特許第6814812号(P6814812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814812
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】物質を計量するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 13/00 20060101AFI20210107BHJP
   G01G 17/06 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   G01G13/00 Q
   G01G17/06
【請求項の数】27
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-543630(P2018-543630)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公表番号】特表2019-507872(P2019-507872A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】CH2017000020
(87)【国際公開番号】WO2017152293
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2020年2月13日
(31)【優先権主張番号】287/16
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】517159275
【氏名又は名称】ケムスピード・テクノロジーズ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Chemspeed Technologies AG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ギュラー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・シャピュイ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・シンドラー
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/075201(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第201215496(CN,Y)
【文献】 中国実用新案第203595669(CN,U)
【文献】 特許第5202339(JP,B2)
【文献】 特許第3140099(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0177134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質(S)をピックアップして解放するための計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を有する、前記物質をターゲット容器(Z)に計量供給する装置であって、
前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)は、その表面に計量すべき前記物質(S)が付着可能な接着体として構成され、
前記装置は、前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を持ち上げ、保持し、解放することが可能な把持ツール(30)を有し、
前記装置は、計量すべき前記物質が前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に付着するように該計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に計量すべき前記物質を供給し、前記把持ツール(30)によって、前記物質が付着した前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を、前記ターゲット容器(Z)内に解放するか、又は、付着した前記物質が前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)から分離するまで該ターゲット容器(Z)内に浸すように構成され、
前記装置は、前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に付着している前記物質(S)の量を特定するための計量器(50,70)を有し、
前記装置は、前記計量器(50,70)及び前記把持ツール(30)のためのコントローラ(100)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記接着体(40,41,42,43,44,45,46,47,49)は、好ましくはシリンダ状のロッドで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記接着体(42,43)は、前記把持ツール(30)によって保持されることを意図していない端部において、好ましくは丸みを帯びるか又は一点に向かって先細りとされることで、液滴形成を妨げるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記接着体(44)は、好ましくは一点に向かって先細りとされた円錐状のロッドで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記接着体(45,46,47)は、前記把持ツール(30)によって保持されることを意図していない端部において、接着強化表面構造を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記接着体(48)は、好ましくは球状の回転楕円体であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記接着体(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)は、0.1mm以上3mm以下の範囲内の最大直径であって、好ましくは0.1mm以上2mm以下、より好ましくは0.1mm以上1mm以下の最大直径を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記接着体(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)は、化学的に不活性の物質からなることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記接着体(40,42,43,44,45,46,47,48)は、ガラスからなることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記接着体(41,49)は、強磁性的に構成、又は、静電的若しくは電磁的に帯電可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記計量器(50)は、計量すべき前記物質(S)が引き出され得る物質容器(A)の重量を測定するように構成および配置されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記計量器(70)は、前記把持ツール(30)によって保持された前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)の重量を測定するように構成および配置されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラ(100)と協働して前記把持ツール(30)を上昇および下降させ得る昇降装置(32)を備えていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラ(100)と協働するロボットアーム(10)を備え、
