(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記p型クラッド層は、AlN比率が60%以上であるp型AlGaN系半導体材料から構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、波長240nm以上320nm以下の深紫外光を発するようにAlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、
前記活性層上に、AlN比率が50%以上であるp型AlGaN系半導体材料またはp型AlN系半導体材料から構成されるp型クラッド層を形成する工程と、
前記p型クラッド層上に接触するように、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×1018/cm3以上5×1019/cm3以下のp型ドーパント濃度を有し、500nmより大きい厚さを有する第1p型コンタクト層を形成する工程と、
前記第1p型コンタクト層上に接触するように、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×1019/cm3以上4×1020/cm3以下のp型ドーパント濃度を有し、8nm以上28nm以下の厚さを有する第2p型コンタクト層を形成する工程と、
前記第2p型コンタクト層上に接触するように、前記第2p型コンタクト層に対するコンタクト抵抗が1×10−2Ω・cm2以下であるp側電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
前記第2p型コンタクト層の成長レートは、前記第1p型コンタクト層の成長レートの20%以上60%以下であることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの知見によれば、p型コンタクト層の厚みを小さくすると、半導体発光素子の寿命が低下する。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、半導体発光素子の寿命を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型クラッド層と、n型クラッド層上に設けられ、波長240nm以上320nm以下の深紫外光を発するようにAlGaN系半導体材料から構成される活性層と、活性層上に設けられ、AlN比率が50%以上であるp型AlGaN系半導体材料またはp型AlN系半導体材料から構成されるp型クラッド層と、p型クラッド層上に接触して設けられ、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、500nmより大きい厚さを有する第1p型コンタクト層と、第1p型コンタクト層上に接触して設けられ、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×10
19/cm
3以上4×10
20/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、8nm以上28nm以下の厚さを有する第2p型コンタクト層と、第2p型コンタクト層上に接触して設けられ、第2p型コンタクト層に対するコンタクト抵抗が1×10
−2Ω・cm
2以下であるp側電極と、を備える。
【0007】
この態様によると、AlN比率が5%以下である低AlN組成の第1および第2p型コンタクト層を設けることで、p側電極のコンタクト抵抗を下げることができ、半導体発光素子の動作電圧を低減できる。なお、AlN比率が50%以下である高AlN組成のp型クラッド層上に第1p型コンタクト層を直接形成すると、大きなAlN比率差に起因して格子不整合が大きくなり、p型クラッド層上に第1p型コンタクト層が島状に成長していく。このとき、第1p型コンタクト層の厚みが小さいと、第1p型コンタクト層の上面の平坦性が低下して素子寿命が低下する。本発明者らの知見によれば、第1p型コンタクト層の厚みを500nmより大きくすることで、第1p型コンタクト層の上面の平坦性を高め、素子寿命を大幅に向上させることができる。また、p側電極と接触する第2p型コンタクト層が8×10
19/cm
3以上4×10
20/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、8nm以上28nm以下の厚さを有することで、p側電極のコンタクト抵抗を1×10
−2Ω・cm
2以下にできる。一方、第1p型コンタクト層が8×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有することで、第1p型コンタクト層におけるキャリア移動度を高めることができ、半導体発光素子の動作電圧を低減できる。
【0008】
第2p型コンタクト層は、1×10
20/cm
3以上2×10
20/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有してもよい。
【0009】
第2p型コンタクト層は、11nm以上20nm以下の厚さを有してもよい。
【0010】
第1p型コンタクト層の厚さは、700nm以上1000nm以下であってもよい。
【0011】
p型クラッド層は、AlN比率が60%以上であるp型AlGaN系半導体材料から構成されてもよい。
【0012】
