(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアクリロニトリル溶液と圧縮空気を紡糸口金から吐出し、繊維として凝固させて捕集し、その後、焼成することにより炭素繊維不織布を得る、炭素繊維不織布の製造方法であって、紡糸口金の吐出口から捕集面までの距離を200〜700mmとし、吐出のときにポリアクリロニトリル溶液をバーストさせることなく紡糸口金から吐出し、圧縮空気の気流によって伸張または細径化させることを特徴とする、固体高分子型燃料電池用ガス拡散層として用いられる炭素繊維不織布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔炭素繊維〕
本発明における炭素繊維連続フィラメントは平均繊維径3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下の炭素繊維の連続繊維である。平均繊維径が3.0μmを超えると不織布を構成する炭素繊維の数が少なく垂直方向の低い抵抗値が得られない。また、連続繊維でなければ繊維軸方向の良好な導電性が活用できなくなり低い抵抗値が得られない。なお、炭素繊維の平均繊維径の下限は通常0.01μm程度である。これより細い炭素繊維を得ることは製造設備やコストの点で困難である。
【0013】
〔不織布〕
本発明の炭素繊維不織布は、見掛け密度0.05〜1.0g/cm
3かつ厚み50〜200μm、好ましくは見掛け密度0.08〜0.7g/cm
3かつ厚み80〜150μmである。見掛け密度が0.05g/cm
3未満であると不織布としての破断強力が低下し取扱性が悪化するだけでなく、不織布内の導電パスが減少して抵抗値も高くなる。他方、見掛け密度が1.0g/cm
3を超えると気体の通過性が悪化する。厚みが200μmを超えると厚み方向の低い抵抗値を実現できなくなり良好な電池性能が得られない。
【0014】
〔製造方法〕
本発明の炭素繊維不織布は、ポリアクリロニトリル溶液である紡糸溶液と圧縮空気を紡糸口金から吐出し繊維として凝固させて捕集し、その後、焼成することによって製造することができる。均質な不織布を得る観点から、吐出のときに紡糸溶液をバーストさせることなく紡糸口金から吐出し、圧縮空気の気流によって伸張または細径化させて連続した均一な繊維径をもつ繊維にすることが好ましい。捕集は、凝固した繊維を例えば捕集ベルトや回転ドラムの上に積層することで行うことができる。
【0015】
紡糸溶液の溶媒としてポリアクリロニトリルを溶解する溶媒であれば用いることができるが、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが好ましい。紡糸溶液でのポリアクリロニトリルの濃度は、好ましくは8〜20重量%、より好ましくは10〜18重量%である。ポリアクリロニトリルの濃度が8重量%未満であるか20重量%を超えると紡糸溶液としての曳糸性が低下し、圧縮空気を用いての伸張または細径化が困難になり好ましくない。
【0016】
本発明の炭素繊維不織布の製造方法の好ましい態様は、以下の(1)乃至(7)をこの順序で行う態様である。
【0017】
すなわち、
(1)ポリアクリロニトリル溶液を、細径を有する吐出孔より吐出し、
(2)吐出孔の外側から噴出した圧縮空気の気流を作用させて、吐出したポリアクリロニトリル溶液を伸張または細径化させ、
(3)平均液滴径1000μm以下の凝固液を噴霧させて、伸張または細径化されたポリアクリロニトリル溶液を固化して、平均繊維直径0.01〜5μmの繊維とし、
(4)上記繊維の走行方向に従って流路が拡大しない流体整流板を通過させた後、
(5)上記繊維を捕集および乾燥して不織布とする。
(6)不織布を耐炎化する
(7)耐炎化した不織布を焼成して炭素繊維不織布を得る。
【0018】
