特許第6815089号(P6815089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815089
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/26 20060101AFI20210107BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B65D1/26 120
   B65D21/02 410
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-70818(P2016-70818)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178400(P2017-178400A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】荒内 隆志
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−037490(JP,A)
【文献】 米国特許第09145234(US,B1)
【文献】 特表2014−517741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/26
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の複数の円形シート状の被成形体を重ねた状態でプレス成形することによって一体的に形成され、各々は、円形形状の底部と、前記底部の外周から外方上方に立ち上がり、その全周に亘って上方に延びるn(nは2以上の自然数)個の襞が形成された同一高さの側壁部とを備え、平面視においてn回回転対称性を有する複数の収納容器において、
ある襞について、平面視において前記底部の中心に対して前記襞を構成する両側の折り目がなす角度である襞角度を、その他の少なくとも一つの襞の襞角度と異ならせることによって、平面視においてnよりも小さい回転対称性を有するものとし、
前記襞角度は、3種類以上あり、
隣り合う襞の襞角度同士の差の大きさにより表される襞角度差の上限値は、円周を前記n等分した場合における中心角である基準角度の20%以下であることを特徴とする、収納容器。
【請求項2】
前記基準角度が、10°以上である場合、
前記襞角度差は、0.4°以上に設定されている、請求項1記載の収納容器。
【請求項3】
前記襞角度差は、0.5°以上に設定されている、請求項2記載の収納容器。
【請求項4】
前記襞角度差は、0.6°以上に設定されている、請求項2記載の収納容器。
【請求項5】
前記襞角度差は、前記基準角度の4%以上に設定されている、請求項1記載の収納容器。
【請求項6】
前記襞角度差は、前記基準角度の5%以上に設定されている、請求項5記載の収納容器
【請求項7】
最大の前記襞角度と最小の前記襞角度との差は2°以下である、請求項1から請求項のいずれかに記載の収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は収納容器に関し、特に、ブランクシートをプレス成型することによって形成される収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙に合成樹脂フィルムを貼り付けたブランクシートをプレス成型することによって収納容器を形成する技術がよく知られている。このような収納容器には、底部と、底部の周縁から立ち上がり、襞状に形成された側壁部とを備えるものがあり、例えば、おかず等の食品を弁当箱において小分にして収納する等の用途で使用される。
【0003】
又、製造効率向上のため、複数のシート状の被成形体を重ねた状態でプレス成形することによって複数の収納容器を一体的に形成する技術が知られている。
【0004】
このように複数のシート状の被成形体を重ねた状態でプレス成形する場合、最上部に位置する収納容器の内寸が最も小さくなり、最下部に位置する収納容器の内寸が最も大きくなる。
【0005】
このような収納容器は、収納容器を使用する食品メーカーにて、人の手で1枚ずつ剥離された後に収納容器を収容するプラスチック成型容器に供給される他、自動機で収納容器の剥離から供給までを自動で行う場合もあるが、自動機で1枚ずつ安定して剥離することが出来ない場合、事前に人の手による剥離工程を経て剥離させた後、自動機で供給している。
【0006】
このため、上に位置する内径の小さい収納容器が下に位置する内寸の大きい収納容器に嵌まり込んでしまい、分離しづらくなることがある。
【0007】
そこで、引用文献1では、重ね合わされた複数の収納容器の分離が容易となるように、これらの各々を等間隔で重ね合わせるための技術が開示されている。
【0008】
