特許第6815070号(P6815070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000002
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000003
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000004
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000005
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000006
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000007
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000008
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000009
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000010
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000011
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000012
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000013
  • 特許6815070-アイスディスペンサ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815070
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】アイスディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/12 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   F25C1/12 301Z
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-149934(P2015-149934)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-32174(P2017-32174A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月13日
【審判番号】不服2020-2601(P2020-2601/J1)
【審判請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜也
【合議体】
【審判長】 平城 俊雅
【審判官】 川上 佳
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−117352(JP,A)
【文献】 特開平8−278074(JP,A)
【文献】 特開2013−32909(JP,A)
【文献】 特開2007−71469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷を貯え、底部に氷の放出口を有した貯氷槽と、
前記貯氷槽内に回動可能に支持した中心軸部の周囲に氷を所定の容量に定量する複数の扇形定量空間を形成した氷定量器と、
前記氷定量器の上側にはみ出る氷を切断する切断刃と、
前記氷定量器を回動させる電動モータと、
前記氷定量器を前記扇形定量空間に応じた角度単位で回動させるように前記電動モータの作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は前記電動モータの作動を制御して前記氷定量器を前記扇形定量空間に応じた角度単位で回動させることにより、前記扇形定量空間で定量した氷を前記放出口の上側に移動させ、定量した氷を前記放出口から落下させて放出させるようにしたアイスディスペンサであって、
記電動モータへの供給電流を検出する電流計を設け、
