.0M間、そして最も好ましくは0.1ないし1.5M間の濃度で加えられる。当業者は、糖及び/又はポリアルキレングリコールのいずれの組合せが、いずれもの所定の状況において最良に作用するかを決定するためにルーチンの試験を行うことができる。
【0045】
いずれかの特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これらの物質が、配位化合物を形成するためのリガンド(供与体)及び中心原子(受容体)間の一つ又はそれより多い電子対の供与に関係する強力な相互作用を有する慣用的な意味でリガンドとして作用するとは信じないが、しかしそれにもかかわらず、むしろポリケイ酸の形態のケイ酸塩組成物を安定化することが可能である弱い相互作用を有する。
【0046】
工程(c)において、さもなければ約9.0より下のpHで起こるものであるポリケイ酸の成長を阻害し、そしてケイ酸塩ゲルの制御されない形成に導くために、組成物のpHをpH≦1.5まで低下することが好ましい。
【0047】
幾つかの態様において、ポリケイ酸は、多価のカチオン、例えばCa2+、Mg2+、Cu2+、Fe3+及び/又はZn2+と、本発明者らがこれが組成物を安定化すること援助することを見出したように接触させてもよい。いずれかの特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、カチオンが、ポリケイ酸を、物質中に存在する遊離のシラノール基(−OH)との相互作用により被覆すると信じる。指針として、多価のカチオンが、0.01Mないし1.0M間の最終濃度を得るように加えられることが好ましく、そして更に好ましくは、多価のカチオンが、0.05Mないし0.5M間の最終濃度を得るように加えられる。本発明の安定化されたポリケイ酸組成物へのCu2+又はAgの添加は、細菌の増殖(本明細書中ではE.coliモデルで例示する)を制限する更なる利益を有する。細菌の増殖の制限は、これが汗の脂質成分を破壊する皮膚の細菌叢の作用によって起こされる腋下臭の放出を伴うために、特に有利である。先に記述したように、Al3+の包含は、一般的に好まれない。
【0048】
工程(e)において、ポリケイ酸の成長が阻害された時点で、これを制汗剤組成物中で使用することができるように処方に適合するために、組成物のpHを、生理学的pHに、好ましくは2.5(又は3.0)ないし5.0間のpHに、更に好ましくは2.5ないし4.5間のpHに、更に好ましくは3.0ないし4.5間のpHに、そして更に好ましくは3.5ないし4.0間のpHに上昇することが好ましい。好都合には、これは、塩基、例えば水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムを加えることによって行ってもよい。
【0049】
本発明者らは、更に、本発明のポリケイ酸組成物を、非水性溶媒、例えばアルコールを加えることによって更に安定化することができることを驚くべきことに見出した。アルコールの好ましい例は、エタノールである。例示として、非水性溶媒は、5ないし70容量/容量%間、又は10ないし60容量/容量%間、又は10ないし50容量/容量%間、又は20ないし50容量/容量%間、或いは10ないし20容量/容量%間で加えてもよい。更に、幾つかの場合、本発明者らは、ポリオール(例えばポリアルキレングリコール)のアルコールとの組合せが、組成物を安定化するために特に有効であることを見出した。
【0050】
制汗剤組成物
本発明の制汗剤組成物は、当技術において既知のいずれもの方法によって、例えばエアゾールデバイス、ポンプ式分注ビン、ロールオン塗布器、多孔性壁を備えたデバイス、又はスティックによる供給のために処方してもよい。制汗剤活性物質が本発明の安定化されたケイ酸塩によって提供されるために、好ましくは、組成物は、更なる制汗剤活性物質として、アルミニウム又はジルコニウム塩を含まない。
【0051】
更に、本発明の制汗剤組成物は、一つより多い更なる制汗剤活性剤、体臭防止剤、揮発性又は非揮発性油、シリコーン及び炭化水素基剤皮膚軟化性油、懸濁剤、有機物粉末、水非混和性有機液相及び前記相を構築するための少なくとも一つの薬剤及び/又は香料又は芳香剤、香料可溶化剤又は洗浄剤を含んでもよい。
【0052】
