(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
LED等の半導体発光素子の小型化・大電流化に伴い、半導体発光素子を備える半導体発光装置等の半導体装置に要求される信頼性の要求レベルがますます高まってきている。
【0015】
特許文献1に開示された半導体装置では、熱応力に対する耐性が高い半導体装置が得られるとされているが、本願発明者らの検討によって、半導体発光素子の小型化・大電流化に伴い、その長期信頼性試験において、電極不良などのダメージが発生することが分かった。これは、金属バンプを潰して接合する際の応力が、半導体発光素子の電極に歪を発生させて、それが電極不良などの原因になると考えられる。
【0016】
ここで、
図29Aおよび
図29Bを用いて、半導体発光素子の電極に歪が発生する要因について説明する。
図29Aおよび
図29Bは、フリップチップボンディングにより半導体素子10が実装基板20に実装された比較例の半導体装置100の断面図である。
図29Aは、フリップチップボンディングする前の状態を示しており、
図29Bは、フリップチップボンディングした後の状態を示している。
【0017】
図29Bに示すように、半導体装置100は、半導体積層構造11を有する半導体素子10と、実装基板20とを備える。半導体素子10と実装基板20とは、金属バンプ130を介して接合されている。具体的には、半導体素子10の半導体積層構造11に形成された第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)と、実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)とが、金属バンプ130を介して接合されている。金属バンプ130は、
図28の特許文献1に開示された半導体装置200のp側電極ピラー242およびn側電極ピラー252に相当する。
【0018】
半導体素子10を実装基板20に実装する際、
図29Aに示すように、実装基板20に配置された第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)と、半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)上に形成された金属バンプ130とが対向する向きに、半導体素子10(例えばLED)が配置される。その後、半導体素子10側から実装基板20側に向けて(実装基板20に対して垂直方向)荷重をかけて押圧しながら超音波を印加することによって、実装基板20の第2電極の最表面の金と金属バンプ130の最表面の金とを超音波接合させる。これにより、金属バンプ130を介して半導体素子10と実装基板20とが接合される。
【0019】
しかしながら、実装時の荷重の押圧により、金属バンプ130が半導体素子10側の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)に押し付けられ、半導体素子10の第1電極に歪が発生することが分かった。半導体素子10の電極の歪は、半導体素子10の第1電極に亀裂またはバンプ痕などとして現れ、長期信頼性試験時の電極不良などの原因となる。
【0020】
半導体素子、特にLEDの小型化・大電流化に伴い、半導体素子の実装時の強度を保持したまま、実装時の歪が残らない電極およびバンプの開発がますます重要となっている。なお、特許文献1には、本開示が課題としている機械的な応力に関する課題は記載されていない。
【0021】
そこで、本願発明者らは、フリップチップボンディングより金属バンプを介して半導体素子を実装基板に実装した場合であっても、実装時に半導体素子の電極およびバンプに歪が発生しない構造および工法について検討した。
【0022】
そして、本願発明者らが検討を重ねた結果、金属バンプを介して半導体素子と実装基板とが接合された半導体装置において、金属バンプ内に、半導体素子の電極に接する第1の層と第1の層に接する第2の層とを設けて、第1の層および第2の層の一方の結晶粒径を他方の結晶粒径よりも大きくしておくことで、金属バンプによって実装時の衝撃を吸収・緩和して半導体素子の電極へのダメージを抑制できることを見出した。
【0023】
さらに、金属バンプにおいて半導体素子(または実装基板)の電極に接する部分を軟らかい層にしておくことで、実装時の押圧により柔らかい層が潰れて半導体素子側および実装基板側の少なくとも一方の接合部が末広がり形状となって金属バンプと半導体素子(または実装電極)の電極との接合面積を増大させて金属バンプと半導体素子の電極との接合強度を増大させることができることも見出した。
【0024】
本開示に係る半導体装置は、このような着想に基づいてなされたものである。
【0025】
具体的には、本開示に係る第1の半導体装置は、実装基板と、金属バンプを介して前記実装基板に配置された半導体素子とを備え、前記半導体素子は、半導体積層構造および第1電極を有し、前記実装基板は、第2電極を有し、前記金属バンプは、前記第1電極に接する第1の層と、前記第1電極とは反対側に位置する第2の層とを有し、前記第1の層を構成する結晶の平均結晶粒径は、前記第2の層を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きく、前記第2の層は、前記第1電極から離間している。
【0026】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第1の層は、前記第2の層側に、平均結晶粒径が前記第1の層の平均結晶粒径から前記第2の層の平均結晶粒径に近付く遷移領域を有するとよい。
【0027】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第1の層と前記第2の層との界面の最大高さ粗さは、前記第2の層の平均結晶粒径以上であるとよい。
【0028】
この場合、前記第1の層の平均結晶粒径は、前記界面の最大高さ粗さ以上であるとよい。
【0029】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第1電極は、前記金属バンプと接する金からなる表面層を含む少なくとも2層からなり、前記表面層の厚さをA、前記表面層の平均結晶粒径をB、前記第1の層の厚さをC、前記第1の層と前記第2の層との界面の最大高さ粗さをRzとしたとき、C>Rz/2+1−A*B/8の関係式を満たすとよい。
【0030】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第1の層は、等軸な結晶粒組織を有するとよい。
【0031】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第2の層は、多軸の結晶粒組織を有するとよい。
【0032】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記半導体素子、前記実装基板および前記金属バンプにおける前記実装基板に対して垂直な方向の断面において、前記金属バンプの断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形を定義したとき、前記第1電極に接する前記第1の層と前記第1電極との接合部である第1の接合部の幅は、前記長方形の底辺の長さよりも長いとよい。
【0033】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記金属バンプは、前記第2電極に接する第3の層を有し、前記半導体素子、前記実装基板および前記金属バンプにおける前記実装基板に対して垂直な方向の断面において、前記金属バンプの断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形を定義したとき、前記第3の層と前記第2電極との接合部である第2の接合部の幅は、前記長方形の底辺の長さよりも長いとよい。
【0034】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第2の層は、前記長方形の底辺の長さよりも短い幅を有するとよい。
【0035】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記半導体積層構造は、基板と、前記基板側から順に積層された、第1導電型半導体層、活性層および第2導電型半導体層とを有するとよい。
【0036】
また、本開示に係る第1の半導体装置において、前記第1電極は、前記第2導電型半導体層に接して配置され、前記活性層からの光を反射する金属膜を含むとよい。
【0037】
また、本開示に係る第2の半導体装置は、実装基板と、金属バンプを介して前記実装基板に配置された半導体素子とを備え、前記半導体素子は、半導体積層構造および第1電極を有し、前記実装基板は第2電極を有し、前記金属バンプは、前記第1電極に接する第1の層と、前記第1電極とは反対側に位置する第2の層とを有し、前記第1の層は、等軸な結晶粒組織を有する。
【0038】
また、本開示に係る第2の半導体装置において、前記第2の層は、多軸の結晶粒組織を有するとよい。
【0039】
また、本開示に係る第3の半導体装置は、実装基板と、金属バンプを介して前記実装基板に配置された半導体素子とを備え、前記半導体素子は、半導体積層構造および第1電極を有し、前記実装基板は、第2電極を有し、前記金属バンプは、前記第1電極に接する金からなる第1の層と、前記第1電極とは反対側に位置する第2の層とを有し、前記第1の層を構成する結晶の平均結晶粒径は、前記第2の層を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きく、前記第1電極は、前記金属バンプと接する金からなる表面層を含む少なくとも2層からなり、前記表面層の厚さをA、前記表面層の平均結晶粒径をB、前記第1の層の厚さをC、前記第1の層と前記第2の層との界面の最大高さ粗さをRzとしたとき、C>Rz/2+1−A*B/8の関係式を満たしている。
【0040】
また、本開示に係る第4の半導体装置は、実装基板と、複数の金属層からなる金属バンプを介して前記実装基板に配置された半導体素子とを備え、前記半導体素子は、半導体積層構造および第1電極を有し、前記実装基板は、第2電極を有し、前記半導体素子、前記実装基板および前記金属バンプにおける前記実装基板に対して垂直な方向の断面において、前記金属バンプの断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形を定義したとき、前記第1電極と接する第1の層と前記第1電極との接合部である第1の接合部の幅、および、前記第2電極と接する第3の層と前記第2電極との接合部である第2の接合部の幅の少なくともいずれか一方は、前記長方形の底辺の長さよりも長い。
【0041】
また、本開示に係る第4の半導体装置において、前記金属バンプは、前記第1の層と前記第3の層との間に、前記長方形の底辺の長さよりも短い幅の第2の層を有するとよい。
【0042】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、工程および工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0043】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0044】
(実施の形態1)
[半導体装置]
まず、実施の形態1に係る半導体装置1の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る半導体装置1の断面図である。
【0045】
図1に示すように、実施の形態1に係る半導体装置1は、半導体素子10と、実装基板20と、金属バンプ30とを備える。
【0046】
半導体素子10は、金属バンプ30を介して実装基板20に配置されている。つまり、半導体素子10は、金属バンプ30を介して実装基板20に接合されている。
【0047】
本実施の形態において、半導体素子10は、発光ダイオード(LED)チップである。したがって、半導体装置1は、LEDチップを備える半導体発光装置である。
【0048】
半導体素子10は、半導体積層構造11と、第1電極として半導体積層構造11に形成された第1p側電極12および第1n側電極13とを有する。第1p側電極12および第1n側電極13は、金属バンプ30と接する金からなる表面層を含む少なくとも2層からなる。
【0049】
なお、本明細書において、第1p側電極12と第1n側電極13とは、特に区別して説明する必要がない場合は、まとめて半導体素子10の第1電極と記載する場合がある。
【0050】
