特許第6815110号(P6815110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000002
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000003
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000004
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000005
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000006
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000007
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000008
  • 特許6815110-モータ装置および枠体の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815110
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】モータ装置および枠体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20210107BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20210107BHJP
   F16H 57/039 20120101ALI20210107BHJP
【FI】
   H02K7/06 A
   H02K15/14 Z
   F16H57/039
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-138801(P2016-138801)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-11436(P2018-11436A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 崇
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−079759(JP,A)
【文献】 特開2010−252622(JP,A)
【文献】 特開平07−336938(JP,A)
【文献】 特開2006−325304(JP,A)
【文献】 特開平10−131967(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0268910(US,A1)
【文献】 中国実用新案第204539949(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16H 57/039
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、
前記モータの駆動力により回転する軸体と、
前記軸体を支持する枠体と、を備え、
前記枠体は、基部、軸支持部、および被固定部を有しており、
前記基部は、前記軸支持部が支持する前記軸体の軸方向に沿って配置されており、
前記被固定部は、前記基部から延出し、前記枠体を他の部材に固定する部分であり、
前記被固定部には、半抜き加工により形成された前記基部との段差であり、前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法を調整する調整部が設けられ
前記被固定部には、前記段差の高さ方向に貫通されたねじ穴が形成されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記基部は、その一方の板面を前記軸体側に向けて配置された平板部であり、
前記軸支持部は、前記軸体を前記基部と平行に支持しており、
前記被固定部は、前記基部の側面の一部から該基部の平面方向外側に延出した平板部であることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記枠体は単一の板金素材により構成されており、
前記軸支持部は、前記基部から前記軸体側に折り曲げられた起立部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記枠体は、前記被固定部のみが前記他の部材と接触していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記軸体は、前記モータの駆動力により回転する円筒状の回転筒部と、該回転筒部の筒内に挿通された支軸部と、を有しており、
前記回転筒部の外周面には螺旋溝が形成されており、
前記軸支持部は、前記支軸部を支持していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項6】
軸体を支持する枠体の製造方法であって、
前記枠体は単一の板金素材により構成されており、
前記枠体は、基部、軸支持部、および被固定部を有しており、