前記制御装置は前記電動モータを起動後に前記電流計によって前記電動モータの起動時の突入電流と起動後の定常電流との間にて設定された異常電流より高い電流を検出したときに、前記電動モータを逆回転で作動させて前記氷定量器が回動開始時の位置に戻るように制御したことを特徴とするアイスディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯氷槽内の氷を定量して放出するアイスディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人が先にした特許出願(特願2014−147084)のアイスディスペンサは、氷を貯える貯氷室と、氷を定量する円筒形定量室とを有した貯氷槽と、貯氷室内の氷を円筒形定量室に搬出する搬出機構と、搬出機構によって搬出した氷を定量して放出させる定量機構とを有している。搬出機構は、貯氷室内に回動可能に支持された搬出羽根と、搬出羽根を回動させる電動モータとを備え、電動モータの作動によって搬出羽根を回動させることにより、貯氷室内の氷を円筒形定量室内に搬出するものである。搬出羽根には撹拌アームが固定されており、撹拌アームは搬出羽根とともに回動して貯氷槽内にて局部的に積み上がる氷を全体に広がるように撹拌している。定量機構は、円筒形定量室に回動可能に支持した中心軸部の周囲に氷を所定の容量に定量する6つの扇形定量空間を形成した氷定量器と、氷定量器の上側にて扇形定量空間からはみ出た氷を切断する切断刃と、氷定量器を回動させる電動モータとを備えている。この定量機構は、電動モータの作動によって氷定量器を回動させることにより、扇形定量空間内で定量した氷を放出口の上側に移動させ、定量した氷を放出口からカップ等の容器に落下させて放出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2014−147084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のアイスディスペンサにおいては、搬出羽根及び撹拌アームは貯氷槽内にて積み上がった氷によって一時的に回動できずにロックすることがあり、電動モータがロックした状態の搬出羽根及び撹拌アームを回動させようするときの大きな負荷によって焼損するおそれがあった。また、円筒形定量室内に搬入された氷は氷定量器の各扇形定量空間内で所定の容量となるように定量されるが、扇形定量空間の上側にはみ出た氷が切断刃に食い込み、氷定量器は切断刃に食い込んだ氷によって回動できず、電動モータがロックした状態の氷定量器を回動させようするときの大きな負荷によって焼損するおそれがあった。本発明は、アイスディスペンサにおいて、搬出機構または定量機構の電動モータが焼損するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、氷を貯え、底部に氷の放出口を有した貯氷槽と、貯氷槽内に回動可能に支持した中心軸部の周囲に氷を所定の容量に定量する複数の扇形定量空間を形成した氷定量器と、氷定量器の上側にはみ出る氷を切断する切断刃と、氷定量器を回動させる電動モータと、氷定量器を扇形定量空間に応じた角度単位で回動させるように電動モータの作動を制御する制御装置を備え、電動モータへの供給電流を検出する電流計を設け、制御装置は電動モータを起動後に電流計によって電動モータの起動時の突入電流と起動後の定常電流との間にて設定された異常電流より高い電流を検出したときに、電動モータを逆回転で作動させて氷定量器が回動開始時の位置に戻るように制御したことを特徴とするアイスディスペンサを提供するものである。
【0006】
上記のように構成したアイスディスペンサにおいては、氷定量器の扇形定量空間の上側にはみ出る氷が切断刃に食い込んだときには、電動モータには定常電流以上の電流が流れるようになる。このとき、電流計によって電動モータの起動時の突入電流と起動後の定常電流との間にて設定された異常電流より高い電流を検出したときに、氷定量器が回動開始時の位置に戻るように電動モータを逆回転で作動するように制御した。これにより、扇形定量空間の上側にて氷が切断刃に食い込んでも、氷定量器がその回動方向と逆方向に回転することで、氷の切断刃への食い込みが解消し、電動モータは大きな負荷によって焼損しないようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明によるアイスディスペンス機能付きの製氷装置の一実施形態の斜視図。
図2図1の前後方向に沿った断面図である。
図3】ハウジングと蓋体と貯氷槽を取り外して、基台の支持フレームに支持された製氷機構部が現れるようにした斜視図である。
図4】製氷部の斜視図(a)と、左右方向の中央の縦方向断面図(b)と、上下方向の中央の横方向断面図(c)である。
図5】製氷部の左右方向の中央位置での縦方向断面図である。
図6】冷凍装置のブロック図である。
図7】貯水タンクを示す図であり、斜視図(a)と、正面図(b)と、平面図(c)と、A−A断面図(d)と、B−B断面図(e)である。
図8図2のC−C断面図である。
図9図2のD−D断面図である。
図10】背面パネルを取り外した状態の背面図である。
図11】離脱装置を示す斜視図である。
図12】蓋体を取り外した状態の平面図である。