更に、本発明の安定化されたポリケイ酸粒子を含んでなる組成物は、ポリアルキレングリコール、例えばPEGを含んでなる制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込んでもよい。ポリアルキレングリコール、例えばPEGは、これが、制汗剤組成物中の処方のために良好に適したクリーム又は軟膏を容易に形成するために、ケイ酸塩の局所供給のために特に良好に適し、そして異なった分子量の範囲で入手可能であり、最終処方中で望ましいものであり得る粘度及び他の物理的パラメーターを調整することを可能にする。局所適用の供給が、更に非PEG基剤軟膏を使用して達成することができることは、当業者にとって明白であるものである。この場合、本明細書中に記載されるようにPEGによる初期の安定化において、ケイ酸塩は、非PEG基剤軟膏、例えば更なる異なったベヒクル、例えばヒドロキシエチルセルロース中に組込まれたPEG安定化非ケイ酸塩組成物中に組込まれる。
【0053】
これらの制汗剤組成物又は化粧品処方組成物は、クリーム、ローション、ゲル、懸濁液、分散物、マイクロ乳液、ナノ分散物、マイクロ球、ヒドロゲル、乳液(水中油及び油中水、並びに多重乳剤)及び多層ゲル等の形態であることができ、例えばThe Chemistry and Manufacture of Cosmetics,Schlossman et al.,1998を参照されたい。組成物は、水性又はシリコーン組成物として処方してもよく、或いは水性連続相中の一つ又はそれより多い油相(又は油相中の水相)中の乳液として処方してもよい。本発明において使用される担体の種類は、局所組成物のために所望される産物の形態の種類に依存する。担体は、固体、半固体又は液体であることができる。適した担体は、液体又は半固体、例えばクリーム、ローション、ゲル、スティック、軟膏、ペースト、噴霧及びムースである。具体的には、担体は、クリーム、軟膏、ローション又はゲルの形態であり、更に具体的には、粒子の沈降を防止するために十分な厚み又は降伏点(yield point)を有するものである。担体は、それ自体不活性でもよく、又はこれはそれ自体の利点を保有していてもよい。担体は、更に安定化されたポリマーのケイ酸塩組成物又は担体中に処方された他の成分と物理的及び化学的に適合性でなければならない。担体の例は、水、ヒドロキシエチルセルロース、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びポリエチレングリコール、或いはこれらの組合せを含む。
【0054】
香料の例は、香油、EP0 545 556 A中に開示されたデオパヒューム、又は米国特許出願公開2014/179748中に開示された香料を含む。本発明の制汗剤組成物に加えられる香料の量は、好ましくは5重量%まで、更に好ましくは0.1%から3.5重量%まで、そして更に好ましくは0.5%から2.5重量%までである。芳香剤又は香料は、更に、放出が適用後の加水分解又はヒトの身体の表面上の剪断によって誘発されるカプセル化された形態で加えてもよい。
【0055】
医学的使用
本発明の化粧品、例えばパーソナルケア組成物における適用に加えて、本発明は、過剰な発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置のための使用を有する。多汗症は、しばしばヒトの正常な発汗の正常な温度又は環境的誘因を伴わずに過剰に、そして予測不能に発汗する医学的症状である。多汗症に罹った対象は、過活動性の汗腺を有し、そして症状は制御不能な発汗に導き、有意な身体的及び感情的不快感を起こす場合がある。当技術において既知であるように、原発性又は局所的多汗症は、手、足及び腋下で発症する過剰な発汗によって特徴づけられる。過剰な発汗が他の医学的症状の結果であるような状況において、これは、続発性多汗症と呼ばれ、そしてこのような場合、発汗は身体のいずれもの部分で発症する。続発性多汗症に導く医学的症状は、先端巨大症、不安症、白血病及び非ホジキンリンパ腫を含む癌、カルチノイド症候群、心内膜炎、心臓発作、甲状腺機能亢進症、物質乱用、肥満症、糖尿病、心臓病、HIV/AIDS、甲状腺機能亢進症、肺病、薬物療法、例えばベータ遮断剤及び三環式抗鬱剤、閉経期、パーキンソン病、褐色細胞腫、脊髄損傷、脳卒中、ストレス、結核、発熱又は感染を含む。
【0056】
実験
ケイ酸塩(又はケイ酸)は、非常に生体適合性であり、そして強力で透明なゲルを形成することができる。然しながら、制汗剤としてのその使用は、記述されていない。これは、ケイ酸塩の化学的性質が、これがアルミニウムと逆の様式で挙動し、10.5−11より上のpHでのみ可溶性のままであるために(図1)、これを明白な制汗剤の候補としないため、驚くべきことではない。このような腐食性溶液は、皮膚に直接適用することができず、そしてケイ酸塩溶液のpHを更に許容可能なレベルまで(例えばpH8.0に)低下した場合、図2に示すように、成長は、汗腔内ではなく、即ち、処方された制汗剤物質内で急速に進行する。更に、ケイ酸塩の溶解度を低いpHまで広げることができたとしても、皮膚の緩衝能力が、酸性溶液、例えばアルミニウム制汗剤のものに対するそれより、弱アルカリ溶液に対して遥かに低いという問題が残る。
