(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815120
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】エレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーション方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20210107BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/42
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-147124(P2016-147124)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-14916(P2018-14916A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康雄
【審査官】
松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−303478(JP,A)
【文献】
Scientific Reports,2013年,p.1-7,doi:10.1038/srep03370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の被検細胞及び導入物質で組成され、液組成の異なる細胞懸濁液を含む検査対象の細胞懸濁液が収納されている複数のウェルと、
前記ウェルに対応して設けられる複数の電極部であって、前記電極部の各々が前記細胞懸濁液に浸漬されるように支持されている複数電極を含む複数の電極部と、
測定用交流電圧を含む測定用電圧及び前記ウェル内の前記被検細胞にエレクトロポレーションを生じさせるインパルス電圧を発生する電源部であって、前記被検細胞に細胞死を誘発しないように、前記測定用交流電圧を前記インパルス電圧に比べて低い低電圧に設定する電源部と、
測定モードにおいて、前記電源部から前記電極部の前記電極に前記測定用交流電圧を印加して前記電極間の細胞懸濁液の抵抗を測定し、この測定結果に基づいて、前記複数のウェルにおける電荷量の密度を一定とする、前記ウェル毎の前記インパルス電圧のインパルス印加時間を算出する算出部と、
エレクトロポレーションモードにおいて、前記インパルス電圧を前記算出したインパルス印加時間の間、前記各電極部の前記電極に印加するインパルス電圧印加部と、
を具備するエレクトロポレーション装置。
【請求項2】
前記電源部は、前記測定用交流電圧を前記インパルス電圧の10〜20%の低い低電圧に設定する請求項1のエレクトロポレーション装置。
【請求項3】
前記電源部は、前記測定用電圧としてインパルス電圧に比べて低い低電圧に設定した測定用直流電圧を発生し、前記測定モード時に、この測定用直流電圧を前記直流インパルス印加時間に比べて長い測定時間の間印加し、
前記算出部は、前記測定用直流電圧の印加に基づいて前記電極間の時定数を測定し、この時定数及び前記抵抗の測定結果から前記前記電極間のキャパシタを算出し、この測定結果及び算出結果に基づいて供給すべき前記ウェル毎の前記インパルス電圧のインパルス印加時間を算出するする請求項1のエレクトロポレーション装置。
【請求項4】
前記ウェル毎の前記細胞懸濁液に関する前記測定結果及び前記算出結果を格納する記憶部を更に具備する請求項1又は請求項3のエレクトロポレーション装置。
【請求項5】
前記インパルス電圧印加部は、前記電源部及び電極間に接続され、前記電極部に対応するスイッチ及び前記前記供給すべき電荷量に応じて前記スイッチを開閉して前記インパルス印加電圧のインパルス印加時間を制御する制御部を含む請求項1のエレクトロポレーション装置。
【請求項6】
前記インパルス電圧印加部は、前記電源部及び電極間に接続され、前記電極部に対応するスイッチ及びこのスイッチを開閉制御するとともに前記供給すべき電荷量に応じて前記インパルス印加電圧の電圧値を設定する制御部を含む請求項1のエレクトロポレーション装置。
【請求項7】
複数のウェルの夫々に多数の被検細胞及び導入物質で組成され、液組成の異なる細胞懸濁液を含む細胞懸濁液を収納し、
前記ウェルに対応して設けられる複数の電極部であって、前記電極部の各々に支持される複数の電極を前記細胞懸濁液に浸漬し、
測定モードにおいて、前記被検細胞に細胞死を誘発しないように、前記測定用交流電圧を前記インパルス電圧に比べて低い低電圧に設定される測定用交流電圧を前記電極部の前記電極に印加して前記電極間の細胞懸濁液の抵抗を測定し、この測定結果に基づいて、前記複数のウェル内における電荷量の密度を複数のウェル間で一定とする、前記ウェル毎の前記インパルス電圧のインパルス印加時間を算出し、
エレクトロポレーションモードにおいて、前記ウェル内の前記被検細胞にエレクトロポレーションを生じさせる前記インパルス電圧を前記算出したインパルス印加時間の間、前記各電極部の前記電極に印加する、
