特許第6814847号(P6814847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814847
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】現像方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20210107BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20210107BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01L21/30 569F
   G03F7/30
   G03F7/38
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-113812(P2019-113812)
(22)【出願日】2019年6月19日
(62)【分割の表示】特願2015-1581(P2015-1581)の分割
【原出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2019-165254(P2019-165254A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】宮城 聡
(72)【発明者】
【氏名】春本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】金山 幸司
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−302433(JP,A)
【文献】 特開2003−136010(JP,A)
【文献】 特開2008−177495(JP,A)
【文献】 特開2005−210059(JP,A)
【文献】 特開2006−253515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
G03F 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して現像処理を行う現像方法であって、
回転保持部により基板の中心部周りに前記基板を回転させる工程と、
回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたプリウェット液位置に、プリウェットノズルによりプリウェット液の吐出を開始して、プリウェット液の吐出開始直後からプリウェット液の広がりで前記中心部にプリウェット液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる工程と、
プリウェット液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する工程と、
を備えていることを特徴とする現像方法。
【請求項2】
請求項1に記載の現像方法において、
基板上の現像液をリンス液に置換するリンス処理工程であって、現像液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたリンス液位置に、リンスノズルによりリンス液の吐出を開始して、リンス液の吐出開始直後からリンス液の広がりで前記中心部にリンス液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる前記リンス処理工程を更に備えていることを特徴とする現像方法。
【請求項3】
基板に対して現像処理を行う現像方法であって、
回転保持部により基板の中心部周りに前記基板を回転させる工程と、
回転する前記基板上に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する工程と、
基板上の現像液をリンス液に置換するリンス処理工程であって、現像液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたリンス液位置に、リンスノズルによりリンス液の吐出を開始して、リンス液の吐出開始直後からリンス液の広がりで前記中心部にリンス液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる前記リンス処理工程と、
を備えていることを特徴とする現像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に対して現像処理を行う現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板処理装置として、現像装置がある。現像装置は、フォトレジスト膜が形成され、所定のパターンが露光された基板に対して、現像液を供給して現像処理を行う。現像装置は、基板を略水平姿勢で保持して鉛直軸周りで回転させる回転保持部と、プリウェット液、現像液、またはリンス液を基板上に供給する各種のノズルとを備えている(例えば、特許文献1、2参照)。プリウェット液、現像液またはリンス液の吐出は、基板Wの中心部に向けて開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231617号公報
