特許第6814891号(P6814891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814891
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ベンズイミダゾール誘導体の酸付加塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20210107BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20210107BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C07D405/12CSP
   A61K31/4184
   A61P1/04
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-536803(P2019-536803)
(86)(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公表番号】特表2019-529557(P2019-529557A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】KR2017010332
(87)【国際公開番号】WO2018056697
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0120996
(32)【優先日】2016年9月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミンキョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンア
(72)【発明者】
【氏名】チェ,クヮンド
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヒョンチョル
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−520017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 405/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩(リンゴ酸塩)
[化1]
【請求項2】
前記ピドレート塩は、下記化学式2で表される、請求項1に記載の塩。
[化2]
【請求項3】
前記マレート塩(リンゴ酸塩)は、下記化学式3で表される、請求項1に記載の塩。
[化3]
【請求項4】
前記塩は非晶質である、請求項1に記載の塩。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の塩を含む、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患は、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指膓潰瘍、NSAIDにより誘導される潰瘍、胃炎、ヘリコバクターピロリ感染症(Helicobacter pylori infection)、消化不良、機能性消化不良、ゾリンジャー−エリソン症侯群(Zollinger−Ellison syndrome)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、内臓痛、胸やけ、悪心、食道炎、嚥下困難、唾液分泌、気道障害、及び喘息を含む群より選択されるいずれか1つである、請求項に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記組成物の剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、坐剤、及び注射剤からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項に記載の薬学組成物。
【請求項8】
a)下記化学式1で表される化合物と、ピログルタミン酸又はリンゴ酸を有機溶媒に溶解させるステップ、
b)前記a)ステップで製造された溶液を減圧濃縮して固体を析出させた後、共溶媒(Co−solvent)を加えて撹拌するステップ、及び
c)析出された固体を濾過、乾燥するステップを含む、請求項1に記載の塩の製造方法。
[化1]
【請求項9】
前記ステップa)の有機溶媒は、メタノールであり、前記化学式1で表される化合物に対して10(体積/重量)倍添加される、請求項に記載の塩の製造方法。
【請求項10】
前記ステップb)の共溶媒(Co−solvent)は、アセトンとエチルアセテートの混合溶媒であり、前記化学式1で表される化合物に対して5(体積/重量)倍添加される、請求項に記載の塩の製造方法。
【請求項11】
前記共溶媒の割合は、アセトン:エチルアセテート=1:4(v/v)である、請求項10に記載の塩の製造方法。
【請求項12】
アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の治療のための薬剤の製造において、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩(リンゴ酸塩)使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性と溶解度に優れたベンズイミダゾール誘導体の酸付加塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記化学式1で表される4−[((4S)−5,7−ジフルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル)オキシ]−N,N,2−トリメチル−1H−ベンズイミダゾール−6−カルボキサミド[(S)−4−((5,7−difluorochroman−4−yl)oxy)−N,N,2−trimethyl−1H−benzo[d]imidazole−6−carboxamide]は、分子量387.39を有する医薬活性成分である。
【0003】
[化1]
【0004】
この化合物は、胃腸管疾患、例えば、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指膓潰瘍、NSAIDにより誘導される潰瘍、胃炎、ヘリコバクターピロリ感染症(Helicobacter pylori infection)、消化不良及び機能性消化不良、ゾリンジャー−エリソン症侯群(Zollinger−Ellison syndrome)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、内臓痛、胸やけ、悪心、食道炎、嚥下困難、唾液分泌、気道障害、及び喘息のような(これらに限定されない)アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防及び治療用途を有する医薬の原料物質である。
【0005】
国際特許第WO2007072146号には、アシッドポンプ阻害剤(H+K+ATPase inhibitor)として作用するクロマン(Chromane)で置換されたベンズイミダゾール誘導体が開示されている。また、国際特許第WO2016117814号には、上記化学式1の新規結晶形及びその製法が公知となっている。特に、上記特許には、長期及び苛酷な保管条件下で安定しており、経時変化による結晶転移が観察されず、光安定性に優れ、吸湿性及び静電気の誘発が少なくて、製剤の製造に有利な上記化学式1の化合物の結晶性の遊離塩基が開示されている。
【0006】
前記化合物は、水溶解度が非常に低く(0.02mg/ml、pH6.8)、酸性条件で溶解度が増加(0.7mg/ml、pH3.0)するが、その効果は大きくなく、酸性条件下で分解生成物が増加して安定性がよくないため、塩の選択に制約がある。また、溶解度の改善のために界面活性剤などの可溶化剤を用いる場合、過量の賦形剤が必要となり、困難である。
【0007】
一方、遊離塩基又は結晶性酸付加塩では、製剤的に有意な水溶解度を確保することができず、特に、注射剤形を考慮すると、溶解速度(Dissolution rate)の他に、血漿pHで析出されないように析出安定性を確保しなければならないため、速度論的溶解度と熱力学的溶解度(kinetic and thermodynamic solubility)の十分な確保がいずれも重要である。ただ、熱力学的安定性が劣ると共に酸性条件下で分解される前記化合物の特性上、無定形の酸付加塩は、溶解度と安定性をいずれも確保することは非常に難しい。
【0008】
医薬において結晶多形が重要である理由は、薬物により様々な形態で結晶多形が存在することができ、時には、特定の結晶多形が医薬原料の製造容易性、溶解度、保存安定性、完剤の製造容易性及び生体内の薬理活性に影響を与えることがあるためである。優れた結晶形を選定する基準は、薬物が要求する最も重要な物理化学的特性に起因することになるが、熱力学的に最も安定したものを選ぶか、医薬原料及び完剤の製造に最適化されたものを選ぶか、薬物の溶解度及び溶解速度を改善するか、又は、薬物動態学的特性の変化を与えるためなど、その目的により最適化された結晶形の選定が異なり得る。
【0009】
一方、無定形の医薬原料は、粒子の表面積(surface area)が増加するため、一般的に速度論的溶解度は増加するようになるものの、生体内pH条件下での熱力学的溶解度の改善には依然として限界がある。また、無定形の医薬原料は、結晶化による格子エネルギーを有さず、明らかな融点も有さず、結晶性の同様の医薬原料と比べると、安定性は著しく低くなる。一方、注射剤形の製剤化において、時折凍結乾燥物に製造可能な固体として無定形の医薬原料が用いられたりするが、このような場合、無定形の医薬原料は、製剤内において安定性、溶解度及び析出安定性が全て確保されなければならない。
【0010】
そこで、本発明者らは、前記化学式1で表される化合物が優れた水溶解度と析出安定性を有すると共に熱力学的にも非常に安定した注射製剤の医薬原料として用いられる酸付加塩を開発しようと鋭意努力した結果、前記化学式1で表される化合物のピドレート塩及びマレート塩が優れた安定性と溶解度を同時に現わすことを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許第WO2007072146号
【0012】
【特許文献2】国際特許第WO2016117814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、下記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩、及びその製造方法を提供することである。
【0014】
[化1]
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための一態様として、本発明は、下記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩を提供する。