ことを具備するエレクトロポレーション方法。
【請求項8】
前記測定用交流電圧は、前記インパルス電圧の10〜20%の低い低電圧に設定される請求項7のエレクトロポレーション方法。
【請求項9】
前記測定用電圧としてインパルス電圧に比べて低い低電圧に設定した測定用直流電圧を発生し、 前記測定モード時に、前記直流インパルス印加時間に比べて長い測定時間の間、この測定用直流電圧を印加し、
この測定用直流電圧の印加に基づいて前記電極間の時定数を測定し、この時定数及び前記抵抗の測定結果から前記前記電極間のキャパシタを算出し、この測定結果及び算出結果に基づいて供給すべき前記ウェル毎の前記インパルス電圧のインパルス印加時間を算出する請求項7のエレクトロポレーション方法。
【請求項10】
前記ウェル毎の前記細胞懸濁液に関する前記測定結果及び前記算出結果を記憶する請求項7又は請求項9のエレクトロポレーション方法。
【請求項11】
前記供給すべき電荷量に応じて、前記電極部に対応して前記電極に接続されるスイッチを開閉制御してインパルス印加電圧の印加時間を制御する請求項6のエレクトロポレーション方法。
【請求項12】
前記電極部に対応して前記電極に接続されるスイッチを開閉制御するとともに前記供給すべき電荷量に応じて設定されたインパルス印加電圧を印加する請求項6のエレクトロポレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞に人工遺伝子等を電気的に導入するエレクトロポレーション方法は、電気穿孔法とも称せられ、遺伝子導入方法として特許文献1で知られている。このエレクトロポレーション方法は、細胞懸濁液内に短時間に高電圧を印加して電気的刺激(電気パルス)を細胞に与え、一時的に細胞膜を破壊して微細孔を細胞に生じさせている。そして、エレクトロポレーション方法では、この微細孔を介して細胞外液中の分子(遺伝子或いは薬剤化合物)を細胞内に導入させている。このようにエレクトロポレーション方法では、細胞懸濁液内で細胞に電気パルスを印加して細胞膜を一時的に透過性としている。
【0003】
エレクトロポレーション方法は、電気的刺激を与える処理であることから、細胞がダメージを受けて細胞死を招くことがある。しかも、エレクトロポレーション方法は、細胞を個別的に処理するのではなく、多数の細胞を集団として扱ってDNA等の物質を注入する方法であることから、細胞の無駄遣いが多く、また、エレクトロポレーションの効率が非常に悪い問題がある。
【0004】
従来の実験室レベルで実施されるエレクトロポレーション方法では、反応ウェル内に平板電極が対向配置される対向平板2極方式が主流とされている。この平板2極方式は、反応ウェル内の位置に依存して、電場が変化していることから、細胞への人工遺伝子等の分子の導入効率にムラが出る問題がある。実験室レベルでは、細胞死或いは細胞破壊されたものを除外して良好にDNA等の物質が注入された細胞のみを選択すればその後の処理に問題がないとされている。しかし、臨床検査では、このエレクトロポレーション方法を適用するには、細胞の無駄遣いを減少させ、また、エレクトロポレーションの効率を良好にすることが要請されている。
【0005】
このような背景から、非特許文献1において、電極として嶮山型電極の採用されているエレクトロポレーション装置が提案されている。このエレクトロポレーション装置では、反応ウェル内に、嶮山型電極としての多数の針状電極が配置され、細胞懸濁液内の電場が比較的均一に維持されている。このように反応ウェル内に、多数の針状電極が配置されるエレクトロポレーション装置では、対向平板2極方式に比べて、細胞が複数電極間に分布されることから、夫々の細胞にエレクトロポレーションのための固有の臨界電界強度(E=kV/cm)を与えることができるとしている。ここで、Vは、電極間電圧であり、cmは、電極間距離を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−14517号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"High-density distributed electrodenetwork, a multi-functional electroporation method for delivery ofmolecules of different sizes" SCIENTIFIC REPORTS | 3 : 3370 | DOI: 10.1038/srep03370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように嶮山型電極の採用によって、多数の細胞に良好にDNA等の物質を注入できることが予想される。しかしながら、多数の患者から採取された細胞が検査対象とされ、同時並行処理される臨床検査では、エレクトロポレーション前の前処理の段階において液組成が異なる細胞懸濁液が調整され、予想するようなエレクトロポレーション効果を実現することができない問題がある。体細胞が複数の反応ウェルで同時にエレクトロポレーションされる例では、患者から採取できる細胞の数、修理、前工程から持ち込まれる処理液の量に差があり、各反応ウェルで検査対象の細胞懸濁液の電気抵抗が異なっている蓋然性が高くなる。従って、複数の反応ウェル毎に、同一の電圧を印加すると、反応ウェル毎に流れる電荷量が異なり、結果として、反応ウェルごとの人工遺伝子等の注入物質の導入効率にムラがでる問題がある。
