(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の皮膚化粧料はラメラ構造を有するものであるが、2種類のラメラ構造を有することに一つの特徴がある。一つは球状の構造を有するラメラ(以下、コンセントリックラメラと称する)と、もう一つのラメラは、化粧料中に連続相として形成されているラメラ(以下、バルクラメラと称する)であり、バルクラメラ中に、コンセントリックラメラが海島状に共存することに大きな特徴を有する。このバルクラメラとコンセントリックラメラの共存状態は、皮膚へ塗布後に形成される皮膚上の皮膜においても長時間存在している。一方、従来の多くの化粧料では、片方のラメラ構造しか有しないか、あるいは塗布後の皮膜においてラメラが消失している。従って、このようなラメラの構造及び特性が、本発明の水分閉塞性、塗布時にぬるつきがなく、肌に均一に塗布でき、なじませることができるという優れた効果に寄与していると思われる。水分閉塞性が高いことは、保湿の持続性に優れることを意味する。バルクラメラ及びコンセントリックラメラは偏光顕微鏡(試料厚さ:25mm)で確認できる。すなわち、全体的に光って見えるのがバルクラメラの存在を示し、マルテーゼクロスが見えるのがコンセントリックラメラの存在を示す。
【0013】
(A)炭素数12〜22の直鎖状飽和脂肪酸:
本発明で用いられる成分(A)は、炭素数12〜22の直鎖状飽和脂肪酸であり、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへン酸等が挙げられる。これらのうち、炭素数14〜22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16〜22の直鎖状飽和脂肪酸がより好ましく、また、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる少なくともいずれか一種が、化粧料中で安定なラメラ状の構造体を形成する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から更に好ましい。さらには、ラメラ状構造体の安定性の観点から、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から、ステアリン酸がより好ましい。
【0014】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、後述の成分(B)及び(C)で中和することにより、化粧料中にラメラ状の構造を形成することができる。従って、成分(A)は、化粧料中では、脂肪酸又はその塩として存在するが、本発明においては、成分(A)の含有量は、脂肪酸に換算した量である。
【0015】
本発明の皮膚化粧料において、保湿性を向上させる観点から、成分(A)は、炭素数が互いに2以上異なる、2種以上の炭素数12〜22の直鎖状飽和脂肪酸を含むことが好ましい。
皮膚化粧料中に、炭素数が互いに2以上異なる、2種以上の直鎖状飽和脂肪酸を含有することで、ラメラ構造の緻密性が向上し、閉塞性が増加し、すなわち、保湿性が向上すると考えられる。
上記炭素数が互いに2以上異なる2種以上の直鎖状飽和脂肪酸のうち、炭素数が大きい方の炭素数12〜22直鎖状飽和脂肪酸(本発明における高炭素数飽和脂肪酸ともいう)の炭素数は、保湿性を向上させる観点から、好ましくは14〜22であり、より好ましくは16〜20であり、さらに好ましくは18である。また、炭素数が小さい方の炭素数12〜22の直鎖状飽和脂肪酸(本発明における低炭素数飽和脂肪酸ともいう)の炭素数は、同様の観点から、好ましくは12〜20であり、より好ましくは12〜18であり、さらに好ましくは、14〜16である。
さらに、同様の観点から、成分(A)が、炭素数が互いに2以上異なる、2種以上の直鎖状飽和脂肪酸を含む場合、少なくとも、炭素数16又は18の直鎖状飽和脂肪酸、すなわちパルミチン酸又はステアリン酸を含むことが好ましく、少なくとも、18の直鎖状飽和脂肪酸、すなわちステアリン酸を含むことがより好ましい。
成分(A)に含まれるステアリン酸の質量割合は、保湿性を向上させる観点から、0.2〜0.8が好ましく、0.4〜0.6がより好ましい。
【0016】
成分(A)の含有量は、化粧料中に安定なラメラ状の構造を形成する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から、全組成中に0.5質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、また6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.5〜6質量%が好ましく、1.5〜4質量%がより好ましく、2.0〜3.5質量%がさらに好ましい。
【0017】
(B)有機塩基:
本発明で用いられる成分(B)は、有機塩基であり、アルキルアミン、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアミン、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルカノールアミン、塩基性アミノ酸が挙げられる。成分(B)は、成分(A)の中和剤として機能する。
具体的には、アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等が挙げられ、アミノメチルプロパノールが好ましい。塩基性アミノ酸としては、リジン、ヒスチジン、アルギニン等が挙げられ、アルギニンが好ましいい。アルギニンの中ではL−アルギニンが好ましい。
これらのうち、成分(A)を中和し、且つ、化粧料中に安定なラメラ状の構造を形成する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点、及び保湿性を高める観点から、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルカノールアミン又は炭素数1〜6の塩基性アミノ酸が好ましく、炭素数3〜6のアルキル基を有するアルカノールアミン又は炭素数3〜6の塩基性アミノ酸がより好ましく、塩基性アミノ酸が更に好ましく、アミノメチルプロパノール又はアルギニンが更により好ましく、アルギニンがさらに好ましい。アルギニンの中ではL−アルギニンが好ましい。
【0018】
成分(B)は、少なくとも前記の有機塩基から選ばれる1種又は2種以上用いることができ、皮膚化粧料のラメラ構造の安定性を高める観点、及び保湿性を高める観点から、成分(A)に対して、成分(B)のモル比が5モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、30モル%以上がより好ましく、80モル%以下が好ましく、80モル%未満がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
