(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リード線と前記生体接触部材との間には、前記リード線の前記X線透過性導電部材が前記導電性材料に対して電気的に接続された接続部を保護する保護部材が配置される、請求項2に記載の生体用電極。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る生体用電極1の構成について説明する。生体用電極1は、生体に貼りつけたままでX線撮影を行っても、画像中に影となって映り込むことを抑制できる構成を有している。生体用電極1は、例えば、心電図検査、筋電図検査、脳波測定などに用いられる電極である。
【0018】
図1に示すように、生体用電極1は、生体に貼り付けて電気信号を検出する電極部2と、電極部2と電気的に接続されたリード線3と、電子機器(不図示)と接続されるコネクタ4と、を備えている。電極部2は、リード線3の一端部3aに電気的に接続されている。コネクタ4は、リード線3の他端部3bに電気的に接続される。リード線3の他端部3bでは、被覆材が除去されることでX線透過性導電部材が露出する部分が形成され、当該露出する部分のX線透過性導電部材がコネクタ4と接続される。電極部2にて検出された電気信号は、リード線3及びコネクタ4を介して電気機器へ送信される。なお、コネクタ4の形状や大きさは特に限定されず、接続される電気機器に応じて適宜変更されてよい。
【0019】
図2を参照して、電極部2の構成について説明する。生体用電極1の電極部2は、表面を有する基材6と、基材6の表面に形成された導電性材料7と、リード線3と、導電性材料7及びリード線3を覆うように形成される生体接触部材8と、生体接触部材8の貼付面を覆う剥離部材9と、基材6の裏面を支持する第1の支持部材11と、第1の支持部材11を裏面側から覆う第2の支持部材12と、を備える。
【0020】
基材6は、片一方の面である表面に導電性材料7を塗布するための部材である。基材6は、例えば、PETやPEN等の材質によって構成される。導電性材料7は、基材6の表面の全体を覆うように形成されている。導電性材料7は、例えば、Ag/AgClである。基材6の表面にAg/AgClを含むインクを塗布することによって、導電性材料7の層が形成される。塗布は、スクリーン印刷、グラビア印刷などの既存の印刷方法を採用できる。導電性材料7として、他に銀−銀塩化銀に導電性カーボンブラック、導電性グラファイトの混合物等を採用してもよい。なお、導電性材料7が形成された基材6の形状は特に限定されず、例えば、矩形状であってもよく、円形状であってもよい。基材6の厚さは、特に限定されないが、例えば50〜150μmとしてよい。導電性材料7の厚さは、特に限定されないが、例えば5〜20μmとしてよい。
【0021】
生体接触部材8は、保湿剤を含む電解質物質を備えて構成される。生体接触部材8として、例えば、アクリル共重合体及び電解質を含む導電性粘着ゲルを用いることができる。さらに、生体接触部材8は保湿剤を含んでもよい。保湿剤として、グリセリンなどの多価アルコール類等が採用される。生体接触部材8の一方の面はリード線3及び基材6に形成された導電性材料7を覆う面として構成され、他方の面は、人体に貼り付ける貼付面として構成される。生体接触部材8の形状は特に限定されず、例えば、矩形状であってもよく、円形状であってもよい。生体接触部材8の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜5mmとしてよい。
【0022】
剥離部材9は、生体接触部材8の貼付面を保護すると共に、使用時には当該貼付面から剥離するための部材である。剥離部材9として、例えば、ペーパーバッキングや、シリコンLAB(Low Adhesion Backsize)でコーティングされたフィルムバッキングなどのライナーを用いてよい。その他、剥離部材9として、フッ素系剥離剤をコーティングしたバッキングフィルムなどを用いてよい。
【0023】
