(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1から
図4によって説明する。本実施形態では、調理機器として、冷温蔵装置9を例示する。冷温蔵装置9は、
図1に示すように、トレイXを収納するカート10と、同カート10を出し入れ可能に格納するステーション30と、を備えている。なお、このような冷温蔵装置9は再加熱カートと呼ばれる。カート10は、断熱箱からなるカート本体11と、トレイXを収納するフレームカート20とから構成されている。カート本体11は前後両面が開口され、その開口部11Aにはそれぞれ観音開き式の断熱扉12が装着されている。また、カート本体11の底面にはキャスタ13が設けられている。
【0013】
フレームカート20は、キャスタ22を設けた底板21の左右の側縁から金属製のフレーム23が立ち上げられた構造であって、上記したカート本体11内に前面側から出し入れ可能となっている。フレームカート20の左右方向の略中央部分には、前後方向全域に亘って仕切壁24が設けられている。仕切壁24は断熱性の高い複数の単位仕切壁24Aを積み上げた形状であって、トレイXは、前後両面から、上下の単位仕切壁24Aの間を貫通しつつ複数段に亘って収納されるようになっている。フレームカート20がカート本体11内に収納した状態では、
図2に示すように、カート本体11の内部が仕切壁24によって左右に仕切られ、例えば、仕切壁24の左側に温蔵室25Hが、右側に冷蔵室25Cが形成されるようになっている。
【0014】
ステーション30は、正面が開口された略箱形をなし、その開口を通してカート10が出し入れ可能となっている。
図2に示すように、ステーション30の天井部には、第1熱交換室31と第2熱交換室32とが左右に並んで区画形成され、温蔵室25Hの上方に配される左側の第1熱交換室31には、冷却部である冷却器33、加熱部であるヒータ34が設けられている。一方、冷蔵室25Cの上方に配される右側の第2熱交換室32には、冷却部である冷却器33のみが設けられている。両熱交換室31,32には循環ファン35がそれぞれ設けられている。両冷却器33は、ステーション30の機械室36に装備された圧縮機38等を含む冷凍装置37と並列接続されている。
【0015】
カート10がステーション30内に格納された状態では、第1熱交換室31と温蔵室25Hの間において空気を循環可能とする第1空気循環路41が形成され、第2熱交換室32と冷蔵室25Cの間において空気を循環可能とする第2空気循環路42が形成される。第1空気循環路41によって、温蔵室25Hの天井側から温蔵室25H内の空気を引いて第1熱交換室31に送り、この空気を熱交換した後、温蔵室25Hの側面から温蔵室25H内に送ることが可能となっている。また、第2空気循環路42によって、冷蔵室25Cの天井側から冷蔵室25C内の空気を引いて第2熱交換室32に送り、この空気を熱交換した後、冷蔵室25Cの側面から冷蔵室25C内に送ることが可能となっている。
【0016】
次に、冷温蔵装置9の電気的構成について説明する。
図3に示すように、冷温蔵装置9は、制御部50を備えている。制御部50には、記憶部56、表示部54A、操作部54B、温度センサ43H、温度センサ43C、2つの循環ファン35、ヒータ34、冷凍装置37(より具体的には圧縮機38など)、内蔵時計57、通信部59が電気的に接続されている。制御部50は、例えば、CPUを主体に構成されており、記憶部56は、例えば、ROMやRAMなどによって構成されている。制御部50は、記憶部56に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、制御部50に接続された各機器を制御することが可能となっている。なお、制御部50は、例えば、機械室36内に配置された電装箱26(
図1参照)内に収容されているが、これに限定されない。
【0017】
また、表示部54A及び操作部54Bは、
図1に示すタッチパネル54によって構成されている。作業者は、タッチパネル54に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置9の運転や各種設定を行うことができる。通信部59は、他の冷温蔵装置9との通信を行うためのハードウェアインタフェースであり、通信ネットワークを介して他の冷温蔵装置9と接続される。内蔵時計57は、時刻を計時するものとされる。また、制御部50は、内蔵時計57の時刻設定(詳しくは後述)に係る処理を行う時刻設定部51を備えており、記憶部56には、時刻設定部51が処理を実行するためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0018】