該ロボットアーム(10)には、前記把持ツール(30)が取り付けられ、
前記把持ツール(30)は、前記ロボットアーム(10)によって、好ましくは3つの空間方向のいずれにも移動可能とされ、鉛直方向に延びる回転軸周りにも移動可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
複数の同一の若しくは複数の少なくともある程度相違する計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)のための、又は、計量ツール用の少なくとも1つのディスペンサのためのラック(39)を備えていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
計量すべき前記物質(S)を前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に提供するための分注ツール(35)を備えていることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
ターゲット容器(Z)内で物質を計量するための方法であって、
接着体として構成された計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を把持ツール(30)によって持ち上げるステップ(a)と、
計量すべき前記物質(S)を前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に提供するステップ(b)と、
前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に付着した前記物質(S)の量を特定するステップ(c)と、
前記物質(S)の付着量が所望量よりも大きい場合、前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を捨てるステップ(d)であって、前記物質(S)の付着量が前記所望量以下になるまで、未使用の前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を用いて、前記ステップ(a)から前記ステップ(d)までの一連のステップを繰り返すステップ(d)と、
前記物質(S)の付着量が前記所望量よりも小さい場合、計量すべき前記物質を前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に更に提供するステップ(e)であって、前記物質(S)の付着量が前記所望量に一致するまで、前記ステップ(c)から前記ステップ(e)までの一連のステップを繰り返すステップ(e)と、
前記物質(S)の付着量が前記所望量に一致する場合、前記ターゲット容器(Z)上に前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を位置付け、前記物質(S)が付着した前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を前記ターゲット容器(Z)内に降ろすか、又は、付着した前記物質が前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)から分離するまで、前記物質(S)が付着した前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を前記ターゲット容器(Z)内に浸すステップ(f)と、を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
計量すべき前記物質(S)を前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に提供する前記ステップ(b)は、
物質容器(A)上に前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を位置付けるステップ(b1)と、
前記物質容器(A)内に存在する物質(S)内に前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を浸すか又は差し込むために該計量ツールを降ろして、結果として該計量ツールに前記物質(S)を提供するステップ(b2)と、
前記物質容器(A)の外へ前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を上昇させるステップ(b3)と、を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
計量すべき前記物質(S)を前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に提供する前記ステップ(b)は、
分注ツール(35)の下側に前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)を位置付けるステップ(b1)と、
前記分注ツール(35)によって、前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)に前記物質を付けるステップ(b2)と、を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)は、まず液状の接着性物質を用いて湿らされ、続いて計量すべき前記物質(S)が提供されることを特徴とする請求項17から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複数の同一若しくは少なくともある程度相違する計量ツール(40,41,42,43,44,45,46,47,48,49)がラック(39)に格納されており、該格納された計量ツールの中から、把持ツール(30)によって持ち上げられる計量ツールが選択されることを特徴とする請求項17から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記計量ツールを持ち上げるステップ(a)に、開閉可能な把持用顎部(31)を有する把持ツール(30)が用いられることを特徴とする請求項17から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記計量ツールは、前記把持ツールによって減圧を用いて持ち上げられ、保持されることを特徴とする請求項17から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記計量ツールは、前記把持ツールによって電磁力を利用して持ち上げられ、保持されることを特徴とする請求項17から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
