特許第6814896号(P6814896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6814896携帯センサ装置におけるECG測定値の捕捉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6814896
(24)【登録日】2020年12月23日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】携帯センサ装置におけるECG測定値の捕捉
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20210107BHJP
   A61B 5/318 20210101ALI20210107BHJP
   A61B 5/24 20210101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61B5/04 310H
   A61B5/04 310B
   A61B5/04ZDM
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-572646(P2019-572646)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公表番号】特表2020-518410(P2020-518410A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】SE2018000008
(87)【国際公開番号】WO2018186780
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年12月26日
(31)【優先権主張番号】1750413-5
(32)【優先日】2017年4月4日
(33)【優先権主張国】SE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519359594
【氏名又は名称】コアラ−ライフ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サムエルソン, マグヌス
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/117785(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0157867(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/023962(WO,A1)
【文献】 特開2017−047026(JP,A)
【文献】 特開2003−047599(JP,A)
【文献】 特開2016−077580(JP,A)
【文献】 特開平07−039533(JP,A)
【文献】 特表2014−517759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0402−5/0472
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、第2の電極および第3の電極を備えた携帯センサ装置(1)を用いて、心電図(ECG)のデータを取得する方法であって、該方法は、
前記ECGの測定値を得るためのトリガを受信するステップ(40)と、
前記第1の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じ、かつ、前記第2の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じるために、前記第1の電極と前記第3の電極との間に配置された第1のスイッチ(12a)および前記第2の電極と前記第3の電極との間に配置された第2のスイッチ(12b)を導電状態に設定するステップ(42)と、
前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極を導電的に分離するために、前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を遮断状態に設定するステップ(44)と、
前記第3の電極を使用して、干渉をフィルタリングするか、または測定のためのDCバイアスを提供するステップと、
前記第1の電極および前記第2の電極を用いて前記ECGの測定値を捕捉するステップ(46)と、を含む方法。
【請求項2】
前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を導電状態に設定するステップ(42)が、前記第1の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じること、および前記第2の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じることを含み、
前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を遮断状態に設定するステップ(44)が、前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極を導電的に分離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリガを受信するステップ(40)が、前記携帯センサ装置(1)のユーザインターフェイス要素(4)のユーザ入力を受信することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トリガを受信するステップ(40)が、外部装置(7)からの信号を受信することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定値を捕捉するステップ(46)が、前記第1の電極および前記第2の電極からの電気信号レベルを比較することを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
心電図(ECG)のデータを取得する携帯センサ装置(1)であって、該携帯センサ装置(1)は、
第1の電極、第2の電極および第3の電極と、
前記第1の電極と前記第3の電極との間に配置された第1のスイッチ(12a)と、