次に、本実施形態の冷温蔵装置9の使用形態の一例を説明する。まず、調理等の準備をした温食と冷食とをトレイXに分けて盛り付けて、各トレイXをフレームカート20に収納し、フレームカート20をカート本体11に収納してカート10を構成する(盛付け工程)。次にカート10がステーション30内に入れられ、運転スイッチがオンされると、冷蔵モードが実行される。
【0019】
冷蔵モードでは、両熱交換室31,32において冷却器33が作動状態とされ、温蔵室25Hと冷蔵室25Cには共に冷気が循環供給されることで、トレイXに載せられた温食と冷食が共に冷蔵保存(チルド保存)される。この冷蔵モードでは、温蔵室25H及び冷蔵室25Cの各庫内温度が各温度センサ43H,43Cで検知される。各温度センサ43H,43Cによって検知された温度は、設定温度と比較され、その比較結果に基づいて、制御部50が冷凍装置37の開閉弁の開閉切替や、圧縮機38のオンオフ切替を行うことで、各室25H,25Cに対応した各熱交換室31,32の冷却器33の作動、又は非作動が制御され、温蔵室25Hと冷蔵室25Cの庫内温度がほぼ設定温度に維持されるようになっている。
【0020】
そして、冷温蔵装置9に内蔵された内蔵時計57の現在時刻が、予め設定された所定時刻となったら、再加熱モードに切り替わる。なお、このような所定時刻は、例えば、食品を配膳する配膳時刻から加熱時間などを逆算することで決定される。再加熱モードにおいては、第1熱交換室31では、冷却器33が非作動とされ、ヒータ34の作動に切り替わる一方、第2熱交換室32では、引き続き冷却器33が作動された状態が維持される。これにより、温蔵室25H内には暖気が循環されて温食が再加熱される一方、冷蔵室25Cには引き続き冷気が循環供給されてチルド保存される。
【0021】
所定時間が経過して配膳時刻となったら、再加熱モードが終了し、併せて運転スイッチがオフとなる。その後、カート10がステーション30から引き出され、トレイXが取り出されて配膳に供されるようになっている。なお、配膳が終了すると、フレームカート20のみが配膳場所に残され、下膳時に用いられる。上述したように、冷温蔵装置9においては、内蔵時計57によって計時された現在時刻に基づいて制御を行う。このため、内蔵時計57の現在時刻を定期的に正しい時刻に設定することが求められる。
【0022】
次に、内蔵時計57の時刻設定について説明する。本実施形態では、1日のうち予め設定された設定時刻を基準として内蔵時計57の時刻設定を行う構成となっている。つまり、本実施形態では、1日に1回の時刻設定を毎日行う。なお、設定時刻としては、冷温蔵装置9を動作させる機会が少ない時間帯で設定することが好ましく、例えば、深夜帯で設定することが好ましい。
【0023】
まず、時刻設定に用いるパラメータである補正値について説明する。本実施形態では、補正値は、1日に生じる内蔵時計57の誤差に相当する値である。なお、内蔵時計57の誤差は、内蔵時計57を構成する部品の精度や経年劣化、及び設置環境(温度など)に起因して生じる。作業者は、例えば、次の(1)式によって補正値を算出する。
【0024】
補正値=(所定日数N1経過後の内蔵時計57の誤差E1)/(所定日数N1)・・・(1)
【0025】
上記誤差E1は、例えば、タッチパネル54を用いて作業者が内蔵時計57を正確な時刻に設定した後、所定日数N1だけ経過させ、その後、実際の時刻(例えば時報や電波時計などによって求めた正確な時刻)と、内蔵時計57が示す現在時刻との差を求めることで算出することができる。なお、所定日数N1は例えば30日(一か月)で設定されるが、これに限定されない。また、以下の説明では、内蔵時計57の時刻が実際の時刻より遅れている場合には、補正値を正の値とし、内蔵時計57の時刻が実際の時刻より進んでいる場合には、補正値を負の値として説明する。例えば、30日で内蔵時計57が180秒遅れる場合、E1=180、N1=30であるから、補正値は「6(秒/日)」である。
【0026】