前記基部は、その一方の板面を前記軸体側に向けて配置される平板部であり、
前記軸支持部は、前記基部から前記軸体側に折り曲げられ、前記軸体を前記基部に沿って支持する起立部であり、
前記被固定部は、前記基部の側面の一部から該基部の平面方向外側に延出し、前記枠体を他の部材に固定する平板部であり、
前記被固定部には、その厚み方向に貫通されたねじ穴が形成され、
前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法が所定の基準値と一致するように、前記被固定部の半抜き量を調節する工程を含むことを特徴とする枠体の製造方法。
【請求項7】
前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法と、所定の基準値とに誤差がある場合に、前記被固定部の半抜き量を再調節する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の枠体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ装置および枠体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電子機器のシャーシにモータを取り付けるモータ取り付け板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−264543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、モータの回転運動を直線運動に変換するリードスクリューを備える機器において、リードスクリューに組み合わせられるナット部材の位置が予め決められている場合、リードスクリューの位置をナット部材の位置に正確に一致させる必要がある。特に、このような機器が小型であり、さらに精密な動作が要求されるような場合には、リードスクリューの支持部材には高い位置決め精度が求められる。これは、ウォームギヤなど他の回転軸を備える機器においても同様である。
【0005】
このような回転軸の支持部材に用いられる素材の寸法に個体間の誤差がある場合、この誤差が、回転軸と、その回転軸に組み合わされる部材との動作精度を低下させる原因となる。また、上記特許文献1のように、単一の板金素材を曲げ加工により支持部材に成形している場合には、このような誤差に合わせてプレス金型を調節する必要があり、支持部材の生産効率が低下する。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、モータの駆動力により回転する軸体を支持する枠体であって、これに用いられる素材の寸法誤差を柔軟に吸収可能な枠体を備えるモータ装置、およびこのような枠体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のモータ装置は、駆動源であるモータと、前記モータの駆動力により回転する軸体と、前記軸体を支持する枠体と、を備え、前記枠体は、基部、軸支持部、および被固定部を有しており、前記基部は、前記軸支持部が支持する前記軸体の軸方向に沿って配置されており、前記被固定部は、前記基部から延出し、前記枠体を他の部材に固定する部分であり、前記被固定部には、半抜き加工により形成された前記基部との段差であり、前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法を調整する調整部が設けられ、前記被固定部には、前記段差の高さ方向に貫通されたねじ穴が形成されていることを特徴とする。また、前記基部は、その一方の板面を前記軸体側に向けて配置された平板部であり、前記軸支持部は、前記軸体を前記基部と平行に支持しており、前記被固定部は、前記基部の側面の一部から該基部の平面方向外側に延出した平板部であることが好ましい。
【0008】
枠体の基部から延びた被固定部に、半抜き加工により形成された調整部を設けることにより、基部や被固定部に用いられる素材の厚み誤差を、その調整部の段差幅で吸収することができる。この枠体で軸体を支持することにより、被固定部の下面(他の部材との接触面)から軸体までの高さ寸法を一定に維持することが可能となり、軸体と、軸体に組み合わされる部材との位置精度を高めることができる。また、金型の半抜き量の調節は、曲げ加工など他の加工方法の場合に比べて容易であるため、生産効率への影響を抑えつつ、素材の厚み誤差に柔軟に対処することが可能となる。
【0010】
また、例えば、段曲げ加工などにより調整部を形成する場合、調整部の段差幅に応じて被固定部の下面の面積が変動する。この被固定部にねじ穴が形成されていた場合、調整部の段差幅が変化することによりねじ穴の位置まで移動することとなり、枠体と、枠体が固定される他の部材との適合性が損なわれる。一方、本発明の調整部は、半抜き加工により形成された段差であることから、被固定部は、ねじ穴と他の部材との位置関係を保ったまま基部に対して上下することができる。そのため、本発明の調整部は、枠体が固定される他の部材との適合性を損なうことなく、調整部の段差幅を調節することができる。
【0011】
