(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミナ担体と、同担体上に担持された少なくとも1種のアルカリ元素とを含む吸着剤であって、該アルミナ担体のナトリウム含有率は、該アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na2O相当として表されて、担体の全重量に対して1500〜3500重量ppmである、COS、CO2、H2SおよびCS2からなる群から選ばれる少なくとも1つの酸性分子の吸着剤。
再生工程は、少なくとも部分的に酸性分子により飽和した吸着剤を、気体または液体と接触させることにより行われ、その際の温度は、20〜500℃であり、その際の絶対圧力は、0.01〜5MPaであり、その際の毎時空間速度は、50〜50,000h−1である、請求項13に記載の除去方法。
【背景技術】
【0002】
酸性分子、例えば、硫化カルボニル(COS)、二酸化炭素(CO
2)、硫化水素(H
2S)、さらには二硫化炭素(CS
2)は、天然ガス、種々の合成ガスおよび燃焼ガス、および石油に由来するかまたはバイオマスの変換に由来する液体の炭化水素留分中に存在する汚染物質である。
【0003】
現在、これらの酸性分子は、複数の立場から有害である。環境的な立場から、例えば、CO
2は、温室効果の原因となる気体の一つであることが周知である。COSは、それが原因となって、一旦、精製および石油化学方法からの気体状流出物を介してそれが大気に放出されると、成層圏に運び入れられ得て、そこで、それは、光化学反応を促進するというその効果を介してオゾン濃度を様変わりさせることになり、かつ、SO
2の形成に至ることになる。したがって、それは、地球温暖化と激化酸性雨とに同時に寄与することになる。工業的な立場から、酸性分子は、精製するための反応器および石油化学工業のための反応器の腐食の現象を引き立たせる。さらに、それらは、気体および油状の生成物中の硫黄の存在に寄与し、したがって、それらが仕様に適合し損なう原因になり得る。最後に、それらは、多くの触媒、特に、オレフィンのポリマー化のための触媒にとって毒物である。
【0004】
したがって、種々の炭化水素流中に含有される酸性分子、特に、COSおよびCO
2を除去することが探し求められている。
【0005】
液体炭化水素中、特に、オレフィン中に存在するCOSは、種々の方法で除去され得る。
【0006】
第1の方法は、COSを含有する流出物を物理溶媒(例えばソーダ)または化学溶媒(例えばアミン)により処理すること、すなわち、CO
2からCOSに吸収の方法を入れ替えることである。これらの2種の分子は、酸性の特徴を含めて、同様な特性を有するからである。ソーダの使用により、予想されるように、COSを吸収することが可能となるが、速度においてCO
2の場合におけるより1000倍遅い(非特許文献1)。CO
2との反応と比べてCOSとの反応がはるかにより遅いという同じ課題に出くわすのは、COSが一級または二級アミンと反応させられることになる場合である(非特許文献2)。さらに、COSは、アミンと不可逆的に反応する傾向があり、これにより、それらは変質するに至る(非特許文献3)。最後に、三級アミンとのCOSの反応性は非常に低い(非特許文献4)。基本的に、COSを除去するこの方法は、非常に効果的なわけではなく、実施するには高価であるだろう。
【0007】
文献においてしばしば言及される第2の方法は、反応:
COS + H
2O → CO
2 + H
2S
によるCOSの加水分解である。この反応は、熱力学的に有利であり、低い温度でかつ高濃度COSでなおいっそう有利である。しかしながら、それは、速度論的に遅く、転化速度は100%に達しないかもしれず、特に低温ではそのようになるかもしれない。特許文献1によると、この課題は、アルミナに水を加えることによって解決され得る。低温で、水はCOSの競争相手になるという事実を除いて、この方法の主要な欠点は依然として、それがすることの全てが、COSを別の硫黄含有化合物に変換することにあり、それが原因となって、それは流出物から除去されなければならないことになる。
【0008】
最後に、第3の方法は、塩基性固体上へのCOSの吸着である。ほとんどの場合、これには、1種以上のいわゆる活性相を含浸させられた多孔性担体が使用されるが、担体は、単独で用いられ得る。任意の従来の多孔性固体が担体として言及されている:酸化物、主としてアルミナ、活性炭、シリカ−アルミナ、粘土、ゼオライト(Y、X、A、BEA)(そのまま、または、カチオン、例えば、Ag、Cu、Zn、Fe、Co、Niにより交換される)、および塩基性樹脂。ほとんど全ての元素が、活性相として用いられ得る:アルカリ、アルカリ土類(酸化物または硫化物の形態にある)、遷移金属(必然的に第一のシリーズのものであるが、硫化物の形態にあるPt、CoおよびMoも言及される)および希土類である。しかしながら、それらの全てが、COSを含有する液体炭化水素の精製に要求される質、すなわち、高い吸着容量および良好な再生可能性を有しているわけではない。塩基性のアニオン交換樹脂の場合(特許文献2および3)、課題は、ppmのオーダーの含有率の残留COSにあり、これは、依然としてあまりに高い(特許文献4)。ゼオライトおよびオレフィンの精製の場合、主要な問題は、コークの形成を介した吸着剤の変質である(非特許文献5)。
【0009】
最も適した固体は酸化物、より特定的にはアルミナであり、特に、低温吸着に用いられる。特許文献5には、液体プロピレン供給原料からCOSを除去するための1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類の金属を、金属の重量で0.01〜10%のレベルで含浸させられた活性化アルミナが提案されている。一旦飽和したところで、吸着剤は、高温ガス(100〜300℃)をそれの中に通すことによって再生される。しかしながら、再生により固体の性能は減退する(実施例において与えられる最良の性能を有する固体についての4回目のサイクルにおいて当初容量の70%の喪失)。従来の再生温度、すなわち100〜350℃を維持しながらこの課題を克服するために、特許文献6には、2工程再生が示唆されている:加水分解剤、例えば、20〜6000ppmの水を含有する高温ガス(炭化水素、窒素または不活性ガス)の通過、およびその後のこの同一の試薬のない高温ガスの通過。試験されたアルミナの当初性能の安定性は、12サイクルにわたって維持される。しかしながら、この種の再生手順を行うことにより、この方法の実施が複雑になる。したがって、同程度に良好である吸着容量を有し、さらには吸着/脱着のサイクルの間安定であり、再生ガスに試薬を加える必要がない吸着剤を見出すことは有用であるだろう。