設定時刻及び補正値は、作業者がタッチパネル54(操作部54B)を操作することで設定することができ、設定された設定時刻及び補正値は、記憶部56に記憶されている。また、記憶部56において、記憶容量の制約などから、符号のない変数として補正値を扱う必要がある場合には、負の補正値については、変数の使用領域のうち、正の補正値に割り当てられている領域外の数に変換して処理を行えばよい。なお、本実施形態では、設定時刻は、例えば、時間単位及び分単位で設定することができる。
【0027】
次に、時刻設定部51における時刻設定の処理について、
図4のフローチャートを用いて説明を行う。
図4に示すように、冷温蔵装置9の電源がオンされると、時刻設定部51は、内蔵時計57の現在時刻を取得し(ステップS11)、記憶部56に記憶されている設定時刻を取得する(ステップS12)。次に、時刻設定部51は、記憶部56に記憶されている補正値を参照し、補正値が0以外である場合(ステップS13が「NO」)には、補正値が、設定可能範囲内の値であるか否かを判断すると共に、正の値であるか負の値であるかを判断する(ステップS14及びステップS15)。また、補正値が0である場合(ステップS13が「YES」)には、ステップS11の処理に戻る。
【0028】
なお、補正値の設定可能範囲は、内蔵時計57に生じ得る誤差に基づいて設定される。例えば、内蔵時計57の誤差が、30日で−380秒〜+90秒の範囲で起こり得る場合には、1日に最大で12.6秒の誤差が想定される。この場合、補正値の設定可能範囲は、例えば、−13秒〜+13秒で設定される。なお、上述の誤差範囲の場合、内蔵時計57の30日の誤差の上限は90秒であるため、補正値の設定可能範囲の上限を例えば+3秒(=90/30)としてもよい。
【0029】
補正値が正の値である場合(ステップS14が「YES」)には、時刻設定部51は、設定時刻に補正値を減算することで、補正時刻を算出する(ステップS16、補正時刻算出処理)。例えば、設定時刻が「1時35分00秒」であり、補正値が「6秒」である場合には、補正時刻は「1時34分54秒」となる。続いて、内蔵時計57の現在時刻が補正時刻になる(ステップS17が「YES」)と、時刻設定部51は、記憶部56に記憶されている内蔵時計57の現在時刻を設定時刻に書き換える(ステップS18)。なお、記憶部56は、例えば、時刻設定に用いるメモリ領域(第1メモリ)と、内蔵時計57が現在時刻として参照する数値が記憶されるメモリ領域(第2メモリ)とを備えている。ステップS18では、例えば、第1メモリに記憶されている現在時刻の値を設定時刻の値に書き換える処理を行う。
【0030】
続いて、時刻設定部51は、記憶部56に記憶されている設定反映フラグをオン(設定反映フラグ=1)にして、第1メモリに書き込まれた設定時刻を第2メモリに書き込む処理を行う。これにより、内蔵時計57の時刻設定が反映される(ステップS19)。これ以降、内蔵時計57は、記憶部56(第2メモリ)に書き込まれた設定時刻を基準として計時を行う。つまり、ステップS18及びS19は、内蔵時計57の現在時刻を設定時刻に変更する時刻変更処理の一例である。
【0031】
次に、時刻設定部51は、所定時間待機した後、設定反映フラグを反転させることでオフ(設定反映フラグ=0)にする(ステップS20)。これにより、次回の時刻設定が可能な状態となる。なお、ステップS20の処理は、所定の条件(例えば設定可能範囲外の時刻が入力される等)を満たすことで設定反映フラグを反転させるプログラムを用いて行ってもよい。
【0032】
ここで、ステップS16〜S19の処理について、具体的な数値を例示して説明する。例えば、補正値が「6秒」である場合には、内蔵時計57は、実際の時刻よりも「6秒」遅れていることになる。補正値が「6秒」で、設定時刻が「1時35分00秒」である場合には、補正時刻は「1時34分54秒」となる。このため、内蔵時計57の現在時刻が「1時34分54秒」になると、時刻設定部51は、内蔵時計57の現在時刻を「1時34分54秒」から「1時35分00秒」に変更する処理を行う。これにより、内蔵時計57の「6秒」の遅れが補正され、内蔵時計57の現在時刻が正確な時刻となる。
【0033】
また、補正値が負の値、且つ設定可能範囲内の値である場合(ステップS15が「YES」)には、時刻設定部51は、設定時刻に補正値の絶対値を加算することで、補正時刻を算出する(ステップS21、補正時刻算出処理)。例えば、設定時刻が「1時35分00秒」であり、補正値が「−4秒」である場合には、補正時刻は「1時35分04秒」となる。続いて、内蔵時計57の現在時刻が補正時刻になる(ステップS22が「YES」)と、時刻設定部51は、記憶部56の第1メモリに記憶されている内蔵時計57の現在時刻を設定時刻に書き換える(ステップS23)。
