(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔軸受装置の全体構成〕
図1は本発明における第一の形態を有する密封構造体を含む軸受装置の一例を示す断面図である。この軸受装置7は、製鋼工程に用いられる連続鋳造機の駆動用のロール3を支持するためのものである。ロール3は、中央の小径軸部4と、その軸方向両側の大径部5とを一体として有しており、杵型である。小径軸部4は、大径部5よりも直径が小さいことから、小径軸部4と一対の大径部5,5との間に環状凹部が形成されており、この環状凹部に軸受装置7が設けられている。以下において、小径軸部4と大径部5との境界部をロール3のネック部3aともいう。ネック部3aは、大径部5から小径軸部4に向かって直径が徐々に小さくなる凹曲面形状(テーパ面形状)を有している。また、大径部5の内側の側面には、環状の凹周溝6が形成されている。
【0020】
ロール3の中心線L0と、軸受装置7の中心線L1とは一致しており、以下において、中心線L1(L0)に平行な方向を軸方向と定義する。また、この軸方向に直交する方向を径方向と定義する。また、軸受装置7を構成する内輪11等の各部の中心線は、軸受装置7の中心線L1と一致する。以下、内輪11の中心線の符号もL1とする。
図1は、中心線L1(L0)を含む鉛直な平面における断面図であり、本実施形態の軸受装置7は、
図1に示す断面において、左右に二分する垂直な線に対して左右対称の構成を有している。以下において、
図1の右側の一部の構成を説明するが、左側においても(左右対称であるが)右側と同じ構成となっている。
【0021】
軸受装置7は、軸受本体10と密封構造体30とを備えている。軸受本体10は、内輪11、外輪部材12、円筒ころ(転動体)13、及び軸箱14を含む。密封構造体30は軸受本体10の左右両側に設けられており(左右対称であるが)同じ構成である。密封構造体30は、ラビリンスリング31、オイルシール41、及びパッキン(第一パッキン)51を含む。
図1に示す密封構造体30には、第二パッキン69が更に含まれる。
【0022】
〔軸受本体10の各部の構成〕
軸箱14は、上下に分割される二分割構造を有している。つまり、軸箱14は、床面に固定される基台17と、この基台17の上に載せられる蓋部材18とを有しており、これらは図外のボルト等によって連結固定される。基台17は、上面側に球面に沿った形状の球面座17aを有している。
【0023】
内輪11は、二分割構造を有している。つまり、内輪11は、半円筒形状である第一内側半筒部11a及び第二内側半筒部11bを有しており、これら内側半筒部11a,11bの分割面は、内輪11の中心線L1を含む平面上にある。内側半筒部11a,11bは図外のボルト等によって連結固定され、一体の筒状部材(内輪11)となり、ロール3の小径軸部4に外嵌して固定された状態となる。内輪11の外周側には、円筒形状である内軌道面11cが設けられており、また、内輪11は、内軌道面11cの軸方向両側に、内軌道面11cよりも直径が大きくなっている肩部20,20を有している。
【0024】
図2は、
図1に示す軸受装置7及びロール3の右側の一部を示す断面図である。肩部20の外周面20aは内軌道面11cよりも直径が大きく、この外周面20aに、第一外周溝71と第二外周溝76とが設けられている。これら外周溝71,76はそれぞれ環状の溝であり、第一外周溝71は、オイルシール41の取り付け用の溝であり、第二外周溝76は、第二パッキン69の取り付け用の溝である。
【0025】
図1において、外輪部材12は、全体として筒形状であるが、上下に分割される二分割構造を有している。つまり、外輪部材12は、半円筒形状である第一外側半筒部12a及び第二外側半筒部12bを有しており、これら外側半筒部12a,12bの分割面は、外輪部材12の中心線を含む平面上にある。なお、組み立て状態で、外輪部材12の中心線は、内輪11の中心線L1と一致する。外側半筒部12a,12bは図外のボルト等によって連結固定され、一体の筒状部材(筒状の外輪部材12)となる。外輪部材12の内周側には、円筒形状である外軌道面12cが設けられている。第一外側半筒部12aは、外輪部材12の下側半分を構成しており、軸箱14の基台17上に載った状態にある。第一外側半筒部12aの下面は、前記球面座17aに対応する形状を有し、球面座17aに載る載置面となる。上側の第二外側半筒部12bは、軸箱14の蓋部材18と一体となっている。