図13】制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のアイスディスペンサの一実施形態を、製氷機構付のアイスディスペンサにより説明する。図1図3に示したように、製氷機構付のアイスディスペンサ10(以下、アイスディスペンサ10と記載する)は、基台11と、基台11に設置して氷を製氷する製氷機構部20と、基台11に設置して製氷機構部20の下側にて氷を貯える貯氷槽60と、貯氷槽60内の氷を放出口62aに向けて搬出する搬出機構70と、搬出機構70により搬出された氷を定量して放出口62aから放出する定量機構80とを備えている。また、アイスディスペンサ10は、製氷機構部20と貯氷槽60とを囲うハウジング12を備えており、ハウジング12の上部には製氷機構部20と貯氷槽60の上面開口を開閉自在に覆う蓋体13が設けられている。
【0011】
図2及び図3に示したように、製氷機構部20は、基台11の後側に立設させた支持フレーム14の上部に支持された製氷部21を備えている。図4に示したように、製氷部21は、鉛直に起立して前面を製氷面とした製氷板22と、製氷板22の製氷面側に多数の製氷小室(セル)を形成する格子状の仕切り部材23とを備えている。製氷板22の上下及び左右の各々の端部には前側に折り曲げられた折曲部22aが設けられており、製氷板22の製氷面側はこれら折曲部22aによって前側に開いた浅い箱形となっている。製氷板22の製氷面側には浅い箱形内にて格子状の仕切り部材23が固着されており、製氷面側の仕切り部材23によって仕切られた空間が製氷小室となっている。製氷部21では、製氷板22の製氷面側を流下する製氷水は製氷小室内にてブロック形氷となるように凍結し、流下する製氷水は製氷小室内にて凍結したブロック形氷が仕切り部材23の製氷板22側と反対側の縁部にて互いに隣り合う上下及び左右で連結するように凍結し、ブロック形氷の縁部が上下及び左右で板状に連結した板形連結氷として製氷される(図2及び図5の製氷板22の製氷面側に板形連結氷を2点鎖線にて示した)。図5に示したように、製氷板22の上下及び左右方向の中央部には貫通孔22bが形成されており、貫通孔22bには後述する氷離脱装置56のスライドピン56aが挿通可能となっている。
【0012】
図2及び図4に示したように、製氷板22の製氷面と反対側には冷凍装置30の蒸発管34と、温度センサ37が固定されている。図6に示したように、冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮した冷媒ガスを冷却して液化させる凝縮器32と、液化冷媒を膨張させるキャピラリチューブ33と、膨張させた液化冷媒を気化させて製氷板22を冷却する蒸発管(蒸発器)34とを備え、これら31〜34は冷媒管によって連結されて冷媒が循環する冷媒回路となっている。また、冷凍装置30は、圧縮機31と蒸発管34との間を接続するバイパス管35を備え、バイパス管35にはホットガス弁36が介装されている。
【0013】
ホットガス弁36を閉止させた状態で圧縮機31を作動させて冷媒回路の冷媒を循環させると、液化冷媒は蒸発管34で気化して製氷板22と仕切り部材23を冷却し、製氷板22の製氷面側を流下する製氷水は冷却された製氷板22と仕切り部材23に熱交換により冷却される。また、ホットガス弁36を開放させた状態で圧縮機31を作動させると、圧縮機31から送られたホットガスは蒸発管34を通過するときに製氷板22及び仕切り部材23を加温し、製氷小室内の氷は加温された製氷板22及び仕切り部材23との接触面で融解される。なお、温度センサ37により製氷板22の温度が所定温度として5℃となったことを検出したときに、板形連結氷を後述する氷離脱装置56のスライドピン56aにより押し出すようにしている。
【0014】
図2及び図3に示したように、製氷機構部20は、製氷部21の下側に貯水タンク40を備えており、貯水タンク40は製氷部21に送出する製氷水を貯えるものである。図7に示したように、貯水タンク40は第1貯水部41と第2貯水部42とを有しており、第1貯水部41は製氷部21の直ぐ下側位置に配置されており、第2貯水部42は第1貯水部41の左側にて第1貯水部41より前側に突出しており、貯水タンク40は上側から見た形状が略L形となっている。第1貯水部41の前壁上縁には切欠き部41aが形成されており、製氷部21を流下する製氷水はこの切欠き部41aから貯水タンク40内に戻るようになっている。
【0015】
図7に示したように、貯水タンク40には製氷部21にて板形連結氷を製氷するのに必要は製氷水よりも過剰な水位の水を排出するオーバーフロー部43が設けられている。オーバーフロー部43は、第1貯水部41の後壁と右側壁の近傍となる底壁の隅部に形成した排水口43aと、第1貯水部41の後壁と右側壁とともに排水口43aを囲う隔壁43bとを備えている。オーバーフロー部43の隔壁43bの上縁の高さは製氷部21で板形連結氷を1回製氷するのに必要な製氷水を貯えるときの水位と同じ高さとなっている。