第1の支持部材11は、基材6の面のうち、導電性材料7が形成される表面とは反対側の裏面を覆うように設けられている。第1の支持部材11として、例えば医療用のプラスチックバッキングやフォームバッキングなどのバッキングテープ、ポリエチレンフィルムを用いてよい。また、第2の支持部材12は、第1の支持部材11の裏面を覆うように設けられている。また、第2の支持部材12として、例えば、医療用のプラスチックバッキングやフォームバッキングなどのバッキングテープを用いてよい。その他、紙、不織布などを用いてよい。また、第2の支持部材12は、電極接続構造が隠れるように不透明であってもよい。さらに、第2の支持部材12には製品のIDが表示されるように印刷部を有していてもよい。
【0024】
リード線3は、導電性材料7と電気的に接続されたX線透過性導電部材13、及びX線透過性導電部材13の周囲を被覆する被覆材14を備える。X線透過性導電部材13として、例えば、炭素繊維が採用される。具体的には、リード線3は、炭素繊維の束を被覆材14で被覆することによって構成される。炭素繊維の束は1000〜5000本の繊維束を採用してもよい。なお、X線透過性導電部材13は、X線に対して透過性を有しており、且つ、導電性の材料であれば特に限定されず、グラファイト繊維等を採用してもよい。被覆材14は、絶縁性を有する樹脂によって構成されており、材質として、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン等が採用される。
【0025】
本実施形態では、リード線3は、被覆材14を別工程での皮むき作業で除去する事無く、導電性材料7に接合されている。リード線3の先端部のうち、導電性材料7と重ね合わせられる部分の長さは、5〜15mmである。例えば、
図5に示すように、リード線3は、超音波融着、又は熱溶着によって基材6上の導電性材料7に接合されている。超音波融着又は熱溶着は、リード線3に工具30を押し付けることによって実行される。当該状態では、
図5(b)に示すように、導電性材料7との間の境界部でリード線3の被覆材14が部分的に熱により変形することで、X線透過性導電部材13が露出する。これによって、X線透過性導電部材13が導電性材料7と電気的に接続される。このように、リード線3のうち、平面視において導電性材料7と重なる部分において、工具30を押し付けて超音波溶着又は熱溶着を行うことにより、扁平な形状に形成される部分を「扁平部20」と称する。すなわち、扁平部20は、リード線3のうち、加工時に工具30が押し付けられる部分に該当する。リード線3のうち、平面視において導電性材料7と重なる部分において、扁平部20が形成されていない部分を「非扁平部21」と称する。扁平部20では、リード線3が導電性材料7に接合されると共に、X線透過性導電部材13と導電性材料7が電気的に接続される。ただし、熱の影響により、非扁平部21でもリード線3の被覆材14が導電性材料7に接合される場合もある。当該扁平部20において、X線透過性導電部材13は、導電性材料7との間の境界部以外では被覆材14から露出しておらず、被覆材14に覆われた状態となっている。なお、扁平部20においてX線透過性導電部材13が被覆材14から露出して、導電性材料7と電気的に接続される部分(接触面)を「接続部13a」と称する。当該状態でリード線3及び導電性材料7を生体接触部材8で覆った場合、X線透過性導電部材13と生体接触部材8との間には被覆材14が配置される状態となる。すなわち、X線透過性導電部材13は、生体接触部材8と直接的に接触せず、生体接触部材8の保湿剤がX線透過性導電部材13中へ拡散しない状態となる。以上のような構成により、X線透過性導電部材13は導電性材料7と電気的に接続され、当該導電性材料7を介して生体接触部材8と電気的に接続されている。
【0026】
ここで、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、リード線3のX線透過性導電部材13は、導電性材料7に対して、互いに独立した複数の接続部13aにおいて電気的に接続されている。接続部13aの個数は、3点以上であってよい。なお、
図3(a)及び
図4(a)では、接続部13aの個数が3個の場合が例示されている。
【0027】
「独立した接続部」とは、他の接続部と連続していない状態を示している。すなわち、一の接続部13aと他の接続部13aとの間に、工具30によって押圧されていない非扁平部21が介在することで被覆材14が存在している場合、一の接続部13aは他の接続部13aから独立した状態であると言える。
図4では、X線透過性導電部材13の導電性材料7に対する接続部13aにハッチングを示している。