好ましくは計量器(90)でモニタされながら、要求される所望測定量への段階的なアプローチが行われる個々の部分的な計量動作が複数回行われることで、計量動作が実行されることを特徴とする請求項17から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ターゲット容器(Z)内で計量される物質の実際の総量は、計量器(90)によって測定されることを特徴とする請求項17から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の装置を用いて実行されることを特徴とする請求項17から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の独立項である請求項1及び請求項17の前段部に係るターゲット容器内で物質を計量するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質を計量することは、試料調製、並びに、製剤および化学反応の調製における中心的課題の1つである。特定の課題は、技術的な出費を可能な限り低く抑えつつ、計量の精度を常に可能な限り高く確保することである。この課題を解消することは、20〜50mgを超える量で実施する場合には技術的にかなり容易であるが、これらの制限値を下回る場合、正確で高精度の計量作業を実行しようとすると、非常に複雑となり、コストがかかる。特に、ミリグラム領域またはこれよりも詳細な領域(サブミリグラム領域)で計量動作が行われる場合、従来の液体または固体の計量ツールはもはや有用ではない(すなわち、正確でない)。このことは、特に多数の異なる物質を計量し、その物質またはその一部をある容器から別の容器に移動させる場合に当てはまる。
【0003】
従来の計量ツールは、例えば、ポンプ制御された計量ニードル、又は、例えばウォームギアまたはミルのようなコンベア機構を用いて固形物の粉末または粒子を計量する固体計量装置である。例えば、計量すべき液体の最小の液滴サイズ(しばしば、約10〜20mg)、及び、分割される固体の最少量(同様に10〜20mgの範囲内)を考慮すると、従来の計量ツールは、1桁から2桁のミリグラム領域ですでに不十分である。このような装置では、より少量の正確で再現可能な計量は不可能である。しかしながら、上記のツールは、例えば個々の物質を物質ライブラリから取り出す場合には原理的には適していない。なぜなら、最初に物質を押出機に導入して 単一の計量動作を行い、その後、さらなる物質について同じ動作を行うことは要領を得ない。
【0004】
国際公開第03/098170号公報には、事実上あらゆる濃度(粉末状、液体状、油状、ペースト状、樹脂状)の物質にも適したコンピュータ制御の計量装置が記載されている。一実施形態では、計量装置は、電子スケール(計量器、秤)に取り付けられたニードル充填ヘッドを備え、ニードル充填ヘッドは、ロボットアーム上に計量器と共に取り付けられ、ロボットアームによって3次元で移動可能である。ニードル充填ヘッドはニードルサポートを有し、このニードルサポートには、底部に向かって開放した小さなチューブ状の多数の計量ニードルが0.1〜5mmの異なる直径のグループに取り付けられている。物質をピックアップする(持ち上げる)ために、ロボットアームによって、計量ニードルないしチューブは、貯蔵容器内に存在するピックアップすべき物質に浸漬または挿入され、その間、チューブの直径に依存して、異なる量の物質がチューブの下端に入り、その中に止まったままになる。次いで、ニードル充填ヘッドが持ち上げられ、充填される容器の開口部の上へ案内される。ニードル充填ヘッドに設けられたプランジャは、その後、上方からチューブに選択的に挿入され、チューブ内に存在する物質はチューブから容器内に排出される。計量動作は段階的に行われる。すなわち、チューブが空になることは、より大きな直径のチューブで始まり、より小さな直径のチューブに順次移行し、この段階的アプローチの過程で所望量に達するまで継続する。各計量ステップ(チューブを空にするステップ)で容器に加えられる物質の量は、計量器によって記録され、所望量にまだ達していない場合、電子制御装置によって、更なるチューブを空にすることが段階的にもたらされる。さらに、より高い精度のさらなる計量器を提供し、該計量器上に容器を置き、該計量器を用いて、実際に計量された量を正確に記録することも可能である。
【0005】
国際公開第03/098170号公報から公知の計量装置は、異なる物質の一貫性の課題を解決するが、ミリグラム領域またはサブミリグラム領域の容量を有する物質容器に非常に小さい物質を充填するのには、適していないか又は適合性があるとしても限定的に過ぎない。その理由の1つは、そのような物質容器(バイアルとして知られているもの)は非常に小さく、通常、ラック内で互いに緊密に詰め込まれて配置され、物質は、しばしば、底部を覆わないか或いは容器の壁部に付着した状態で少量のみ存在することである。このような物質容器の開口部は、ニードル充填ヘッドのすべてのチューブを同時に収容するにはあまりにも小さいので、適切なチューブを物質容器の真上に正確に配置するために、個々の計量動作のためにニードル充填ヘッドを移動させなければならない。しかしながら、その場合、それぞれ隣接するチューブの少なくともいくつかは、ラック内の1つ以上の他の物質容器の上に位置し、これらの物質容器の汚染の危険性は非常に高くなる。充填すべき物質が抜き取られる貯蔵容器が、ニードル充填ヘッドのチューブがそれらの中に入ることができるように、ある最小サイズでなければならないという事実の結果として同様の問題が生じる。しかしながら、物質ライブラリは、しばしば、既知の計量装置の使用のためには貯蔵容器が単に小さすぎるような少量の物質を多く含む。
【0006】
さらに深刻な問題は、汚染そのものの本質的なリスクにある。物質の痕跡が物質に接触している液体または固体の計量装置の部分に残ったり付着したりすることは確実に排除できないため、問題のある部品は、別の物質で各計量作業を行う前に完全に清掃する必要がある。しかし、これは比較的多大な労力を要する。あるいは、計量ツールまたは少なくともその物質を含む部分(ニードル、液体カートリッジ、固形容器などの計量ツール)を完全に交換することももちろん可能である。しかしながら、これは同様に面倒であり、とりわけ経済的理由で望ましくない多数の計量装置および計量ツールの保管を必要とする。
【0007】
更なる問題は、このような少量の範囲の液体または粘性物質の場合、毛細管力は比較的高いと言われており、比較的タイトなシリンダであっても、液体物質はプランジャとシリンダとの間を上昇する傾向があることである。これらの部品は、使い捨て工具としては高価であり、とりわけ物質に依存して、労力的に密封されなければならない。さらに、液体物質を追い出すときには、問題となる物質の液滴よりも小さなものを放出することも困難である。
