(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均球形度が0.60以上であり、また粒子径の頻度分布曲線において、30μm以上50μm未満の範囲において最大となる極大値bを有するピークBと、50μm以上80μm以下の範囲において最大となる極大値aを有するピークAとが存在し、極大値a/極大値bの式により算出される値が1以上2.12以下であり、さらにピークBとピークAとの中間において最小となる極小値cが、極大値bまたは極大値aのいずれか小なる値の95%以下である六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体。
粒子径の累積分布曲線における累積10%径d10が10μm以上であり、累積90%径d90が150μm以下である、請求項1または2記載の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体。
六方晶窒化ホウ素一次粒子の長径と厚さのアスペクト比が10を超え20以下の鱗片状である一次粒子が凝集している、請求項1〜3のいずれか一項記載の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体。
【背景技術】
【0002】
従来から、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU等に代表される発熱性電子部品は、大電力化が年々進みつつあり、また他方では電子機器類の軽薄短小化にも伴い、発熱性電子部品の実装密度も増加する一方であり、電子機器内部の発熱密度も年々増加している。そのため、発熱性電子部品を使用する際に発生する熱を効率的に放熱させる方法や、熱インターフェース材(放熱材ともいう)に関する研究開発は継続的に進められている。
【0003】
発熱性電子部品の発生する熱を放熱する方法としては、発熱性電子部品または発熱性電子部品を実装したプリント配線板に、電気絶縁性備えた平板状またはシート状の熱インターフェース材を介して、ヒートシンク等の放熱部材を取り付ける方法などが一般的である。また、プリント配線板には、その中間に電気絶縁層が通常設けられているが、この電気絶縁層も、同時に優れた熱インターフェース材であることが求められる。この熱インターフェース材としては、例えばセラミックス粒子と熱硬化性樹脂とを含む組成物が好ましく用いられている。
【0004】
前記セラミックス粒子としては、基本的に電気絶縁性を有し、熱伝導性にも優れる六方晶窒化ホウ素が注目され、好ましく用いられている。但し、その結晶構造に由来して、六方晶窒化ホウ素の一次粒子は鱗片状で、面内方向(a軸方向ともいう)の熱伝導率が約400W/(m・K)、厚み方向(c軸方向ともいう)の熱伝導率が約2W/(m・K)であり、熱伝導率の異方性が甚だしく大きい。そのため、六方晶窒化ホウ素の一次粒子をそのまま樹脂中に充填して、平板状またはシート状の熱インターフェース材の製造を試みると、鱗片状の一次粒子が、熱インターフェース材の面方向に沿って平面的に配向する傾向が強く、熱を伝達したい方向(即ち熱インターフェース材の厚み方向)と六方晶窒化ホウ素一次粒子の高い熱伝導率を有する方向とが必ずしも一致せず、むしろ直交するため、六方晶窒化ホウ素の面内方向の高い熱伝導性を十分に活かすことができなかった。
【0005】
そのため、このような六方晶窒化ホウ素の一次粒子の形状に起因する熱伝導率の異方性を緩和し、等方的な熱伝導率を持たせるように意図された、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体が開発されている。
【0006】
例えば特許文献1及び2では、六方晶窒化ホウ素一次粒子を、平板状またはシート状の熱インターフェース材中で同一方向に配向させないように、予め等方的に凝集させ、熱伝導率の異方性を緩和した六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体が提案されている。但し、ここに開示されている六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の形状は、いびつな松かさ状(例えば、特許文献1:段落[0020]
図6参照)や塊状(例えば、特許文献2:段落[0037]
図3〜5参照)であるため、樹脂への充填割合にも限界が生じ、熱インターフェース材としたときの熱伝導率は、現在の要求水準を必ずしも満たさなくなっていた。
【0007】
凝集体の形状を改善する試みとして、特許文献3では、ホウ酸塩粒子を六方晶窒化ホウ素一次粒子で被覆した、平均球形度の高い六方晶窒化ホウ素被覆粒子の使用が提案されている。前記被覆粒子においては、熱伝導率の異方性の抑制と樹脂への充填性の向上には一定の効果がみられるものの、熱伝導率の低いホウ酸塩粒子を含有する(例えば、特許文献3の段落[0020]、[0028]参照)ため、六方晶窒化ホウ素の高い熱伝導率を十分に活かしきれない課題があった。
【0008】
特許文献4には、窒化ホウ素粉末の頻度粒度分布において、特定の粒子径(粒径ともいう)領域に存在する二つの極大値の比率を規定した窒化ホウ素粉末(本発明でいう、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体)、即ち100〜300μmの粒子径領域に極大値Aを有する、熱伝導性に関する異方性の少ない特性を有する比較的大きな粒子と、5〜30μmの粒子径領域に極大値Bを有する、窒化ホウ素粉末全体の流動性を低く保ち樹脂中に窒化ホウ素粉末を可能な限り高充填できるようにする役目を担う比較的小さな粒子とを含み、極大値Bの頻度に対する極大値Aの頻度の比率の範囲を規定した窒化ホウ素粉末が開示されており、さらに前記窒化ホウ素粉末を含む樹脂組成物と、それを用いて放熱特性が改善された熱インターフェース材が記載されている。
