(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815065
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】カメラ
(51)【国際特許分類】
H04N 5/235 20060101AFI20210107BHJP
G03B 7/093 20210101ALI20210107BHJP
【FI】
H04N5/235 700
G03B7/093
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-54717(P2017-54717)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-157505(P2018-157505A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 健一
【審査官】
高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−040879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
G03B 7/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、当該撮像部が撮像した画像を処理して出力する画像処理部と、前記撮像部の露出を自動調整する露出制御部とを有するカメラであって、
前記露出制御部は、フリッカの発生を抑制するためのシャッタ時間を記憶するシャッタ時間テーブル記憶部と、露出を調整するために前記画像処理部から入手した輝度情報を基にシャッタ時間及び輝度ゲイン値を算出する輝度制御部と、前記輝度制御部が出力するシャッタ時間と輝度ゲイン値を基に前記撮像部を制御する撮像制御部とを有し、
前記シャッタ時間テーブル記憶部は、50Hzと60Hzの双方の蛍光灯照明下で光量変動率が等しくなり、且つ光量変動率が所定値以下となる複数のシャッタ時間を記憶すると共に、
記憶された個々のシャッタ時間は、前記輝度制御部が算出したシャッタ時間に対して変更先のシャッタ時間が一義的に選択されるよう近傍のシャッタ時間が関連付けてグループ分けされて記憶されており、
前記輝度制御部は、算出したシャッタ時間が所定の時間より短ければ、算出したシャッタ時間に応じて特定されたシャッタ時間を前記シャッタ時間テーブル記憶部から選択して出力し、前記所定の時間より長ければ算出したシャッタ時間を変更せず出力することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記輝度制御部は、算出した前記シャッタ時間が1/33秒より短ければ、前記シャッタ時間テーブル記憶部のシャッタ時間に設定することを特徴とする請求項1記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像を出力するカメラに関し、特に蛍光灯照明下であってもフリッカを軽減した映像を出力できるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ化されていない蛍光灯下でのカメラ撮影では、シャッタ時間の長さによりフリッカが発生した。この対策としては、使用している商用交流電源の周波数(50/60Hz)を設定し、その逓倍周期にシャッタ時間を合わせることでフリッカーを抑止する技術や、映像を表示する側で補正する技術があった。
例えば、映像を表示する際に補正する技術として特許文献1がある。これは映像を表示する液晶モニタのバックライトの明るさをフリッカ周期に同期させて変化させることで表示映像のちらつきを削減した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−50247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記商用交流電源の周波数の逓倍周期にシャッタ時間を合わせる技術は、設定ミスや設定忘れによりフリッカが抑圧されない場合があった。また、引用文献1の技術は、表示手段側の対策であり、カメラが出力する映像にはフリッカが発生しており、根本的な解決手段ではなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、フリッカの削減に面倒な設定を必要としないカメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、撮像部と、当該撮像部が撮像した画像を処理して出力する画像処理部と、撮像部の露出を自動調整する露出制御部とを有するカメラであって、露出制御部は、フリッカの発生を抑制するためのシャッタ時間を記憶するシャッタ時間テーブル記憶部と、露出を調整するために画像処理部から入手した輝度情報を基にシャッタ時間及び輝度ゲイン値を算出する輝度制御部と、輝度制御部が出力するシャッタ時間と輝度ゲイン値を基に撮像部を制御する撮像制御部とを有し、