次に、上記の製造方法を図により詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、ダイ1によって適切な温度に温調されたキャビティー2に付属した紡糸ノズル3に、紡糸に用いるポリアクリロニトリルの溶液である紡糸溶液を供給する。こうしてノズル内管9を通った紡糸溶液10は、吐出孔の外側に設置されたガス吐出口7から噴出した圧縮空気の気流によって効果的に加速され伸張または細径化される。
【0020】
ここで、紡糸溶液10の吐出量、紡糸溶液を伸張または細径化させる圧縮空気の吐出量は得ようとする不織布の繊維径など不織布の形態により適宜選択できる。すなわち、不織布を構成する繊維の繊維径を小さくしたり不織布の空隙径を小さくしたり密度を大きくしたりする場合は、紡糸溶液の吐出量を少なくしまたは圧縮空気の吐出量を多くし、他方、不織布を構成する繊維の繊維径を大きくしたり不織布の空隙径を大きくしたり密度を小さくする場合は、紡糸溶液の吐出量を多くし、または圧縮空気の吐出量を少なくする。このように紡糸溶液の吐出量と圧縮空気の吐出量を調整することで、所望の平均繊維径および見掛け密度を有する不織布を容易に得ることができる。
【0021】
本発明においては紡糸溶液10を吐出孔から吐出後、これに平均液滴径が1000μm以下の凝固液を噴霧させて該吐出した紡糸溶液を固化して前記平均繊維径の繊維とする。平均液滴径が1000μmより大きいと液滴の重量が重すぎて後述する流体整流板での気流の制御ができず不織布を構成する繊維の配向を調整できなくなる。凝固液の平均液滴径は、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。ここで、平均液滴径は面積基準の平均液滴径をレーザー散乱/回折法(堀場製作所製LA−910等で測定可能)により測定した値である。
【0022】
本発明においては、圧縮空気の気流による凝固液の噴霧を、吐出孔から繊維として捕集される間の吐出紡糸溶液の直線軸(以下、紡糸軸と称することがある)に対し相対して、同じ位置および同じ噴射角度となるように配された少なくとも一対のスプレーノズルなどの凝固液供給装置により行うことが好ましい。なお、吐出孔から繊維として捕集される間の吐出紡糸溶液が固化し繊維束となっている状態を、以下「糸条」と称することがある。
【0023】
不織布の形状となった繊維の捕集を搬送ベルトや回転ドラム等の搬送手段で連続的に行う場合、スプレーノズルは該手段の搬送方向の反対側(川上側)と搬送方向側(川下側)に配置することが好ましい。スプレーノズルがいずれか一方の側のみに設置されたり、もしくは少なくとも一対で配置されても設置位置高さや凝固液噴射角度が異なったりすると、圧力空気と凝固液がスプレーノズルから吐出された際に糸条の流れ方向が乱され、糸切れが発生したり、得られる不織布の目付プロファイルを悪化させる原因となるため好ましくない。
【0024】
本発明では凝固液供給装置としてスプレーノズルを用いることができるが、具体的には、フルコーンスプレー、ホロコーンスプレー、フラットスプレー等の一流体スプレーや二流体スプレーが挙げられるが、少量の凝固液を糸条に均一に噴射でき凝固液と同時に噴射される圧縮空気によって紡糸線上の気流の流れを乱すことなく糸条に凝固液を接触させることが可能な二流体スプレーを使用するのが好ましい。
【0025】
上記凝固液供給装置は、紡糸溶液の吐出孔から下方300mm〜500mmの間の位置に設置するのが好ましい。この位置が吐出孔より上にある場合には、凝固液供給装置より噴霧された凝固液が紡糸溶液吐出孔にも付着することがあり、該吐出孔から紡糸溶液が吐出した時点で凝固・固化してしまい、紡糸溶液の吐出不良が起きてしまうことがある。他方、凝固液供給装置が紡糸溶液の吐出孔の下方500mmを越えて遠い位置に設置されると、紡糸線上での各繊維相互間の結着が顕著になり不織布中にロープ状の繊維束が増加し、得られる不織布は不均質なものとなりやすい。
【0026】
前記凝固液供給装置は、紡糸溶液の吐出孔から吐出され、周囲から吐出される圧縮空気の気流で細径化され捕集されるまでの紡糸線に対して直角から平行となる間の適当な噴射角度にて均一に噴霧できるように1個または複数個設置されるが、これは紡糸溶液の吐出孔の配列数、すなわち紡糸幅、凝固液供給装置の種類、性能等により適宜決められる。