すなわち、一体的にプレス成形された複数の収納容器は、上方にいくにつれて内寸が大きくなるように再配置されており、複数の収納容器の各々には、通常の襞と水平断面形状の異なる特定襞が形成されている。これにより、内径の大きな収納容器の上に内径の小さな収納容器を回転させて襞を合わせて重ねたとき、特定襞同士が一致しない状態となる。このため、収納容器間の間隔を十分に保つことができ、重ね合わせたこれらの収納容器の分離が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−37490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、引用文献1の技術では、収納容器の襞の一部(特定襞)の形状が大きく変わるため、収納容器の襞形状が均一とならず、見た目が良くないだけでなく、弁当箱内のスペースに納めにくいといった問題が生じる。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、特定の襞の形状を大きく変えなくても重ね合わせたときに容易に分離できる収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、同一形状の複数の円形シート状の被成形体を重ねた状態でプレス成形することによって一体的に形成され、各々は、円形形状の底部と、底部の外周から外方上方に立ち上がり、その全周に亘って上方に延びるn(nは2以上の自然数)個の襞が形成された同一高さの側壁部とを備え、平面視においてn回回転対称性を有する複数の収納容器において、ある襞について、平面視において底部の中心に対して襞を構成する両側の折り目がなす角度である襞角度を、その他の少なくとも一つの襞の襞角度と異ならせることによって、平面視においてnよりも小さい回転対称性を有するものとし、襞角度は、3種類以上あり、隣り合う襞の襞角度同士の差の大きさにより表される襞角度差の上限値は、円周をn等分した場合における中心角である基準角度の20%以下であることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成すると、収納容器を、その中心を軸に最低角度360°/nから最大角度360°×(n−1)/nの範囲においてピッチ角度360°/nで回転させて重ねたとき、その範囲のいずれかの角度において上下の収納容器の間で襞同士が一致しない状態が発生する。又、複数の襞の全体としては、隣り合う襞同士で襞角度が大幅には変わらなくなる。更に、襞角度差が抑えられる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、基準角度が、10°以上である場合、襞角度差は、0.4°以上に設定されているものである。
【0015】
このように構成すると、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、襞角度差は、0.5°以上に設定されているものである。
【0017】
このように構成すると、上述した回転時における上下の収納容器の間で襞同士の形状の相違がより大きくなると共に、より誤差を許容し易くなる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、襞角度差は、0.6°以上に設定されているものである。
【0019】
このように構成すると、プレス成形により形成された隣り合う襞の両方に誤差が生じても許容し易くなる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、襞角度差は、基準角度の4%以上に設定されているものである。
【0021】
このように構成すると、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、襞角度差は、基準角度の5%以上に設定されているものである。
【0023】
このように構成すると、上述した回転時における上下の収納容器の間で襞同士の形状の相違がより大きくなると共に、より誤差を許容し易くなる
求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、最大の襞角度と最小の襞角度との差は2°以下であるものである。
このように構成すると、最大の襞角度と最小の襞角度との差が抑えられる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、収納容器を、その中心を軸に最低角度360°/nから最大角度360°×(n−1)/nの範囲においてピッチ角度360°/nで回転させて重ねたとき、その範囲のいずれかの角度において上下の収納容器の間で襞同士が一致しない状態が発生するので、特定の襞の形状を大きく変えなくても、上に位置する収納容器が、下に位置する収納容器に嵌まり込むことが抑制でき重ね合わせたときに容易に分離できる。又、複数の襞の全体としては、隣り合う襞同士で襞角度が大幅には変わらなくなるため、見た目の良さを損なわない。更に、襞角度差が抑えられるので、スタッキング高さが高くなり過ぎることを防ぐことができる。