【0009】
但し、特許文献4に開示される発明がなされた当時は、粒子径が100μm未満の粒子径であって、等方的な熱伝導性を有する六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を得る技術は確立されておらず、そのため異方性を緩和するために多数の一次粒子を凝集させ、その結果100〜300μmの粒子径領域に極大値を有するような、比較的大きな粒子径の窒化ホウ素凝集体粉末を選別して用い、さらに全体の流動性を改善するために、10〜50μmの粒子径領域に極大値を有するような比較的小さな粒子径の窒化ホウ素粉末とを混合して用いるという手段を開発したものである。
【0010】
さらに、特許文献5には、優れた電気絶縁性と厚さ方向の熱伝導性とを有する、粒径分布曲線(本発明では粒子径の頻度分布曲線ともいう)において、粒子径1μm超過500μm以下の範囲に極大ピークを1つ有する六方晶窒化ホウ素一次粒子の凝集体であり、さらに前記凝集体を超音波照射により凝集状態を破壊した後の粒径分布曲線においては、粒子径1μm以上20μm以下の範囲内に第一の極大ピークを有し、また粒子径1μm超過350μm以下の範囲内で、第一の極大ピークよりも大きい粒子径で、且つ初期の極大ピーク以下の粒子径に第二の極大ピークを有し、さらに「第一の極大ピークの高さ」/「第二の極大ピークの高さ」が0.1以上8.0以下である、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物が記載されている。
【0011】
しかしながら、特許文献4及び特許文献5では、100μmより大きな粒子径にピークを持つような比較的大きな窒化ホウ素一次粒子凝集体を用いることも可能とする発明であり、薄膜化が進む熱インターフェース材には、いずれ対応しきれなくなるという課題を内在しており、また粒子径が大きいと熱インターフェース材表面の平滑度も荒くなる傾向があるため、例えば熱インターフェース材に接して配置する冷却器等との密着性を改善して、さらに放熱特性を改善できる余地が残されていた。
【0012】
即ち、進化が進む熱インターフェース材の分野では、等方的な熱伝導性を有するように球形度は一定条件を満たし、しかも全体の粒子径は従来よりも細かく、また流動性も良くして樹脂中にも高充填できるように粒度分布にも配慮した六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、少なくとも2個以上の鱗片形状の六方晶窒化ホウ素一次粒子が、焼結により結合して凝集した状態の一次粒子が集合したものである。一次粒子同士の結合は、走査型電子顕微鏡を用いて、窒化ホウ素粒子の断面の一次粒子同士の結合部分に連続組織が形成されていることを観察することにより確認することができる。
【0018】
また本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、さらに平均球形度の最小値、及び粒子径の頻度分布曲線における、特定した2区間の粒子径範囲内において、それぞれに存在する最大となる各極大値の比の値、さらに各極大値を示す粒子径の差の値を規定することにより、従来の技術では達成できなかった、高い熱伝導性と樹脂組成物の流動性確保を両立しつつ、熱インターフェース材の薄膜化にも対応できる六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体、及び前記凝集体を含む樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、特に製造方法を限定するものではないが、例えば、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の前駆体を準備する前駆体準備工程と、前記前駆体を含むスラリーを得るスラリー化工程と、前記スラリーを噴霧して前駆体の乾燥粉体(以下、前駆体乾燥粉体という)となす噴霧乾燥工程と、前記前駆体乾燥粉体を焼成して六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を得る焼成工程と、必要により焼成工程で得られた複数種類の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を、本発明の頻度分布曲線に関わる規定を満たすように混合する混合工程と、を含む諸工程を経る製造方法を、好ましく採用することができる。
【0020】
前記混合工程が必要に応じて実施する工程であるとは、即ち、本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、粒子径の頻度分布曲線において、30μm以上50μm未満の範囲において最大となる極大値bを有するピークBと、50μm以上80μm以下の範囲において最大となる極大値aを有するピークAとが存在し、極大値a/極大値bの式により算出される値が1以上8以下であり、さらにピークBとピークAとの中間において最小となる極小値cが、極大値bまたは極大値aのいずれか小なる値の95%以下である六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体であるが、例えば予め噴霧乾燥工程の段階で、前記のピークA及びピークBに関する規定を満たすように調整して取得しても良いし、また焼成工程に至る一連の工程を別々に実施して、粒子径分布の異なる複数種類の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を作製してこれらを混合し、本発明の最終的な六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を取得しても良い。さらに、前記の噴霧乾燥工程の段階で調整して取得する方法と、異なる複数種類の凝集体を混合する方法とを組み合わせて本発明の最終的な六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を取得しても構わないということである。