【0016】
図8に示したように、貯水タンク40内には温度センサ44と、水位センサ45が設けられている。温度センサ44は貯水タンク40内の製氷水の温度を検出するものである。水位センサ45は貯水タンク40内の水位を検出するものであり、貯水タンク40内にて吊設された支持柱45aと、支持柱45aに上下に移動可能に支持されたフロート45bと、支持柱45aに設けられてフロート45bの位置を検知する近接スイッチ等の検知部45cを備えている。水位センサ45は、この実施形態では検知部45cによって第1水位と第1水位より高い水位の第2水位とを検出するようになっている。第1水位は製氷部21にて製氷が完了したときの貯水タンク40内の水位であり、第2水位はオーバーフロー部43よりも少し低い水位となっている。
【0017】
図9に示したように、製氷機構部20は、貯水タンク40内の製氷水を製氷部21に送出する製氷水送出部50を備えている。製氷水送出部50は、貯水タンク40内に設けた送水ポンプ51と、送水ポンプ51から送出される製氷水を製氷部21の上側に送り出す送水管52と、製氷部21の上側にて送水管52に送られた製氷水を散水する散水器53とを備えている。散水器53は製氷部21の上側にて製氷部21の幅と略同じ長さの管部材を用いたものであり、散水器53の周面下部には長手方向に沿って多数の散水孔53aが穿設されている。送水ポンプ51を作動させると、貯水タンク40内の製氷水が送水管52を通って散水器53に送られ、散水器53に送られた製氷水は散水孔53aから製氷板22の製氷面側を流下するように散水される。
【0018】
図9に示したように、貯水タンク40には外部の水道等の給水源に接続した給水管54が接続されている。給水管54には給水弁55が介装されており、給水弁55を開放することによって貯水タンク40内に製氷水が供給される。
【0019】
図5及び図10に示したように、製氷板22の後側には製氷面側にて製氷した氷を製氷板22から離脱させる氷離脱装置56が設けられている。図11に示したように、氷離脱装置56は製氷板22の中央部に形成した貫通孔22bに挿通されるスライドピン56aを備え、スライドピン56aはギヤモータ(電動モータ)56bの駆動によって回転するカム56cによって前後方向に移動可能に支持されている。ギヤモータ56bは回転軸56b1の回転角度を検出する角度検出センサ56b2を備えており、角度検出センサ56b2は回転軸56b1に取り付けたエンコーダにより回転軸56b1の回転角度を検出するようになっている。氷離脱装置56では、ギヤモータ56bを駆動させてスライドピン56aを製氷板22の製氷面を突き出るように前側に移動させると、板形連結氷の中央のブロック形氷が製氷面側から離間するように前側に押し出され、板形連結氷は中央のブロック形氷とともに製氷面から離間するように押し出される。
【0020】
図2図3及び図5に示したように、製氷板22の製氷面側となる前側にはガイド板57が設けられている。ガイド板57は散水器53から製氷板22の製氷面側を流下させた製氷水を貯水タンク40に戻すとともに、製氷板22の製氷面側を流下させた製氷水が周囲に飛散するのを防ぐ機能を有している。ガイド板57は製氷板22の製氷面側を覆っており、ガイド板57の下端部は後側に湾曲して貯水タンク40の第1貯水部41の前側上縁の切欠き部41aから第1貯水部41の内側に挿通されている。
【0021】
ガイド板57は製氷部21にて製氷した氷が製氷部21から離脱したことを検知することで、貯氷槽60内が満氷状態であることを検知する検知板としての機能も有している。ガイド板57は上端部が支持フレーム14に水平軸線回りに回動可能に支持されており、ガイド板57は製氷板22に沿うように垂下する垂下姿勢(図2図5にて実線で示した)と、下端部が製氷板22の製氷面と反対側となる前側に押し出された傾斜姿勢(図2図5にて2点鎖線で示した)との間で回動可能となっている。ガイド板57の側部には磁石よりなる被検知部58が設けられており、支持フレーム14には垂下姿勢にあるガイド板57の被検知部58と対向する位置にリードスイッチ等の近接センサを用いた氷離脱検出センサ(満氷検知センサ)59が設けられている。
【0022】
