(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814817
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】医療用ラインのための弁付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20210107BHJP
A61M 39/26 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
A61M39/10 120
A61M39/26
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-558137(P2018-558137)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-516463(P2019-516463A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】IB2017052943
(87)【国際公開番号】WO2017199203
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】102016000051761
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518386999
【氏名又は名称】インダストリー ボーラ ソシエタ・ペル・アツイオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グァーラ、ジャンニ
【審査官】
上石 大
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−510728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ライン、特に、血液透析ラインのための弁付きコネクタであって、
雄型のルアーロック弁付きフィッティング(1)と、
前記雄型ルアーロックフィッティング(1)に係合可能な雌型ルアーロックフィッティング(2)と、
を備え、
前記雄型ルアーロックフィッティング(1)は、
外側本体(3)と、
前記外側本体に対して後退位置と前進位置との間を軸方向に変位可能な内側管状要素(6)と、
弾性材料から成る中空要素(11)と、
を備えており、
前記中空要素(11)は、前記外側本体(3)と前記内側管状要素(6)との間に介在すると共に、プレカット(13)が形成された横方向端壁(12)を有し、
前記プレカットは、前記内側管状要素(6)の後退位置において閉鎖されることで、前記雌型ルアーロックフィッティング(2)と前記雄型ルアーロックフィッティング(1)との間の流れを遮断し、
前記雄型ルアーロックフィッティング(1)の前記外側本体(3)には、前記雌型ルアーロックフィッティング(2)の外ねじ(16)に螺合可能な内ねじ(17)を有する回転可能なリングナット(4)が設けられ、
前記内側管状要素(6)は、前記後退位置から前記前進位置に向かって移動可能であって、前記前進位置では、弾性材料から成る前記中空要素(11)を圧縮すると共に、前記プレカット(13)を開放させるように前記横方向端壁(12)を変形させ、
前記雌型ルアーロックフィッティング(2)は、前記雌型ルアーロックフィッティング(2)の前記外ねじ(16)に対する前記回転可能なリングナット(4)の螺合の前及び螺合解除後にも前記内側管状要素(6)との摩擦により軸方向に係合されるのに適した内側ルアーコーン(15)を有し、
前記後退位置にて、前記雄型ルアーロック弁付きフィッティング(1)の前記内側管状要素(6)は、弾性材料から成る前記中空要素(11)の前記横方向端壁(12)に軸方向において近接すると共に前面接触し、
前記内側ルアーコーン(15)が前記内側管状要素(6)との摩擦により係合されると共に、前記雌型ルアーロックフィッティング(2)に対する前記回転可能なリングナット(4)の螺合の前であっても前記内側ルアーコーン(15)が前記内側管状要素(6)を軸方向に押すときに、前記プレカット(13)が完全に開放され、
前記リングナット(4)が前記雌ルアーロックフィッティング(2)からの螺合解除を終了したときに、前記プレカット(13)が即時に完全に再閉鎖される、
弁付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ラインのための、特に血液透析ラインのためのコネクタであって、雄型ルアーロック弁付きフィッティングと、当該雄型ルアーロックフィッティングに係合され得る雌型ルアーフィッティングとを備えたタイプのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願の出願人を代表とする特許文献1が、下記のように作成されたコネクタを開示している。このコネクタにおいて、雄型ルアーロック弁付きフィッティングが、外側本体と、当該外側本体に対して後退位置と前進位置との間を軸方向に変位可能な内側管状要素と、弾性材料からつくられた中空要素を備えている。当該中空要素は、前記外側本体と前記内側管状要素との間に介在され、且つ、プレカットを有して形成された横方向端壁を有する。前記内側管状要素の前記後退位置において、プレカットは閉鎖されており、これにより、雌型ルアーロックフィッティングと雄型ルアーロックフィッティングとの間の流れを遮断している。コネクタは、さらに、回転可能なリングナットを、雄型ルアーロックフィッティングの外側本体上に備えている。回転可能なリングナットは内ねじを有し、この内ねじは、雌型ルアーロックフィッティングが前記内側管状要素上に軸方向に係合された後に、雌型ルアーロックフィッティングの外ねじに螺合され得る。