【0021】
<前駆体準備工程>
前駆体準備工程は、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の前駆体を準備する工程である。前記前駆体は、それを原料として用いることにより窒化ホウ素一次粒子凝集体が得られる物質であれば、特に制限はないが、例えばメラミンとホウ酸を含む混合物を焼成して得た窒化ホウ素が、平均球形度が0.60以上で球形度が高く、また長径と厚さのアスペクト比が10を超え20以下である一次粒子が凝集している六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を得やすい前駆体として好ましく準備される。なお、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の平均球形度を0.60以上とし、さらに粒子径の頻度分布曲線において、30μm以上50μm未満の範囲において最大となる極大値bを有するピークBが、50μm以上80μm以下の範囲において最大となる極大値aを有するピークAが存在し、極大値a/極大値bの式により算出される値が1以上8以下である、さらにピークBとピークAとの中間において最小となる極小値cが、極大値bまたは極大値aのいずれか小なる値の95%以下である六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体であるとすると、樹脂への充填性が増す、即ち樹脂中へ六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を多く充填しても樹脂組成物は良好な流動性を保つため、熱伝導性の高い熱インターフェース材を得ることができる。なお、メラミンとホウ酸を含む混合物を焼成する条件により、得られる窒化ホウ素の結晶性が、アモルファス状態から結晶化が進んだ状態まで変化することがあるが、特に前記前駆体としての窒化ホウ素の結晶性に関する限定はなく、結晶性の異なる窒化ホウ素を複数準備して、それらを混合したものも好ましく用いることができる。
【0022】
<スラリー化工程>
スラリー化工程は、前記前駆体を含むスラリーを得る工程である。スラリーの液体成分の種類に特に限定はないが、液体成分としては水や、アルコール等の水溶性有機溶媒が一般的に用いられる。なお、スラリー濃度についての規定は特にないが、スラリーにおける液体成分の割合は45質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上75質量%以下であることがより好ましい。液体成分の割合が45質量%未満であるスラリーの粘度は高くなりすぎるため、次工程である噴霧乾燥工程において、30μm以上50μm未満の範囲において最大となる極大値を有する六方晶窒化ホウ素一次粒子となる前駆体は得られにくい。また液体成分の割合が80質量%を超えるスラリーでは、凝集体に含まれる窒化ホウ素一次粒子の数が少なく、従って熱伝導性に異方性や不足が生じたりする。また、前駆体の焼結を促進させるための0.5〜5.0質量%の焼結助剤をスラリー中に好ましく添加することができ、残りが六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の前駆体の質量割合となる。焼結助剤の種類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、硝酸塩、酸化物、窒化物が好ましく用いられ、炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0023】
さらに前記スラリー100質量部に対し、前駆体同士の結着剤やスラリー安定化剤を、を0.1〜2質量部の割合で好ましく添加することができる。前記結着剤としては、ポリビニルアルコール(PVAとも標記される)やカルボキシメチルセルロース(CMCとも標記される)が好ましく用いられる。また前記スラリー安定化剤は、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、スルホン酸型の各種アニオン型界面活性剤、例えばポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C12、13)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルや、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル型、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル型、ポリオキシエチレンナフチルエーテル型、ポリオキシエチレンフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウリルエーテル型のノニオン型界面活性剤、及び高分子型界面活性剤、例えばナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、から選ばれる少なくとも一種以上の界面活性剤を含むスラリー安定化剤が好ましく用いられる。列記した界面活性剤の中では、特にリン酸エステル型の界面活性剤を含む界面活性剤が好ましく、リン酸エステル型の中では、特にポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C12、13)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルが好ましく用いられる。