【0026】
円筒ころ13は、内軌道面11cと外軌道面12cとの間に介在している。これにより、内輪11と外輪部材12とは同心状に配置される。そして、ロール3が内輪11と共に一体回転することで、円筒ころ13は、内軌道面11c及び外軌道面12cを転動する。
【0027】
以上より、軸受本体10は、杵型ロール3の小径軸部4に外嵌する内輪11、この内輪11の径方向外側に設けられている筒状の外輪部材12、内輪11と外輪部材12との間に設けられている複数の円筒ころ13、及び、外輪部材12を支持している軸箱14を有する構成となる。そして、この軸受装置7は分割型となっている。
【0028】
〔ラビリンスリング31〕
ラビリンスリング31は、円筒状の部材であるが、上下に分割される二分割構造を有している。つまり、ラビリンスリング31は、半円筒形状である第一半筒部31a及び第二半筒部31bを有しており、これら半筒部31a,31bの分割面は、ラビリンスリング31の中心線を含む平面上にある。なお、組み立て状態で、ラビリンスリング31の中心線は、内輪11の中心線L1と一致する。ラビリンスリング31の下側半分を構成する第一半筒部31aは軸箱14(基台17)に取り付けられており、上側半分を構成する第二半筒部31bは外輪部材12(外側半筒部12b)に取り付けられている。
【0029】
軸方向一方側(
図1において右側)のラビリンスリング31は、軸受本体10から軸方向一方側に向かって突出しており、ラビリンスリング31の一部(軸方向外側部31c)が、ロール3の大径部5に形成されている凹周溝6に入った状態となっている。
図2に示すように、ラビリンスリング31の一部(軸方向外側部31c)が凹周溝6に入った状態となることにより、凹周溝6との間にラビリンス隙間を形成し、外部から冷却水がロール3のネック部3aと内輪11との間に浸入するのを抑制する。
また、軸方向他方側(
図1において左側)のラビリンスリング31は、軸受本体10から軸方向他方側に向かって突出しており、ラビリンスリング31の一部(軸方向外側部31c)が、ロール3の大径部5に形成されている凹周溝6に入った状態となっている。軸方向他方側においても、軸方向一方側と同様に、ラビリンスリング31の一部(軸方向外側部31c)が凹周溝6に入った状態となることにより、凹周溝6との間にラビリンス隙間を形成し、外部から冷却水がロール3のネック部3aと内輪11との間に浸入するのを抑制する。
以上より、ラビリンスリング31は、内輪11の径方向外側において軸受本体10に取り付けられており、杵型ロール3の大径部5に形成されている凹周溝6に一部が入ってこの凹周溝6との間でラビリンス隙間を形成するための部材である。
【0030】
〔オイルシール41〕
図2において、オイルシール41は、環状のシール本体部42と、このシール本体部42から突出しているシールリップ部43とを有しており、これらはゴム製である。シール本体部42は、内輪11の第一外周溝71に嵌って取り付けられている。シールリップ部43は、ラビリンスリング31の内周面32に接触可能であり、ロール3及び内輪11が回転すると、オイルシール41も共に回転し、シールリップ部43がラビリンスリング31の内周面32に滑り接触する。オイルシール41は、全体としてリング状であるが、周方向の一箇所でカットされており、分割構造である内輪11への取り付けを容易としている。このように、オイルシール41は、内輪11の外周側に設けられている第一外周溝71に取り付けられており、ラビリンスリング31の内周面32に滑り接触し、軸受内部15に冷却水が浸入するのを防止するための部材となっている。
【0031】
〔パッキン69及びパッキン51(その1)〕
第二パッキン69について先に説明する。第二パッキン69は、環状のパッキン本体部44と、このパッキン本体部44から突出しているパッキンリップ部45とを有している。パッキン本体部44は、内輪11の第二外周溝76に嵌って取り付けられている。パッキンリップ部45は、ラビリンスリング31の内周面32に接触可能であり、ロール3及び内輪11が回転すると、第二パッキン69も共に回転し、パッキンリップ部45がラビリンスリング31の内周面32に滑り接触する。第二パッキン69は、全体がゴム製であってもよいが、パッキンリップ部45については接触抵抗を低減するために樹脂製としてもよい。また、第二パッキン69は、全体としてリング状であるが、周方向の一箇所でカットされており、分割構造である内輪11への取り付けを容易としている。このように、第二パッキン69は、内輪11の外周側に設けられている第二外周溝76に取り付けられており、ラビリンスリング31の内周面32に滑り接触し、軸受内部15に冷却水が浸入するのを防止するための部材となっている。