【0008】
本発明の目的は、既知の計量装置の上述した欠点を回避し、同時に、ミリグラム領域及びサブミリグラム領域の液体及び固体を計量するのに適している計量装置を提供することである。より具体的には、広範囲の物質、特に液体に適しており、極めて少量の物質でさえミリグラム以下の十分な精度で計量することができる計量装置のための経済的な解決策が規定されるべきである。これにより、特別な支出を必要とせずに、確実に汚染の問題を回避することができる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の根底にある問題は、独立請求項1に定義された物質を計量するための本発明による装置と、独立請求項17に定義された物質を計量する方法とによって解決される。本発明による計量装置および本発明による計量方法の特に有利な展開および実施形態は、それぞれの従属請求項から明らかになるであろう。
【0010】
計量装置に関して、本発明の核心は以下の通りである。物質をターゲット容器(標的容器、目標容器)内で計量するための装置は、物質をピックアップして解放(放出)するための計量ツールを含む。計量ツールは、計量すべき物質がその表面上に付着することができる接着体として構成されている。この装置は、計量ツールをピックアップし、保持し、再び解放することができる把持ツールを有する。装置は、計量される物質を計量ツールに提供するように構成され、これにより、物質は計量ツールに付着し、把持ツールを用いて、付着した物質をターゲット容器に放出するか、または付着した物質が計量ツールから離脱つまり分離するまでターゲット容器に計量ツールを浸漬する。装置はまた、計量ツールに付着した物質の量を特定するための計量器と、計量器および把持ツール用のコントローラとを有する。
【0011】
計量ツールを接着体として構成することにより、極めて少量の物質を計量することが可能である。計量ツールに付着する物質の量は、計量器を用いて決定することができる。付着物質が計量ツールから分離するまで、計量ツールがターゲット容器に浸漬される例では、計量ツールを溶液に浸漬すると、計量ツールに付着した物質が単に溶液中に溶解することができるため、物質が溶液中に放出されるときに特に有利であり得る。
【0012】
有利には、接着体はロッド、好ましくは円筒形のロッドとして構成される。非常に有利には、接着体は、把持ツールによって保持されることを意図していない端部において、液滴形成を打ち消すように構成されており、特に丸みを帯びているか、ある点まで先細りしている。これは、比較的大きな直径の場合に特に有利である。直径が非常に小さい場合には関連性が低く、自動的に提供されるが、なぜなら、液滴の接着面自体が小さいためである。接着体は、有利には、一点に向かって先細りになるロッド、特に円錐ロッドの形態で全体として構成することもできる。接着体のそのような有利な構成は、接着体の単純で経済的な製造を可能にするので、後者は一回使用に適している。使い捨て本体としての計量ツールの構成は、まず、多くの異なる濃度の物質(特に液体、さらには粉末など)の計量供給を可能にし、第2に、汚染問題を完全に排除する。なぜなら、非常に簡単な設計のため、計量ツールを経済的に製造することができ、各使用後に廃棄することができるからである。基本的な考え方は、計量ツールの一部に計量対象物質が提供され、少量の物質が計量ツールに付着したままであることである。次いで、それに付着した物質を有する計量ツールを、それが放出されるかまたは浸漬されるターゲット容器に移動させる。これはキャリブレーションが簡単である。なぜなら、同じ物質と同じ条件下では、物質で表面を提供することが再現可能であり、すなわち、統計誤差の範囲内、特に、計量される物質を含む物質容器内の同じ浸漬深さで同一であるからである。特に薄い円柱ロッドの場合、これは新しい浸漬深さに関して事前に容易に計算することができる。
【0013】
物質の接着(液体の場合の濡れ)を達成するために、接着体は、その棒状構成により、物質容器内に存在する計量されるべき物質に浸漬することができ、浸漬深さを調整することで、ロッドに付着する物質の量を制御できる。
【0014】
有利には、接着体は、把持ツールによって保持されることを意図していないその端部に、例えば溝、点、突起、孔、開口部または粗面などの接着強化表面構造(接着性向上表面構造)を有する。その結果、密着性に乏しい物質であっても接着体に接着することができる。
【0015】
接着体は、少なくとも、把持ツールによって保持されることを意図していない端部での物質忌避特性(物質反発特性)を有さないように構成することもできる。
【0016】
接着体は、有利には回転楕円体、特に球形であってもよい。球体または同様の物体は、例えば、混合動作中の混合を改善するため、または固体を粉砕するために、調合手順の他の作業ステップでツールとしてしばしば使用されるので、非常に少量の物質の添加のためにそのように成形された接着体の使用が特に有利である。
【0017】
有利には、接着体は、0.1〜3mm、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの範囲の最大直径を有する。その結果、接着体を用いて特に少量の物質を移送することができる。
【0018】
接着体は、有利には化学的に不活性な材料、特にガラスからなるが、他の材料も可能である。そのような化学的に不活性な材料の使用は、計量ツールをターゲット容器内に残すことを可能にする。そこで行われる化学プロセスに悪影響を及ぼさないが、ある程度、物理的プロセス(特に混合作業)にプラスの効果を及ぼすことさえあり得る。
【0019】
接着体は、有利には、強磁性的または静電的または電磁的に帯電可能であるように構成することもできる。これにより、計量される物質が表面に付着する範囲が広がる。接着体を選択的に帯電させることにより、ある粉末状物質の接着体への接着を改善することができる。接着体の磁気充填により、強磁性固体が接着体に付着することが可能になる。強磁性構成により、(例えば、物質が混合された後の)接着体は、加えて、単に、ターゲット容器から除去され得る。あるいは、ターゲット容器を空にする間、磁石を用いてそこに保持される。
【0020】
有利には、コントローラは、以下のステップを実行するように構成される。
ステップ(a):把持ツールによって計量ツールをピックアップする。
ステップ(b):計量する物質を計量ツールに供給する。
ステップ(c):計量ツールに付着する物質の量を特定する。
ステップ(d):物質の付着量が所望の量よりも多い場合、計量ツールを廃棄し、物質の付着量が所望の量以下になるまで、未使用の計量ツールを用いてステップ(a)〜(d)を繰り返す。
ステップ(e):物質の付着量が所望の量よりも少ない場合、計量すべき物質を含む計量ツールをさらに準備し、物質の付着量が所望の量に一致するまで、ステップ(c)〜(e)を繰り返す。
ステップ(f):物質の付着量が所望の量に一致する場合には、計量ツールをターゲット容器の上に配置し、計量ツールを前記付着量の物質とともにターゲット容器内に降ろすか、または、付着物質が計量ツールから離脱するまで、計量ツールと前記付着量の物質とともにターゲット容器内に浸漬する。
