特許第6815037号(P6815037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815037
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ラス複合体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/04 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   E04F13/04 109A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-14457(P2018-14457)
(22)【出願日】2018年1月31日
(62)【分割の表示】特願2016-109630(P2016-109630)の分割
【原出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-66264(P2018-66264A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591156113
【氏名又は名称】株式会社日総
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】伏木 剛志
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−011642(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0055949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたラス複合体であって、
前記表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差し、
前記ラス材及びシート状防水材における、前記表力骨と裏力骨交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所に、それぞれ周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの孔部が重なっており、重なった状態の両孔部を介して前記表力骨と裏力骨が接合され、
表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿って二次元的に位置決めされていることを特徴とするラス複合体。
【請求項2】
上記ラス材及びシート状防水材のうち一方の所定箇所に切欠孔が形成され、他方の所定箇所には周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの切欠孔と孔部が重なっており、重なった状態の切欠孔と孔部を介して上記表力骨と裏力骨が接合されている請求項1記載のラス複合体。
【請求項3】
上記ラス材とシート状防水材が、重ね代に相当する分所定の向きにずれた状態で重ね合わされている請求項1又は2記載のラス複合体。
【請求項4】
上記表力骨と裏力骨は、上記所定箇所において、それぞれ、裏向きに湾曲又は屈曲突起した表力骨突起部及び裏力骨突起部を有し、
前記所定箇所において、表力骨突起部はラス材及びシート状防水材を表側から裏側へ貫通し、裏力骨突起部に交差して両者が接合されている請求項記載のラス複合体。
【請求項5】
表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたラス複合体であって、
前記ラス材とシート状防水材は、重ね代に相当する分所定の向きにずれた状態で重ね合わされており、
前記表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差し、
前記表力骨と裏力骨は、それらが交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所において、それぞれ、裏向きに湾曲又は屈曲突起した表力骨突起部及び裏力骨突起部を有し、
前記所定箇所において、前記表力骨突起部は、前記ラス材及びシート状防水材を表側から裏側へ貫通し、前記裏力骨突起部に交差して両者が接合され、
表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿って二次元的に位置決めされていることを特徴とするラス複合体。
【請求項6】
上記ラス材及びシート状防水材の上記所定箇所に、それぞれ切欠孔が重なるように形成されており、ラス材及びシート状防水材の両切欠孔を介して上記表力骨突起部と裏力骨突起部が接合されている請求項記載のラス複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状防水材と力骨を備えたラス複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4975498号公報には、ラス11と、ラス11の一の面11aに並列配置された第1の力骨12と、当該ラス11の他の面11bに、第1の力骨12に対して略直交する方向へ並列配置された第2の力骨13と、第2の力骨13と、ラス11との間に挿入される裏打ち用紙14と、裏打ち用紙14に対して、第2の力骨13を介して接着剤により貼り合わされる防水紙15とを備え、裏打ち用紙14は、第1の力骨12と略平行方向に延長された帯状で構成された複合ラスが示されている。