【0032】
図2に示す第一パッキン51(以下、単にパッキン51ともいう。)について説明する前に、このパッキン51が取り付けられる内輪11の軸方向側部16の形状について説明する。
図2に示す形態では、内輪11は、軸方向側部16において、径方向外側から順に、円環面21と、断面凸形の円弧状面22と、円筒面23とを有している。円環面21は、内輪11の中心線L1(
図1参照)に直交する仮想面F1上に位置する環状の面である。円弧状面22は、円環面21から連続して形成されており、軸方向中央(
図2では左側)に向かうにしたがって縮径する凸曲面形状(テーパ面形状)を有している。なお、
図2に示す形態では、円弧状面22は、円環面21との間に、内輪11の中心線L1に直交する仮想面上に位置する第二の円環面22aを有しており、この第二の円環面22aから続いて凸曲面形状が始まっている。円筒面23は、円弧状面22から連続して形成されており、中心線L1を中心とする円筒状の面である。この円筒面23において、内輪11は、ロール3の小径軸部4に嵌合している。
【0033】
このような形状を有する内輪11の軸方向側部16のうち、円弧状面22に、第一パッキン51用である環状の取り付け溝72が設けられている。
図2に示す取り付け溝72は、径方向内側に臨む円筒面72aと、軸方向外側に臨む円環面72bとを有しており、円弧状面22の範囲内に設けられている。
【0034】
図3は、
図1及び
図2に示すパッキン51の断面図である。
図3において、内輪11及びロール3を仮想線(二点鎖線)で示している。パッキン51は、環状である本体部52と、環状である接触部53とを有している。本体部52は、取り付け溝72に取り付けられている部分であり、接触部53は、本体部52から突出するようにしてロール3側に設けられている部分である。
図3では、本体部52と接触部53との境界を破線により示している。接触部53は、ロール3のネック部3aに接触可能となっている。パッキン51はゴム製であり、ネック部3aに接触部53が接触することで弾性変形する。軸受装置7が組み立てられた状態で、接触部53は、ネック部3aに締め代を有して接触した状態となる。ロール3が回転すると、このロール3と共に内輪11及びパッキン51は一体回転する。
【0035】
図4は、
図3に示すパッキン51の変形例を示す断面図である。なお、取り付け溝72の形状は、
図3に示す形態と同じである。
図4に示すパッキン51は、
図3に示すパッキン51と同様に、取り付け溝72に取り付けられている本体部52と、この本体部52からロール3側に設けられており、ロール3のネック部3aに接触可能である接触部53とを有しているが、接触部53の形態が異なっている。つまり、
図3に示すパッキン51の接触部53は、本体部52の軸方向外側領域の一部から突出するようにしてロール3側に設けられているのに対して、
図4に示すパッキン51の接触部53は、本体部52の軸方向外側領域の全体から突出するようにしてロール3側に設けられている。
【0036】
図3及び
図4に示すパッキン51それぞれは、全体としてリング状であるが、本実施形態では内輪11とあわせて二分割構造を有している。分割されたパッキン51を内輪11に形成されている取り付け溝72に対して容易に取り付けるために、取り付け溝72には凹部77が形成されており、パッキン51の本体部52が有する凸部56が凹部77に嵌合する構成となっている。凹部77は、単独の穴形状を有しており、取り付け溝72に沿って複数形成され、この凹部77の位置にあわせてパッキン51には凸部56が形成されている。なお、第一パッキン51は、オイルシール41及び第二パッキン69と同様に、周方向の一箇所でカットされた構成であってもよい。
【0037】
以上より、
図2〜