【0021】
このコントローラの構成により、計量動作の大部分が自動的に実行され得る。それぞれの決定的な計量動作の前に、ピックアップされた物質の量が目標量に一致しているかどうかが決定され得る。これにより、製剤または化学反応は、誤った組成を有することから保護され得る。この手順を使用すると、基本的に非常に高い精度を達成することが可能である。これは、物質の量を、計量器の測定値に匹敵する程度に正確に計量することが事実上常に可能であるためである。
【0022】
計量器は、計量されるべき物質が引き抜かれることができる物質容器の重量を測定するように構成および配置することができる。接着体が物質容器内に浸漬され、その後、そこから除去されることによって物質が提供される場合、単に、接着体の浸漬および除去の前後に物質容器の重さを量ることによって、接着体に付着している物質の量が特定され得る。
【0023】
有利には、計量器は、把持ツールによって保持された計量ツールすなわち接着体の重量を測定するように構成および配置される。物質の供給の前後に粘着体を計量することにより、粘着体に付着する物質の量を簡単に求めることができる。
【0024】
この装置は、有利には、計量ツール上に計量器を備えるとともに、監視目的のために、ターゲット容器の下にも計量器を備えている。
【0025】
有利には、この装置には昇降装置が備えられており、この昇降装置により、把持ツールを昇降させることができ、この昇降装置は、コントローラと協調して動作する。このようにして、計量ツールすなわち接着体は、容易に、物質容器に浸され、そこから再び取り外され得る。昇降装置によって、計量ツールと共に把持ツールが移動することは、装置全体の移動の場合よりも精密になされ得る。
【0026】
有利には、装置は、コントローラと協働し、把持ツールが取り付けられたロボットアームを備え、把持ツールは、ロボットアームによって、好ましくは3つの空間方向の全てに移動可能であり、また、垂直方向の回転軸周りにも移動可能である。これにより、計量動作に必要な装置の全ての移動シーケンスを簡単な方法で実行することができる。
【0027】
把持ツールの(通常動作位置における)垂直な回転軸の周りの回転可能性により、物質容器内に存在する物質への浸漬または挿入の間に、好ましくは物質からの取り出し中にも、計量ツールがその(垂直の)長手方向軸の周りに回転可能になる。この回転運動により、物質が比較的硬い場合に、挿入が容易になる。また、計量ツールが物質内に嵌まり込んで身動きできなくなるのを防止できる。
【0028】
好都合なことに、この装置には、複数の同一の若しくは複数の少なくともある程度異なる計量ツールのためのラック、又は、計量ツールのための少なくとも1つのディスペンサが設けられている。このようにして、特定の計量作業、又は、計量される物質若しくは物質の量に最も適した計量ツールを選択することが可能である。
【0029】
この装置は、計量されるべき物質を計量ツールに(直接的に)提供するための分注ツールを有することも有利である。その結果、物質を供給するために計量ツールを物質容器に浸す必要がなくなる。
【0030】
計量方法に関して、本発明の核心は以下の通りである。
本発明による装置を使用して物質を計量する方法は、以下のステップを含む。
ステップ(a):把持ツールによって、接着体として構成された計量ツールをピックアップする。
ステップ(b):計量する物質を計量ツールに供給する。
ステップ(c):計量ツールに付着した物質の量を特定する。
ステップ(d):物質の付着量が所望の量よりも多い場合、計量ツールを廃棄し、物質の付着量が所望の量以下になるまで、未使用の計量ツールを用いてステップ(a)〜(d)を繰り返す。
ステップ(e):物質の付着量が所望の量よりも少ない場合、計量すべき物質を含む計量ツールをさらに準備し、物質の付着量が所望の量に一致するまで、ステップ(c)〜(e)を繰り返す。
ステップ(f):物質の付着量が所望の量に一致する場合には、計量ツールをターゲット容器の上に配置し、前記付着量の物質と共に計量ツールをターゲット容器内に降ろすか、または、付着物質が計量ツールから離脱するまで、前記付着量の物質と共に計量ツールをターゲット容器内に浸漬する。
【0031】
この方法によれば、汚染の問題は完全に回避されつつ、非常に少量の非常に多様な物質をターゲット容器内で高精度に計量することが可能となる。
【0032】
ステップ(d)およびステップ(e)では、好ましくは、計量ツールに付着する物質の量と所望の量との間の差が特定される。それに依存して、計量される物質を有する計量ツールの供給は、特に制御装置によって適切に調整される。
【0033】
有利には、計量される物質を有する計量ツールを提供することは、以下のステップを含む。
ステップ(b1):物質容器の上に計量ツールを配置する。
ステップ(b2):物質容器内に存在する物質への計量ツールの浸漬または挿入のために計量ツールを降下させ、結果として、物質を備えた計量ツールを供給する。
ステップ(b3):物質容器の外へ計量ツールを持ち上げる。
【0034】
本方法のこの実施形態では、計量される物質を有する計量ツールを供給することは、計量される物質に計量ツールを浸漬することによって簡単かつ実際的な方法で達成される。
【0035】
あるいは、計量されるべき物質を有する計量ツールを準備するステップは、以下のステップを含む。
ステップ(b1)計量ツールを分注ツールの下に配置する。
ステップ(b2)分注ツールを用いて計量ツールに物質を塗布する。
【0036】
本方法のこの変形例では、計量ツールが直接濡らされ、これにより、物質への浸漬を省略することができる。
【0037】
さらなる有利な実施形態によれば、計量ツールは、最初に液体接着性物質で濡らされ、次に計量されるべき物質が供給される。これは、表面にほとんど付着しない粉状の物質を計量する場合に特に有利である。液体接着性物質としては、いずれにしても既にターゲット容器に存在するか、または後で添加される液体が有利に使用される。液体接着剤による濡れ及び計量すべき物質、例えば粉末状物質の供給は、例えば計量ツールを関連物質に浸漬することによって行うことができる。
【0038】
好都合なことに、複数の同一のまたは少なくともある程度異なる計量ツールがラックに格納され、それらの格納された計量ツールから、把持ツールによって取り上げられる計量ツールが選択される。このようにして、特定の計量作業または計量される物質/物質の量に最も適した計量ツールを使用することが可能である。さらに、計量ツールを適切に選択することにより、この方法で、数百ミリグラムからサブミリグラム領域までの範囲での異なる量の計量を達成することが可能である。
【0039】
有利には、計量ツールのピックアップは、開閉可能な把持ジョーを有する把持ツールによって行われる。
【0040】
さらに有利な実施例では、計量ツールは、(把持ツールの適切な構成により)減圧(真空)によって持ち上げられ、保持され得る。これは、例えば、球形の計量ツールすなわち接着体が使用される場合に特に有利である。
【0041】
さらなる有利な実施例によれば、(把持ツールの適切な構成により)計量ツールを電磁的にピックアップして保持することができる。これは、例えば、強磁性計量ツールが使用される場合に有利である。