【0003】
リングナットが螺合されると、内側管状要素は、後退位置から前進位置に向かって変位されて、弾性材料からなる中空要素を圧縮しつつ、中空要素の横方向端壁を、プレカットを開くように変形させる。
【0004】
さらに、この公知の弁付きコネクタにおいて、雌型ルアーロックフィッティングの内側ルアーコーンは内側管状要素の外側ルアーコーンに、回転可能なリングナットの螺合前に摩擦により係合すること、及び、回転可能なリングナットの螺合解除後も摩擦係合を維持することに適している。
【0005】
スライド可能な内側管状要素が、後退された閉鎖状態にあるとき、内側管状要素の端部と、弾性中空要素の横壁との間に所定の軸方向距離が生じる。この構成により、プレカットの開放と、従って、雌型ルアーロックフィッティングと雄型ルアーロック弁付きフィッティングとの間の流路の開放とが、徐々に行われる。これにより、幾つかの用途(詳細には血液透析ライン)において、患者にとって重大な不都合が生じ得る。また、プレカットの閉鎖も、回転可能なリングナットの螺合解除に続いて徐々に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/095760号(欧州特許第2237830号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記タイプの弁付きコネクタであって、雌型ルアーロックフィッティングと雄型ルアーロック弁付きフィッティングとの間の流れの開放及び相対的再閉鎖が、ON/OFFスイッチ形式で行われる弁付きコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、以下の事実により達成される。すなわち、請求項1に記載の予め特徴付ける節に定義されているように、上述の後退位置において、前記雄型ルアーロックフィッティングの前記内側管状要素は、弾性材料からつくられた中空部材の横方向端壁に実質的に接触している。従って、前記回転可能なリングナットの、雌型ルアーロックフィッティングとの螺合解除前であっても、前記雌型ルアーロックフィッティングの前記内側ルアーコーンが摩擦により前記内側管状要素に係合されると、前記内側管状要を軸方向に押し、前記プレカットは即時に完全に開放される。そして、前記リングナットが前記雌型ルアーロックフィッティングからの螺合解除が終了したときに、前記プレカットは即時に完全に再閉鎖される。
【0009】
ここで、本発明を、純粋に非限定的な例として提供される添付図面を参照して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による弁付きコネクタの、流れが閉鎖されている無効状態で示された長手方向断面図である。
【
図2】弁付きコネクタの事前有効状態、すなわち、ねじ接続部は係合されていないが流れが開放されている状態の、
図1に類似の図である。
【
図3】弁付きコネクタが、
図2の状態に続いてなお有効にされ且つねじ接続部が係合されている状態を示す、
図1及び
図2に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に
図1を参照すると、本発明による医療用ラインのためのコネクタが、雄型のルアーロック弁付きフィッティング1と、雌型のルアーロックフィッティング2とを備えている。雌型ルアーロックフィッティング2は、軸方向において雄型ルアーロックフィッティング1に係合可能である。
【0012】
雄型ルアーロックフィッティング1は、近位端及び遠位端を有する外側管状体3を含む。近位端上ではリングナット4が同軸に回転可能であり、遠位端は、医療用ラインの所定のセクション(例えば、血液透析装置に接続されるダクト)に接続されるためのコネクタ5を形成している。
【0013】
雄型ルアーロックフィッティング1は、さらに、外側管状体3に対して軸方向にスライド可能に取り付けられた内側管状要素6を含む。このスライドは、
図1に示されている後退位置と、
図3に示されているコネクタ5の方向への完全前進位置との間の、
図2の部分的前進位置を通るスライドである。
【0014】