図4に示すパッキン51は、内輪11の軸方向側部16に取り付けられており、ロール3の一部(ネック部3a)に接触することで内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止することができる。特に、内輪11の円弧状面22にパッキン51が取り付けられた構成となり、ロール3のネック3a部との間で止水することができる。
【0038】
また、
図2〜
図4に示す形態では、取り付け溝72は第一外周溝71(
図2参照)よりも径方向内側の位置に形成されており、第一外周溝71と取り付け溝72とが軸方向に接近して並んだ構成とならないようにしている。これは、仮に二つの溝71,72が軸方向に接近して並んだ構成とした場合、内輪11の軸方向側部16におけるこれら溝71,72による欠損部が大きくなって強度が低下するが、
図2に示す形態によれば、このような軸方向側部16における強度の低下を防ぐことができるためである。
【0039】
パッキン51及び取り付け溝72は、図示した断面形状以外であってもよい。例えば、
図3では、本体部52から隆起状となっている接触部53を一つ(一条)としているが、接触部53を複数としてもよい。また、パッキン51の断面形状は円形等であってもよく、その一部を接触部53とすればよい。
また、取り付け溝72は、円弧状面22にのみ形成されている場合について説明したが、円弧状面22から円環面21(22a)の一部にかかって形成されていてもよく、又は、円弧状面22から円筒面23の一部にかかって形成されていてもよい。すなわち、内輪11の軸方向側部16のうちの少なくとも円弧状面22に環状の取り付け溝72が設けられていればよい。
【0040】
図2〜
図4に示す形態の場合、内輪11の軸方向側部16(
図2参照)に取り付け溝72が形成されているが、内輪11の中心線L1(
図1参照)に直交する仮想面F1上に位置する円環面21が残されている。この円環面21を、内輪11の加工の際に活用することができる。すなわち、内輪11を機械加工する場合、この内輪11の軸方向側部16を(図示しないが)マグネットチャックで保持する。このような加工の際、マグネットチャックにとって内輪11の軸方向側部16には、その中心線L1に直交する面が(少なくとも半径で数ミリメートル)必要である。そこで、
図2〜
図4に示す形態の場合、取り付け溝72の径方向外側に前記のとおり円環面21が設けられていることから、この円環面21をマグネットチャックのために用いることが可能となり、内輪11の加工を従来のとおり行うことが可能となる。
【0041】
〔パッキン51(その2)〕
図5は、第二の形態を有する密封構造体30を示す断面図である。
図5に示す密封構造体30では、
図2に示す密封構造体30と比較して、第二パッキン69が省略されている。
図5に示す形態では、
図2に示す第一パッキン51及び第二パッキン69の機能を、一つのパッキン51が有している。なお、軸受装置7が備えているその他の構成は、
図1に示す形態の構成と同じである。
【0042】
図5に示すパッキン51について説明する前に、このパッキン51が取り付けられる内輪11の軸方向側部16の形状について説明する。
図5に示す形態では、内輪11は、軸方向側部16において、径方向外側から順に、取り付け溝72と、断面凸形の円弧状面22と、円筒面23とを有している。取り付け溝72は環状の溝であり、パッキン51の取り付け用である。取り付け溝72は、径方向外側に臨む外側円筒面78と、軸方向外側に臨む円環面79とからなる。円弧状面22は、取り付け溝72から連続して形成されており、軸方向中央(
図5では左側)に向かうにしたがって縮径する凸曲面形状(テーパ面形状)を有している。なお、
図5に示す形態では、円弧状面22は、取り付け溝72との間に、内輪11の中心線L1に直交する仮想面上に位置する第二の円環面を有していてもよく、この第二の円環面から続いて凸曲面形状が始まっていてもよい。円筒面23は、円弧状面22から連続して形成されており、中心線L1を中心とする円筒状の面である。この円筒面23において、内輪11は、ロール3の小径軸部4に嵌合している。
【0043】
図6は、
図5に示すパッキン51の断面図である。
図6において、ラビリンスリング31、内輪11及びロール3を仮想線(二点鎖線)で示している。パッキン51は、環状である本体部52と、環状である第一接触部54と、環状である第二接触部55とを有している。本体部52は、取り付け溝72に取り付けられている部分であり、第一接触部54は、本体部52から径方向に突出するようにしてラビリンスリング31側に設けられている部分であり、第二接触部55は、本体部52から軸方向に突出するようにしてロール3側に設けられている部分である。
