特許第6815137号(P6815137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815137
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】半導体駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20210107BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20210107BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20210107BHJP
【FI】
   H03K17/08 C
   H02M1/08 A
   H02M1/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-173247(P2016-173247)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-42042(P2018-42042A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康行
(72)【発明者】
【氏名】権藤 貴一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 哲治
(72)【発明者】
【氏名】拮石 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 桂二
(72)【発明者】
【氏名】道岡 力
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−62860(JP,A)
【文献】 特開2012−95046(JP,A)
【文献】 特開2015−154701(JP,A)
【文献】 特開2018−82599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/00
H02M1/08−1/096
H03K17/08−17/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電流供給部への入力信号の入力を契機として電源から供給された供給電流に基づいて、半導体素子を駆動させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
駆動時に前記半導体素子に対する過電流を検出する過電流検出部と、
前記過電流検出部によって前記過電流を検出した際に、前記供給電流を低下させて前記駆動信号の生成を停止させることにより、前記半導体素子に流れる電流を遮断する電流遮断部と
を備える半導体駆動装置であって、
前記電流遮断部は、前記供給電流の一部をバイパスさせる受動素子を含むバイパス回路を備えるとともに、
前記バイパス回路は、前記過電流の検出時に、前記供給電流の一部を、前記電源と前記駆動信号生成部とを繋ぐ配線から過電流信号生成部を介して前記供給電流供給部にバイパスさせることで、前記供給電流を徐々に低下させる
ことを特徴とする半導体駆動装置。
【請求項2】
前記受動素子は抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の半導体駆動装置。
【請求項3】
前記配線から前記バイパス回路が分岐し、
前記配線において、前記バイパス回路が分岐する分岐点と前記駆動信号生成部を構成する駆動用ICとの間に駆動信号生成部側抵抗が配置されており、
前記抵抗の抵抗値は、前記駆動信号生成部側抵抗の抵抗値よりも高い
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体駆動装置。
【請求項4】
前記バイパス回路は、ダイオードと前記抵抗とを直列に接続してなることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流の検出時に、電流を遮断して半導体素子を保護する機能を有した半導体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体駆動装置は、供給電流に基づいて半導体素子を駆動させる機能を有している。ところが、半導体素子の駆動時に短絡等の異常が発生すると、半導体素子に過電流が流れることにより、半導体素子が破損してしまう可能性がある。このため、従来においては、過電流の検出時に半導体素子に流れる電流を遮断することにより、半導体素子を保護する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。詳述すると、特許文献1には、短絡検知時に、ゲート抵抗値の大きいスイッチング素子に切り替えてスイッチング速度を遅くすることにより、半導体素子を保護する技術が開示されている。また、特許文献2には、過電流の検出時に過電流を抑制する機能と、ゲート抵抗値を切り替えてスイッチング速度を遅くする機能とによって、半導体素子を保護する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−117112号公報(図2等)