【0009】
この発明の目的は、複数のウェルに格納された細胞懸濁液に電圧インパルスを印加してウェル毎に定まる電荷量を注入し、細胞外液中の分子をその細胞懸濁液内の細胞に効率的に導入させることができるエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーション方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施例によれば、
多数の
被検細胞及び導入物質
で組成され、液組成の異なる細胞懸濁液を含む
検査対象の細胞懸濁液が収納されている複数のウェルと、
前記ウェルに対応して設けられる複数の電極部であって、前記電極部の各々が前記細胞懸濁液に浸漬されるように支持されている複数電極を含む複数の電極部と、
測定用交流電圧を含む測定用電圧及び前記ウェル内の
前記被検細胞にエレクトロポレーションを生じさせるインパルス電圧を発生する電源部
であって、前記被検細胞に細胞死を誘発しないように、前記測定用交流電圧を前記インパルス電圧に比べて低い低電圧に設定する電源部と、
測定モードにおいて、前記電源部から前記電極部の前記電極に前記
測定用交流電圧を印加して
前記電極間の細胞懸濁液の抵抗を測定し、この測定結果に基づいて、前記複数のウェル内における電荷量の密度を一定とする、前記ウェル毎の前記インパルス電圧のインパルス印加時間を算出する算出部と、
エレクトロポレーションモードにおいて
、前記インパルス電圧を
前記算出したインパルス印加時間
の間、前記各電極部の前記電極に印加するインパルス電圧印加部と、
を具備するエレクトロポレーション装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のエレクトロポレーション装置が組み込まれた細胞特性評価装置の1例を概略的に示す模式図である。
【
図2】
図1に示すエレクトロポレーション装置におけるウェル内に浸漬される電極配置を示す平面図である。
【
図3】
図1に示すエレクトロポレーション装置におけるエレクトロポレーション回路部の概略を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す細胞特性評価装置における処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示すエレクトロポレーション(遺伝子導入)装置における動作手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示すエレクトロポレーション装置における他の実施の形態に係るエレクトロポレーション回路部の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、エレクトロポレーション装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
始めに、
図1を参照して実施の形態に係るエレクトロポレーション装置30が組み込まれた細胞特性評価システム10の1例を説明する。このシステム10においては、エレクトロポレーション装置は、レポーターベクターとして遺伝子(DNA)を導入する装置として実現され、被検細胞の異常活性を検出し、それに基づいて被検細胞の細胞特性を評価している。
【0014】
システム10は、細胞分離装置20と、エレクトロポレーション装置30と、測定装置40と、これらの装置の下方に連続して延出され、容器部60を搬送するステージ50とから構成されている。このようにステージ50上には、細胞分離装置20、エレクトロポレーション装置、測定装置40がステージ50の移動に沿って配置され、容器部60のウェル62に被検細胞を含む試料18が導かれた順次処理される。
【0015】
細胞分離装置20は、対象(例えば、患者)から得た検体(例えば、血液或いは尿)から、試験されるべき細胞、即ち、被検細胞を分離するための複数の分離器22を具備している。複数の分離器22は、容器部60上のウェル62の配列に対応してステージ50の移動方向に対して略直交する方向(交差方向)に沿って配列されている。各分離器22は、対象から得た検体を受け入れる受容器24と、受容器24で受け取った検体について消化等の処理を行う処理器26と、処理器26で処理された処理済み検体から被検細胞を分離するための分離部28とを具備している。この分離器22では、受容器24、処理器26及び分離部28は、互いに内径の異なる3つの中空の筒状体が上方から下方に向けてこの順序で積層され、互いに液密に一体化されている。受容器24、処理器26及び分離部28と各境界部は、弁(図示せず)により開閉可能に液絡されている。
【0016】