図6では、本体部52と第一接触部54との境界及び本体部52と第二接触部55との境界をそれぞれ破線により示している。第一接触部54は、ラビリンスリング31の内周面32に滑り接触可能となっており、第二接触部55は、ロール3に接触可能となっている。
【0044】
パッキン51は、断面四角形(台形)であり、パッキン51の外周部が第一接触部54であり、パッキン51の軸方向側部が第二接触部55となっている。パッキン51はゴム製であり、ラビリンスリング31に第一接触部54が接触することで径方向に弾性変形し、ロール3に第二接触部55が接触することで軸方向に弾性変形する。軸受装置7が組み立てられた状態で、第一接触部54は、ラビリンスリング31に締め代を有して接触した状態となり、第二接触部55は、ロール3に締め代を有して接触した状態となる。ロール3が回転すると、このロール3と共に内輪11及びパッキン51は一体回転し、第一接触部54はラビリンスリング31に滑り接触するのに対して、第二接触部55はロール3と相対的な位置変化することなく接触した状態となる。
【0045】
取り付け溝72において、外側円筒面78は、内輪11の中心線L1(
図1参照)を中心とする円筒形状の面であり、円環面79は、外側円筒面78に対して傾斜しており、傾斜角度Kは90度未満となっている。そして、パッキン51の本体部52は、この傾斜している円環面79に面で接触する傾斜面52aを有している。この構成により、パッキン51が径方向外側に脱落するのを防ぐことが可能となる。
【0046】
図7は、
図5に示すパッキン51の変形例を示す断面図である。
図7に示す形態においても、
図5の場合と同様に、
図2に示す第一パッキン51及び第二パッキン69の機能を、一つのパッキン51が有している。
【0047】
図7に示すパッキン51について説明する前に、このパッキン51が取り付けられる内輪11の軸方向側部16の形状について説明する。
図7に示す形態では、内輪11は、軸方向側部16において、径方向外側から順に、取り付け溝72と、断面凸形の円弧状面22と、円筒面23とを有している。取り付け溝72は環状の溝であり、パッキン51の取り付け用である。取り付け溝72は、軸方向外側(
図7では右側)の第一溝部74と、この第一溝部74に対して軸方向中央側に設けられている第二溝部75とを有している。第二溝部75は、第一溝部74よりも溝底の直径が小さい(
図8において、第二溝部75の溝底の直径D2<第一溝部74の溝底の直径D1)。
図7において、円弧状面22は、取り付け溝72から連続して形成されており、軸方向中央(
図7では左側)に向かうにしたがって縮径する凸曲面形状(テーパ面形状)を有している。なお、
図7に示す形態では、円弧状面22は、取り付け溝72との間に、内輪11の中心線L1に直交する仮想面上に位置する第二の円環面22aを有しており、この第二の円環面22aから続いて凸曲面形状が始まっている。円筒面23は、円弧状面22から連続して形成されており、中心線L1を中心とする円筒状の面である。この円筒面23において、内輪11は、ロール3の小径軸部4に嵌合している。
【0048】
図8は、
図7に示すパッキン51の断面図である。
図8において、ラビリンスリング31、内輪11及びロール3を仮想線(二点鎖線)で示している。パッキン51は、環状である本体部52と、環状である第一接触部54と、環状である第二接触部55とを有している。本体部52は、取り付け溝72に取り付けられている部分である。第一接触部54は、本体部52から径方向に突出するようにしてラビリンスリング31側に設けられている部分であり、第二接触部55は、本体部52から軸方向に突出するようにしてロール3側に設けられている部分である。
図8では、本体部52と第一接触部54との境界及び本体部52と第二接触部55との境界をそれぞれ破線により示している。第一接触部54は、ラビリンスリング31の内周面32に滑り接触可能となっており、第二接触部55は、ロール3に接触可能となっている。
【0049】