【0024】
さらに、スラリー化工程においては、ボールミルなどを用いてスラリー中の固形成分、即ち六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の前駆体や焼結助剤を微粉化し、より均一で安定なスラリーとなすことも好ましく実施される。
【0025】
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程では、例えば一般に回転式アトマイザーと呼称される装置を用い、前記六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の前駆体を含むスラリーを、例えば高温の容器中にアトマイザーを用いて噴霧することにより、その液体成分を除去した前駆体乾燥粉体を好ましく得ることができる。容器内の温度は特に限定はないが、通常150〜250℃の範囲が好ましい。アトマイザーの噴霧方式などは特に限定はない。
【0026】
<焼成工程>
焼成工程では、前記前駆体乾燥粉体を通常1600〜2300℃、好ましくは1700〜1900℃の炉で焼成する、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を最終的に得る工程である。炉の形式等は特に限定はなく、公知の抵抗式発熱体加熱炉、高周波炉の種類や、またバッチ式炉でも連続式炉でもどちらを選定しても良い。
【0027】
<混合工程>
混合工程で用いられる混合方法並びに混合装置としては、公知のいずれの方法や装置を用いることが可能である。
【0028】
次に最終的に得られた、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の平均球形度、粒子径の頻度分布曲線及びその極大値、粒子径の累積分布曲線及び累積10%径d10、累積90%径d90、及び一次粒子の長径と厚さのアスペクト比について、それぞれの定義および測定方法について以下に記載する。
【0029】
<平均球形度>
本発明でいう六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の平均球形度は、多数の前記一次粒子凝集体を実際に撮影した2次元画像を基にして、画像解析の手法により算出した個々の球形度の平均値であり、1個の一次粒子凝集体の球形度は、例えば以下のような手順で測定する。即ち、試料台上の導電性両面テープに固定された任意の1個の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体(P
1とする)を、走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、得られた2次元画像から、画像解析ソフトウェアを利用して、P1の投影面積(S
1とする)と周囲長(L
1とする)を測定する。本発明の、P
1の球形度(R
1とする)は、S1と同じ長さの周囲長を有する半径(r
1とする)の真円の面積(即ちπr
12)を基準にして、R
1=S
1/πr
12で示されるものとすると、別にL
1=2πr
1の関係も成立していることから、R
1=4πS
1/L
12の式に、前記S
1、L
1の測定値をそれぞれ代入して算出することができる。本発明では、このようにして任意の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体100個の球形度をそれぞれ求め、その平均値をもって、本発明の平均球形度とした。なお、真球の球形度は1であることから、この値に近い方がより真球に近い形となり、樹脂組成物中への充填性が良好となる。本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の平均球形度は0.60以上である。平均球形度が小さくなると樹脂組成物中への充填性が低下する傾向があり、0.60より小さいと実用上の熱伝導率の目標を満たさなくなる。なお平均球形度は0.70以上であるとより好ましく、0.80以上であると更により好ましい。
【0030】
<粒子径の頻度分布曲線及び極大値>
本発明でいう六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体に関する粒子径の頻度分布曲線は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定により求めた曲線である。なお、この測定では、体積基準の粒子径についての頻度分布を測定することができる。粒度分布測定に際しては、該凝集体を分散させる溶媒には水、分散剤としてはヘキサメタリン酸を用いることができる。このとき水の屈折率には1.33を、また、窒化ホウ素粉末の屈折率については1.80の数値を用いることができる。また、一回当たりの測定時間にも特に制限はないが、通常5秒以上120秒以下であり、15秒以上60秒以下程度に設定するのが一般的で好ましい。
【0031】
本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、その頻度分布曲線に関し、30μm以上50μm未満の範囲、好ましくは35μm以上45μm以下の範囲において最大となる極大値bを有するピークBと、50μm以上80μm以下の範囲、好ましくは65μm以上75μm以下の範囲において最大となる極大値aを有するピークAとが存在することが必要である。前記の範囲を外れると、当該六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂混合物を用いた熱インターフェース材が高熱伝導性を示さなくなる。