図4(a)に示すように、一つの独立した接続部13aは平面視における全周にわたって被覆材14で囲まれており、他の接続部13aとは被覆材14を介して離間した状態となっている。非扁平部21では、リード線3が工具30で押圧されていないため、X線透過性導電部材13は、導電性材料7に対して露出しておらず、電気的に接続されていない。すなわち、非扁平部21では、導電性材料7の上面に被覆材14が残存している。この残存した被覆材14は、一の扁平部20(及び接続部13a)と他の扁平部20(及び接続部13a)とを分断している。
図4(a)に示す例では、リード線3の延在方向に沿って、3つの扁平部20(及び接続部13a)が形成され、各扁平部20(及び接続部13a)同士の間には非扁平部21が形成されている。なお、各扁平部20において潰された状態のX線透過性導電部材13は、非扁平部21のX線透過性導電部材13(潰されていない状態である)により、互いに電気的に接続されている。
【0028】
リード線3のうち、導電性材料7と平面視において重なる部分において、扁平な形状に形成される扁平部20と、扁平部20が形成されていない非扁平部21との、断面視における長さの割合は、2:1〜5:1である。扁平部20の断面視(
図3に示す図)における長さとは、
図3のように複数の接続部13a及び扁平部20が存在する場合は、複数の扁平部20の合計の長さとなる。また、非扁平部21が複数存在する場合は、非扁平部21の断面視における長さとは、複数の非扁平部21の合計の長さとなる。
【0029】
なお、接続部13aの個数は
図4(a)に示すような3個の場合にかぎられず、2個でも4個でもよく、5個以上でもよい。あるいは、
図3(b)及び
図4(b)に示すように1個であってもよい。接続部13aが1個の場合は、導電性材料7と電気的に接続されるX線透過性導電部材13の接続部13aは、連続して広がる一つの面を形成する。
【0030】
次に、本実施形態に係る生体用電極1の製造方法について説明する。
【0031】
まず、表面に導電性材料7が形成された基材6を準備する工程を実行する。この工程では、基材6の表面に所定の厚さで導電性材料7を塗布する。次に、X線透過性導電部材13、及びX線透過性導電部材13の周囲を被覆する被覆材14を備えるリード線3を準備する工程を実行する。
【0032】
次に、X線透過性導電部材13が被覆材14に覆われた状態で、基材6の導電性材料7に対して、リード線3を接合する工程を実行する。リード線3を接合する工程では、リード線3の端部を基材6の導電性材料7上に配置し、超音波融着、又は熱溶着によってリード線3の端部を導電性材料7に接合する。この時、リード線3の端部は、被覆材14が除去されることなく、X線透過性導電部材13が被覆材14に覆われたままの状態で、導電性材料7に接合される。
【0033】
例えば
図3(a)及び
図4(a)に示すような接合を行う場合、リード線3を接合する工程では、互いに離間した複数カ所にてリード線3が導電性材料7に接合される。具体的には、リード線3に対して複数の工具30を配置すると共に、これらの工具30で押圧し、超音波溶着又は熱溶着を施すことで扁平部20(及び接続部13a)を形成する。複数の工具30は互いに所定距離離間させた状態で配置される。これによって、扁平部20(及び接続部13a)同士の間に非扁平部21が形成されるようにする。これによって、互いに離間した複数カ所にてリード線3が導電性材料7に接合される。なお、複数の工具30を並べてもよいが、一つの工具30をリード線3に沿って移動させることで、接続部13aを一個ずつ形成してもよいし、リード線3との接触面に凹凸が形成されている一つの工具30によって同時に接続部13aを複数形成してもよい。なお、
図3(b)及び
図4(b)に示すような接合を行う場合、リード線3を接合する工程では、一つの大きな工具30を用いて一カ所でリード線3を導電性材料7に接合する。離間される距離は、リード線3の直径に対して0.5倍以上、0.7倍以上または0.9倍以上離れていてもよい。
【0034】
次に、保湿剤を含む電解質物質を有する生体接触部材8で、導電性材料7及びリード線3を覆うように積層する工程を実行する。これによって、X線透過性導電部材13と生体接触部材8との間には被覆材14が配置される(