【0057】
本発明は、ケイ酸塩が、モノマーのケイ酸ではなく、ポリケイ酸の形態で存在するケイ酸塩組成物を製造することが可能であり、そしてケイ酸塩組成物が、制汗剤として使用されるために十分に安定であるという発見に基づく。最初の重要な観察は、ケイ酸塩溶液のpHが、十分に、好ましくは7.0より低いpH(例えば、pH2.5又は3.0ないし5.0、そして更に好ましくは約4.0)に低下された場合、成長速度は秒単位から時間単位に劇的に遅くなることである。第2の重要な発見は、この現象が、pHが低下される速度によって影響されることである(図3を参照されたい)。これらの作用は、概略8時間の成長及びゲル形成を防止するために十分である(図4を参照されたい)。
【0058】
次いで、本発明者らは、ポリケイ酸の成長の速度が、更なる成長遅延剤の添加によって更に減少できることを見出した(表1)。これらの成長遅延剤の添加は、重合の防止には導かないが、幾つかの成長遅延剤は、成長の速度を、最適化されたケイ酸塩組成物を制汗剤組成物中に処方するために十分な安定性を有することができる程度に、更に減少する。
【0059】
表1.成長遅延剤として試験された化合物。
試験された全ての組合せに対して24時間以内にゲルが形成した。成長遅延剤は、pH4に低下する前に0.5Mのケイ酸塩溶液に加えられた。
【0060】
【表1】
【0061】
驚くべきことに、本発明者らは、ポリオールが、非イオン性溶媒と一緒に加えられた場合に成長を抑制することにおいて特に有効であることを見出した。以下の実験において、アルコール(エタノール)が非イオン性溶媒として選択された。表2は、成長を抑制することにおいて最も有効であった組合せを示す。グリセロール/エタノールの組合せは、これが7日間より多く安定なままであったために、特に興味あるものであった。
【0062】
重要なことには、これらの実験において観察された安定化は、約pH2.5(又は3)ないし5.0間で(例えば約pH4で)起こり、そして一旦ケイ酸塩溶液のpHがpH6.0(汗腔中のように)に上昇された時点で、成長過程は、制汗剤活性物質として使用するために適したゲルの比較的急速な形成(図6)に導く。
【0063】
表2.5日より多く成長を抑制するポリオールのエタノールとの組合せ。ポリオールをpHを4に低下する前にケイ酸塩溶液に加え、そしてエタノールをpH調節後に加えた。
【0064】
【表2】
【0065】
注記:粘度測定は、これらがエタノールの喪失及びその後のゲルを形成する成長に導くものであるために、不可能であった。
これらの調査に加えて、本発明者らは、更に、複合ポリオール、例えばスクロースを、成長遅延剤として使用することが可能であり、そして初期の実験は、これらがエタノールの非存在においてさえ、数週間成長を抑制することが可能であることを示すことを見出した。重要なことには、これらのケイ酸塩溶液が、pHがpH6に変化した時点で、なお成長を受ける。
非限定的に本発明は以下の態様を含む。
[態様1] ポリケイ酸を含んでなる安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物であって、ここにおいて、前記制汗剤組成物は、2.5ないし5.0間のpHを有し、そしてここにおいて、前記制汗剤組成物の対象への適用は、組成物中のpHの変化を起こし、これは、ゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、前記制汗剤組成物。
[態様2] ポリケイ酸組成物が、成長遅延剤によって安定化される、態様1に記載の制汗剤組成物。
[態様3] 前記pHの変化が、5より上、そして8より下、優先的には5.5ないし6.5のpHへ、そして更に好ましくは約6.0のpHへの変化である、態様1又は態様2のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様4] 前記pHの変化が、皮膚の細孔で起こり、そして細孔内のケイ酸塩ゲルの製造を起こす、態様1ないし3のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様5] 前記組成物のpHが、pH2.5ないし5.0間、所望によりpH3.0ないし5.0間、又は所望によりpH2.5ないし4.5間、又は所望によりpH3.0ないし4.5間、或いは所望によりpH3.5ないし4.0間である、態様1ないし4のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様6] 安定化されたケイ酸塩が、少なくとも一つの成長遅延剤によって、そして所望により二つ、三つ、四つ又は五つの成長遅延剤によって安定化される、態様1ないし5のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様7] 前記成長遅延剤が、カルボン酸、アミノ酸、無機アニオン、ポリオール、糖類及び/又は第四アンモニウムカチオンである、態様6に記載の制汗剤組成物。