【0016】
[化1]
【0017】
具体的には、前記化学式1の化合物のピドレート塩は、下記化学式2で表されるピドレート塩であってもよく、前記化学式1の化合物のマレート塩は、下記化学式3で表されるマレート塩であってもよい。
【0018】
[化2]
【0019】
[化3]
【0020】
本発明において、前記化学式1の化合物は、Potassium competitive acid blocker(P−CAB)薬理機序で胃腸管疾患及び胃腸管疾患関連出血を予防及び治療する新規物質である。前記化学式1の化合物は、pH6.8の緩衝溶液での溶解度が0.02mg/mlに過ぎず、生体内pH条件で非常に低い水溶解度を有する。また、溶解度が増加する酸性環境では、下記化学式4の分解生成物が、露出時間に比例して持続的に増加する。
【0021】
[化4]
【0022】
具体的には、前記化学式4の分解生成物は、酸性条件で下記化学式5の機序によりエーテル結合が切断されて生成され、pHが低いほど、又は低いpHに露出する時間が長いほど、比例的に増加する傾向を示す。
【0023】
[化5]
【0024】
前記化学式1の化合物の水溶解度は、pH3の緩衝溶液条件下でも0.7mg/mlに過ぎず、溶解度の増加のためには、より低いpHが求められるが、この場合、安定性の維持に困難がある。また、低いpHで溶解度を改善したとしても、生体内pH条件で析出されてはならないので、本発明で求められる化学式1の化合物の物性に対し、下記の4つの条件を同時に満たさなければならない。
【0025】
1)投与用量及び体積を考慮すると、50mg/ml以上の溶解度を確保することが好ましく、2)pH6.8の緩衝溶液で10mg/ml以上溶解された状態で時間が経過しても分解生成物が析出されてはならず、3)医薬原料として用いることができるように十分な安定性を確保しなければならず、4)保管時、無定形を維持し、経時変化により結晶性に転換されないこと。
【0026】
本発明者らは、前記4つの条件を満たすために、化学式1の化合物と水溶性アミノ酸との共結晶(co−crystal)を製造しようとした。これと関連して、ヨーロッパ公開発明第EP2493457号は、アミノ酸をマトリックス形成剤(matrix forming agent)として薬物と結合させて速く溶解される固体複合体を開示している。よって、本発明の化学式1の化合物は、速い溶出と同時に生体内pH条件で析出されてはならないが、酸付加塩のようにpHを下げて溶出を速くすると、中性に近い生体内pH環境においてイオン化度が下がり、固体析出を誘導する可能性があるので、本発明者らは、相対的にpHの影響を少なくできるように、水溶性アミノ酸と化学式1の化合物との間に水素結合及び分子間結合を媒介とする共結晶の製造を試みた。
【0027】
下記表1は、本発明において共結晶形成子(co−crystal former)として用いたアミノ酸、及び共結晶を形成できる化合物であり、共結晶形成子の当量は、化学式1の化合物に対して1モル比(molar ratio)とした。
【0028】
【表1】
【0029】
下記表2は、前記表1の共結晶形成子と化学式1の化合物の1:1モル比の共結晶形成時における結晶性の有無及び常温における水溶解度を示したものである。具体的には、前記表1の1ないし6の共結晶形成子は、結晶質を形成しており、7ないし12の共結晶形成子は、非晶質の特性を示し、その結果はPXRDにより確認した。一方、結晶質の一例として、化学式1の化合物とL−アラニンとの共結晶は、下記化学式6のように、水素結合が媒介となって結晶質の特性を示すことができる。
【0030】
[化6]
【0031】
【表2】
【0032】
前記表2の結果により、本発明の化学式1の化合物は、水溶性アミノ酸、水素結合供与体及び受容体を有する類似化合物群からなる共結晶形成子との反応結合時に水溶解度が大きく改善されないことを確認した。ただ、非晶質の固体は、結晶質の固体に対して溶解度の改善度が相対的に高いことが確認され、上記結果に基づいて本発明を完成するに至った。
【0033】
本発明において、上記条件を全て満たす塩は、化学式1の化合物のピドレート塩及び化学式1の化合物のマレート塩である。
【0034】
具体的には、前記化学式2で表される、化学式1の化合物のピドレート塩は、化学式1の化合物とピログルタミン酸が塩を形成したものであり、前記ピログルタミン酸は、ピログルタメート、ピドル酸又はピドレートと同一の意味で用いられる。具体的には、前記ピログルタミン酸は、L型−ピログルタミン酸であってもよい。
【0035】
また、前記化学式3で表される、化学式1の化合物のマレート塩は、化学式1の化合物とリンゴ酸が塩を形成したものであり、前記リンゴ酸は、マレートと同一の意味で用いられる。具体的には、前記リンゴ酸は、L型−リンゴ酸であってもよい。
【0036】
化学式1の化合物のピドレート塩、又は化学式1の化合物のマレート塩は、好ましくは、非晶質又は部分結晶質であってもよく、最も好ましくは、塩の全重量%基準で95%以上が非晶質の部分結晶質であってもよい。
【0037】
本発明の一実施例では、12種の化学式1の化合物の無定形の酸付加塩の溶解度を比較した結果、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−ピログルタミン酸、L−リンゴ酸、及び酒石酸が他の塩に比べて優れた溶解度を示し(表4)、前記6種の塩の中でL−ピログルタミン酸、及びL−リンゴ酸の塩の液相安定性及び固相安定性が他の塩に比べて優れており(表5及び表6)、pH6.8の生体内pH条件においても均質な溶液を維持することを確認して(表7)、化学式1の化合物のピドレート、及び化学式1の化合物のマレート塩が化学式1の化合物の最適化された製剤用の医薬原料であることが分かった。