【0010】
CO
2に関して、それは、ポリマー化触媒にとって毒であり、したがって、オレフィン性留分から、より特定的にはエチレンまたはプロピレンの留分からそれらの起源に拘わらず除去されなければならない。それらは、特に、熱分解または接触分解に由来し得るが、アルコールのオレフィンへの転化にも由来し得る。CO
2は、i)物理溶媒または化学溶媒による吸収により、ii)膜の使用により、またはiii)吸着剤上の吸着により除去され得る。第1の2種の溶液は、想定される供給原料に適しておらず、それらは、CO
2をほとんど含有しておらず(1000ppmv未満)、かつ/または、要求される仕様(1ppmv未満)を達成するように実施するには高価である。したがって、適合される解決策は、しばしば、固体吸着剤の使用である。
【0011】
所定の特許は、ゼオライト、例えば、ゼオライトA(特許文献7)、13X(特許文献8)、さらにはクリノプチロライト(特許文献9)の使用を特許請求する。これらのゼオライトの全ては、CO
2に有利な吸着選択性を有するが、オレフィン留分中1000ppmv未満の含有率でのCO
2に対するそれらの容量は非常に低い。さらに、それらは、加熱されて変性することを避けるためにそれらが前負荷を必要とするという欠点を有する。最後に、それらは、しばしば、コークの形成およびその後のそれらの表面上の沈着の結果として、サイクルの間に迅速に失活する。
【0012】
他の特許には、その代わりに、炭酸アルカリ単独(特許文献10)または炭酸アルカリとアルミナとの混合物(特許文献11〜13)の使用が提案されている。しかしながら、それらの最適な反応性には、水の存在が必要となり、その結果、以下の反応が起こり得る: MCO
3 + H
2O + CO
2 → 2MHCO
3(式中、Mは、アルカリカチオンである)。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属により促進されたアルミナも特許請求されている(特許文献14〜15)。実際に、特許文献14には、液体プロピレン供給原料からCO
2を除去するための1種以上のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含浸させられたアルミナが提案されている。それには、アルミナに含有される不純物が、吸着剤の性能に影響を及ぼさないことが記載されている。この文献には、特に、ナトリウムの含有率が4700重量ppm(Na
2Oとして表される6300重量ppmの含有率に相当する)であるアルミナに、1種以上のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含浸させてなるものが記載されている。この文献に記載されている吸着剤は、比較的高い温度での焼成によって調製され、これにより、アルカリ金属のアルミン酸塩またはアルカリ土類金属のアルミン酸塩が形成されるに至る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
本発明は、液体または気体の炭化水素流に含有される酸性分子、例えば、COSおよび/またはCO
2を除去するためにアルカリ元素をドープさせてなるアルミナベースの吸着剤に関する。
【0016】
より特定的には、本発明は、アルミナ担体と、少なくとも1種のアルカリ元素とを含む吸着剤であって、前記吸着剤は少なくとも1種のアルカリ元素をアルミナ担体上に導入することによって得られ、該アルカリ元素は、ナトリウムと同一
であるかまたはナトリウムとは異なり、アルミナ担体のナトリウム含有率は、該アルカリ元素(1種または複数)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、吸着剤に関する。
【0017】
驚くべきことに、本出願人は、アルミナが少なくとも1種のアルカリ元素により後にドープされる前にアルミナ中に所定の低い含有率のナトリウムが存在することにより、酸性分子、特に、COSおよび/またはCO
2の吸着のための高い容量を有し、特に、再生のために特別な条件を実施することなく吸着/再生のサイクルの間に安定した性能を有する吸着剤を得ることが可能になることを発見した。なんらの理論に結び付けられることなく、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前のアルミナ中に所定量のナトリウムが存在することは、アルミナの表面欠陥を満たすことを許容し、COSの吸着の場合の元素硫黄の形成を防止するだろう。この元素硫黄の形成は、アルミナ担体上に調製された固体上に観察され、ナトリウムにより安定にされることはなく、かつ、経時的な吸着剤の失活を引き起こす。しかしながら、担体の表面上のあまりにも多過ぎるナトリウムにより、前記担体と、導入されるべき相(アルカリ元素)との間の相互作用が低下し得るだろう:やや塩基性の前駆体は、その表面が従前にあまりに塩基性にされすぎたならば、その表面によって引きつけられることは少ないだろう。これにより、活性相のより乏しい分散に至り、したがって、それのその次の使用における吸着剤の効率に不利に影響を及ぼし得るだろう。担体の表面に強力性に乏しく結合されたアルカリベースの活性相を有する最終の吸着剤も、その活性相の一部を放出する傾向が、特に、液相でそれが使用される場合にあり得るだろう。アルミナ中の最適量のナトリウムの存在は、アルカリ元素(1種または複数種)の導入と組み合わされて、それ故に、相乗効果を引き起こし、これは、高い吸着容量および吸着/脱着のサイクルの間に経時的により安定であるという性能に反映される。
【0018】
さらに、本発明による吸着剤の再生は、再生ガスに加水分解剤を加える必要性なしで行われ得る。
【0019】
変形例によると、アルカリ元素は、ナトリウムおよびカリウムから選択される。
【0020】
変形例によると、吸着剤の全重量に対するアルカリ元素の含有率は、前記元素の重量で1〜60%である。
【0021】
変形例によると、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前のアルミナ担体中のNa
2O相当として表されるナトリウム含有率は、担体の全重量に対して1500〜3500重量ppmである。
【0022】
変形例によると、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、アルミナ担体の全細孔容積は0.3〜1cm
3・g
−1であり、比表面積は50〜450m
2・g