【0025】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなるので、歩留りが向上する。
【0026】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、上述した回転時における上下の収納容器の間で襞同士の形状の相違がより大きくなると共に、より誤差を許容し易くなるので、嵌まり込み抑止効果の向上を図ることができると共に、より品質が向上する。
【0027】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、プレス成形により形成された隣り合う襞の両方に誤差が生じても許容し易くなるので、更に歩留りが向上する。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなるので、歩留りが向上する。
【0029】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、上述した回転時における上下の収納容器の間で襞同士の形状の相違がより大きくなると共に、より誤差を許容し易くなるので、嵌まり込み抑止効果の向上を図ることができると共に、より品質が向上する
求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、最大の襞角度と最小の襞角度との差が抑えられるので、側壁部の場所によって見た目が大きく異なることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の第1の実施の形態による収納容器を示す平面図である。
図2図1で示したII−IIラインから見た正面図である。
図3図1で示した収納容器を複数積み重ねた積層体の製造方法の一部を概略的に示した模式図である。
図4図3で示した製造工程より得られる積層体を複数重ね合わせて積層体群を形成する工程を示す工程図である。
図5図4に示す工程における積層体の回転の仕方を示した図である。
図6】積層体群を図5に示すVI−VIライン視した部分端面図である。
図7】収納容器の側壁部の一部を拡大した拡大平面図である
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、この発明の第1の実施の形態による収納容器を示す平面図であり、図2は、図1で示したII−IIラインから見た正面図である。
【0032】
これらの図を参照して、この実施の形態による収納容器5は、円形形状のブランクシートをプレス成型することによって形成されており、平面視において円形形状の底部11と、底部11の外周から外方上方に立ち上がり、その全周に亘って上方に延びる30個の襞9が連続して形成された側壁部12とを備えている。
【0033】
ブランクシートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)層と、印刷インキ層と、紙シート層と、ワックスコート層とが順に積層されてなる構成である。
【0034】
30個の襞9は、収納容器の側壁部において内方に向かって凸な折り目と、外方に向かって凸な折り目とが交互に形成されてなり、図1に示す直線Aに関し対称に形成されている。以下、直線Aよりも上の襞9(a)〜襞9(o)について説明する。又、以下、同図平面視において底部の中心Sに対して襞9を構成する両側の折り目がなす角度である襞角度θと称し、襞9(a)〜襞9(o)に対応して、θ(a)〜θ(o)と表す。尚、特定の襞を区別する必要が無い場合には、総称的に「襞9」と表記する。
【0035】
襞角度θ(a)〜θ(o)は、それぞれ、11.5°、11.5°、11.5°、12°、12°、12.5°、12.5°、13°、12.5°、12.5°、12°、12°、11.5°、11.5°、11.5°に設定されている。このように、襞9(a)〜襞9(o)の襞角度は、11.5°を最低値、13°を最高値として、隣り合う襞の襞角度の差が±0.5°となるように設定されている。隣り合う襞の襞角度は、即ち0.5°刻みで増減するように設定されている。
【0036】
尚、襞9(h)を境に、襞9(a)〜襞9(g)の襞角度と、襞9(o)〜襞9(i)の襞角度とが、同様に設定されているので、襞9の襞角度は、図1に示す直線Bに関しても対称に形成されているといえる。
【0037】
又、生産効率化のため、収納容器5は、同一形状の複数のブランクシート(円形シート状の被成形体)を重ねた状態でプレス成形することによって一体的に形成されることがあり、更に、収納容器同士を分離し易くするため、いわゆるバラシ工程を行う場合がある。