【特許文献2】特開2012−191320号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の従来技術では、ゲート抵抗値を調整するための回路にゲート抵抗が複数存在するため、回路が複雑になる。その結果、半導体駆動装置の製造コストが上昇したり、小型化が困難になったりするおそれがある。また、特許文献2に記載の従来技術では、過電流を検出したことを契機として半導体素子に流れる電流を抑制する制御を行った後、抵抗値が高い抵抗素子に切り替えて半導体素子に流れる電流を遮断する制御を行っている。その結果、過電流を検出してから半導体素子に流れる電流の遮断を開始させるまでの時間が長くなってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、過電流の検出時に半導体素子に流れる電流を確実に遮断しつつ、低コスト化や小型化を図ることができるとともに、過電流の検出から半導体素子に流れる電流の遮断開始までの動作を素早く行うことができる半導体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、供給電流供給部への入力信号の入力を契機として電源から供給された供給電流に基づいて、半導体素子を駆動させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、駆動時に前記半導体素子に対する過電流を検出する過電流検出部と、前記過電流検出部によって前記過電流を検出した際に、前記供給電流を低下させて前記駆動信号の生成を停止させることにより、前記半導体素子に流れる電流を遮断する電流遮断部とを備える半導体駆動装置であって、前記電流遮断部は、前記供給電流の一部をバイパスさせる受動素子を含むバイパス回路を備えるとともに、前記バイパス回路は、前記過電流の検出時に、前記供給電流の一部を、前記電源と前記駆動信号生成部とを繋ぐ配線から過電流信号生成部を介して前記供給電流供給部にバイパスさせることで、前記供給電流を徐々に低下させることを特徴とする半導体駆動装置がある。
【0007】
従って、上記手段1に記載の発明では、過電流検出部が過電流を検出した際に、電流遮断部が半導体素子に流れる電流を遮断することにより、半導体素子が確実に保護される。しかも、過電流を検出した際には、供給電流の一部が電流遮断部が備えるバイパス回路に流れることにより、半導体素子に流れる電流が遮断されるが、バイパス回路は、例えばICチップ等の能動素子を用いずに、受動素子を用いて構成されるものである。即ち、バイパス回路がシンプルな回路となるため、過電流の検出時に半導体素子に流れる電流を確実に遮断しつつ、半導体駆動装置の低コスト化、小型化を図ることができる。
【0008】
また、上記手段1に記載の半導体駆動装置では、過電流を検出すると同時に、供給電流の一部をバイパス回路にバイパスさせることが可能である。このため、過電流を検出すると同時に、供給電流を低下させて駆動信号の生成を停止させ、半導体素子に流れる電流を遮断することができる。つまり、過電流の検出から半導体素子に流れる電流の遮断開始までの動作を素早く行うことができる。
【0009】
上記半導体駆動装置は、半導体素子に流れる電流を遮断する電流遮断部を備え、電流遮断部は、受動素子を含むバイパス回路を備えている。ここで、受動素子は特に限定される訳ではなく、例えば、抵抗や発光ダイオードなどを用いることができるが、受動素子は抵抗であることが好ましい。このようにした場合、抵抗の抵抗値を高くすることにより、供給電流の流れがバイパス回路側に切り替わる速度を遅くすることができる。その結果、半導体素子に流れる電流の遮断速度が低下するため、遮断時におけるサージ電圧の発生を防止することができ、ひいては、サージ電圧を起因とする半導体素子の破損を防止することができる。また、バイパス回路は、ダイオードと抵抗とを直列に接続してなることが好ましい。このようにすれば、バイパス回路を流れる電流の向きをダイオードによって一方向に設定できるため、バイパス回路に流れる供給電流を確実に抵抗に導くことができる。