図5(b)参照)。また、X線透過性導電部材13は導電性材料7と電気的に接続され、当該導電性材料7を介して生体接触部材8と電気的に接続される。なお、剥離部材9は、予め生体接触部材8に積層されていてよい。また、各工程が終了した後、支持部材11,12を基材6に積層させてよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る生体用電極1の作用・効果について説明する。
【0036】
まず、本実施形態に係る生体用電極1との比較のために、
図6を参照して、比較例に係る生体用電極100について説明する。
図6に示すように、生体用電極100は、両面に導電性材料7が形成された基材6を備えている。また、基材6の一方の面に形成された導電性材料7にリード線3のX線透過性導電部材13が電気的に接続される。リード線3は、先端部の被覆材14が除去されてX線透過性導電部材13が完全に露出した状態で、導電性材料7に接続される。また、基材6の他方の面に形成された導電性材料7に生体接触部材8が電気的に接続される。
【0037】
比較例に係る生体用電極100では、リード線3の接合のために、リード線3の先端部から被覆材14を除去している。従って、被覆材14を除去するための工程が必要となることで、生体用電極100の製造が煩雑となっていた。また、基材6の両面に導電性材料7が形成されることで、X線は二枚分の導電性材料を透過する必要があった。
【0038】
それに対して、本実施形態に係る生体用電極1では、X線透過性導電部材13と生体接触部材8との間には被覆材14が配置されると共に、X線透過性導電部材13は導電性材料7と電気的に接続され、当該導電性材料7を介して生体接触部材8と電気的に接続されている。このように、X線透過性導電部材13と生体接触部材8との間に被覆材14を残存させておく一方で、導電性材料7を介することでX線透過性導電部材13と生体接触部材8との電気的な接続を確保できる。当該構成を採用する場合、製造時において、リード線3を導電性材料7に接合するときに、被覆材14を除去してX線透過性導電部材13を露出させておく必要がなく、X線透過性導電部材13が被覆材14に被覆されたままの状態で接合することができる。以上より、リード線3の被覆材14を除去する手間を解消することで、生体用電極1の製造の煩雑さを低減することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る生体用電極1は、基材6には一方の表面のみに導電性材料7を形成されている。従って、X線は一層分の導電性材料7を透過すればよいので、生体用電極1のX線透過性は、比較例に係る生体用電極100のX線透過性よりも高くなる。
【0040】
また、本実施形態に係る生体用電極1において、リード線3のX線透過性導電部材13は、導電性材料7に対して、互いに独立した複数の接続部13aにおいて電気的に接続されている。このような構造によって、電気特性の低下を抑制し、長期保存性を向上することができる。例えば、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、一つの大きな接続部13aによってX線透過性導電部材13が導電性材料7に接続されている場合について説明する。この場合、長期の時間経過に伴う被覆材14の劣化等、具体的には、例えば、熱変形によって生じた被覆材には微小空隙が残り時間経過に伴いその空隙が破れて他の空隙と連通することなど、によってX線透過性導電部材13中に生体接触部材8の保湿剤が拡散すると、連続した大きな接続部13a中の広範囲にわたって保湿剤が広がる。これによって、広い範囲にわたって接続部13aと導電性材料7との間に保湿剤の膜が形成される。当該膜の影響により、X線透過性導電部材13と導電性材料7との間の導通性が低下する。以上より、
図3(b)及び
図4(b)に示す接続部13aを採用した場合、一カ所からでも保湿剤が侵入すると、接続部13a全体に広がり易く、十分な長期保存性が確保できない場合がある。
【0041】