[態様8] 前記カルボン酸が、C2−10カルボン酸、そして好ましくはジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタル酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸又はピメリン酸であり、前記アミノ酸は、アスパラギン酸であり、ポリオール、例えばモノマーのポリオール、例えばグリセロール、エチレングリコール、キシリトール、プロピレングリコール、又はポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、或いは前記ポリオールは、糖類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレイトール、エリスリトール、ソルビトール、デキストラン、マンニトール、デキストラン、ガラクチトール又はアドニトールであり、或いは前記第四アンモニウムカチオンがコリンである、態様7に記載の制汗剤組成物。
[態様9] 安定化されたポリケイ酸粒子が、一つ又はそれより多いポリアルキレングリコールを含んでなる制汗剤組成物或いは化粧品製剤に組込まれる、態様1ないし8のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様10] 安定化されたポリケイ酸の粒子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる制汗剤組成物或いは化粧品製剤に組込まれる、態様1ないし9のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様11] 前記安定化されたポリケイ酸粒子が、in vitroの溶解アッセイにおいて決定されるように不良に縮合され、ここにおいて、少なくとも25%、又は所望により少なくとも30%、又は所望により少なくとも35%、又は所望により少なくとも40%、或いは所望により少なくとも50%の組成物が、24時間内にHEPES緩衝液中に溶解される、態様1ないし10のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様12] 前記in vitroの溶解アッセイが、可溶性ケイ酸画分を決定するためのモリブデン酸アッセイである、態様11に記載の制汗剤組成物。
[態様13] 前記安定化されたケイ酸塩組成物が、多価のカチオン、例えばCa2+、Mg2+、Cu2+、Fe3+及び/又はZn2+を含んでなる、態様1ないし12のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様14] 前記多価のカチオンが、0.01Mないし1.0M間の最終濃度を、そして好ましくは0.05Mないし0.5M間の最終濃度を伴う、安定化されたケイ酸塩組成物を提供するために加えられる、態様13に記載の制汗剤組成物。
[態様15] 前記安定化されたケイ酸塩組成物が、非水性溶媒、例えばアルコールによって安定化される、態様1ないし14のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様16] 前記アルコールがエタノールである、態様15に記載の制汗剤組成物。
[態様17] 前記非水性溶媒が、10ないし70容量/容量%間で加えられる、態様15又は態様16のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様18] 前記組成物が、一つ又はそれより多い更なる制汗剤活性剤、体臭防止剤、揮発性又は非揮発性油、シリコーン及び炭化水素基剤皮膚軟化性油、懸濁剤、香料又は芳香剤、有機物粉末、及び/又は水非混和性有機液相及び前記相を構築するための少なくとも一つの薬剤を含んでなる、態様1ないし17のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様19] 前記組成物が、アルミニウム又はジルコニウム塩を含まない、態様1ないし18のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様20] 前記組成物が、これがエアゾールデバイス、ポンプ式分注ビン、ロールオン塗布器、多孔性壁を備えたデバイス、又は棒状の道具(スティック)中に含まれることができるように調整される、態様1ないし19のいずれか1項に記載の制汗剤組成物。