【0010】
なお、電源と駆動信号生成部とを繋ぐ配線からバイパス回路が分岐し、配線において、バイパス回路が分岐する分岐点と駆動信号生成部を構成する駆動用ICとの間に駆動信号生成部側抵抗が配置されており、抵抗の抵抗値は、駆動信号生成部側抵抗の抵抗値よりも高いことが好ましい。ところで、過電流の検出時においては、バイパス回路側に多くの供給電流を流すことにより、駆動用IC側に流れる供給電流を少なくしている。しかし、駆動用IC側の抵抗(駆動信号生成部側抵抗)の抵抗値を高くし過ぎると、過電流が検出されていない通常時においては、駆動用IC側に供給電流が殆ど流れなくなるという問題がある。そこで、上記手段1では、バイパス回路側の抵抗の抵抗値を駆動用IC側の抵抗の抵抗値よりも高くすることにより、過電流の検出時における、駆動用IC側に流れる供給電流の減少量を調整している。その結果、通常時においても、駆動用IC側に供給電流を確実に流すことができる。
【0011】
上記半導体駆動装置は、駆動時に半導体素子に対する過電流を検出する過電流検出部を備える。なお、半導体駆動装置は、過電流検出部によって過電流を検出した際に、過電流の検出を示す過電流検出信号を生成する過電流信号生成部を備えることが好ましい。このようにすれば、生成された過電流検出信号を用いて、半導体素子に流れる電流を確実に遮断することができる。さらに、半導体駆動装置は、入力信号の入力を契機として、駆動信号生成部に対する供給電流の供給を開始させる供給電流供給部を備え、供給電流供給部は、過電流検出信号の入力を契機として、入力信号が入力されたか否かにかかわらず、駆動信号生成部に対する供給電流の供給を遮断させ、駆動信号生成部は、供給電流の供給が遮断されたことを契機として、半導体素子に流れる電流を遮断することが好ましい。このようにすれば、供給電流供給部に過電流検出信号が入力されると、入力信号が入力されたとしても、供給電流供給部から駆動信号生成部に対する供給電流の供給がなされなくなる。その結果、供給電流の供給が確実に遮断されるため、半導体素子に流れる電流を確実に遮断することができる。しかも、バイパス回路は、供給電流の一部を過電流信号生成部にバイパスさせることが好ましい。このようにすれば、供給電流を利用して容易に過電流検出信号を生成することができ、ひいては、供給電流を利用して半導体素子を容易に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における半導体駆動装置の電気的構成を示すブロック図。
図2】半導体駆動装置の電気的構成を示す回路図。
図3】半導体駆動装置の動作態様を示すタイミングチャート。
図4】バイパス回路側の抵抗の抵抗値とフォトカプラに入力される入力電流の遮断速度との関係を示すグラフ。
図5】他の実施形態における半導体駆動装置の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1図2に示されるように、本実施形態の半導体駆動装置10は、プラズマリアクタを制御する半導体素子11を駆動させるための装置である。プラズマリアクタは、自動車のエンジンの排ガスに含まれているPM(Particulate Matter:粒子状物質)を除去する装置であり、排気管に取り付けられている。また、プラズマリアクタは、放電電極が形成された複数のパネルを積層した構造を有している。この場合、電源から供給されてきたパルス電圧が隣接するパネル間に印加されると、誘電体バリア放電が生じ、放電電極間に誘電体バリア放電によるプラズマが発生する。そして、プラズマの発生により、放電電極間を流通する排ガスに含まれるPMが酸化(燃焼)されて除去される。
【0015】
図2に示されるように、半導体駆動装置10には制御基板(図示略)が設けられ、制御基板上には電気回路12が形成されている。電気回路12は、パルス生成部20(供給電流供給部)、駆動信号生成部30、過電流検出部40及び電流遮断部50を備えている。
【0016】