一方、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、互いに独立した複数の接続部13aを採用した場合について説明する。例えば、3つの接続部13aの内、中央の接続部13aで保湿剤の侵入が発生した場合を例にして説明する。この場合、各接続部13aは互いに独立しているため、保湿剤の拡散は中央の接続部13a内に限定され、他の接続部13aまで拡散することが抑制される。なお、接続部13a同士の間は非扁平部21のX線透過性導電部材13で接続されているが、当該部分のX線透過性導電部材13内を保湿剤が拡散する速度は、圧着された接続部13a内のX線透過性導電部材13内を拡散する速度に比して低い。従って、中央の接続部13aでは、X線透過性導電部材13と導電性材料7との間の導通性が低下するが、他の接続部13aでの導通性の低下は抑制される。以上より、互いに独立した複数の接続部13aの構造を採用することで、電気特性の低下を抑制し、長期保存性を向上することができる。
【0042】
本実施形態に係る生体用電極1において、接続部13aの個数は3個以上である。これによって、接合強度を高くすることができる。例えば、接続部13aの個数を3個以上とすることで、1kgf以上の接合強度、あるいは3kgf以上の接合強度を得ることができる。なお、接続部13aの個数は、2〜4個であってよい。接続部13aが2個以上であることにより、
図3(a)及び
図4(a)で説明した上述の効果を得ることができる。また、接続部13aの個数が多すぎる場合は、隣り合う接続部13a同士が一体化(非扁平部21が小さくなりすぎることにより)してしまう可能性があるが、接続部13aが4個以下であることにより、接続部13a同士が独立した状態を維持することができる。
【0043】
本実施形態に係る生体用電極1において、リード線3のうち、導電性材料7と平面視において重なる部分において、扁平な形状に形成される扁平部20と、扁平部20が形成されていない非扁平部21との、断面視における長さの割合は、2:1〜5:1である。これによって、接続部13aが互いに独立した状態を好適に維持することができる。
【0044】
本実施形態に係る生体用電極1の製造方法によれば、リード線3を接合する工程では、X線透過性導電部材13を導電性材料7に電気的に接続し、生体接触部材8を積層する工程では、当該導電性材料7を介してX線透過性導電部材13を生体接触部材8に電気的に接続する。これによって、導電性材料7を介することでX線透過性導電部材13と生体接触部材8との電気的な接続を確保できる。このような電気的な接続関係を、リード線3の被覆材14を除去すること無しに確保することができる。すなわち、リード線3を接合する工程では、被覆材14を除去してX線透過性導電部材13を露出させておく必要なく、X線透過性導電部材13が被覆材14に覆われた状態で、基材6の導電性材料7に対して、リード線3を接合できる。以上より、リード線3の被覆材14を除去する手間を解消することで、生体用電極1の製造の煩雑さを低減することができる。
【0045】
本実施形態に係る生体用電極1の製造方法において、リード線3を接合する工程では、超音波融着、又は熱溶着によってリード線3を導電性材料7に接合している。これによって、リード線3の導電性材料7に対する接合力を向上することができる。
【0046】
本実施形態に係る生体用電極1の製造方法において、リード線3を接合する工程では、互いに離間した複数カ所にてリード線3を導電性材料7に接合している。これによって、互いに独立した接続部13aを形成することができ、上述の作用・効果を得ることができる。
【0047】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0048】
例えば、
図2に示す各構成要素の配置等は一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない限り、どのような層構成を採用してもよい。
【0049】
例えば、
図10及び
図11に示す生体用電極200を採用してもよい。生体用電極200は、保護部材50を有する点で上述の実施形態に係る生体用電極1と主に異なっている。
図11に示すように、具体的に、リード線3と生体接触部材8との間には、接続部13aを保護する保護部材50が配置される。保護部材50は、生体接触部材8の電解質物質から接続部13aを保護するための部材である。保護部材50の材質として、例えば、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエステル)等を基材としたテープ類を採用してよい。
【0050】
図10に示すように、保護部材50は、リード線3の先端部付近を覆うように導電性材料7の一部の領域を覆う。なお、