【0038】
本発明は、他の態様として、化学式1の化合物のピドレート塩又はマレート塩を含むアシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【0039】
前記化学式1の化合物のピドレート塩、及び化学式1の化合物のマレート塩は、前述したとおりである。
【0040】
前記アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患は、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指膓潰瘍、NSAIDにより誘導される潰瘍、胃炎、ヘリコバクターピロリ感染症(Helicobacter pylori infection)、消化不良及び機能性消化不良、ゾリンジャー−エリソン症侯群(Zollinger−Ellison syndrome)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、内臓痛、胸やけ、悪心、食道炎、嚥下困難、唾液分泌、気道障害、及び喘息を含む群より選択されたいずれか1つであってもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、坐剤及び注射剤から構成された群より選択されるいずれか1つの剤形であってもよいが、これに制限されない。具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる化学式2又は3で表される、化学式1の化合物のピドレート又はマレート塩が生体内pH環境で優れた安定性を示す特性上、前記薬学組成物は、注射剤の剤形であってもよい。
【0042】
本発明の組成物に含まれた活性成分の量は、投与対象である患者の状態、目的とする治療程度などによる。好ましくは、本発明の組成物は、活性成分として化学式2で表される化合物又は化学式3で表される化合物に存在する化学式1の化合物を1ないし100mg/mlの濃度で含んでもよく、好ましくは、1ないし50mg/mlの濃度で含んでもよい。前記活性成分が1mg/ml以下の低濃度の場合、十分な治療効果を得るために大量の注射液が投入されるので、患者の患部への投与の際に困難があり、100mg/ml以上の高濃度の場合、安定化剤まで溶解させる組成物を満足させるには困難があり、再懸濁又は溶解時に析出され、又は類縁物質が発生することがある。
【0043】
本発明による注射剤組成物を製造するときには、注射用水を使用して製造することができ、本発明における化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む注射剤は、当業界において通常使用される等張化剤、緩衝液、浸透化剤などを制限なく選択的に含んでもよい。
【0044】
また、本発明は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療における使用のための、化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の用途を提供する。
【0045】
また、本発明は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における使用のための、化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の用途を提供する。薬剤の製造のための前記化学式Iで表される化合物で表されるピドレート塩又はマレート塩は、許容される補助剤、希釈剤、担体などを混合してもよく、その他の活性製剤とともに複合製剤として製造されて活性成分の相乗作用を有することができる。
【0046】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の治療学的に有効な量の投与を含む、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0047】
本発明において、前記「対象体」は、哺乳類、特にヒトを含む。
【0048】
本発明で使用される「治療学的に有効な量」という用語は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療に有効な前記塩の量を意味する。
【0049】
本発明のアシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療方法は、前述した塩を投与することで、兆候の発現前に疾病そのものを扱うだけでなく、その兆候を阻害又は回避することも含む。疾患の管理において、特定の活性成分の予防的又は治療学的用量は、疾病又は状態の本性(nature)と重篤度、さらに活性成分が投与される経路により多様である。用量及び用量の頻度は、個々の患者の年齢、体重及び反応により様々である。適合した用量・用法は、このような因子を当然考慮するこの分野における通常の知識を有する者により容易に選択される。
【0050】
本発明の用途、組成物、治療方法において言及された事項は、互いに矛盾しない限り同様に作用する。
【0051】
本発明は、他の一態様として、
【0052】