前記第2の電極と前記第3の電極との間に配置された第2のスイッチ(12b)と、
プロセッサ(60)と、
メモリ(64)であって、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、
前記ECGの測定値を得るためのトリガを受信させ、
前記第1の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じ、かつ、前記第2の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じるために、前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を導電状態に設定させ、
前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極を導電的に分離するために、前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を遮断状態に設定させ、
前記第3の電極を使用して、干渉をフィルタリングするか、または測定のためのDCバイアスを提供させ、
前記第1の電極および前記第2の電極を用いて前記ECGの測定値を捕捉させる、命令(67)を格納するメモリ(64)と、
を備えた、携帯センサ装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を導電状態に設定させる命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、前記第1の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じさせ、かつ、前記第2の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じさせる命令(67)を含み、
前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を遮断状態に設定させる命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極を導電的に分離させる命令(67)を含む、請求項6に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項8】
前記携帯センサ装置(1)がさらにユーザインターフェイス要素を備え、
前記トリガを受信させる命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、前記ユーザインターフェイス要素(4)のユーザ入力を受信させる命令(67)を含む、請求項6または請求項7に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項9】
前記ユーザインターフェイス要素(4)がプッシュボタンである、請求項8に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項10】
前記トリガを受信させる命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、外部装置(7)からの信号を受信させる命令(67)を含む、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項11】
前記測定値を捕捉させる命令が、前記プロセッサによって実行されたときに、前記携帯センサ装置に、前記第1の電極および前記第2の電極からの電気信号レベルを比較させる命令(67)を含む、請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項12】
前記電極が携帯センサ装置(1)に統合されている、請求項6から請求項11のいずれか一項に記載の携帯センサ装置(1)。
【請求項13】
第1の電極、第2の電極および第3の電極を備えた携帯センサ装置(1)を用いて、心電図(ECG)のデータを取得するためのコンピュータプログラム(67、91)であって、該コンピュータプログラムは、
記携帯センサ装置(1)を動作させたときに、該携帯センサ装置(1)に、
前記ECGの測定値を得るためのトリガを受信させ、
前記第1の電極と前記第3の電極の間の接続を閉じ、かつ、前記第2の電極と前記第3の電極との間の接続を閉じるために、前記第1の電極と前記第3の電極との間に配置された第1のスイッチ(12a)および前記第2の電極と前記第3の電極との間に配置された第2のスイッチ(12b)を導電状態に設定させ、
前記第1の電極、前記第2の電極および前記第3の電極を導電的に分離するために、前記第1のスイッチ(12a)および前記第2のスイッチ(12b)を遮断状態に設定させ、
前記第3の電極を使用して、干渉をフィルタリングするか、または測定のためのDCバイアスを提供させ、
前記第1の電極および前記第2の電極を用いて前記ECGの測定値を捕捉させる、コンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムと、
前記コンピュータプログラムが格納されているコンピュータ読み取り可能な手段と、を備えた、コンピュータプログラム製品(64、90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図(Electrocardiogram:ECG)の測定値を得るための方法、携帯センサ装置、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ECGは、患者の体によって発生する電気信号が測定され、かつ分析される確立された技術である。従来より、多くの電極が様々な場所で体に配置される。導電性ゲルは、電極と皮膚との間のより良い導電性接触を提供するために使用される。心電図をとるときには、患者は通常、数分間横たわっている。電極を使用して検出されたデータは、記録され、医師や訓練を受けた看護師などの専門家によって分析することができる。測定手順が完了すると、導電性ゲルが拭き取られる。
【0003】
有用であることが証明されているが、心電図を得る従来の方法は、全てのケースにおいて最適なわけではない。例えば、そのような心電図は診療所で測定する必要があり、手順は患者にとって煩雑である。
【0004】