受容器24は、上部が開口した筒状で、下方に向けて漏斗状に形成されている筒状体に構成され、開閉可能な蓋を備えている。受容器24と処理器26との境界は、弁(図示せず)によって液密に閉じられて逆流が防止される。従って、この弁が閉じたときには、この弁は、受容器24の底部を構成している。処理器26は、受容器24の下端と連続する筒状体に形成されている。受容器24との境界部の弁が液密に閉じたときには、処理器26は、有蓋となっている。同様に処理器26は、分離部28との境界部の弁が閉じたときには、有底となっている。分離部28は、その内壁が処理器26の内壁から液密に連続している筒状体であり、その下端には、弁(図示せず)が設けられている。この弁が液密に閉じられて、分離部28は、有底に維持される。
【0017】
分離部28の内部には、分離材が固定されている。システム10の使用時には、分離部28底の下方のステージ50上に、分離された被検細胞を含む試料18を分離部28から受け取り、試料を収容するウェル62を具備している容器部60が載置される。ステージ50は、矢印51で示されるようにステージ移動機構54によって移動され、容器部60上に配置された複数のウェル62は、夫々分離部28に対応して設けられ、矢印51で示されるステージ50の進行方向に対して略直交するように配列されている。ここで、処理器26は、その内部に含む検体に対して消化および生化学反応などの所望の処理を行う加熱および/または恒温機構を備えても良い。また、分離材は、処理器26からの下りてきた検体から、被検細胞を含む試料18を分離、採取する部材であってもよく、或いは、処理器26からの下りてきた検体から、夾雑物を取り除く部材であっても良い。分離材は、分離部28の中心軸に交差する面に沿って広がり分離部28の内壁の円周に亘って固定されていて良い。分離材は、例えば、フィルター、メンブランおよび/または磁石などであっても良い。受容器24の蓋及び受容器24と処理器26と分離部28との各境界部に設けられる弁(いずれも図示せず)は、開閉制御部12によって開閉制御され、処理された試料が順次滴下されて下方に流下される。
【0018】
分離器22で分離された被検細胞を含む試料18は、ステージ50上に載置された容器部60上のウェル62に収容される。被検細胞を収容する容器部60は、エレクトロポレーション装置に送られる。
【0019】
エレクトロポレーション装置は、容器部60のウェル62に対応して複数のプローブヘッド34を備えている。各プローブヘッド34は、容器部60の各ウェル62に収容された被検細胞に対してレポーターベクターを導入するエレクトロポレーションのための剣山電極32を支持している。このプローブヘッド34は、昇降機構36によって個別に或いは同時に降下されて剣山電極32、33がウェル62内の試薬18に浸漬される。剣山電極32、33には、エレクトロポレーション(遺伝子導入)回路部70が接続され、エレクトロポレーション回路部70からの微小時間(数十マイクロ秒)に亘るインパルス電圧が剣山電極32、33に印加されてレポーターベクターが被検細胞に導入される。レポーターベクターの被検細胞への導入処理後には、昇降機構36が動作されてプローブヘッド34が上昇され、図示するような定位置に復帰される。
【0020】
導入プローブヘッド34は、
図2に示すように剣山電極を構成する複数の電極32、33を支持し、複数の電極32、33によってエレクトロポレーターを構成している。複数の電極32、33は、例えば、50〜60本の電極で構成され、互いに近接する電極対の一方が陽極に、また、他方がアースに定められるように電源部直流電源に接続される。このように剣山電極を構成する複数の電極32、33は、導入プローブヘッド34から所定長だけ延出されて等長の露出長を与えられ、その先端(自由端)が同一の仮想面上に2次元的分布される。
図2においては、剣山電極の構成を簡略化して示すために9本の電極のみが示され、プラス側の電極32が白抜きの円で示され、アース側の電極33がハッチされた円で示され、交互にプラス側の電極32及びアース側の電極33が配置されている様子が示されている。
【0021】
エレクトロポレーション回路部70は、
図3に示すように選択スイッチ73によって切り替えられて選択可能な直流電源72及び交流電源71を含む電源部90を備え、電源部90のプラス側は、個別に開閉時間tが制御される個別スイッチ74及び電流検出部75を介して剣山電極のプラス側電極32に接続され、電源部90のマイナス側は、剣山電極のマイナス側電極32に接続されている。容器部60のウェル62には、それぞれ検査対象の細胞懸濁液が収納され、
図3では、これらプラス側の電極32及びアース側の電極33が細胞懸濁液に浸漬されている。容器部60のウェル62内には、ほぼ同一容量の細胞懸濁液が導入されるように、制御されるが、後に述べるようにウェル62毎にインパルス時間及び/またはインパルス電圧が制御されることから、厳密に一定容量の細胞懸濁液が導入されなくとも良い。ここで、直流電源72は、主にエレクトロポレーションを実行するポレーションモードの際に利用され、交流電源71は、エレクトロポレーション前における細胞懸濁液の電気特性を測定して印加条件を算出する測定モードの際に利用される。