パルス生成部20は、信号源21から出力された入力信号の入力を契機として、駆動信号生成部30に対する供給電流の供給を開始させるためのものである。パルス生成部20は電気経路22を有している。電気経路22の始端は、電源(Vcc)に電気的に接続されている。また、電気経路22上には抵抗23,24が設けられている。なお、抵抗23の抵抗値は22kΩに設定され、抵抗24の抵抗値は8kΩに設定されている。また、抵抗23の一端は電源(Vcc)に電気的に接続されている。抵抗23の他端は抵抗24の一端に接続され、抵抗24の他端は過電流信号生成部60に電気的に接続されている。また、抵抗23の他端は、コンパレータ25のプラス側入力端子に接続されている。なお、コンパレータ25のマイナス側入力端子には、抵抗26の一端と抵抗27の一端とが接続されている。抵抗26の抵抗値は10kΩに設定され、抵抗27の抵抗値は150kΩに設定されている。また、抵抗26の他端には信号源21が接続され、抵抗27の他端は接地されている。そして、コンパレータ25の出力端子は駆動信号生成部30に接続されている。
【0017】
図2に示されるように、コンパレータ25は、マイナス側入力端子に入力される信号(入力信号)の電圧が閾値よりも高い場合、即ち、プラス側入力端子に入力される信号の電圧よりも高い場合に、出力端子から駆動信号生成部30に「L」レベルのパルス信号を出力するようになっている。また、コンパレータ25は、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧が閾値よりも低い場合、即ち、プラス側入力端子に入力される信号の電圧よりも低い場合に、出力端子から駆動信号生成部30に「H」レベルのパルス信号を出力するようになっている。
【0018】
駆動信号生成部30は、パルス生成部20への入力信号の入力を契機として供給された供給電流に基づいて、半導体素子11を駆動させるための駆動信号を生成するようになっている。駆動信号生成部30は、1次側電気経路31と2次側電気経路32とを有している。1次側電気経路31の始端は電源(Vcc)に電気的に接続され、1次側電気経路31の終端はコンパレータ25の出力端子に電気的に接続されている。よって、コンパレータ25の出力端子から「L」レベルのパルス信号が出力されると、1次側電気経路31の始端と終端との間に電位差が生じるため、電源(Vcc)から1次側電気経路31に供給電流が流れるようになる。また、1次側電気経路31上には、駆動信号生成部側抵抗33と、フォトカプラ34(駆動用IC)を構成する発光ダイオード35(発光素子)とが設けられている。なお、駆動信号生成部側抵抗33の抵抗値は、500Ω以上2kΩ以下(本実施形態では1kΩ)に設定されている。また、駆動信号生成部側抵抗33の一端は電源(Vcc)に電気的に接続され、駆動信号生成部側抵抗33の他端は、発光ダイオード35のアノード端子に電気的に接続されている。なお、発光ダイオード35のカソード端子は、コンパレータ25の出力端子に電気的に接続されている。
【0019】
また、図2に示されるように、2次側電気経路32の始端は、電気経路13上に設けられた半導体素子11のゲートに電気的に接続され、2次側電気経路32の終端は接地されている。なお、本実施形態の半導体素子11は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )などの半導体素子である。また、2次側電気経路32上には、ゲート抵抗36と、フォトカプラ34を構成するフォトトランジスタ37(受光素子)とが設けられている。なお、ゲート抵抗36の抵抗値は10Ωに設定されている。ゲート抵抗36の一端は半導体素子11のゲートに電気的に接続され、ゲート抵抗36の他端は、フォトトランジスタ37のコレクタ端子に電気的に接続されている。また、フォトトランジスタ37のエミッタ端子は接地されている。なお、フォトカプラ34は、1次側電気経路31を流れる供給電流を発光ダイオード35によって光に変換し、その光をフォトトランジスタ37で受光して再び電流に変換するようになっている。その結果、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に電流(駆動信号)が流れることにより、半導体素子11がオン状態に切り替わり、半導体素子11にドレイン電流が流れるようになる。
【0020】
図2に示されるように、過電流検出部40は、半導体素子11の駆動時に半導体素子11に対する過電流を検出するためのものである。過電流検出部40は電気経路41を有している。電気経路41の始端は電源(Vcc)に電気的に接続され、電気経路41の終端は接地されている。また、電気経路41上には抵抗42,43が設けられている。なお、抵抗42の抵抗値は45kΩに設定され、抵抗43の抵抗値は30kΩに設定されている。抵抗42の一端は電源(Vcc)に電気的に接続されている。抵抗42の他端は抵抗43の一端に接続され、抵抗43の他端は接地されている。また、抵抗42の他端は、コンパレータ44のプラス側入力端子に接続されている。なお、コンパレータ44のマイナス側入力端子は、電気経路13における半導体素子11よりも始端側の部分に接続されている。そして、コンパレータ44の出力端子は過電流信号生成部60に接続されている。