成分(B)の含有量は、皮膚化粧料のラメラ構造の安定性を高め、保湿性を高める観点から、全組成中に0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に0.01〜1質量%が好ましく、0.02〜0.8質量%がより好ましく、0.1〜0.4質量%がさらに好ましい。
なお、成分(B)は、化粧料中では、成分(A)及び他の酸と塩を形成しうるが、本発明においては、成分(B)の含有量は、有機塩基に換算した量である。
【0019】
(C)無機塩基:
本発明で用いられる成分(C)は、無機塩基であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。成分(C)は、成分(A)の中和剤として機能する。
これらのうち、成分(A)を中和し、且つ、化粧料中に安定なラメラ状の構造を形成する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、更に水酸化ナトリウムがさらに好ましい。
【0020】
成分(C)は、すくなくとも前記の無機基から選ばれる1種又は2種以上用いることができ、皮膚化粧料のラメラ構造の安定性を高め、保湿性を高める観点から、成分(A)に対して、成分(C)のモル比が5モル%以上であるのが好ましく、10モル%以上であるのがより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、30モル%以上がより好ましく、80モル%以下が好ましく、80モル%未満がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
成分(C)の含有量は、皮膚化粧料のラメラ構造の安定性を高め、保湿性を高める観点から、全組成中に0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、1質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましく、0.1〜0.2質量%がさらに好ましい。
なお、成分(C)は、化粧料中では、成分(A)及び他の酸と塩を形成しうるが、本発明においては、成分(C)の含有量は、無機塩基に換算した量である。
【0021】
本発明において、成分(B)及び(C)の合計量[(B)+(C)]に対する成分(B)のモル比{(B)/[(B)+(C)]}は、水分閉塞性に優れた皮膜を形成する観点から、(B)/[(B)+(C)]=5〜60モル%であり、8〜50モル%が好ましく、10〜45モル%がより好ましく、15〜40モル%が更に好ましい。
【0022】
また、成分(A)に対する、成分(B)及び(C)の合計量[(B)+(C))]のモル比{[(B)+(C)]/(A)}は、中和度を表し、2種類のラメラ構造、すなわちバルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点、水分閉塞性に優れた皮膜を形成する観点から、[(B)+(C)]/(A)=10〜80モル%であり、20〜70モル%が好ましく、25〜65モル%がより好ましく、30〜60モル%が更に好ましい。
成分(B)と成分(C)の組み合わせは、同様の観点から、成分(B)がアミノメチルプロパノール又はアルギニンで、成分(C)が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであるのが好ましく、成分(B)がアルギニンで、成分(C)が水酸化ナトリウムであるのがより好ましい。
【0023】
(D)炭素数12〜22の直鎖状飽和アルコール:
本発明で用いられる成分(D)は、炭素数12〜22の直鎖状飽和アルコールであり、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらのうち、炭素数14〜22の直鎖状飽和アルコールが好ましく、炭素数16〜22の直鎖状飽和アルコールがより好ましく、成分(A)から形成する化粧料中のラメラ状の構造を安定化する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から、セチルアルコール又はステアリルアルコールが更に好ましく、セチルアルコールとステアリルアルコールとを含むことが更により好ましい。セチルアルコールとステアリルアルコールとを含有する場合、それぞれ独立に、あるいは混合して配合してもよいし、更にはその混合物であるセトステアリルアルコールを配合してもよい。
【0024】
成分(D)は、すくなくとも前記の炭素数12〜22の直鎖状飽和アルコールから選ばれる1種又は2種以上用いることができ、化粧料中のラメラ状の構造を安定化する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点から、全組成中0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、6質量%以下が好ましく、5.5質量%以下がより好ましく、5.2質量%以下がさらに好ましい。また、成分(D)の含有量は、全組成中に0.5〜6質量%が好ましく、1〜5.5質量%がより好ましく、1.5〜5.0質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明において、成分(A)及び(D)の合計量(A)+(D)は、化粧料の保存安定性を高める観点から、1質量%以上であり、2.5質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上が更に好ましく、12質量%以下であり、9.5質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。また、成分(A)及び(D)の合計量は、(A)+(D)=1〜12質量%であり、2.5〜12質量%が好ましく、3〜9.5質量%がより好ましく、4.5〜8質量%が更に好ましい。
【0026】
また、成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]に対する成分(A)の質量比{(A)/[(A)+(D)]}は、化粧料組成物にラメラを形成させるとともに、保湿性を高める観点から、0.2以上であり、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.7以下であり、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。また、成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]に対する成分(A)の質量比は、(A)/[(A)+(D)]=0.2〜0.7であり、0.25〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。
【0027】
(E)高重合シリコーン
(E)高重合シリコーンは、保湿性を高め、なめらか感の付与、並びに保湿性及びなめらか感の耐摩擦性向上、耐水性向上に寄与する。