【0022】
エレクトロポレーション回路部70は、測定部92及び印加条件算出部94を備えている。測定モード時における各ウェル62内に流れる電流は、電流検出部75で検知され、電流検出部75から測定部92に出力されて各ウェル62内の細胞懸濁液の回路定数(抵抗R、キャパシタC及び時定数τ)が測定用電圧値及び測定電流値から演算される。これらの演算された回路定数のパラメータは、各ウェル62を特定するウェル番号とともに印加条件記憶部96に記憶される。また、印加条件算出部94では、これらの演算された回路定数のパラメータを利用してスイッチ閉成時間(インパルス時間)及び設定電荷量を含む印加条件を算出し、同様に、ウェル番号に関連付けられて印加条件記憶部96に格納される。エレクトロポレーション回路部70は、個別スイッチ74の開閉を制御するスイッチ開閉制御部97及び回路全体を制御する回路制御部98を備えている。スイッチ開閉制御部97は、ポレーションモード時にスイッチ74の閉成時間を制御し、マイナス側電極33からプラス側電極34に供給する電荷量を制御している。また、回路制御部98は、電源部90、測定部92、印加条件算出部94、印加条件記憶部96及びスイッチ開閉制御部97を制御し、エレクトロポレーション(遺伝子導入)回路部70における測定モード及びポレーションモードを実行させている。測定モード及びポレーションモードについては、後により詳細に説明する。
【0023】
エレクトロポレーション装置は、レポーターベクターを含む試薬を容器部60に供給するためのノズル(図示せず)を備え、エレクトロポレーション装置は、ノズルに試薬を送るための送液システム、送液システムに試薬を供給するための試薬収納容器(いずれも図示せず)を備えている。
【0024】
尚、エレクトロポレーション装置は、所定時間に亘り、所定の培養条件下で容器部60のウェル62内の被検細胞を培養する培養器として機能しても良い。エレクトロポレーション装置の培養は、
図1に示されるシステムの全体を制御する制御部80により制御されれば良い。
【0025】
エレクトロポレーション装置において、レポーターベクターが被検細胞に導入された後、この被検細胞が収納されているウェル62を有する容器部60は、次に測定装置40に移送される。測定装置40は、ステージ50の一部分を上部と下部とから覆い、容器部60を暗室内に収納した状態に維持する暗箱機構(図示せず)及び暗箱機構内部に配置され、ウェル62内の試料18を照明する光源(図示せず)を備えている。また、測定装置40は、光源で照明されるウェル62内の被写体(細胞)に焦点合わせされる対物レンズ42及び対物レンズ4で伝播される被写体画像(細胞)を撮影する撮像部82を具備している。光源および撮像部82は、システム制御部80によって制御され、システム制御部80は、撮像部82で撮影されたウェル62内の被写体画像をメモリ84にフレーム画像として格納し、撮影画像をそのまま、或いは、コントラスト処理または強調処理等を施して表示部86に表示させている。測定装置40が顕微鏡装置を備える場合には、測定装置40の光源、対物レンズ42および撮像部82は、CCDカメラまたはCMOSカメラなどを搭載した顕微鏡装置に含まれている撮像部等が代用されても良い。システム制御部80は、撮像部82のみならず、開閉制御部12、昇降機構36、ステージ移動機構52及びエレクトロポレーション(遺伝子導入)回路部70を制御して、
図4に示す被検細胞の細胞特性を評価する方法を実施させている。
【0026】
システム制御部80によって制御されている細胞特性評価システム10では、評価方法を実施するに際して、はじめに細胞分離装置20の分離部28下方のステージ50上に容器部60が載置されて評価処理が開始される(S18)。次に、上部開口から受容器24内に、所望により予めミンスやホモジナイズなどの前処理がなされた検体が持ち込まれる。これと共に、処理器26での処理に必要な試薬が添加される。試薬の添加は、処理器26に開閉可能に設けられた試薬添加口から行われてもよい(S20)。開閉処理部12によって受容器24の蓋が閉められ、処理器26との境界の弁が開成される。予め設定された条件に従って処理器26内で消化処理が行われる。処理器26は予め設定された条件を満たす環境を作り出すための温度調節器を備えてよい(S21)。次に、処理器26と分離部28との境界の弁か解放され、処理器26内で処理された検体が分離部28内部に送られる。分離部28の分離材を通過することにより、検体に含まれる夾雑物が除去される(S22)。分離された被検細胞を含む試料18は、容器部60のウェル62に送られて収容される。ここで、分離材を通過するのに先駆けて処理器26内で進められた反応を止めるための反応停止試薬が検体に対して添加されても良い。この添加は、予め分離部28内に反応停止試薬を収容されていても良く、そのような試薬を添加するための開閉可能な試薬添加口が分離器22の何れかの位置の壁面に設けられていても良い(S23)。
【0027】