近年,ECGデータを得るための組み込まれた電極を有する携帯センサ装置が開発されている。これらの携帯センサ装置は、自由に、また伝導性ゲルの使用なしでECGデータを捕捉することを、ユーザに可能にする。これにより、ECGデータを捕捉するタイミングをユーザがより適して制御でき、さらに便利で、より面倒でない方法において制御できる。しかし、携帯センサ装置を使用してECGデータを捕捉する場合、ECGは従来よりもはるかに短い期間で捕捉する必要がある。しかも、導電性ゲルがない場合には、体からの電気信号を電極で測定する際の状況はより困難なものとなる。
【発明の概要】
【0005】
携帯センサ装置を使用してECGの測定値を捕捉する際の測定の問題を軽減する方法を提供することが目的である。
【0006】
第1の態様によれば、2つの電極を備えた携帯センサ装置を用いて、心電図(ECG)のデータを取得する方法が示される。その方法は、ECGの測定値を得るためのトリガを受信するステップと、2つの電極間の接続を閉じる(close)ために、少なくとも1つのスイッチを導電状態に設定するステップと、2つの電極を導電的に分離するために、少なくとも1つのスイッチを遮断状態に設定するステップと、少なくとも2つの電極を用いてECGの測定値を捕捉するステップと、を含む。
【0007】
携帯センサ装置が3つの電極を含み、その場合、少なくとも1つのスイッチを導電状態に設定するステップは、3つの電極間の接続を閉じることを含み、少なくとも1つのスイッチを遮断状態に設定するステップは、3つの電極を導電的に分離することを含む。
【0008】
トリガを受信するステップは、携帯センサ装置のユーザインターフェイス要素のユーザ入力を受信することを含んでもよい。
【0009】
トリガを受信するステップは、外部装置から信号を受信することを含んでもよい。
【0010】
測定値を捕捉するステップは、2つの電極からの電気信号を比較することを含んでもよい。
【0011】
第2の態様によれば、心電図(ECG)のデータを取得するための携帯センサ装置が示される。携帯センサ装置は、2つの電極と、少なくとも1つのスイッチと、プロセッサと、命令であって、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、ECGの測定値を得るためのトリガを受信させ、2つの電極間の接続を閉じるために、少なくとも1つのスイッチを導電状態に設定させ、2つの電極を導電的に分離するために、少なくとも1つのスイッチを遮断状態に設定させ、少なくとも2つの電極を用いてECGの測定値を捕捉させる、命令を格納するメモリと、を備える。
【0012】
携帯センサ装置は、3つの電極を備えてもよいし、その場合、少なくとも1つのスイッチを導電状態に設定させる命令は、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、3つの電極間の接続を閉じさせる命令を含み、少なくとも1つのスイッチを遮断状態に設定させる命令は、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、3つの電極を導電的に分離させる命令を含む。
【0013】
携帯センサ装置は、さらにユーザインターフェイス要素を備えてもよく、その場合、トリガを受信させる命令は、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、ユーザインターフェイス要素のユーザ入力を受信させる命令を含む。
【0014】
ユーザインターフェイス要素は、プッシュボタンであってもよい。
【0015】
トリガを受信させる命令は、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、外部装置から信号を受信させる命令を含んでもよい。
【0016】
測定値を捕捉させる命令は、プロセッサによって実行される場合に、携帯センサ装置に、2つの電極からの電気信号を比較させる命令を含んでもよい。
【0017】
各電極は携帯センサ装置に組み込まれているようにしてもよい。
【0018】
第3の態様によれば、2つの電極を備えた携帯センサ装置を用いて、心電図(ECG)のデータを取得するためコンピュータプログラムが示される。該コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムコードであって、携帯センサ装置を動作させる場合に、携帯センサ装置に、ECGの測定値を得るためのトリガを受信させ、2つの電極間の接続を閉じるために、少なくとも1つのスイッチを導電状態に設定させ、2つの電極を導電的に分離するために、少なくとも1つのスイッチを遮断状態に設定させ、少なくとも2つの電極を用いてECGの測定値を捕捉させる、コンピュータプログラムコードを含む。
【0019】
第4の態様によれば、第3の態様によるコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムが格納されているコンピュータ読み取り可能な手段と、を備えた、コンピュータプログラム製品が示される。
【0020】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で明示的に定義されない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a/an/the)要素、装置、コンポーネント、手段、ステップ等」に対する全ての参照は、明示的に述べられていない限り、要素、装置、コンポーネント、手段、ステップ等の少なくとも1つの例(instance)を参照するものとして公然と解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示されたそのままの順序で実行される必要はない。ここで、本発明を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本明細書に示される実施形態が適用可能な環境を示す概略図である。
図2】携帯センサ装置を使用してECGの測定値を捕捉する場合を示す概略図である。
図3A】一実施形態による携帯センサ装置の物理的表現を示す概略図である。
図3B】一実施形態による携帯センサ装置の物理的表現を示す概略図である。
図4A】携帯センサ装置を使用して得られた測定値において発生する可能性のあるいくつかの問題点を示す概略的グラフである。
図4B】携帯センサ装置を使用して得られた測定値において発生する可能性のあるいくつかの問題点を示す概略的グラフである。