【0034】
続いて、時刻設定部51は、設定反映フラグをオン(設定反映フラグ=1)にして、第1メモリに書き込まれた設定時刻を第2メモリに書き込む処理を行う。これにより、内蔵時計57の時刻設定が反映される(ステップS24)。これ以降、内蔵時計57は、記憶部56に書き込まれた設定時刻を基準として計時を行う。つまり、ステップS23及びS24は、内蔵時計57の現在時刻を設定時刻に変更する時刻変更処理の一例である。
【0035】
続いて、時刻設定部51は、所定の待機時間だけ待機し(ステップS25)、その後、設定反映フラグをオフ(設定反映フラグ=0)にする(ステップS20)。これにより、次回の時刻設定が可能な状態となる。
【0036】
ここで、ステップS21〜S24の処理について、具体的な数値を例示して説明する。例えば、補正値が「−4秒」である場合には、内蔵時計57は、実際の時刻よりも「4秒」進んでいることになる。補正値が「−4秒」で、設定時刻が「1時35分00秒」である場合には、補正時刻は「1時35分04秒」となる。このため、内蔵時計57の現在時刻が「1時35分04秒」になると、時刻設定部51は、内蔵時計57の現在時刻を「1時35分04秒」から「1時35分00秒」に変更する処理を行う。これにより、「4秒」の進みが補正され、内蔵時計57の現在時刻が正確な時刻となる。
【0037】
なお、補正値が負の値である場合には、ステップS23,S24の処理によって、内蔵時計57の現在時刻が補正値の秒数だけ遡ることになる。このため、ステップS25において、所定の待機時間だけ待機させた後、次の処理(ひいては次回のステップS11の処理)に移るようにしている。この待機時間は、補正値の設定可能範囲の下限値(本実施形態では、−13秒)の絶対値よりも大きい値(例えば30秒)で設定される。これにより、S22〜24の処理が同じ現在時刻(例えば「1時35分04秒」)で、繰り返し行われる事態を防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態において、内蔵時計57の現在時刻を設定時刻に書き換える処理は、例えば、次のように行う。例えば、現在時刻(=補正時刻)が「1時34分54秒」で、設定時刻が「1時35分」である場合には、現在時刻に6秒を加算するのではなく、現在時刻に1分を加算すると共に、現在時刻の秒(54秒)を0秒にリセットする処理を行う。また、例えば、現在時刻が「1時35分4秒」で、設定時刻が「1時35分」である場合には、現在時刻の秒(4秒)を0秒にリセットする処理を行う。このようにすれば、時刻を秒単位で加減算するためのプログラムを実装することなく、秒単位の補正を行うことができる。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、補正値に基づいて算出された補正時刻になった時点で、内蔵時計57の現在時刻が設定時刻に変更される。これにより、内蔵時計57の現在時刻は、補正値の分だけ補正される。このように、本実施形態では、内蔵時計57の時刻設定(時刻補正)を一日一回確実に行うことができ、内蔵時計57の誤差を小さくすることができる。言い換えると、作業者が行う時刻設定の頻度を少なくすることができる。なお、本実施形態では、補正値の単位を秒単位で設定可能な構成となっており、内蔵時計57の誤差を1秒単位で補正することができる。つまり、一日で生じる内蔵時計57の誤差を、±1秒未満に抑えることができるので、30日間で生じる誤差を±30秒未満に抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態では、所定期間に生じる内蔵時計57の誤差を所定期間で割った値を補正値とし、一日毎にその補正値だけ補正を行う。このようにすれば、所定期間(例えば一か月)毎に内蔵時計57の補正を行う構成と比べて、一回の補正量が少なくて済む。このため、冷温蔵装置9を使用する使用者は、内蔵時計57の時刻が補正されたことを認識し難い。この結果、使用者は違和感なく、冷温蔵装置9を使用することができる。また、使用者が手動で内蔵時計57の時刻補正を行う場合には、補正の作業を忘れてしまう事態も懸念されるが、本実施形態では、自動的に補正が行われるので、このような事態を防止することができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図5及び