半導体積層構造11は、基板11aと、n型半導体層11b(第1導電型半導体層)と、活性層11cと、p型半導体層11d(第2導電型半導体層)とを有する。n型半導体層11b、活性層11cおよびp型半導体層11dは、基板11aに接する半導体積層体であり、基板11a側からこの順に積層されている。具体的には、n型半導体層11b、活性層11cおよびp型半導体層11dは、基板11aの上に、この順で積層されている。
【0051】
第1p側電極12および第1n側電極13は、半導体積層構造11の上に形成されている。第1p側電極12は、p型半導体層11dの上に形成されている。また、第1n側電極13は、n型半導体層11bの上に形成されている。具体的には、第1n側電極13は、p型半導体層11dおよび活性層11cの一部を除去することで部分的にn型半導体層11bを露出させた露出領域に形成されている。
【0052】
本実施の形態において、半導体積層構造11の上には絶縁膜として酸化膜14が形成されている。第1p側電極12は、酸化膜14の開口部から露出するp型半導体層11dの上に形成され、第1n側電極13は、酸化膜14の開口部から露出するn型半導体層11bの上に形成されている。
【0053】
第1p側電極12は、半導体積層構造11側から順に積層された、反射電極12a、バリア電極12b、シード層12cおよびカバー電極12dを有する。具体的には、反射電極12a、バリア電極12b、シード層12cおよびカバー電極12dは、半導体積層構造11の上に、この順で積層されている。第1p側電極12において、反射電極12aは、半導体積層構造11の活性層11cからの光を反射する金属膜であり、半導体積層構造11のp型半導体層11d(第2導電型半導体層)に接して配置されている。
【0054】
また、第1n側電極13は、半導体積層構造11側から順に積層された、オーミックコンタクト層13a、バリア電極13b、シード層13cおよびカバー電極13dを有する。
【0055】
また、第1p側電極12および第1n側電極13において、カバー電極12dおよび13dは、金属バンプ30と接する金からなる表面層である。具体的には、カバー電極12dおよび13dは、シード層12cおよび13cを下地層として形成された金めっき膜である。
【0056】
実装基板20は、基板21と、第2電極として基板21の一方の面に形成された第2p側電極22および第2n側電極23とを有する。第2p側電極22および第2n側電極23は、半導体素子10に電流を印加するための引き出し電極である。
【0057】
第2p側電極22は、半導体素子10の第1p側電極12と金属バンプ30を介して接合されている。n側も同様に、第2n側電極23は、半導体素子10の第1n側電極13と金属バンプ30を介して接合されている。
【0058】
なお、本明細書において、第2p側電極22と第2n側電極23とは、特に区別して説明する必要がない場合は、まとめて実装基板20の第2電極と記載する場合がある。
【0059】
金属バンプ30は、半導体素子10に形成されている。p側の金属バンプ30とn側の金属バンプ30は、同様の構成の金属バンプである。つまり、半導体素子10の第1p側電極12と実装基板20の第2p側電極22との間の金属バンプ30と、半導体素子10の第1n側電極13と実装基板20の第2n側電極23との間の金属バンプ30とは、同じ構成になっている。本実施の形態において、金属バンプ30は、金めっき膜からなる金バンプである。
【0060】
具体的には、金属バンプ30は、第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)側に位置する第1の層31と、第1電極とは反対側に位置する第2の層32とを含む複数の金属層を有する。本実施の形態において、金属バンプ30は、第1の層31と第2の層32との2層を有している。
【0061】
第1の層31は、第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)に接している。具体的には、第1の層31は、第1p側電極12のカバー電極12dまたは第1n側電極13のカバー電極13dと直接接合されている。
【0062】
一方、第2の層32は、第1の層31に接しているとともに、実装基板20の第2電極(第2p側電極22と第2n側電極23)に接している。具体的には、第2の層32は、第2p側電極22または第2n側電極23と直接接合されている。したがって、第2の層32は、第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)から離間している。具体的には、第2の層32と第1電極との間には第1の層31が存在する。
【0063】
なお、第1の層31は、第2の層32よりも幅が大きい。本実施の形態において、第1の層31および第2の層32は、いずれも略円柱形状であるが、第1の層31は、第2の層32よりも直径が大きい円柱形状である。
【0064】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30の拡大断面図と、同金属バンプ30における結晶粒径の高さ位置依存性を示す図である。
図2において、縦軸は、金属バンプ30の高さを示しており、横軸は、金属バンプ30の結晶粒径を示している。
【0065】
図2に示すように、金属バンプ30において、第1の層31を構成する結晶の平均結晶粒径は、第2の層32を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きい。つまり、金属バンプ30は、金属の結晶粒径が異なる第1の層31と第2の層32とによって構成されている。
【0066】
ここで、金属における結晶粒径と硬さとの関係について説明する。一般的に金属の結晶粒径と硬度とには負の相関がある。つまり、結晶粒径が小さくなるにつれて硬度が高くなる。逆に、結晶粒径が大きくなるにつれて硬度が低くなる。これは、金属の硬度は、荷重をかけた時の金属の塑性変形量で決まるものであり、また、塑性変形量は、転位の移動、増殖および移動に対する、障害物、すべり面の長さおよび金属結晶の方向に影響を受けるためである。
【0067】
金属結晶のすべり面は、結晶格子のある特定方向に決まっており、応力がかかるとその方向にすべりが発生し、金属が塑性変形する。すなわち、結晶粒径が大きい金属結晶体は、すべり線の長さが長く、応力がかかると結晶境界に応力が集中し、その近傍で塑性変形しやすい。つまり、軟らかいということになる。
【0068】
逆に、結晶粒径が小さい金属結晶体は、単体の粒のすべり面の長さが小さく、ある応力がかかった場合に、応力の方向と一致しないすべり面が多くなる。これにより、それらの結晶が抵抗になってすべりが生じにくくなり、金属が塑性変形しにくくなる。つまり、結晶粒径が小さい金属結晶体は、硬いということになる。
【0069】
このような結晶粒径と硬さとの関係については、後述するように、金めっき膜についても同様である。すなわち、金めっき膜からなる金属バンプ30についても、結晶粒径と硬度とには負の相関がある。つまり、金めっき膜を構成する結晶の平均結晶粒径が大きいほど硬度が低くなる。
【0070】
そして、本実施の形態における金属バンプ30では、第1の層31がめっき後の加熱に伴う再結晶化によって結晶粒径が粗大化している。つまり、金属バンプ30において、結晶の平均結晶粒径が相対的に大きい第1の層31は、結晶の平均結晶粒径が相対的に小さい第2の層32よりも軟らかい。
【0071】
このように構成される半導体装置1では、金属バンプ30が形成された半導体素子10を実装基板20に実装するときに、金属バンプ30によって半導体素子10と実装基板20と間の衝撃を緩和することができる。これにより、半導体素子10を実装基板20に実装するときに、半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)が損傷することを抑制することができる。
【0072】
[半導体装置の製造方法]
次に、実施の形態1に係る半導体装置1の製造方法について図面に基づいて説明する。
【0073】
実施の形態1に係る半導体装置1の製造方法は、半導体素子10の半導体積層構造11を形成する第1工程(
図3A〜
図3B)と、次いで、半導体素子10の第1電極を形成する第2工程(
図4A〜
図4I)と、次いで、半導体素子10に金属バンプ30を形成する第3工程(
図5A〜
図5D)と、次いで、フリップチップボンディングにより半導体素子10を実装基板20に実装をする第4工程(
図6A〜
図6B)とを含む。
【0074】
[第1工程(半導体積層構造の形成工程)]
まず、
図3A〜
図3Bに示すフローにより、半導体素子10の半導体積層構造11を形成する。
図3A〜
図3Bは、半導体素子10の半導体積層構造11を形成するためのフローを示す図である。
【0075】
具体的には、
図3Aに示すように、まず、基板11aを準備する。本実施の形態では、基板11aには半導体からなる透光性基板として、GaNからなるウエハ(GaN基板)を用いている。
【0076】
次に、
図3Bに示すように、基板11aの上に、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相エピタキシャル成長)法によるエピタキシャル成長技術により、n型半導体層11bと、活性層11cと、p型半導体層11dとを順に積層することで、半導体積層構造11を形成することができる。
【0077】
本実施の形態では、n型半導体層11bは、n型窒化物半導体層(例えばGaN層)であり、活性層11cは、窒化物発光層であり、p型半導体層11dは、p型窒化物半導体層である。活性層11cを構成する窒化物発光層は、少なくともGaとNとを含み、必要に応じて適量のInを含ませることで、所望の発光波長を得ることができる。本実施の形態では、活性層11cはInGaN層であり、発光ピーク波長が450nmとなるようにIn組成比を設定している。
【0078】
[第2工程(第1電極の形成工程)]
次に、
図4A〜
図4Iに示すフローにより、半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)を形成する。
図4A〜
図4Iは、半導体素子10の第1電極を形成するためのフローを示す図である。
【0079】
具体的には、まず、
図4Aに示すように、上記の第1工程で形成された半導体積層構造11に対して、p型半導体層11dと活性層11cとn型半導体層11bとの一部をドライエッチングにより除去することで、n型半導体層11bの一部をp型半導体層11dおよび活性層11cから露出させる。これにより、n型半導体層11bの一部に露出領域を形成することができる。
【0080】
次に、
図4Bに示すように、n型半導体層11bの露出領域を含む半導体積層構造11の上面全体に絶縁膜として酸化膜14を成膜する。
【0081】
その後、図示しないが、酸化膜14の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりn型半導体層11bの露出領域内に対応する位置にレジストに開口部を形成し、弗酸によるエッチングによりレジストの開口部内の酸化膜14を除去する。
【0082】
次に、
図4Cに示すように、EB(Electron Beam)蒸着法を用いて、第1n側電極13を形成するためのn側電極形成材料を成膜し、レジストリフトオフ法によりレジストと余分なn側電極形成材料を除去することで、酸化膜14を除去した領域に第1n側電極13の一部を形成する。
【0083】
本実施の形態では、n側電極形成材料として、n型半導体層11bに近い側から離れる方向に向かって、オーミックコンタクト層13aとなるAl層(膜厚0.3μm)とバリア電極13bとなるTi層(膜厚0.1μm)とを順に成膜している。これにより、第1n側電極13の一部として、Al層からなるオーミックコンタクト層13aとTi層からなるバリア電極13bとの積層構造層を形成することができる。
【0084】
なお、n型半導体層11b上に直接積層される第1n側電極13のAl層は、n型半導体層11bに対するオーミックコンタクト層として機能する。オーミックコンタクト層の材料は、例えば、Ti、V、Al、または、これらのいずれか一種類の金属を含む合金などとすることができる。また、バリア電極13bに用いたTi層は、下層のAl層と、後の工程で形成する上層のAu層とを反応させないためのバリアとして機能する。
【0085】
その後、図示しないが、第1n側電極13および酸化膜14を覆うようにレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりp型半導体層11dのレジストに開口部を形成し、弗酸によるエッチングによりレジストの開口部内の酸化膜14を除去する。
【0086】
次に、
図4Dに示すように、EB蒸着法を用いて、第1p側電極12を形成するためのp側電極形成材料を成膜し、レジストリフトオフ法によりレジストと余分なp側電極形成材料を除去することで、p型半導体層11d上の酸化膜14を除去した領域に、第1p側電極12の一部である反射電極12aを形成する。
【0087】
