(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1では、蓋の天面部に、電子レンジによる加熱時に容器内部に発生する蒸気を容器外部に排出するための蒸気排出用の蒸気孔が設けられた構成が記載されている。しかしながら、蓋の天面部に蒸気孔を設ける構成では、その蒸気孔から異物が混入したり虫が侵入したりするというおそれがある。そのため、蒸気孔からの異物混入等を防止するために、陳列や展示する際には容器全体をラップで覆う等の対応策が必要になり、コストが嵩むという問題がある。
【0003】
下記特許文献2では、容器本体の内嵌合面の上部に溝を形成し、蓋の内嵌合面の下部にも容器本体の溝に対応して溝を形成しておき、電子レンジによる加熱時の圧力で蓋が所定量上昇すると、容器本体の溝と蓋の溝とが連通して、蒸気排出用の通路が形成されるという構成が提案されている。しかしながら、容器本体に蓋を何れの向きで装着しても容器本体の溝と蓋の溝とが上下に対応する位置関係となって少なくとも蓋が上昇した際に互いに連通する位置関係となるためには、容器本体の内嵌合面と蓋の内嵌合面にそれぞれ溝を多数形成する必要があり、内嵌合面の形状が複雑になって製造が容易ではないという問題がある。更には、容器本体の内嵌合面の上部と蓋の内嵌合面の下部にそれぞれ多数の溝が形成されることから、内嵌合面の精度が悪化しやすいうえに、それぞれの内嵌合面の実質的な上下寸法が短くなることから、シール性が大きく低下して蓋が外れやすくなるという問題があり、電子レンジによる加熱時においても蓋が簡単に外れるおそれがある。また、電子レンジによる加熱時に蓋が水平状態を維持したまま全周に亘って均一に上昇するとは限らず、逆に蓋が傾いた状態になる可能性もあり、蓋が容器本体に対してこじた状態となって想定どおりに蒸気が排出されないおそれもある。
【0004】
これに対して本出願人は上記の問題を解決すべく既に下記特許文献3記載の容器を提案している。このように中皿を使用する構成では、急激に上昇した内圧が蓋に作用することがなく良好である。その一方、この中皿を使用しない構成としたときに、容器本体にゼリー状などのスープなどを収容した場合には、レンジ加熱した際に、急激な蒸気による内圧上昇が起こる場合があり、蓋が外れる場合があることが判った。
【0005】
尚、下記特許文献4には、
図11のように、容器本体100のフランジ部101の上面に全周に亘って環状溝102を形成すると共に、蓋体200のフランジ部201の下面には環状突起202を形成した容器が提案されている。この容器では、閉蓋状態において容器本体100の環状溝102に蓋体200の環状突起202が嵌って密閉性が確保できるとされている。しかしながら、この環状溝102と環状突起202の構造を仮に電子レンジ用の容器に使用したとすれば、電子レンジによる加熱時における内圧の急激な上昇によって、蓋体200がポンという破裂音と共に容器本体100から外れることになる。従って、電子レンジ用の容器には採用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、蓋体の天面部に蒸気排出用の孔等を設けることなく、陳列展示時における異物の混入を防止することができ、電子レンジによる加熱により発生する蒸気を容器外部にスムーズに排出することができ、レンジ加熱中に不用意に蓋体が外れることを防ぐことができる食品包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る食品包装用容器は、
底面部と、底面部から上方に延びると共に本体内嵌合面部を有する本体側面部と、本体側面部の外側に周設された本体フランジ部とを備えた容器本体と、
天面部と、天面部から下方に延びる蓋側面部と、蓋側面部の外側に周設された蓋フランジ部と、蓋側面部と蓋フランジ部との間に位置し、閉蓋状態において本体内嵌合面部に内嵌合する蓋内嵌合面部とを備えた蓋体と
、を備え、蓋体の天面部に蒸気排出用の孔を設けることなく、陳列展示時における異物の混入を防止できると共に電子レンジによる加熱により発生する蒸気により軟化した蓋フランジ部が、内嵌合状態を維持しつつ動くことでこの蒸気を容器外部にスムーズに排出できる、合成樹脂製の食品包装用容器であって