【0038】
このバラシ工程により、一体的に形成した収納容器5を積み重ね直して積層体を製造する方法について説明する。
【0039】
図3は、図1で示した収納容器を複数積み重ねた積層体の製造方法の一部を概略的に示した模式図である。
【0040】
まず、(1)を参照して、上述した一体的な形成工程により得られた収納容器群80を、水平な作業台41上に載置する。この収納容器群80は一体的に形成されるため、その最上部に位置する収納容器5aの内寸が最も小さく、下部にいくに従って内寸が大きくなっている。ここで、最上部の収納容器5aの底部及び側壁部を吸着ノズル45によって空気を吸引して吸着させる。
【0041】
次に、(2)を参照して、収納容器5aを吸着させた状態のまま吸着ノズル45を作業台41の作業スペースに移動した後、吸着ノズル45による吸着を解除し、収納容器5aを載置する。
【0042】
次に、(3)を参照して、吸着ノズル45の位置を収納容器5aが除かれた収納容器群80に戻し、最上部に位置する収納容器5bの底部及び側壁部を収納容器5aと同様に吸着する。そして、(2)と同様に収納容器5bを吸着した状態のまま吸着ノズル45を移動させ、内寸の小さな収納容器5aの上に内寸の大きな収納容器5bを各々の襞の位置を合わせて相似状に重ねる。収納容器5bは収納容器5aよりも若干内寸が大きいため、互いに接触あるいは近接状態にならない。
【0043】
次に、(4)を参照して、(3)の作業を繰り返すことによって、最も内寸の小さい収納容器5aを最下部として、順に収納容器5b〜5dが配置された積層体3を製造することができる。積層体3では、最下部に位置する収納容器5aの内寸が最も小さく、上部にいくに従って内寸が大きくなっているため、隣り合う収納容器の上下が離間する。
【0044】
次に、このような積層体を複数重ね合わせて積層体群を形成する工程について説明する。
【0045】
図4は、図3で示した製造工程より得られる積層体を複数重ね合わせて積層体群を形成する工程を示す工程図であり、図5は、図4に示す工程における積層体の回転の仕方を示した図であり、図6は、積層体群を図5に示すVI−VIライン視した部分端面図であり、図7は、収納容器の側壁部の一部を拡大した拡大平面図である。
【0046】
まず図4を参照して、複数の同一形状の積層体3a〜3cにおいて、最下部に配置される第1の積層体3aに対して、平面視における第1の積層体3aの回転対称位置と同一の位置から、矢印で示すように第2の積層体3bを回転させて重ね合わせる。より具体的には、図5の(1)を参照して、第2の積層体3bを回転角γ=60°にて回転(すなわち6回回転で元の回転対称位置に戻る)させる。
【0047】
ここで、図7を参照して、以下、襞9の平面視における外方へ凸となる中央部分を谷93と称する(尚、符号は省略する場合がある)。
【0048】
仮に、襞角度が均等に設定されている場合には、襞の数は30個であるので、一つの襞の襞角度は、12°(=360°/30)となり、60°回転は、襞5個分の回転となる。又、この場合、ピッチ角度12°で回転させる限り回転前後で回転対称位置が一致する。
【0049】
これに対し、第2の積層体3bに含まれる各収納容器5では上述の通り襞角度が設定されているため、平面視における底部の中心Sを軸として襞9(h)を襞5個分回転させる場合、襞9(h)の平面視における中央の谷と、襞9(c)の谷との間の角度は、61.25°(=θ(h)/2+θ(g)+θ(f)+θ(e)+θ(d)+θ(c)/2)である。
【0050】
よって、60°回転後の襞9(h)の谷は、元の襞9(c)の谷と一致しない。又、その他の襞の襞角度も均一には設定されていないため、他の襞においても回転前後で谷が一致しない。
【0051】
すなわち、第2の積層体3bの60°回転後、第2の積層体3bの谷と第2の積層体3aの谷とは、図5の(2)に示すように一致しなくなる(図5の(2)では回転前の符号をかっこ書で示している)。このように第1の積層体3aの回転対称位置と第2の積層体3bの回転対称位置とが一致しない状態で互いを重ね合わせる。
【0052】
又、第3の積層体3cにおいては、第1の積層体3aと同一の回転対称位置となるように第2の積層体3bに重ね合わせる。
【0053】
これにより、積層体3a〜3cの各々の回転対称位置は、隣接する上下の積層体の各々の回転対称位置の間で一致しない状態で重ね合わせることになる。
【0054】
このようにして、図6で示す積層体群7が得られる。上述した通り、第1の積層体3aと第2の積層体3bとの回転対称位置は一致していない。そのため、第1の積層体3aの収納容器5dの襞9(c)の内面と第2の積層体3bの収納容器5eの襞9(h)の外面とが接触又は近接する。即ち、これらが干渉した状態となるため、第2の積層体3bがこの状態から下方に移動することを規制することができる。
【0055】