成分(E)の高重合シリコーンは、下記一般式(1)で表されるシリコーン重合体が好ましい。
【0029】
(式中、R
1はメチル基を示すか又はその一部がフェニル基を示しても良く、R
2はメチル基又は水酸基を示し、nは100〜20,000の数を示す)
上記シリコーン重合体は、エマルションとして用いることもでき、エマルションの流動性と粘性を適度に保つ観点から、低粘度の液状ジメチルポリシロキサン(例えば、粘度として200mPa・s以下のジメチルポリシロキサン)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン等との混合物として、エマルションに供されるのが好ましい。
また、エマルションの安定性を高め、保湿性を向上させる観点、なめらか感を向上させる観点、なめらか感の耐摩擦性、耐水性を向上させる観点から、シリコーン重合体のnは500〜2,500が好ましい。
【0030】
また、高重合シリコーンとして、MK−15H、KF−9028、シリコーンKF−96H−10万CS、KM−910(高重合ポリメチルシロキサン成分:36%)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0031】
成分(E)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、その含有量は、なめらかな使用感を向上させる観点、及びなめらかな使用感の耐摩擦性、耐水性を向上させる観点から、全組成中に0.001〜2質量%が好ましく、0.005〜1.5質量%がより好ましく、0.01〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0032】
また、成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]に対する成分(E)の質量比[(E)/(A)+(D)]は、保湿性及びなめらか感の持続性(耐摩擦性、耐水性)の観点から、0.01以上が好ましく、0.014以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましく、また0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。具体的に発明[(E)/(A)+(D)]の範囲は、0.01〜0.5が好ましく、0.014〜0.4がより好ましく、0.02〜0.3がさらに好ましい。
【0033】
(F)水:
本発明で用いる成分(F)は、水であり、本発明の化粧料の溶剤となる。成分(F)は、各成分の残量となり、成分(A)〜(F)の組み合わせにより、化粧料中に安定なラメラ状の構造を形成することができる。
成分(F)の含有量は、化粧料中で安定なラメラ状の構造体を形成する観点、及び該ラメラとして、バルクラメラとコンセントリックラメラを形成する観点からから、全組成中に50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。また、成分(F)の含有量は、全組成中に50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。
【0034】
本発明においては、上記のようなラメラ構造を形成させやすく、ラメラ構造の安定性を向上させる観点から、非イオン性界面活性剤(成分(G))を含有することができる。
また、非イオン性界面活性剤は、本発明の皮膚化粧料を指で肌に塗布する際、肌と指との間で生じる摩擦により発生する細かい泡により、肌が白くなることを抑制することができる。この結果、塗布した際、化粧料を肌に良くなじませることができる。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、エチレングリコールモノステアリン酸エステル等のエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール(2)モノステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール(5)デシルペンタデシルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテル;ポリエチレングリコール(5)硬化ヒマシ油モノイソラウレート等のポリエチレングリコール硬化ヒマシ油;プロピレングリコール脂肪酸エステル;グリセリンモノイソステアリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル等のモノグリセリンモノ脂肪酸エステル;グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンジラウリン酸エステル等のモノグリセリンジ脂肪酸エステル;グリセリンモノイソステアリルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル等のグリセリンアルキルエーテル;ソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド;ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸ジアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0036】
これら非オン界面活性剤のうち、塗布時の細かい泡の発生を抑制する観点から、炭素数12〜22のアルキル基を有するポリアルキレングリコールアルキルエーテルが好ましく、炭素数12〜18のアルキル基を有するポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
また、ラメラ構造の緻密性を向上させ、閉塞性、すなわち、保湿性を向上させる観点から、非オン界面活性剤のHLBは1〜4が好ましく、具体的には、グリセリンモノステアリン酸エステル(HLB3.4)等のモノグリセリンモノ脂肪酸エステル;グリセリンモノステアリルエーテル(HLB4.0)等のグリセリンアルキルエーテルが好ましい。
【0037】
本発明において、HLB値は、親水性−親油性のバランス(Hydrophile Lipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田及び寺村らによる次式により算出した値を用いている。
【0039】