本実施の形態では、Ag層からなる反射電極12a(p側電極形成材料)として、膜厚0.2μmのAg層を成膜している。この時、反射電極12aは、酸化膜14から離間するように形成される。言い換えると、反射電極12aと酸化膜14との間からp型半導体層11dが露出するように形成される。
【0088】
なお、反射電極12aには、活性層11cの光を反射するために反射率の高い、Ag、Al、Rhを含む金属材料からなる金属膜を用いるとよい。また、反射電極12aの成膜方法は、EB蒸着法に限るものではなく、スパッタ法であってもよい。
【0089】
次に、
図4Eに示すように、反射電極12aの上面および側面を覆うようにバリア電極12bを形成する。本実施の形態では、スパッタ法を用いて、バリア電極12bとして、膜厚0.8μmのTi層を形成している。バリア電極12bの材料としては、反射電極12aを保護するために、Ti、Ni、Pt、TiWなどを用いるとよい。この時、バリア電極12bは、酸化膜14と反射電極12aとの間に露出するp型半導体層11d、および、n型半導体層11b上の酸化膜14の端部を覆うように形成される。
【0090】
次に、
図4Fに示すように、第1p側電極12のバリア電極12bおよび第1n側電極13のバリア電極13bが形成されたウエハ全面に、EB蒸着法によってシード膜12Sを形成する。シード膜12Sは、第1p側電極12のシード層12cおよび第1n側電極13のシード層13cとなる金属膜であり、金めっきの下地電極として用いられる。本実施の形態において、シード膜12Sは、バリア電極12bおよび13bに近い側から離れる方向に向かって、Ti層およびAu層が積層された積層構造層である。
【0091】
次に、
図4Gに示すように、第1p側電極12に対応するバリア電極12bと第1n側電極13に対応するバリア電極13bとの境界領域におけるシード膜12S上に、レジスト15を形成する。
【0092】
次に、
図4Hに示すように、ウエハ上のレジスト15が形成されていない領域(レジスト非形成領域)に、シード膜12Sを下地電極として電解めっきにより金属を析出させることで、金めっき膜であるカバー電極12dおよび13dを形成する。カバー電極12dは、バリア電極12b上のシード膜12S上に形成され、カバー電極13dは、バリア電極13b上のシード膜12S上に形成される。カバー電極12dおよび13dとしてめっき膜を形成する際の条件の一例としては、めっき液温が50℃の非シアン系Auめっき液を用いて、析出速度を0.5μm/minに設定し、カバー電極12dおよび13dとして厚みが1.0μmの金めっき膜を形成した。
【0093】
ここで、カバー電極12dおよび13dには、腐食耐性を高めるために、AuまたはAuを含む材料が用いられる。また、半導体素子10をカバー電極12d(カバー電極13d)側から平面視した場合、カバー電極12dはバリア電極12bを内包するように形成されており、また、カバー電極13dは、バリア電極13bを内包するように形成されてる。なお、カバー電極12dとカバー電極13dとの間の半導体積層構造11側には酸化膜14が配置されている。
【0094】
次に、
図4Iに示すように、レジスト15を除去する。例えば、有機溶剤等によってシード膜12S上のレジスト15を除去する。
【0095】
[第3工程(金属バンプの形成工程)]
次に、
図5A〜
図5Dに示すフローにより、半導体素子10に金属バンプ30を形成する。
図5A〜
図5Dは、半導体素子10に金属バンプ30を形成するためのフローを示す図である。
【0096】
図1に示される金属バンプ30は、第1p側電極12に対応するp側の第1バンプと、第1n側電極13に対応するn側の第2バンプとを含んでいる。第1バンプは、第1p側電極12の上に形成され、第2バンプは、第1n側電極13の上に形成される。本実施の形態において、金属バンプ30は、金めっき法で形成された金めっきバンプである。また、金属バンプ30は、複数の金属層で構成されており、結晶粒径が異なる金めっき膜を少なくとも2層積層した積層構造となっている。以下、金属バンプ30の形成方法について説明する。
【0097】
上記の第2工程の後、まず、カバー電極12dおよび13dの全面を覆うようにフォトリソグラフィ用のレジストを塗布し、140℃で20min程度の熱処理によりレジストを硬化させる。その後、
図5Aに示すように、第1p側電極12のカバー電極12d上および第1n側電極13のカバー電極13d上の各々における金属バンプ30を形成する所定の領域のレジスト16に、フォトリソグラフィにより直径25μmの開口部16aを形成する。
【0098】
次に、
図5Bに示すように、金の電解めっき法によりレジスト16の開口部16aに金を析出させることで、金属バンプ30となる金めっき膜30Xを形成する。具体的には、レジスト16の開口部16aに露出した第1p側電極12のカバー電極12dの上と第1n側電極13のカバー電極13dの上とのそれぞれに金めっき膜30Xを同時に形成する。金めっき膜30Xを形成する際の条件の一例としては、めっき液温が50℃の非シアン系Auめっき液を用いて、析出速度を0.5μm/minに設定して、高さ(厚み)が5μmの金めっき膜30Xを形成した。形成した直後の金めっき膜30Xの結晶構造は、全体が細かい結晶粒の集合体である。
【0099】
次に、
図5Cに示すように、レジスト16を除去する。例えば、有機溶剤等によってレジスト16を除去する。これにより、第1p側電極12のカバー電極12d上および第1n側電極13のカバー電極13d上の各々の所定の領域に、直径25μm、高さ5μmの円柱形状の金めっき膜30Xが形成されることとなる。
【0100】
次に、
図5Dに示すように、第1p側電極12のバリア電極12bと第1n側電極13のバリア電極13bとの間の酸化膜14上のシード膜12Sを部分的に除去する。本実施の形態では、シード膜12Sは、Au層とTi層との積層構造であるので、まず、シード膜12Sの上層であるAu層をヨード液によって除去し、その後、シード膜12Sの下層であるTi層を希弗酸によって除去し、酸化膜14を露出させる。これにより、酸化膜14上において、シード膜12Sをシード層12cとシード層13cとに分離して、電極のpn分離を行うことができる。具体的には、反射電極12a、バリア電極12b、シード層12cおよびカバー電極12dとの積層構造である第1p側電極12と、オーミックコンタクト層13a、バリア電極13b、シード層13cおよびカバー電極13dの積層構造である第1n側電極13とを分離することができる。
【0101】
次に、
図5Eに示すように、金めっき膜30Xが形成されたウエハを大気雰囲気中において150℃で1hの熱処理を行う。この熱処理によって、金めっき膜30X内の下側領域とカバー電極12dおよび13dとの結晶粒径が変化する。これにより、同一組成で結晶粒径の異なる第1の層31および第2の層32の2層からなる金属バンプ30を得ることができる。金属バンプ30において、半導体積層構造11に近い側の第1の層31は、半導体積層構造11に遠い側の第2の層32よりも結晶粒径が大きくなっている。また、金属バンプ30の第1の層31を構成する結晶の結晶粒径は、カバー電極12dおよび13dを構成する結晶の結晶粒径と同じである。
【0102】
ここで、熱処理による結晶粒径の変化について、
図7A〜
図7Cを用いて詳細に説明する。
図7Aは、
図5Dにおける領域VIIAの拡大図である。
図7Bは、
図5Eにおける領域VIIBの拡大図である。
図7Cは、
図7Bの状態から、さらに結晶粒が粗大化した状態を示す図である。
図7A〜
図7Cは、第1p側電極12上の一つの金めっき膜30Xまたは金属バンプ30と、その下方に位置する第1p側電極12のカバー電極12dの一部とに対応する領域を示している。
【0103】
図7Aは、金めっき膜30Xを形成した直後の金めっき膜30Xの断面を示している。
図7Aに示すように、形成直後の金めっき膜30Xは、全体が細かい結晶粒の集合体で構成されている。
【0104】
金めっき膜30Xが形成されたウエハを雰囲気炉で熱処理を開始すると、
図7Bに示すように、第1p側電極12(カバー電極12d)側から矢印の方向に金めっき膜30Xに効率よく熱が伝わる。金めっき膜30Xに伝わった熱は、金めっき膜30Xを構成する金の再結晶化の駆動エネルギーとなり、第1p側電極12側の結晶粒が大きく成長する。さらに熱処理を続けると、第1p側電極12側から金めっき膜30Xの先端に向かって結晶粒が粗大化し、最終的には
図7Cに示すように、金めっき膜30X全体に粗大化した結晶粒が広がる。この結晶粒の粗大化は、熱処理の温度が高くなるほど、あるいは熱処理の時間が長くなるほど進む。
【0105】
本実施の形態における金属バンプ30を形成する際の熱処理条件(150℃で1hの熱処理)は、
図7Cに示すような金めっき膜30Xの先端までを再結晶化により粗大化する条件ではなく、
図7Bに示すような結晶粒の粗大化を金めっき膜30Xの途中で止める条件である。つまり、金めっき膜30Xに対して、大気雰囲気中において150℃で1hの熱処理を施すことによって、結晶粒径で区分するとほぼ2層構造となる金属バンプ30が形成される。具体的には、第1p側電極12に近い側の結晶粒が粗大化した第1の層31と、第1p側電極12とは反対側の結晶粒が相対的に小さい第2の層32とを有する金属バンプ30が形成される。
【0106】
なお、第1p側電極12の上に形成された金めっき膜30Xだけではなく、第1n側電極13の上に形成された金めっき膜30Xについても、第1p側電極12の上に形成された金めっき膜30Xと同様に結晶粒が変化する。つまり、150℃で1hの熱処理によって、第1n側電極13の上に形成された金めっき膜30Xは結晶粒径が異なる2層に変化し、
図7Bに示すように、第1n側電極13に近い側の結晶粒が粗大化した第1の層31と、第1n側電極13とは反対側の結晶粒が相対的に小さい第2の層32とを有する金属バンプ30が形成される。
【0107】
ここで、本実施の形態で用いた金めっき30Xおよび金属バンプ30の結晶粒径の測定方法を以下に示す。本実施の形態では、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて金めっき30Xまたは金属バンプ30の断面を形成した後、走査型顕微鏡によるScannig Ion Microscopy像(SIM像)にて観察した観察領域に対してインターセプト法を適用して結晶粒径を測定した。
【0108】
このとき、
図8に示すように、一辺がLの正方形の中に平均結晶粒径dを持つ結晶が一辺当りn個存在した場合、正方形の面積はL
2で、1つの結晶粒の面積はπ(d/2)
2となる。そして、結晶粒に対して観察領域が相対的に大きい場合、結晶粒は正方形の中にn
2個あるため結晶粒全部が占める面積はn
2×π(d/2)
2となり、正方形の面積=結晶粒全部が占める面積となるので、L
2=n
2×π(d/2)
2となる。これをdで表すと、d=2L/n/(π)
1/2の関係式で表される。この関係式を用いて観察領域L×Lに直線(
図8の一点鎖線)をひき、この直線に交わる粒界の数を結晶の数nとして金めっき30Xおよび金属バンプ30の水平方向および高さ方向の平均結晶粒径dを求めた。
【0109】
ここで、水平方向とは、カバー電極12dおよび13dの上面に対して平行な方向であり、高さ方向とは、カバー電極12dおよび13dの上面に対して垂直な方向である。なお、
図8では、一点鎖線の直線が6つの粒界と交わっているので、n=6である。
【0110】
本実施の形態において、結晶粒径が異なる第1の層31および第2の層32を有する金属バンプ30の断面は、
図7Bに示される断面である。この場合、金属バンプ30の結晶粒径を上記の方法で測定したところ、水平方向の平均結晶粒径は、第1の層31が8μmで、第2の層32が1μmであった。また、高さ方向の平均結晶粒径は、第1の層31が3μmで、第2の層32が2μmであった。
【0111】
ここで、金めっき膜の平均結晶粒径と単層金めっき膜の硬度との関係について実験を行ったので、この実験結果について、
図9を用いて説明する。
図9は、金めっき膜の平均結晶粒径と単層金めっき膜の硬度との関係を示す図である。
【0112】
この実験では、めっき液温が50℃の非シアン系Auめっき液を用いて、析出速度を0.5μm/minに設定して、厚みが10μmの単層金めっき膜を作製した。この単層金めっき膜に対して熱処理条件を変更することで平均結晶粒径を制御し、熱処理後の金めっき膜の平均結晶粒径と熱処理前の単層金めっき膜の硬度との関係を調べた。熱処理後の金めっき膜の平均結晶粒径については、上記の結晶粒径の測定方法を用いて測定した。この場合、水平方向の平均結晶粒径を測定した。また、熱処理前の単層金めっき膜の硬度については、ビッカース硬度による硬度測定を行った。なお、以降の説明において、特に断らない限り、平均結晶粒径は水平方向の平均結晶粒径をさすものとする。
【0113】