【特許文献2】特開2009−231619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現像液でフォトレジスト(以下、「レジスト」と呼ぶ)を処理すると、レジストの一部が溶解して溶解生成物が現像液中に混入する。上述の回転式の現像装置は、基板の中心部にフレッシュな現像液を吐出し、基板の回転により現像液を均等に広げつつ、基板の外縁部から溶解生成物が混入した現像液を排出する。つまり、フレッシュな現像液を吐出して溶解生成物を基板外に排出している。
【0005】
ここで、従来の現像方法は、次のような問題がある。まず、現像欠陥の原因となる溶解生成物の排出(すなわち洗浄)が十分に行われない問題がある。例えば、2つのレジストパターン間に溶解生成物が残ると、2つのレジストパターン間をブリッジする現像欠陥が発生する。これは、レジストパターンの微細化に伴い、デバイス性能に影響する現像欠陥サイズが縮小し、従来よりも現像欠陥の検査サイズが厳しくなったことで表面化した。そのため、レジストの溶解性生成物の排出を十分に行うために、吐出する現像液の流量や吐出圧、時間を調整したり、現像ノズルをスキャンさせたりすることが必要になる。
【0006】
また、溶解生成物の排出効果を優先し、例えば長時間現像液を基板の中心部に吐出し続けると、基板の外縁部から中心部につれてレジストパターンが細くなる問題がある。特に、基板の中心部では、このレジストパターンが細くなる問題が顕著である。レジストパターンが細くなる問題は、図9のように、レジストの種類により影響差がある。図9は、光源に対応するレジスト種と残膜量の関係を示す図である。この図は、塗布後の膜厚を1.0としたときの現像後の残りの膜厚の割合を示す。膜厚は、面全体の平均値で比較される。
【0007】
また、プリウェット液やリンス液を吐出する場合、基板の中心部で保持された液中に気泡が含まれると、基板の中心部は遠心力が小さいので、基板上に残る可能性がある。基板上に気泡が残ると、プリウェット液の場合は、現像液を吐出した際に、残った気泡の部分で現像が不十分になる可能性がある。また、リンス液の場合は、残った気泡の部分でリンスが不十分になる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができる現像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る、基板に対して現像処理を行う現像方法は、回転保持部により基板の中心部周りに前記基板を回転させる工程と、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたプリウェット液位置に、プリウェットノズルによりプリウェット液の吐出を開始して、プリウェット液の吐出開始直後からプリウェット液の広がりで前記中心部にプリウェット液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる工程と、プリウェット液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る現像方法によれば、吐出開始直後から遠心力の小さい中心部にプリウェット液の流れを起こすことができる。そのため、中心部にプリウェット液の吐出を開始した場合に比べ、プリウェット液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができ、残存する気泡に起因する現像不良を防止することができる。また、プリウェット位置に吐出されたプリウェット液の広がりで中心部を覆わせているので、中心部から外れた位置に直接、プリウェット液が吐出されても、中心部のプリウェット処理を実行できる。
【0011】
また、上述の現像方法において、基板上の現像液をリンス液に置換するリンス処理工程であって、現像液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたリンス液位置に、リンスノズルによりリンス液の吐出を開始して、リンス液の吐出開始直後からリンス液の広がりで前記中心部にリンス液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる前記リンス処理工程を更に備えていることが好ましい。
【0012】
これにより、吐出開始直後から遠心力の小さい中心部にリンス液の流れを起こすことができる。そのため、中心部にリンス液の吐出を開始した場合に比べ、リンス液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができ、リンスが不十分となることを防止することができる。また、リンス液位置に吐出されたリンス液の広がりで中心部を覆わせているので、中心部から外れた位置に直接、リンス液が吐出されても、中心部のリンス処理を実行できる。
【0013】