パッキン51について更に説明すると、パッキン51は、第一溝部74及び第二溝部75に嵌まる本体部52と、本体部52から径方向外側の第一接触部54と、本体部52から軸方向外側に延びて設けられている第二接触部55とを有している。パッキン51はゴム製であり、ラビリンスリング31に第一接触部54が接触することで径方向に弾性変形し、ロール3に第二接触部55が接触することで軸方向に弾性変形する。軸受装置7が組み立てられた状態で、第一接触部54は、ラビリンスリング31に締め代を有して接触した状態となり、第二接触部55は、ロール3に締め代を有して接触した状態となる。ロール3が回転すると、このロール3と共に内輪11及びパッキン51は一体回転し、第一接触部54はラビリンスリング31に滑り接触するのに対して、第二接触部55はロール3と相対的な位置変化することなく接触した状態となる。
【0050】
図5〜
図8に示すパッキン51それぞれは、全体としてリング状であり、内輪11とあわせて二分割構造であってもよいが、本実施形態では、オイルシール41と同様に、周方向の一箇所でカットされた構成である。
【0051】
以上より、
図5〜
図8に示すパッキン51は、内輪11の軸方向側部16に取り付けられており、ロール3の一部(大径部5)に接触することで内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止することができる。更に、パッキン51は、内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止する機能の他に、ラビリンスリング31と内輪11との間から冷却水が浸入するのを防止する機能も有することができる。つまり、一つのパッキン51で二つの止水機能を有することができ、
図2に示す形態と比較して、パッキン69を省略することで部品点数の削減が行われている。
また、
図6に示す形態では、前記のとおりパッキン51は断面四角形(台形)である。このため、パッキン51の形状が簡単であり、密封構造体30の簡素化が可能となる。
図8に示す形態では、パッキン51の本体部52は、段付き形状となる第一溝部74及び第二溝部75に嵌まることで、安定した取り付け状態が得られ、パッキン51の脱落を抑制することが可能となる。
【0052】
〔パッキン51(その3)〕
図9は、第三の形態を有する密封構造体30を示す断面図である。
図9に示す密封構造体30では、
図2に示す密封構造体30と比較して、第二パッキン69が省略されている。
図9に示す形態では、
図2に示す第一パッキン51及び第二パッキン69の機能を、一つのパッキン51が有している。なお、軸受装置7が備えているその他の構成は、
図1に示す形態の構成と同じである。
【0053】
図9に示すパッキン51について説明する前に、このパッキン51が取り付けられる内輪11の軸方向側部16の形状について説明する。
図9に示す形態では、内輪11は、軸方向側部16において、径方向外側から順に、取り付け溝72と、円環面24と、断面凸形の円弧状面22と、円筒面23とを有している。取り付け溝72は環状の溝であり、パッキン51の取り付け用である。円環面24は、内輪11の中心線L1(
図1参照)に直交する仮想面F2上に位置する環状の面である。円弧状面22は、円環面21から連続して形成されており、軸方向中央(
図9では左側)に向かうにしたがって縮径する凸曲面形状(テーパ面形状)を有している。円筒面23は、円弧状面22から連続して形成されており、中心線L1を中心とする円筒状の面である。この円筒面23において、内輪11は、ロール3の小径軸部4に嵌合している。
【0054】
図10は、パッキン51の断面図である。
図10において、ラビリンスリング31、内輪11及びロール3を仮想線(二点鎖線)で示している。パッキン51は、環状である本体部52と、環状である第一接触部54と、環状である第二接触部55とを有している。本体部52は、取り付け溝72に取り付けられていると共に円環面24を軸方向から覆っている部分である。第一接触部54は、本体部52から径方向に突出するようにしてラビリンスリング31側に設けられている部分であり、第二接触部55は、本体部52から軸方向に突出するようにしてロール3側に設けられている部分である。
図10では、本体部52と第一接触部54との境界及び本体部52と第二接触部55との境界をそれぞれ破線により示している。第一接触部54は、ラビリンスリング31の内周面32に滑り接触可能となっており、第二接触部55は、ロール3に接触可能となっている。
【0055】