a)化学式1で表される化合物と、酸付加塩としてピログルタミン酸又はリンゴ酸を有機溶媒に溶解させるステップ、
【0053】
b)前記a)ステップで製造された溶液を減圧濃縮して固体を析出させた後、共溶媒(Co−solvent)を加えて撹拌するステップ、及び
【0054】
c)析出された固体を濾過、乾燥するステップを含む、化学式1で表される化合物のピログルタミン酸塩又はマレート塩の製造方法を提供する。
【0055】
本発明の製造方法は、より具体的には、化学式1で表される化合物を有機溶媒に溶解させ、これに酸付加塩を溶解させるa)ステップを含む。この場合、前記使用される酸は、ピログルタミン酸又はリンゴ酸であり、他の酸を使用して酸付加塩を製造し、これを溶解する場合、製造された化学式1の化合物の塩は、溶解度が改善されない、又は分解生成物又は類縁物質が発生するなど、液相又は固相安定性が低く、固体が析出されるなどの問題点が生じ得る。
【0056】
具体的には、前記ピログルタミン酸は、L型−ピログルタミン酸、前記リンゴ酸は、L型−リンゴ酸であってもよい。
【0057】
前記有機溶媒は、メタノールであってもよいが、これに制限されず、前記有機溶媒は、化学式1で表される化合物に対して5倍ないし20倍(体積/重量)であってもよく、好ましくは10倍(体積/重量)添加されてもよい。前記有機溶媒の添加量が化学式1で表される化合物に対して5倍未満であるか20倍を超える場合は、製造された塩に含まれたピドレート又はマレートの量が適合しておらず、優れた溶解度及び安定性を示すことができない。
【0058】
本発明の製造方法は、より具体的には、前記ステップa)で製造された溶液を減圧濃縮して固体を析出させた後、共溶媒(Co−solvent)を加えて撹拌するステップを含む。
【0059】
前記共溶媒は、アセトン及びエチルアセテートの混合溶媒であってもよいが、これに制限されず、前記共溶媒は化学式1で表される化合物に対して1ないし10倍(体積/重量)であってもよく、好ましくは5倍(体積/重量)添加されてもよい。前記有機溶媒の添加量が化学式1で表される化合物に対して1倍未満であるか10倍を超える場合は、製造された塩に含まれたピドレート又はマレートの量が適合しておらず、優れた溶解度及び安定性を示すことができない。
【0060】
前記アセトン/エチルアセテートの共溶媒の割合は、アセトン:エチルアセテート=1:4(V/V)であってもよいが、これに制限されない。
【0061】
本発明の製造方法は、より具体的には、前記b)ステップで析出された固体を濾過して乾燥するステップを含む。
【0062】
前記濾過は、減圧濾過であってもよいが、これに制限されない。
【0063】
前記乾燥は、通常の乾燥方法、例えば凍結乾燥、回転蒸発乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又は流動層乾燥により行われてもよく、具体的には真空乾燥により行われる。
【発明の効果】
【0064】
本発明で提供する化学式1の化合物の新規の無定形の酸付加塩は、優れた物理化学的特性、安定性、溶解度を全て有しており、経口用製剤及び注射用製剤の医薬原料として容易に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のピドレート塩のH−NMR結果を示した図である。
【0066】
図2は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のマレート塩のH−NMR結果を示した図である。
【0067】
図3は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のピドレート塩のPXRD結果を示した図である。
【0068】
図4は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のマレート塩のPXRD結果を示した図である。
【0069】
図5は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のフマル酸塩のPXRD結果を示した図である。
【0070】
図6は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のシュウ酸塩のPXRD結果を示した図である。
【0071】
図7は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のクエン酸塩のPXRD結果を示した図である。
【0072】
図8は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物の酒石酸塩のPXRD結果を示した図である。
【0073】
図9は、結晶形の化学式1の化合物の遊離塩基のDSC結果を示した図である。
【0074】
図10は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のピドレート塩のDSC結果を示した図である。
【0075】
図11は、本発明の一実施例により製造された無定形の化学式1の化合物のマレート塩のDSC結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、実施例により本発明の構成及び効果についてより詳しく説明する。ただ、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は下記実施例により制限されない。
【0077】
実施例1:化学式1の化合物のピドレート塩の製造