[態様21] ヒトの対象の発汗を処置するための化粧法における態様1ないし20のいずれか1項に記載の制汗剤組成物の使用であって、ここにおいて、前記制汗剤の対象への適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、前記方法。
[態様22] ヒトの対象の皮膚の表面に有効な量の態様1ないし20のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を適用することを含んでなるヒトの発汗を処置するための化粧法であって、ここにおいて、対象への前記制汗剤組成物の適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、前記組成物。
[態様23] 前記方法がヒトの身体の匂いを処置するためである、態様22に記載の化粧法。
[態様22] 過剰な発汗によって特徴づけられる医学的症状の処置の方法において使用するための制汗剤組成物であって、前記方法は、対象の皮膚の表面に有効な量の態様1ないし20のいずれか1項に記載の制汗剤組成物を適用することを含んでなり、ここにおいて、対象への前記制汗剤組成物の適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、前記組成物。
[態様23] 前記医学的症状が多汗症である、態様22に記載の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
[態様24] 前記多汗症が、原発性又は局所的多汗症或いは続発性多汗症である、態様22又は態様23のいずれか1項に記載の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
[態様25] 前記過剰な発汗が、先端巨大症、不安症、白血病及び非ホジキンリンパ腫を含む癌、カルチノイド症候群、心内膜炎、心臓発作、甲状腺機能亢進症、物質乱用、肥満症、糖尿病、心臓病、HIV/AIDS、甲状腺機能亢進症、肺病、薬物療法、例えばベータ遮断剤及び三環式抗鬱剤、閉経期、パーキンソン病、褐色細胞腫、脊髄損傷、脳卒中、ストレス、結核、発熱又は感染によって起こされる、態様24に記載の処置の方法において使用するための制汗剤組成物。
[態様26] ヒトの対象における発汗を処置するための化粧法における態様1ないし25のいずれか1項に記載の制汗剤組成物の使用であって、ここにおいて、前記制汗剤組成物の対象への適用が、組成物中のpHの変化を起こし、これがゲルを形成するためのポリケイ酸の成長を誘発し、これによって制汗剤の活性成分を提供する、前記方法。
[態様27] 安定化されたポリケイ酸を製造するための方法であって:
(a)pH≧9.5を有するアルカリ性ケイ酸塩溶液を用意し;
(b)所望により成長遅延剤をアルカリ性ケイ酸塩溶液に加え;
(c)酸を加えることによってpHを≦4.0に低下して、ポリケイ酸を含んでなる組成物を形成し;
(d)所望により多価カチオン及び/又は成長遅延剤を加え;
(e)塩基を加えることによって組成物のpHを生理学的に受容可能なpHに上昇し、これによってポリケイ酸を含んでなる安定化された組成物を形成し;
(f)所望により組成物の安定性を増加することが可能な成長遅延剤を加え;
(g)所望により組成物の安定性を増加することが可能な非水性溶媒を加え;そして
(h)所望により、対象への適用のために制汗剤製剤又は化粧品製剤に組込むこと;
を含んでなる、前記方法。
[態様28] 工程(c)において、pHが、60秒より少ない、30秒より少ない、10秒より少ない、又は5秒より少ない時間をかけて低下される、態様27に記載の方法。
[態様29] 工程(c)において、pHがpH≦3.0に低下される、態様27又は態様28のいずれか1項に記載の方法。
[態様30] 前記ケイ酸塩溶液の濃度が、0.05Mないし3.0M間である、態様27ないし29のいずれか1項に記載の方法。
[態様31] 前記ケイ酸塩溶液の濃度が、0.1Mないし1.5M間である、態様27ないし30のいずれか1項に記載の方法。
[態様32] 前記ケイ酸塩組成物が、6ヶ月又はそれより多く、12ヶ月又はそれより多く、或いは24ヶ月又はそれより多く安定である、態様27ないし31のいずれか1項に記載の方法。