また、前記枠体は単一の板金素材により構成されており、前記軸支持部は、前記基部から前記軸体側に折り曲げられた起立部であることが好ましい。
【0012】
単一の板金素材で枠体を形成することにより、枠体を構成する部品点数、およびその組み立て公差が抑えられ、枠体による軸体の位置決め精度を高めることができる。このとき、枠体の基部と軸体との距離は修正不能に固定されることとなるが、本発明の枠体は被固定部に調整部を有しており、調整部の段差幅を調節することで板金部材の厚み誤差を吸収することができるため、被固定部の下面から軸体までの高さ寸法を一定に維持することができる。
【0013】
また、前記枠体は、前記被固定部のみが前記他の部材と接触していることが好ましい。
【0014】
枠体の基部の下面が他の部材と接触する場合、基部および他の部材の面精度の乱れが軸体の位置に影響するおそれがある。被固定部の下面のみを他の部材と接触させる構成とすることにより、このような影響を最小化することができる。
【0015】
また、前記軸体は、前記モータの駆動力により回転する円筒状の回転筒部と、該回転筒部の筒内に挿通された支軸部と、を有しており、前記回転筒部の外周面には螺旋溝が形成されており、前記軸支持部は、前記支軸部を支持していることが好ましい。
【0016】
回転筒部の筒内に支軸部が挿通され、回転筒部がその全長において支軸部に支持される構成とすることにより、軸体の傾きやたわみが抑えられ、軸体と、軸体に組み合わされる部材との位置精度をさらに高めることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明の、軸体を支持する枠体の製造方法は、前記枠体は単一の板金素材により構成されており、前記枠体は、基部、軸支持部、および被固定部を有しており、前記基部は、その一方の板面を前記軸体側に向けて配置される平板部であり、前記軸支持部は、前記基部から前記軸体側に折り曲げられ、前記軸体を前記基部に沿って支持する起立部であり、前記被固定部は、前記基部の側面の一部から該基部の平面方向外側に延出し、前記枠体を他の部材に固定する平板部であり、前記被固定部には、その厚み方向に貫通されたねじ穴が形成され、前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法が所定の基準値と一致するように、前記被固定部の半抜き量を調節する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
枠体の基部からその平面方向に延びた被固定部に、半抜き加工により形成された基部との段差である調整部を設けることで、枠体に用いられる板金部材の厚み誤差を、その調整部の段差幅で吸収することができる。この枠体で軸体を支持することにより、被固定部の下面から軸体までの高さ寸法を一定に維持することが可能となり、軸体と、軸体に組み合わされる部材との位置精度を高めることができる。また、金型の半抜き量の調節は、曲げ加工など他の加工方法の場合に比べて容易であるため、生産効率への影響を抑えつつ、素材の厚み誤差に柔軟に対処することが可能となる。また、単一の板金素材で枠体を形成することにより、枠体を構成する部品点数、およびその組み立て公差が抑えられ、枠体による軸体の位置決め精度を高めることができる。このとき、枠体の基部と軸体との距離は修正不能に固定されることとなるが、本発明の枠体は被固定部に調整部が形成され、調整部の段差幅を調節することで板金部材の厚み誤差を吸収することができるため、被固定部の下面から軸体までの高さ寸法を一定に維持することができる。また、例えば、段曲げ加工などにより調整部を形成する場合、調整部の段差幅の大きさに応じて被固定部の下面の面積が変動する。この被固定部にねじ穴が形成されていた場合、調整部の段差幅が変化することによりねじ穴の位置まで移動することとなり、枠体と、枠体が固定される他の部材との適合性が損なわれる。一方、本発明の調整部は、半抜き加工により形成された段差であることから、被固定部は、ねじ穴と他の部材との位置関係を保ったまま基部に対して上下することができる。そのため、本発明の調整部は、枠体が固定される他の部材との適合性を損なうことなく、調整部の段差幅を調節することができる。
【0019】
また、上記枠体の製造方法は、前記被固定部の前記他の部材との接触面から前記軸体の支持位置までの高さ寸法と、所定の基準値とに誤差がある場合に、前記被固定部の半抜き量を再調節する工程をさらに含むことが好ましい。
【0020】
金型の半抜き量の調節は、曲げ加工など他の加工方法の場合に比べて容易であるため、成形した枠体の上記高さ寸法に基準値との誤差があった場合でも、容易に再調節することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のモータ装置および枠体の製造方法によれば、モータの駆動力により回転する軸体を支持する枠体に用いられる素材の寸法誤差を柔軟に吸収し、軸体と、軸体に組み合わされる部材との位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態にかかるモータ装置の外観を示す斜視図である。
図2】モータ装置の側面図である。