第1p型コンタクト層および第2p型コンタクト層は、p型GaNから構成されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、深紫外光を発するようにAlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、活性層上に、AlN比率が50%以上であるp型AlGaN系半導体材料またはp型AlN系半導体材料から構成されるp型クラッド層を形成する工程と、p型クラッド層上に接触するように、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、500nmより大きい厚さを有する第1p型コンタクト層を形成する工程と、第1p型コンタクト層上に接触するように、AlN比率が5%以下のp型AlGaN系半導体材料またはp型GaN系半導体材料から構成され、8×10
19/cm
3以上4×10
20/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、8nm以上28nm以下の厚さを有する第2p型コンタクト層を形成する工程と、第2p型コンタクト層上に接触するように、第2p型コンタクト層に対するコンタクト抵抗が1×10
−2Ω・cm
2以下であるp側電極を形成する工程と、を備える。
【0014】
この態様によれば、上記態様と同様の効果を奏することができる。
【0015】
第2p型コンタクト層の成長レートは、第1p型コンタクト層の成長レートの20%以上60%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体発光素子の寿命を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0019】
本実施の形態は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成される半導体発光素子であり、いわゆるDUV−LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm〜320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0020】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In
1−x−yAl
xGa
yN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0021】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0022】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型クラッド層24と、活性層26と、p型クラッド層28と、p型コンタクト層30と、p側電極32と、n側電極34とを備える。
【0023】
図1において、矢印Zで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0024】
基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する基板であり、例えば、サファイア(Al
2O
3)基板である。基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型コンタクト層30までの各層を成長させるための結晶成長面となる一主面である。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンが形成されている。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面となる一主面である。なお、基板20は、AlN基板であってもよいし、AlGaN基板であってもよい。基板20は、第1主面20aがパターン化されていない平坦面で構成される通常の基板であってもよい。
【0025】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型クラッド層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT−AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみで構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0026】
n型クラッド層24は、ベース層22の上に設けられる。n型クラッド層24は、n型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、n型の不純物としてSiがドープされるAlGaN層である。n型クラッド層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、AlNのモル分率が40%以上または50%以上となるように形成される。n型クラッド層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが3.85eV以上となるように形成される。n型クラッド層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように形成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように形成されることがより望ましい。n型クラッド層24は、1μm〜3μm程度の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0027】
n型クラッド層24は、不純物であるSiの濃度が1×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下となるように形成される。n型クラッド層24は、Si濃度が5×10
18/cm
3以上3×10
19/cm
3以下となるように形成されることが好ましく、7×10
18/cm
3以上2×10
19/cm