[態様33] 前記ポリケイ酸粒子が、20nmより小さい、所望により10nm又はそれよりより小さい、所望により5nm又はそれよりより小さい、そして所望により1ないし3nm間の平均直径を有する、態様27ないし32のいずれか1項に記載の方法。
[態様34] 前記安定化されたケイ酸塩組成物が、新しく調製された試料中で、4.0mPa・秒より小さい、そして好ましくは2.0mPas・秒より小さい25℃で測定された粘度を有する、態様27ないし33のいずれか1項に記載の方法。
[態様35] 工程(a)において、アルカリ性ケイ酸塩溶液のpHが、約11.5である、態様27ないし34のいずれか1項に記載の方法。
[態様36] 少なくとも一つの成長遅延剤が、工程(b)において加えられる、態様27ないし35のいずれか1項に記載の方法。
[態様37] 二つ、三つ、四つ又は五つの成長遅延剤が、工程(b)において加えられる、態様36に記載の方法。
[態様38] 前記成長遅延剤が、カルボン酸、アミノ酸、無機アニオン、ポリオール(例えばポリアルキレングリコール)、糖類及び/又は第四アンモニウムカチオンである、態様36又は態様37のいずれか1項に記載の方法。
[態様39] 前記カルボン酸が、C2−10カルボン酸、そして好ましくはジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタル酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸又はピメリン酸であり、前記アミノ酸は、アスパラギン酸であり、ポリオール、例えばモノマーのポリオール、例えばグリセロール、エチレングリコール、キシリトール、プロピレングリコール、又はポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、或いは前記ポリオールは、糖類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、トレイトール、エリスリトール、ソルビトール、デキストラン、マンニトール、ガラクチトール又はアドニトールであり、或いは前記第四アンモニウムカチオンがコリンである、態様38に記載の方法。
[態様40] 工程(c)において、組成物のpHがpH≦1.5に低下される、態様27ないし39のいずれか1項に記載の方法。
[態様41] 前記多価のカチオンが、Ca2+、Mg2+、Fe3+、Cu2+及び/又はZn2+である、態様27ないし40のいずれか1項に記載の方法。
[態様42] 前記多価のカチオンが0.01Mないし1.0M間の最終濃度を得るために加えられる、態様27ないし41のいずれか1項に記載の方法。
[態様43] 前記多価のカチオンが0.05Mないし0.5M間の最終濃度を得るために加えられる、態様27ないし42のいずれか1項に記載の方法。
[態様44] 工程(e)において、前記組成物のpHが、3.0ないし5.0間のpHに上昇される、態様27ないし43のいずれか1項に記載の方法。
[態様45] 工程(e)において、前記組成物のpHが、3.5ないし4.0間のpHに上昇される、態様44に記載の方法。
[態様46] 工程(e)において、前記塩基が水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムである、態様27ないし45のいずれか1項に記載の方法。
[態様47] 前記非水性溶媒が、アルコールである、態様27ないし45のいずれか1項に記載の方法。
[態様48] 前記アルコールがエタノールである、態様47に記載の方法。
[態様49] 前記非水性溶媒が、10ないし70容量/容量%間で加えられる、態様27ないし48のいずれか1項に記載の方法。
[態様50] 制汗剤組成物を製造するための方法であって、態様27ないし49のいずれか1項に記載の方法によって安定化されたケイ酸塩組成物を製造し、制汗剤組成物を製造するための一つ又はそれより多い更なる成分を伴う安定化されたコロイド状ケイ酸塩組成物を処方する更なる工程を含んでなる、前記方法。
[態様51] 前記安定化されたポリケイ酸粒子が、一つ又はそれより多いポリアルキレングリコールを含んでなる制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込まれる、態様50に記載の方法。
[態様52] 前記安定化されたポリケイ酸粒子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでなる制汗剤組成物又は化粧品製剤に組込まれる、態様51に記載の方法。