図10においては、生体接触部材8は省略されている。
図10に示す形態では、保護部材50は円形のシートとして構成されているが、保護部材50の形状は特に限定されない。また、保護部材50の大きさも特に限定されず、少なくとも厚さ方向から見て(
図10に示す方向)、接続部13aに該当する部分が覆われていればよい。なお、
図10において、二点鎖線の円で示される領域は、融着や溶着等のための工具が押し当てられる領域である。このように、保護部材50の全域に工具が押し当てられてよい。なお、保護部材50には、リード線3と同時に工具が押し当てられてよく、あるいは、リード線3に工具が押し当てられた後で保護部材50が貼り付けられてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る生体用電極200においては、リード線3のうち、導電性材料7と電気的に接続される接続部13aが、電解質物質を有する生体接触部材8に覆われるような構成となる。当該構成においては、時間の経過によって電解質物質の影響によって接続部13aが劣化する可能性がある。従って、リード線3と生体接触部材8との間に、接続部13aを保護する保護部材50を配置することにより、電解質物質の影響によって接続部13aが劣化することを抑制することができる。
【0052】
また、例えば、
図12及び
図13に示す生体用電極300を採用してもよい。生体用電極300は、リード線3と生体接触部材8との位置関係において、上述の実施形態と主に異なっている。また、上述の実施形態では、生体接触部材8は、全領域に電解質物質を有していた。これに対し、生体用電極300では、生体接触部材8は、一部の領域に電解質物質61を有して他の領域に他の部材を有している。
図12及び
図13に示すように、具体的には、生体接触部材8は、電解質物質61が配置された第1の領域E1と、他の部材として粘着部材62が配置された第2の領域E2と、を有する。また、リード線3は、第2の領域E2に覆われている。
【0053】
生体接触部材8の第1の領域E1、すなわち電解質物質61が配置される領域は、生体用電極300の先端側(機器とは反対側)に形成される。一方、生体接触部材8の第2の領域E2、すなわち粘着部材62が配置される領域は、生体用電極300の基端側(機器側)に形成される。なお、粘着部材62として、例えば両面テープ等を採用してよい。このような生体接触部材8の第1の領域E1及び第2の領域E2に対応するように、基材6上において、導電性材料7が形成される領域が設定されている。ここでは、基材6上には略全面にわたって導電性材料65(Ag/Clを含む導電性材料7とは異なる材質である)の層が形成されている。このような基材6に対し、生体接触部材8の第1の領域E1と対応する領域にはAg/Clを含む導電性材料7の層が形成されており、第2の領域E2と対応する領域には導電性材料7が形成されておらず、下地材である導電性材料65が露出している。なお、導電性材料65の材質として、カーボン、グラファイトを含む塗布層等を採用してよい。
【0054】
リード線3は、このように下地材である導電性材料65と直接接触している。これにより、導電性材料65を介してAg/Clを含む導電性材料7と電気的に接続される。このように導電性材料65上に配置されたリード線3は、生体接触部材8の第2の領域E2の粘着部材62で挟まれるようにして覆われる。リード線3は、Ag/Clを含む導電性材料7、及び生体接触部材8の第1の領域E1までは及んでいない。生体接触部材8の第1の領域E1の電解質物質61は、Ag/Clを含む導電性材料7と接触する。このような構成により、リード線3は、生体接触部材8の電解質物質61と直接接触することなく、導電性材料65,7を介して電解質物質61と電気的に接続される。
【0055】
なお、
図12に示すように、第1の領域E1に対応する部分では、生体接触部材8、基材6及び導電性材料7は、接触面積を広くするために、広い範囲に広がる矩形状の形状を有する。一方、リード線3との接続部分として機能する第2の領域E2に対応する部分では、第1の領域E1から突出する半円状の片部として構成される。ただし、各領域の形状は特に限定されない。また、導電性材料7が形成される領域も厳密に第1の領域E1と一致している必要はなく、少なくともリード線3が第1の領域E1の電解質物質61に覆われない位置関係であればよい。