3以下となるように形成されることが好ましい。ある実施例において、n型クラッド層24のSi濃度は、1×10
19/cm
3前後であり、8×10
18/cm
3以上1.5×10
19/cm
3以下の範囲である。
【0028】
n型クラッド層24は、第1上面24aと、第2上面24bとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分である。第2上面24bは、活性層26が形成されずにn側電極34が形成される部分である。
【0029】
活性層26は、n型クラッド層24の第1上面24aの上に設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料で構成され、n型クラッド層24とp型クラッド層28の間に挟まれてダブルへテロ接合構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0030】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される井戸層との積層体で構成される。活性層26は、例えば、n型クラッド層24と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層の上に設けられる第1井戸層とを含む。第1障壁層と第1井戸層の間に、井戸層および障壁層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層は、1nm〜20nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜10nm程度の厚さを有する。
【0031】
活性層26は、p型クラッド層28と接触する電子ブロック層をさらに含んでもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料層であり、例えば、AlNのモル分率が80%以上となるように形成される。電子ブロック層は、実質的にGaNを含まないAlN系半導体材料で形成されてもよい。電子ブロック層は、1nm〜10nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜5nm程度の厚さを有する。
【0032】
p型クラッド層28は、活性層26の上に形成される。p型クラッド層28は、p型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層である。p型クラッド層28は、p型コンタクト層30に比べてAlN比率が高い高AlN組成層(または、第1AlN組成層ともいう)である。p型クラッド層28は、AlNのモル分率が50%以上であり、好ましくは、60%以上または70%以上となるように形成される。p型クラッド層28は、10nm〜100nm程度の厚さを有し、例えば、15nm〜70nm程度の厚さを有する。
【0033】
p型コンタクト層30は、p型クラッド層28の上に形成され、p型クラッド層28に直接接触する。p型コンタクト層30は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層である。p型クラッド層28に比べてAlN比率が低い低AlN組成層(または、第2AlN組成層ともいう)である。p型コンタクト層30のAlN比率とp型クラッド層28のAlN比率の差は50%以上であり、好ましくは60%以上である。p型コンタクト層30は、p側電極32と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層30は、実質的にAlNを含まないp型GaN層であってもよい。その結果、p型コンタクト層30は、活性層26が発する深紫外光を吸収する。
【0034】
p型コンタクト層30は、第1p型コンタクト層36と、第2p型コンタクト層38とを含む。第1p型コンタクト層36は、p型クラッド層28と直接接触する。第1p型コンタクト層36は、AlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。第1p型コンタクト層36は、500nmを超える厚さを有し、例えば520nm以上の厚さを有する。第1p型コンタクト層36は、好ましくは590nm以上の厚さを有し、例えば700nm以上1000nm以下の厚さを有する。第1p型コンタクト層36のp型ドーパント濃度は、8×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下の範囲であり、好ましくは1×10
19/cm
3以上2×10
19/cm
3以下の範囲である。第1p型コンタクト層36のp型ドーパント濃度をこのような値にすることで、第1p型コンタクト層36におけるキャリア移動度を高めることができ、厚みの大きい第1p型コンタクト層36のバルク抵抗を低減できる。
【0035】
第2p型コンタクト層38は、第1p型コンタクト層36の上に設けられ、第1p型コンタクト層36と直接接触する。第2p型コンタクト層38は、AlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。第2p型コンタクト層38のAlN比率は、第1p型コンタクト層36のAlN比率と同じでもよいし、第1p型コンタクト層36のAlN比率より低くてもよい。例えば、第1p型コンタクト層36のAlN比率が0%を超えて10%以下となる場合、第2p型コンタクト層38のAlN比率が0%であってもよい。第2p型コンタクト層38は、8nm以上28nm以下の厚さを有し、好ましくは9nm以上25nm以下の厚さを有し、より好ましくは11nm以上20nm以下の厚さを有する。第2p型コンタクト層38は、16nm程度の厚さを有してもよい。第2p型コンタクト層38のp型ドーパント濃度は、第1p型コンタクト層36のp型ドーパント濃度よりも大きく、第1p型コンタクト層36のp型ドーパント濃度の5倍〜20倍程度である。第2p型コンタクト層38のp型ドーパント濃度は、8×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有し、好ましくは1×10