[態様53] 前記更なる成分が、一つ又はそれより多い更なる制汗剤活性剤、体臭防止剤、揮発性又は非揮発性から選択される油、シリコーン及び炭化水素基剤皮膚軟化性油、懸濁剤、有機物粉末及び/又は水非混和性有機液相並びに前記相を構築するための少なくとも一つの薬剤を含んでなる、態様50ないし52のいずれか1項に記載の方法。
[態様54] 態様27ないし49のいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能なような安定化されたケイ酸塩組成物。
[態様55] 態様50ないし53のいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能なような安定化されたケイ酸塩組成物を含んでなる制汗剤組成物。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明による安定化されたケイ酸塩組成物の調製を例示する。
実施例1
pH約11.5の0.5Mのケイ酸塩溶液を調製した。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。
【0067】
実施例2
pH約11.5の0.5Mのケイ酸塩溶液を調製した。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。最後に、X%のエタノールを加えた、ここで、X=10、20、30又は50%であった。
【0068】
実施例3
pH約11.5の0.5Mのケイ酸塩溶液を調製した。次いで、スクロースを加えて、1.5Mの最終濃度を得た。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。次いで、CaClを加えて、Yの最終濃度を得た。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。Y=0.05、0.1又は0.25MのCaClであった。
【0069】
実施例4
pH約11.5の0.5Mのケイ酸塩溶液を調製した。次いで、スクロースを加えて、1.5Mの最終濃度を得た。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。次いで、CaClを加えて、0.1Mの最終濃度を得た。炭酸ナトリウム(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。
【0070】
実施例5
pH約11.5のケイ酸塩溶液を調製した。次いで、成長遅延剤(以下の表を参照されたい;PEG及びポリアクリル酸を除く全ての遅延剤に適用)をこの溶液中に溶解した。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。
【0071】
実施例6
pH約11.5のケイ酸塩溶液を調製した。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。次いで成長遅延剤を、この溶液中に溶解した(以下の表を参照されたい)。
【0072】
実施例7
実施例1ないし6からのいずれもの物質を、以下の方法によるPEGクリームに組込んだ。PEG3350(5.25g)を溶融し、そして水酸化ナトリウムを加えて、クリームのpHが、形成された時点で、pH3より上であることを確実にした。PEG200で安定化されたポリケイ酸(2.3gの懸濁液)を、PEG400(6.15g)と、65−70℃で混合し、そしてPEG溶融物に加えた。得られた混合物をホモジナイズし、そして室温まで冷却させた。
【0073】
実施例8
実施例1ないし6からのいずれもの物質を、以下の方法によってPEGクリームに組込んだ。PEG3350(5.25g)を溶融し、そして水酸化ナトリウムを加えて、クリームのpHが、形成された時点で、pH3より上であることを確実にした。PEG200で安定化されたポリケイ酸(2.3gの懸濁液)を、PEG400(6.15g)と、室温で混合し、そしてPEG溶融物に加えた。得られた混合物をホモジナイズし、そして室温まで冷却させた。
【0074】
実施例9
本発明の安定化されたポリケイ酸組成物の溶解を、米国特許出願公開2007/148113に記載されているような、商業的に入手可能な完全に縮合した形態のコロイド状シリカの溶解と、Ludox SM30(登録商標)(http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/420794?lang=en&region=GB)を使用して比較した。図9は、本発明の安定化されたポリケイ酸組成物は、不安定であり、そしてその後完全に溶解し、一方、コロイド状シリカの溶解は、20%より少なかったことを示す。