図6によって説明する。本実施形態では、時刻設定部51が補正値を用いて内蔵時計57の時刻設定を行う点については、上記実施形態と同一であるが、補正値を算出する処理を行う点が相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。上記実施形態で説明したように、冷温蔵装置9においては、作業者は、タッチパネル54に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置9の各種設定を行うことができる。
【0042】
各種設定の一つとして、作業者は、タッチパネル54(操作部54B、入力部の一例)を操作することで、例えば時報などで求めた正確な時刻(例えば時間及び分)を入力し、内蔵時計57の現在時刻を変更することができる。なお、以下の説明では、内蔵時計57の現在時刻をタッチパネル54によって入力された時刻に変更することを手動時刻設定と呼び、上記実施形態で説明した補正値を用いた時刻設定(自動時刻設定)と区別するものとする。
【0043】
本実施形態では、作業者によって入力された時刻及び内蔵時計57の現在時刻を利用して、補正値を算出する処理を行う構成となっている。次に、作業者によって時刻が入力された際の時刻設定部51の処理について、
図5のフローチャートを用いて説明を行う。
図5に示すように、タッチパネル54によって時刻が入力される(ステップS111が「YES」)と、時刻設定部51は、入力された時刻(以下、入力時刻)と、その時点の内蔵時計57の現在時刻を記憶部56に記憶する(ステップS112)。なお、入力時刻には、例えば、時分に係る情報が含まれており、内蔵時計57の現在時刻には、例えば、年月日及び時分秒に係る情報が含まれているが、これに限定されない。
【0044】
次に、時刻設定部51は、内蔵時計57の現在時刻を入力時刻に変更する(ステップS113、入力時刻変更処理)。より具体的には、現在時刻の時分を入力時刻の時分に変更する。これにより、手動時刻設定が完了する。なお、内蔵時計57の誤差は時間が経過すると累積されて大きくなっていくことが一般的であるから、作業者は、手動時刻設定を定期的に行うことが好ましい。時刻設定部51は、手動時刻設定が行われる毎に、入力された入力時刻と、その入力時刻が入力された時点の内蔵時計57の現在時刻とを対応付けて記憶部56に記憶する。
【0045】
次に、手動時刻設定の際に記憶した入力時刻及び現在時刻を用いた補正値の算出処理について、
図6のフローチャートを用いて説明を行う。
図6に示すように、2回目以降の手動時刻設定が完了すると(ステップS211が「YES」)、時刻設定部51は、前回の手動時刻設定時において記憶された内蔵時計57の現在時刻D1を取得する(ステップS212)。より詳しくは、現在時刻D1(第1現在時刻)は、「前回の入力時刻変更処理における入力時刻(第1入力時刻)が入力された時点の内蔵時計57の現在時刻」である。
【0046】
また、時刻設定部51は、今回行われた(より正確には直前に行われた)手動時刻設定において記憶された入力時刻H2及び内蔵時計57の現在時刻D2を取得する(ステップS213)。つまり、入力時刻H2(第2入力時刻)は、今回の入力時刻変更処理においてタッチパネル54によって入力された入力時刻であり、現在時刻D2(第2現在時刻)は、入力時刻H2が入力された時点の内蔵時計57の現在時刻である。なお、現在時刻D2は、入力時刻H2に変更される前の現在時刻である。
【0047】
続いて、時刻設定部51は、以下の(2)式によって補正値を算出する(ステップS214、補正値算出処理)。算出された補正値は、記憶部56に記憶され、補正値を用いた時刻設定の際に用いられる。
補正値=(H2−D2B)/(D2A−D1A)・・・(2)
【0048】
ここで、(2)式におけるD1Aは、現在時刻D1のうち年月日に係る値である。また、D2Aは、現在時刻D2のうち年月日に係る値である。つまり、(2)式の(D2A−D1A)は、前回手動時刻設定を行ってからの期間(日数)である。なお、(D2A−D1A)は、「第2現在時刻と第1現在時刻の差」の一例である。そして、D2Bは、現在時刻D2のうち、時分に係る値である。
【0049】