パッキン51はゴム製であり、ラビリンスリング31に第一接触部54が接触することで径方向に弾性変形し、ロール3に第二接触部55が接触することで軸方向に弾性変形する。軸受装置7が組み立てられた状態で、第一接触部54は、ラビリンスリング31に締め代を有して接触した状態となり、第二接触部55は、ロール3に締め代を有して接触した状態となる。ロール3が回転すると、このロール3と共に内輪11及びパッキン51は一体回転し、第一接触部54はラビリンスリング31に滑り接触するのに対して、第二接触部55はロール3と相対的な位置変化することなく接触した状態となる。
【0056】
図9及び
図10に示すパッキン51は、全体としてリング状であり、内輪11とあわせて二分割構造であってもよいが、本実施形態では、オイルシール41と同様に、周方向の一箇所でカットされた構成である。
【0057】
以上より、このパッキン51は、内輪11の軸方向側部16に取り付けられており、ロール3の一部(大径部5)に接触することで内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止することができる。更に、パッキン51は、内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止する機能の他に、ラビリンスリング31と内輪11との間から冷却水が浸入するのを防止する機能も有することができる。つまり、一つのパッキン51で二つの止水機能を有することができ、
図2に示す形態と比較して、パッキン69を省略することで部品点数の削減が行われている。
【0058】
なお、
図9及び
図10に示す形態の場合、内輪11の軸方向側部16に取り付け溝72が形成されているが、更に、内輪11の中心線L1(
図1参照)に直交する仮想面F2上に位置する円環面24も形成されている。この円環面24を、内輪11の加工の際に活用することができる。すなわち、内輪11を機械加工する場合、この内輪11の軸方向側部16を(図示しないが)マグネットチャックで保持する。このような加工の際、マグネットチャックにとって内輪11の軸方向側部16には、その中心線L1に直交する面が(少なくとも半径で数ミリメートル)必要である。そこで、
図9及び
図10に示す形態の場合、取り付け溝72の径方向内側に前記のとおり円環面24が設けられていることから、この円環面24をマグネットチャックのために用いることが可能となり、内輪11の加工を従来のとおり行うことが可能となる。
【0059】
〔各形態のパッキン51を有する軸受装置7〕
以上より、軸受装置7は、軸受本体10と密封構造体30とを備えている。軸受本体10(
図1参照)は、軸箱14に対して杵型ロール3を回転可能として支持するために、このロール3の小径軸部4に装着される。密封構造体30は、ラビリンスリング31、オイルシール41及びパッキン51を有しており、この密封構造体30によれば、円筒ころ13が設けられている軸受内部15、及び、内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止することができる。つまり、内輪11の軸方向側部16に設けられているオイルシール41がラビリンスリング31に接触して、軸受内部15に冷却水が浸入するのを防止し、更に、内輪11の軸方向側部16に取り付けられているパッキン51が、ロール3の一部に接触して内輪11とロール3との間に外部から冷却水が浸入するのを防止している。この結果、内輪11とロール3との間の隙間80に冷却水が滞留しないようにして腐食の発生を防ぐことが可能となる。
【0060】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の軸受装置及び密封装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、軸受装置7を、連続鋳造機の駆動用のロール3を支持するためのものとして説明したが、ロールと内輪との間の隙間に水等の異物が浸入するのを防ぐことを目的として、他の用途に前記各構成を備えている軸受装置7を用いても良い。
また、パッキン51は、全体が同じ材質のゴムによって形成されていてもよいが、複数種類の材質によって形成されたものであってもよい。例えば、本体部52はゴム製であるが、接触部(53,54,55)は本体部52よりも摩擦係数の小さい部材(例えば樹脂部材)であってもよい。