【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための一態様として、本発明は、下記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩を提供する。
【0016】
[化1]
【0017】
具体的には、前記化学式1の化合物のピドレート塩は、下記化学式2で表されるピドレート塩であってもよく、前記化学式1の化合物のマレート塩は、下記化学式3で表されるマレート塩であってもよい。
【0018】
[化2]
【0019】
[化3]
【0020】
本発明において、前記化学式1の化合物は、Potassium competitive acid blocker(P−CAB)薬理機序で胃腸管疾患及び胃腸管疾患関連出血を予防及び治療する新規物質である。前記化学式1の化合物は、pH6.8の緩衝溶液での溶解度が0.02mg/mlに過ぎず、生体内pH条件で非常に低い水溶解度を有する。また、溶解度が増加する酸性環境では、下記化学式4の分解生成物が、露出時間に比例して持続的に増加する。
【0021】
[化4]
【0022】
具体的には、前記化学式4の分解生成物は、酸性条件で下記化学式5の機序によりエーテル結合が切断されて生成され、pHが低いほど、又は低いpHに露出する時間が長いほど、比例的に増加する傾向を示す。
【0023】
[化5]
【0024】
前記化学式1の化合物の水溶解度は、pH3の緩衝溶液条件下でも0.7mg/mlに過ぎず、溶解度の増加のためには、より低いpHが求められるが、この場合、安定性の維持に困難がある。また、低いpHで溶解度を改善したとしても、生体内pH条件で析出されてはならないので、本発明で求められる化学式1の化合物の物性に対し、下記の4つの条件を同時に満たさなければならない。
【0025】
1)投与用量及び体積を考慮すると、50mg/ml以上の溶解度を確保することが好ましく、2)pH6.8の緩衝溶液で10mg/ml以上溶解された状態で時間が経過しても分解生成物が析出されてはならず、3)医薬原料として用いることができるように十分な安定性を確保しなければならず、4)保管時、無定形を維持し、経時変化により結晶性に転換されないこと。
【0026】
本発明者らは、前記4つの条件を満たすために、化学式1の化合物と水溶性アミノ酸との共結晶(co−crystal)を製造しようとした。これと関連して、ヨーロッパ公開発明第EP2493457号は、アミノ酸をマトリックス形成剤(matrix forming agent)として薬物と結合させて速く溶解される固体複合体を開示している。よって、本発明の化学式1の化合物は、速い溶出と同時に生体内pH条件で析出されてはならないが、酸付加塩のようにpHを下げて溶出を速くすると、中性に近い生体内pH環境においてイオン化度が下がり、固体析出を誘導する可能性があるので、本発明者らは、相対的にpHの影響を少なくできるように、水溶性アミノ酸と化学式1の化合物との間に水素結合及び分子間結合を媒介とする共結晶の製造を試みた。
【0027】
下記表1は、本発明において共結晶形成子(co−crystal former)として用いたアミノ酸、及び共結晶を形成できる化合物であり、共結晶形成子の当量は、化学式1の化合物に対して1モル比(molar ratio)とした。
【0028】
【表1】
【0029】
下記表2は、前記表1の共結晶形成子と化学式1の化合物の1:1モル比の共結晶形成時における結晶性の有無及び常温における水溶解度を示したものである。具体的には、前記表1の1ないし6の共結晶形成子は、結晶質を形成しており、7ないし12の共結晶形成子は、非晶質の特性を示し、その結果はPXRDにより確認した。一方、結晶質の一例として、化学式1の化合物とL−アラニンとの共結晶は、下記化学式6のように、水素結合が媒介となって結晶質の特性を示すことができる。
【0030】
[化6]
【0031】
【表2】
【0032】
前記表2の結果により、本発明の化学式1の化合物は、水溶性アミノ酸、水素結合供与体及び受容体を有する類似化合物群からなる共結晶形成子との反応結合時に水溶解度が大きく改善されないことを確認した。ただ、非晶質の固体は、結晶質の固体に対して溶解度の改善度が相対的に高いことが確認され、上記結果に基づいて本発明を完成するに至った。
【0033】
本発明において、上記条件を全て満たす塩は、化学式1の化合物のピドレート塩及び化学式1の化合物のマレート塩である。
【0034】
具体的には、前記化学式2で表される、化学式1の化合物のピドレート塩は、化学式1の化合物とピログルタミン酸が塩を形成したものであり、前記ピログルタミン酸は、ピログルタメート、ピドル酸又はピドレートと同一の意味で用いられる。具体的には、前記ピログルタミン酸は、L型−ピログルタミン酸であってもよい。