【0021】
図2に示されるように、コンパレータ44は、プラス側入力端子に入力される信号の電圧が、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧よりも低い場合に、出力端子から過電流信号生成部60に「L」レベルの信号を出力するようになっている。また、コンパレータ44は、プラス側入力端子に入力される信号の電圧が、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧よりも高い場合に、出力端子から過電流信号生成部60に「H」レベルの信号を出力するようになっている。
【0022】
電流遮断部50は、過電流検出部40によって過電流を検出した際に、供給電流を低下させて駆動信号の生成を停止させることにより、半導体素子11に流れる電流を遮断するためのものである。詳述すると、電流遮断部50はバイパス回路51を備えている。バイパス回路51は、上記した1次側電気経路31を構成する配線のうち、電源(Vcc)と駆動信号生成部30とを繋ぐ配線52から分岐している。具体的に言うと、バイパス回路51の始端は、配線52上に設けられた抵抗53と上記した駆動信号生成部側抵抗33とを繋ぐ配線に接続されている。なお、抵抗53の抵抗値は5kΩに設定されている。そして、バイパス回路51の終端は、過電流検出部40のコンパレータ44の出力端子と過電流信号生成部60とを繋ぐ配線に接続されている。また、バイパス回路51は、ダイオード54と抵抗55(受動素子)とを直列に接続してなる回路である。なお、抵抗55の抵抗値は、1kΩ以上200kΩ以下(本実施形態では100kΩ)に設定されている。また、ダイオード54のアノード端子は、配線52においてバイパス回路51が分岐する分岐点A1に電気的に接続され、ダイオード54のカソード端子は、抵抗55の一端に電気的に接続されている。そして、抵抗55の他端は、コンパレータ44の出力端子と過電流信号生成部60とを繋ぐ配線に電気的に接続されている。なお、抵抗55は、1次側電気経路31を流れる供給電流の一部をバイパスさせる機能を有している。
【0023】
図2に示されるように、上記した駆動信号生成部側抵抗33は、配線52において分岐点A1とフォトカプラ34との間に配置されている。また、上記したように、駆動信号生成部側抵抗33の抵抗値は1kΩに設定され、抵抗55の抵抗値は100kΩに設定されている。即ち、バイパス回路51側の抵抗55の抵抗値は、1次側電気経路31側の駆動信号生成部側抵抗33の抵抗値よりも高く設定されている。その結果、バイパス回路51は、過電流の検出時に、1次側電気経路31側に流れる供給電流の一部を後述する過電流信号生成部60にバイパスさせることにより、供給電流を徐々に低下させることができる。なお、フォトカプラ34の仕様に応じて、フォトカプラ34がオン状態に切り替わるために必要な電流が変化したり、ダイオード54の仕様に応じて、バイパス回路51側に流れる電流が変化したりする可能性がある。このため、駆動信号生成部側抵抗33や抵抗55等の抵抗値は、フォトカプラ34やダイオード54の仕様に応じて変更されるようになる。
【0024】
図1図2に示されるように、上記電気回路12は、過電流検出部40によって過電流を検出した際に、過電流の検出を示す過電流検出信号を生成する過電流信号生成部60を備えている。過電流信号生成部60は電気経路61を有している。電気経路61の始端は電源(Vcc)に電気的に接続され、電気経路61の終端は接地されている。また、電気経路61上には抵抗62,63が設けられている。なお、抵抗62,63の抵抗値は、それぞれ10kΩに設定されている。抵抗62の一端は電源(Vcc)に電気的に接続されている。抵抗62の他端は抵抗63の一端に接続され、抵抗63の他端は接地されている。また、抵抗62の他端は、コンパレータ64のプラス側入力端子に接続されている。なお、コンパレータ64のマイナス側入力端子には、過電流検出部40側のコンパレータ44の出力端子が接続されている。そして、コンパレータ64の出力端子は、パルス生成部20が備える抵抗24の他端に接続されている。
【0025】