被検細胞を含む試料18をウェル62に収容したままで、容器部60は、エレクトロポレーション装置に送られる(S24)。エレクトロポレーション装置のノズルからレポーターベクターを含む試薬が容器部60のウェル62に添加される。導入プローブヘッド34の電極32,33が容器部60のウェル62内の試料18に接触され、エレクトロポレーション回路部70においてポレーションモードに先だって測定モードが実行され、電荷印加条件が設定される(S25)。その後、電荷印加条件の設定後、ポレーションモードに切り替えられて、設定された電荷印加条件でエレクトロポレーション(遺伝子導入)回路部70が動作制御され、レポーターベクターが被検細胞に導入される(S26)。エレクトロポレーション回路部70の制御下で被検細胞は、所定の時間に亘り、所定の培養条件下で培養される(S28)。
【0028】
ここでは、レポーターベクターが被検細胞に導入される例を示したが、レポーターベクターに代えて、または、レポーターベクターとともに、レポーターベクター以外の核酸、タンパク質、薬剤及び/またはイオンなどが被検細胞に導入されても良い。被検細胞に導入されるこれら物質は、単に導入物質と称するものとする。
【0029】
その後、容器部60は、測定装置40に送られる。測定装置40では、容器部60のウェル62に収容された被検細胞におけるレポーター蛋白質量を測定する。測定装置40における全ての手続きは、予めメモリ84に格納されたプログラムおよび複数の情報が纏められたテーブルに従ってシステム制御部80が実行制御する。例えば、光源からの光照射、照射時間および照射間隔などの照射条件の制御、撮像部82による撮像および撮像条件の制御、撮像された画像についての画像処理および画像処理などが測定装置40において制御される。また、細胞特性の判定についても、予めメモリ84に格納されたプログラムに沿って、画像と細胞特性とを対応付けした情報を含むテーブルを参照して、システム制御部80が実施する。
【0030】
エレクトロポレーション装置における被検細胞の培養の後、容器部60は、測定装置40に送られる。その後、光源からの光が容器部60のウェル62内に照射される。容器部60のウェル62を通過した光は、対物レンズ87で集められ、その光から撮像部82は任意に明視野画像を得る。その後、暗箱機構内において、被検細胞に導入されたレポーター蛋白質からの光学的な信号(ここでは、1例としての発光)を、対物レンズ87を通して、撮像部82によって撮像する。光源の光照射を止め、被検細胞からの発光が対物レンズ87で集められ、その光から撮像部82が発光画像を得る(S28)。撮像部82により得られた任意の明視野画像および発光画像は、システム制御部80により画像処理されて任意に重ね合わされて(マージされて)表示部84に表示される。システム制御部80では、画像の表示部84への表示と同時または表示と前後して、明視野画像および発光画像と、メモリ84に格納されたテーブルとに基づいて、被検細胞の細胞特性を判定する。この判定の結果は、マージされた画像と共に表示部84に示される(S29)。表示部84への各ウェル62に評価判定結果が表示画像とともにメモリ84に格納されて一連の処理が終了される(S30)。
【0031】
ここでは、レポーター蛋白質からの光学的な信号として発光が生じる例を示したが、発光とは異なるレポーター蛋白質が生じる検出な可能な信号についても、撮像部82を構成する検出装置を交換することにより同様に測定することが可能である。
【0032】
図4に示されたステップS25及びS26に示される測定モード及びポレーションモードについて
図2、
図3及び
図5を参照して詳細に説明する。
【0033】
複数のウェル62内の、複数の被検体細胞に均一にエレクトロポレーションするには、全てのウェル62に同一の電荷量が供給されることが要請される。より厳密には、電荷量の密度を全ウェルで一定にし、個々の細胞が受ける電気的影響の大きさを揃えることが要請されている。ところが、被検体細胞を含む細胞懸濁液(試料18)は、含まれる細胞の数や種類、前工程で使われた処理液がウェル62に持込まれ量の違いにより細胞懸濁液の電気抵抗がウェルごとに異なっている。従って、全てのウェルに同じ電圧を印加して臨界電界強度(E=kV/cm)を一定にすると、個々のウェル62内に流れる電荷量に違いが生じる。(Vは、電極間電圧であり、cmは、電極間距離を意味している。)そのため、ウェル毎に個々の細胞が受ける電気的影響の大きさが異なり、エレクトロポレーションの効果に差が生じる。結果として、ウェル62間で検査結果の比較ができない問題に至っている。
【0034】
発明者は、複数ウェル62に同一条件でエレクトロポレーションする為には、測定モードにおいて、各ウェル内の細胞懸濁液の電気的パラメータを測定し、この測定モードで測定された条件に基づいてエレクトロポレーションを実行することによってこのような問題を解消できると着想している。この測定モードにおける測定を前提とすれば、ウェル62毎に個々の細胞が受ける電気的影響の大きさが異なっても、ウェル62毎に個々の細胞に均一なエレクトロポレーションの効果を与えることができ、結果として、ウェル62間で検査結果の比較ができるとしている。
【0035】