【0032】
また、前記極大値a及び極大値bに関し、極大値a/極大値bの式により算出される値は1以上8以下、好ましくは1.5以上4以下であることも必要である。それ以外の範囲では、当該六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂混合物の粘度が増加し、例えば熱インターフェース材への加工、成形が困難となる。
【0033】
本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体では、さらに前記ピークBとピークAとの中間において最小となる極小値cが、極大値bまたは極大値aのいずれか小なる値の95%以下であり、好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下である。このことは即ち、本発明では、ピークBまたはピークAのどちらか小なるピークが、他方の大なるピークのショルダーピークのような存在ではないことを意味している。ピークBまたはピークAのいずれかが、他方のショルダーピークであるとすれば、全体としては一山の粒子径の頻度分布曲線を有するものと区別がつきにくくなり、本発明の効果を発揮しない。
【0034】
なお本発明においては、前記ピークBが位置する粒子径と、ピークAが位置する粒子径との差は、少なくとも20μm以上であることが好ましい。前記粒子径の差が20μm未満では、即ちピークBとピークAとが近接していることを意味するため、一山の粒子径の頻度分布曲線を有するものと区別がつきにくくなり、本発明の効果を発揮しにくくなる。なお本発明では、前記粒子径の差の上限値は規定してないが、前記粒子径の差が50μmを超えることはない。前記粒子径の差が50μmを超えることは、即ち少なくともピークBが30μ未満、またはピークAが80μmを超えていることを意味する。
【0035】
<粒子径の累積分布曲線及び累積10%径d10と累積90%径d90>
上述の粒度分布測定においては、体積基準の粒子径についての累積分布も同様に得られ、即ちこれが本発明でいう粒子径の累積分布曲線である。この累積分布曲線における累積値10%及び90%にあたる粒子径を、それぞれ累積10%径即ちd10、累積90%径即ちd90とする。本発明でいう六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体のd10は10μm以上、好ましくは20μm以上、d90は150μm以下、好ましくは130μm以下である。d10が10μm未満であると当該六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂混合物の粘度が増加し、加工、成形が困難となり、またd90が150μmを超えると、当該六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂混合物を用いた熱インターフェース材表面の平滑度が粗くなる為、前記熱インターフェース材に接触して配置する冷却器等との密着性が悪化し、放熱特性が悪化する。
【0036】
<長径と厚さのアスペクト比>
本発明でいう、六方晶窒化ホウ素一次粒子の長径と厚さのアスペクト比は、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を構成する一次粒子の断面写真画像を実測して算出した値である。即ち、樹脂に包埋されて精密にカットされた六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の断面の粒子像を走査型電子顕微鏡にてSEM像を撮影し、短冊状に写る鱗片状一次粒子を画像解析装置に取り込んでデジタルデータ化し、これをソフトウエアで解析することにより算出した値である。なお、樹脂に包埋された六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体は、任意の断面でカットされるため、アスペクト比は、任意に選んだ粒子の測定値から求めた平均値ではなく、短冊状に見える粒子を100個を観察した上で、長径が長い方から10位以内に入る粒子を10個選定し、前記10個の粒子の長径と厚さの長さを測り、アスペクト比=長径/厚さとする計算式より各10個の粒子のアスペクト比を算出し、それらの平均値をアスペクト比とした。なお本発明では、前記アスペクト比は10を超え20以下であることが好ましい。
【0037】
<六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物>
次に本発明の第2の実施形態である、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物について説明する。前記樹脂組成物中に含まれる前記一次粒子凝集体の割合は、20体積%以上80体積%以下であることが好ましい。20体積%未満だと樹脂組成物の熱伝導率が低く、80体積%を超えると樹脂組成物の成形や成型が難しくなるので好ましくない。
【0038】