シャッタ時間テーブル記憶部は、50Hzと60Hzの双方の蛍光灯照明下で光量変動率が等しくなり、且つ光量変動率が所定値以下となる複数のシャッタ時間を記憶すると共に、記憶された個々のシャッタ時間は、輝度制御部が算出したシャッタ時間に対して変更先のシャッタ時間が一義的に選択されるよう近傍のシャッタ時間が関連付けてグループ分けされて記憶されており、輝度制御部は、算出したシャッタ時間が所定の時間より短ければ、
算出したシャッタ時間に応じて特定されたシャッタ時間をシャッタ時間テーブル記憶部から選択して出力し、所定の時間より長ければ算出したシャッタ時間を変更せず出力することを特徴とする。
この構成によれば、輝度を調整する為に算出された理想のシャッタ時間が所定の時間より短い場合、即ちフリッカが発生し易い明るい蛍光灯環境下で撮影した場合は、予め設定された特定のシャッタ時間に設定して撮影するため、明るくてもフリッカを抑制した映像を出力することが可能となる。
更に、算出されたシャッタ時間が短い場合に変更されるシャッタ時間は、光量変動率を基に設定されるため、目視では検知し辛い領域の値とする事ができるし、50/60Hzの双方の周波数に対して等しい光量変動率のシャッタ時間が適用されるため、周波数に合わせて設定変更する必要もなく容易にフリッカ軽減を実現できる。
尚、光量変動率とは、画像フレーム毎に算出される光量積算結果の変動率である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、輝度制御部は、算出したシャッタ時間が1/33秒より短ければ、シャッタ時間テーブル記憶部のシャッタ時間に設定することを特徴とする。
この構成によれば、フリッカの発生による画面のちらつきが目立つ明るい環境下においてフリッカを確実に軽減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、輝度を調整する為に算出された理想のシャッタ時間が所定の時間より短い場合、即ちフリッカが発生し易い明るい蛍光灯環境下で撮影した場合は、予め設定された特定のシャッタ時間に設定して撮影するため、明るくてもフリッカを抑制した映像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るカメラの一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】シャッタ時間テーブル記憶部が記憶しているデータの基となる光量とシャッタ時間の対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るカメラの一例を示す機能ブロック図であり、1はレンズ部、2はイメージセンサを備えた撮像部、3は外部へ出力する画像(映像)を生成する画像処理部(ISP)、4は撮像部2の露出を制御する露出制御部である。
【0012】
撮像部2は、CCD等なら成るイメージセンサを備えて構成され、電子シャッタのシャッタ時間、輝度ゲインの調整ができ、撮像した映像信号が画像処理部3に出力される。
画像処理部3は、ホワイトバランス処理、フレームレート変換処理を行い、映像を構成する画像フレームを一定間隔で外部に出力する。また、輝度情報を露出制御部4へ出力する。
【0013】
露出制御部4は、特定のシャッタ時間を記憶するシャッタ時間テーブル記憶部5、シャッタ時間を設定して輝度ゲイン値を算出する輝度制御部6、撮像部2を制御する撮像制御部7等を備えており、輝度制御部6は画像処理部3から得た輝度情報を基にシャッタ時間を設定し、明るさを一定にするための輝度ゲイン値を算出する。その際、算出したシャッタ時間によってはシャッタ時間テーブル記憶部5のデータを参照して変更する。
撮像制御部7は、輝度制御部6の情報を基に電子シャッタのシャッタ時間と輝度ゲイン値を連動操作し、撮像部2の露出を制御して撮像部2が出力する映像信号の明るさを一定にするための制御を実施する。
【0014】
上記の如く構成されたカメラは以下の様に動作する。ここでは、フリッカ現象の削減動作を中心に説明する。
図2はシャッタ時間テーブル記憶部5が記憶するデータを説明するためのグラフであり、光量変動率とシャッタ時間の対応関係を示している。