20/cm
3以上2×10
20/cm
3以下のp型ドーパント濃度を有する。第2p型コンタクト層38のp型ドーパント濃度をこのような値にすることで、p側電極32のコンタクト抵抗を1×10
−2Ω・cm
2以下にでき、より好ましくは1×10
−3Ω・cm
2以下にできる。
【0036】
p側電極32は、p型コンタクト層30の上に設けられ、p型コンタクト層30とオーミック接触する。より具体的には、p側電極32は、第2p型コンタクト層38と直接接触する。p側電極32は、p型コンタクト層30に対するコンタクト抵抗が1×10
−2Ω・cm
2以下となるように構成される。p側電極32の材料は特に問わないが、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電性酸化物、ロジウム(Rh)などの白金族金属、または、ニッケルと金の積層構造(Ni/Au)から構成される。
【0037】
n側電極34は、n型クラッド層24の第2上面24bの上に設けられる。n側電極34は、n型クラッド層24とオーミック接触が可能であり、かつ、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。n側電極34の材料は特に問わないが、例えば、n型クラッド層24に直接接触するTi層、および、Ti層に直接接触するAl層から構成される。
【0038】
つづいて、
図2および
図3を参照しながら、半導体発光素子10の製造方法について説明する。まず、
図2に示されるように、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型クラッド層24、活性層26、p型クラッド層28、第1p型コンタクト層36および第2p型コンタクト層38が順に形成される。ベース層22、n型クラッド層24、活性層26、第1p型コンタクト層36および第2p型コンタクト層38は、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0039】
第1p型コンタクト層36は、p型クラッド層28の上に直接形成される。p型クラッド層28のAlN比率と第1p型コンタクト層36のAlN比率の差は50%以上であるため、p型クラッド層28と第1p型コンタクト層36の界面における格子不整合差が非常に大きい。そのため、第1p型コンタクト層36は、p型クラッド層28の上に島状に成長(いわゆるアイランド成長)していく。アイランド成長となる場合、結晶成長の起点となる箇所の厚みが相対的に大きく、起点から離れた箇所の厚みが相対的に小さくなるため、結晶成長した半導体層の上面に凹凸構造が残って平坦性が低くなりやすい。本発明者らの知見によれば、第1p型コンタクト層36の厚さを大きくすればするほど、p型コンタクト層30の上面30aの平坦性が改善し、特に500nmを超える厚さまで第1p型コンタクト層36を成長させることで、p型コンタクト層30の上面30aの平坦性を顕著に改善できる。
【0040】
第2p型コンタクト層38は、第1p型コンタクト層36の上に直接形成される。第2p型コンタクト層38は、第1p型コンタクト層36に比べてp型ドーパント濃度、具体的にはMgのドーパント濃度が高い。第2p型コンタクト層38の成長レートは、第1p型コンタクト層36の成長レートよりも低く、第1p型コンタクト層36の成長レートの20%以上60%以下である。例えば、第1p型コンタクト層36の成長レートが1μm/分〜1.3μm/分程度であるのに対し、第2p型コンタクト層38の成長レートは0.3μm/分〜0.6μm/分程度である。第2p型コンタクト層38の成長レートの下げることで、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度を好適に高めることができる。例えば、p型ドーパントの原料であるビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)の供給レートを一定にしたまま、AlGaN系半導体材料の原料となるトリメチルガリウム(TMGa)やトリメチルアルミニウム(TMA)の供給レートを下げることで、第2p型コンタクト層38の成長レートを下げてドーパント濃度を高めることができる。
【0041】
次に、
図3に示すように、p型コンタクト層30の上の一部領域にマスク40を形成し、マスク40の上からドライエッチングを行う。マスク40は、例えば、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。ドライエッチングにより、マスク40が形成されていない領域においてp型コンタクト層30、p型クラッド層28および活性層26が除去される。ドライエッチングは、マスク40が形成されていない領域においてn型クラッド層24が露出するまで実行される。これにより、n型クラッド層24の第2上面24bが形成される。ドライエッチングの実行後、マスク40が除去される。
【0042】
その後、n型クラッド層24の第2上面24bにn側電極34が形成され、n側電極34に対してアニール処理がなされる。また、p型コンタクト層30の上面30aにp側電極32が形成され、p側電極32に対してアニール処理がなされる。なお、p側電極32およびn側電極34の形成順序やアニール処理のタイミングは特に限定されない。例えば、p側電極32を先に形成し、その後にn側電極34を形成してもよい。これにより、