エレクトロポレーションでは、長い時間電圧が印加されると、細胞は、細胞死に誘導されることから、微小時間(数十マイクロ秒)で電圧が印加されることが要請される。このときに電極32、33間に生ずる電荷量Qは、
Q=CV(1−e
-t/τ)
τ=R・C
で表される。ここで、R及びCは、それぞれウェル62内の電極32、33間の抵抗及びキャパシタ、τは、時定数、Vは、測定モードで電極32、33間に印加する電圧、また、tは、電圧印加の経過時間である。ここで、抵抗Rは、主に電極32、33間の細胞懸濁液の抵抗に相当し、キャパシタCは、電極32、33の表面の細胞懸濁液との間の界面に生じる電気2重層の静電容量に相当している。
【0036】
前処理で、ウェル62内の細胞懸濁液の抵抗R及びキャパシタCが異なり、ウェル毎に入れられる細胞懸濁液内の細胞の数で、これらのパラメータが変化される。また、被検体が異なれば、被検体の個体差が変化される。同一被検体であっても、サンプルされる個体差(細胞の数)が生じ、また、同一容積のウェル62であっても細胞懸濁液を入れる量でこれらのパラメータが変化される。
【0037】
測定モードが開始される(S32)と、始めに抵抗Rが測定される(S33)。測定モードでは、細胞懸濁液内の細胞が細胞死を招かない様な(有意なダメージを与えないような)所定の交流電圧が第1の測定電圧として設定される。一例として、電極32,33間の距離が0.3mmに設定されている場合には、20V/0.3mm≒65V/mm以下の範囲に設定される。この範囲は、エレクトロポレーションを生じさせる際の直流インパルス電圧、例えば、200−300Vの10〜20%[1/5〜1/6]に相当し、低電圧20〜60Vのピークを有する交流電圧が第1の測定電圧として設定される。この抵抗Rの測定に際しては、回路制御部98がスイッチ73を制御して電源部90の電源として交流電源71を選択し、所定の時間(数秒)の間スイッチ74を閉じて上述した所定電圧をピークとする所定の周波数(例えば、10の4乗オーダーの周波数に相当する20kHz〜100kHzの周波数)の交流電圧V1を電極間32,33に印加する。この印加時の電極間32,33に流れる電流Iが電流検出部75で検出され、測定部92で抵抗値R(R=V1/I)が求められる(S33)。印加電圧が交流であることから、抵抗値が電流I及び電圧V1から算出される。
【0038】
次に、時定数τが測定される(S34)。この時定数τの測定に際しては、回路制御部98がスイッチ73を制御して電源部90の電源として直流電源72を選択する。そして、所定の時間(数秒)の間スイッチ74を閉じて第2の測定電圧として所定の直流電圧を電極間32,33に印加する。この直流電圧は、同様に細胞懸濁液内の細胞が細胞死を招かない様な(有意なダメージを与えないような)直流電圧(第2測定電圧)に設定される。一例として、電極32,33間の距離が0.3mmに設定されている場合には、20V/0.3mm≒65V/mm以下の範囲に第2の電圧が設定される。この第2の電圧は、数百マイクロ秒、1秒の間スイッチ74が閉じられ、第2の電圧が電極32,33間に印加されて電流の変化が測定部92で測定される。測定部92では、時間経過に伴う電流変化から時間経過に伴う電圧変化を算出して定常状態に至る時定数τを求めることができる。
【0039】
Q=CV(1−e
-t/τ)
τ=R・C
このように、時定数τが判明することから、測定部92において、ステップS33で測定された抵抗Rを利用してキャパシタCも計算により求めることができる(S35)。ウェル62毎に、求められた抵抗R、キャパシタC、時定数τ、測定時の第1電圧及び第2電圧は、印加条件設定部96に表形式で格納される。印加条件算出部94は、抵抗R、キャパシタC、時定数τ等のパラメータから直流インパルス電圧の印加時間t、換言すれば、スイッチ74の閉成時間tをウェル62毎に算出する。上述した電荷量Qの式から明らかなように、直流インパルス電圧の印加時間tが算出されることによって電極32,33間に与えられる電荷量Qがすべてのウェル62について一定化される。印加条件算出部94で印加時間t及び電荷量Qも、印加条件設定部96に表形式で格納される。より具体的には、印加条件設定部96に格納される表には、ウェル番号W1〜Wn毎に測定抵抗R1〜Rn、測定キャパシタC1〜Cn、測定時定数τ1〜τn、直流インパルス電圧の印加時間t1〜tn、演算された電荷量Q1〜Qn及び測定時の第1、第2電圧V1、V2が記載される。
【0040】
印加時間t1〜tnが演算されて印加条件設定部96に格納されると、エレクトロポレーションが実行される(S36)。システム制御部97は、スイッチ74が開成された状態で、直流電源72にインパルス直流電圧Vを設定し、各スイッチ74の閉成時間(インパルス印加時間)t1〜tnをスイッチ開閉制御部97に設定してエレクトロポレーションを開始する。各スイッチ74が印加時間t1〜tnで閉成されることから、インパルス電圧が各ウェル62内の電極32,33に印加され、所望の電荷量Q1〜Qnがウェル62毎に供給され、均一なエレクトロポレーションが実行される。このエレクトロポレーションの実行後に、処理が終了される(S37)。
【0041】