【0035】
また、前記化学式3で表される、化学式1の化合物のマレート塩は、化学式1の化合物とリンゴ酸が塩を形成したものであり、前記リンゴ酸は、マレートと同一の意味で用いられる。具体的には、前記リンゴ酸は、L型−リンゴ酸であってもよい。
【0036】
化学式1の化合物のピドレート塩、又は化学式1の化合物のマレート塩は、好ましくは、非晶質又は部分結晶質であってもよく、最も好ましくは、塩の全重量%基準で95%以上が非晶質の部分結晶質であってもよい。
【0037】
本発明の一実施例では、12種の化学式1の化合物の無定形の酸付加塩の溶解度を比較した結果、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、L−ピログルタミン酸、L−リンゴ酸、及び酒石酸が他の塩に比べて優れた溶解度を示し(表4)、前記6種の塩の中でL−ピログルタミン酸、及びL−リンゴ酸の塩の液相安定性及び固相安定性が他の塩に比べて優れており(表5及び表6)、pH6.8の生体内pH条件においても均質な溶液を維持することを確認して(表7)、化学式1の化合物のピドレート、及び化学式1の化合物のマレート塩が化学式1の化合物の最適化された製剤用の医薬原料であることが分かった。
【0038】
本発明は、他の態様として、化学式1の化合物のピドレート塩又はマレート塩を含むアシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【0039】
前記化学式1の化合物のピドレート塩、及び化学式1の化合物のマレート塩は、前述したとおりである。
【0040】
前記アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患は、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指膓潰瘍、NSAIDにより誘導される潰瘍、胃炎、ヘリコバクターピロリ感染症(Helicobacter pylori infection)、消化不良及び機能性消化不良、ゾリンジャー−エリソン症侯群(Zollinger−Ellison syndrome)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、内臓痛、胸やけ、悪心、食道炎、嚥下困難、唾液分泌、気道障害、及び喘息を含む群より選択されたいずれか1つであってもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、坐剤及び注射剤から構成された群より選択されるいずれか1つの剤形であってもよいが、これに制限されない。具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる化学式2又は3で表される、化学式1の化合物のピドレート又はマレート塩が生体内pH環境で優れた安定性を示す特性上、前記薬学組成物は、注射剤の剤形であってもよい。
【0042】
本発明の組成物に含まれた活性成分の量は、投与対象である患者の状態、目的とする治療程度などによる。好ましくは、本発明の組成物は、活性成分として化学式2で表される化合物又は化学式3で表される化合物に存在する化学式1の化合物を1ないし100mg/mlの濃度で含んでもよく、好ましくは、1ないし50mg/mlの濃度で含んでもよい。前記活性成分が1mg/ml以下の低濃度の場合、十分な治療効果を得るために大量の注射液が投入されるので、患者の患部への投与の際に困難があり、100mg/ml以上の高濃度の場合、安定化剤まで溶解させる組成物を満足させるには困難があり、再懸濁又は溶解時に析出され、又は類縁物質が発生することがある。
【0043】
本発明による注射剤組成物を製造するときには、注射用水を使用して製造することができ、本発明における化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む注射剤は、当業界において通常使用される等張化剤、緩衝液、浸透化剤などを制限なく選択的に含んでもよい。
【0044】
また、本発明は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療における使用のための、化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の用途を提供する。
【0045】