このため、第1の積層体3aの最上部の収納容器5dと第2の積層体3bの最下部の収納容器5eとの分離が容易となる。そして、このような第1の積層体3aと第2の積層体3bとの関係は、第2の積層体3bと第3の積層体3cとの関係においても同様である。
【0056】
このように、収納容器を回転させて(上記では60°)重ね合わせたとき、上下の収納容器の間で襞同士が一致しない状態が発生する。このため、特定の襞の形状を大きく変えなくても、上に位置する収納容器が、下に位置する収納容器に嵌まり込むことが抑制でき重ね合わせたときに容易に分離できる。よって、スタッキングに適した円形容器が得られる。
【0057】
又、襞角度は、0.5°刻みで11.5°、12°、12.5°、13°の間で設定されているため、最大の襞角度と最小の襞角度との差が2°になる。よって、側壁部の場所によって見た目が大きく異なることを抑制できる。
【0058】
尚、上記の実施の形態では、ブランクシート(円形シート状の被成形体)は4層の構成であったが、これに限られない。ブランクシートは、紙シートとこの紙シートに貼り合わされたフィルムとで構成されていてもよく、又、例えば紙シートのみ、フィルムシートのみ、紙シートの両面にフィルムシートを貼り合わせたもの又はアルミ箔等、他の素材で構成されていてもよい。
【0059】
又、上記の実施の形態では、襞の数が30個であったが、これに限られず、襞の数は、n(nは2以上の自然数)個であってもよい。又、襞の数は、4の倍数、例えば、36個であってもよい。又、襞の数をn(nは2以上の自然数)とすると、襞角度は、平面視においてnよりも小さい回転対称性を有するように設定されていてもよい。このように構成すると、収納容器を、その中心を軸に最低角度360°/nから最大角度360°×(n−1)/nの範囲においてピッチ角度360°/nで回転させて重ねたとき、その範囲のいずれかの角度において上下の収納容器の間で襞同士が一致しない状態が発生するので、特定の襞の形状を大きく変えなくても、上に位置する収納容器が、下に位置する収納容器に嵌まり込むことが抑制でき重ね合わせたときに容易に分離できる。
【0060】
更に、上記の実施の形態では、襞角度は、0.5°刻みで4段階で増減するように設定されていたがこれには限られない。襞角度それぞれが、互いに異なっていてもよい。又、ある襞の襞角度が、その他の少なくとも一つの襞の襞角度と異なるように各襞角度が設定されていればよい。
【0061】
更に、上記の実施の形態では説明しなかったが、隣り合う襞同士については、襞角度の差が、所定角度以下に設定することが好ましい。このように構成すると、複数の襞の全体としては、隣り合う襞同士で襞角度が大幅には変わらないため、見た目の良さを損なわない。
【0062】
更に、上記の実施の形態では、最大の襞角度と最小の襞角度との差が2°であることを説明したが、これに限られず、その差を2°以下とすることも可能である。このように構成することで、上述の通り、側壁部の場所によって見た目が大きく異なることを抑制できる。又、上記の実施の形態では説明しなかったが、収納容器をスタッキングする際に、スタッキング高さが高くなり過ぎることを防ぐこともできる。
【0063】
ところで、収納容器のプレス成形の過程で、襞の数に応じて、襞角度の誤差が生じる。襞の数が30個の場合、襞角度の誤差が±0.2〜0.3°程度ランダムで生じ得る。
【0064】
このため、隣り合う襞の襞角度同士の差の大きさにより表される襞角度差は、0.4°以上に設定されていることがより好ましい。このように構成すると、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなるので、歩留りが向上する。
【0065】
又、襞角度差は、0.5°以上に設定されていることが更に好ましく、襞角度差が、0.6°以上に設定されていればより一層好ましい。このように構成すると、プレス成形により形成された隣り合う襞の一方に誤差が生じても許容し易くなるので、歩留りが向上する。
【0066】
ここで、図7を再び参照して、以下の説明では、襞と襞との間の内方側へ凹となる部分、言い換えれば襞9の両側の根本部分を山91、92と称する。又、山91、92を通る線分Pと、線分Pに平行で谷93を通る線分Qとの間隔を襞の深さDと称する。
【0067】
更に、上記の実施の形態では説明しなかったが、収納容器は、側壁部と底部とのなす角度である側壁角度に応じて、襞の数、襞高さ(即ち側壁部の高さ)及び収納容器上方の開口の口径(各襞の山それぞれを通る円周で規定されるものとする)を設定することが可能である。
【0068】
例えば、襞角度、襞高さと、分離のし易さの間には次のような傾向がある。すなわち、襞角度が大きく(襞の数が少なく)、且つ、襞高さが低い(側壁がより倒れている/容器口径が大きい/襞の深さDが小さい)ものは、より分離し易い傾向がある。
【0069】