−1である。
【0023】
変形例によると、本発明による吸着剤は、カリウムと、アルミナ担体とによって構成され、このアルミナ担体のナトリウム含有率は、カリウムの導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1500〜3500重量ppmである。
【0024】
本発明はまた、本発明による吸着剤の調製方法であって、以下の工程:
a) 少なくとも1種のアルカリ前駆体を含有する水溶液を調製する工程、
b) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものに、工程a)の終わりに得られた水溶液を含浸させる工程、
c) 工程b)に由来する含浸済み担体を水飽和閉鎖容器中で放置して成熟させる工程、
d) 工程c)に由来する固体を乾燥させる工程
を含む、方法に関する。
【0025】
別の変形例によると、吸着剤の調製方法は、以下の工程:
a’) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものと少なくとも1種のアルカリ前駆体の粉末とを混合する工程、
b’) 場合による、工程a’)の終わりに得られた混合物を、2〜100μmであるグラニュロメトリにすり砕く工程、
c’) 水の存在下に工程b’)に由来する混合物を成形して材料を得る工程、
d’) 工程c’)に由来する成形済み材料を乾燥させる工程
を含む。
【0026】
別の変形例によると、吸着剤の調製方法は、以下の工程:
a”) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmであるものと、少なくとも1種のアルカリ前駆体を含む溶液とを混合して、ペースト状物を得る工程、
b”) 工程a”)において得られたペースト状物を成形する工程、
c”) 工程b”)に由来する成形済みペースト状物を乾燥させる工程
を含む。
【0027】
変形例によると、上記の3種の調製方法において、空気下の乾燥したまたは湿った雰囲気中の焼成の工程が、乾燥工程の終わりに行われる。
【0028】
本発明はまた、少なくとも1種の酸性分子を含有する炭化水素流から酸性分子を除去する方法であって、この炭化水素流は、吸着工程の間に、本発明による吸着剤または本発明による調製方法の一つによって調製された吸着剤と接触させられる、方法に関する。
【0029】
好ましい変形例によると、除去されるべき酸性分子は、COSおよび/またはCO
2である。
【0030】
変形例によると、吸着工程が実施される際の温度は−50〜100℃であり、その際の絶対圧力は0.01〜5MPaであり、その際の毎時空間速度は50〜50000h
−1である。
【0031】
変形例によると、一旦、吸着剤が少なくとも部分的に酸性分子により飽和したところで吸着剤の再生の工程が行われる。
【0032】
変形例によると、再生工程は、少なくとも部分的に酸性分子により飽和した吸着剤を、気体または液体と接触させることによって行われ、その際の温度は20〜500℃であり、その際の絶対圧力は0.01〜5MPaであり、その際の毎時空間速度は50〜50000h
−1である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、アルミナ担体と、少なくとも1種のアルカリ元素とを含む吸着剤であって、前記吸着剤は、ナトリウムとは同一のまたは異なる少なくとも1種のアルカリ元素を、アルミナ担体上に導入することによって得られ、該アルミナ担体のナトリウム含有率は、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、吸着剤に関する。
【0034】
本発明による吸着剤は、ナトリウムと同一または異なる少なくとも1種のアルカリ元素を、アルミナ上に導入されて含み、アルミナ自体が、所定の含有率のナトリウムを有する。導入されるアルカリ元素は、アルミナ担体をより塩基性にする能力のため、第IA族の元素から選択される。好ましくは、アルカリ元素は、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)から選択される。特に好ましくは、アルカリ元素はカリウムである。実際に、本出願人は、アルカリ元素としてカリウムが用いられる場合に吸着剤の性能が一層より改善されることに留意した。
【0035】
好ましくは、吸着剤の全重量に対するアルカリ元素の含有率は前記元素の重量で1〜60%、好ましくは2〜40重量%、非常に好ましくは2〜20重量%、さらには2〜15重量%、あるいは4〜15重量%である。アルカリ元素の含有率は、原子吸収分光法である、John Lynchの連携の下に記述された「Physicochemical analysis of industrial catalysts - Practical manual for characterization」、Editions Technip 2001, pages 31-46に記載された方法によって測定される。
【0036】
本発明による吸着剤はまた、アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものを含む。本明細書において言及されるナトリウムを含有するアルミナ担体の特徴は、アルカリ元素(1種または複数種)が担体に導入される前の担体の特徴に相当する。
【0037】
アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前の、Na
2O相当として表される前記アルミナ担体のナトリウム含有率は、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである。好ましくは、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前の、Na
2O相当として表される前記アルミナ担体のナトリウム含有率は、1250〜4000ppm、特に好ましくは1500〜3500ppmである。アルカリ元素の含有率は、原子吸収分光法である、上記の著作において記載された方法によって測定される。
【0038】
任意の理論に結び付けられることを望むことなく、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前のアルミナ中に所定含有率のナトリウムが存在することは、アルミナの表面欠陥を満たしかつ硫黄を含有する酸性分子の吸着の場合に元素硫黄の形成を防止することを可能にするだろう。この硫黄は、吸着剤の表面上の酸ガスの吸着のためのサイトの失活の源である。
【0039】
アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前のアルミナ中の不十分な含有率のナトリウム、すなわち、担体の全重量に対して1000ppm未満の含有率のナトリウムにより、吸着容量および吸着/再生のサイクルの間に経時的より安定であるという性能における向上を観察することは可能とならない。したがって、不十分な含有率は、アルミナの表面欠陥を満たすことを許容しないようである。
【0040】
同様に、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前のアルミナ中の過剰な含有率のナトリウム、すなわち、Na
2O相当として表される、担体の全重量に対して5000重量ppm超の含有率のナトリウムにより、吸着容量および吸着/再生のサイクルの間に経時的により安定であるという性能における向上を観察することは可能とならない。
【0041】
アルミナ担体の全細孔容積は、有利には0.3〜1cm
3・g
−1、好ましくは0.4〜0.7cm
3・g
−1である。全細孔容積は、水銀ポロシメトリによって、規格ASTM D4284に従い、濡れ角140°を用いて、著書Rouquerol F.; Rouquerol J.; Singh K. "Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, methodology and applications", Academic Press, 1999において記載されるように、例えば、モデルAutopore II(登録商標)の商標Micromeritics(登録商標)により測定される。
【0042】
アルミナ担体の比表面積は、有利には50〜450m
2・g
−1、好ましくは100〜400m
2・g
−1、より好ましくは150〜370m
2・g
−1、一層より好ましくは200〜350m
2・g
−1である。比表面積は、本発明では、規格ASTM D3663に従うBET法である、上記と同一著書に記載されている方法によって決定される。
【0043】
好ましくは、前記アルミナ担体は、遷移アルミナタイプ、例えば、カイ、ガンマ、デルタ、シータ、ローまたはエータのアルミナの結晶学的構造を有し、これらは単独でまたは混合物で用いられる。より好ましくは、アルミナは、カイ、ガンマまたはデルタの遷移アルミナであり、単独でまたは混合物で用いられる。結晶学的相は、一般的に、X線回折によって得られる回折パターンから得られる。
【0044】
好ましくは、本発明による吸着剤は、少なくとも1種のアルカリ元素と、アルミナ担体とによって構成され、このアルミナ担体のナトリウム含有率は、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである。特に好ましくは、本発明による吸着剤は、カリウムと、アルミナ担体とによって構成され、このアルミナ担体のナトリウム含有率は、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである。一層より好ましくは、本発明による吸着剤は、カリウムと、アルミナ担体とによって構成され、このアルミナ担体のナトリウム含有率は、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1500〜3500重量ppmである。
【0045】
アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものは、当業者に知られている種々の方法によって、例えば、下記に記載される方法によって合成され得る。
【0046】
担体の合成の第1の方法によると、例えば「バイヤー」法と一般的に呼ばれる方法に由来する水酸化アルミニウムタイプ(Al(OH)
3)のアルミニウムの前駆体(ハイドラーギライトまたはギブサイトとも呼ばれる)の急速脱水が行われる。次いで、成形が行われ、これは、例えば造粒により行われ、次いで、水熱処理および最終的な焼成が行われ、これにより、アルミナが製造されるに至る。この方法は、特に、文献P. Euzen, P. Raybaud, X. Krokidis, H. Toulhoat, J.L. Le Loarer, J.P. Jolivet, C. Froidefond, Alumina, in Handbook of Porous Solids, Editors F. Schuth, K.S.W. Sing, J. Weitkamp, Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002, pp. 1591-1677において詳細に記載されている。この方法により、「フラッシュアルミナ」と一般に呼ばれるアルミナを製造することが可能となる。
【0047】
担体の合成の第2の方法によると、ガンマアルミニウムオキシ(ヒドロキシド)(AlO(OH))タイプ(ベーマイトとも呼ばれる)の高い値の比表面積150〜600m
2/gを有する前駆体によって構成されるゲルを得るための方法が実施される。次いで、このゲルは、例えば、混合−押出によって成形される。次いで、一連の熱処理または水熱処理が生成物について行われ、アルミナが製造されるに至る。ベーマイトゲルは、例えば、pH変化または当業者に知られている任意の他の方法によって誘導される、塩基性および/または酸性のアルミニウム塩の溶液の沈殿によって得られ得る。この方法は、特に、上記と同一の著作において記載されている。この方法により、「アルミナゲル」と一般に呼ばれるアルミナを製造することが可能になる。
【0048】
アルミナ担体中に存在するナトリウムは、一般的に、アルミナの合成中またはその後に導入されるが、常時、アルカリ元素(1種または複数種)の導入の前である。より特定的には、担体中に存在するナトリウムは、上記のアルミナの調製のための2方法のアルミナ前駆体中、すなわち、水酸化アルミニウムタイプ(Al(OH)
3)の前駆体中、または、ガンマ−アルミニウムオキシ(ヒドロキシド)タイプ(AlO(OH))の前駆体中に既に存在し得る。アルミナ担体中に存在するナトリウムはまた、担体を形成する間、例えば、フラッシュアルミナの合成における造粒工程またはアルミナゲルの合成における混合−押出の工程の間に、さらには、アルミナ前駆体の含浸によって、所望量で担体に導入され得る。
【0049】
好ましくは、本発明による吸着剤のアルミナ担体の合成の第1の方法が実施される。三酸化物タイプの前駆体(フラッシュアルミナ)の急速脱水によって調製されるアルミナが、一般に、アルミナゲルから調製されたアルミナより高いナトリウム含有率を有することが実際に知られている。