図9に示すように、金めっき膜の平均結晶粒径と単層金めっき膜の硬度とには、負の相関があることが分かる。つまり、金めっき膜を構成する結晶の平均結晶粒径が小さくなるにつれて硬度が高くなる。逆に、金めっき膜を構成する結晶の平均結晶粒径が大きくなるにつれて硬度が低くなる。このように、金めっき膜の硬度は、金めっき膜の平均結晶粒径が大きくなるにつれて低下し、金めっき膜の平均結晶粒径が小さくなるにつれて高くなる。
【0114】
ここで、
図9に示すように、金めっき膜を構成する結晶の平均結晶粒径が8μmの場合、金めっき膜の硬度は約0.8GPaである。つまり、上記の熱処理条件で形成された金属バンプ30において、平均結晶粒径が8μmである第1の層31の硬度は約0.8GPaである。
【0115】
また、金めっき膜を構成する結晶の平均結晶粒径が1μmの場合、金めっき膜の硬度は約1.9GPaである。つまり、上記の熱処理条件で形成された金属バンプ30において、平均結晶粒径が1μmである第2の層32の硬度は約1.9GPaである。
【0116】
このように、平均結晶粒径を比較して、結晶粒径が大きい方の膜が軟らかい層となり、結晶粒径が小さい方の膜が硬い層となる。つまり、平均結晶粒径が8μmの金めっき膜(第1の層31)は、平均結晶粒径が1μmの金めっき膜(第2の層32)よりも軟らかい膜である。
【0117】
[第4工程(半導体素子を実装基板に実装する工程)]
次に、
図6A〜
図6Bに示すフローにより、金属バンプ30を介して半導体素子10を実装基板20にフリップチップボンディングにより実装する。
図6A〜
図6Bは、金属バンプ30を介して半導体素子10を実装基板20に実装するフローを示す図である。
【0118】
まず、半導体素子10を実装するための実装基板20を準備する。具体的には、実装基板20として、第2p側電極22および第2n側電極23が形成された基板21を準備した。本実施の形態において、基板21は、AlNの焼結体からなるセラミック基板である。また、第2p側電極22および第2n側電極23は、金めっき膜であり、非シアン系Auめっき液を用いて形成した。なお、図示しないが、第2p側電極22および第2n側電極23の各々と基板21との間に、第2p側電極22と第2n側電極23とで分離されたシード層が形成されていてもよい。
【0119】
そして、
図6Aに示すように、予め金属バンプ30が形成された半導体素子10を準備し、金属バンプ30側が実装基板20に向くようにして半導体素子10を実装機の保持用金属管40に真空吸着させる。なお、本実施の形態では、800μm角×100μm厚の半導体素子10を用いた。
【0120】
次に、
図6Bに示すように、半導体素子10の金属バンプ30と実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)とを接触させながら200℃程度に加熱し、保持用金属管40によって実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの向き:第1の方向)に30Nの荷重をかけながら、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの向き:第2の方向)に超音波振動を200ms間加えることで、金属バンプ30と実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)とを超音波接合させた。
【0121】
ここで、超音波接合によって金属バンプ30と実装基板20の第2電極とが接合する際に金属バンプ30に起こる変化について、
図10および
図11A〜
図11Dを用いて詳細に説明する。
【0122】
図10は、実施の形態1において、半導体素子10を実装基板20に実装する際の超音波接合のタイミングチャートである。
図10において、横軸は時間を示しており、縦軸は荷重を示している。なお、0msは、処理開始前(または処理開始時)であり、300msは、本実施の形態における超音波接合の処理時間に相当し、400msは、本実施の形態における超音波接合の処理時間に超音波の印加時間を100ms延長した処理時間に相当する。
【0123】
図10に示すように、半導体素子10と実装基板20との接合処理を開始してから100msの間(Step.1)では、荷重を徐々に増加させる。このStep.1では、超音波を印加せずに、荷重のみを加える。また、100ms〜400msの間(Step.2)では、荷重を一定に保ちながら、超音波を印加する。このようなタイミングチャートに示す接合処理を行うことで、金属バンプ30を介して半導体素子10と実装基板20とを超音波接合している。
【0124】
この場合、半導体素子10と実装基板20との接合処理を開始してから、0ms、100ms、300ms、400msの各時点での半導体素子10と実装基板20との接合部分、具体的には、金属バンプ30と実装基板20の第2電極との接合部分の断面を、それぞれ、
図11A〜
図11Dに示す。なお、
図11A〜
図11Dでは、実装基板20の第2電極のうち第2p側電極22上の接合部のみを図示しているが、第2n側電極23上の接合部についても同様である。
【0125】
図11Aは、本実施の形態における超音波接合を行う前の金属バンプ30周辺の断面を示している。
図11Aに示すように、金属バンプ30の第1の層31と第2の層32とを構成する金(Au)の結晶粒は各層内においてほぼ同じ粒径を維持しており、金属バンプ30全体としては同一径の円柱形状をしている。
【0126】
図11Bは、
図10におけるStep.1の直後の金属バンプ30と実装基板20の第2電極との接合状態を示している。具体的には、
図11Bは、荷重のみを実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの方向)にかけた後の状態を示している。Step.1では、荷重が加わるにつれて、第2の層32と比べて相対的に軟らかい第1の層31が押しつぶされることとなる。この結果、第1の層31の形状は、横に広がって盃状になる。この時、第1の層31と比べて相対的に硬い第2の層32は、押しつぶされることなく、処理開始前の形状をほぼ維持している。また、実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)の表面形状も処理開始前の形状を維持している。
【0127】
図11Cは、
図10におけるStep.2の途中過程(処理開始から約300ms後、超音波振動開始から200ms後)の金属バンプ30と実装基板20の第2電極との接合状態を示している。具体的には、
図11Cは、30Nの一定の荷重を実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの方向)にかけ、超音波を印加して実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの方向)に超音波振動を加えて、半導体素子10と実装基板20の第2電極とを接合した状態を示している。
【0128】
このように、超音波を印加することにより実装基板20に対して水平方向に金属バンプ30が振動し、金属バンプ30の第2の層32と実装基板20の第2電極とが接する界面が摩擦により加熱され、金属バンプ30と実装基板20の第2電極とが固相接合して一体化する。この時、実装基板20の第2電極の表面層のAu結晶粒と金属バンプ30の第2の層32のAu結晶粒とは、それらの一部が元の形状を維持せずに一体化し、金属バンプ30の第2の層32と実装基板20の第2電極との境界は、明瞭な境界ではなくなる。
【0129】
図11Dは、
図10におけるStep.2の終了時点(処理開始から約400ms後、超音波振動開始から300ms後)の金属バンプ30と実装基板20の第2電極との接合状態を示している。
【0130】
図11Dの接合状態では、金属バンプ30の第2の層32と実装基板20の第2電極との接合界面において、第2の層32由来のAu結晶粒と第2電極由来のAu結晶粒とが一体化している。そして、Au結晶粒同士が一体化してAu結晶粒が粗大化した層として第3の層33が形成される。この第3の層33は、Au結晶粒が粗大化して形成されているため、層としては柔らかい。また、第3の層33は、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの方向)に超音波振動を印加することにより形成されているため、第2の層32よりも横方向に広がる。
【0131】
本実施の形態において半導体素子10と実装基板20との超音波接合は、
図11Cに示される超音波を200msまで印加した条件を適用している。この場合の金属バンプ30の中心を通る断面は、上記の
図2に示される断面となる。
【0132】
この結果、
図2に示すように、第1の層31および第2の層32を有する金属バンプ30は、第1の層31側に広がった盃のような形状に形成される。
【0133】
本実施の形態において、金属バンプ30内において相対的に軟らかい第1の層31の厚さ(高さ)は、接合前が2μmで接合後が1μmであり、接合前後で1μm薄くなった。これに対し、金属バンプ30内において相対的に硬い第2の層32の厚さは、接合前後でかわらずに3μmであった。このように、結晶粒径が大きくて軟らかい第1の層31の厚さが接合後も1μm残っていることで、第2の層32の内部にある結晶の角が第1電極のカバー電極12dおよび13dに到達しない。これにより、半導体素子10を実装基板20に実装するときの衝撃が緩和されると考えられる。
【0134】
また、金属バンプ30の幅は、第1電極と第1の層31との接合面での幅W1が30μmで、第2の層32の幅W2が25μmであった。つまり、超音波接合後の金属バンプ30は、第1電極側の接合面の幅W1が第2の層32の幅W2よりも広がった盃のような形状をしている。
【0135】
ここで、
図2の一点鎖線で示されるように、半導体素子10、実装基板20および金属バンプ30における実装基板20に対して垂直な方向の断面において、金属バンプ30の断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形の断面を有する仮想バンプ30Rを仮想的に定義すると、仮想バンプ30Rの長方形の底辺の長さLは25.6μmとなる。この仮想バンプ30Rと本実施の形態における金属バンプ30とを比較すると、半導体素子10の第1電極と金属バンプ30の第1の層31との接合部(接合面)である第1の接合部の幅W1は、仮想バンプ30Rの底辺の長さLよりも長くなっている。したがって、金属バンプ30は、同じ断面積を有する仮想バンプ30Rよりも高い接合強度が期待できる。なお、金属バンプ30の第2の層32は、仮想バンプ30Rの長方形の底辺の長さLよりも短い幅を有している。
【0136】
ここで、超音波接合後の金属バンプ30内の水平方向の結晶粒径分布を詳細に確認したところ、
図12に示すように、第1の層31を構成する結晶の平均結晶粒径は、第1の層31側の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)から離れるに従って徐々に小さくなっていることが分かった。つまり、第1の層31は、第2の層32側に、平均結晶粒径が第1の層31の平均結晶粒径から第2の層32の平均結晶粒径に近付く遷移領域31aを有する。この遷移領域は、第1の層31において第2の層32と接する領域であり、第1の層31と第2の層32との中間的な硬さの層である。
【0137】
このような遷移領域が金属バンプ30に存在している場合、この遷移領域が第1の層31と第2の層32との中間的な変形量を有するので、
図2に示されるように第1の層31から第2の層32にかけて急峻に結晶粒が減少する構造の金属バンプ30と比べて、遷移領域によって第1電極の直接的な損傷を一層抑制される。これにより、半導体素子10が実装時に衝撃を受けた際の層間の剥離抑制につながる。つまり、遷移領域は、より大きな衝撃を緩和するように働いている。
【0138】
[効果の検証]
次に、実施の形態1に係る半導体装置1の効果の検証を行ったので、比較例の半導体装置100と比較しながら、以下、この検証結果について説明する。比較例の半導体装置100は、
図29Bに示される半導体装置と同様の構成であり、金属バンプ130の硬度が高くなっている。
【0139】
比較例の半導体装置100は、本実施の形態に係る半導体装置1の製造方法において、金めっき膜30Xを形成した後に金めっき膜30Xの結晶粒を粗大化するための熱処理を行わずに、金めっき膜30Xをそのまま金属バンプ130として用いたものである。ここでは、厚みが5μmで直径が25μmの金属バンプ130を形成した。このように、比較例の半導体装置100では、金めっき膜30Xを形成した後に熱処理を行っていないため、金属バンプ130の結晶粒径は小さく、水平方向の平均結晶粒径は0.8μmであった。また、金属バンプ130の硬度は約1.9GPaであった。
【0140】