なお、このときに本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体より平均粒子径の小さい各種セラミックミックス粉末(以下、各種セラミックス粉末と称する)、例えば窒化アルミニウム、六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、炭化ケイ素の粉末を、本発明の目的を損なわない範囲において、1種類以上適宜添加しても良い。各種セラミックス粉末の適切な平均粒子径は、本発明の窒化ホウ素粉末の凝集体の平均粒子径によって変化するが、本発明の窒化ホウ素粉末の凝集体の平均粒子径に対して40%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。例えば本発明の窒化ホウ素粉末の凝集体の平均粒子径が50μmの場合は、20μm以下が好ましく、10μm以下がさらに好ましい。粒子の充填構造をより密にすることができるので、充填性が向上し、結果として樹脂組成物の熱伝導率を向上させることができる。各種セラミックス粉末の平均粒子径は本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体と同様の手順で測定される。
【0039】
<樹脂>
本発明の第2の実施形態である、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物に用いることのできる樹脂の種類には、特に限定はないが、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリフタルアミド、ポリアセタール、ナイロン樹脂等を好ましく挙げることができる。これら樹脂、特に熱硬化性樹脂には適宜、硬化剤、無機フィラー、シランカップリング剤、さらに濡れ性やレベリング性の向上及び粘度低下を促進して加熱加圧成形時の欠陥の発生を低減する添加剤を含有することができる。この添加剤としては、例えば、消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤等がある。また、エポキシ樹脂は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。さらにシリコーン樹脂及びシリコーンゴムは耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。なお、熱硬化性樹脂を用いた熱インターフェース材については、それを実際に使用する前の段階で、予め熱硬化性樹脂をBステージ化しておいても良い。
【0040】
本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体と樹脂とを混合して樹脂組成物となす場合には、両者を混合しやすくするため、必要に応じて有機溶剤を加えても良い。有機溶剤としては、例えば、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類、2−メトキシエタノール、1−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール及び2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びジイソブチルケトンケトン等のケトン類、トルエン及びキシレン等の炭化水素類が挙げられる。なお、これらの希釈剤は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
なお、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物の粘度は、90000cps以下であれば、熱インターフェース材の作成するにあたり実用上支障はないと判断した。なお、ここでいう粘度はB型粘度計(スピンドルNo.6、回転数20rpm、温度25℃)で測定した値である。このとき樹脂組成物の粘度が90000cpsを超えると、樹脂組成物の加工、成形が困難となる。樹脂組成物の粘度が低過ぎると樹脂混合物の加工、成形が困難となるが、樹脂組成物中に含まれる前記一次粒子凝集体を20体積%以上とすれば、粘度が低過ぎることによる樹脂混合物の加工、成形が困難になることはない。
【0042】
本発明の第3の実施形態である電気絶縁部材は、第2の実施形態である六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物を成形加工或いは成型加工し、さらに必要に応じて他の素材等と組み合わせてなした、熱インターフェース材である。なお本発明の熱インターフェース材は、Ra値が10μm以下であり、全体の厚みが0.2mm以上1.0mm以下のシート状であることが好ましい。
【0043】
<熱インターフェース材の厚さと表面粗さの評価>
本発明の熱インターフェース材の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下である。Raが5μmを超えると、熱インターフェース材表面の平滑度が粗くなる為、熱インターフェース材に接触して配置する冷却器等との密着性が悪化し、熱伝導率が悪化する。表面粗さは、表面粗さ測定機(例えば、東京精密社製「サーフコム554A」)を用いて、測定試料の中心と四隅計5箇所を測定、その平均値を測定値とすることができる。一方、本発明の熱インターフェース材の厚さは特に規定はないが、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上0.6mm以下であることがさらに好ましい。本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を用いた場合、熱インターフェース材の厚さが0.2mm未満では熱インターフェース材表面の平滑度が粗くなる為、熱インターフェース材に接触して配置する冷却器等との密着性が悪化し、放熱性が低下する。また1.0mmを超えると、装置に実装した際にスペースを取ることになる。
【0044】
<熱インターフェース材の熱伝導性の評価>
本発明の熱インターフェース材の熱伝導率(単位はW/(m・K))は、二通りの方法で測定し、それぞれ得られた熱伝導率の数値をH