図2に示されるように、コンパレータ64は、プラス側入力端子に入力される信号の電圧が、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧よりも低い場合に、出力端子からパルス生成部20側のコンパレータ25のプラス側入力端子に「L」レベルの信号を出力するようになっている。また、コンパレータ64は、プラス側入力端子に入力される信号の電圧が、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧よりも高い場合に、出力端子からパルス生成部20に「H」レベルの信号(過電流検出信号)を出力するようになっている。
【0026】
なお、パルス生成部20は、過電流検出信号の入力を契機として、入力信号が入力されたか否かにかかわらず、駆動信号生成部30に対する供給電流の供給を遮断させるようになっている。即ち、コンパレータ25のプラス側入力端子に過電流検出信号が入力された場合には、コンパレータ25のマイナス端子に入力信号が入力されたとしても、マイナス側入力端子に入力される信号の電圧が、プラス側入力端子に入力される信号の電圧よりも高くなることはない。その結果、入力信号が入力されたか否かにかかわらず、コンパレータ25の出力端子からは常時「H」レベルのパルス信号が出力されるため、駆動信号生成部30に対する供給電流の供給が遮断されるようになる。さらに、駆動信号生成部30は、供給電流の供給が遮断されたことを契機としてフォトカプラ34が作動しなくなるため、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に流れる電流が遮断される。
【0027】
次に、半導体駆動装置10の動作態様を説明する。
【0028】
まず、過電流が検出されない通常動作、具体的には、半導体素子11をオン状態に切り替える際の動作について説明する(図3のタイミング(a)を参照)。この場合、信号源21から出力され、コンパレータ25のマイナス側入力端子に入力される入力信号が、「L」レベル→「H」レベルに変化する。これに伴い、コンパレータ25のマイナス側入力端子に入力された入力信号の電圧が閾値(即ち、コンパレータ25のプラス側入力端子に入力される信号の電圧)よりも高くなるため、コンパレータ25の出力端子から出力されるパルス信号が、「H」レベル→「L」レベルに変化する。その結果、コンパレータ25の出力端子に接続された1次側電気経路31の始端と終端との間に電位差が生じるため、電源(Vcc)から1次側電気経路31に供給電流が流れ始めるようになる。よって、フォトカプラ34がオン状態になり、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に電流(駆動信号)が流れるため、半導体素子11がオン状態に切り替わり、半導体素子11にドレイン電流が流れ始める。
【0029】
次に、通常動作、具体的には、半導体素子11をオフ状態に切り替える際の動作について説明する(図3のタイミング(b)を参照)。この場合、コンパレータ25のマイナス側入力端子に入力される入力信号が、「H」レベル→「L」レベルに変化する。これに伴い、マイナス側入力端子に入力された入力信号の電圧が閾値よりも低くなるため、コンパレータ25の出力端子から出力されるパルス信号が、「L」レベル→「H」レベルの信号に変化する。その結果、1次側電気経路31の始端と終端との間の電位差がなくなるため、電源(Vcc)から1次側電気経路31に対して供給電流が流れなくなる。よって、フォトカプラ34がオフ状態になり、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に対して電流(駆動信号)が流れなくなるため、半導体素子11がオフ状態に切り替わるようになる。
【0030】
さらに、過電流を検出する検出動作、具体的には、半導体素子11をオン状態に切り替える際の動作について説明する(図3のタイミング(c)を参照)。本実施形態のタイミング(c)では、上記したタイミング(a)と同様の動作が行われる。即ち、コンパレータ25のマイナス側入力端子に入力される入力信号が「H」レベルに変化し、コンパレータ25の出力端子から出力されるパルス信号が「L」レベルに変化すると、1次側電気経路31の始端と終端との間に電位差が生じ、1次側電気経路31に供給電流が流れ始める。その結果、フォトカプラ34がオン状態になり、半導体素子11がオン状態に切り替わるようになる。
【0031】