【0027】
凝固液供給装置、例えばスプレーノズル先端から紡糸線までの距離は5〜400mmで設置するのが望ましい。上記距離が5mm未満では、凝固液供給装置から噴霧された圧縮空気が紡糸線上を流れている糸条に強く接触して干渉し、糸切れが起きたり得られる不織布の目付プロファイルを悪化させるため好ましくない。逆に、上記距離が400mmを越えて遠くなると、噴霧された凝固液は紡糸線上の広範囲に噴霧されることとなり好ましくない。すなわち、糸条の凝固を効率よく行うためには糸条の細化が十分に行われた直後に液体と空気を送り込み糸条と接触させことが好ましいが、凝固液供給装置の紡糸線からの距離が400mmを越える場合、ノズルから噴霧された水溶液が紡糸線上の広範囲にわたって噴霧されるので糸条を効率的に凝固させることが困難になるため、使用する凝固液量を多くする必要があり好ましくない。
【0028】
凝固液供給装置としてスプレーノズル、特に二流体スプレーノズルを用いる場合、該スプレーノズルから噴射される圧縮空気の圧力は0.1〜1.0MPaの範囲が好ましい。圧縮空気圧が0.1MPa未満では凝固液を細かい粒子の霧状にするのが難しくなり繊維表面に均一に凝固液を接触させられない傾向にあり好ましくない。逆に、圧縮空気圧が1.0MPaを越えると圧縮空気が紡糸線上の糸条に強く接触して干渉し得られる不織布の目付プロファイルを悪化させるとともに空気によって細化中の極細繊維の相互間が結着し、ロープ欠点を形成し易くなるため好ましくない。スプレーノズルから噴霧される凝固液の量は、紡糸溶液吐出孔から吐出されるポリアクリロニトリル溶液量や必要とする凝固の程度等により適宜調整することができる。
【0029】
本発明においては、前記のように凝固液を噴霧させて該吐出した紡糸溶液を固化して繊維とした後、該繊維の走行方向に従って流路が拡大しない流体整流板を通過させることが重要である。これによって、繊維を一方の方向に配向させ該方向において強度が向上した不織布とすることができる。このとき、繊維の捕集を搬送ベルト等の搬送手段で連続的に行う場合、これを連続した不織布として巻き取ったり、その後、巻き出して各用途で必要な形状に加工したりすることなどを考慮して、不織布の長さ方向すなわち搬送ベルトの走行方向に繊維が配向し強度が高くなっていることが好ましい。
【0030】
噴霧する凝固液としては紡糸溶液に対する貧溶媒を用いる。例えば、水、水/ジメチルアセトアミド、水/ジメチルスルホキシド、水/ジメチルホルムアミド、水/アルコールの混合液を用いることができる。
【0031】
流体整流板は、吐出孔から繊維として捕集される間の吐出紡糸溶液の直線軸(紡糸軸)に対し相対して同じ位置および同じ角度となるように一対に配することが好ましい。また、不織布の長さ方向に繊維を配向させ、かつ上記のように繊維の捕集を搬送ベルト等の搬送手段で連続的に行う場合、気体整流板は該手段の搬送方向の反対側(川上側)と搬送方向側(川下側)に配置することが好ましい。流体整流板が搬送方向の上流側または下流側のいずれか一方のみに設置されたり、もしくは搬送方向の上流側と下流側の両方に設置されたとしても設置位置が異なったり設置角度が異なったりするとノズルから吐出された糸条の流れ方向が乱され糸切れが発生したり得られる不織布の目付プロファイルを悪化させる原因となり易く好ましくない。
【0032】
流体整流板は、凝固液供給装置であるスプレーノズル等より下方で、かつ不織布を捕集する捕集面から100mm以上の上方に設置することが好ましい。流体整流板が凝固液装置であるスプレーノズル等より上方にあると一方向に繊維が配向した不織布とすることが難しい。一方、捕集面からからの距離が100mmに満たない場合、捕集された不織布の一部が流体整流板に接触することがあり、得られる不織布は不均質なものとなりやすい。
【0033】