そして、比較例の半導体装置100を実施の形態1における半導体装置1と同様の方法で実装基板20にフリップチップボンディングにより実装し、この実装時の衝撃により第1p側電極12が受けるダメージを比較例の半導体装置100と実施の形態1に係る半導体装置1とで比較した。各半導体装置が受けたダメージは、
図13に示すように、実装後に基板11aを通して光学的に第1p側電極12の電極面を観察することで評価した。その評価結果を以下に示す。
【0141】
比較例の半導体装置100では、第1p側電極12の電極面に金属バンプ130を投影した位置にコントラストが変化した箇所が確認された。これは、金属バンプ130が押し付けられることにより、第1p側電極12に局所的な圧力がかかることで反射電極12aが変形し、部分的に薄くなってしまったために反射率が低下し、コントラストの変化として観察されたと考えられる。この現象は、第1n側電極13のオーミックコンタクト層13aについても同様の変形として確認された。このようにコントラストが変化した箇所をバンプ痕と呼びダメージ発生の指標とした。
【0142】
一方、実施の形態1に係る半導体装置1に対しても同様の試験を行ったところ、実施の形態1に係る半導体装置1では、バンプ痕が観察されなかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0143】
実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30は、結晶粒径が大きくて軟らかい第1の層31と、結晶粒径が小さくて硬い第2の層32とを有する。これにより、軟らかい第1の層31が、実装時の荷重印加の衝撃を吸収し、実装時に変形して衝撃に対する緩衝材の役割を果たしたため、バンプ痕が発生しなかったと考えられる。この場合、実装時の荷重印加によって、硬い第2の層32が軟らかい第1の層31を貫通してしまうことも考えられるが、本実施の形態では、第1の層31が1μmの厚みを有しているので、第2の層32が第1の層31を貫通しなかったと考えられる。実際に、断面のどの位置をみても第2の層32と第1p側電極12との間には第1の層31が存在していることが分かった。
【0144】
また、実施の形態1に係る半導体装置1では、第1p側電極12が、p型半導体層11d、活性層11cおよびn型半導体層11bが積層された領域上に形成されているため、実装時の衝撃による第1p側電極12へのダメージによってpn間ショート不良等の電気的な不具合が発生しやすい構造となっているが、このような電気的な不具合は発生しなかった。
【0145】
次に、実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30の接合強度について、以下に説明する。この場合、金属バンプ30と実装基板20との接合部の強度をシェア強度で測定して評価した。ここで、
図14Aおよび
図14Bを用いて、シェア強度の測定方法を説明する。
【0146】
まず、
図14Aに示すように、半導体装置1を金属ステージ50に固定し、半導体素子10にシェアセンサ60を半導体素子10の側方から押し当てる。次に、
図14Bに示すように、シェアセンサ60を横方向にスライドさせて半導体素子10が実装基板20から外れるまで荷重をかける。この時、半導体素子10が外れるまでの最大荷重がシェア強度と定義される。
【0147】
その結果、比較例の半導体装置100のシェア強度は5kgFであった。一方、実施の形態1に係る半導体装置1のシェア強度は8kgFであった。
【0148】
また、実施の形態1に係る半導体装置1が比較例の半導体装置100に対してシェア強度が高い理由は、実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30の断面形状が盃形状をしており、第1p側電極12および第1n側電極13と金属バンプ30との接合面積が増大したためであると考えられる。
【0149】
具体的には、
図29Bに示される比較例の半導体装置100では、第1p側電極12および第1n側電極13と金属バンプ130との接合面の幅W1が25μmであったのに対して、
図1に示される実施の形態1に係る半導体装置1では、第1p側電極12および第1n側電極13と金属バンプ30との接合面の幅W1(
図2参照)は30μmであった。このように、実施の形態1に係る半導体装置1では、金属バンプ30と実装基板20との接合部の面積が増大した盃形状であるため、第1p側電極12および第1n側電極13と金属バンプ130との接合面の幅W1が増えた分、シェア強度も5kgFから8kgFに増大したと考えられる。
【0150】
実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30は、
図2に示すように、第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)と金属バンプ30との接合面の幅W1が、金属バンプ30と同一断面積の仮想バンプ30Rの底辺の長さLよりも大きいことを形状的な特徴としており、この特徴がシェア強度を向上させるためには重要であると考えられる。
【0151】
ここで、実施の形態1に係る半導体装置1の金属バンプ30のAu結晶粒の様子を走査型顕微鏡のSIM像で観察した結果を、
図15を用いて説明する。
図15は、
図12の一点鎖線で囲まれる領域XVに対応する部分のSIM像である。
【0152】
SIM像の観察は、FIBを用いて金属バンプ30の断面を形成したものを用いて行った。この方法では、金属組織の結晶方位の違いをコントラストの違いとして観察できる。
【0153】
図15に示すように、単一のコントラストで観察された層と複数のコントラストの集合体に観察される層とに分かれていることが分かる。
【0154】
具体的には、半導体積層構造11側に位置する第1の層31に対応する部分は、単一のコントラストを示しており、配向がそろっている等軸な結晶粒組織であった。この部分では、金めっき膜を形成した後の熱処理により結晶粒が粗大化して異常粒成長したために、結晶粒界が極端に少なくなっている。そのために、塑性変形しやすい軟らかい層となっている。
【0155】
一方、実装基板20側に位置する第2の層32に対応する部分は、複数のコントラストの集合体であり、結晶軸が揃っていない結晶粒の集合組織であった。すなわち、第2の層32に対応する部分は、多軸の結晶粒組織である。この部分では、金めっき膜を形成した後の熱処理を経ても異常粒成長が起こらなかったために、粒界が多数存在している。そのため、粒界が応力に対して抵抗として働き、塑性変形がしにくい硬い層となっている。
【0156】
多軸の結晶粒組織を有する第2の層32と第1p側電極12および第1n側電極13との間に等軸な結晶粒組織を有する第1の層31が存在することで、第1の層31が塑性変形に基づく衝撃緩和層として働くと考えられ、ひいてはバンプ痕の発生の抑制が期待できる。
【0157】
さらに、
図15に示すように、金属バンプ30の内部の第1の層31と第2の層32との界面は、凹凸形状を有しており、凹凸界面となっている。この凹凸形状により、第1の層31と第2の層32との層間の界面の面積が増大し、層間の密着性が増加する。
【0158】
また、上述のように、実施の形態1に係る半導体装置1では、第1の層31が第2の層32側に向かって平均結晶粒径が変化する遷移領域を有していてもよい。この遷移領域は、第1の層31と第2の層32との界面の凹凸の大きさによって異なる。すなわち、第1の層31と第2の層32との界面に凹凸がなければ第1の層31には遷移領域が存在せず、第1の層31と第2の層32との界面の凹凸が大きくなればなるほど遷移領域は大きくなる。ここで、遷移領域の厚さの異なる半導体装置を複数作製して各々のシェア強度を測定した。この場合、遷移領域において、第1の層31と第2の層32との界面での凹凸が最も高い山の高さと凹凸が最も深い谷の深さとの和を最大高さ粗さRzとしたときに、金属バンプ30の高さが同じ場合、最大高さ粗さRzが大きいほうがシェア強度が高かった。特に、第1の層31と第2の層32との界面での最大高さ粗さRzが第2の層32の平均結晶粒径よりも大きい場合にシェア強度が高かった。
【0159】
なお、第1の層31の平均結晶粒径が、第1の層31と第2の層32との界面の最大高さ粗さRz以上であれば、実装時の衝撃で硬い第2の層32が第1の層31を貫通して第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)に損傷を与えることがなく、実装時の衝撃に対する緩衝材の効果がより顕著に発揮される。
【0160】
また、バンプ痕のない実施の形態1に係る半導体装置1とバンプ痕のある比較例の半導体装置100とに対して、高温高湿通電試験を実施した。具体的には、半導体装置1と半導体装置100とを各々15個のサンプルを用意し、環境温度85℃、通電電流0.35A、湿度85%、Tj=150℃の条件で通電試験を1000h実施した。
【0161】
その結果、比較例の半導体装置100の不良発生数が5/15であったのに対して、実施の形態1に係る半導体装置1の不良発生数は0/15であった。つまり、実施の形態1に係る半導体装置1では、不良が発生しなかった。
【0162】
不良が発生した比較例の半導体装置100では、不良原因として、ショート不良が確認された。この比較例の半導体装置100の不良品を解析すると、バンプ痕発生部がショート発生箇所として特定された。このショート発生箇所の断面を解析すると、第1p側電極12のバンプ痕発生部において、半導体積層構造11の表面にまで達する亀裂が発生していた。ショート不良は、高温高湿印加時に第1p側電極12の亀裂より水分が浸入して半導体積層構造11の半導体層を腐食させてpn接合ショートが原因となって発生したと考えられる。
【0163】
一方、実施の形態1に係る半導体装置1では、金属バンプ30内に軟らかい第1の層31が存在するので、上述のように、実装時の第1電極への衝撃が緩和されてバンプ痕の発生を抑制することができる。さらに、軟らかい第1の層31が第1電極の表面に対して拡がって第1電極と金属バンプ30との接合部の面積が増大しているので、接合強度が増大している。しかも、第1の層31と第2の層32との界面の最大高さ粗さRzが大きいほど界面の面積が増加し、第1の層31と第2の層32との密着性が向上する。この場合、最大高さ粗さRzよりも第1の層31の結晶粒径の方が大きければ実装時の衝撃に対する緩衝材の効果がより顕著に表れる。
【0164】
さらに、本願発明者らは、実装時にバンプ痕が発生しない条件について検討したので、以下、その検討結果を説明する。本願発明者らは、検討を重ねて、フリップチップボンディングによる実装を行う際に各層のパラメータの関連性を調査し、バンプ痕が発生しない条件を見出した。
【0165】
具体的には、
図6Aおよび
図6Bに示すように、半導体素子10に形成された金属バンプ30と実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)を接触させながら加熱し、保持用金属管40によって荷重をかけながら超音波振動を加えることで、金属バンプ30と実装基板20の第2電極とを超音波接合させた。この場合のバンプ痕の発生条件に付いて以下に説明する。
【0166】
バンプ痕の発生しない条件を限定するにあたって、着目する各層のパラメータとして、カバー電極12d(第1電極の表面層)の厚さAと、カバー電極12dの平均結晶粒径B、半導体素子10側の第1の層31の厚さC、第1の層31と第2の層32との界面の最大高さ粗さRzを定義した場合、バンプ痕が発生しない条件は、以下の(式1)で表される範囲となった。
【0167】
C>Rz/2+1−A*B/8・・・(式1)
【0168】
これは、以下のメカニズムにより説明される。
【0169】
図16は、
図1の一点鎖線で囲まれる領域XVIの拡大断面図である。
【0170】
図16において、バンプ痕を防ぐ緩衝材の役割を担う層は、カバー電極12dと第1の層31との2層である。
【0171】
この2層を合計した厚さ(A+C)から、第1の層31と第2の層32との界面凸凹の厚さD(=Rz/2)を引いた値が1μmより大きい場合、第2の層32の結晶粒の硬い界面凹凸の先端が緩衝材の役割を果たす第1の層31を貫通せずに、反射電極12aおよびバリア電極12bに接触することなく、第1電極の変形が起こらないことを示している。すなわち、バンプ痕が発生しない条件となる。この条件は、以下の(式2)で表される。
【0172】
A*α+C−Rz/2>1・・・(式2)
【0173】
ここで、変数αは、カバー電極12dの硬さと紐づくカバー電極12dの結晶粒径Cの関数であり、定数kを用いて、以下の(式3)で表される。
【0175】
この(式3)を用いて(式2)を変形すると、以下の(式4)となる。
【0176】
C>Rz/2+1−A*B*k・・・(式4)
【0177】
ここで、kを求めるため、境界条件としてバンプ痕が確認される条件を下記の条件(イ)として、以下の(式5)に代入する。