【0050】
アルミナ担体、したがって、本発明による吸着剤は、複数の要素の形態であり得、各要素は、ビーズ状、円筒状、多葉状の押出物(例えば、三葉または四葉)、車輪状、中空円筒状または当業者によって用いられる任意の他の幾何学的形状の形態を有する。吸着剤を構成する要素のそれぞれは、本発明による吸着剤の特徴に適合する。より好ましくは、アルミナ担体、したがって、本発明による吸着剤は、0.4〜100mm、好ましくは0.5〜50mm、より好ましくは0.5〜10mmの径を有する複数のビーズの形態にある。
【0051】
(吸着剤の調製方法)
本発明はまた、本発明による吸着剤の調製方法に関する。本発明による吸着剤は、当業者に知られている合成ルートによる上記の多孔質担体上にアルカリ元素を沈着させること、例えば、乾式または湿式の含浸によって、共造粒によって、または、共混合によって調製され得る。
【0052】
第1の変形例によると、本発明による吸着剤の調製方法は、以下の工程:
a) 少なくとも1種のアルカリ前駆体を含有する水溶液を調製する工程、
b) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものに、工程a)の終わりに得られた水溶液を含浸させる工程、
c) 工程b)に由来する含浸済みの担体を水飽和閉鎖容器中に放置して成熟させる工程、
d) 工程c)に由来する固体を乾燥させる工程
を含む。
【0053】
本方法の変形例によると、乾燥の後に、乾燥空気または湿った空気中の焼成の工程e)が行われ得る。
【0054】
調製の方法の第1の変形例の工程a)によると、少なくとも1種のアルカリ前駆体を含有する水溶液が調製される。
【0055】
アルカリ元素(1種または複数種)の前駆体は、あらゆる水溶性アルカリ塩であり得る;好ましくは、アルカリ元素の前駆体は、アルカリ元素の水酸化物、硝酸塩および炭酸塩から選択される。非常に好ましくは、アルカリ元素(1種または複数種)の前駆体は、対応する水酸化物である。アルカリ元素がナトリウムである場合、その前駆体は、好ましくはソーダ(水酸化ナトリウムNaOH)である;アルカリ元素がカリウムである場合、その前駆体は、好ましくはカリ(水酸化カリウムKOH)である。
【0056】
溶液に導入されるアルカリ元素(1種または複数種)の量は、吸着剤の全重量に対するアルカリ元素の全含有率が前記元素の重量で1〜60%、好ましくは2〜40重量%、非常に好ましくは2〜20重量%、さらには2〜15重量%、または5〜15重量%になるように選択される。
【0057】
調製方法の第1の変形例の工程b)によると、アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものは、工程a)の終わりに得られた水溶液を含浸させられる。
【0058】
アルカリ元素(1種または複数種)の含浸は、当業者に知られている全ての方法、特に、乾式含浸、すなわち、含浸溶液の容積が、担体の水吸収の容積、すなわち、固体のアクセス可能な細孔容積に正確に相当する含浸によって行われ得る。好ましくは、アルカリ元素(1種または複数種)は、アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、含浸の前に、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、もの上へのそれらの関連する前駆体の乾式含浸によって沈着させられる。
【0059】
含浸は、単一回の含浸工程においてなされ得る。含浸はまた、有利には、少なくとも2サイクルの含浸において行われ得る。この場合、各含浸の後、有利には、工程c)、d)およびe)のために下記に記載される操作条件下に成熟、乾燥、および場合による焼成が行われる。
【0060】
調製方法の第1の変形例の工程c)によると、工程b)に由来する含浸済み担体は、水飽和閉鎖容器中で放置され、成熟させられる。
【0061】
含浸済み担体の成熟工程c)は、水飽和閉鎖容器において行われ、好ましくは、その際の温度は、20〜60℃であり、そのための時間は、好ましくは、0.5〜8時間である。成熟工程c)は、一般的には、周囲温度で行われる。
【0062】
調製方法の第1の変形例の工程d)によると、工程c)に由来する固体が乾燥させられる。
【0063】
乾燥工程d)は、空気中で行われ得、その際の温度は、70〜250℃であり得るが、好ましくは80〜200℃であり、一般的には、好ましくは1〜24時間である時間にわたって行われる。
【0064】
本発明による方法の第
1変形例の変形例において、吸着剤の調製は、工程d)の終わりに、さらなる工程e)を含み、この工程e)は、空気中、乾燥したまたは湿った雰囲気中の焼成を含む。焼成は、一般的には、空気中、典型的には280〜550℃である温度で、乾燥したまたは湿った雰囲気中、好ましくは、300〜500℃の温度、特に好ましくは350〜450℃の温度で行われる。焼成は、アルカリ金属のアルミン酸塩の形成が観察されないような温度(すなわち、比較的低い温度)で行われる。好ましくは、工程e)において、工程d)に由来する固体は、25℃における相対湿度が10〜80%、好ましくは15〜50%である空気中で焼成される。
【0065】
第2の変形例によると、本発明による吸着剤の調製方法は、共造粒によって行われ得る。共造粒は、粉末の混合物を成形することからなる。この変形例によると、本発明による吸着剤の調製方法は、以下の工程:
a’) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものを、少なくとも1種のアルカリ前駆体の粉末と混合する工程、
b’) 場合による、工程a’)の終わりに得られた混合物を、2〜100μnのグラニュロメトリにすり砕く工程、
c’) 水の存在下に工程b’)に由来する混合物を成形して、材料を得る工程、
d’) 工程c’)に由来する成形済み材料を乾燥させる工程
を含む。
【0066】
工程a’)において粉末として用いられるアルカリ前駆体は、含浸による調製方法の工程a)のために記載されたアルカリ前駆体の一つであり得る。それは、工程a)において述べられた量で導入される。
【0067】
成形工程c’)は、当業者に知られているあらゆる技術、例えば、押出、ペレット造粒、油滴法(滴下)または回転板による造粒によって成形する方法によって行われる。好ましくは、成形は、回転板による造粒によって行われる。
【0068】
乾燥工程d’)は、含浸による調製方法の工程d)のために記載された操作条件下に行われる。
【0069】