また、本発明に係る、基板に対して現像処理を行う現像方法は、回転保持部により基板の中心部周りに前記基板を回転させる工程と、回転する前記基板上に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する工程と、基板上の現像液をリンス液に置換するリンス処理工程であって、現像液の吐出を停止した後に、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定されたリンス液位置に、リンスノズルによりリンス液の吐出を開始して、リンス液の吐出開始直後からリンス液の広がりで前記中心部にリンス液の流れを起こさせつつ前記中心部を覆わせる前記リンス処理工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る現像方法によれば、吐出開始直後から遠心力の小さい中心部にリンス液の流れを起こすことができる。そのため、中心部にリンス液の吐出を開始した場合に比べ、リンス液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができ、リンスが不十分となることを防止することができる。また、リンス液位置に吐出されたリンス液の広がりで中心部を覆わせているので、中心部から外れた位置に直接、リンス液が吐出されても、中心部のリンス処理を実行できる。
【0015】
なお、本明細書は、次のような現像方法に係る発明も開示している。
(1)現像方法は、回転保持部により基板の中心部周りに前記基板を回転させる工程と、ノズルから吐出された現像液の液柱の幅方向の領域が前記基板の中心から外れるように、回転する前記基板上であって前記中心部から外れた予め設定された第1の位置に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する工程と、前記第1の位置に吐出された現像液の広がりで前記中心部を覆わせる工程と、を備えている。
前記(1)に記載の発明によれば、ノズルから吐出された現像液の液柱の幅方向の領域が基板の中心から外れるように、中心部周りに回転する基板上であって、中心部から外れた予め設定された第1の位置に、現像ノズルにより現像液の吐出を開始する。これにより、吐出開始直後から遠心力が小さい中心部に現像液の流れを起こすことができる。そのため、中心部に現像液の吐出を開始した場合に比べ、レジストの溶解生成物を効率よく基板外に排出することができる。また、吐出開始直後から現像ノズルにより直接吐出される現像液の到着位置が分散され、特に基板の中心部でレジストパターンが細くなることが抑えられ、処理ばらつきを抑制できる。
また、第1の位置に吐出された現像液の広がりで中心部を覆わせているので、中心部から外れた位置に直接、現像液が吐出されても、中心部の現像処理を実行できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る現像方法によれば、中心部にプリウェット液の吐出を開始した場合に比べ、プリウェット液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができ、残存する気泡に起因する現像不良を防止することができる。また、中心部にリンス液の吐出を開始した場合に比べ、リンス液中に含まれる気泡を効率よく基板外に排出することができ、リンスが不十分となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例に係る現像装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施例に係る現像装置の平面図である。
図3】基板の回転速度と各処理液の吐出タイミングの一例を示す現像工程の図である。
図4】(a)、(b)は、前工程を説明するための図であり、(c)〜(e)は、主現像工程を説明するための図である。
図5】(a)、(b)は、主現像工程を説明するための図であり、(c)、(d)は、洗浄工程を説明するための図である。
図6】(a)は、中心部に吐出した場合と中心部から外して吐出した場合のレジスト寸法(線幅)を比較した図であり、(b)は、(a)の測定位置を示す図である。
図7】変形例に係る基板の回転速度と各処理液の吐出タイミングの一例を示す現像工程の図である。
図8】変形例に係る中心部から外れて吐出する方法を示す図である。
図9】光源に対応するレジスト種と残膜量の関係を示す図である。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、実施例に係る現像装置の概略構成を示すブロック図であり、実施例に係る現像装置の平面図である。
【0019】
〔現像装置の構成〕
図1を参照する。現像装置1は、基板Wを略水平姿勢で保持して回転保持部2と、現像液を吐出する現像ノズル3と、リンス液を吐出するリンスノズル4とを備えている。なお、リンスノズル4は、本発明のリンスノズルおよびプリウェットノズルに相当する。
【0020】
回転保持部2は、鉛直軸AX1周りに回転可能に基板Wを保持するスピンチャック5と、スピンチャック5を鉛直軸AX1周りに回転駆動させる回転駆動部6とを備えている。スピンチャック5は、例えば、基板Wの裏面を真空吸着して基板Wを保持する。回転駆動部6は、モータ等により構成されている。なお、鉛直軸AX1と基板Wの中心部Cは、基板Wを上から見たときに略一致する。