、蓋フランジ部の下面には、下向き凸条が全周に亘って突設されており、蓋内嵌合面部の外面には、連通用凹溝が少なくとも一つ形成されており、閉蓋状態において、
蓋フランジ部が弾性変形することにより、蓋フランジ部の下向き凸条は、本体フランジ部の上面の全周に当接し、下向き凸条よりも外側に位置する蓋フランジ部の外側環状部は、本体フランジ部の上面に対して上方に離間して、蓋フランジ部の外側環状部と本体フランジ部との間には環状の外側離間空間部が形成され、下向き凸条よりも内側に位置する蓋フランジ部の内側環状部は、本体フランジ部の上面に対して上方に離間して、蓋フランジ部の内側環状部と本体フランジ部との間には環状の内側離間空間部が形成され、容器の内部空間は、連通用凹溝を介して内側離間空間部と連通する。
【0009】
この食品包装用容器にあっては、容器本体に蓋体を内嵌合させる構成である。容器の内部空間は、閉蓋状態の容器本体と蓋体によって画成される。容器の内部空間は、連通用凹溝を介して内側離間空間部と連通しているが、蓋フランジ部の下向き凸条が本体フランジ部の上面の全周に亘って当接しているので、外側離間空間部と内側離間空間部との間の連通は、下向き凸条によって遮断されている。このように蓋フランジ部の環状の下向き凸条が本体フランジ部の上面に当接しているので、容器の内部空間は外部と遮断されることになり、容器の内部空間への異物の混入が阻止される。一方、容器を閉蓋状態のままで電子レンジに入れることで、容器に収容された食品を加熱調理することができる。レンジ加熱時に食品から発生した蒸気は、容器の内部空間から連通用凹溝を通って内側離間空間部に達する。内側離間空間部は環状であって下向き凸条の直ぐ内側に位置している。即ち、下向き凸条の直ぐ内側のところまで蒸気が全周に亘って到達することになる。下向き凸条が全周に亘って本体フランジ部の上面に当接しているので、内側離間空間部まで到達した蒸気は、一旦、下向き凸条によってその外部排出が阻止される。また、内側離間空間部に蒸気が到達していることによって、蓋フランジ部が蒸気で加熱され、蓋体を構成している合成樹脂が軟化する。その後、レンジ加熱によって容器の内部空間の圧力が高まると、その圧力は連通用凹溝から内側離間空間部に達して蓋フランジ部を上方に押し上げる。上述のように、内側離間空間部に既に到達している蒸気によって蓋フランジ部が軟化しているうえに、内側環状部と外側環状部は何れも本体フランジ部から上方に離間しているので、内圧上昇によって蓋フランジ部が容易に上方に浮上できる。そして、蓋フランジ部が上方に動くことで、下向き凸条の全周のうちの少なくとも一部が本体フランジ部の上面から浮上し、下向き凸条と本体フランジ部の上面との間に隙間が形成される。内側離間空間部に到達していた蒸気は、下向き凸条と本体フランジ部の上面との間に形成された隙間を通って外側離間空間部へと流れ、その外側離間空間部から容器外部に排出される。従って、蓋体が外れてしまう程の内圧上昇が起こる前に、軟化した蓋フランジ部が動いて蒸気を外部に排出でき、電子レンジ内で不用意に蓋体が容器本体から外れたり、破裂音の発生と共に蓋体が飛んだりすることを防止することができる。
【0010】
特に、本体側面部は、本体側面部と本体内嵌合面部との間に本体段差部を備え、蓋体は、蓋側面部と蓋内嵌合面部との間に蓋延在部を備える構成においては、閉蓋状態において、蓋延在部は全周に亘って本体段差部に当接することなく本体段差部と離間する構成であることが好ましい。この構成によれば、閉蓋状態において蓋延在部が本体段差部から全周に亘って上方に離間しているので、レンジ加熱時に発生した蒸気が本体段差部と蓋延在部との間の環状の隙間から連通用凹溝にスムーズに流れることになる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、閉蓋状態において下向き凸条が本体フランジ部の上面に全周に亘って当接して容器の内部空間と外部とを遮断すると共に、下向き凸条の内側においては環状の内側空間離間部が形成され且つ下向き凸条の外側には環状の外側離間空間部が形成されるので、陳列展示時における異物の混入を防止することができると共に、電子レンジによる加熱時に発生する蒸気によって過度の内圧上昇が起こる前に容器外部に蒸気をスムーズに排出することができる。また、蓋体の天面部に蒸気抜きの孔等を設けなくても、蒸気を外部にスムーズに排出できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る合成樹脂製の食品包装用容器について