図3図2のモータ装置のM−M断面図である。
図4図2のモータ装置のN−N断面図である。
図5】フレームの外観を示す斜視図である。
図6】フレームの正面図である
図7】フレームの高さ寸法を再調節する例を示す側面図である。
図8】モータ装置の変形例を示す側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
〔全体構成〕
図1は、本実施形態にかかるモータ装置10の外観を示す斜視図である。図2は、モータ装置10の側面図である。モータ装置10は、主に、駆動源であるモータ200、モータ200の駆動力により回転する軸体であるリードスクリュー300、およびリードスクリュー300を支持する枠体であるフレーム400により構成されている。モータ装置10は、例えば光学ドライブの光ピックアップ機構や、カメラのフォーカス機構などに組み込まれ、これら各機構に応じた図示しないナット部材がリードスクリュー300に組み合わされる。これにより、モータ装置10は、モータ200の回転運動を直線運動に変換する。
【0027】
〔モータの構成〕
図3は、図2のモータ装置10のM−M断面図である。以下、図3を参照してモータ200の構造について説明する。
【0028】
本実施形態のモータ200は、いわゆるPM型のステッピングモータである。モータ200は、リードスクリュー300および永久磁石221により構成されるロータ220、および、永久磁石221の外周面に所定のエアギャップを挟んで対向配置されたステータ210を備えている。
【0029】
モータ200は、軸方向に並べて配置された2相のステータ210を備えている。各ステータ210は、駆動コイル211が巻回されたボビン212、ボビン212をその外側から覆うように支持する外ヨーク213、および、ボビン212を外ヨーク213との間で内側から挟むように配置された内ヨーク214により構成されている。外ヨーク213は、永久磁石221との対向面に、周方向に沿って所定のピッチで配置された複数の極歯213aを有しており、同様に、内ヨーク214も、永久磁石221との対向面に、極歯213aと同じピッチで周方向に沿って配置された複数の極歯214aを有している。極歯213aおよび極歯214aは周方向に交互に並べて配置されている。また、本実施形態の外ヨーク213は、モータ200のケース部材も兼ねている。
【0030】
永久磁石221は、周方向にN極とS極が交互に着磁されたフェライト磁石や、同様に着磁されたネオジム磁石等の希土類磁石である。永久磁石221は、ステータ210ごとに軸方向に並べて配置されている。本実施形態の各永久磁石221は円筒形状に形成されており、リードスクリュー300の外周面に接着固定されている。
【0031】
また、モータ200は、リードスクリュー300の基端側(駆動源側)の端部を支持する軸受231、および、ばね部241の弾性力により軸受231を介してリードスクリュー300をその先端側へ付勢する付勢部材としての板ばね240を備えている。軸受231および板ばね240はステータ210に結合されたキャップ部232に支持されている。なお、モータ200とモータ取付部422とは溶接等の手段によって相互に固定されている。
【0032】
なお、本発明のモータはモータ200には限定されず、軸体を回転させる駆動力を出力可能であることを要件として、他のモータを用いることもできる。また、本実施形態のモータ200は、リードスクリュー300を直接回転させるダイレクトドライブモータであるが、本発明の軸体はモータと分離されていてもよい。例えば、モータの駆動力を減速歯車列により減速して軸体に伝達するような構成でもよい。
【0033】
〔リードスクリューの構成〕
リードスクリュー300は、ステンレス鋼、アルミニウムあるいは黄銅等の金属で形成された回転軸である。リードスクリュー300はその基端側がモータ200に収容されており、先端側はモータ200から突出している。リードスクリュー300の外周面には螺旋溝が形成されており、図示しないナット部材がこれに螺合される。モータ200の端子260(図1および図2参照)に電力が供給され、モータ200が駆動することにより、ナット部材はリードスクリュー300に沿って直線方向(リードスクリュー300の延在方向)に往復移動する。
【0034】
図4は、図2のモータ装置10のN−N断面図である。図3および図4に示されるように、リードスクリュー300の基端部および先端部には断面V字状の凹部310,320が形成されており、これら凹部310,320はそれぞれ、鋼球233,424を介して軸受231,423に支持されている。より具体的には、リードスクリュー300の先端部に形成された凹部310は、鋼球424を介して軸受423に支持されており、リードスクリュー300の基端部に形成された凹部320は、鋼球233を介して軸受231に支持されている。
【0035】
〔フレームの構成〕