【0056】
なお、生体用電極300においても、他の実施形態と同様、リード線3と導電性材料65とは、超音波融着、又は熱溶着によって接合されている。すなわち、リード線3のX線透過性導電部材13は、被覆材14から部分的に露出している。これにより、露出したX線透過性導電部材13は、導電性材料65と電気的に接続されている。また、X線透過性導電部材13と生体接触部材8との間には、保護層としての被覆材14が介在している。なお、上述の他の実施形態では、X線透過性導電部材13と生体接触部材8における電解質物質との間に被覆材14が配置されていたが、生体用電極300においては、X線透過性導電部材13と生体接触部材8における粘着部材62との間には、被覆材14が配置されている。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る生体用電極300において、生体接触部材8は、一の部分(第1の領域E1)に電解質物質61を有し、他の部分(第2の領域E2)に他の部材(粘着部材62)を有する。また、X線透過性導電部材13と生体接触部材8の他の部材との間には被覆材14が配置される。具体的には、生体接触部材8は、電解質物質61が配置された第1の領域E1と、粘着部材62が配置された第2の領域E2と、を有する。また、リード線3は、第2の領域E2に覆われている。すなわち、リード線3は、生体接触部材8のうち、電解質物質61が配置された第1の領域E1ではなく、粘着部材62が配置された第2の領域E2で覆われる。例えば、
図10及び
図11の形態では、リード線3は保護部材50で保護されることによって、生体接触部材8の電解質物質61と直接接触することは回避されるものの、電解質物質61で覆われた状態となる。従って、長時間経過後に、電解質物質61によるリード線3の接続部13aへの影響が生じる可能性はある。一方、生体用電極300では、リード線3は平面方向において電解質物質61とは異なる位置に配置されるため、当該電解質物質61の影響を受けることを、より確実に回避することができる。
【0058】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明の一形態に係る生体用電極を具体的に説明するが、生体用電極の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
実施例1に係る生体用電極のリード線として、リード線の直径が1mmであり、X線透過性導電部材が繊維数3000本の炭素繊維束であって、被覆材がPVCであるものを準備した。基材として、100μmのPETのシートを準備した。当該PETシートの表面に13μmのAg/AgClの膜を形成した。これに対して、工具を用いて超音波融着によってリード線をAg/AgClに接合することで、各接続部を形成する。超音波溶着では、押圧力が3.4kgfに設定され、出力はMAXの値(150W)の50%(すなわち、75W)の値に設定された。また、超音波融着(工具をリード線に押し付けている時間)は、0.6秒であった。このような超音波融着によって、2個の独立した接続部を形成した。一個当たりの扁平部の大きさ(リード線の延在方向における大きさ)は2mmに設定され、扁平部同士は1mmのギャップを開けて離間していた。生体接触部材として、積水化成工業株式会社社製、導電性粘着シートCRRAを準備し、リード線及びAg/AgCl膜を覆うように積層した。
【0060】
(実施例2)
接続部が1個である点以外は実施例1と同様な実施例2に係る生体用電極を準備した。超音波溶着では、押圧力が3.4kgfに設定され、出力はMAXの値(150W)の50%(すなわち、75W)の値に設定された。また、超音波融着(工具をリード線に押し付けている時間)は、0.6秒であった。このような超音波融着によって、1個の接続部を形成した。一個当たりの接続部の大きさ(リード線の延在方向における大きさ)は10mmに設定された。
【0061】
(実施例3)
接続部が4個である点以外は実施例1と同様な実施例3に係る生体用電極を準備した。超音波溶着では、押圧力が3.4kgfに設定され、出力はMAXの値(150W)の70%(すなわち、105W)の値に設定された。また、超音波融着(工具をリード線に押し付けている時間)は、0.6秒である。このような超音波融着によって、4個の独立した接続部を形成した。一個当たりの接続部の大きさ(リード線の延在方向における大きさ)は2mmに設定され、接続部13a同士は1mmのギャップを開けて離間していた。