また、本発明においては、流体整流板を、該吐出した紡糸溶液を固化して繊維とする、該繊維の走行方向に従って流路が拡大しない流体整流板を通過させることが重要である。具体的には、吐出孔から繊維として捕集される間の吐出紡糸溶液の直線軸(紡糸軸)に対し、流体整流板を、該紡糸軸に対して平行(すなわち、紡糸軸と流体整流板との角度が0°)となるか、該紡糸軸に対して繊維の走行方向に従って次第に狭くなる(紡糸軸と流体整流板との角度が0°より大きく90°未満)となるように、走行する繊維の外側に設置することが好ましい。なお、
図1には、後者のように繊維の走行方向に従って次第に狭くなる態様を模式図で示した。流体整流板は、平板または湾曲したものを用いてもよく、後者のように流路の狭める場合、その狭め方としては直線状に狭めても良いし、流体の乱れが必要以上に大きくならないように緩やかなカーブを設けて狭めるようにしてもよい。上記のように、流路を紡糸線と平行、もしくは、次第に狭めることにより、気流の周囲へのランダムな拡散が抑制されるので、極細径繊維は不織布の一方向、すなわち、捕集された繊維不織布の搬送方向に配向しやすくなる。紡糸軸と流体整流板との角度は、好ましくは0°〜45°、より好ましくは0°〜30°である。
【0034】
流体整流板の紡糸線からの距離は50〜300mmの範囲で設置されるのが望ましい。紡糸線からの距離が50mm未満では、気体整流板に糸条が接触してしまうため好ましくない。逆に、紡糸線からの距離が300mmを越えて遠くなると、紡糸線周辺の気流の整流ができなくなり、不織布を構成する繊維の配向を調整できなくなる。
【0035】
また、該気体整流板の素材は、金属、プラスチック、木、紙など特に限定されないが、極希にではあるが繊維が付着してこれにより紐状物を発生させることがあるため、表面にテトラフルオロエチレンなとのシートを貼りつけたり表面にコートするなどの処理を行うことが好ましい。
【0036】
上記極細径繊維は、例えば、固定した捕集支持体や走行する搬送ベルト上または回転ドラム上に捕集することによって均質な不織布とすることができる。その際、シート状基材の上に直接捕集し基材との積層体としてもよい。このようにして得られた積層体を一旦巻き取り、再度この巻き取った積層体に該極細径繊維を捕集して三層構造にしてもよい。
【0037】
吐出孔から捕集面までの距離(紡糸距離ということがある)は100〜800mmの範囲が好ましい。紡糸距離が100mm未満ではスプレーノズルの配置が難しくなる、他方、紡糸距離が800mmを超えると紡糸線上での各繊維相互間の結着が顕著になり、不織布中にロープ状の繊維束が増加するとともに、捕集面に達する際の糸条と糸条に随伴する圧空の速度が低下し、得られる不織布の強度が弱いものとなってしまう。紡糸距離は、より好ましくは200〜700mm、さらに好ましくは300〜600mmである。
【0038】
本発明において、不織布の目付は、ノズルからの紡糸溶液吐出量と捕集面の移動速度(ベルトの速度や回転ドラムの表面の速度)によって決定され、使用する目的により適宜調整することができる。
【0039】
得らた不織布を200℃〜300℃の温度で、空気中で加熱することにより耐炎化された不織布を得る。これには、例えばカレンダー加工や熱プレス加工を行い、所定の厚みの、耐炎化された不織布に成形する。
【0040】
続いて、耐炎化された不織布を焼成し炭素繊維不織布とする。焼成は一般的に用いられている方法を用いて行うことができる。例えば窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下にて、好ましくは800℃以上、さらに好ましくは1000℃以上の温度下に、耐炎化された繊維不織布を置くことで行う。焼成によって、炭素繊維不織布を得る。
【0041】
〔用途〕
本発明の炭素繊維不織布は、固体高分子型燃料電池のガス拡散層として好適に用いることができる。本発明では長繊維を用いることによって低い抵抗を得ることができ、不純物を含まず高い空隙率を有する構造であるため、優れた発電効率の電池を得ることができる。
【0042】
さらに、炭素繊維不織布を構成する繊維径を変えることで、ガス拡散層の表面細孔径を小さくすることができ、水の排出のための撥水性の向上にも効果を期待できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(1)平均繊維径