図5は、フレーム400の外観を示す斜視図である。なお、以下の説明において、「軸方向」とは、フレーム400に支持されたリードスクリュー300の軸方向をいい、図5に示される座標軸表示のX軸方向に平行な方向をいう。同様に、「軸方向先端側」とは、リードスクリュー300の先端側に向かう方向をいい、同座標軸表示のX方向をいう。「軸方向基端側」とは、リードスクリュー300の基端側に向かう方向をいい、同座標軸表示のX方向をいう。また、「板幅」とは、同座標軸表示のY軸方向におけるフレーム400の長さをいい、「上」、「下」、および「高さ」とは、同座標軸表示のZ軸方向における上下方向をいう。
【0036】
フレーム400は単一の板金素材により形成されている。フレーム400は、主に、基部410、軸支持部420、および被固定部430により構成されている。基部410は、その一方の板面をリードスクリュー300側に向けて配置された平板部である。軸支持部420は、基部410から上方に折り曲げられた起立部であり、リードスクリュー300を基部410と平行に支持している。被固定部430は、基部410の側面の一部から基部410の平面方向外側に延出した平板部である。
【0037】
(基部)
基部410は、軸方向に沿って延びる両辺を長辺とする略矩形の平板部である。基部410の軸方向先端側の端部は、リードスクリュー300の直径よりもやや大きい程度の板幅に形成されており、同端部の近傍部は、同端部に向かってその板幅がしだいに小さくなるように形成されている。基部410のその他の部分の板幅はモータ200の直径と同程度の大きさに形成されている。
【0038】
(軸支持部)
本実施形態の軸支持部420は、基部410の軸方向両端に設けられている。軸支持部420は、基部410の軸方向先端側に設けられた軸先支持部421と、軸方向基端側に設けられたモータ取付部422とにより構成されている。軸先支持部421およびモータ取付部422は、軸方向から見たときに、上部が半円形状に形成されている。
【0039】
軸先支持部421およびモータ取付部422は、基部410の端部から連続して折り曲げられた部分であるため、それぞれ板幅が異なっている。すなわち、軸先支持部421の板幅はリードスクリュー300の直径よりもやや大きい程度に形成されており、軸先支持部422の板幅はモータ200の直径と同程度の大きさに形成されている。軸先支持部421およびモータ取付部422にはそれぞれ、厚み方向に貫通された穴部421a、422aが形成されている。穴部421a、422aの径方向中心は上下方向および板幅方向において一致しており、リードスクリュー300はこれら穴部421a、422aに挿通されて軸支持部420に支持される。これにより、軸支持部420は、リードスクリュー300を、基部410と平行に、基部410から一定の距離で支持する。なお、本発明の軸体は常に基部と平行に配置されている必要はなく、基部に対して多少傾いた角度で配置されていてもよい。
【0040】
本実施形態のモータ装置10は、モータ200がダイレクトドライブモータであるため、リードスクリュー300の基端部はモータ200内に収容されている。そのため、モータ取付部422はモータ200ごとリードスクリュー300の基端部を支持しているが、例えばモータと軸体とが分離しており、リードスクリュー300の基端部をモータ取付部422が直接支持する構成としてもよい。
【0041】
また、本実施形態の軸支持部420は、単一の板金素材により基部410や被固定部430と一体に成形されているが、軸支持部420は、基部410に沿ってリードスクリュー300を固定距離で支持可能であることを要件として、基部410に直接または他部材を介して結合された別部材であってもよい。
【0042】
(被固定部)
被固定部430は、フレーム400を他の部材Bに固定する略矩形の平板部である。本実施形態の被固定部430は、基部410の板幅方向の両側面から板幅方向外側へそれぞれ2つずつ延出している。各被固定部430はその中央に、厚み方向に貫通されたねじ穴432が形成されている。また、各被固定部430の基端部には、半抜き加工により形成された基部410との段差である調整部431が設けられている。
【0043】
本実施形態のフレーム400は単一の板金素材により構成されている。これにより、フレーム400を構成する部品点数、およびその組み立て公差が抑えられており、フレーム400によるリードスクリュー300の位置決め精度が高められている。一方、板金素材には、わずかではあるが個体間で板の厚み寸法に誤差(違い)が生じることがある。この場合でも、軸支持部420は、板金素材の厚み誤差に左右されることなく、リードスクリュー300を、基部410に対して平行に、基部410から一定の距離で支持することができる。しかし、被固定部430の下面からリードスクリュー300までの高さ寸法は板金素材の厚み寸法の誤差(違い)により変動するため、かかる誤差はリードスクリュー300の高さ方向の位置決め精度を損なうおそれがある。
【0044】
図6は、フレーム400を軸先支持部421側から見た正面図である。図6に示されるように、フレーム400の被固定部430は、調整部431を有していることにより、その上下方向における位置を変化させることができる。これは、調整部431の段差幅を板金素材の実寸に応じて調節することにより、板金素材の厚み誤差を吸収することができるということである。
【0045】