図1〜
図10を参酌しつつ説明する。容器には、種々の食品(食材)を収容することができ、特に、容器内に収容した食品を、閉蓋状態のままで、電子レンジによって加熱調理するという用途に適している。
【0014】
図1のように、容器は、容器本体1と蓋体2とを備えている。容器本体1と蓋体2は、何れも合成樹脂シートからなる。容器本体1と蓋体2は、真空成形や圧空成形等の各種の熱成形(シート成形)によって形成されている。合成樹脂製シートは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等、各種合成樹脂シート、これらのシート素材として無機物を充填したシート、更には、これらのシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。例えば、耐熱性に優れたポリプロピレンに無機物を充填したシート、ポリエチレンテレフタレート・ポリスチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンなどのシートを延伸して耐熱性を向上させた耐熱シートを使用できる。これらのシートの片面や両面に樹脂フィルムを積層してもよい。尚、透明性に優れたシートを使用することも好ましく、特に、蓋体2には好ましい。尚、電子レンジ用とする場合には電子レンジによる加熱に耐え得るように耐熱性のシートを用いる。シートの厚みは例えば0.1〜1mmである。容器本体1には、特に発泡させた耐熱性シートを使用することが好ましく、加熱後にレンジからの取り出しの際に持って熱くなく、火傷などを抑制することができ、レンジの電磁波を効率よく収容食材へ伝え、加熱を均一にかつ短時間で行うことができる。
【0015】
容器本体1に蓋体2を装着することによって容器本体1と蓋体2との間に内部空間3(
図7参照)が区画形成されるが、その内部空間3に各種の食品を収容することができる。水分や液体を含む食品、特に水分や液体の多い食品を収容するのに適している。食品は、レンジ加熱して食するものが好ましい。例えば、麺類の場合には、麺や具と共にダシやスープを入れておくことができる。ダシやスープはゼラチンで固められたゼリー状のスープなどが好ましく、レンジ加熱によって溶けて液状となる。容器本体1には、あらかじめゼリー状スープや麺、かやくなどを収容物として収容することができる。例えば、ゼリー状のスープを容器本体1に収容し、その上に麺や具材を収容することができる。
【0016】
容器の平面視における形状は任意であって、略円形の他、略多角形や略楕円形、略小判形、略長円形等であってもよいが、好ましくは略円形である。尚、略多角形の場合、各辺部は、直線状であってもよいし、外側に弧状に膨出する構成であってよい。各角部は円弧状であってもよく、即ち角丸形状であってもよい。以下、代表例として、平面視略円形の容器について説明する。
【0017】
<容器本体1>
図1及び
図6のように、容器本体1は、上面開口の丼型のものであって、底面部10と、本体側面部11と、本体フランジ部12とを備えている。底面部10は平面視略円形であって、その下面には種々の形状の脚部(図示せず)が突設されていてよい。本体側面部11は、全体として円筒状であって、底面部10の周縁から上方に向けて全体として拡開しつつ延びている。本体側面部11は、側面主部13と、本体段差部14と、本体内嵌合面部15とを備えている。側面主部13は、本体側面部11の大部分を占めており、底面部10の周縁から上方に向けて延びている。側面主部13の上端から外側に向けて本体段差部14が延設されている。本体段差部14の上面は、外側に向けて略水平に延びていてもよいが、本実施形態のように、外側に向けて斜め上方に傾斜しつつ延びていることが好ましい。
【0018】