【0021】
回転保持部2の側方には、回転保持部2を囲うカップ7が設けられている。カップ7は、図示しない駆動部により、上下方向に移動するように構成されている。
【0022】
現像液ノズル3は、移動方向であるX方向に一列に並んだ複数(例えば5個)の吐出口3aを備えている(図1の破線で囲んだ拡大図参照)。これにより、幅広く現像液を吐出するので、基板W全面に素早く現像液を与えることができる。一方、リンスノズル4は、1つの吐出口4aを備えている。
【0023】
アーム9は、図2のように、現像ノズル3を支持する。現像ノズル移動部11は、アーム9を介在して現像ノズル3を所定の位置および高さに移動させる。現像ノズル移動部11は、図2のように、現像ノズル3をX方向に移動させる水平移動部11aと、現像ノズル3をZ方向に移動させる昇降部11bとを備えている。水平移動部11aは昇降部11bをX方向に移動可能に支持し、昇降部11bはアーム9を支持する。
【0024】
アーム13は、図2のように、リンスノズル4を支持する。リンスノズル移動部15は、アーム13を介在してリンスノズル4を所定の位置および高さに移動させる。すなわち、リンスノズル移動部15は、鉛直軸AX2周りにリンスノズル4を回転移動させ、また、リンスノズル4をZ方向に昇降させる。リンスノズル移動部15は、アーム13を鉛直軸AX2周りに回転可能に支持し、また、アーム13をZ方向に移動可能に支持する。
【0025】
水平移動部11a、昇降部11b、リンスノズル移動部15は、モータ等で構成される。また、現像ノズル3は、リンスノズル移動部15のように、現像ノズル3が鉛直軸周りに回転移動してもよい。また、リンスノズル4は、水平移動部11aのように、X方向に移動してもよい。また、水平移動部11aは、X方向およびY方向の少なくともいずれかに移動する構成であってもよい。
【0026】
図1に戻る。現像ノズル3には、現像液供給源17から現像液配管19を通じて現像液が供給される。開閉弁V1とポンプP1は、現像液配管19に介在している。開閉弁V1は現像液の供給とその停止を行い、ポンプP1は現像液を現像ノズル3に送り出す。
【0027】
リンスノズル4には、リンス液供給源21からリンス液配管23を通じてリンス液が供給される。開閉弁V2とポンプP2は、リンス液配管23に介在している。開閉弁V2はリンス液の供給とその停止を行い、ポンプP2はリンス液をリンスノズル4に送り出す。なお、本実施例では、リンス液とプリウェット液は同じものを用いるので、リンスノズル4により、プリウェット液も吐出される。
【0028】
現像装置1は、中央演算処理装置(CPU)などで構成された制御部31と、現像装置1を操作するための操作部33とを備えている。制御部31は、現像装置1の各構成を制御する。操作部33は、液晶モニタなどの表示部と、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random-Access Memory)、およびハードディスク等の記憶部と、キーボード、マウス、および各種ボタン等の入力部とを備えている。記憶部には、現像処理の各種条件が記憶されている。
【0029】
〔現像装置の動作〕
次に、現像装置1の動作を説明する。本実施例では、図1のように、中心部C(鉛直軸AX1)周りに回転する基板W上であって、中心部Cから外れた予め設定された位置41に、現像ノズル3により現像液の吐出を開始する。これにより、吐出開始直後から遠心力が小さい中心部Cに現像液の流れを起こすことができる。そのため、中心部Cに現像液の吐出を開始した場合に比べ、レジストの溶解生成物を効率よく基板W外に排出することができる。また、吐出開始直後から現像ノズル3により直接吐出される現像液の到着位置が分散され、特に基板Wの中心部Cでレジストパターンが細くなることが抑えられる。
【0030】
また、位置41に吐出された現像液の広がりで中心部Cを覆わせているので、中心部Cから外れた位置41に直接、現像液が吐出されても、中心部Cの現像処理を実行できる。なお、位置41に吐出された現像液の広がりで中心部Cを覆わすことができない場合は、例えば中心部Cで現像ができない。
【0031】
なお、位置41は、本発明の第1の位置に相当する。また、後述する位置42は、本発明のプリウェット液位置(第2の位置)に相当し、後述する位置43は、本発明のリンス液位置(第3の位置)に相当する。
【0032】
図3は、基板Wの回転速度と各処理液の吐出のタイミングの一例を示す現像工程の図である。本実施例では、現像処理は、前工程(t0〜t3)と、主現像工程(t3〜t10)と、洗浄工程(t10〜t12)とを備えている。また、主現像工程(t3〜t10)は、現像液吐出工程(t3〜t8)と、時間調整工程(t8〜t10)とを備えている。
【0033】
なお、本実施例では、プリウェット液にリンス液が用いられ、例えば、脱イオン水(DIW)等の純水が用いられる。そのため、プリウェット液は、リンスノズル4から吐出される。また、図4(a)〜図4(e)、図5(a)〜図5(d)において、プリウェット液を符号Lpreで示し、現像液を符号Ldevで示し、そして、リンス液を符号Lrinで示す。