【0003】
同公報には、この複合ラスの発明について、「裏打ち用紙に接着剤を塗布し、これを防水紙と貼り合わせるのみで、これらを容易に一体化させることができ、いわゆる防水機能付きのラス材として構成することができる。このため、作業工程をより簡略化させることが可能となる。また、これと同時に、ラスに取り付けられる第1の力骨及び第2の力骨は防水紙が障壁になることが無く容易に固着させることができ、作業効率を向上させることができ、ひいては製造コストを削減することが可能となる。」と述べられている。
【0004】
しかしながら、この複合ラスの製造には、防水紙15の他に、裏打ち用紙14と接着剤が必要となり、その裏打ち用紙14を第2の力骨13とラス11との間に挿入し、更に、裏打ち用紙14に対して、第2の力骨13を介して接着剤により防水紙15を貼り合わせるという作業が必要となる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4975498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、余分な材料を用いずに効率的に得ることができる、シート状防水材と力骨を備えたラス複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラス複合体は、次のように表すことができる。
【0008】
(1) 表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたラス複合体であって、
前記表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差し、
前記表力骨と裏力骨は、それらが交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所において、それぞれ、裏向きに湾曲又は屈曲突起した表力骨突起部及び裏力骨突起部を有し、
前記所定箇所において、表力骨突起部はラス材及びシート状防水材を表側から裏側へ貫通し、裏力骨突起部に交差して両者が接合され、
表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿って二次元的に位置決めされていることを特徴とするラス複合体。
【0009】
表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添った状態で交差する。
【0010】
表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所に、それぞれ、裏向きに湾曲又は屈曲突起した表力骨突起部及び裏力骨突起部を有し、前記所定箇所において、表力骨突起部はラス材及びシート状防水材を表側から裏側へ貫通し、裏力骨突起部に交差して両者が接合されている。
【0011】
これにより、表力骨と裏力骨がラス材及びシート状防水材を挟んだ状態で結合し、表力骨突起部を介して、表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がそのシート状防水材により構成される面に沿って二次元的に位置決めされる。
【0012】
而も、ラス複合体の裏側に、表力骨突起部及び裏力骨突起部による厚さ方向のスペーサが形成されるので、表側にモルタル等の塗工材を塗工して塗工体を形成した際に、裏側に通気スペース或いはその他のスペース等を形成することができる。
【0013】
(2) 上記ラス材及びシート状防水材の上記所定箇所に、それぞれ切欠孔が重なるように形成されており、ラス材及びシート状防水材の両切欠孔を表力骨突起部が貫通している上記(1)記載のラス複合体。
【0014】
重ね合わさったラス材及びシート状防水材に、それぞれ切欠孔が形成されてそれらの切欠孔が重なっているので、重なった状態の両切欠孔を表力骨突起部が貫通することにより、表力骨突起部を介して、表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿って確実に二次元的に位置決めされる。
【0015】
(3) 上記ラス材及びシート状防水材の上記所定箇所に、それぞれ周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの孔部が重なっており、重なった状態の両孔部を表力骨突起部が貫通している上記(1)記載のラス複合体。
【0016】
重ね合わさったラス材及びシート状防水材に、それぞれ周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの孔部が重なっているため、これらのラス材及びシート状防水材がそれらの面に沿った方向において相対的な移動が防がれる。
【0017】
更に、重なった状態の両孔部を表力骨突起部が貫通しているので、表力骨突起部を介して、表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿ってより確実に二次元的に位置決めされる。
【0018】
(4) 上記ラス材及びシート状防水材のうち一方の所定箇所に切欠孔が形成され、他方の所定箇所には周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの切欠孔と孔部が重なっており、重なった状態の切欠孔と孔部を表力骨突起部が貫通している上記(1)記載のラス複合体。