【0078】
25℃で結晶形の化学式1の化合物100gとL−ピログルタミン酸(34.98g、1.05eq.)をメタノール1000mlに完全に溶解させた後、溶液を50℃で減圧撹拌して固体が析出されるまで濃縮した。濃縮物に25℃でアセトン/エチルアセテート=1/4(500ml)の共溶媒(Co−solvent)を加えた後、30分間激しく撹拌した。固体を減圧濾過して濾し、エチルアセテート100mlで洗浄した後、40℃で16時間真空乾燥して、無定形の化学式1の化合物のピドレート塩を白色粉末で113.8g(収率85.4%)得た(図1)。
【0079】
実施例2:化学式1の化合物のマレート塩の製造
【0080】
25℃で結晶形の化学式1の化合物100gとL−リンゴ酸(36.33g、1.05eq.)をメタノール1000mlに完全に溶解させた後、溶液を50℃で減圧撹拌して固体が析出されるまで濃縮した。濃縮物に25℃でアセトン/エチルアセテート=1/4(500ml)の共溶媒(Co−solvent)を加えた後、30分間激しく撹拌した。固体を減圧濾過して濾し、エチルアセテート100mlで洗浄した後、40℃で16時間真空乾燥して、無定形の化学式1の化合物のマレート塩を白色粉末で120.4g(収率89.4%)得た(図2)。
【0081】
比較例1:化学式1の化合物の無定形の遊離塩基の製造
【0082】
25℃で化学式1の化合物100gをメタノール1000mlに完全に溶解させた後、溶液を50℃で減圧撹拌して固体が析出されるまで濃縮した。濃縮物に25℃でアセトン/エチルアセテート=1/4(500ml)の共溶媒(Co−solvent)を加えた後、30分間激しく撹拌した。固体を減圧濾過して濾し、エチルアセテート100mlで洗浄した後、40℃で16時間真空乾燥して、無定形の化学式1の化合物の遊離塩基を白色粉末で94.7g(収率94.7%)得た。
【0083】
実験例1:溶解度比較試験
【0084】
化学式1の化合物の溶解度を高める一方、酸付加塩により前記化合物がプロトン化(protonation/acidification)した後、アニオン(anion)が求核剤(nucleophile)として作用しないようにするために、下記表3の12種の酸を選定した後、無定形の酸付加塩を製造した。
【0085】
【表3】
【0086】
具体的には、1.5−Naphthalene disulfonic Acidを除いた11種の酸に対しては、化学式1の化合物とそれぞれ1:1当量(molar ratio)の酸付加塩を製造し、1.5−Naphthalene disulfonic acidの場合、化学式1の化合物と0.5:1当量のHemi−saltを製造した。前記製造方法は、実施例1及び2と同様である。
【0087】
下記表4は、前記12種の無定形の酸付加塩に対する常温における水溶解度を示したものである。前記水溶解度は、過飽和法を通じて測定した。それぞれの溶解度は、化学式1の遊離塩基基準で換算するのではなく、酸付加塩自体の溶解度を測定して次の表4に示した。また、比較例1の化学式1の化合物の無定形の遊離塩基に対する溶解度を測定して次の表4にまとめて示した。
【0088】
【表4】
【0089】
前記表4から分かるように、12種の酸付加塩のうち6種の塩で50mg/ml以上の水溶解度を示すことを確認した。具体的には、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−ピログルタミン酸、L−リンゴ酸、及び酒石酸の塩の場合、溶解度の改善効果を示し、特に、シュウ酸、L−ピログルタミン酸、及びL−リンゴ酸の塩の場合、100以上の著しく優れた溶解度を示すことを確認した。
【0090】
前記結果により、化学式1の化合物の無定形の酸付加塩は、無定形の遊離塩基に対して溶解度が大きく増加することが分かり、特に塩の種類により溶解度の改善効果が異なることが分かった。
【0091】
実験例2:粉末X−線回折(PXRD)分析
【0092】
化学式1の化合物の塩に存在する化学式1の化合物の結晶性変化を分析するために、PXRD分析を実施した。
【0093】
具体的には、前記実験例1で確認した50mg/ml以上の水溶解度を有する化学式1の化合物の無定形の酸付加塩6種(L−ピログルタミン酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−リンゴ酸、L−酒石酸の塩)をそれぞれPE−bagに入れ、40℃及び75%RHの条件の安定性チャンバーに1ヶ月間保管した。その後、X−線粉末回折計(D8 Advance)上でCuKα線を使用して前記塩のPXRD分析を実施した。前記回折計には、貫通力が備えられており、電流量は、45kV及び40mAに設定した。発散及び散乱スリットは1゜に設定し、受光スリットは0.2mmに設定した。5から35゜2θまで3゜/分(0.4秒/0.02゜間隔)のθ−2θ連続スキャンを使用した。
【0094】
保管後1ヶ月が経った時点でPXRDを確認した結果、全ての種類の塩が無定形を維持しており、結晶転移が観察されないことを確認した(図3ないし図8)。
【0095】
実験例3:液相安定性比較試験
【0096】
前記実験例1で確認した50mg/ml以上の水溶解度を有する化学式1の化合物の無定形の酸付加塩6種(L−ピログルタミン酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−リンゴ酸、L−酒石酸の塩)を精製水にそれぞれ溶解して20mg/mlの濃度に製造した後、40℃で撹拌し、初期と1日目にHPLCで分析して分解生成物(化学式4の化合物)の発生度を多型性(polymorphism)を有さない希釈液状態の化学式1の化合物のAUC(area under the curve)に対する%に換算して下記表5に示した。