また、本発明は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における使用のための、化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の用途を提供する。薬剤の製造のための前記化学式Iで表される化合物で表されるピドレート塩又はマレート塩は、許容される補助剤、希釈剤、担体などを混合してもよく、その他の活性製剤とともに複合製剤として製造されて活性成分の相乗作用を有することができる。
【0046】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物のピドレート塩又はマレート塩の治療学的に有効な量の投与を含む、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0047】
本発明において、前記「対象体」は、哺乳類、特にヒトを含む。
【0048】
本発明で使用される「治療学的に有効な量」という用語は、アシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療に有効な前記塩の量を意味する。
【0049】
本発明のアシッドポンプ拮抗活性により媒介される疾患の予防又は治療方法は、前述した塩を投与することで、兆候の発現前に疾病そのものを扱うだけでなく、その兆候を阻害又は回避することも含む。疾患の管理において、特定の活性成分の予防的又は治療学的用量は、疾病又は状態の本性(nature)と重篤度、さらに活性成分が投与される経路により多様である。用量及び用量の頻度は、個々の患者の年齢、体重及び反応により様々である。適合した用量・用法は、このような因子を当然考慮するこの分野における通常の知識を有する者により容易に選択される。
【0050】
本発明の用途、組成物、治療方法において言及された事項は、互いに矛盾しない限り同様に作用する。
【0051】
本発明は、他の一態様として、
【0052】
a)化学式1で表される化合物と、酸付加塩としてピログルタミン酸又はリンゴ酸を有機溶媒に溶解させるステップ、
【0053】
b)前記a)ステップで製造された溶液を減圧濃縮して固体を析出させた後、共溶媒(Co−solvent)を加えて撹拌するステップ、及び
【0054】
c)析出された固体を濾過、乾燥するステップを含む、化学式1で表される化合物のピログルタミン酸塩又はマレート塩の製造方法を提供する。
【0055】
本発明の製造方法は、より具体的には、化学式1で表される化合物を有機溶媒に溶解させ、これに酸付加塩を溶解させるa)ステップを含む。この場合、前記使用される酸は、ピログルタミン酸又はリンゴ酸であり、他の酸を使用して酸付加塩を製造し、これを溶解する場合、製造された化学式1の化合物の塩は、溶解度が改善されない、又は分解生成物又は類縁物質が発生するなど、液相又は固相安定性が低く、固体が析出されるなどの問題点が生じ得る。
【0056】
具体的には、前記ピログルタミン酸は、L型−ピログルタミン酸、前記リンゴ酸は、L型−リンゴ酸であってもよい。
【0057】
前記有機溶媒は、メタノールであってもよいが、これに制限されず、前記有機溶媒は、化学式1で表される化合物に対して5倍ないし20倍(体積/重量)であってもよく、好ましくは10倍(体積/重量)添加されてもよい。前記有機溶媒の添加量が化学式1で表される化合物に対して5倍未満であるか20倍を超える場合は、製造された塩に含まれたピドレート又はマレートの量が適合しておらず、優れた溶解度及び安定性を示すことができない。
【0058】
本発明の製造方法は、より具体的には、前記ステップa)で製造された溶液を減圧濃縮して固体を析出させた後、共溶媒(Co−solvent)を加えて撹拌するステップを含む。
【0059】
前記共溶媒は、アセトン及びエチルアセテートの混合溶媒であってもよいが、これに制限されず、前記共溶媒は化学式1で表される化合物に対して1ないし10倍(体積/重量)であってもよく、好ましくは5倍(体積/重量)添加されてもよい。前記有機溶媒の添加量が化学式1で表される化合物に対して1倍未満であるか10倍を超える場合は、製造された塩に含まれたピドレート又はマレートの量が適合しておらず、優れた溶解度及び安定性を示すことができない。
【0060】
前記アセトン/エチルアセテートの共溶媒の割合は、アセトン:エチルアセテート=1:4(V/V)であってもよいが、これに制限されない。
【0061】
本発明の製造方法は、より具体的には、前記b)ステップで析出された固体を濾過して乾燥するステップを含む。
【0062】
前記濾過は、減圧濾過であってもよいが、これに制限されない。
【0063】
前記乾燥は、通常の乾燥方法、例えば凍結乾燥、回転蒸発乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又は流動層乾燥により行われてもよく、具体的には真空乾燥により行われる。