インパルス直流電圧Vは、一例として(150V〜200V)/0.3mm≒(500V〜650V)/mm以下の範囲内でサンプル細胞に応じて設定される。印加時間(インパルス時間)t1〜tnは、50マイクロ秒以下に設定される。この印加時間(インパルス時間)t1〜tnは、好ましくは、より小さい範囲に設定され、印加時間(インパルス時間)t1〜tnが小さければ、小さい程、細胞死を阻止することができる。
【0042】
図3に示される回路においては、印加時間(インパルス時間)t1〜tnが制御されるエレクトロポレーション(遺伝子導入)回路部70の構成を説明しているが、印加時間(インパルス時間)t1〜tnに代えて印加電圧(インパルス電圧)V1〜Vnが可変されるように構成されても良い。
図6を参照して印加電圧(インパルス電圧)V1〜Vnが可変される他の実施の形態に係るエレクトロポレーション回路部70の回路構成を説明する。
図6において、
図4に示したと同一符号は、同一部分或いは同一箇所を示すものとしてその説明を省略する。
【0043】
印加電圧(インパルス電圧)V1〜Vnを可変する可変印加電圧源(可変インパルス電圧源)は、個別スイッチ74で抵抗r0〜rnを選択する電圧可変部78が電源部90に接続されて構成される。抵抗r0〜rnは、夫々抵抗値が異なり、共通接続されて電流検出部75に接続されている。個別スイッチ74で抵抗r0〜rnが選択されると、抵抗rnの選択に基づいて直流インパルス電圧Vの電圧値が選択される。測定モード時においては、最も抵抗値の小さな抵抗r0が選択されて測定系における抵抗損失が最小限に留められる。そして、
図5に示すステップS32〜S35が実施されてウェル番号W1〜Wn毎の測定抵抗R1〜Rn、測定キャパシタC1〜Cn、測定時定数τ1〜τn等のパラメータで印加条件が求められる。ポレーションモード時においては、全てのウェル62に同一の電荷量を供給すべく、求められた印加条件設定部96に格納された表が参照されて一定の印加時間T0を基準とした各ウェル62の電極32,33間に与えられるべき印加電圧v0〜vnが算出される。スイッチ開閉制御部96は、各ウェル62内に印加すべき印加電圧v0〜vnに応じて抵抗r0〜rnのいずれかを選定し、選定した抵抗r0〜rnにスイッチ74が接続されるように制御してスイッチ74を一定時間T0の間、閉成する。その結果、直流インパルス電圧Vnの選択によってウェル62毎の電荷量Qの均等化を図ることができる。
【0044】
尚、ウェル毎に直流インパルス電圧Vnを選択することに加えて
図4を参照する実施例で説明した印加時間(インパルス時間)t1〜tnを選択するようにしても良い。即ち、印加時間(インパルス時間)t1〜tn及び抵抗r0〜rnの組み合わせによってウェル62毎の電荷量Qの均等化を図るようにしても良い。
【0045】
上記実施形態では、被検細胞の培養をエレクトロポレーション装置が行う例を示したが、被検細胞の培養は、測定装置40において行っても良い。その場合、システム10が更に細胞培養を可能にする部材を備えれば良く、或いは、エレクトロポレーション装置と測定装置40と両方において、被検細胞が培養されても良い。
【0046】
また、容器部60のウェル62へのレポーターベクターの添加は、容器部60のウェル62がエレクトロポレーション装置の所定の位置に送られる以前の何れかの時期に行われても良い。その場合、システム10は、レポーターベクター添加機構をエレクトロポレーション装置よりも上流の所望の位置に更に備えれば良い。
【0047】
上述したエレクトロポレーション(遺伝子導入)装置及びエレクトロポレーション(遺伝子導入)方法によれば、複数のウェルに格納された細胞懸濁液に電圧インパルスを印加してウェル毎に定まる電荷量を注入し、細胞外液中の分子をその細胞懸濁液内の細胞に効率的に導入させることができる。結果として、複数のウェルに対して、同じように電場をかけることができ、それにより、複数のウェルの被検体細胞のエレクトロポレーション条件が均一化でき、正確な診断ができる。また、このような構成のエレクトロポレーション装置を具備する被検細胞の細胞特性を評価するシステムにあっては、より高い精度で効率的に被検細胞の細胞特性を評価することができる。また、検査をスループットで行うことが可能であるので、簡便に検査を行うことが可能であり、試料の取り違えやコンタミネーションを防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…細胞特性評価システム、12…開閉制御部、18…試料、20…細胞分離装置、22…分離器、24…受容器、26…処理器、28は分離部、30…エレクトロポレーション(遺伝子導入)装置、32,33…電極、34…プローブヘッド、40…測定装置、50…ステージ、51…矢印、54…ステージ移動機構、60…容器部、62…ウェル、70…エレクトロポレーション回路部、71…交流電源、72…直流電源、74…スイッチ、75…電流検出部、78…電圧可変部78、
80…システム制御部、82…撮像部、86…表示部、90…電源部、92…測定部、94…印加条件算出部、96…印加条件記憶部、97…スイッチ開閉制御部