図1に示される半導体発光素子10ができあがる。
【0043】
本実施の形態によれば、p型コンタクト層30の厚さを大きくすることで、p型コンタクト層30の上面30aの平坦性を向上できる。平坦性の高い上面30aの上にp側電極32を形成することで、p側電極32を通じて活性層26に向かう電流密度の面内均一性を高めることができる。言いかえれば、p型コンタクト層30とp側電極32の界面に凹凸構造があることで局所的に電流が集中し、電流密度が面内で不均一となることを防止できる。これにより、半導体発光素子10の一部箇所に過度な電流が流れることで素子寿命が低下する影響を防止できる。
【0044】
従来、発光波長が320nm以下の深紫外光用の半導体発光素子では、p型コンタクト層30による深紫外光の吸収を避けるため、p型コンタクト層30の厚さをできるだけ小さくすることが好ましいとされてきた。具体的には、p型GaN層の厚さを300nm以下や50nm以下の厚さにすることが好ましいとされていた。一方、本発明者らは、p型コンタクト層30の厚さをあえて大きくし、500nmを超える厚さにすることで、p型コンタクト層30の上面30aの平坦性を大きく向上できることを見出した。本実施の形態によれば、p型コンタクト層30の厚さを500nmより大きくすることで、以下に説明する顕著な効果を実現できる。
【0045】
図4は、実施例に係る半導体発光素子の発光強度の経時変化を示すグラフである。
図4は、第1p型コンタクト層36の厚さを16nm、300nm、500nm、700nm、1000nmにしたときの半導体発光素子10の発光強度を示している。実施例では、活性層26の発光波長が280nm〜285nm程度であり、p型クラッド層28のAlN比率が75%であり、p型コンタクト層30のAlN比率が0%である。n型クラッド層24のAlN比率は55%である。
図4では、点灯開始時の発光強度を1としている。
【0046】
図4に示されるように、第1p型コンタクト層36の厚さが小さいほど、発光強度の低下が速いことが分かる。第1p型コンタクト層36の厚さが16nmである場合の発光強度は、24時間後に75%まで低下し、48時間後に70%まで低下する。第1p型コンタクト層36の厚さが300nmである場合の発光強度は、200時間後に81%まで低下し、950時間後に70%まで低下する。一方、第1p型コンタクト層36の厚さが500nmである場合の発光強度は、200時間後において90%以上であり、1000時間後において80%以上である。同様に、第1p型コンタクト層36の厚さが700nmである場合の発光強度は、200時間後において90%以上であり、1000時間後において85%以上である。また、第1p型コンタクト層36の厚さが1000nmである場合の発光強度は、200時間後において90%程度であり、1000時間後において85%程度である。このように、第1p型コンタクト層36の厚さを大きくすることで、発光強度の低下を遅くすることができ、一定以上の発光強度を維持できる時間、つまり素子寿命を長くできる。
【0047】
図5は、実施例に係る半導体発光素子10の寿命と第1p型コンタクト層36の厚さの関係を示すグラフである。
図5では、半導体発光素子10の発光強度が70%まで低下する時間を寿命としている。図示されるように、第1p型コンタクト層36の厚さが大きくなるにつれて素子寿命も延びていき、第1p型コンタクト層36の厚さが500nmを超えると素子寿命が顕著に延びることが分かる。具体的には、第1p型コンタクト層36の厚さが500nmを超えると、素子寿命が5000時間を超える。第1p型コンタクト層36の厚さが520nmの場合の素子寿命は6500時間であり、第1p型コンタクト層36の厚さが550nmの場合の素子寿命は8000時間である。また、第1p型コンタクト層36の厚さが590nm以上になると、素子寿命が10000時間以上となる。さらに、第1p型コンタクト層36の厚さが700nm以上1000nm以下であれば、20000時間以上の素子寿命を実現できる。
【0048】
なお、第1p型コンタクト層36の厚さを1000nmより大きくすることも可能であり、例えば、p第1p型コンタクト層36の厚さを1500nmや2000nmにしても1万時間以上の好適な素子寿命を実現できる。しかしながら、第1p型コンタクト層36の厚さを大きくすると、
図2の工程において第1p型コンタクト層36を成長させる時間が長くなり、
図3の工程において第1p型コンタクト層36をドライエッチングする時間も長くなる。また、第1p型コンタクト層36の厚さが大きい場合、p型コンタクト層30の上面30aの高さとn型クラッド層24の第2上面24bの高さの差が大きくなる。半導体発光素子10の実装時の不良を低減するためには、p側電極32とn側電極34の高さを揃える必要があり、n側電極34の厚さを大きくしなければならない。そうすると、n側電極34の形成時間や材料費が増加することになる。このような観点から、第1p型コンタクト層36の厚さは、1000nm以下とすることが好ましい。
【0049】
また、本実施の形態によれば、第1p型コンタクト層36および第2p型コンタクト層38のドーパント濃度を適切に設定することで、第2p型コンタクト層38に対するp側電極32のコンタクト抵抗を好適に小さくできる。一般に、p型コンタクト層30のドーパント濃度が高いほど、p側電極32のコンタクト抵抗が小さくなる傾向にある。しかしながら、p型コンタクト層30のドーパント濃度が高すぎると、p型ドーパントの活性化率の低下によりキャリア(ホール)として有効に機能しなくなる割合が増え、ドーピングが過剰となる結果としてp型コンタクト層30におけるキャリア移動度が下がる傾向にある。本実施の形態によれば、厚みの大きい第1p型コンタクト層36のドーパント濃度を適正な範囲内とし、第1p型コンタクト層36への過剰なドーピングを避けることで、p型コンタクト層30の全体のバルク抵抗を低減できる。また、第1p型コンタクト層36よりもドーパント濃度の高い第2p型コンタクト層38の厚みを小さくすることで、p型コンタクト層30の全体のバルク抵抗の増大を抑制しつつ、p側電極32のコンタクト抵抗を改善できる。