図2において、P1は50Hzの特性、P2は60Hzの特性を示しており、このグラフから50Hzの照明下では1/100秒を最短時間として、その整数倍(逓倍)のシャッタ時間ではフリッカが全く発生しないことがわかる。また、60Hzの照明下では、1/120秒を最短時間として、その整数倍(逓倍)のシャッタ時間では全くフリッカが発生しないことがわかる。尚、光量変動率とは、各フレーム間で出現する光量積算結果の変動率である。
【0015】
逆に、それらシャッタ時間の中間では、光量変動率が大きくなりフリッカが発生することを示している。但し、実験から点線(閾値)Fで示した光量変動率0.04のラインがフリッカを確認できる限界線であり、光量変動率がこの閾値F以下であれば、撮像映像を表示するモニタにおいてフリッカが発生しても気にならないレベルであることが実験から確認されている。加えて、電子シャッタ時間が1/33秒以上と長い場合(
図2に示すエリアA2)では、基本的に映像が暗いためフリッカは発生しても目視上気にならないことも実験により確認されている。
そのため、1/33秒より短いシャッタ時間(
図2に示すエリアA1)の場合がフリッカ対策では問題となり、本発明はこのエリアに着目して電子シャッタ時間を制御している。
【0016】
ここで
図2を見ると、1/33秒より短いシャッタ時間には5つの交点C1,D1,C2,D2,C3が存在することがわかる。即ち、50/60Hzの双方の光源下において光量変動率が等しいシャッタ時間が5個存在している。そのため、この交点に電子シャッタのシャッタ時間を設定すれば、何れの周波数の光源下でも、同様のフリッカ特性となる。そして、そのうち3つの交点C1,C2,C3は光量変動率が閾値Fに等しいかそれより小さい値であり、この3点のいずれかに電子シャッタのシャッタ時間を固定すれば、50/60Hzの双方の周波数において明るい環境下でのフリッカの軽減を実現できる。
【0017】
本発明はこのような背景から成された技術であり、以下、動作を説明する。尚、交点C1は約1/109秒、C2は約1/54秒、C3は約1/36秒である。
先ず、輝度制御部6が本来のシャッタ時間(全域の時間を使用できる場合の理想シャッタ時間)を算出する。この算出したシャッタ時間が1/33秒より短ければ、次の様に理想シャッタ時間をフリッカを軽減するための値に調整し直す。
例えば、算出された電子シャッタ時間が1/35秒と1/33秒より短い場合、シャッタ時間テーブル記憶部5を参照して適切な時間を選択する。このとき、算出した時間に最も近い時間が選択され、交点C3の1/36秒が選択される。
また、こうして選択された電子シャッタ時間を基に輝度ゲイン値が算出される。
【0018】
シャッタ時間テーブル記憶部5には、この3点C1,C2,C3のシャッタ時間データと、その近傍のデータがそれぞれにグループ分けされて記憶されており、輝度制御部6が算出した理想のシャッタ時間が1/33秒より短い場合に、変更先のシャッタ時間が3点の何れかに一義的に決定されるよう記憶されている。尚、1/33秒より長い場合は、算出した理想シャッタ時間が変更されること無く出力される。
こうして、調整後の或いは算出後のシャッタ時間に対応する輝度ゲイン値が輝度制御部6において算出(絞り値は固定とする)され、撮像制御部7がこのデータを基に撮像部2を制御する。
【0019】
このように、輝度を調整する為に算出された理想のシャッタ時間が所定の時間(1/33秒)より短い場合、即ちフリッカが発生し易い明るい蛍光灯環境下で撮影した場合は、予め設定された特定のシャッタ時間に算出した値から変更して撮影するため、明るくてもフリッカを確実に軽減した映像を出力することができる。
また、算出されたシャッタ時間が短い場合に変更されるシャッタ時間は、光量変動率を基に設定されるため、目視では検知し辛い領域の値とする事ができるし、50/60Hzの双方の周波数に対して等しい光量変動率のシャッタ時間が適用されるため、周波数に合わせて設定変更する必要もなく容易にフリッカ軽減を実現できる。
【0020】
尚、上記実施形態では、算出したシャッタ時間を変更する閾値である特定の時間を1/33秒とし、また光量変動率の閾値である所定値を0.04としているが、何れも目視により実験から設定した値であり変更は可能である。シャッタ時間の閾値はこれより長い値としても良く、フリッカの更なる削減に有効である。また、光量変動率の閾値を上記値より小さくすることも可能であり、0.04である上記C1点を選択の対象から外しても良い。
【符号の説明】
【0021】
2・・撮像部、3・・画像処理部、4・・露出制御部、5・・シャッタ時間テーブル記憶部、6・・輝度制御部、7・・撮像制御部。