【0097】
【表5】
【0098】
その結果、液相安定性は、化学式1の化合物のL−ピログルタミン酸とL−リンゴ酸の塩が他の塩に比べて3倍以上優れており、化学式1の化合物のシュウ酸塩で化学式4の化合物の分解生成物が最も多く発生することを確認した。よって、分解生成物の場合、0.1%以下に管理しなければならない注射剤形のAPI(Active Pharmaceutical Ingredients)の許可基準ガイドライン(ICH guideline)に鑑みると、前記L−ピログルタミン酸及びL−リンゴ酸の塩のみが薬剤学的に使用可能な安定した酸付加塩物質であることを確認した。
【0099】
一方、物性的側面では、クエン酸塩とフマル酸塩の場合、ねばねばしたゲルが形成されて均質な液相状態が維持されないのに対し、残りの4種の塩は均質な液相を維持することを確認した。
【0100】
実験例4:固相安定性比較試験
【0101】
前記実験例1で確認した50mg/ml以上の水溶解度を有する化学式1の化合物の無定形の酸付加塩6種(L−ピログルタミン酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−リンゴ酸、L−酒石酸の塩)をそれぞれPE−bagに入れて40℃及び75%RHの条件の安定性チャンバーに1ヶ月間保管した。その後、カールフィッシャー分析による水分の発生度、HPLC分析による類縁物質の発生度及び前記実験例3と同様に測定した分解生成物(化学式4の化合物)の発生度を面積百分率に換算して下記表6に示した。
【0102】
【表6】
【0103】
その結果、液相安定性の結果と同様に、固相加速安定性は、化学式1の化合物のL−ピログルタミン酸塩とL−リンゴ酸の塩が最も優れており、全体の類縁物質が最も多く発生したのはフマル酸塩であることを確認した。よって、類縁物質が0.1%以下に管理されなければならない注射剤形のAPI(Active Pharmaceutical Ingredients)の許可基準ガイドライン(ICH guideline)に鑑みると、前記L−ピログルタミン酸塩及びL−リンゴ酸塩のみが薬剤学的に使用可能な安定した酸付加塩物質であることを確認した。
【0104】
一方、物性的側面では、全ての種類の塩で吸湿性が観察されず、白色の粉末状を維持することを目視で確認した。
【0105】
実験例5:析出安定性比較試験
【0106】
前記実験例1で確認した50mg/ml以上の水溶解度を有する化学式1の化合物の無定形の酸付加塩6種(L−ピログルタミン酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−リンゴ酸、L−酒石酸の塩)をそれぞれpH6.8の緩衝溶液に10mg/mlの濃度で完全に溶解した後、37℃で24時間保管した。その後、溶液の状態を観察して下記表7に示した。
【0107】
【表7】
【0108】
その結果、フマル酸、シュウ酸、及びクエン酸の塩の場合、固体が析出されたのに対し、L−ピログルタミン酸、L−リンゴ酸、及びL−酒石酸の塩の場合は、均質な溶液が維持されることを確認した。これにより、L−ピログルタミン酸、L−リンゴ酸、及びL−酒石酸の塩が優れた析出安定性を示すことを確認した。
【0109】
実験例6:温度示差走査熱量測定(DSC)分析
【0110】
TA社から入手したDSCQ20を使用して、窒素浄化下で20℃から300℃まで10/minのスキャン速度で、密閉パンでDSC測定を行った。具体的には、前記実施例1及び2の反応物質である結晶形の化学式1の化合物と、生成物質である無定形のピドレート塩、及びマレート塩に対してDSC測定を行った。
【0111】
その結果、結晶形の化学式1の化合物の遊離塩基から無定形の酸付加塩(ピドレート塩、及びマレート塩)が合成されたことを確認した(図9ないし図11)。
【0112】
以上の結果により、化学式2で表される、化学式1の化合物のピドレート、及び化学式3で表される、化学式1の化合物のマレート塩が化学式1のベンズイミダゾール誘導体の最適化された注射製剤用医薬原料であることを確認した。
【0113】
以上、本発明の特定の部分を詳しく説明したが、当業界の通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好適な実施例に過ぎず、本発明の範囲がこれに制限されないことは明らかである。
【0114】
したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求の範囲とその等価物により定義されると言える。
【0115】
本明細書は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば十分に認識、類推できる内容についてはその詳細な記載を省略しており、本明細書に記載の具体的な例示の他に、本発明の技術的思想や必須構成を変更しない範囲内でより多様な変更が可能である。したがって、本発明は、本明細書で具体的に説明し例示したものとは異なる方式によっても実施することができ、これは、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば理解できる事項である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11