【0042】
別の有利な実施形態によれば、計量動作は個々の部分的計量動作で行われ、部分的計量動作では、好ましくは計量器によって監視されながら、必要な所望量に対する段階的なアプローチが行われる。このようにして、特に精密な計量が可能である。
【0043】
さらなる有利な実施形態によれば、ターゲット容器内で計量される物質の実際の総量は、(さらなる)計量器によって測定される。
【0044】
本発明による装置は、相補的計量として知られているものに対しても使用することができる。比較的大量の物質を非常に正確に計量する必要がある場合、例えば物質の99%を計量するのに従来の計量ツールが使用され、可能な限り正確な値を補償するためのバランスが、本明細書に記載された原理を利用して測定され得る。
【0045】
本発明は、図面に示された例示的な実施形態を参照して、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第1の段階を示す。
図2】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第2の段階を示す。
図3】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第3の段階を示す。
図4】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第4の段階を示す。
図5】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第5の段階を示す。
図6】本発明の第1実施例に係る計量装置を示す図であり、計量動作における6つの特徴的な段階のうちの第6の段階を示す。
図7】本発明の第2実施例に係る計量装置を示す図である。
図8図7に示す計量装置の第1の変形例を示す図である。
図9図7に示す計量装置の第2の変形例を示す図である。
図10】計量装置に用いられる計量ツールの変形例を示す図である。
図11】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図12】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図13】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図14】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図15】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図16】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図17】計量装置に用いられる計量ツールの別の変形例を示す図である。
図18】複数の計量ツールが内部に配置されたターゲット容器を示す図である。
図19】ターゲット容器内に配置された計量ツールを、ターゲット容器内に存在する生成物から分離させる方法を示す第1の図である。
図20】ターゲット容器内に配置された計量ツールを、ターゲット容器内に存在する生成物から分離させる方法を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の記述に関して、次の注釈が適用される。図面を分かりやすくするために、参照符号が図に含まれているが明細書の直接関連する部分では言及されていないものについては、明細書の前または後の部分におけるこれらの参照符号の説明を参照すべきである。逆に、図面が過度に複雑化するのを避けるために、直ちに理解するためにはあまり関係のない参照符号は、すべての図には含まれていない。その場合、他の図を参照すべきである。
【0048】
図1図6に示す第1実施例に係る計量装置は、ボックスによって記号的にのみ図示されたロボットアーム10に取り外し可能に取り付けられたツールヘッド20を含む。ロボットアーム10の移動を制御するコントローラ(電子制御システム)100が設けられている。ロボットアーム10によって、ツールアーム20は、ロボットアームの範囲内で3つの空間方向の全てに移動され、(装置の通常の動作位置における)垂直な軸周りに回転される。
【0049】
ツールヘッド20には把持ツール30が備えられており、この実施例において、把持ツール30には一対の把持ジョー(把持用顎部)31が設けられており、一対の把持ジョー31は、計量ツール40を把持し、保持し、解放するために互いに相対移動可能とされている。把持ツール30、すなわち把持ジョー31の開閉動作も同様にコントローラ100によって制御される。把持ツール30は、異なるように構成することもできる。例えば、減圧(真空)によって計量ツールを定位置に保持するように、または計量ツールを電磁的に定位置に保持するように構成することができる。後者の場合、計量ツールは、相応して強磁性的に構成されなければならない。
【0050】
この装置はさらに、計量器50を備え、計量器50上には、計量すべき物質Sを収容する物質容器Aが配置されている。計量器50は、少なくとも約0.1mg〜0.01mg、好ましくは約0.001mgまたはそれ以上の精度の分解能および精度を有する分析用天秤であることが有利である。
【0051】
さらに、この装置は、更なる計量器90を備え、計量器90上にはターゲット容器Zが配置され、ターゲット容器Z内には、計量すべき物質Sが計量される量だけ導入される。ターゲット容器Zは、しばしば、生成物P(例えば混色)の調製中に複数の物質が添加される容器である。計量器90は、同様に、少なくとも約0.1mg〜0.01mg、好ましくは約0.001mg又はそれ以上の精度の分解能及び精度を有する分析天秤であることが有利である。
【0052】
2組の計量器50および90は、コントローラ100と協働し、これにより、コントローラは、計量器を用いて実行される計量を開始し、測定結果を読み出して利用する。
【0053】
図1〜6はまた、廃棄された計量ツール40を受け入れるための廃棄物容器Wと、複数の計量ツール40が格納されたラック39とを示している。これについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0054】
実際の物質計量動作、すなわち、計量される物質の物質容器Aからのピックアップと、計量される量の物質のターゲット容器Z内への放出とは、計量ツール40によって行われる。計量ツール40は、少量の物質が表面に付着可能とされた接着体として構成されている。本明細書において、接着体は、任意の形状の本体であり、接着体に対してその表面のみに物質が付着するものと理解されるべきである。
【0055】
図1図6の例示的な実施形態では、計量ツールすなわち接着体40は、薄い円筒形ガラス棒として構成される。接着体のさらなる構成は、特に図10図17に関連して後に説明される。
【0056】
計量ツールすなわち接着体40は、原理的には、ガラス以外の材料、例えばプラスチック材料または金属から形成することもできる。しかしながら、ガラスは事実上全ての場合において化学的に不活性であり、したがって有利である。
【0057】
図1図6に示された本発明による計量装置の例示的な実施形態の動作モードが以下に説明される。