本体段差部14の外縁から上側に向けて本体内嵌合面部15が延設されている。本体内嵌合面部15は全周に亘って形成されている。本体内嵌合面部15は、本体側面部11の最上部に位置し、容器本体1の開口縁部に位置する。蓋体2は容器本体1に内嵌合する。その際、本体内嵌合面部15の内面(内周面)が容器本体1と蓋体2との間の嵌合面となる。本体内嵌合面部15の内面の形状は種々であってよい。本実施形態では、本体内嵌合面部15の内面は、外側に向けて凹んだ環状凹溝16を有している。特に、環状凹溝16は、本体内嵌合面部15の内面の下部に設けられていることが好ましい。環状凹溝16の断面視の形状は任意であるが、好ましくは円弧状である。尚、本体内嵌合面部15の内面の上部は略垂直に延びた形状となっている。但し、本体内嵌合面部15の内面が例えば上方に向けて徐々に縮径する逆テーパ形状であってもよい。
【0019】
本体内嵌合面部15の上端から外側に向けて本体フランジ部12が延設されている。本体フランジ部12は容器本体1の開口縁部の外側に全周に亘って形成されている。従って、本体フランジ部12は平面視略円形の環状である。本体フランジ部12の上面は玉ぶち形状であってよい。このように、本体フランジ部12の上面は、内外方向に沿って上側に向けて湾曲した湾曲面であってもよいし、水平面であってもよい。本体フランジ部12の下面には、上側に向けて凹んだ凹溝17が全周に亘って形成されていてよい。このように本体フランジ部12の下面に凹溝17を形成することにより、本体フランジ部12の上面を容易に上方に円弧状に突出させて玉ぶち形状とすることができる。この凹溝17の所定箇所には他の部分よりも凹入深さが浅くなるように内外方向に延びる補強リブ(図示省略)を形成してもよい。補強リブを形成した箇所の肉厚は他の部分よりも厚くなり、本体フランジ部12の強度を向上できる。
【0020】
本体フランジ部12の周縁部には、外側に向けて例えば略水平に延びる本体縁取り部18を全周に亘って形成することが好ましい。このように本体フランジ部12に本体縁取り部18を周設した場合にはその本体縁取り部18の外縁が容器本体1の外縁となって平面視において最も外側に位置する部分となる。本体縁取り部18は本体フランジ部12の他の部分よりも薄肉とされる。容器本体1を構成する合成樹脂シートとして発泡シートを使用する場合にはその発泡シートを容器本体1の熱成形時に局所的に強く厚さ方向に押圧し圧縮することにより、本体縁取り部18を本体フランジ部12の他の部分よりも相対的に薄肉に形成できる。このように本体フランジ部12の外縁部に本体縁取り部18を全周に亘って設けることで本体フランジ部12を補強することができる。本体縁取り部18の幅は例えば0.1mm〜2mm程度と細いものであってよい。また、本体縁取り部18の上面には、容器本体1を形成する際の熱成形と同時に細かな凹凸加工やエンボス加工を施して凹凸形状を形成してよい。尚、図示しないが、本体フランジ部12の外縁には本体摘み部を設けてもよい。
【0021】
<蓋体2>
図2〜
図5に蓋体の詳細を示している。蓋体2は、天面部20と、蓋側面部21と、連結部22と、蓋フランジ部23とを備えている。蓋体2は容器本体1の上面開口部を閉塞するものであるため、蓋体2の平面視における形状は容器本体1のそれに対応したものである。従って、蓋体2は容器本体1と同様に平面視略円形である。天面部20は、平面視略円形である。天面部20は、全体に亘って凹凸のない平面であってもよいが、容器同士を上下に積み重ねた際に容器同士の水平方向の位置ずれを防止するための位置ずれ防止用凸部24を周縁部に形成してもよい。天面部20の高さは蓋フランジ部23よりも高く形成されているが、蓋フランジ部23と略同じであってもよいし、蓋フランジ部23より低くてもよい。
【0022】
蓋側面部21は、円筒状であって、天面部20の周縁から下方に向けて拡開しつつ延びている。蓋側面部21の下端の外側に連結部22が形成されている。連結部22は、蓋側面部21と蓋フランジ部23とを連結している。連結部22の構成は種々であってよいが、少なくとも蓋内嵌合面部28を有している。本実施形態では、連結部22は、蓋延在部27と蓋内嵌合面部28とを有し、より詳細には、連結部22は、蓋段差部25と、蓋段下部26と、蓋延在部27と、蓋内嵌合面部28と、面取り部29とを有している。蓋段差部25は、蓋側面部21の下端から外側に向けて略水平に延びている。蓋段下部26は、蓋段差部25の外縁から下方に延びている。蓋延在部27は、蓋段下部26の下端から外側に向けて略水平に延びている。蓋内嵌合面部28は、蓋延在部27の外縁から上側に向けて延びている。蓋延在部27は、蓋体2の中で最も低い部分である。
【0023】