図5】3つの電極を有する一実施形態に従って図1の携帯センサ装置を示す概略図である。
図6】2つの電極を有する一実施形態に従って図1の携帯センサ装置を示す概略図である。
図7】一実施形態に従って図1の携帯センサ装置を用いて心電図のデータを取得する方法を示すフローチャートである。
図8】コンピュータ読み取り可能手段を含むコンピュータプログラム製品の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により詳しく説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得るものであり、本明細書に記載されている実施形態に限定されるとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となるように、かつ、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、例によって提供される。本明細書を通して、同一の数字は同一の部材を示す。
【0023】
図1は、ここで示される実施形態が適用され得る環境を示す概略図である。
【0024】
ここでは、ネックレスストラップに携帯センサ装置1を携帯するユーザ5が示される。また、ユーザ5は、例えばポケットにスマートフォン7を携帯する。携帯センサ装置1とスマートフォン7とは、任意の適切なワイヤレスインターフェイスを介して、例えば、ブルートゥースまたはブルートゥースローエネルギー(BLE)、ジグビー、任意のIEEE 802.11x規格(WiFiとも呼ばれる)のいずれかを使用して通信することができる。
【0025】
図2は、図1の携帯センサ装置1がECGの測定値を捕捉するために使用される場合を示す概略図である。ECGの測定値を捕捉するために、携帯センサ装置1は、ユーザの身体2の皮膚上に配置される。ユーザは、手3を使用して携帯センサ装置1を所定の位置に保持する。なお、測定用の自由な電極がないことに留意する。その代わりに、電極(図3Aに示し、後述されるように)は、携帯センサ装置1に組み込まれて提供される。従って、ECGの測定値は、身体2の皮膚に接触する携帯センサ装置1を保持するユーザによって、簡単に捕捉される。
【0026】
図3A図3Bは、一実施形態による図1の携帯センサ装置1の物理的表現を示す概略図である。
【0027】
図3Aでは、携帯センサ装置1の底面図を示す。第1電極10a、第2電極10bおよび第3電極10cが存在する。電極10a〜10cは、ユーザが携帯センサ装置1を皮膚2上に置くとき、すべての電極10a〜10cが皮膚2に接触するように、携帯センサ装置1のケーシング上に配置されている。なお、携帯センサ装置1は、2つの電極、4つの電極または他の任意の適切な数の電極を備えることができることに留意されたい。
【0028】
任意に、携帯センサ装置1は、電子聴診器(図示せず)を含むこともできる。
【0029】
図3Bでは、携帯センサ装置1の上面図を示す。ここでは、プッシュボタンの形をしたユーザインターフェイス要素4が示されている。プッシュボタンは、例えば、測定を開始するタイミングを示すためにユーザが使用することができる。例えば、より多くのプッシュボタン、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ、スピーカー、マイクなどの、他のユーザインターフェイス要素(図示せず)を提供することができることに留意されたい。
【0030】
図4A図4Bは、携帯センサ装置を用いて得られた測定で発生する可能性のあるいくつかの問題を示す概略的なグラフである。横軸は時間を表し、縦軸は携帯センサ装置によって捕捉された信号レベルを表し、例えば電圧として表す。
【0031】
最初に図4Aを見ると、携帯センサ装置によって捕捉された信号20が示されている。時刻0において測定が開始される。信号20の一部を形成する再発セクション21が存在する。再発セクション21は、ユーザの心拍の結果であり、それらはECG分析のために関心のある信号である。しかしながら、再発セクション21は、時間の経過とともに減少するはるかに大きなバイアスを含む全信号20の一部を形成する。バイアスは、電極と皮膚の間の界面における電極の分極によるものである。バイアスが消散するのにかかる時間25は重要である。場合によっては、この時間が約30秒に測定された。
【0032】
図4Bを見ると、別のアーチファクト22が示されている。このアーチファクト22は、皮膚に対する携帯センサ装置1の機械的な動きによるものである。
【0033】
結論として、所望の再発信号21と比較して、バイアスおよび機械的アーチファクト22は、所望信号を抽出することを困難にする。
【0034】
図5は、3つの電極10a〜10cを有する一実施形態に係る図1の携帯センサ装置1を示す概略図である。第1電極10aからの出力信号は、増幅器14の第1入力に供給される。第2電極10bからの出力信号は、増幅器14の第2入力に供給される。測定段階において、次いで、増幅器14は、ECGの測定値として使用される電気信号を得るために使用される。さらに、第3電極10cがあり、干渉(例えばメイングリッド(main grid)から)をフィルタリングし、測定に適したDCバイアスを提供するために使用することができる。
【0035】
携帯センサ装置1は、また、第1スイッチ12aおよび第2スイッチ12bを含む。第1スイッチ12aは、第1電極10aと第3電極10cとの間に設けられている。第2スイッチ12bは、第2電極10bと第3電極10cとの間に設けられている。プロセッサ60は、スイッチ12a、12bの状態を制御する。スイッチ12a、12bは、導電または遮断状態であることを制御することができる任意の適切な装置を使用して実施される。例えば、スイッチは、任意の適切なトランジスタまたは他の半導体装置を使用して実施することができる。
【0036】
プロセッサ60は、適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路等のうちの任意の1つ以上の組み合わせを使用して提供することができる。ソフトウェアを実行することができる命令67は、メモリ64に格納されており、したがって、メモリ64は、コンピュータプログラム製品であり得る。プロセッサ60は、以下の図7を参照して説明する方法を実行するように構成することができる。
【0037】