調製方法の第2の変形例(共造粒)の変形例によると、乾燥の後に、焼成の工程e’)が行われ得、この工程e’)は、乾燥したまたは湿った空気中、含浸による調製方法の工程e)のために記載された条件下に行われる。
【0070】
第3の変形例によると、本発明による吸着剤の調製方法は、共混合によって行われ得る。この変形例によると、本発明による吸着剤の調製方法は、以下の工程:
a”) アルミナ担体であって、ナトリウム含有率が、Na
2O相当として表されて、担体の全重量に対して1000〜5000重量ppmである、ものを、少なくとも1種のアルカリ前駆体を含む溶液と混合して、ペースト状物を得る工程、
b”) 工程a”)において得られたペースト状物を成形する工程、
c”) 工程b”)に由来する成形済みペースト状物を乾燥させる工程
を含む。
【0071】
工程a”)における溶液において用いられるアルカリ前駆体は、含浸による調製方法の工程a)のために記載されたアルカリ前駆体の一つであり得る。それは、工程a)において述べられた量で導入される。
【0072】
成形工程b”)は、当業者に知られている任意の技術、例えば、押出、ペレット造粒、油滴法(滴下)または回転板を用いる造粒による成形方法によって行われる。好ましくは、成形は、押出によって行われる。
【0073】
乾燥工程c”)は、含浸による調製方法の工程d)のために記載された操作条件下に行われる。
【0074】
調製方法の第3の変形例(共混合)の変形例によると、乾燥の後に、焼成工程d”)が行われ得る。この焼成工程d”)は、乾燥したまたは湿った空気中、含浸による調製方法の工程e)のために記載されたのと同様の条件下に行われる。
【0075】
(酸性分子の除去方法)
本発明はまた、少なくとも1種の酸性分子を含有する炭化水素流から酸性分子を除去する方法であって、該炭化水素流は、吸着工程の間に、本発明による吸着剤または本発明による調製方法の一つによって調製された吸着剤と接触させられる、方法に関する。
【0076】
本発明による吸着剤は、液体または気体の流れの中に含有されるCOSおよび/またはCO
2を、特に低温で捕捉するために特に適している。
【0077】
吸着剤、例えば、反応器内に配置される固定床の形態にあるものが、処理されるべき液体または気体の流れと接触させられる。
【0078】
工業的に、気体または液体の炭化水素の流れから酸性分子を除去することは、吸着剤を充填された固定床中に処理されるべき流れを流通させることによって行われる。除去されるべき不純物は、ここでは特に、COSおよび/またはCO
2であり、この不純物は、吸着剤の表面内にまたは表面上に保持され、排気された流れは、次いで、精製される。
【0079】
好ましくは、除去されるべき酸性分子は、COSおよび/またはCO
2である。
【0080】
COSを含有する炭化水素流は、液体または気体の流れであり得るが、好ましくは液体流である。本発明による方法において処理される炭化水素流は、液体または気体の、飽和のまたは不飽和の、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素を含有する流れであり得る。液体または気体の流れは、例えば、接触分解に由来するオレフィン留分、例えば、プロピレン留分であり得る。好ましくは、炭化水素流は、液体プロピレンの流れである。
【0081】
本発明により処理されるべき炭化水素流は、COSを可変の割合で含有する。例えば、処理されるべき炭化水素流、特に、液体プロピレンの流れは、10〜200重量ppmのCOSを含有する。
【0082】
CO
2を含有する炭化水素流は、液体または気体の流れであり得るが、好ましくは気体流である。本発明による方法において処理される炭化水素流は、液体または気体の、飽和のまたは不飽和の、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素を含有する流れであり得る。液体または気体の流れは、例えば、接触分解に由来するオレフィン留分、例えば、エチレン留分であり得る。それはまた、アルコールの脱水、特にエタノールまたはブタノールの脱水の方法に由来し得る。好ましくは、炭化水素流は、気体のエチレンまたは液体のブテンの流れである。
【0083】
CO
2含有率は、一般的に、炭化水素流中、CO
2 10〜500モルppmである。
【0084】
存在するならば、H
2Sは、少なくとも部分的に、本発明による吸着剤によって吸着されることになる。
【0085】
炭化水素流と本発明による吸着剤との接触は、一般的には−50〜100℃の温度で行われ得るが、好ましくは0〜70℃、非常に好ましくは20〜50℃であり、その際の絶対圧力は、例えば0.01〜20MPa(0.1〜200バール)、好ましくは0.05〜10MPa(0.5〜100バール)、非常に好ましくは0.1〜5MPa(1〜50バール)である。
【0086】
有利には、炭化水素流が吸着剤と接触させられる時に、本発明による除去方法において実行されるHSV(hourly space velocity:毎時空間速度、すなわち、吸着剤の容積当たりおよび時間当たりの流出物の容積)は、50〜50,000h
−1である。
【0087】
炭化水素流は、場合によっては、水を含有し得る。好ましくは、炭化水素流が水を含有するならば、それは、当業者に知られている任意の方法によって事前に乾燥させられる。好ましくは、炭化水素流は、ゼオライトの床上、例えば、ナトリウムまたはカリウムにより交換されたLTAタイプのゼオライト上の通過によって乾燥させられる。
【0088】
吸着剤との接触により、有利には、処理されるべき流れ中のCOSおよび/またはCO
2を捕捉すること、およびCOSおよび/またはCO
2の含有率が当初流れ中の含有率に対して低減した流れを得るか、さらには、COSおよび/またはCO
2を完全に除去することが可能となる。
【0089】
有利には、本発明による吸着剤による処理の前の炭化水素流とその処理の後に得られた炭化水素流との間のCOSおよび/またはCO
2の全含有率における減少は、低くとも90%、好ましくは低くとも95%、より好ましくは低くとも99%を示し得る。
【0090】
変形例によると、吸着剤の再生の工程が、一旦、吸着剤が少なくとも部分的に酸性分子、特にCOSおよび/またはCO
2により飽和したところで行われる。
【0091】
少なくとも部分的に酸性分子、特にCOSおよび/CO
2により飽和した吸着剤は、気体または液体の通過によって再生される。この気体は、空気、窒素、気体状炭化水素であり得、乾燥しているかまたは湿っている。この液体は、炭化水素であり得る。
【0092】