蓋内嵌合面部28の外面は、本体内嵌合面部15の内面に対応しており、本実施形態では、蓋内嵌合面部28の外面は、その下部に局所的に外側に向けて突出した環状凸条30を有していて、蓋内嵌合面部28の外面の上部は、略垂直に延びている。環状凸条30は、容器本体1の環状凹溝16に係合可能である。従って、環状凸条30の断面視の形状は、容器本体1の環状凹溝16に対応したものであることが好ましく、例えば断面視円弧状である。面取り部29は、蓋内嵌合面部28と蓋フランジ部23との境界部分に位置している。面取り部29は、蓋内嵌合面部28の上端と蓋フランジ部23の内縁とを連結している。面取り部29は上方に向けて拡開するテーパ形状の傾斜面とすることができる。面取り部29を設けることにより、蓋体2を容器本体1にスムーズに内嵌合できる。
【0024】
蓋フランジ部23は、連結部22の外側に周設されており、本実施形態では、面取り部29の外側に全周に亘って形成されている。蓋フランジ部23の形状は種々であってよいが、本実施形態のように、蓋フランジ部23は、略水平に外側に向けて延びている形状であることが好ましい。蓋フランジ部23の下面には、下側に向けて下向き凸条31が突出している。下向き凸条31は全周に亘って形成されており、従って、下向き凸条31は環状である。下向き凸条31の断面形状は任意であるが、好ましくは断面視略半円状である。尚、蓋フランジ部23の上面には、下向き凸条31に対応して環状凹溝32が形成される。このように蓋フランジ部23の下面に下向き凸条31が形成されることにより、蓋フランジ部23は、下向き凸条31よりも内側の環状の部分である内側環状部33と、下向き凸条31よりも外側の環状の部分である外側環状部34とに区画される。即ち、内側環状部33は、蓋フランジ部23の内縁から下向き凸条31までの領域であり、外側環状部34は、蓋フランジ部23の外縁から下向き凸条31までの領域である。内側環状部33と外側環状部34は、何れも略水平である。
【0025】
図6のように、容器本体1において本体フランジ部12の上面の頂上部12aと環状凹溝16との間の上下方向の離間距離H1と、蓋体2において下向き凸条31と環状凸条30との間の上下方向の離間距離H2とを比較すると、離間距離H1は、離間距離H2と略等しいかあるいは離間距離H2よりも若干大きい。離間距離H1が離間距離H2よりも若干大きいと、閉蓋状態において下向き凸条31が本体フランジ部12の上面に確実且つ強く当接することになる。離間距離H1と離間距離H2との大小関係を調整することにより、下向き凸条31が本体フランジ部12の上面に当接する力を強弱調整できる。尚、下向き凸条31が本体フランジ部12の上面に当接する際、蓋フランジ部23はシートの弾性力によって弾性変形でき、また、容器本体1のシートが発泡シートである場合にはそのクッション性により本体フランジ部12の上面は僅かに下側に圧縮変形できる。尚、離間距離H1は、環状凹溝16の最も深い所を基準とする。離間距離H2は、環状凸条30の最も突出した所を基準とする。
【0026】
蓋フランジ部23の全周のうちの所定箇所には蓋摘み部35を設けることが好ましい。蓋摘み部35は、蓋フランジ部23の外縁の一部が局所的に外側に膨出したものであってその形状、大きさは任意であって指先で摘むことができる程度の形状、大きさであればよい。蓋摘み部35は例えば略三角形や舌片形状とすることができる。
【0027】
上述のように蓋フランジ部23の外側環状部34には、極細の多数の凹凸を形成することが好ましく、補強効果が得られると共に指の切創が防止される。この凹凸は、正面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山頂と谷底の延びる方向が径方向であることが好ましい。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成されてよく、特には、滑りにくいようにするために綾目ローレット目によって形成することが好ましい。蓋摘み部35にローレット目を設けることが好ましい。
【0028】
<連通用凹溝40>
蓋内嵌合面部28の外面には、内側に凹んだ連通用凹溝40が形成されている。連通用凹溝40は、蓋内嵌合面部28の外面の全高に亘って形成されている。連通用凹溝40は、蓋フランジ部23まで達している。従って、連通用凹溝40は、蓋内嵌合面部28と面取り部29に連続して形成されている。連通用凹溝40は、上下方向に沿って延びていることが好ましいが、例えば斜め方向に延びていたりしてもよい。