ASTM及びH
JISとして、両者の値を比較した。即ちH
ASTMは、ASTM D5470に準拠し、測定する熱インターフェース材の試験片を銅冶具の間に挟んで、銅冶具上部よりヒーターにて加熱し、銅冶具上部と下部の温度差ΔT(単位はK)と熱流量Q(単位はW)、及び熱インターフェース材の面積S(単位はm
2)、厚みt(単位はm)より、H=t/((ΔT/Q)×S)の式で求める方法(本発明ではASTM法という)であり、またH
JISは、前記熱インターフェース材の、熱拡散率A(単位はm
2/秒)、密度B(単位はkg/m
3)及び比熱容量C(単位はJ/(kg・K))から、H
JIS=A×B×Cとして算出する方法(本発明ではJIS法という)により得た値である。なお、前記熱拡散率Aは、JIS R1611に準拠し、市販の装置を用いたレーザーフラッシュ法に従い測定した値である。また、密度Bは、JIS K6268に準拠し、アルキメデス法を用いて求めた値である。さらに、比熱容量Cは、JIS K7123に準拠し、DSC測定装置を用いて求めた値である。
ASTM法により求めた熱伝導率H
ASTMは、JIS法で算出した熱伝導率H
JISより値が低くなる傾向があるが、ASTM法は、熱インターフェース材を金属平面に接触させ、熱インターフェース材の実際の使用状況に近づけた形式で測定するため、熱インターフェース材表面の平滑性の違いによる、冷却器への密着性が熱伝導性に及ぼす影響も含めて、熱伝導性を評価することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例、比較例をあげて更に具体的に説明する。なお、実施例、比較例の検討に際し、準備した六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を参考例1〜14として、実施例、比較例の前に説明する。
<参考例1>
ホウ酸52kgとメラミン50kgを混合し、一次焼成としてバッチ式高周波炉にて1000℃で4時間焼成後、更に二次焼成として1600℃で4時間焼成することで、酸素含有量2.4%、BN純度96.3%、黒鉛化指数4.2である低結晶窒化ホウ素を得た。該低結晶性窒化ホウ素15.72kgと、酸素含有量0.1%、BN純度、98.8%、黒鉛化指数1.2である高結晶窒化ホウ素5.24kg、焼結助剤の炭酸カルシウム(商品名「PC−700」(白石工業社製))0.54kg及び水78.5kgを追加添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、ボールミルで5時間粉砕し、水スラリーを得た。さらに、該水スラリー100質量部に対して、ポリビニルアルコール樹脂(商品名「ゴーセノール」(日本合成化学社製))を0.5質量部添加し、溶解するまで50℃で加熱撹拌した後、噴霧乾燥機にて乾燥温度230℃で球状化処理を行った。なお、噴霧乾燥機の球状化装置としては、回転式アトマイザーを使用した。得られた処理物を三次焼成としてバッチ式高周波炉にて所定温度で4時間焼成した後、焼成物に解砕及び篩いを用いて分級処理を行い六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体A(凝集体A)を得た。このときの条件(アトマイザー回転数、焼成温度)を表1にまとめて記した。
【0046】
<参考例2〜14>
参考例1と同じ手法により、参考例2〜14の凝集体B〜Nを得た。これらの条件も表1に記載した。
【0047】
<実施例1>
<六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の作製>
凝集体Aが70体積%、凝集体Bが30体積%となるように両凝集体を混合し、実施例1の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を作製した。混合は、ヘンシェルミキサーを用いた。
【0048】
<粒子径に関する頻度分布曲線と累積分布曲線の測定>
次いで前記実施例1の凝集体の粒子径に関する頻度分布曲線と累積分布曲線を、粒度分布測定機(日機装社製、MT3300EX)を用いて測定した。前記頻度分布曲線から読み取れるピークB、ピークAに該当する極大値bと極大値a及びそれぞれの極大値をとる粒子径、さらにピークBとピークAとの中間に位置する最小の極小値c、またさらに累積分布曲線から読み取れるd10及びd90の結果を表2に示した。
【0049】
<一次粒子の長径と平均厚みのアスペクト比の測定>
アスペクト比の測定は、観察の前処理として、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。その後、走査型電子顕微鏡、例えば「JSM−6010LA」(日本電子社製)にてSEM像を撮影し、得られた断面の粒子像を画像解析ソフトウェア、例えば「A像くん」(旭化成エンジニアリング社製)に取り込み、測定することができる。この際の画像の倍率は100倍、画像解析の画素数は1510万画素であった。マニュアル測定で、短冊状に見える粒子を100個を観察した上で、長径が長い方から10位以内に入る粒子を10個選定し、前記10個の粒子の長径と厚みの長さを測り、アスペクト比=長径/厚みとする計算式より各10個の粒子のアスペクト比を算出し、それらの平均値をアスペクト比とした。この方法で測定した、実施例1の六法晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を構成している一次粒子のアスペクト比は15.0であり、表2に併せて記載した。
【0050】
<実施例2〜8、比較例1〜9>