【0178】
条件(イ):Rz=2μm、A=1μm、B=8μm、C=1μm
C=Rz/2+1−A*B*k・・・(式5)
【0180】
1=2/2+1−1*8*k・・・(式6)
【0181】
(式6)を解くと、k=1/8となる。
【0182】
よって、バンプ痕が確認される条件、すなわち、バンプ痕が発生する境界条件は、以下の(式7)で表される。
【0183】
C=Rz/2+1−A*B/8・・・(式7)
【0184】
したがって、バンプ痕が発生しない条件は、上記の(式1)で表されることになる。
【0185】
ここで、条件(イ)のB=8μm、Rz=2μmの場合を図示するために、これらを(式1)に代入すると、以下の(式8)となる。
【0186】
C>2/2+1−A*8/8・・・(式8)
【0187】
この(式8)を整理すると、以下の(式9)となる。
【0189】
この(式9)の関係式を
図17に図示する。
図17において、網掛けでハッチングされた部分が、バンプ痕が発生しない領域を示している。
【0190】
このように、本願発明者らの検討により、信頼性不具合の原因となるバンプ痕が発生しない領域を明確にすることができた。これにより、半導体装置1を量産する時の各パラメータのばらつきを考慮したプロセス設計が可能となり、半導体装置1の機械的信頼性レベルを引き上げることができる。
【0191】
以上、本実施の形態に係る半導体装置1によれば、厚みおよび接合面積に対して設計自由度が高いめっきバンプ技術を適用する場合などにおいて、フリップチップボンディングによって半導体素子10を実装基板20に実装するときに、半導体素子10にかかるダメージを低減して半導体素子10の第1電極に発生するバンプ痕に起因するショート不良を回避することができる。しかも、半導体素子10と実装基板20との密着性および接合強度を向上させることができる。これにより、半導体素子10の実装基板20への実装時に第1電極および第2電極が損傷したり剥離したりするといった金属バンプの接合に起因する不具合の発生を抑制することができ、機械的信頼性レベルを引き上げることができる。したがって、長期信頼性に優れた半導体装置1を得ることができる。
【0192】
なお、このように長期信頼性に優れた半導体装置1は、小型化・大電流化・集積化される車載用途の光源として好適である。
【0193】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る半導体装置1Aについて、
図18および
図19を用いて説明する。
図18は、実施の形態2に係る半導体装置1Aの断面図である。
図19は、同半導体装置1Aの金属バンプ30Aの拡大断面図と、同金属バンプ30Aにおける結晶粒径の高さ位置依存性を示す図である。
図19において、縦軸は、金属バンプ30Aの高さを示しており、横軸は、金属バンプ30Aの結晶粒径を示している。
【0194】
図18に示すように、実施の形態2に係る半導体装置1Aは、半導体素子10と、実装基板20と、金属バンプ30Aとを備える。半導体素子10と実装基板20とは、金属バンプ30Aを介して接合されている。本実施の形態において、半導体素子10と実装基板20の構成は、実施の形態1と同じである。また、本実施の形態において、金属バンプ30Aは、実施の形態1の金属バンプ30と同様に、半導体素子10側に位置する第1の層31Aと、実装基板20側に位置する第2の層32Aとを有する。本実施の形態でも、第1の層31Aは、半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)に接している。
【0195】
本実施の形態に係る半導体装置1Aが実施の形態1に係る半導体装置1と異なる点は、金属バンプ30Aの構成である。
【0196】
具体的には、実施の形態1の金属バンプ30では、第1の層31が第2の層32と比べて大きな直径を有していたが、本実施の形態の金属バンプ30Aでは、
図19に示すように、第1の層31Aが第2の層32Aと比べて小さな直径を有している。
【0197】
また、実施の形態1の金属バンプ30では、第1の層31を構成する結晶の平均結晶粒径が第2の層32を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きくなっていたが、本実施の形態の金属バンプ30Aでは、第2の層32Aを構成する結晶の平均結晶粒径が第1の層31Aを構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きくなっている。言い換えると、本実施の形態の金属バンプ30Aでは、半導体素子10側に位置する第1の層31Aの方が実装基板20側に位置する第2の層32Aよりも平均結晶粒径が小さい。
【0198】
また、金属バンプ30Aの第2の層32Aと実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)との接合部の幅が第1の層31Aの幅よりも大きくなっており、金属バンプ30Aの外形が半導体素子10側から実装基板20側に向かって広がる末広がりの形状となっている。
【0199】
このように、断面形状が末広がり形状である金属バンプ30Aを有する半導体装置1Aは、金属バンプ30Aと実装基板20の第2電極との接合面積が大きいため、金属バンプ30Aと実装基板20との接合強度が高い。これにより、熱応力発生時において、金属バンプ30Aと実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)との剥離に対する耐性が向上する。
【0200】
次に、実施の形態2に係る半導体装置1Aの製造方法について図面に基づいて説明する。
【0201】
実施の形態2に係る半導体装置1Aの製造方法は、半導体素子10の半導体積層構造11を形成する第1工程と、次いで、半導体素子10の第1電極を形成する第2工程と、次いで、半導体素子10にバンプとして金めっき膜30Yを形成する第3工程と、次いで、フリップチップボンディングにより半導体素子10を実装基板20に実装する第4工程とを含む。
【0202】
第1工程および第2工程は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0203】
本実施の形態において、金めっき膜30Yを形成する第3工程は、
図20A〜
図20Dに示すフローにより行われる。
図20A〜
図20Dは、半導体素子10に金めっき膜30Yを形成するためのフローを示す図である。
【0204】
本実施の形態において、バンプとして形成される金めっき膜30Yは、第1p側電極12に対応するp側の第1バンプと、第1n側電極13に対応するn側の第2バンプとを含んでいる。第1バンプは、第1p側電極12の上に形成され、第2バンプは、第1n側電極13の上に形成される。また、金めっき膜30Yは、金めっき法によって形成された金めっきバンプである。具体的には、金めっき膜30Yは、平均結晶粒径が1μm以下の金めっきバンプである。以下、金めっき膜30Yの形成方法について説明する。
【0205】
上記の第2工程の後、まず、カバー電極12dおよび13dの全面を覆うようにフォトリソグラフィ用のレジストを塗布し、140℃で20min程度の熱処理によりレジストを硬化させる。その後、
図20Aに示すように、第1p側電極12のカバー電極12d上および第1n側電極13のカバー電極13d上の各々における金めっき膜30Yを形成する所定の領域のレジスト16に、フォトリソグラフィにより直径25μmの開口部16aを形成する。
【0206】
次に、
図20Bに示すように、金の電解めっき法によりレジスト16の開口部16aに金を析出させることで、金めっき膜30Yを形成する。具体的には、レジスト16の開口部16aに露出した第1p側電極12のカバー電極12dの上と第1n側電極13のカバー電極13dの上とにそれぞれ金めっき膜30Yを同時に形成する。金めっき膜30Yを形成する際の条件の一例としては、めっき液温が50℃の非シアン系Auめっき液を用いて、析出速度を0.5μm/minに設定して、高さ(厚み)が5μmの金めっき膜30Yを形成した。形成した直後の金めっき膜30Yの結晶構造は、全体が細かい結晶粒の集合体である。なお、このようにして形成された金めっき膜30Yは、平均結晶粒径が0.8μmで、硬度が約1.9GPaであった。
【0207】
次に、
図20Cに示すように、レジスト16を有機溶剤で除去する。これにより、第1p側電極12のカバー電極12d上および第1n側電極13のカバー電極13d上の各々の所定の領域に、直径25μm、高さ5μmの円柱形状の金めっき膜30Yが形成されることとなる。
【0208】
次に、
図20Dに示すように、第1p側電極12のバリア電極12bと第1n側電極13のバリア電極13bとの間の酸化膜14上のシード膜(Au/Ti)12Sを部分的に除去する。具体的には、まず、シード膜12Sの上層であるAu層をヨード液によって除去し、その後、シード膜12Sの下層であるTi層を希弗酸によって除去し、酸化膜14を露出させる。これにより、シード膜12Sをシード層12cとシード層13cとに分離して、電極のpn分離を行うことができる。このようにして、第1p側電極12上および第1n側電極13上に直径25μmの円柱形状の金めっき膜30Yからなる金属バンプが形成された半導体素子10を形成することができる。
【0209】
第3工程の後は、フリップチップボンディングにより半導体素子10を実装基板20に実装する第4工程を行う。第4工程は、
図21A〜
図21Bに示すフローにより行われる。
図21A〜
図21Bは、金めっき膜30Yを介して半導体素子10を実装基板20に実装するフローを示す図である。
【0210】
まず、半導体素子10を実装するための実装基板20を準備する。具体的には、実装基板20として、第2p側電極22および第2n側電極23が形成された基板21を準備した。本実施の形態において、基板21は、AlNの焼結体からなるセラミック基板である。また、第2p側電極22および第2n側電極23は、金めっき膜であり、非シアン系Auめっき液を用いて形成した。なお、第2p側電極22および第2n側電極23の各々と基板21との間に、第2p側電極22と第2n側電極23とで分離されたシード層が形成されていてもよい。
【0211】
その後、第2p側電極22および第2n側電極23が形成された実装基板20に対して、大気雰囲気中において200℃で1hの熱処理を行う。この熱処理により、第2p側電極22および第2n側電極23を構成するAu結晶粒が粗大化する。これにより、第2p側電極22および第2n側電極23は軟らかい層となる。なお、第2p側電極22および第2n側電極23において、粗大化したAu結晶粒の粒径は8μmとなっていた。
【0212】
そして、
図21Aに示すように、バンプとして予め金めっき膜30Yが形成された半導体素子10を準備し、金めっき膜30Y側が実装基板20に向くようにして半導体素子10を実装機の保持用金属管40に真空吸着させる。なお、本実施の形態では、800μm角×100μm厚の半導体素子10を用いた。
【0213】
次に、
図21Bに示すように、半導体素子10の金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)とを接触させながら200℃程度に加熱し、保持用金属管40によって実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの向き:第1の方向)に30N程度の荷重をかけながら、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの向き:第2の方向)に超音波振動を300ms間加えることで、金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)とを超音波接合させた。
【0214】
ここで、超音波接合によって金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極とが接合して金属バンプ30Aとなる際に起こる変化について、
図22および
図23A〜
図23Dを用いて詳細に説明する。
【0215】
図22は、実施の形態2において、半導体素子10を実装基板20に実装する際の超音波接合のタイミングチャートである。
図22において、横軸は時間を示しており、縦軸は荷重を示している。なお、0msは、処理開始前(または処理開始時)であり、300msは、本実施の形態おける超音波接合の処理途中の時間(実施の形態1おける超音波接合の処理時間)に相当し、400msは、本実施の形態における超音波接合の処理時間(実施の形態1における超音波接合の処理時間に超音波の印加時間を100ms延長した処理時間)に相当する。
【0216】