製氷運転の終了後に氷離脱装置56のスライドピン56aを前進させると、製氷部21の製氷した板形連結氷はスライドピン56aにより押し出される。ガイド板57は押し出された板形連結氷によって垂下姿勢から一時的に傾斜姿勢となり、板形連結氷が貯氷槽60内に落下すると、ガイド板57は傾斜姿勢から再び垂下姿勢に戻る。このとき、氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が近接した状態から一時的に離間して再び近接した状態に戻ることを検出すると、製氷部21から板形連結氷が離脱して貯氷槽60に落下した、すなわち、貯氷槽60が満氷状態にないことを検知する。これに対し、製氷部21で製氷した板形連結氷を氷離脱装置56のスライドピン56aで押し出したときに、押し出された板形連結氷が貯氷槽60内で積み上がる氷によって落下しないことがある。このとき、ガイド板57は押し出された板形連結氷によって垂下姿勢から傾斜姿勢となり、垂下姿勢に戻らずに傾斜姿勢を維持するようになる。氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が近接した状態から継続して離間していることを検出すると、製氷部21から板形連結氷が離脱せずに留まっている、すなわち、貯氷槽60が満氷状態にあることを検知する。
【0023】
図2及び図12に示したように、貯氷槽60は、製氷機構部20にて製氷した氷を貯えるものであり、製氷機構部20の下側にて基台11に設けた支持フレーム14に支持されている。貯氷槽60は前後方向の中間部より後側を氷を貯える貯氷室61とし、前部を氷を定量するための円筒形定量室62としている。貯氷室61の底面は後端から少し前側が前方に進むに従って下側に傾斜する第1傾斜底面61aと、第1傾斜底面61aより前側にて前方に進むに従って上側に傾斜する第2傾斜底面61bとを有している。貯氷室61の第2傾斜底面61bの左右方向の中央部には斜め上側前部が開いたU字形の凹部61cが形成されており、この凹部61cには搬出機構70を構成する搬出羽根72が回転自在に取り付けられている。また、貯氷室61の左右方向の中央部前縁は円筒形定量室62の後縁と連続しており、貯氷室61の氷が円筒形定量室62に搬出されるようになっている。
【0024】
図2及び図12に示したように、貯氷室61の底部には製氷機構部20により製氷した氷を円筒形定量室62に搬出する搬出機構70が設けられている。搬出機構70は、貯氷室61の底部に設けたギヤモータ(電動モータ)71と搬出羽根72とを備えている。ギヤモータ71は主として搬出羽根72を回転させるものであり、貯氷室61の第2傾斜底面61bの下側に固定されている。ギヤモータ71の出力軸には駆動軸71aが固定されており、駆動軸71aはギヤモータ71の出力軸と一体的に回転する。駆動軸71aは貯氷室61内の第2傾斜底面61bの凹部61cの略中央部に突出しており、駆動軸71aには搬出羽根72がねじによって着脱可能に取り付けられている。また、ギヤモータ71は出力軸の回転角度を検出することで駆動軸71aの回転角度を検出する角度センサ71bを備えている。角度センサ71bはフォトセンサよりなり、出力軸に固定したロータリエンコーダ71cによって駆動軸71aの回転角度を検出する。
【0025】
搬出羽根72は、略円板形をした本体部72aと、本体部72aの外周部にて等間隔に配置した6箇所から外側に突出する羽根部72bとを備えている。搬出羽根72は貯氷室61の第2傾斜底面61bの凹部61cの中央部にギヤモータ71により回転する駆動軸71aに固定されている。搬出羽根72の本体部72aの外周面と凹部61cの下部の内周面との間は羽根部72bとによって仕切られた氷の搬出空間となっている。搬出羽根72を回動させると、搬出空間内の氷は第2傾斜底面61bを登って第2傾斜底面61bの前縁から円筒形定量室62の内部に搬出される。
【0026】
図2及び図12に示したように、貯氷室61内には製氷機構部20の製氷部21から落下した板形連結氷(氷の塊)をブロック形氷に崩すための撹拌アーム73が設けられている。撹拌アーム73は、搬出羽根72を介してギヤモータ71の駆動軸71aに着脱可能かつ回転可能に取り付けられている。撹拌アーム73は、駆動軸71aと搬出羽根72の上面とに固定された細長い固定板部73aと、固定板部73aの長手方向の両端部から上側に延びる1対の第1及び第2アーム部73b,73cとを備えている。これら第1及び第2アーム部73b,73cは貯氷室61内にて製氷機構部20によって製氷した板形連結氷が落下して積み上がる位置を通るように配置されている。
【0027】
製氷運転の終了後に、氷離脱装置56のスライドピン56aを前進させて製氷板22の製氷面側から板形連結氷を押し出すと、ガイド板57は押し出された板形連結氷によって垂下姿勢から傾斜姿勢となる。氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が近接した状態から離間した状態、すなわち、ガイド板57が傾斜姿勢となったことを検知すると、搬出羽根72とともに撹拌アーム73はギヤモータ71により回動するように制御されている。製氷板22の製氷面側から貯氷室61に落下した板形連結氷は回動する撹拌アーム73によって貯氷室61の製氷部21の直下に積み上がることなく全体的に均一に収容される。氷離脱検出センサによりガイド板57が傾斜姿勢となることを検知する度に、ギヤモータ71を正回転及び逆回転とで交互に作動するように制御することで、搬出羽根72とともに撹拌アーム73を正回転及び逆回転で交互に回動させて、製氷部21から落下した氷が貯氷室61内の一方の側部に偏って収容されないようにしている。