次に、検出動作、具体的には、半導体素子11をオフ状態に切り替える際の動作について説明する(図3のタイミング(d)を参照)。この場合、半導体素子11に流れる電流が急激に増加し、過電流の状態になったことを検知する。具体的には、過電流検出部40のコンパレータ44を用いて、電気経路13上にある半導体素子11のドレイン−ソース間の電圧をモニタする。そして、電気経路13に過電流が流れることにより、電気経路13からコンパレータ44のマイナス側入力端子に入力される信号の電圧が、電気経路41からコンパレータ44のプラス側入力端子に入力される信号の電圧よりも高くなると、コンパレータ44の出力端子から出力される信号が、「H」レベル→「L」レベルに変化する。その結果、コンパレータ44の出力端子とコンパレータ64のマイナス側入力端子とを繋ぐ配線に接続されたバイパス回路51の両端間に電位差が生じるため、電源(Vcc)からバイパス回路51に供給電流が流れ始めるようになる。そして、バイパス回路51に供給電流の一部が流れ始めるのに伴い、1次側電気経路31上にあるフォトカプラ34の発光ダイオード35に入力される供給電流(入力電流)が徐々に低下し、フォトカプラ34がオフ状態になる。なお、本実施形態では、バイパス回路51側の抵抗55の抵抗値が大きくなるに従って、フォトカプラ34に入力される入力電流の遮断速度が遅くなる(図4参照)。そして、フォトカプラ34がオフ状態になると、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に対して電流が流れなくなるため、半導体素子11が遮断される(オフ状態に切り替わる)ようになる。
【0032】
その後、コンパレータ44の出力端子から出力された「L」レベルの信号が、過電流信号生成部60にあるコンパレータ64のマイナス側入力端子に入力される。この場合、コンパレータ64のマイナス側入力端子に入力される信号の電圧が、電気経路61からコンパレータ64のプラス側入力端子に入力される信号の電圧よりも低くなるため、コンパレータ64の出力端子から出力される過電流検出信号が、「L」レベル→「H」レベルに変化する。なお、本実施形態の過電流検出信号は、「H」レベルの信号である。その後、過電流電出信号は、パルス生成部20にあるコンパレータ25のプラス側入力端子に入力される。
【0033】
また、過電流を検出したにもかかわらず、入力信号の停止が間に合わずに、次のパルス信号が入力されてしまう場合の動作について説明する(図3のタイミング(e)を参照)。この場合、信号源21から出力され、コンパレータ25のマイナス側入力端子に入力される入力信号は、「L」レベル→「H」レベルに変化してしまう。
【0034】
しかしながら、過電流を検出した時点で、バイパス回路51側には供給電流の一部が流れているため、駆動信号生成部30には、フォトカプラ34をオン状態にするための供給電流が十分に流れなくなっている。その結果、半導体素子11のゲートから2次側電気経路32に電流が流れなくなるため、半導体素子11がオン状態に至ることはない。また、過電流検出信号がコンパレータ25のプラス側入力端子に入力されているため、入力信号をコンパレータ25のマイナス側端子に入力したとしても、コンパレータ25の出力端子から出力されるパルス信号が「H」レベル→「L」レベルに反転することはない。よって、何らかの不具合によってバイパス回路51が機能しない場合においても、1次側電気経路31にはフォトカプラ34をオン状態にする供給電流が流れないため、半導体素子11がオン状態に至ることはない。以上のことから、過電流の検出時には、半導体素子11に流れる電流が確実に遮断されるようになる。
【0035】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態の半導体駆動装置10では、過電流検出部40が過電流を検出した際に、電流遮断部50が半導体素子11に流れる電流を遮断することにより、半導体素子11が確実に保護される。しかも、過電流を検出した際には、供給電流の一部がバイパス回路51に流れることにより、半導体素子11に流れる電流が遮断されるが、バイパス回路51は、例えばICチップ等の能動素子を用いずに、受動素子である抵抗55のみを用いて構成されるものである。即ち、バイパス回路51がシンプルな回路となるため、過電流の検出時に半導体素子11に流れる電流を確実に遮断しつつ、半導体駆動装置10の低コスト化、小型化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、過電流を検出すると同時に、供給電流の一部をバイパス回路51にバイパスさせることが可能である。このため、過電流を検出すると同時に、フォトカプラ34に流れる供給電流を低下させて、半導体素子11を駆動させる駆動信号の生成を停止させるとともに、半導体素子11に流れる電流を遮断することができる。つまり、過電流の検出から半導体素子11に流れる電流の遮断開始までの動作を素早く行うことができる。