測定対象の炭素長繊維不織布を、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて観察し、繊維100本を任意に選出して直径を測定し、それらの平均を算出した。なお、観察は1000倍で行った。
(2)厚み
デジタルリニアゲージ((株)小野測器製DG−925、測定端子部の直径1cm)を用い、10箇所において厚さを測定し、その平均値を求めた。
(3)見掛け密度
測定対象の不織布を1辺が25mmの正方形に切り出しその重量を電子天秤で測定し、1辺が1mの正方形として換算して坪量を測定し厚みで除すことで見掛け密度とした。
(4)厚み方向に1MPaで加圧した際の厚み方向の電気抵抗
2枚の50mm角、厚さ10mmの金メッキした電極で、炭素繊維不織布を電極が全面接触するように挟み、荷重1MPaを不織布の厚み方向に掛けた時の厚み方向の電気面積抵抗値を日置電機株式会社製抵抗計RM3542を用いて測定した。
(5)セル電圧
炭素繊維不織布を50cm角の大きさにカットし、これに触媒(Pt−Rt)を0.2mg/cm
2担持させた。高分子電解質膜(ナフィオン117)の両面に上記触媒を担持させた炭素繊維不織布を接合してセルを構成した。温度80℃で電流密度0.6A/cm
2でのセル電圧を測定した。
(6)平均液滴径
面積基準の平均液滴径を、レーザー散乱/回折法により測定した。
【0044】
実施例1
ポリアクリロニトリル共重合体をジメチルアセトアミド溶媒に12重量%の割合で溶解させ紡糸溶液を得た。この紡糸溶液をギアポンプを使い紡糸装置に200g/分で供給し、紡糸温度35℃とし、10m
3/分で圧縮空気を供給して紡糸を行った。ギアポンプにより紡糸溶液の吐出孔から吐出された糸条は、直ちに周囲の圧空と凝固液と共に、紡糸線上の下方向に捕集ベルトに向かって流下し、伸張、細径化の後に凝固した。
【0045】
ここで使用した紡糸装置は、紡糸溶液の吐出ノズルが100×5列の配列で500本が設置されたもので、吐出ノズルの孔径が0.2mmのものである。凝固液として水を使用し、吐出後の紡糸溶液に、ノズル孔から下方向に40cmの位置で、圧縮空気を用いた凝固液供給装置であるスプレーノズル(平均液滴径250μm、株式会社いけうち製、VVPシリーズ)を用いて、9L/分の水量で吹き付け、紡糸溶液を凝固させた。なお、紡糸装置の下方50cmには捕集ベルトが設置され、上記の連続繊維を捕集ベルト上に積層しながらベルトの搬送速度1.0m/分で、連続的に繊維不織布を製造した。得られた繊維不織布を空気中で230℃で乾燥、耐炎化処理を実施した後、窒素雰囲気下で1200℃で30分間保持して炭素化し、炭素繊維不織布を得た。
【0046】
得られた炭素繊維不織布を測定した結果、平均繊維径1.2μm、見掛け密度0.22g/cm
3、厚み146μm、抵抗値6mΩ/cm
2、セル電圧0.69Vであった。
【0047】
実施例2
紡糸溶液のポリアクリロニトリル共重合体の濃度を14重量%としたこと以外は実施例1と同様にして平均繊維径2.1μm、見掛け密度0.21g/cm
3、厚み172μm、抵抗値11mΩ/cm
2の炭素繊維不織布を得た。電池性能はセル電圧0.64Vであった。
【0048】
比較例1
炭素繊維不織布を直径9μm、長さ6mmの炭素繊維とカーボンブラック微粒子、アラミドパルプ、PTFE、セルロース繊維、PVA繊維と抄紙用バインダー成分を、24重量%、35重量%、8重量%、15重量%、8重量%、10重量%の比率で混抄し、金属ロールの温度250℃、30μmのクリアランスを開けたカレンダーロールを通過させた後、400℃で乾燥させることで、湿式不織布からなる炭素繊維不織布を得た。
【0049】
得られた炭素繊維不織布の炭素繊維の平均繊維径は9μm、見掛け密度0.37g/cm
3、厚み153μm、抵抗値16mΩ/cm
2であった。電池性能は、セル電圧0.59Vであった。
【0050】
【表1】