【0062】
(実施例4)
接続部が5個である点以外は実施例1と同様な実施例4に係る生体用電極を準備した。超音波溶着では、押圧力が3.4kgfに設定され、出力はMAXの値(150W)の70%(すなわち、105W)の値に設定された。また、超音波融着(工具をリード線に押し付けている時間)は、0.6秒である。このような超音波融着によって、5個の独立した接続部を形成した。一個当たりの接続部の大きさ(リード線の延在方向における大きさ)は2mmに設定され、扁平部20同士は1mmのギャップを開けて離間していた。
【0063】
(比較例1)
リード線の先端部の被覆材を除去して炭素繊維束を露出させた。リード線の炭素繊維が露出した部位を生体接触部材とAg/AgClが塗膜された基材により挟み込むように組み立てたものを比較例1に係る生体用電極として準備した。その他の条件は、実施例1と同様にした。
【0064】
(比較例2)
リード線の先端部の被覆材を除去して炭素繊維束を露出させた。リード線の炭素繊維が露出した部位を超音波融着によってAg/AgClが塗膜された基材に接続し、その後、生体接触部材により剥き出しになった炭素繊維束とAg/AgClが塗膜された基材を覆った比較例2に係る生体用電極を準備した。
【0065】
(長期保存性)
上述の実施例1〜4及び比較例1,2の生体用電極について、AAMIの規格番号EC−12の試験を行うことにより、長期保存性を検証した。結果を
図7に示す。当該試験では、生体用電極のインピーダンスが2000Ω以上となった場合に「不合格」と判定し、それより小さければ「合格」と判定した。
図7中の「製造直後」という項目は、製造後すぐにおける各生体用電極について電気特性の測定を行った結果を示している。「57℃−10週」という項目は、57℃環境下で10週間置いた後、各生体用電極について電気特性の測定を行った結果を示している。「49℃−18週」という項目は、49℃環境下で18週間置いた後、各生体用電極について電気特性の測定を行った結果を示している。これらの加速試験は、2年間の長期保存信頼性を確認するために実施された。
【0066】
図7の結果から、比較例1,2のように、炭素繊維束を被覆材から露出した状態でAg/AgCl膜と接続した場合は、生体接触部材の保湿剤が拡散する影響によって、長期保存した場合に十分な電気特性が得られないことが理解される。実施例1、3、4のように接続部が互いに独立した複数個である場合は、長期保存した場合の電気特性は安定していることが理解される。一方、実施例2のように接続部が1個の場合は、長期保存した場合に十分な電気的特性が得られないことが理解される。以上より、長期保存性を考慮した場合、接続部が複数個の場合が好適であることが理解される。
【0067】
(接合強度)
接続部を1〜5個とした生体用電極について、接合強度を測定する試験を行った。この試験は、引っ張り速度30cm/minの条件で行った。結果を
図8に示す。なお、
図8の表の「接続条件」の項目には超音波融着の条件が記載され、「接続部」の項目には、リード線の直径と、超音波ホーンの大きさ(リード線の延在方向における大きさ)と、接続部の数が記載されている。当該剥離強度の試験結果から、接続部が3個以上であれば、接合強度が高くなることが理解される。
【0068】
(抵抗値安定性)
上述の長期保存性及び剥離強度の観点から、接続部が4個の場合が最も好適であることが理解される。従って、接続部が4個の場合の抵抗値安定性について測定した。DINコネクター端子と接続されたPVCカラーコード6色(ピンク、黒、茶、緑、黄、赤)をリード線として準備し、各色のリード線のそれぞれについて4個の接続部でAg/AgCl膜と接続した。各色のリード線の長さは1.5mとした。また、このようなサンプルを3束(N1、N2、N3)準備した。Ag/AgCl膜とDINコネクター端子との間の電気抵抗を測定した。測定結果を
図9に示す。
図9に示すように、1.5mのリード線の規格値が300Ωであるのに対し、いずれのサンプルのいずれのリード線においても電気抵抗が200Ω以下となった。このように、抵抗値安定性の点においても問題が無いことが理解された。