【0058】
図1に示す計量装置の開始状態では、まだ把持ツール30に計量ツール40はない。複数の計量ツール40がラック39にストックされている。ロボットアーム10によって、把持ツール30を備えたツールヘッド20はラック39に向かって移動され、把持ツール30は計量ツール40を把持し、それを所定位置に保持する(図2)。逆に、ラック39をツールヘッド20に向かって移動させたり、他の搬送装置によって再び離れるように移動させたりすることも可能であることが理解されよう。
【0059】
次いで、ロボットアーム10の移動により、計量ツール40がラック39から取り外され、計量器50上に準備された物質容器Aに移動される。計量ツール40が物質容器Aに浸される前に、物質容器A内に現在収容されている物質Sを含めた、物質容器Aの総重量M0が、計量器50によって測定される。
【0060】
次いで、計量ツール40が物質Sに浸漬されるか、または物質の濃度ないし堅さ(consistency)によっては物質Sに挿入されるまで(図3)、ロボットアーム10によって計量ツール40が下降され、その間に、ガラスロッドすなわち計量ツール40の浸漬面は、物質Sで湿潤される。
【0061】
次いで、計量ツール40は、ロボットアーム10によって物質容器Aの縁の上に持ち上げられる。液滴が形成される場合、短い待機時間の間に、過剰な物質、すなわち付着していない物質が物質容器Aに戻されるように落下し得る。次いで、計量器50を使用して新たな重量測定が行われ、それに応じて、測定された重量M1を、物質がピックアップされる前に測定された重量M0から差し引くことによって、計量ツール40によってピックアップされた物質Sの量(重量)MSが測定される(図4)。
【0062】
コントローラ100には、当該計量動作のために指定された所望量(目標量)MZが記憶されている。ピックアップされた物質の量、すなわち計量ツール40に付着している物質の量MSが、指定された所望量すなわち目標量MZより大きい場合、計量ツール40はロボットアーム10によって廃棄物容器Wに移動される。廃棄物容器Wでは、把持ツール30の開放によって物質が廃棄される(図5)。次に、図2と同様に、新しい計量ツール40をラック39から取り出し、浸漬動作を図3と同様に繰り返すが、今回は浸漬深さをより浅くする。コントローラ100は、第1のピックアップ動作の間に得られた測定結果を参照して、第2の試行で正確に所望量がピックアップされるように、浸漬深さを適切に調整することができる。ピックアップされた物質の量が目標量よりも依然として大きい場合、ピックアップされた物質の量が必要な目標量すなわち目標量に十分な精度で一致するまで、毎回新しい計量ツールを使用して同じ動作が繰り返される。
【0063】
反対に、ピックアップされる物質の量が少なすぎる場合、同じ計量ツール40が、図3と同様に物質容器Aに再び浸漬されるが、このときの浸漬深さは、コントローラによって計算されたより大きな深さとされる。ピックアップされる物質の量のそのような調整は、複数のステップ(フィードバックループ)において反復的に行われてもよい。
【0064】
所望の目標量MZがピックアップされると、すなわち、ピックアップされた物質の量が所望の目標量に一致すると、把持ツール30は、把持ツール30に保持されている計量ツール40とともに、ロボットアーム10によって、物質Sが添加されるべきターゲット容器Z上へ移動される。このとき、ターゲット容器Zは、計量器90上で準備が整った状態に保持されている。次に、把持ツール30を開くことによって、計量ツール40は、付着した物質Sと共に、ターゲット容器Z内に下降し得る(図6)。
【0065】
ターゲット容器Zに収容された生成物Pに更なる物質が添加される場合には、新たな計量ツール40を再びラック39から取り上げ、図1図6を参照しながら上述した方法の順序(浸漬 、調整、下降)に従って、上記更なる物質の計量が行われる。
【0066】
(問題になっている計量ツール40の重量が分かっている場合、)計量器90によって、ターゲット容器Zに実際に加えられる物質の量を監視(モニタ)することができる。
【0067】
各計量動作の終わりに、以前に使用された計量ツールは廃棄され、すなわち、再使用されない。その結果、可能な限り高い信頼性をもって、汚染の問題が回避される。本発明に係る計量装置によれば、特別に構成された計量ツールが、計量装置全体のうち計量される物質と接触する唯一の部分であり、該計量ツールの使用によって本発明の概念が可能になる。計量ツール40は、単一の、構造的に極めて単純な構成要素(例えば、ガラスロッド)のみからなり、大量生産部品として簡単かつ経済的に製造し得るものであるため、その使い捨て部品としての使用は経済的に実行可能である。
【0068】
図7は、本発明の第2実施例に係る計量装置を示している。図7には、理解に必要な構成要素のみが示されている。他の全ての構成要素は、図1図6に示す第1実施例におけるものと同様である。
【0069】
第2実施例において、ツールヘッド20は、計量器70を保持しており、計量器70のビーム71には、コントローラ100によって制御される昇降装置32が取り付けられている。把持ジョー31を備えた把持ツール30は、昇降装置32に取り付けられ、上下方向に移動可能とされている。すなわち、把持ツール30は、昇降装置32によって、モータ駆動スピンドル33を介して上昇および下降され得る。計量器70は、計量器70に保持された昇降装置32、把持ツール30および計量ツール40の総重量を、物質の付着量を含んだり含まなかったりした状態で測定する。
【0070】
第2実施例の計量装置の動作モードは、図1図6の第1実施例におけるものとほぼ同じである。唯一の違いは、例えば物質容器Aから物質をピックアップするための計量ツール40の下降および上昇が(ロボットアーム10ではなく)昇降装置32によって行われることにある。計量ツール40によってピックアップされる物質の量の決定は、物質がピックアップされる前および後に計量器上に位置する部分の重量を測定することによって行われる。昇降装置32および把持ツール30の重量はシステム定数であるので、上記の重量測定は、物質がピックアップされる前および後に、計量ツール40を計量することに相当する。
【0071】
第2実施例の計量装置は、非常に多数の異なる物質容器A(計量器50上への物質容器Aの配置には非常に時間がかかる)を使用する必要がある場合、または、計量すべき物質の量が比較的大きい(2桁以上のミリグラム範囲である)場合に特に有利である。これにより、計量器70の必要な測定精度を比較的低く維持することができ(最大精度0.1〜1mg)、より安価な計量器を使用することができる。昇降装置32は、把持ツール30に保持された計量ツール40を上下方向に移動させることができ、しばしばショックに敏感であるツールヘッド20自体を、取り付けられた計量器70と共に動かす必要はない。
【0072】