【0034】
図1において、図示しない搬送ロボにより、回転保持部2上に基板Wが搬送される。基板W上には、フォトレジスト膜RFが形成され、所定のパターンが露光されている。回転保持部2は、基板Wの裏面を保持する。なお、図2等において、レジスト膜RFの図示を省略する。
【0035】
図3の前工程始めの時点t0で、回転保持部2は、基板Wの中心部C周りに基板Wを回転させる。基板Wは、約20rpmで回転される。また、リンスノズル移動部15は、カップ7外側の待機位置から基板Wの上方の所定位置にリンスノズル4を移動させる。すなわち、リンスノズル移動部15は、中心部Cから外れた予め設定された距離D2離れた基板Wの上方の位置42にリンスノズル4を移動させる(図2参照)。
【0036】
時点t1で、リンスノズル4により、回転する基板W上(詳しくはレジスト膜上)にプリウェット液の吐出を開始する。すなわち、図4(a)、図4(b)のように、現像液の吐出を開始する前に、基板Wの中心部Cから外れた予め設定された位置42に、リンスノズル4によりプリウェット液の吐出を開始する。基板W上に到着したプリウェット液は、中心部Cから外れているので、吐出開始直後より、中心部Cの外側から中心部Cに向けてプリウェット液が流れる。このように、吐出開始直後より流れを発生させるので、中心部Cに直接吐出する場合に比べ、特に遠心力が加わりにくい中心部Cから気泡等を効率よく除くことができる。
【0037】
なお、なぜ中心部C付近に例えば気泡が残るのかの説明を補足する。プリウェット液が直接吐出される位置では、上から基板W側に例えば気泡が押し付けられる。押し付けられる位置が中心部Cの場合、同じ位置で押し付け続ける。また、中心部C付近は遠心力が小さい。それらにより、例えば基板Wに付着する気泡が中心部Cに残りやすい。現像液およびリンス液でも同様である。
【0038】
時点t2で、リンスノズル4によるプリウェット液の吐出が停止される。そして、リンスノズル移動部15は、基板Wの上方から待機位置にリンスノズル4を移動させる。なお、リンスノズル4は、洗浄工程(t10〜t12)を行うために、その場で待機していてもよい。また、現像ノズル移動部11は、カップ7外側の待機位置から基板Wの上方の所定位置に現像ノズルを移動させる。現像ノズル移動部11は、中心部Cから外れた予め設定された距離D1離れた基板Wの上方の位置41に現像ノズル3を移動させる(図2参照)。
【0039】
基板W上のプリウェット液は、基板Wの中心部Cから外縁部Eに向けて広がり、基板W上に保持される。なお、基板W上の余分なプリウェット液は、基板Wの外側に排出されてもよい。
【0040】
主現像工程始めの時点t3で、現像ノズル3により、回転する基板W上に現像液の吐出を開始する。すなわち、図4(c)、図4(d)のように、基板Wの中心部Cから外れた予め設定された位置41に、現像ノズル3により現像液の吐出を開始する。プリウェット液により基板W上の濡れ性が改善されているので、基板W上の到着した現像液は広がりやすくなっている。また、レジストの種類によっては、レジスト膜に直接現像液を吐出すると、現像液に接した部分で反応が進み、渦巻き状の凹凸ができる。しかし、プリウェット液を介して現像液を塗布すると反応が緩和され、上述の凹凸が抑えられる。
【0041】
プリウェット液は、徐々に、現像液で置換される。また、現像液が基板W上に到着しているので、現像液によるレジスト膜の所定パターンが溶解し、現像液中に溶解生成物が生成される。
【0042】
時点t4で、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約1000rpmに上昇させる。これにより、図4(e)のように、現像液が基板W外に排出される。これにより、生成したフォトレジストの溶解生成物が基板W外に効率的に排出される。そして、時点t5では、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約700rpmに下降させる。また、時点t5では、現像ノズル3により現像液を吐出しつつ、図5(a)のように、現像ノズル移動部11により現像ノズル3を位置41から基板Wの外縁部E側に移動させる。また、新規の現像液を吐出しつつ、基板Wに現像液を排出することにより、溶解生成物が除去され、新規の現像液に置換される。
【0043】
なお、本実施例おいて、中心部Cから外れた位置に吐出が開始された現像液、プリウェット液およびリンス液は、川状又は筋状に流れるのではなく、回転により基板W略全面に広がるように流れ、その後に基板W外に排出される。
【0044】
時点t6では、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約200rpmに下降させる。また、時点t6では、現像ノズル3により現像液を吐出しつつ、現像ノズル移動部11により現像ノズル3を外縁部E側から位置41に移動する。すなわち、時点t5〜時点t7の期間で、現像ノズル3は、基板Wの半径方向に往復スキャンされる。また、基板Wが低速回転になるので、基板W外に排出される現像液が減少する。
【0045】