再生の気体または液体と、本発明による吸着剤との接触は、一般的には20〜500℃の温度で行われ得るが、好ましくは50〜350℃、非常に好ましくは100〜300℃であり、その際の絶対圧力は、例えば、0.01〜20MPa(0.1〜200バール)、好ましくは0.05〜10MPa(0.5〜100バール)、非常に好ましくは0.1〜5MPa(1〜50バール)である。
【0093】
有利には、再生の気体または液体が吸着剤と接触させられる時に、本発明による再生段階において実行されるHSV(hourly space velocity:毎時空間速度、すなわち、吸着剤の容積当たりおよび時間当たりの流出物の容積)は、50〜50,000h
−1である。この再生工程は、好ましくは、吸着工程の間の炭化水素流の流通に対して向流で行われる。
【0094】
再生工程は、一旦、吸着剤が完全に飽和するか部分的に飽和したところで実施され得る。好ましくは、再生工程は、出発流出物中に酸性分子が検出されて可及的に早期に実施される。
【0095】
再生工程は、連続的にまたは本方法が平行した2つの吸着の床を提供するならば吸着工程と並行して実施され得る。好ましくは、吸着剤は、平行した2つの床に配置され、一つの吸着剤の再生が実施される間に、別の吸着剤の吸着工程が行われる。
【0096】
下記に示される実施例は、本発明の操作および利点を例証する。
【0097】
(実施例A:本発明に合致する吸着剤A
1の調製)
吸着剤A
1は、造粒によって調製されるフラッシュアルミナ(flash alumina)タイプの担体に、NaOHの溶液を乾式含浸させることによって調製された。乾式含浸は、担体を、その利用可能な細孔容積に正確に相当する容積の含浸溶液と接触させることからなる。
【0098】
選択された担体の細孔容積は0.5mL/gであり、比表面積は341m
2/gであり、ナトリウム含有率は、含浸の前にNa
2O相当として表されて2610重量ppmである。比表面積は、本発明では、規格ASTM D3663に従うBET法によって決定され、その方法は、同一著作であるRouquerol F.; Rouquerol J.; Singh K. "Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, methodology and applications", Academic Press, 1999に記載されている。全細孔容積は、規格ASTM D4284に従う水銀ポロシメトリによって、濡れ角140°により、上記の著作において記載されたようにして、例えば、上記のモデルAutopore III(登録商標)のMicrometics(登録商標)によって測定される。含浸前後のNa
2O含有率は、原子吸収分光法によって、著作J. Lynch "Physicochemical analysis of industrial catalysts −Practical manual for characterization", Editions Technip, 2001に記載された方法により測定される。
【0099】
10gの溶液から出発して、Na
2O相当として表される6.5重量%のナトリウムにおける含浸の後に吸着剤A
1を得るために、その手順は以下の通りである:
a) NaOH8.84gを水50gに溶解させることにより溶液50mLを調製すること、
b) 工程a)において調製されたソーダ溶液5mLを液滴含浸(dropwise impregnation)させること;該溶液は、ビュレットを用いて回転ボウル造粒機内に置かれたアルミナ担体上に注がれる、
c) 含浸済みの担体を水飽和閉鎖容器中、20℃で3時間にわたって成熟させること、
d) 固体を90℃で3時間にわたって乾燥させること、
e) 空気下に350℃で1時間にわたって固体を焼成すること。
【0100】
(実施例B:本発明に合致する吸着剤A
2の調製)
吸着剤A
2は、実施例Aにおける
のと同一の担体にKOHの溶液を乾式含浸させることによって調製された。
【0101】
溶液10gから出発して、K
2O相当として表される6.5重量%のカリウムにおける含浸の後に吸着剤A
2を得るために、その手順は以下の通りである:
a) KOH11.75gを水50gに溶解させることによって溶液50mLを調製すること、
b) 工程a)において調製されたカリ溶液5mLを液滴含浸させること;この溶液は、ビュレットを用いて、回転ボウル造粒機内に置かれたアルミナ担体上に注がれる、
c) 含浸済みの担体を、水飽和閉鎖容器中、20℃で3時間にわたって成熟させること、
d) 固体を90℃で3時間にわたって乾燥させること、
e) 空気下に350℃で1時間にわたって固体を焼成すること。
【0102】
(実施例C:本発明に合致する吸着剤A
3の調製)
吸着剤A
3は、実施例Aにおけるのと同一の担体と炭酸カリウムとの共造粒によって調製された。
【0103】
アルミナおよび炭酸カリウムの粉末から出発して、K
2O相当として表される6.5重量%のカリウムにおける吸着剤A
3を得るために、その手順は以下の通りである:
a) 担体9.44gとK
2CO
34.68gとを均質混合すること、
b) 50〜100μmに混合物をすり砕くこと、
c) 噴霧された水の存在下に回転板造粒機において造粒すること、
d) 90℃で3時間にわたって共造粒済みの産物を乾燥させること、
e) 空気下に350℃で1時間にわたって共造粒済みの産物を焼成すること。
【0104】
(実施例D:吸着剤A
4(比較例)の調製)
吸着剤A
4は、造粒によって調製されたフラッシュアルミナタイプの担体にNaOHの溶液を乾式含浸させることによって調製された。
【0105】
選択された担体の細孔容積は0.6mL/gであり、比表面積は313m
2/gであり、ナトリウム含有率は、含浸の前に、Na
2O相当として表されて760重量ppmである。
【0106】
溶液10gから出発して、Na
2O相当として表される6.5重量%のナトリウムにおける含浸後に吸着剤A
4を得るために、その手順は以下の通りである:
a) NaOH7.52gを水50gに溶解させることにより溶液50mLを調製すること、
b) 工程a)において調製されたソーダ溶液6mLを液滴含浸させること;この溶液は、ビュレットを用いて、回転ボウル造粒機内に置かれたアルミナ担体上に注がれる、
c) 含浸済み担体を水飽和閉鎖容器において20℃で3時間にわたって成熟させること、
d) 90℃で3時間にわたって固体を乾燥させること、
e) 空気下に350℃で1時間にわたって固体を焼成すること。
【0107】
(実施例E:吸着剤A
5(比較例)の調製)
吸着剤A
5は、混合−押出によって調製されたアルミナゲルタイプの担体にNaOHの溶液を乾式含浸させることによって調製された。