【0019】
重ね合わさったラス材及びシート状防水材の両所定箇所の一方に切欠孔が形成され、他方には周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの切欠孔と孔部が重なっているため、これらのラス材及びシート状防水材がそれらの面に沿った方向において相対的な移動が防がれる。
【0020】
更に、重なった状態の切欠孔と孔部を表力骨突起部が貫通しているので、表力骨突起部を介して、表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がその面に沿ってより確実に二次元的に位置決めされる。
【0021】
(5) 上記表力骨突起部と裏力骨突起部は、それぞれ予め湾曲又は屈曲形成されたものがラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設されて接合されている上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のラス複合体。
【0022】
(6) 上記表力骨突起部及び裏力骨突起部が、略半円状に湾曲又は台形状、V字状若しくはU字状に屈曲したものである上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載のラス複合体。
【発明の効果】
【0023】
本発明のラス複合体においては、表力骨と裏力骨がラス材及びシート状防水材を挟んだ状態で結合し、表力骨突起部を介して、表力骨と裏力骨に対しシート状防水材がそのシート状防水材により構成される面に沿って二次元的に位置決めされる。
【0024】
而も、ラス複合体の裏側に、表力骨突起部及び裏力骨突起部による厚さ方向のスペーサが形成され、表側にモルタル等の塗工材を塗工して塗工体を形成した際に、裏側に通気スペース或いはその他のスペース等を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ラス複合体の模式的な平面図である。
図2】表力骨の模式的な正面図である。
図3】裏力骨の模式的な右側面図である。
図4】基材に固定されたラス複合体の模式的な要部拡大正面図である。
図5】基材に固定されたラス複合体の模式的な要部拡大右側面図である。
図6】ラス複合体の要部拡大平面図である。
図7】ラス複合体の下方要部拡大斜視図である。
図8】基材に固定された別のラス複合体の模式的な要部拡大正面図である。
図9】基材に固定された別のラス複合体の模式的な要部拡大右側面図である。
図10】別のラス複合体の上方要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(1) 図1乃至図7は何れも本発明の実施の形態の一例としてのラス複合体に関するものである。
【0027】
このラス複合体Aは、表力骨Fと、ラス材Lと、シート状防水材Wと、裏力骨Bが、表側から裏側にこの順に重ね合わされたものであり、例えば基材Mとしての木製パネルに固定されて使用される。
【0028】
(2) ラス材Lは、モルタル塗工の下地として用いられる菱形網目の縦長長方形状の平ラスである。
【0029】
(3) シート状防水材Wは、ターポリン紙であり、モルタル塗工壁におけるモルタル塗工体の裏側に配装されてモルタル塗工体からの水分浸透を防ぐためのものである。ラス材Lとシート状防水材Wは、ラス複合体Aを隣接配列する場合に備えて、縦横にそれぞれ重ね代に相当する分をずらして重ね合わされている。
【0030】
(4) 表力骨Fは 軸線方向が横方向であり、縦方向等間隔おきに6本が互いに平行状にラス材Lの表側に配されている。
【0031】
一方、裏力骨Bは軸線方向が縦方向であり、横方向等間隔おきに5本が互いに平行状にラス材Lの裏側にシート状防水材Wを挟んで配されている。
【0032】
表力骨F及び裏力骨Bは、ラス材Lである平ラスを構成する線状材よりも剛性及び強度の高い同一の鋼製線材からなり、表力骨突起部Fa及び裏力骨突起部Baを除き、全体として直線状であり、ラス材Lにより構成される面に対し平行状をなす。表力骨Fと裏力骨Bの交差角度は90度である。
【0033】
(5) 表力骨Fと裏力骨Bは、それらが交差する箇所全部、すなわちラス材Lに対し縦横に(二次元的に)均等状に分散した30箇所全部である所定箇所において、それぞれ、裏向きに略半円状に湾曲して突起した表力骨突起部Fa及び裏力骨突起部Baを有する。
【0034】
表力骨F及び裏力骨Bの所定箇所における表力骨突起部Fa及び裏力骨突起部Baは、それぞれ、ラス材Lの表側及びシート状防水材Wの裏側に添設される前に予め湾曲形成されたものである。
【0035】
(6) ラス材L及びシート状防水材Wの所定箇所に、それぞれ円形の切欠孔LC及び切欠孔WCが、実質上同一形状及び同一大きさに形成されて同心状に重なっている。表力骨突起部Faは、ラス材及びシート状防水材の両切欠孔LC・WCを貫通し、裏力骨突起部Baに交差して両力骨が溶接により接合されている。表力骨突起部Faと裏力骨突起部Baは、それぞれ湾曲形成されたものが溶接されている。なお、図1では切欠孔LC・WCの図示を略す。
【0036】