【0029】
連通用凹溝40は、蓋延在部27の下面に連続して延びている。連通用凹溝40は、蓋延在部27の内外方向の全長に亘って形成されていて、好ましくは径方向に一直線状に延びている。このように連通用凹溝40は、蓋体2を上下方向に切断した縦断面視において全体としてL字状に形成されており、蓋内嵌合面部28及び面取り部29の外面に形成された上下方向に延びる縦溝部41と、蓋延在部27の下面に形成された内外方向に延びる横溝部42とから構成される。縦溝部41と横溝部42は互いに連続している。尚、
図8には、連通用凹溝40の縦断面形状を二点鎖線で示している。尚、本実施形態では、連通用凹溝40が蓋延在部27の下面の全幅に亘って内外方向に延びるようにして形成されているが、蓋延在部27の下面の内縁まで達していなくてもよい。連通用凹溝40の個数や配置は、収容する食品に応じて設定すればよく、水分の多い食品の場合には、複数箇所に均等に分散して設けることが好ましい。本実施形態では90度間隔で合計4箇所に形成されているが、例えば、180度対向して二箇所に形成したり、120度間隔で三箇所形成する等、収容する食品に応じて設定すればよい。また、横溝部42を省略して、縦溝部41のみの構成としてもよい。
【0030】
容器本体1や蓋体2には、それらの部材同士を積み重ねた際のブロッキングを防止するための図示しないブロッキング防止用凸部を配置することが好ましい。
【0031】
<閉蓋状態>
図6に開蓋状態を示し、
図7に閉蓋状態を示している。また、
図8〜
図10に閉蓋状態の容器の要部を拡大して示している。
図8は
図7の要部拡大図であって、連通用凹溝40が形成されていない箇所の断面図である。
図9及び
図10は、連通用凹溝40の位置における断面図である。まず、容器本体1に食品を収容し、そのうえで蓋体2を容器本体1に装着する。容器本体1に蓋体2を内嵌合させることにより容器は閉蓋状態となる。容器本体1に蓋体2が内嵌合されるので、不用意に蓋体2が外れたりすることを防止できる。また、スープをゼリー状として収容することでスープの漏れ出しを効果的に防止できると共にレンジ加熱によって液体になり、液体のスープを食することができる。また、蓋体2の天面部20には蒸気排出用の孔等が形成されていないので、蒸気排出用の孔等からの異物の混入のおそれはない。更に、蒸気排出用の孔等に別途の封止シール等を貼着しておく必要もなく、製造コストを低減できる。
【0032】
蓋体2を容器本体1に内嵌合する際、蓋体2を上から押して蓋内嵌合面部28を本体内嵌合面部15の内側に嵌合させる。蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係合することにより、蓋体2を下方に押している手には装着感が伝わり、その装着感によって作業者は、蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係合したことを知ることができる。従って、作業者は、蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係合するまで蓋体2を下方に押し込めばよい。そして、蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係合すると、蓋体2の下向き凸条31が本体フランジ部12の上面に当接する。
【0033】
また、閉蓋状態において、蓋延在部27は、
図8のように本体段差部14の上側に対応して位置する。蓋延在部27は、本体段差部14とは当接せずに本体段差部14から上方に離間している。従って、蓋延在部27と本体段差部14との間には全周に亘って隙間が生じている。特に、本体段差部14が外側に向けて斜め上方に傾斜していると、蓋延在部27と本体段差部14との間の隙間は内側から外側に向けて徐々に狭くなる。本体内嵌合面部15の内面には蓋内嵌合面部28の外面が全周に亘って当接する。本体内嵌合面部15の環状凹溝16には蓋内嵌合面部28の環状凸条30が全周に亘って係合する。蓋体2の面取り部29は、本体フランジ部12の上面の内側部分に全周に亘って当接するが、部分的あるいは全周に亘って離間していてもよい。