【0108】
選択された担体の細孔容積は、0.7mL/gであり、比表面積は282m
2/gであり、ナトリウム含有率は、含浸の前に、Na
2O相当として表されて570重量ppmである。
【0109】
溶液10gから出発して、Na
2O相当として表されて6.5重量%のナトリウムにおける含浸の後に吸着剤A
5を得るために、その手順は以下の通りである:
a) NaOH6.44gを水50gに溶解させることによって溶液50mLを調製すること、
b) 工程a)において調製されたソーダ溶液7mLを液滴含浸させること、この溶液は、ビュレットを用いて、回転ボウル造粒機内に置かれたアルミナ担体上に注がれる、
c) 含浸済みの担体を、水飽和閉鎖容器中、20℃で3時間にわたって成熟させること、
d) 90℃で3時間にわたって固体を乾燥させること、
e) 空気下、350℃で1時間にわたって固体を焼成すること。
【0110】
(実施例F:吸着剤A
6(比較例)の調製)
吸着剤A
6は、造粒によって調製されたフラッシュアルミナタイプの担体にNaOHの溶液を乾式含浸させることによって調製された。
【0111】
選択された担体の細孔容積は0.35mL/gであり、比表面積は267m
2/gであり、ナトリウム含有率は、含浸の前に、Na
2O相当として表されて6340重量ppmである。
【0112】
溶液10gから出発して、Na
2O相当として表される6.5重量%のナトリウムにおける含浸の後に吸着剤A
6を得るために、その手順は以下の通りである:
a) NaOH12.79gを水50gに溶解させることによって溶液50mLを調製すること、
b) 工程a)において調製されたソーダ溶液3.5mLを液滴含浸させること:この溶液は、ビュレットを用いて、回転ボウル造粒機内に置かれたアルミナ担体上に注がれる、
c) 水飽和閉鎖容器において20℃で3時間にわたって含浸済みの担体を成熟させること、
d) 90℃で3時間にわたって固体を乾燥させること、
e) 空気下、350℃で1時間にわたって固体を焼成すること。
【0113】
(実施例G:種々の吸着剤A
1、A
2、A
3、A
4、A
5およびA
6のCOS吸着収容能力の試験)
上記のようにして調製された吸着剤のCOS吸着性能は、1.5cm
3の容積を有する固定床反応器において試験された。
【0114】
第1に、固体は、10NL/hの窒素下に12時間にわたって290℃で活性にされる。次いで、50重量ppmのCOSを含有するプロピレンの液体流が、50g/hの流量で吸着剤の床中に、50℃の温度および2MPaの圧力で通される。COS濃度は、反応器出口において、硫黄特定検出器を備えたクロマトグラム(PFPD)によって測定される。これらの操作条件は、吸着剤の各サンプルに、サンプルが飽和するまで適用される。吸着剤は、反応器出口におけるCOS濃度が供給原料のCOS濃度に等しくなった時に飽和させられていると考えられる。吸着剤は、次いで、窒素流(5NL/h)下に290℃で先行工程において吸着されたCOSが脱着されるように約10時間にわたって加熱される。一旦再生されたところで、吸着剤は、再度、50重量ppmのCOSを含有する液体プロピレンの流れに、上記と同じ条件下に曝される。各吸着剤について、4サイクルの吸着/脱着が連続的に行われる。
【0115】
各サイクルについて、各吸着剤上に化学吸着されるCOSの量は、全体的な試験期間にわたる反応器入口と反応器出口との間のCOSに関する物質収支を行うことによって評価され得る。種々の吸着剤のCOS飽和における相対的な収容能力(q
sat:吸着剤100g当たりのCOSの重量(g))が表1に示される。
【0117】
これらの実施例により、第2サイクルでは、第1サイクルと比較して、調製された吸着剤は全て、少量のCOS吸着収容能力を喪失することが示され、これは、最も強い吸着サイト上の一部のCOSの不可逆的吸着に帰せられる。その後は、COS吸着性能は、本発明により調製された吸着剤についてのみ安定になる。ナトリウムにより不十分に安定にされた担体から調製された2つの比較例の吸着剤について、吸着剤の収容能力は、第2のサイクルの後の吸着/再生のサイクルの間に減少し続ける。高すぎるナトリウム含有率(5000重量ppm超)を有する比較例の吸着剤の場合、その性能は、第2のサイクルを超えて安定しているが、非常に明確により乏しい。これは、固体の表面上の活性相のより乏しい分散に帰せられ、これは、吸着サイトのより乏しい接近可能性つながる。
【0118】
(実施例H:種々の吸着剤A
1、A
2、A
3、A
4、A
5およびA
6のCO
2吸着収容能力の試験)
上記のようにして調製された吸着剤のCO
2吸着性能が、1.5cm
3の容積を有する固定床反応器において試験された。
【0119】
第1に、固体は、12時間にわたって10NL/hの窒素下に290℃で活性にされた。次いで、200モルppmのCO
2を含有するエチレンの気体状の流れが、吸着剤の床中に、5NL/hの流量、50℃の温度および0.1MPaの圧力で通される。CO
2の濃度は、反応器出口において、カセトメータを備えたクロマトグラムによって測定される。これらの操作条件は、吸着剤の各サンプルに、吸着剤が飽和するまで適用される。吸着剤は、反応器出口におけるCO
2濃度が供給原料のCO
2濃度に等しくなった時に、飽和していると考えられる。吸着剤は、次いで、先行工程において吸着されたCO
2を脱着するように窒素流(5NL/h)下に290℃で約10時間にわたって加熱される。一旦再生されたところで、吸着剤は、再度、上記と同一の条件下に200モルppmのCO
2を含有する気体状のエチレンの流れに曝される。各吸着剤について、4サイクルの吸着/脱着が連続的に行われる。
【0120】
各サイクルについて、各吸着剤上に化学吸着されるCO
2の量は、全体的な試験期間にわたる反応器入口と反応器出口との間のCO
2に関する物質収支を行うことによって評価され得る。捕捉された重量における種々のサンプルのCO
2による飽和における相対的な収容能力(q
sat:吸着剤100g当たりのCO
2の重量(g))は、表2に示される。
【0122】
これらの実施例により、本発明による吸着剤は、最も高く安定化した性能を有するものであることが示される。吸着剤A
4およびA
5は、含浸の前に十分なナトリウムを有しておらず、これらは、サイクルの間に収容能力を喪失する。吸着剤A
6においては、ナトリウム含有率は高すぎ(5000重量ppm超)、このものは、安定ではあるが、より明確に乏しい性能を有している。これは、固体の表面上の活性相のより乏しい分散に帰せられ、吸着サイトのより乏しい接近可能性につながる。