図22に示すように、半導体素子10と実装基板20との接合処理を開始してから100msの間(Step.1)では、荷重を徐々に増加させる。このStep.1では、超音波を印加せずに、荷重のみを加える。また、100ms〜400msの間(Step.2)では、荷重を一定に保ちながら、超音波を印加する。このようなタイミングチャートに示す接合処理を行うことで、金めっき膜30Yをバンプとして半導体素子10と実装基板20とを超音波接合している。
【0217】
この場合、半導体素子10と実装基板20との接合処理を開始してから、0ms、100ms、300ms、400msの各時点での半導体素子10と実装基板20との接合部分、具体的には、金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極との接合部分の断面を、それぞれ、
図23A〜
図23Dに示す。なお、
図23A〜
図23Dでは、実装基板20の第2電極のうち第2p側電極22上の接合部のみを図示しているが、第2n側電極23上の接合部についても同様である。
【0218】
図23Aは、本実施の形態における超音波接合を行う前の金めっき膜30Y周辺の断面を示している。
図23Aに示すように、金めっき膜30Yを構成するAu結晶粒はほぼ同じ径であり、金めっき膜30Y全体としては同一径の円柱形状をしている。
【0219】
図23Bは、
図22におけるStep.1の直後の金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極との接合状態を示している。具体的には、
図23Bは、荷重のみを実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの方向)にかけた後の状態を示している。実装基板20の第2電極の表面のAuと金めっき膜30YのAuとは、圧着された状態で、お互いの界面の境界は明確に維持されている。
【0220】
図23Cは、
図22におけるStep.2の途中過程(処理開始から約300ms後、超音波振動開始から200ms後)の金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極との接合状態を示している。具体的には、
図23Cは、30Nの一定の荷重を実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの方向)にかけ、超音波を印加して実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの方向)に超音波振動を加えて、半導体素子10と実装基板20の第2電極とを接合した状態を示している。
【0221】
これにより、金めっき膜30Yは、実装基板20の第2電極と接合して金属バンプ30Aとなる。つまり、超音波を印加することにより実装基板20に対して水平方向に金めっき膜30Yが振動し、金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極とが接する界面が摩擦により加熱され、金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極とが固相接合して一体化する。この時、実装基板20の第2電極の表面層のAu結晶粒と金めっき膜30YのAu結晶粒とは、それらの一部が元の形状を維持せずに一体化し、金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極との境界は、明瞭な境界ではなくなる。
【0222】
図23Dは、Step.2の終了時点(処理開始から約400ms後、超音波振動開始から300ms後)の金めっき膜30Yと実装基板20の第2電極との接合状態を示している。
【0223】
図23Dの接合状態では、金属バンプ30Aと実装基板20の第2電極との接合界面において、金めっき膜30Y由来のAu結晶粒と実装基板20の第2電極由来のAu結晶粒とが一体化している。そして、Au結晶粒同士が一体化してAu結晶粒が粗大化した層として第2の層32Aが形成される。また、金めっき膜30Yのうち実装基板20の第2電極のAu結晶粒と一体化しなかった部分は、第1の層31Aとなる。
【0224】
第2の層32Aは、Au結晶粒が粗大化して形成されているため、層としては柔らかい。一方、第1の層31Aは、Au結晶粒が粗大化していないため、層としては硬いままである。
【0225】
また、第2の層32Aは、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの方向)に超音波振動を印加することにより形成されているため、第1の層31Aよりも横方向に広がる。この結果、
図19に示すように、第1の層31Aおよび第2の層32Aを有する金属バンプ30Aは、第1の層31A側に広がった末広がり形状に形成される。
【0226】
形成された金属バンプ30Aの各部の幅を測長すると、半導体素子10の第1電極と第1の層31Aとの接合面での幅W1が25μmで、実装基板20の第2電極と第2の層32Aとの接合面の幅W2(第2の層32Aの幅)は30μmであった。つまり、金属バンプ30Aは、実装基板20側が広がった末広がり形状となっている。なお、金属バンプ30Aの結晶粒径を測定すると、第1の層31Aの平均結晶粒径が0.8μmであり、第2の層32Aの平均結晶粒径は8μmであった。
【0227】
ここで、
図19の一点鎖線で示されるように、半導体素子10、実装基板20および金属バンプ30Aにおける実装基板20に対して垂直な方向の断面において、金属バンプ30Aの断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形の断面を有する仮想バンプ30ARを仮想的に定義する。この仮想バンプ30ARと本実施の形態における金属バンプ30Aとを比較すると、実装基板20の第2電極と金属バンプ30Aの第2の層32Aとの接合部(接合面)である第2の接合部の幅W2は、仮想バンプ30ARの底辺の長さLよりも長くなっている。したがって、金属バンプ30Aは、同じ断面積を有する仮想バンプ30ARよりも高い接合強度が期待できる。なお、金属バンプ30Aの第1の層31Aは、仮想バンプ30ARの長方形の底辺の長さLよりも短い幅を有している。
【0228】
次に、実施の形態2に係る半導体装置1Aにおける金属バンプ30Aの接合強度を測定したので、以下説明する。具体的には、実施の形態1と同様の方法で、金属バンプ30Aと実装基板20との接合部の強度をシェア強度で測定した。
【0229】
シェア強度の効果の検証を行うために、
図29Bに示す比較例の半導体装置100のシェア強度を確認したところ、5kgFであった。これに対して、実施の形態2に係る半導体装置1Aのシェア強度は、8kgFであった。
【0230】
このように、実施の形態2の半導体装置1Aが比較例の半導体装置100に対してシェア強度が高い理由は、金属バンプ30Aが実装基板20側に広がった末広がり形状をしており、金属バンプ30Aと実装基板20との接合面積が増大したためであると考えられる。
【0231】
具体的には、
図29Bに示す比較例の半導体装置100では、実装基板20の第2電極と円柱形状の金属バンプ130との接合面の直径が25μmであったのに対して、本実施の形態に係る半導体装置1Aでは、実装基板20の第2電極と金属バンプ30Aとの接合面の直径が30μmであった。
【0232】
このように、本実施の形態における半導体装置1Aでは、金属バンプ30Aが実装基板20との接合面積が増大した末広がりの形状を有するため、金属バンプ30Aと実装基板20との接合面積が増えた分、シェア強度も5kgFから8kgFに増大したと考えられる。
【0233】
以上、本実施の形態に係る半導体装置1Aは、上記実施の形態1に係る半導体装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る半導体装置1Aによれば、フリップチップボンディングによって半導体素子10を実装基板20に実装するときに、半導体素子10にかかるダメージを低減して半導体素子10の第1電極に発生するバンプ痕に起因するショート不良を回避することができる。さらに、半導体素子10と実装基板20との密着性および接合強度を向上させることができる。これにより、半導体素子10の実装基板20への実装時に第1電極および第2電極が損傷したり剥離したりするといった金属バンプの接合に起因する不具合を改善することができ、機械的信頼性レベルを引き上げることができる。したがって、長期信頼性に優れた半導体装置1Aを得ることができる。
【0234】
なお、本実施の形態では、金めっき膜30Yに対して熱処理(アニール)を行わなかったが、実施の形態1と同様に、金めっき膜30Yを形成した後に金めっき膜30Yに対して熱処理を行ってもよい。これにより、金属バンプ30Aの半導体素子10側の層の結晶粒の粗大化と、本実施の形態のような超音波の接合時間の長時間化により金属バンプ30Aの実装基板20側の層の結晶粒の粗大化との両方を行うことができるので、金属バンプ30Aの上面および下面の両方の接合面積を増加させることができる。この結果、半導体素子10と実装基板20との接着強度を一層高めることができるので、さらに接合強度が高い半導体装置1Aを得ることができる。したがって、さらに長期信頼性に優れた半導体装置1Aを得ることができる。
【0235】
この場合、金属バンプ30Aにおける半導体素子10に接続される部分の層は、実施の形態2における金属バンプ30Aの第2の層32と同一のものであってもよい。
【0236】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る半導体装置1Bについて、
図24および
図25を用いて説明する。
図24は、実施の形態3に係る半導体装置1Bの断面図である。
図25は、同半導体装置1Bの金属バンプ30Bの拡大断面図と、同金属バンプ30Bにおける結晶粒径の高さ位置依存性を示す図である。
図25において、縦軸は、金属バンプ30Bの高さを示しており、横軸は、金属バンプ30Bの結晶粒径を示している。
【0237】
図24に示すように、実施の形態3に係る半導体装置1Bは、半導体素子10と、実装基板20と、金属バンプ30Bとを備える。半導体素子10と実装基板20とは、金属バンプ30B介して接合されている。本実施の形態において、半導体素子10の構成は、実施の形態1と同じである。
【0238】
本実施の形態に係る半導体装置1Bが実施の形態1に係る半導体装置1と異なる点は、金属バンプ30Bの構成である。
【0239】
具体的には、実施の形態1における金属バンプ30は、直径が大きな第1の層31と直径が小さい第2の層32との2層によって構成されていたが、本実施の形態の金属バンプ30Bは、
図25に示すように、半導体素子10側から順に、第1の層31、第2の層32、第5の層35、第4の層34、および、第3の層33の5層によって構成されている。
【0240】
そして、第1の層31、第2の層32、第5の層35、第4の層34、および、第3の層33は、いずれも略円柱形状であるが、第1の層31、第3の層33、第5の層35の直径は、第2の層32および第4の層34の直径よりも大きくなっている。なお、第1の層31、第3の層33および第5の層35の直径は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第2の層32および第4の層34の直径は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0241】
本実施の形態において、第1の層31は、半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)に接しており、第2の層32は、第1の層31に接している。また、第3の層33は、実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)に接しており、第4の層34は、第3の層33に接している。第5の層35は、第2の層32と第4の層34とに挟まれている。
【0242】
金属バンプ30Bでは、第1の層31を構成する結晶の平均結晶粒径が第2の層32を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きくなっている。また、第3の層33を構成する結晶の平均結晶粒径が第4の層34を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きくなっている。また、第5の層35を構成する結晶の平均結晶粒径が第2の層32および第4の層34の各々を構成する結晶の平均結晶粒径よりも大きくなっている。
【0243】
また、金属バンプ30Bの第1の層31と半導体素子10の第1電極(第1p側電極12、第1n側電極13)との接合部の幅が第2の層32の幅よりも大きくなっており、第1の層31と第2の層32とで構成される金属バンプ30Bの半導体素子10側部分の外形が実装基板20側から半導体素子10側に向かって広がる末広がりの形状となっている。
【0244】