メモリ64は、読み取り/書き込みメモリ(RAM)と読み取り専用メモリ(ROM)との任意の組み合わせであり得る。メモリ64は、また、永続的なメモリを含み、例えば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、または離れて設けられたメモリのうちの、任意の単一または組み合わせであり得る。
【0038】
また、データメモリ66は、プロセッサ60におけるソフトウェア命令の実行中にデータを読み取りまたは保存するために設けられている。例えば、データメモリ66は、デジタル化された測定値を格納することができる。データメモリ66は、読み取り/書き込みメモリ(RAM)と読み取り専用メモリ(ROM)との任意の組み合わせであり得る。
【0039】
携帯センサ装置1は、さらに、図1のスマートフォン7などの他の外部エンティティと通信するためのI/Oインターフェイス62を備える。I/Oインターフェイス62は、例えば、ブルートゥースまたはブルートゥースローエネルギー(BLE)、ジグビー、任意のIEEE 802.11x規格(WiFiとも呼ばれる)等のうちの、任意の1つ以上をサポートすることができる。I/Oインターフェイス62は、オプションで、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ファイアワイヤー等の有線インターフェイスを含む。
【0040】
例えば、図3Bに示すようにプッシュボタンを使用するなど、ユーザインターフェイス4も提供される。任意に、ユーザインターフェイス4は、他のユーザインターフェイス要素、例えば、より多くのプッシュボタン、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ、スピーカー、マイク等を含む。
【0041】
アナログ−デジタル(A/D)コンバータのような、携帯センサ装置1の他の部品は、本明細書に示される概念をあいまいにしないように省略される。
【0042】
測定が行われる場合、制御ユニット60は、第1スイッチ12aと第2スイッチの両方を導電状態に設定する(すなわちスイッチ12a、12bを閉じる)。この場合、3つの電極10a〜10cの電圧レベルが等しくなる。電圧レベルが等化されると、スイッチ12a、12bは再び遮断状態に設定され、その後ECGの測定値を捕捉できる。
【0043】
測定前に電極の電圧を等しくすることで、図4A図4Bに示す負の影響が大幅に低減されることが見いだされた。したがって、測定信号からの所望信号が抽出されやすく、それは、ECGの測定値に基づいてユーザの状態のよりよい分析につながる。
【0044】
図6は、2つの電極を用いた一実施形態に係る図1の携帯センサ装置1を示す概略図である。携帯センサ装置1は図5と同様であり、図5の実施形態との違いのみを説明する。
【0045】
ここでは、第1電極10aと第2電極10bとの間に設けられているスイッチ12は1つしかない。スイッチは、図5の2つのスイッチ12a、12bについて上述されたのと同様に制御される。
【0046】
図6の実施形態は、2つの電極のみを有することにより、図5のものよりも単純で低コストの構造である。しかし、これは、上記で説明した第3電極の利点を提供することができないという代償を伴う。
【0047】
図7は、一実施形態に係る図1の携帯センサ装置を用いて心電図のデータを取得する方法を示すフローチャートである。
【0048】
トリガを受信するステップ40において、ECGの測定値を得るためのトリガが受信される。トリガは、携帯センサ装置のユーザインターフェイス要素(例えば図3Bの押しボタン4)のユーザ入力の形態とすることができる。代替として、トリガは、図1のスマートフォン7などの外部装置から受信した信号の形態とすることができる。
【0049】
接続を閉じるステップ42では、2つの電極間の接続を閉じるために、少なくとも1つのスイッチが導電状態に設定される。携帯センサ装置1が3つの電極を備える場合、例えば図5に示すように、このステップは、3つの電極間の接続を閉じることを含む。電極間の接続を閉じることにより、電極の電圧がすべて等化され、すなわち、それらはすべて同じ電圧レベルを得られ、それは、上述した図4A図4Bに示すアーチファクトのリスクを低減する。
【0050】
電極を分離するステップ44では、少なくとも1つのスイッチが2つの電極を導電的に分離する遮断状態に設定される。携帯センサ装置1が3つの電極を備える場合、例えば図5に示すように、このステップは、3つの電極すべてを導電的に分離することを含む。測定が行われるには、電極を導電的に分離する必要がある。
【0051】
測定するステップ46では、少なくとも2つの電極を用いて心電図の測定値が捕捉される。測定値は、例えば、図5および図6に示すように、2つの電極からの電気信号を比較することによって捕捉され、上述した。測定値が記録されると、これらは図1のスマートフォン7などの外部装置に提供することができる。測定値は、段階的に、またはバッチで提供することができる。
【0052】
図8は、コンピュータ読み取り可能手段を備えたコンピュータプログラム製品の一例を示す。このコンピュータ読み取り可能手段上に、本明細書に記載される実施形態に従った方法を実行させることが可能であるコンピュータプログラム91が格納されている。この例では、コンピュータプログラム製品は、CD(コンパクト・ディスク)やDVD(デジタル汎用性の高いディスク)やブルーレイ・ディスクなどの光ディスクである。上述したように、コンピュータプログラム製品は、図5および6のコンピュータプログラム製品64などの、装置のメモリに具体化することもできる。コンピュータプログラム91は、ここでは、図示された光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラムは、取り外し可能なソリッドステートメモリ(例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブなど、コンピュータプログラム製品に適した任意の方法で格納することができる。
【0053】
本発明を、主にいくつかの実施形態を参照して上述した。しかしながら、当業者にとって容易に理解されるように、上記に開示されたもの以外の実施形態が、添付された特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内で、等しく可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8