このように、重ね合わさったラス材L及びシート状防水材Wに、それぞれ切欠孔LC・WCが形成されてそれらの切欠孔LC・WCが同心状に重なっているので、重なった状態の両切欠孔LC・WCを表力骨突起部Faが貫通することにより、表力骨突起部Faを介して、表力骨Fと裏力骨Bに対しラス材L及びシート状防水材Wが、それぞれにより構成される面に沿って縦横二次元的に位置決めされている。また、ラス材L及びシート状防水材Wは、表力骨突起部Faと裏力骨突起部Baにおいて接合された表力骨F及び裏力骨Bの間に挟持され且つ位置決めされている。
【0037】
(7) 図8乃至10は、本発明の実施の形態の別の例としてのラス複合体に関するものである。
【0038】
この例のラス複合体Aでは、ラス材L及びシート状防水材Wのうち、表力骨Fと裏力骨Bが交差する30箇所全部である所定箇所には、それぞれ周囲が裏向きに突起した突起周囲部LHa・WHaを有する孔部LH・WHが形成され、それらの孔部LH・WHが重なっており、表力骨突起部Faが重なった状態の両孔部LH・WHを貫通し、裏力骨突起部Baに交差して両力骨が溶接により接合されている。
【0039】
ラス材L及びシート状防水材Wにおける、周囲が裏向きに突起した突起周囲部LHa・WHaを有する孔部LH・WHは、ラス材L及びシート状防水材Wに、それぞれ直交する切れ目部Sを設け、そのラス材L及びシート状防水材Wの切れ目部Sの交差箇所を中心とする部分を裏向きに押し込むことにより形成されたものである。
【0040】
このようにして、表力骨Fと裏力骨Bに対し、ラス材L及びシート状防水材Wが、それぞれにより構成される面に沿って縦横二次元的により確実に位置決めされている。また、ラス材L及びシート状防水材Wは、表力骨突起部Faと裏力骨突起部Baにおいて接合された表力骨F及び裏力骨Bの間に挟持され且つ位置決めされている。
【0041】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0042】
本発明のラス複合体は、表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたものである。
【0043】
(1) ラス材は、木製パネル等の基材に固定されてモルタル又はその他の塗工材の下地として用い得るものを好適に使用し得る。
【0044】
ラス材の例としては、平ラス、メタルラス、ワイヤラス、エキスパンドメタル、溶接金網、ひし形金網、きっ甲金網等を挙げることができるが、これらに限るものではない。
【0045】
(2) シート状防水材は、例えばモルタル等の塗工材を塗工してなる塗工体により形成されたモルタル塗工壁等における塗工体の裏側等に配装されて塗工体からの水分浸透を防ぐためのものであって、ラス材の裏側のほぼ全面に重ね合わされる。なお、ラス複合体を隣接配列する場合に備えて、ラス材とシート状防水材を重ね代に相当する分所定の向きにずらしておくこともできる。
【0046】
シート状防水材の例としては、透湿防水紙、アスファルトフェルト、ターポリン紙、その他の防水シートを挙げることができるが、これらに限るものではない。
【0047】
(3) 表力骨及び裏力骨としては、ラス材を構成する線状材よりも剛性及び強度の高い鋼製線材(これに限るものではない)を用いることができ、その形状は、表力骨突起部及び裏力骨突起部を除いて全体として直線状とすることが一般的である。
【0048】
表力骨及び裏力骨は、それぞれ複数本(好ましくは3本以上)が間隔おきに(好ましくは、それぞれ複数本の表力骨及び裏力骨がそれぞれ等間隔おきに)配置されることが望ましい。
【0049】
表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差している。表力骨と裏力骨の交差角度は、90度とすることが好ましいが、必ずしも90度に限定されるものではない。
【0050】
表力骨及び裏力骨は、ラス材により構成される面に対し平行状にそのラス材に添設されるものとすることができる。
【0051】
(4) 表力骨と裏力骨は、それらが交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所(例えば4以上の所定箇所、好ましくはラス材に対し二次元的[例えば縦横]に分散[できるだけ均等状に分散]した4以上の所定箇所)において、それぞれ、裏向きに湾曲(例えば略半円状に湾曲)又は屈曲(例えば基部に向かって拡開する台形状或いはその他の台形状、V字状若しくはU字状に屈曲)して突起した表力骨突起部及び裏力骨突起部を有する。
【0052】
例えば、縦方向等間隔に互いに平行に配された横方向の表力骨5本と、横方向等間隔に互いに平行に配された縦方向の裏力骨4本が20箇所で直交している場合、20の交差箇所全部を所定箇所とすることができるほか、20のうちの選択した交差箇所(好ましくは、できるだけ均等状に分散した箇所、例えば、縦横それぞれ等間隔となる交差箇所)のみを所定箇所とすることもできる。
【0053】
表力骨及び裏力骨の所定箇所における表力骨突起部及び裏力骨突起部は、それぞれ、ラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設される前に予め湾曲又は屈曲形成されたものであることが望ましい。添設後に湾曲又は屈曲形成すると、表力骨とラス材とシート状防水材と裏力骨を所望の位置関係とすることが困難である。
【0054】
(5) 表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所において、表力骨突起部は、重ね合わされているラス材及びシート状防水材を表側から裏側へ貫通し、裏力骨突起部に交差して両者が接合されている。