内側管状要素6は、回転可能なリングナット4の外側に突出した、外側ルアーコーンのような形状の部分7を有する。また、内側管状要素6は、反対側には、半径方向外側突起9を有する部分8を有する。突起9は外側本体3にスライド可能である一方で回転できないように連結されている。突起9は、内側管状要素6の後退位置において外側本体3の内側管状止めフランジ10に当接する。このような内側管状要素6の後退位置は、弾性材料から成る中空要素11の作用により維持される。中空要素11は、外側本体3と、内側管状要素6の部分8との間に、同軸状に且つほぼ密閉されて介在している。弾性材料から成るこの要素11は、3つの機能を実質的に統合している。これらの機能は、第1の機能(先に述べたように、内側管状部材6を後退位置に向かって弾性的に押す)と、第2の機能(内側管状部材6の部分8のスライド可能な密閉)と、第3の機能(雄型ルアーロックフィッティング1を通る弁付き流路の画成)である。この目的のために、弾性材料から成る中空要素11は、外側本体3のコネクタ5に面した横方向端壁12を有する。横方向端壁12は、中央のプレカット13を有して形成されている。弾性材料から成る中空要素11は、反対側の端部にて、内側管状要素6の半径方向付属物9に支持されている。そして、弾性材料から成る中空要素11の中央部は、より弾性的に曲がり易い壁を有し、この壁に、交互の螺旋状のリブ及び溝14(例えば、欧州特許出願公開第1747796号明細書に記載の構造による)が形成されている。
【0015】
プレカット13は、通常、横壁12の適切な半径方向予圧により、密閉状態に維持されている。
【0016】
本発明の特徴によれば、内側管状要素6は、半径方向付属物9が内側管状止めフランジ10に当接された状態で配置されたとき、内側管状要素6の部分8の自由端が、弾性材料から成る中空要素11の横壁12に軸方向に近接し、且つ、好都合に実質的に前面接触している。
【0017】
雌型ルアーロックフィッティング2は、従来的には一方側に内側ルアーコーン15を有し、他方側にコネクタ18を有する。内側ルアーコーン15は、内側管状要素6の部分7の外側ルアーコーンと相補的であり、コネクタ18は、医療用ライン(例えば、透析を受けた患者に接続されたダクト)に接続され得る。部分15は、その外側に端部ねじ16を有して形成されている。端部ねじ16は、回転可能なリングナット4の内ねじ17に係合され得る。
【0018】
図1は、ねじ16が回転可能なリングナット4の内ねじ17に係合される前に、雌型ルアーロックフィッティング2の内側ルアーコーン15が内側管状要素6の部分7の外側ルアーコーンに係合されている様子を示す。この状態において、円錐面15と円錐面7とが互いに摩擦接続され、外側管状要素6は後退位置にあり、プレカット13が閉鎖状態に維持されている。先に述べたように、本発明の特徴によれば、この状態において、内側管状要素6は、内側管状要素6の部分8の自由端が、弾性材料から成る中空要素11の横壁12に実質的に接触して配置されている。
【0019】
リングナット4のねじ17が雌型ルアーロックフィッティング2のねじ16と係合される前であっても、ねじ16は、
図2に示した位置に軸方向に押され、そして、内側管状要素6が雌型ルアーロックフィッティング2により、前進位置に向かって軸方向に押されて、
図2に示されているようにプレカット13を完全に開放する。こうして、弁付きコネクタを通る流路が即時に、回転リングナット14が雌型ルアーロックフィッティング2に螺合する前であっても、開放される。
【0020】
図3に示すように、ねじ16がねじ17と係合し、リングナット4が回転されてねじ16に螺合されているとき、弁付きコネクタは既に完全に開放されている。内側管状部材6は完全に前進した位置に配置され、内側管状部材6の部分8は、プリカット13を十分に越えて突出しており、弾性材料からつくられた中空要素11は完全に軸方向に圧縮されている。
【0021】
回転リングナット4の螺合が緩められると、内側管状要素6は、最初に、
図2に示した中間位置に移動する。これは、弾性材料から成る中空要素11が変形されていない状態に向かって戻ることに、及び、引き込み(雌型ルアーロックフィッティング2による摩擦による)による。そして、内側管状要素6は、
図1に示した完全な後退位置(半径方向外側突起9が内側管状フランジ10に当接する)まで戻り続ける。リングナット4が完全に螺合を解除されたこの位置に到達すると、即時にプレカット13が完全に再閉鎖される。一方、雌型ルアーロックフィッティング2の内側ルアーコーン15と、内側管状要素6の外側ルアーコーン7とは、互いの係合を摩擦により維持しているため、軸方向に互いに意図的に分離され得る。
【0022】
従って、基本的に、本発明による弁付きコネクタは、有利なことに、ON−OFFタイプの動作を備えており、すなわち、回転可能なリングナット4の螺合前に既に流れが完全に開放され、また同等に、回転可能なリングナット4が雌型ルアーロックフィッティング2からの螺合解除を終了すると、即時に且つ完全に流れが再閉鎖される。
【0023】
以上に説明及び図示したものに対し、構造の詳細及び実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の保護の範囲から逸脱せずに広範に変化させ得ることが明らかである。
【符号の説明】
【0024】
1 雄型のルアーロック弁付きフィッティング
2 雌型のルアーロックフィッティング
3 外側本体
4 リングナット
5 コネクタ
6 内側管状要素
9 突起
11 中空要素
12 横方向端壁
13 プレカット
15 内側ルアーコーン
16 雌型ルアーロックフィッティングの外ねじ
17 リングナットの内ねじ
18 コネクタ