【0028】
図2及び図12に示したように、円筒形定量室62は氷を所定の容量(重量)に定量して底部に形成した放出口62aから放出するための領域となっており、円筒形定量室62には氷を所定の容量に定量する定量機構80が設けられている。定量機構80は、円筒形定量室62の底部にギヤモータ(電動モータ)81と氷定量器82とを備えている。ギヤモータ81は氷定量器82を回動させるものであり、円筒形定量室62の底壁下面に固定されている。ギヤモータ81の出力軸には駆動軸81aが固定されており、駆動軸81aはギヤモータ81の出力軸と一体的に回転する。駆動軸81aは円筒形定量室62の略中央部に突出しており、駆動軸81aには氷定量器82が着脱可能に取り付けられている。また、ギヤモータ81は出力軸の回転角度を検出することで駆動軸81aの回転角度を検出する角度センサ81bを備えている。角度センサ81bはフォトセンサよりなり、出力軸に固定したロータリエンコーダ81cにより駆動軸81aの回転角度を検出する。
【0029】
氷定量器82は貯氷室61から送られる氷を所定の容量(重量)に定量するものである。図2及び図12に示したように、氷定量器82は、円筒形定量室62の内部に同心的かつ回動自在に支持された中心軸部82aと、中心軸部82aの周面にて周方向に等間隔の6カ所の位置から放射状に延びて中心軸部82aの周囲に6つの扇形定量空間82cを形成する6つのセパレータ部82bとを有している。また、氷定量器82の上側には扇形定量空間82cの上側からはみ出る氷を除く切断刃83が設けられている。切断刃83は扇形定量空間82c内の氷が放出口62aの上側に移動する前に扇形定量空間82c内の上側にはみ出る氷を切断する位置に設けられている。氷定量器82を例えば60°回動させると、氷定量器82の1つ分の扇形定量空間82c内で定量された氷が放出口62aの上側に移動し、定量された氷が放出口62aから放出され、氷定量旗2を例えば180°回動させると、氷定量器82の3つ分の扇形定量空間82c内で定量された氷が放出口62aの上側に移動し、定量された氷が放出口62aから放出される。
【0030】
アイスディスペンサ10は制御装置90を備えており、図13に示したように、この制御装置90は冷凍装置30の圧縮機31と、ホットガス弁36と、製氷板22の温度センサ37と、貯水タンク40内の温度センサ44と、水位センサ45(特に検知部45c)と、送水ポンプ51と、給水弁55と、氷離脱装置56のギヤモータ56bと、氷離脱検出センサ59と、搬出機構70のギヤモータ71と、定量機構80のギヤモータ81とに接続されている。制御装置90はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置90は製氷機構部20の製氷部21にて板形連結氷を製氷する製氷プログラムと、搬出機構70により円筒形定量室62に搬出されたブロック形氷を定量機構80により定量して放出口62aから放出させる定量放出プログラムを有している。
【0031】
また、制御装置90は、氷離脱装置56のギヤモータ56b、搬出機構70のギヤモータ71及び定量機構80のギヤモータ81の各々への供給電流を検出する電流計91,92,93を備えており、各電流計91,92,93は各ギヤモータ56b,71,81に供給される電流を検出している。各ギヤモータ56b,71,81には起動時に突入電流(始動電流)と呼ばれる大電流が一時的に流れ、起動後には各ギヤモータ56b,71,81を定常的に作動させるための突入電流より小さな電流(定常電流)が流れる。制御装置90は、各ギヤモータ56b,71,81の起動から所定時間(例えば0.5秒間)経過後に、各電流計91,92,93にて突入電流と定常電流との間で設定された異常電流が検出されたときに、各ギヤモータ56b,71,81に過剰な負荷が生じていることを検知する。
【0032】
次に、制御装置90による製氷プログラム及び定量放出プログラムの制御を説明する。制御装置90は、製氷プログラムの実行によって、冷凍装置30の圧縮機31を作動させることにより製氷板22を冷却している。また、制御装置90は給水弁55を開放させると、給水源の水は製氷水として給水管54を通って貯水タンク40に送られる。貯水タンク40内の製氷水が徐々に上昇して第2水位となり、水位センサ45によって第2水位となったことの検知結果が制御装置90に入力されると、制御装置90はこの検知結果の入力から所定時間経過後に給水弁55を閉止させる。貯水タンク40内の製氷水は第2水位よりも高くなってオーバーフロー部43から溢出し、製氷部21で板形連結氷を製氷するのに必要な水量となる。