物質をピックアップする目的で物質容器に計量ツール40が浸される代わりに、図8の簡略図に示されている計量装置のさらなる構成によれば、計量ツール40を直接濡らすことも可能である。この目的のために、図7の第2実施例と同様に構成された計量装置には、計量される物質を分注するのに適した分注ツール35が追加的に設けられている。例えば、分注ツール35は、粉末計量装置または液体計量装置であってもよい。図8に示すように、物質をピックアップするために、計量ツール40は、ロボットアームおよび昇降装置32によって、分注ツール35の下に移動される。分注ツール35によって、計量ツール40に物質Sが直接供給され、この場合もやはり、計量ツール40に所定量の物質が付着した状態に維持される。分注ステップの後、計量ツール40に付着した物質Sの量は、ツールヘッド20に取り付けられた計量器70によって正確に測定することができる。勿論、計量される量が小さすぎる場合、さらなる物質を添加することができ、または計量すべき量が大きすぎる場合、図1図6に関連して上述したように、計量ツール40を廃棄して、全動作を繰り返すことができる。
【0073】
図10図17は、計量ツールの種々の変形例を示す。計量ツールが様々な形状、構造、および表面特性を有することにより、様々な物理的特性を有する多数の物質と共に計量ツールを使用することができる。計量ツールに付着して計量される物質Sは、計量ツール上に一種の膜を形成し、この膜は図中の濃い灰色の領域で示されている。
【0074】
図10は、円筒形ロッド40のような計量ツールの最も単純な形態を示す。計量されるべき物質(液体)Sの性質に依存して、把持ツール30に保持されることを意図しない円筒の下端に、膜が液滴状に集まり得る。
【0075】
液滴の形成を避けるために、把持ツールに保持されることを意図していないその下端において、図11および図12による円筒形ロッドは、一点に向かって例えば円錐状にテーパ状とされてもよく、丸みを帯びてもよい。そのように構成された計量ツールは、参照符号42および43でそれぞれ示されている。液滴形成を回避することにより、より少量の液体をピックアップすることが可能になり、さらに、先端に集まる液滴が早期に脱落する危険性が低減される。
【0076】
図13は、全体として、先端部が一点に集中する形状、特に円錐状に構成された計量ツール44を示し、該計量ツール44によれば、極めて少量の液体をピックアップすることが可能になる。
【0077】
図14に示す計量ツール45は、滑らかな表面にほとんど接着しない非常に表面活性のある液体物質に特に適している。把持ツールに保持されることが意図されていない計量ツール45の下端部には、溝またはグラデーションが設けられ、溝またはグラデーションに生じる毛細管力の結果として物質の接着性が改善される。
【0078】
図15は、把持ツールに保持されることを意図していないその下端部に、スパイク状の表面構造および複数の突起を備えた計量ツール46を示し、複数の突起により、例えば粒子状の固形物だけでなく液体も付着させることができる。あるいは、図16に示す計量ツール47は、把持ツールに保持されないように意図された下端部において、液体および粒子がより良好に付着する粗い表面(濃いハッチング領域)が設けられているだけである。
【0079】
極めて少量の物質をピックアップすることに関して、実質的に円筒形の計量ツール40〜43および45〜47は有利には0.1〜3mm、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの範囲の直径を有する。これらの寸法は、円錐状の計量ツール44の場合には、把持ツールに保持される計量ツールの上端部に適用される。
【0080】
図17は、最終的に、球形計量ツール48を示す。この形状の計量ツールは、混合および/または粉砕動作がターゲット容器に必要とされる用途において特に有利である。計量される量の物質が担持され、ターゲット容器に導入された球形計量ツールは、上記のような混合および/または粉砕動作のためにも追加的に利用され得る。
【0081】
図10図17に示す計量ツールの変形例は、純粋に例示的なものとして理解されるべきである。本発明の範囲内で任意の他の構成も可能であることが理解されるであろう。
【0082】
計量ツールは、その構成材料に関して、異なって構成することもできる。ガラスは、あらゆる場合において実質的に不活性であるため、コスト面で特に適している。
【0083】
しかしながら、計量ツールは、例えば金属製であってもよい。これにより、把持ツールに保持された計量ツールを静電的に帯電させることができ、静電的に付着する物質をピックアップすることができる。
【0084】
図9は、本発明による計量装置の変形例を示しており、図7による変形例と略一致するが、付加的に静電帯電装置34を有する。静電帯電装置34は、作動時に、静電的に帯電可能に構成された(金属の)計量ツール49を静電気的に帯電させる。このことはまた、粉末状および顆粒状の適切な物質Sをピックアップして移動させることも可能にする。
【0085】
図9の実施形態と実質的に同一の構造を有する本発明に係る計量装置の別の変形例(図示せず)では、静電帯電装置34が電磁式磁化装置に置き換えられ、把持ツール30に保持された強磁性金属製の磁場を磁気的に帯電させることができるので、磁場が強くなり強磁性体をピックアップすることができる。
【0086】
実際の用途では、多くの場合、最終生成物Pを製造するために、上述の複数の計量動作で複数の異なる物質をターゲット容器に加える必要がある。図18は、(他の何らかの方法によって加えられる)比較的多量のベース液Bと、異なる物質S1,S2,S3が充填された3つの計量ツール40とが存在するターゲット容器Zを示す。次のステップでは、図示されていないが、容器Z全体が、その中に落とし込まれた計量ツール40を含めて、撹拌される。これにより、計量ツールと共に導入された物質S1,S2,S3は、互いに且つ基体Bと、均質に混ざり合う。計量ツールは、化学的に不活性であり、混合中の動作に悪影響を及ぼさないので、ターゲット容器Z内に残されてもよい。更なるステップでは、ここでも図示しないが、混合物によって形成された生成物が、その中に配置された計量ツールを除去するためにろ過されるか、又は、単に、ターゲット容器Zから取り出される非常に少量の生成物のみがサブサンプルとして使用される。
【0087】
計量ツールは、例えば、強磁性的に構成されるか、または、強磁性材料で構成されてもよい。このことは、ターゲット容器Z内に配置された計量ツールの取り扱いに関して特に有利である。
【0088】
強磁性的に構成された計量ツールは、例えば、ターゲット容器内の撹拌装置として使用することができ、この場合、磁気攪拌器の場合に通常もたらされるのと同様に、外部磁場によって攪拌運動がもたらされる。
【0089】
図19は、例えば鉄または鋼からなる強磁性的に構成された計量ツール41を、ターゲット容器Z内で混合を完了した生成物から、(可動)磁石80によってどのように除去することができるかを示す概略図である。
【0090】
図20に示す変形例では、強磁性計量ツール41は、ターゲット容器Zから取り外されるのではなく、磁石80によってターゲット容器Zの所定位置に一時的に保持され、完成した生成物Pは、容器を空にすることによって、別の容器(図示せず)に移される。この変形例は、汚染された計量ツール41が磁石80に付着することによって磁石80が汚染されるのを防止することが望ましい場合に、特に有利である。
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図20