【0034】
蓋フランジ部23は、下向き凸条31のみが本体フランジ部12の上面に当接する。下向き凸条31は、本体フランジ部12の上面の頂上部12aに当接する。内側環状部33は、本体フランジ部12の上面から上方に離間している。内側環状部33と本体フランジ部12の上面との間には、環状の内側離間空間部4が形成される。この内側離間空間部4は、全周に亘って形成される。外側環状部34は、本体フランジ部12の上面から上方に離間している。外側環状部34と本体フランジ部12の上面との間には、環状の外側離間空間部5が形成される。この外側離間空間部5は、全周に亘って形成される。下向き凸条31は、本体フランジ部12の上面に全周に亘って当接する。下向き凸条31は、本体フランジ部12の上面のうち頂上部12aに当接する。本体フランジ部12の上面は内側から頂上部12aにかけて上昇し、頂上部12aから外側に向けて下降する。そのため、内側離間空間部4は、内側から外側に向けて、即ち、下向き凸条31に近づく程、上下方向の間隔が狭くなっていく。一方、外側離間空間部5は、下向き凸条31から離れる程、上下方向の間隔が広くなっていく。
【0035】
図9のように、閉蓋状態において連通用凹溝40の縦溝部41は、本体内嵌合面部15に当接せず、本体フランジ部12の内側部分にも当接しない。容器の内部空間3は、連通用凹溝40の溝内空間6を介して内側離間空間部4と連通する。蓋フランジ部23の下向き凸条31が本体フランジ部12の上面の全周に亘って当接しているので、外側離間空間部5と内側離間空間部4の間の連通は、下向き凸条31によって全周に亘って遮断されている。
【0036】
容器に収容された食品を、閉蓋状態のまま電子レンジに入れることにより、加熱調理することができる。レンジ加熱によって食品から蒸気が発生し、容器の内部空間3の圧力が上昇する。発生した蒸気は、蓋延在部27と本体段差部14との間の環状の隙間から連通用凹溝40の内側の溝内空間6へと進入する。本実施形態では四つの連通用凹溝40が形成されているので、四つの連通用凹溝40の溝内空間6を通って内側離間空間部4へと蒸気が進入する。下向き凸条31が全周に亘って本体フランジ部12の上面に当接しているので、容器の内部空間3の圧力が所定以上になるまでは、下向き凸条31によって蒸気の外部排出が阻止される。一方、内側離間空間部4は環状であって全周に亘って形成されているので、下向き凸条31の直ぐ内側のところまで蒸気が充満した状態となる。その蒸気によって蓋フランジ部23は加熱され、蓋フランジ部23の樹脂が軟化される。
【0037】
そして、容器の内部空間3の圧力が過度に高まる前に、
図10のように圧力によって蓋フランジ部23が上方に押し上げられる。蓋フランジ部23の樹脂が既に軟化した状態にあるので蓋フランジ部23が容易に上方に浮上できる。しかも、下向き凸条31の内側に位置する内側環状部33と下向き凸条31の外側に位置する外側環状部34は何れも本体フランジ部12から上方に離間しているので、内圧上昇によって蓋フランジ部23が容易に浮上できる。下向き凸条31は全周のうちの少なくとも一部が本体フランジ部12の上面から浮上すればよい。このように下向き凸条31が本体フランジ部12の上面から浮上することにより、下向き凸条31と本体フランジ部12の上面との間に隙間が形成され、その隙間から蒸気が外側離間空間部5へと排出され、外側離間空間部5から容器外部へと排出される。
【0038】
また、蒸気によって蓋フランジ部23には上方に力が作用することになるが、容器の内部空間3の圧力が過度に高まる前に蒸気が外部にスムーズに排出されるので、蓋体2が容器本体1から外れたりすることはない。特に、本体内嵌合面部15が環状凹溝16を有し、蓋内嵌合面部28が環状凸条30を有していて、蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係合する構成では、レンジ加熱時における蓋体2の容器本体1からの外れが確実に防止される。即ち、蓋体2の環状凸条30が容器本体1の環状凹溝16に係止した状態で蓋フランジ部23が上方に回動するように浮上することができる。
【0039】
尚、上記実施形態では中皿を有していない構成であったが、中皿を用いる構成としてもよい。