ここで、作業者によって入力された入力時刻H1,H2は、実際の時刻に基づいた正確な時刻と考えることができる。そして、内蔵時計57の現在時刻は、前回の手動時刻設定において、正しい時刻(入力時刻H1)に補正されている。このため、(2)式の(H2−D2B)は、実際の時刻と内蔵時計57の現在時刻との差である。言い換えると(H2−D2B)は、前回手動時刻設定を行ってから(D2A−D1A)の期間に生じた内蔵時計57の誤差である。なお、(H2−D2B)は、「第2入力時刻と第2現在時刻の差」の一例である。
【0050】
また、本実施形態では、補正値は「1日に生じる内蔵時計57の誤差に相当する値」として設定され、その単位は、例えば(秒/日)である。このため、時刻設定部51では、年月日に係る情報である「D2A−D1A」を「日数」に変換し、時分に係る情報である「H2−D2B」を「秒」に変換して、補正値を算出する。なお、補正値の単位は、(秒/日)に限定されず適宜変更可能であるが、一般的に一日で生じる内蔵時計57の誤差は秒単位であることが多いから、秒を基準として補正値を設定することが好ましい。
【0051】
ここで、ステップS214の補正値算出処理について以下の具体的な数値を例示して説明する。
現在時刻D1=「2015年12月1日8時14分00秒」
D1A=「2015年12月1日」
現在時刻D2=「2015年12月31日13時07分00秒」
D2A=「2015年12月31日」
D2B=「13時07分」
入力時刻H2=「13時10分」
上述した値の時、(H2−D2B)=3分=180秒であり、(D2A−D1A)=30日となる。このため、補正値(秒/日)=180/30=6と算出される。
【0052】
本実施形態によれば、タッチパネル54によって入力された時刻に基づいて内蔵時計57の時刻を変更することができる。これにより、冷温蔵装置9の作業者は、タッチパネル54を用いて正確な時刻を入力することで、内蔵時計57の現在時刻を正しい時刻に補正することができる。そして、本実施形態では、作業者が手動時刻設定を少なくとも2回(前回及び今回)行うことで、制御部50は、内蔵時計57の誤差(式2のH2−D2B)と、経過期間(式2のD2A−D1A)に基づいて、補正値を算出することができる。このような構成とすれば、作業者が補正値を算出して入力する必要がなく、好適である。
【0053】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を
図7から
図9によって説明する。本実施形態では、
図7に示すように、複数台の冷温蔵装置9(
図7において符号9A〜9Nを付す)によって、冷温蔵装置システム5が構成されている。各冷温蔵装置9は、プロトコル変換装置(図示せず)及び、各冷温蔵装置9が備える通信部59(
図3参照)を介してLAN(Local Area Network)などの通信ネットワーク7に接続されている。各冷温蔵装置9は通信ネットワーク7を介して、互いに通信を行うことが可能な構成となっている。通信部59は、他の冷温蔵装置9とのデータの送受信を制御することが可能な構成となっており、通信ネットワーク7としてLANを用いる場合、例えば、LANコントローラなどによって構成されている。また、通信ネットワーク7は、LANに限定されず適宜変更可能である。
【0054】
本実施形態では、複数の冷温蔵装置9のうち、親機として設定された冷温蔵装置9(以下、符号9A)からのデータ配信によって、子機として設定された他の冷温蔵装置9(以下、符号9B〜9N、他の調理機器)の時刻設定を一括して行うことが可能な構成となっている。まず、親機として設定された冷温蔵装置9Aにおける処理について、
図8のフローチャートを用いて説明を行う。
図8に示すように、冷温蔵装置9Aの制御部50は、冷温蔵装置9Aの内蔵時計57の現在時刻を取得し(ステップS311)、この現在時刻と記憶部56に記憶されている配信時刻とが一致するか否かを判定する(ステップS312)。
【0055】
この配信時刻は、親機から子機へのデータ配信が行われる時刻であり、タッチパネル54などによって入力することで適宜設定可能である。なお、配信時刻は、冷温蔵装置9を動作する機会が少ない時間帯で設定することが好ましく、例えば、深夜帯で設定することが好ましい。また補正値による内蔵時計57の時刻設定(上記実施形態1参照)を行った直後であれば、内蔵時計57の時刻の誤差は比較的少ない。このため、配信時刻は、設定時刻よりも少し後の時刻で設定することが好ましい。例えば、補正値による時刻設定の設定時刻が「1時35分00秒」である場合、配信時刻をそれ以降に設定することが好ましく、例えば「2時00分00秒」で設定される。そして、この配信時刻は、冷温蔵装置システム5を構成する冷温蔵装置9A〜9Nの記憶部56に共通の値が記憶されている。