【0050】
本実施の形態によれば、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度および厚みを適切に設定することで、p型コンタクト層30のコンタクト抵抗を1×10
−2Ω・cm
2以下にでき、より好ましくは1×10
−3Ω・cm
2以下にできる。第2p型コンタクト層38の好ましいドーパント濃度および厚みについて、
図6〜
図8を参照しながら以下に説明する。
【0051】
図6は、p側電極32のコンタクト抵抗と第2p型コンタクト層38のドーパント濃度の関係を示すグラフである。
図6は、第2p型コンタクト層38の厚さを10nmに固定して、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度を5×10
19/cm
3〜8×10
19/cm
3の範囲で変化させている。図示されるように、8×10
19/cm
3〜8×10
20/cm
3の範囲で1×10
−2Ω・cm
2以下のコンタクト抵抗を実現できる。また、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度が1×10
20/cm
3〜2×10
20/cm
3程度となる場合にコンタクト抵抗を1×10
−3Ω・cm
2程度に低減できることが分かる。
【0052】
図7は、p側電極32のコンタクト抵抗と第2p型コンタクト層38の厚さの関係を示すグラフである。
図7は、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度を2×10
20/cm
3に固定して、第2p型コンタクト層38の厚さを5nm〜40nmの範囲で変化させている。図示されるように、第2p型コンタクト層38の厚さが6nm〜40nmとなる範囲W1において、1×10
−2Ω・cm
2以下のコンタクト抵抗を実現できると考えられる。また、第2p型コンタクト層38の厚さが9nm〜23nmとなる範囲W2において、1×10
−3Ω・cm
2以下のコンタクト抵抗を実現できると考えられる。
【0053】
図8は、p側電極32のコンタクト抵抗と第2p型コンタクト層38のドーパント濃度および厚さの関係を示すグラフである。
図8は、
図6および
図7のグラフを組み合わせたものである。
図8の曲線Aは、
図7の曲線と同じである。
図8の曲線B〜Eは、曲線Aを平行移動させたものであり、
図6の厚さが10nmであるデータを基準としている。
図8のグラフに示される各プロットは、
図6または
図7に示されるプロットに対応する。
【0054】
図8に示されるように、第2p型コンタクト層38の厚さが8nm〜28nmとなる範囲W3では、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度が8×10
19/cm
3以上4×10
20/cm
3以下であれば、1×10
−2Ω・cm
2以下のコンタクト抵抗を実現できると考えられる。また、第2p型コンタクト層38の厚さが9nm〜25nmとなる範囲W4では、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度が8×10
19/cm
3以上8×10
20/cm
3以下であれば、1×10
−2Ω・cm
2以下のコンタクト抵抗を実現できると考えられる。さらに、第2p型コンタクト層38の厚さが11nm〜20nmとなる範囲W5では、第2p型コンタクト層38のドーパント濃度が1×10
20/cm
3以上2×10
20/cm
3以下であれば、1×10
−3Ω・cm
2以下のより好適なコンタクト抵抗を実現できると考えられる。
【0055】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0056】
別の実施の形態では、p型クラッド層28がAlN比率の異なる複数のp型半導体層で構成されてもよい。p型クラッド層28は、例えば、p型コンタクト層30と接触するp型第1半導体層と、活性層26とp型第1半導体層の間に設けられるp型第2半導体層とを含んでもよい。p型コンタクト層30と接触するp型第1半導体層は、p型コンタクト層30とのAlN比率差が50%以上であるp型AlGaN系半導体材料から構成される。p型第2半導体層は、p型第1半導体層よりもAlN比率が高いp型AlGaN系半導体材料またはp型AlN系半導体材料から構成される。
【0057】
別の実施の形態では、p型クラッド層28のAlN比率が厚み方向に変化するように構成されてもよい。p型クラッド層28のAlN比率は、活性層26からp型コンタクト層30に向かう方向に徐々に小さくなるよう構成されてもよい。この場合、p型クラッド層28の上面28aは、p型コンタクト層30とのAlN比率差が50%以上となるよう構成される。
【0058】
別の実施の形態では、活性層26とp型クラッド層28の間に任意のAlGaN系半導体材料層またはAlN系半導体材料層が追加的に設けられてもよい。活性層26とp型クラッド層28の間に設けられる半導体材料層は、p型層であってもよいし、アンドープ層であってもよい。
【解決手段】半導体発光素子10は、n型クラッド層24と、活性層26と、p型クラッド層28と、第1p型コンタクト層36と、第2p型コンタクト層38と、p側電極32と、を備える。p型クラッド層28のAlN比率は50%以上である。第1p型コンタクト層36は、5%以下のAlN比率を有し、8×10