なお、スキャンは、本実施例では往復であるが、往路だけでもよい。この場合、復路は、吐出を停止して現像ノズル3が移動される。スキャンは、1往復だけでなく、複数往復してもよい。また、往復スキャンする際に、位置41に戻らなくてもよい。また、スキャンは、中心部Cの上方を通過しないように行ってもよい。
【0046】
時点t7では、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約30rpmに更に下降させる。これにより、基板W外に排出される現像液が更に減少し、図5(b)のように、回転と表面張力により基板W上に保持された予め設定された量の液層LLが形成される。
【0047】
時点t8では、現像ノズル3による現像液の吐出を停止させる。基板Wは引き続き回転され、所定量の現像液が基板W上に保持される。なお、時点t8では、溶解生成物は、十分に基板W外に排出されており、所望の寸法パターンのレジスト膜が得られるように、時点t10まで、主現像工程(t3〜t10)の合計の処理時間が調整される。
【0048】
時点t9では、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約100rpmに上昇させる。これにより、基板W上の現像液に遠心力を作用させる。
【0049】
なお、時点t8〜t10の間で、現像液ノズル移動部11は、位置41から待機位置に現像ノズル3を移動させる。また、リンスノズル移動部15は、待機位置から基板Wの上方の所定位置にリンスノズル4を移動させる。リンスノズル移動部15は、基板Wの中心部Cから予め設定された距離D3離れた位置43にリンスノズル4を移動させる(図2参照)。
【0050】
洗浄工程始めの時点t10では、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約1000rpmに更に上昇させる。また、リンスノズル4により、回転する基板W上にリンス液の吐出を開始する。すなわち、図5(c)、図5(d)のように、基板Wの中心部Cから外れた予め設定された位置43に、リンスノズル4によりリンス液の吐出を開始する。これらにより、現像液は基板W外に排出され、基板W上の現像液は、徐々に、リンス液に置換される。
【0051】
時点t11では、リンスノズル4によるリンス液の吐出を停止させる。また、回転保持部2は、基板Wの回転速度を約1800rpmに更に上昇させ、基板W上のリンス液を基板W外に振り切って、基板Wを乾燥させる。そして、時点t12では、回転保持部2は、基板Wの回転を停止させる。なお、基板Wの乾燥は、窒素などの不活性ガスを基板Wに当てて行ってもよい。
【0052】
以上により、現像工程が終了する。回転保持部2は、基板Wの保持を解除する。図示しない搬送ロボは、現像工程終了後の基板Wを搬出する。
【0053】
本実施例によれば、中心部C周りに回転する基板W上であって、中心部Cから外れた予め設定された位置41に、現像ノズル3により現像液の吐出を開始する。これにより、吐出開始直後から遠心力が小さい中心部Cに現像液の流れを起こすことができる。そのため、中心部Cに現像液の吐出を開始した場合に比べ、レジストの溶解生成物を効率よく基板外に排出することができる。また、吐出開始直後から現像ノズル3により直接吐出される現像液の到着位置が分散され、特に基板Wの中心部Cでレジストパターンが細くなることが抑えられ、処理ばらつきを抑制できる。
【0054】
効果を補足する。図6(a)は、中心部Cに現像液を吐出した場合と中心部Cから外した位置41に現像液を吐出した場合との現像後のレジスト寸法(線幅)を比較した図である。両者は共に、往復スキャン動作させている。また、図6(b)は、図6(a)の計測位置を示す図である。
【0055】
図6(a)によれば、中心部Cに吐出した場合に、中心部Cとその付近のレジスト寸法が平均値に対して深く凹んでいる。これに対し、中心部Cを外して吐出した場合は、それよりも凹みが浅くなっている。基板Wの面内のレジスト寸法の範囲(最大値−最小値)は、中心部Cに吐出した場合では、2.3nmであり、中心部Cを外した場合では、1.2nmである。なお、面内ばらつき(3σ)は、中心部Cに吐出した場合では、1.2nmであり、中心部Cを外した場合では1.0nmである。すなわち、面内ばらつきは、大きく差がないものの、局所的に中心部Cで現像処理差が大きくなっている。
【0056】
また、位置41に吐出された現像液の広がりで中心部Cを覆わせているので、中心部Cから外れた位置に直接、現像液が吐出されても、中心部Cの現像処理を実行できる。
【0057】
また、現像液で中心部Cを覆わせた後に、現像ノズル3により現像液を吐出しつつ、ノズル移動部11により現像ノズル3を基板Wの外縁部E側に移動させている。現像液ノズル3により直接吐出される基板W上の位置が移動することで、遠心力で流れる現像液と異なる力が加わるので、溶解生成物をより効率よく排出できる。
【0058】
また、回転する基板W上であって中心部Cから外れた予め設定された位置42に、リンスノズル4によりプリウェット液(本実施例ではリンス液)の吐出を開始し、位置42に吐出されたプリウェット液の広がりで中心部Cを覆わせる。現像液の吐出の開始は、プリウェット液の吐出を停止した後に行われる。