【0075】
実施例10
1.5Mのスクロースで安定化された、本発明の安定化されたポリケイ酸組成物の水力学的粒子サイズを、合成の1時間後に決定し、粒子サイズが、約1nmから約3nmまでの範囲であることを示した。
【0076】
実施例11
本明細書中に記載される方法を使用して、pHの低下時の小さい粒子(<5nm;典型的には<3.5)のサイズの調整の可能性を決定した。然しながら、大きい粒子サイズは、pHを上昇することによって達成することができる。有用なことには、成長の速度は、適当なpH及び濃度を選択することによって決定することができる。図7は、如何により遅い成長速度を、pHを4に上昇することのみによって達成することができるかを示す。先に記述したように、サイズの成長は、安定剤(例えばPEG、図8)を加えるか、又は懸濁液を希釈することによって停止することができる。
【0077】
実施例12
本発明の安定化されたポリケイ酸組成物へのCu2+の添加は、細菌の増殖を制限する更なる利益を有する(本明細書中ではE coliモデルで例示)。細菌の増殖の制限は、これが、汗の脂質成分を分解する皮膚の細菌叢に作用によって起こる腋下臭の放出に伴うために特に有益である。従って、銅をドーピングされたポリケイ酸は、pH約11.5で0.5Mのケイ酸塩溶液を使用して合成される。次に、pHを、適当な体積の37%のHClを、全てを一度に加えることによってpH<1.5に低下した。CuCl・2HOを加えて、25mMのCuの最終濃度を達成した。NaOH(0.1−0.5M)を加えて、pHを3.5−4.0に調節した。
【0078】
本発明の安定化されたポリケイ酸組成物の抗細菌作用を試験した。銅を負荷したケイ酸塩ポリマーは、抗細菌活性を示したが、しかし成長遅延剤は、銅の細菌活性に負に影響しなかった。安定化及び非安定化物質間に顕著な差はなかった(図10)。実際、安定化は、より多きい銅負荷ケイ酸塩濃度を可能にし、そして効力に対する安定剤の影響を可能にしないものであった。
【0079】
実施例13
安定化されたポリケイ酸(SiA)の制汗剤効力を、塩化アルミニウム水和物sy(aluminum chlorohydrate)(ACH)のそれと比較した。ACHは、発汗を減少することによって、皮膚の細菌が、臭い産物に分解するために利用可能な汗を制限する局所的な制汗剤又は身体の体臭防止剤として使用される。これは、現時点で“金字塔”的制汗剤である。安定化されたポリケイ酸を、次のように試験のために調製した。8mlの6.25Mのケイ酸ナトリウム溶液を、50mlのUHPのHOで希釈した。次に、pHを、一定の撹拌下で4mlの37%のHClを急速に加えることによって<1.5に低下した。最終pHは、最初に5MのNaOH(約0.5ml)を、そして次いで、0.5MのNaOH(約2ml)を使用して、3.5±0.5に調節した(pH0−6のpH試験紙、BDH31505)。30mlのエタノールを加え、そして最終体積をUHPのHOを加えることによって100mlに調節した。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例14
制汗剤の効力試験
方法:
重力式発汗試験を、腋下の汗を収集するために、綿のパッドを使用して行った。簡単には、2週間以上、制汗剤の使用を止められた24人の対象(女性12人+男性12人)を含めた。両方の試験溶液(“ACH”対“SiA”)に対して、盲検で、そして左右にランダム化された500mgの溶液の一回の腋下適用を行った。適用の6時間後に、綿のパッドを両方の腋下に置き、そして75℃及び30%の相対湿度のサウナに入ることによって発汗を誘発した。汗を15分間収集し、そしてパッドの重量増加として推定した。
【0082】
結果
腋下の発汗の量を、産物適用前の同一条件下のサウナ試験から得られた基線の発汗速度(=100)に対して正規化して、相対的な発汗の減少を計算した。以下の表に示すように、本発明のポリケイ酸組成物は、選択された試験条件下のACHのように、アルミニウム組成物に伴われることが知られた危険性を伴わずに有効であった。
【0083】
【表4】
【0084】
表3.本発明の組成物の製造において使用された試薬の組合せの例及び使用された比を以下に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
は、ポリマー内のモノマー基の濃度を指す。
参考文献
本明細書中で記述される全ての文書は、その全てが参考文献として本明細書中に援用される。
【0087】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10