【0055】
接合は、表力骨及び裏力骨が鋼製等の金属製であれば、溶接により行なうことができるが、必ずしもこれに限るものではない。
【0056】
表力骨突起部と裏力骨突起部は、それぞれ湾曲又は屈曲形成されたものが接合されているものとすることが、表力骨及び裏力骨を含む全体に歪が生じることを避ける上で(特に、所定箇所が二次元的に分散した例えば4以上の複数箇所である場合)好ましい。
【0057】
このようにして、表力骨と裏力骨に対し、シート状防水材が、そのシート状防水材により構成される面に沿って二次元的に位置決めされている(例えばシート状防水材の縦横の位置が位置決めされている)。
【0058】
ラス材は、例えば表力骨突起部を介して位置決めされるものであってもよく、例えば表力骨と溶接等により接合されるものとすることもできる。
【0059】
また、表力骨突起部と裏力骨突起部における接合は、その表力骨突起部と裏力骨突起部の形状や寸法等を含めて、表力骨と裏力骨の間にラス材及びシート状防水材が挟持され、更には位置決めされるように行なわれるものであることが望ましい。
【0060】
また、シート状防水材とラス材を、所要箇所においてホットメルト接着剤による接着等の接着手段やその他の手段により接合したものとすることもできる。
【0061】
ラス複合体を隣接配列する場合、例えば、一方のラス複合体における表力骨突起部と裏力骨突起部の交差接合箇所と、他方のラス複合体における表力骨突起部と裏力骨突起部の交差接合箇所を重ねて隣接配列することができる。
【0062】
また、ラス複合体におけるラス材とシート状防水材の重ね代のうち、別のラス複合体が隣接しない部分には、その重ね代を含むラス複合体の端縁近傍部に重なるような面積の(例えば通常用いるラス複合体の数分の一の幅の)ラス複合体を重ねて用いることができる。このような端縁近傍部用のラス複合体は、例えば、表力骨及び裏力骨の一方が一本で他方が間隔おきに複数本配置され、所定箇所が直線上に間隔おきに複数存在するものとすることができる。このような端縁近傍部用のラス複合体における表力骨突起部と裏力骨突起部の交差接合箇所と、通常用いるラス複合体における表力骨突起部と裏力骨突起部の交差接合箇所が重なるように配置することもできる。
【0063】
更に、出隅又は入隅等のコーナー部については、突起部のない表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、突起部のない裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、接着剤又はその他の手段により接合されたラス複合体を、本発明のラス複合体の端縁近傍部と重ね合わせて用いることができる。
【0064】
ラス材とシート状防水材の所定箇所は、例えば次のような態様とすることができるが、これらに限るものではない。
【0065】
(5-1) ラス材及びシート状防水材の所定箇所に、それぞれ周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの孔部が重なっており、重なった状態の両孔部を表力骨突起部が貫通しているものとすることができる。
【0066】
なお、ラス材又はシート状防水材における、周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部は、ラス材又はシート状防水材に、それぞれ交差(好ましくは直交状)する切れ目部を設け、そのラス材又はシート状防水材の切れ目部の交差箇所を中心とする部分を裏向きに押し込むことにより形成することができる。例えば、ラス材とシート状防水材を所要の位置関係で重ね合わせた状態で、所定箇所に交差切れ目部を設けると共に切れ目部の交差箇所を中心とする部分を裏向きに押し込むことにより、周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部を形成することもできる。
【0067】
(5-2) ラス材及びシート状防水材のうち一方の所定箇所に切欠孔が形成され、他方の所定箇所には周囲が裏向きに突起した突起周囲部を有する孔部が形成され、それらの切欠孔と孔部が重なっており、重なった状態の切欠孔と孔部を表力骨突起部が貫通しているものとすることができる。
【0068】
(5-3) ラス材及びシート状防水材の所定箇所に、それぞれ切欠孔が重なるように形成されており、ラス材及びシート状防水材の両切欠孔を表力骨突起部が貫通しているものとすることができる。各所定箇所において重なるラス材の切欠孔とシート状防水材の切欠孔は、実質上同一形状及び同一大きさに形成されて同心状に重なっていることが好ましいが、必ずしもこれに限るものではない。
【0069】
孔部又は切欠部の平面視形状は、例えば円形とすることができるが、必ずしもこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0070】
A ラス複合体
B 裏力骨
Ba 裏力骨突起部
F 表力骨
Fa 表力骨突起部
L ラス材
LH 孔部
LHa 突起周囲部
LC 切欠孔
M 基材
S 切れ目部
W シート状防水材
WH 孔部
WHa 突起周囲部
WC 切欠孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10