【0059】
これにより、吐出開始直後から遠心力の小さい中心部にプリウェット液の流れを起こすことができる。そのため、中心部Cにプリウェット液の吐出を開始した場合に比べ、プリウェット液中に含まれる気泡を効率よく基板W外に排出することができ、残存する気泡に起因する現像不良を防止することができる。また、位置42に吐出されたプリウェット液の広がりで中心部Cを覆わせているので、中心部Cから外れた位置42に直接、プリウェット液が吐出されても、中心部Cのプリウェット処理を実行できる。
【0060】
また、現像液の吐出を停止した後に、回転する基板W上であって中心部Cから外れた予め設定された位置43に、リンスノズル4によりリンス液の吐出を開始し、位置43に吐出されたリンス液の広がりで中心部Cを覆わせる。
【0061】
これにより、吐出開始直後から遠心力の小さい中心部Cにリンス液の流れを起こすことができる。そのため、中心部Cにリンス液の吐出を開始した場合に比べ、リンス液中に含まれる気泡を効率よく基板W外に排出することができ、リンスが不十分になることを防止することができる。また、位置43に吐出されたリンス液の広がりで中心部Cを覆わせているので、中心部Cから外れた位置43に直接、リンス液が吐出されても、中心部Cのリンス処理を実行できる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0063】
(1)上述した各実施例において、基板Wの回転を下降させて基板W上に現像液の液層LL形成後、溶解生成物低減(現像欠陥低減)のために、次の動作を実行させてもよい。すなわち、図7の時点t71〜t73のように、中心部Cから外れた予め設定された位置41に現像液を吐出中に、一時的に回転速度を上昇させて、基板W上に形成した液層LLを基板W外に排出し、再び液層LLを形成する。この動作を1回または複数回行ってもよい。これにより、フォトレジストの溶解生成物を、より効率的に基板W外に排出することができる。
【0064】
(2)上述した各実施例および変形例(1)では、現像ノズル3は、複数の吐出口3aを備えているが、吐出口3aは1つであってもよい。また、現像ノズル3の吐出口3aは、スリット状であってもよい。
【0065】
(3)上述した各実施例および各変形例では、リンスノズル4は、1つの吐出口4aを備えているが、吐出口4aは、現像ノズル3のように複数(例えば5つ)であってもよい。
【0066】
(4)上述した各実施例および各変形例では、リンス液とプリウェット液は同じ液を用いているが、リンス液とプリウェット液は、異なる液を用いてもよい、また、リンス液とプリウェット液をリンスノズル4により吐出しているが、複数の吐出口4aを備えて、別々の吐出口4aからリンス液とプリウェット液を吐出してもよい。また、リンスノズル4とは別に、プリウェット液用のノズルを備えて、リンスノズル4とは、個別に移動させるようにしてもよい。また、ノズルは複数の吐出口を備え、別々の吐出口からプリウェット液、現像液およびリンス液を吐出させてもよい。
【0067】
(5)上述した各実施例および各変形例では、プリウェット液は位置42に吐出され、リンス液は位置43に吐出される。すなわち、プリウェット液とリンス液は、同じ位置に吐出される。しかし、これらは異なる位置に吐出してもよい。また、プリウェット液とリンス液は、その位置から移動せずに吐出されるが、現像液のように、往復スキャンさせてもよい。また、リンス液は窒素などの不活性ガスと一緒にスキャンさせて、基板Wを乾燥してもよい。
【0068】
(6)上述した各実施例および各変形例において、プリウェット液、現像液およびリンス液は、少なくともいずれかの液が中心部Cから外れた予め設定された位置に吐出されればよい。すなわち、全てで中心部Cから外れた位置に吐出しなくともよい。また、プリウェット処理が不必要であれば、図3の前処理を省略してもよい。また、プリウェット液またはリンス液による基板処理は、単独で行ってもよい。
【0069】
(7)上述した各実施例および各変形例において、複数の吐出口3aを備える現像ノズル3は、図2図4(d)のように、吐出口3aの列の延長上に中心部Cが存在するが、延長上に中心部Cが存在していなくてもよい。例えば、図8のように、列の形成する方向と交わる方向に中心部Cが存在するように、現像ノズル3が配置してもよい。すなわち、図8の中心部Cから外した位置に現像液の吐出を開始してもよい。そして、矢印のようにスキャンしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 … 現像装置
2 … 回転保持部
3 … 現像ノズル
3a … 吐出口
4 … リンスノズル
4a … 吐出口
11 … 現像ノズル移動部
15 … リンスノズル移動部
31 … 制御部
41〜43 … 位置
C … 中心部
E … 外縁部
LL … 液層
Lpre … プリウェット液
Ldev … 現像液
Lrin … リンス液
W … 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9