【0033】
制御装置90は、送水ポンプ51を作動させると、貯水タンク40内の製氷水が送水管52によって散水器53に送られ、散水器53に送られた製氷水は散水孔53aから製氷板22の製氷面側に散水されて流下する。製氷板22の製氷面側を流下する製氷水は格子状の仕切り部材23により仕切られた製氷小室内に流入しながら再び貯水タンク40内に戻り、製氷水は製氷板22及び仕切り部材23と熱交換されて冷却される。製氷板22の製氷面側を流下する製氷水は製氷小室内にてブロック形氷となるように凍結し、流下する製氷水は製氷小室内にて凍結したブロック形氷が仕切り部材23の製氷板22側と反対側の縁部にて互いに隣り合う上下及び左右で連結するように凍結し、ブロック形氷の縁部が上下及び左右で板状に連結した板形連結氷として製氷される。
【0034】
製氷板22の製氷面側で板形連結氷が製氷されると、貯水タンク40内の製氷水は第1水位となる。水位センサ45によって第1水位となったことの検知結果が制御装置90に入力されると、制御装置90はこの検知結果に基づいて送水ポンプ51の作動を停止させて製氷水の送水を停止するとともに、ホットガス弁36を開放させる。圧縮機31から送出されたホットガスはホットガス弁36の開放によって蒸発管34に流入し、製氷板22は蒸発管34に流入したホットガスによって加温される。製氷板22及び仕切り部材23はホットガスによって徐々に加温され、製氷小室内で凍結した板形連結氷のブロック形氷は製氷板22及び仕切り部材23との接触面が徐々に融解する。
【0035】
温度センサ37によって製氷板22が所定温度して5℃以上となったことを検出すると、制御装置90は氷離脱装置56のギヤモータ56bを作動させることでスライドピン56aを前進させ、板形連結氷の中央のブロック形氷が製氷面側から離間するように前側に押し出され、板形連結氷は中央部のブロック形氷とともに製氷面から離間するように押し出される。ガイド板57は押し出された板形連結氷によって垂下姿勢から傾斜姿勢となり、氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が近接した位置から離間したことを検出することでガイド板57が傾斜姿勢となったことを検知すると、制御装置90は搬出機構70のギヤモータ71を作動させることで、搬出羽根72とともに撹拌アーム73を回動させる。なお、氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が近接した位置から離間したことを検出してガイド板57が傾斜姿勢となったことを検知するたびに、制御装置90は搬出機構70のギヤモータ71を正回転と逆回転とで交互に作動させ、搬出羽根72とともに撹拌アーム73を正回転と逆回転とで交互に回動させる。貯氷槽60に落下した板形連結氷は撹拌アーム73によって1つごとのブロック形氷または数個が連結した状態のブロック形氷に崩されるとともに、貯氷槽60の貯氷室61にて製氷部21の直下の位置から左右の側部にも送られ、ブロック形氷は貯氷室61内にて製氷部21の直下に局部的に固まることなく全体的に均一に収容される。また、撹拌アーム73を回動させるときに、搬出機構70の搬出羽根72も回動することで、貯氷室61内のブロック形氷は円筒形定量室62にも搬出される。
【0036】
製氷部21で製氷された板形連結氷が貯氷槽60内に落下して、製氷板22の製氷面側から離脱していると、ガイド板57は傾斜姿勢から再び垂下姿勢に戻ることになる。氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が離間した位置から再び近接したことを検知すると、制御装置90は貯氷槽60内が満氷状態にないことを検知して、上述した製氷運転を連続的に実行するように制御する。これに対し、製氷した板形連結氷を製氷部21から押し出しても、板形連結氷が貯氷槽60内に積み上がった氷によって落下しないときには、ガイド板57は傾斜姿勢を維持するようになる。氷離脱検出センサ59はガイド板57の被検知部58が継続して離間したことを検出すると、制御装置90は貯氷槽60内が満氷状態にあることを検知して、上述した製氷運転を待機させるように制御する。
【0037】
製氷運転によって製氷したブロック形氷を貯氷槽60内に収容した状態で、ハウジング12の前面パネルの操作ボタン15をオン操作すると、搬出機構70のギヤモータ71の作動によって、貯氷室61内のブロック形氷が搬出羽根72によって円筒形定量室62に搬出される。円筒形定量室62内のブロック形氷は氷定量器82の扇形定量空間82cの内部に投入され、氷定量器82が所定角度(例えば120°または180°)で回動するように、定量機構80のギヤモータ81の作動を制御することにより、2つまたは3つ分の扇形定量空間82c内に投入されたブロック形氷が放出口62aの上側に移動し、定量されたブロック形氷が放出口62aからカップ等の容器に落下して放出される。