【0038】
(2)本実施形態では、抵抗55の抵抗値(100kΩ)が駆動信号生成部側抵抗33の抵抗値(1kΩ)よりも高くなることにより、フォトカプラ34側への供給電流の流れがバイパス回路51側に切り替わる速度を遅くすることができる。その結果、フォトカプラ34の発光ダイオード35に入力される供給電流の遮断速度、ひいては、半導体素子11に流れる電流の遮断速度が低下するため、遮断時におけるサージ電圧の発生を防止することができ、ひいては、サージ電圧を起因とする半導体素子11の破損を防止することができる。
【0039】
(3)本実施形態では、過電流を検出した時点でバイパス回路51側に供給電流の一部を流すことにより、フォトカプラ34をオン状態にする供給電流を徐々に低下させるようにしている。しかも、本実施形態では、過電流を検出した時点で過電流検出信号をコンパレータ25のプラス側入力端子に入力させ、出力端子から出力されるパルス信号が「H」レベル→「L」レベルに反転しないようにすることにより、1次側電気経路31に、フォトカプラ34をオン状態にする供給電流を流さないようにしている。即ち、フォトカプラ34に流れる供給電流が2段階で遮断されるため、半導体素子11に流れる電流を確実に遮断することができる。
【0040】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態のバイパス回路51は、ダイオード54と抵抗55とを直列に接続してなる回路であり、始端側にダイオード54が配置され、ダイオード54よりも終端側に抵抗55が配置されていた。しかし、バイパス回路51の始端側に抵抗55を配置し、抵抗55よりもバイパス回路51の終端側にダイオード54を配置してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、過電流の検出方法として、半導体素子11のドレイン−ソース間の電圧をモニタする方法が用いられていた。しかし、カレントセンスで電流をモニタする方法(IGBTなどの素子内部でコレクタ電流を分流(1:1000程度)し、微小電流で間接的にコレクタ電流をモニタする方法)や、シャント抵抗によりドレイン電流(IGBTの場合コレクタ電流)をモニタする方法などを用いてもよい。
【0043】
・上記実施形態の半導体駆動装置10は、1つの半導体素子11に対する過電流を検出した際に、半導体素子11に流れる電流を遮断するようになっていた。しかし、半導体駆動装置は、半導体素子11に対する過電流を検出した際に電流を遮断する電気回路12を複数(例えば3つ)備えたものであってもよい。この場合、半導体駆動装置は、複数(例えば3つ)の半導体素子11のうち、過電流を検出した半導体素子11のみの電流を遮断するようになっている。また、図5に示されるように、半導体駆動装置70は、複数(ここでは3つ)の半導体素子71に対する過電流を検出した際に電流を遮断する電気回路72を備えたものであってもよい。この場合、半導体駆動装置70は、少なくとも1つの半導体素子71に対する過電流を検出すれば、全ての半導体素子71の電流を遮断するようになる。
【0044】
・上記実施形態の半導体駆動装置10は、自動車に搭載したプラズマリアクタに用いられていたが、例えば、船舶等に搭載したプラズマリアクタに用いてもよい。また、上記実施形態の半導体駆動装置10は、半導体検査装置等の他の装置に用いられていてもよい。
【0045】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0046】
(1)上記手段1において、前記駆動信号生成部を構成する駆動用ICはフォトカプラであることを特徴とする半導体駆動装置。
【0047】
(2)上記手段1において、電源と前記駆動信号生成部とを繋ぐ配線から前記バイパス回路が分岐し、前記バイパス回路は、ダイオードと前記抵抗とを直列に接続してなり、前記ダイオードは、前記抵抗よりも前記配線において前記バイパス回路が分岐する分岐点寄りに配置されていることを特徴とする半導体駆動装置。
【符号の説明】
【0048】
10,70…半導体駆動装置
11,71…半導体素子
20…供給電流供給部としてのパルス生成部
30…駆動信号生成部
33…駆動信号生成部側抵抗
34…駆動用ICとしてのフォトカプラ
40…過電流検出部
50…電流遮断部
51…バイパス回路
52…電源と駆動信号生成部とを繋ぐ配線
54…ダイオード
55…受動素子としての抵抗
60…過電流信号生成部
A1…分岐点
図1
図2
図3
図4
図5