このように、本実施形態のモータ装置10は、フレーム400の被固定部430に調整部431が設けられており、このフレーム400でリードスクリュー300を支持していることにより、被固定部430の下面からリードスクリュー300までの高さ寸法を一定に維持することが可能とされている。これにより、リードスクリュー300とナット部材との動作精度の乱れが抑制されている。さらに、金型の半抜き量の調節は、曲げ加工など他の加工方法の場合に比べて容易であるため、本実施形態のモータ装置10は、生産効率への影響を抑えつつ、板金素材の厚み誤差に柔軟に対処することが可能とされている。
【0046】
また、例えば段曲げ加工などにより調整部を形成する場合、調整部の段差幅に応じて被固定部の下面の面積が変動する。この被固定部にねじ穴が形成されていた場合、調整部の段差幅が変化することによりねじ穴の位置まで移動することとなり、枠体と、枠体が固定される他の部材との適合性が損なわれる。一方、本実施形態の調整部431は、半抜き加工により形成された段差であることから、被固定部430は、ねじ穴432と他の部材Bとの位置関係を保ったまま基部410に対して上下することができる。これにより、本実施形態の調整部431は、フレーム400が固定される他の部材Bとの適合性を損なうことなく、調整部431の段差幅を調節することが可能とされている。
【0047】
また、フレーム400は単一の板金素材により構成されているため、被固定部430の厚みは基部410の厚みと同一となる。そして、本実施形態の被固定部430は、半抜き加工により、調整部431の段差幅だけ下方に押し下げられている。そのため、被固定部430の下面は、基部410の下面よりも下方に迫り出している。これにより、フレーム400を他の部材Bにねじ固定するときには、被固定部430の下面のみが他の部材Bに接触することとなる。例えば、フレーム400の基部410の下面が他の部材Bと接触する場合、基部410と他の部材Bとの接触面の面精度がリードスクリュー300の位置に影響するおそれがある。本実施形態では、被固定部430の下面のみを他の部材Bと接触させる構成とすることにより、このような影響が最小化されている。
【0048】
〔変形例〕
図8は、モータ装置10の変形例であるモータ装置11の側面視断面図である。以下の説明では、先の実施形態と同一または同様の機能を有する構成については、先の実施形態と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
モータ装置11の軸体であるウォームギヤ350は、駆動源であるモータ201の駆動力により回転する円筒状の回転筒部351と、回転筒部351の筒内に挿通された支軸部352とにより構成されている。モータ201の駆動力は、ギヤボックス500内に配置された図示しない減速歯車列により減速されて回転筒部351に伝達される。そして、フレーム400の軸支持部420は、ウォームギヤ350の支軸部352を支持している。なお、本変形例においても、支軸部352の基端部はモータ201内に収容されているため、モータ取付部422は、ギヤボックス500およびモータ201ごと支軸部352の基端部を支持している。
【0050】
本変形例では、回転筒部351の筒内に支軸部352が挿通され、回転筒部351がその全長において支軸部352に支持されていることにより、ウォームギヤ350の傾きやたわみが抑えられている。これにより、ウォームギヤ350と、ウォームギヤ350に組み合わせられる図示しないウォームホイールとの動作精度が高められている。
【0051】
〔フレームの製造方法〕
図7は本実施形態のフレーム400の高さ寸法を再調節する工程を示す側面図である。図7(a)に示すように、成形したフレーム400の、被固定部430の下面430aからリードスクリュー300の支持位置Aまでの高さ寸法Dと、所定の基準値Rと間に誤差がある場合、金型の半抜き量を微修正して調整部431の段差幅を調節する。そして、図7(b)に示すように、高さ寸法Dと所定の基準値Rとが一致するまで金型の微修正を繰り返す。このように、金型の半抜き量の調節は、曲げ加工など他の加工方法の場合に比べて容易であるため、成形品の高さ寸法Dに基準値Rとの誤差があった場合でも、生産効率への影響を抑えつつ、柔軟に対処することができる。
【0052】
図7の例では、成形後のフレーム400の高さ寸法Dと基準値Rとの誤差から調整部431の調整量を測っているが、当然、板金素材の厚み誤差を予め計測して、当初から基準値Rと一致するように金型の半抜き量を設定してもよい。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10,11 モータ装置
200,201 モータ
300 リードスクリュー(軸体)
350 ウォームギヤ(軸体)
351 回転筒部
352 支軸部
400 フレーム(枠体)
410 基部
420 軸支持部
421 軸先支持部
422 モータ取付部
430 被固定部
430a 下面(他の部材との接触面)
431 調整部
432 ねじ穴
A 軸体の支持位置
B 他の部材
D 被固定部の下面から軸体の支持位置までの距離
R 所定の基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8