【0038】
上記のように構成したアイスディスペンサ10において、氷離脱装置56のギヤモータ56bに過剰な負荷が生じる一例として、温度センサ37により製氷板22の温度を正確に検出できずに、製氷板22の製氷面側に製氷された板形連結氷が製氷板22及び仕切り部材23との接触面で融解していない状態で、ギヤモータ56bを作動させてスライドピン56aを前進させるときがある。スライドピン56aをギヤモータ56bの作動によって前進させたときに、板形連結氷は製氷板22及び仕切り部材23との接触面で融解せずに接着されているので、ギヤモータ56bは前進を遮られたスライドピン56aを前進させようとするときに過剰な負荷が生じる。このとき、電流計91によって突入電流と定常電流との間で設定された異常電流が検出されるようになり、制御装置90は電流計91による異常電流の検出に基づき、ギヤモータ56bの作動を停止させるとともに、製氷板22の製氷面側から板形連結氷を離脱させることができないエラー状態であると報知させる。これにより、ギヤモータ56bは大きな負荷によって焼損しないようになった。
【0039】
搬出機構70のギヤモータ71に過剰な負荷が生じる一例として、搬出羽根72及び撹拌アーム73が貯氷室61内にて製氷部21の下側に積み上がったブロック形氷によって一時的に回動できずにロックした状態となり、ギヤモータ71を作動させてロック状態となった搬出羽根72及び撹拌アーム73を回動させるときがある。搬出羽根72及び撹拌アーム73をギヤモータ71の作動によって回動させたときに、貯氷槽60内のブロック形氷は搬出羽根72及び撹拌アーム73の回動を規制するように積み上がっているので、ギヤモータ71は搬出羽根72及び撹拌アーム73を回動させようとするときに過剰な負荷が生じる。このとき、電流計92によって突入電流(この実施形態では7.0A)と定常電流(この実施形態では0.7A)との間で設定された異常電流(この実施形態では3.0Aと設定しているが、これに限られるものでなく、突入電流と定常電流との間で設定された電流であればよい)が検出されるようになり、制御装置90は電流計92による異常電流の検出に基づきギヤモータ71を回動方向と逆方向に回動するように作動を制御し、逆方向に回動させた搬出羽根72及び撹拌アーム73によって貯氷室61に積み上がった氷を崩すようにする。これにより、ギヤモータ71は大きな負荷によって焼損しないようになった。
【0040】
定量機構80のギヤモータ81に過剰な負荷が生じる一例として、氷定量器82の扇形定量空間82cの上側にはみ出るブロック形氷が切断刃83に食い込んだ状態となり、ギヤモータ81を作動させて氷定量器82をさらに回動させるときがある。氷定量器82を回動させたときに、扇形定量空間82cの上側にはみ出るブロック形氷が切断刃83に食い込んで、ギヤモータ81は氷定量器82を回動させようとするときに過剰な負荷が生じる。このとき、電流計93によって突入電流(この実施形態では7.0A)と定常電流(この実施形態では0.7A)との間で設定された異常電流が検出されるようになり、制御装置90は電流計93による異常電流(この実施形態では3.0Aと設定しているが、これに限られるものでなく、突入電流と定常電流との間で設定された電流であればよい)の検出に基づき、氷定量器82が回動開始時の位置に戻るようにギヤモータ81を逆回転で作動するように制御し、氷定量器82をその回動方向と逆方向に回動させることで、扇形定量空間82cの上側で切断刃83に食い込んだ氷が切断刃83との食い込みが解消する。これにより、ギヤモータ81は大きな負荷によって焼損しないようになった。
【0041】
なお、この実施形態では、ギヤモータ71,81の異常電流を検出するときに、ギヤモータ71,81の起動時の突入電流を異常電流と検知しないように、起動から所定時間として0.5秒間の間で検出した電流を異常電流として検知しないようにしている。突入電流を異常電流と検知しないようにする方法はこれに限られるものでなく、例えば、ギヤモータ71,81の起動後に電流計92,93によって例えば1.5A以下の電流を検出したときに突入電流のピークが終了して定常電流が流れるようになったと判断するようにし、電流計92,93により1.5A以下の電流の検出後に3A以上の電流が流れたことを検出したときに異常電流の検出をしたと判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…アイスディスペンサ、60…貯氷槽、71…電動モータ(ギヤモータ)、72…搬出羽根、81…電動モータ(ギヤモータ)、82…氷定量器、83…切断刃、90…制御装置、92,93…電流計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13