【0056】
図8に示すように、現在時刻が配信時刻と一致する場合(ステップS312が「YES」)には、制御部50は、通信部59(
図3参照)を介して、子機である他の冷温蔵装置9B〜9Nに一括して時刻設定フラグ(時刻設定フラグ=1)を配信する(ステップS313、配信処理)。この時刻設定フラグは、親機が配信時刻になったことを子機に伝える情報である。
【0057】
次に、子機として設定された冷温蔵装置9B〜9Nにおける処理について、
図9のフローチャートを用いて説明を行う。なお、以下の説明では、冷温蔵装置9B〜9Nのうち、例えば冷温蔵装置9Bにおける処理を例示するが、冷温蔵装置9C〜9Nについても同じ処理が実行される。
図9に示すように、冷温蔵装置9Bの制御部50(時刻設定部51)は、冷温蔵装置9Aから配信された時刻設定フラグを受信する(ステップS411が「YES」)と、冷温蔵装置9Bの内蔵時計57(他の調理機器の第1内蔵時計)の現在時刻を記憶部56に記憶されている配信時刻(例えば2時00分00秒)に書き換える(ステップS412)。つまり、時刻設定フラグは、親機(冷温蔵装置9A)から、子機(冷温蔵装置9B〜9N)に配信される「第1内蔵時計の時刻設定に係る情報」の一例である。
【0058】
続いて、制御部50は、記憶部56に記憶されている設定反映フラグをオン(設定反映フラグ=1)にすることで内蔵時計57の時刻設定を反映させる(ステップS413)。つまり、ステップS412及びS413は、内蔵時計57の現在時刻を配信時刻に変更する変更処理である。その後、制御部50は、設定反映フラグを反転させることでオフ(設定反映フラグ=0)にし(ステップS414)、次回の時刻設定を可能な状態とした後、時刻設定フラグを取り消す(時刻設定フラグ=0、ステップS415)。
【0059】
本実施形態によれば、親機である冷温蔵装置9Aが配信時刻になった時点で子機である冷温蔵装置9B〜9Nの内蔵時計57の現在時刻が配信時刻に変更される。これにより、冷温蔵装置9A〜9Nの現在時刻を同期させることができる。そして、本実施形態の冷温蔵装置9Aは、上記実施形態で説明したように、補正値を用いることで内蔵時計57の時刻補正を定期的に行うことができるから、より正確な時刻に他の冷温蔵装置9B〜9Nに時刻設定に係る情報を配信することができる。このため、他の冷温蔵装置9B〜9Nにおいても、より正確な時刻で動作を行うことができる。なお、本実施形態では、冷温蔵装置9Aから冷温蔵装置9B〜9Nに対して、時刻設定フラグを配信する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、冷温蔵装置9Aから冷温蔵装置9B〜9Nに対して配信時刻(時刻の数値情報)を配信する構成としてもよい。しかしながら、時刻設定フラグを配信する構成とすれば、通信に係るデータ量をより少なくすることができ、好適である。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、内蔵時計を備える調理機器として冷温蔵装置9を例示したが、これに限定されない。調理機器としては、内蔵時計の時刻に基づいて動作するものを例示することができ、例えば、オーブン、炊飯器、冷蔵庫などを例示することができる。
(2)上記実施形態では、入力部として、タッチパネル54を例示したが、これに限定されない。入力部は、時刻を入力可能な構成のものであればよく、機械式の入力ボタンなどを例示することも可能である。また、通信部59を介して制御部50と接続可能なコンピュータを備えていてもよく、そのコンピュータから時刻を入力する構成としてもよい。つまり、コンピュータを入力部として用いてもよい。
(3)上記実施形態では、補正値を1日で生じる内蔵時計57の誤差とし、1日1回補正値を用いて内蔵時計57の時刻補正を行う構成を例示したが、補正を行う頻度は、これに限定されない。例えば、2日に1回補正値を用いて内蔵時計57の時刻補正を行ってもよく、その場合には、補正値を2日で生じる内蔵時計57の誤差として設定すればよい。