これに対して、襞角度が小さく(襞数が多く)、且つ、襞高さが高い(側壁がより立ち上がっている/口径が小さい/襞の深さDが大きい)ものは、より分離しにくい傾向がある。
【0070】
更に、上記の実施の形態では説明しなかったが、スタッキングするのにより適した収納容器、すなわち、上に位置する収納容器が、下に位置する収納容器に嵌まり込むことを効果的に抑制し、容易に分離できる収納容器を得るには、上記の相関関係や傾向を考慮し、襞角度差を適切に設定することが望ましい。
【0071】
具体的には、襞の数が少なくなるのに伴い、襞角度差を大きくすることが好ましい。一方、襞の数が増加するのに伴い、襞角度差を小さくすることが好ましい。ここで、円周をn等分したときの中心角を以下「基準角度」と称する。言い換えれば、基準角度は、ある襞の数の場合において、仮に各襞角度を等しく設定したときの角度である。上述のような襞の数に応じた襞角度差の設定は、基準角度を基準に所定の割合で決定することができる。
【0072】
具体的には、襞角度差は、基準角度の4%以上に設定することが好ましく、基準角度の5%以上に設定することがより好ましい。このように設定すると、上述のような嵌まり込みを防ぐことができ、スタッキングにより適した収納容器が得られる。又、誤差を許容し易くなるので、収納容器の品質の向上を図ることができる。
【0073】
又、襞角度差は、基準角度の20%以下に設定することがより好ましい。このように設定すると、スタッキング高さが高くなり過ぎることを防ぐことができる。
【0074】
襞の数、基準角度に対する好ましい襞角度差の上限値及び下限値について、具体的に説明すると表1に示す通りである。
【0075】
【表1】
まず、上記実施の形態のように、襞の数が30個の場合、基準角度は12°となるところ、襞角度差の下限値は、基準角度の4%以上、すなわち0.48°(=12°×0.04)以上に設定することが好ましい。つまり、この設定の場合、襞角度が12°となる襞の隣の襞の襞角度は、12.48°(=12°+0.48°)以上、又は、11.52°(=12°−0.48°)以下に設定することが好ましい。
【0076】
又、襞角度差のより好ましい下限値は、基準角度の5%以上、すなわち0.6°(=12°×0.05)以上に設定することがより好ましい。つまり。この設定の場合、襞角度が12°となる襞の隣の襞の襞角度は、12.6°(=12°+0.6°)以上、又は、11.4°(=12°−0.6°)以下に設定することが好ましい。
【0077】
又、襞角度差の上限値は、基準角度の20%以下、すなわち2.4°以下に設定することが好ましい。例えば、襞角度差が2.4°の場合、襞角度が12°となる襞の隣の襞の襞角度は、小さいほうで9.6°(=12°−2.4°)となるか、あるいは大きいほうで14.4°(=12°+2.4°)となる。
【0078】
次に、襞の数が32個の場合、基準角度は11.25°となるところ、襞角度差の下限値は、基準角度の4%以上の0.45°(=11.25°×0.04)以上に設定することが好ましく、基準角度の5%以上の0.5625°(=11.25°×0.05)以上に設定することがより好ましい。
【0079】
又、襞角度差の上限値は、基準角度の20%以下、すなわち2.25°以下に設定することが好ましい。
【0080】
次に、襞の数が36個の場合、基準角度は、10°となるところ、襞角度差の下限値は、基準角度の4%以上の0.4°(=10°×0.04)以上に設定することが好ましく、基準角度の5%以上の0.5°(=10°×0.05)以上であることがより好ましい。
【0081】
又、襞角度差の上限値は、基準角度の20%以下、すなわち2°以下に設定することが好ましい。
【0082】
更に、上記の実施の形態では、図3を用いて、4枚のシートを一体的にプレス成形した収納容器群の例を示したが、4枚に限らず2枚以上の複数枚のシートによって構成されていてもよい。
【0083】
更に、上記の実施の形態では、3個の積層体によって積層体群が形成されているが、積層体群は少なくとも2個以上の積層体によって構成されていればよい。
【0084】
更に、上記の実施の形態では、積層体を複数重ね合わせて積層体群を形成する工程において、積層体5bを60°回転させたがこれに限られない。上述したように最低角度360°/nから最大角度360°×(n−1)/nの範囲においてピッチ角度360°/nで回転させてもよい。
【0085】
更に、上記の実施の形態では、積層体を複数重ね合わせて積層体群を形成する工程において、積層体を回転させたが、積層体に含まれる収納容器1つ1つを、個別に回転させてもよい。
【符号の説明】
【0086】
3…積層体
5…収納容器
7…積層体群
9…襞
11…底部
12…側壁部
91…谷
92、93…山
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7