また、金属バンプ30Bの第3の層33と実装基板20の第2電極(第2p側電極22、第2n側電極23)との接合部の幅が第4の層34の幅よりも大きくなっており、第3の層33と第4の層34とで構成される金属バンプ30Bの実装基板20側部分の外形が半導体素子10側から実装基板20側に向かって広がる末広がりの形状となっている。
【0245】
さらに、第2の層32と第4の層34との間にある第5の層35の幅が、上下に隣接する第2の層32および第4の層34の各々の幅よりも大きくなっている。
【0246】
このように、断面形状が多段形状である金属バンプ30Bを有する半導体装置1Bは、金属バンプ30Bと実装基板20の第2電極との接合面積が大きく、かつ、金属バンプ30Bと半導体素子10の第1電極との接合面積が大きいため、金属バンプ30Bと第1電極および第2電極の各々との接合強度が高い。これにより、熱応力発生時において、金属バンプ30Bと半導体素子10および実装基板20との剥離、具体的には金属バンプ30Bと第1電極および第2電極との剥離に対する耐性が向上する。
【0247】
次に、実施の形態3に係る半導体装置1Bの製造方法について図面に基づいて説明する。
【0248】
実施の形態3に係る半導体装置1Bの製造方法は、半導体素子10の半導体積層構造11を形成する第1工程と、次いで、半導体素子10の第1電極を形成する第2工程と、次いで、半導体素子10に金属バンプ30を形成する第3工程と、次いで、フリップチップボンディングにより半導体素子10を実装基板20に実装する第4工程とを含む。
【0249】
第1工程〜第3工程は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。また、半導体素子10側の金属バンプ30を第1金属バンプ、実装基板20側の金属バンプ30Cを第2金属バンプとする。
【0250】
半導体素子10を実装基板20に実装する第4工程の前に、まず、半導体素子10を実装するための実装基板20として、金属バンプ30Cが形成された実装基板20を準備する。
【0251】
金属バンプ30Cが形成された実装基板20の作製方法について、
図26A〜
図26Eを用いて説明する。
図26A〜
図26Eは、金属バンプ30Cが形成された実装基板20を作製するフローを示す図である。
【0252】
まず、
図26Aに示すように、実装基板20として、第2p側電極22および第2n側電極23が形成された基板21を準備する。本実施の形態において、基板21は、AlNの焼結体からなるセラミック基板である。また、第2p側電極22および第2n側電極23は、金めっき膜であり、非シアン系Auめっき液を用いて形成した。なお、図示しないが、第2p側電極22および第2n側電極23の各々と基板21との間にはシード層が形成されている。シード層は、例えば、上層のAu層と下層のTi層との積層構造である。
【0253】
次に、第2p側電極22および第2n側電極23が形成された基板21に対して、大気雰囲気中において200℃で1hの熱処理を行う。この熱処理により、第2p側電極22および第2n側電極23を構成するAu結晶粒が粗大化する。これにより、第2p側電極22および第2n側電極23は軟らかい層となる。なお、第2p側電極22および第2n側電極23において、粗大化したAu結晶粒の粒径は8μmとなっていた。
【0254】
次に、第2p側電極22および第2n側電極23の全面を覆うようにフォトリソグラフィ用のレジストを塗布し、140℃で20min程度の熱処理によりレジストを硬化させる。その後、
図26Bに示すように、第2p側電極22上および第2n側電極23上の金属バンプ30C(第2金属バンプ)を形成する所定の領域のレジスト24に、フォトリソグラフィにより直径25μmの開口部24aを形成する。
【0255】
次に、
図26Cに示すように、金の電解めっき法によりレジスト24の開口部24aに金を析出させることで、金属バンプ30Cとなる金めっき膜30Zを形成する。具体的には、レジスト24の開口部24aに露出した第2p側電極22の上と第2n側電極23の上とのそれぞれに金めっき膜30Zを同時に形成する。金めっき膜30Zを形成する際の条件の一例としては、めっき液温が50℃の非シアン系Auめっき液を用いて、析出速度を0.5μm/minに設定して、高さ(厚み)が5μmの金めっき膜30Zを形成した。形成した直後の金めっき膜30Zの結晶構造は、全体が細かい結晶粒の集合体である。
【0256】
次に、
図26Dに示すように、レジスト24を有機溶剤で除去する。これにより、第2p側電極22上および第2n側電極23上の各々の所定の領域に、直径25μm、高さ5μmの円柱形状の金属バンプ30Cが形成されることとなる。
【0257】
その後、図示しないが、第2p側電極22と第2n側電極23との間の基板21上のシード層を部分的に除去する。本実施の形態では、シード層がAu層とTi層との積層構造であるので、まず、シード層の上層であるAu層をヨード液によって除去し、その後、シード層の下層であるTi層を希弗酸によって除去し、基板21を露出させる。これにより、シード層を分離して、第2p側電極22および第2n側電極23とのpn分離を行うことができる。
【0258】
次に、
図26Eに示すように、金めっき膜30Zが形成された実装基板20に対して、大気雰囲気中において150℃で1hの熱処理を行う。この熱処理により、金めっき膜30Zの結晶粒径が変化し、同一組成で結晶粒径の異なる第3の層33と第4の層34の2層からなる金属バンプ30Cを得ることができる。金属バンプ30Cにおいて、基板21に近い側の第3の層33は、基板21に遠い側の第4の層34よりも結晶粒径が大きくなっている。
【0259】
次に、
図27A〜
図27Bに示すフローにより、金属バンプ30および35を介して半導体素子10を実装基板20にフリップチップボンディングにより実装する。
図27A〜
図27Bは、金属バンプ30および30Cを介して半導体素子10を実装基板20に実装するフローを示す図である。
【0260】
まず、
図27Aに示すように、予め金属バンプ30が形成された半導体素子10を実装機の保持用金属管40に真空吸着させる。このとき、半導体素子10に形成された金属バンプ30(第1金属バンプ)と実装基板20に形成された金属バンプ30C(第2金属バンプ)とが対面するようにして、半導体素子10を保持用金属管40に真空吸着させる。なお、本実施の形態では、800μm角×100μm厚の半導体素子10を用いた。
【0261】
次に、
図27Bに示すように、半導体素子10に形成された金属バンプ30の第2の層32と実装基板20に形成された金属バンプ30Cの第4の層34とを接触させながら200℃程度に加熱し、保持用金属管40によって実装基板20に対して垂直方向(図中の矢印Xの向き:第1の方向)に30N程度の荷重をかけながら、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの向き:第2の方向)に超音波振動を300ms間加えることで、半導体素子10に形成された金属バンプ30の第2の層32と実装基板20に形成された金属バンプ30Cの第4の層34とを超音波接合させた。
【0262】
このとき、半導体素子10の金属バンプ30の第2の層32と実装基板20の金属バンプ30Cの第4の層34との接合界面において、第2の層32と第4の層34とのAu結晶粒同士が一体化している。そして、双方のAu結晶粒同士が一体化してAu結晶粒が粗大化した層として第5の層35が形成される。第5の層35は、Au結晶粒が粗大化して形成されているため、層としては柔らかい。
【0263】
また、第5の層35は、実装基板20に対して水平方向(図中の矢印Yの方向)に超音波振動を印加することにより形成されているため、第2の層32および第4の層34よりも横方向に広がる。つまり、第5の層35の幅は、第2の層32の幅および第4の層34の幅よりも大きくなる。これにより、半導体素子10と実装基板20とを接続する多段形状の金属バンプ30Bが形成される。
【0264】
形成された金属バンプ30Bの各部の幅を測長すると、半導体素子10に形成された第1電極と第1の層31との接合面での幅は30μmで、第2の層32の幅は25μmで、実装基板20に形成された第2電極と第3の層33との接合面での幅は30μmで、第4の層34の幅は25μmで、第5の層35の幅は28μmであった。
【0265】
このようにして形成された金属バンプ30Bは、半導体素子10側にも実装基板20側にも広がった末広がり形状をしており、半導体素子10に形成された金属バンプ30と実装基板20に形成された金属バンプ30Cとの接合部をなす第5の層35も、第2の層32および第4の層34よりも幅広の形状である。
【0266】
なお、金属バンプ30Bの各部の厚みは、第1の層31が1μmで、第2の層32が2μmで、第3の層33が1μmで、第4の層34が2μmで、第5の層35が2μmであった。
【0267】
ここで、
図25の一点鎖線で示されるように、半導体素子10、実装基板20および金属バンプ30Bにおける実装基板20に対して垂直な方向の断面において、金属バンプ30Bの断面形状と同じ面積および同じ高さを有する仮想的な長方形の断面を有する仮想バンプ30BRを仮想的に定義すると、仮想バンプ30BRの長方形の底辺の長さLは27μmとなる。この仮想バンプ30BRと本実施の形態における金属バンプ30Bとを比較すると、半導体素子10の第1電極と金属バンプ30Bの第1の層31との接合部(接合面)である第1の接合部の幅W1は、仮想バンプ30BRの底辺の長さLよりも長くなっている。さらに、実装基板20の第2電極と金属バンプ30Bの第3の層33との接合部である第2の接合部の幅は、仮想バンプ30BRの長方形の底辺の長さLよりも長くなっている。したがって、金属バンプ30Bは、同じ断面積を有する仮想バンプ30BRよりも高い接合強度が期待できる。なお、金属バンプ30の第2の層32および第4の層34は、仮想バンプ30BRの長方形の底辺の長さLよりも短い幅を有している。
【0268】
次に、実施の形態3に係る半導体装置1Bにおける金属バンプ30Bの接合強度を測定したので、以下説明する。具体的には、実施の形態1と同様の方法で、金属バンプ30Bと実装基板20との接合部の強度をシェア強度で測定した。
【0269】
その結果、本実施の形態に係る半導体装置1Bのシェア強度は、8kgFであった。なお、
図29Bに示す比較例の半導体装置100のシェア強度は5kgFであったので、本実施の形態に係る半導体装置1Bは、比較例の半導体装置100と比較して、シェア強度が増大することが分かった。
【0270】
このように、実施の形態3の半導体装置1Bが比較例の半導体装置100に対してシェア強度が高い理由は、金属バンプ30Bが実装基板20側にも半導体素子10側にも広がった末広がり形状をしていることと、半導体素子10に形成された金属バンプ30と実装基板20に形成された金属バンプ30Cとの接合部をなす第5の層35も広がった形状をしていることとによって、剥離が発生しやすい各接合部の接合面積が増大したためであると考えられる。
【0271】
このように金属バンプ30Bの接合強度が向上することは、熱応力発生時の電極剥離に対する耐性の向上につながる。したがって、本実施の形態に係る半導体装置1Bは、今後、LED等の半導体素子が小型化・大電流化・集積化されて発熱に伴う応力課題が顕在化してくると予測される車載用途の光源として特に好適である。
【0272】
以上、本実施の形態に係る半導体装置1Bは、上記実施の形態1に係る半導体装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る半導体装置1Bによれば、フリップチップボンディングによって半導体素子10を実装基板20に実装するときに、半導体素子10にかかるダメージを低減して半導体素子10の第1電極に発生するバンプ痕に起因するショート不良を回避することができる。さらに、半導体素子10と実装基板20との密着性および接合強度を向上させることができる。これにより、半導体素子10の実装基板20への実装時に第1電極および第2電極が損傷したり剥離したりするといった金属バンプの接合に起因する不具合を改善することができ、機械的信頼性レベルを引き上げることができる。したがって、長期信頼性に優れた半導体装置1Bを得ることができる。
【0273】
(変形例)
以上、本開示に係る半導体装置について、実施の形態1〜3に基づいて説明したが、本開示は、上記の各実施の形態に限定されるものではない。
【0274】
例えば、上記の各実施の形態では、半導体素子10として、LEDチップを例示したが、これに限るものではなく、レーザ素子等のその他の固体発光素子であってもよい。また、半導体素子10は、発光素子に限るものでもない。例えばGaN、SiC等の化合物電界効果トランジスタ等のパワー半導体素子であってもよい。
【0275】
なお、上記の各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。