表2に示した配合割合に従い、実施例2〜8、比較例1〜9の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を作製した。さらに同様に、混合後のそれぞれの凝集体について、粒子径に関する頻度分布曲線と累積分布曲線の測定を実施例1と同じ方法で実施した。それらの結果について、実施例2〜8の結果は、実施例1に併せて表2に示し、比較例1〜9の結果は表3に示した。なお表3中では、比較例の極大値及び極大値をとる粒子径で、それらが本発明の規定を満たさない場合についても、便宜的にピークB、ピークAの欄に値を記載した。
【0051】
<樹脂組成物の作製>
得られた実施例1〜8、比較例1〜9の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の樹脂組成物として、さらにエポキシ樹脂(「エピコート807」三菱化学社製)と硬化剤(「アクメックスH−84B」日本合成化工社製)に対し六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体が60体積%となるように混合し、実施例1〜8、比較例1〜9の樹脂組成物を作製した。
【0052】
<樹脂組成物の粘度測定>
前記の実施例1〜8、比較例1〜9の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物の流動性を評価するため、スピンドルNo.6を装着したB型粘度計を用い、回転数20rpm、測定温度25℃の条件における粘度を測定した。なお樹脂組成物の粘度は、2回測定した平均値とし、実施例1〜8は表2に、比較例1〜9は表3にそれぞれ示した。
【0053】
<熱インターフェース材の作製>
前記の実施例1〜6、比較例1〜8の樹脂組成物を、厚みが1.0mmになるように基板上に塗布した後、500Paの減圧脱泡を10分間行った。その後、温度150℃、圧力160kg/cm2条件で60分間のプレス加熱加圧を行って0.5mmのシートとし、評価用の実施例1〜6、比較例1〜8の熱インターフェース材を作製した。さらに実施例7及び比較例9の熱インターフェース材として、はじめに基板上に塗布する樹脂組成物の厚みを0.4mmとした以外は、前記と同じ方法でそれぞれ0.2mmのシートを作製した。また実施例8の熱インターフェース材として、はじめに基板上に塗布する樹脂組成物の厚みを2.0mmとした以外は、前記と同じ方法で1.0mmのシートを作製した。
【0054】
<熱伝導率の評価>
前記の実施例1〜8、比較例1〜9の、ASTM法による熱インターフェース材の熱伝導率H
ASTM(単位はW/(m・K))は、幅20mm×20mm×厚み0.5mmの大きさに切り出した測定用試料を用い、測定装置の銅冶具の間に挟んで1kgf/cm
2の圧力をかけ、銅冶具上部よりヒーターにて加熱し、測定装置から得られる、銅冶具上部と下部の温度差ΔT(単位はK)と熱流量Q(単位はW)、及び熱インターフェース材の面積S(単位はm
2)、厚みt(単位はm)より、以下の式よりASTM法による熱インターフェース材の熱伝導率H
ASTMを求め、実施例1〜8の結果についてはは表2に、比較例1〜9の結果については表3に示した。
H
ASTM=t/((ΔT/Q)×S)
なお本発明では、ASTM法による熱インターフェース材の熱伝導率H
ASTMが10W/(m・K)以上あれば、従来技術水準よりも改善されたと判断した。
【0055】
前記の実施例1〜8、比較例1〜9の、JIS法による熱インターフェース材の熱伝導率H
JIS(単位はW/(m・K))を、幅10mm×10mm×厚み0.5mmの大きさに切り出した測定用試料を用い、キセノンフラッシュアナライザ(LFA447NanoFlash、NETZSCH社製)によるレーザーフラッシュ法による熱拡散率A(単位はm
2/秒)、比重測定キット(エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した密度B(単位はkg/m
3)、DSC測定装置(ThermoPlusEvo DSC8230、リガク社製)を用いて測定した比熱容量C(単位はJ/(kg・K))の各測定値から、H=A×B×Cとして求めた。これらの結果も、実施例1〜8については表2に、比較例1〜9については表3に示した。なお、JIS法による熱インターフェース材の熱伝導率H
JISについては14W/(m・K)以上あれば、従来技術水準よりも改善されたと判断した。
【0056】
<表面粗さの測定>
さらに前記、実施例1〜8、比較例1〜9の熱インターフェース材表面上の、全長5cmの距離に相当する区間の表面粗さRa値を、表面粗さ測定機(東京精密社製「サーフコム554A」)を用いて測定した。この結果も実施例1〜8については表2に、比較例1〜9については表3に記載した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
実施例と比較例との対比から明らかなように、本発明の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物は、良好な流動性を示し、それを用いた熱インターフェース材は、基本的に優れた熱伝導性を示すが、金属平面に対してもより高い密着性を示して、高い熱伝導性を維持することがわかる。
また、厚みを0.2mmと薄くして作製した熱インターフェース材において、本発明ではない熱インターフェース材では、JIS法で測定した熱伝導率は他の実施例と同程度の値を示すが、ASTM法で測定すると10W/(m・K)を大きく割る値を示していることが判る。これに対して、本発明の熱インターフェース材は、同様に薄い熱インターフェース材であっても、ASTM法で測定した熱伝導率は10W/(m・K)以上の値を示し、良好な熱伝導性が発揮されていることが判る。