成分(G)の非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上用いることができ、上記観点に加え、保湿性を高める観点、ぬるつきを抑制する観点、ツヤ感の持続性を高める観点から、互いにアルキル基の炭素数が2以上異なるポリアルキレングリコールエーテルを少なくとも2種含有することが好ましく、ラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ラウレス−3)、セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルから選ばれる少なくとも2種を含有していることがより好ましく、上記3種のポリエチレングリコールエーテルを含有していることが更に好ましい。炭素数12〜18のアルキル基を有するポリアルキレングリコールエーテルを2種類以上用いる場合、それぞれ独立に配合してもよいし、混合して配合してもよく、セチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルの混合物であるセテアレス−20を配合してもよく、好ましくは、ラウレス−3とセテアレス−20を含有することがより好ましい。
【0040】
成分(G)の非イオン性界面活性剤の含有量は、保湿性を向上させる観点、ぬるつきを抑制する観点、安定性を向上させる観点、及び塗布時の化粧料組成物の泡立ちを抑制する観点から、全成組成中に0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.3質量%以下が更に好ましい。また、成分(G)の含有量は、全組成中に0.1〜2質量%が好ましく、0.3〜1.5質量%がより好ましく、0.5〜1.3質量%が更に好ましい。
【0041】
また、成分(G)に対する成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]の質量比{[(A)+(D)]/G}は、保湿性を向上させる観点、ぬるつきを抑制する観点、安定性を向上させる観点、及び化粧料組成物の泡立ちを抑制する観点及びから、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。また、成分(G)に対する成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]の質量比{[(A)+(D)]/G}は、3〜30が好ましく、4〜20がより好ましく、5〜10が更に好ましい。
【0042】
本発明の皮膚化粧料には、なめらかな使用感を向上させる観点、及び良好なラメラ構造を形成させる観点から、前記成分(A)及び(D)以外の油剤(成分(H))を含有させることができる。
【0043】
本発明で用いられる成分(H)としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;セチルジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタノイン、安息香酸アルキルエステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。また、これら油剤は植物由来のものであってもよい。
【0044】
これらのうち、なめらかな使用感を向上させる観点から、炭化水素油、エステル油及びシリコーン油が好ましく、炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、ワセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エステル油としては、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタノイン、安息香酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0045】
成分(H)は、少なくとも前記の油剤から選ばれる1種又は2種以上用いることができる。
成分(H)の含有量は、塗布後の皮膚になめらか感を向上させる観点から、全組成中に0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。また、成分(H)の含有量は、全組成中に0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜18質量%がより好ましく、0.5〜16質量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明において、成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]に対する成分(H)の質量比{(H)/[(A)+(D)]}は、保湿性を高める観点、及びなめらか感を持続させる観点から、0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましく、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。また、成分(A)及び(D)の合計量[(A)+(D)]に対する成分(H)の質量比{(H)/[(A)+(D)]}は、0.1〜3が好ましく、0.15〜2がより好ましく、0.2〜1.5が更に好ましい。
【0047】
本発明の皮膚化粧料は、更に通常の化粧料に用いられる成分として、成分(A)〜成分(H)以外であって、例えば、増粘剤、殺菌剤、保湿剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、粉体、香料、抗炎症剤、美白剤、制汗剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を、適宜含有することができる。
【0048】
また、本発明においては、緻密性の高い膜を有するコンセントリックラメラを形成する観点、ラメラ構造の安定性を向上させる観点、保湿性を向上させる観点、油性感を低減させる観点から、アニオン界面活性剤を含有することができる。
アニオン界面活性剤としては、成分(A)を除いたものから選ばれ、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の炭素数12〜22のアルキル硫酸エステル又はその塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等の炭素数12〜22のアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−炭素数12〜22のアシルサルコシン又はその塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等の炭素数12〜22のアルキルリン酸又はその塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレン炭素数12〜22のアルキルエーテルリン酸又はその塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の炭素数12〜24のジアルキルスルホコハク酸又はその塩;N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等の炭素数12〜22のN‐アルキロイルメチルタウリン又はその塩;ジラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−炭素数12〜22のアシルグルタミン酸又はその塩などが挙げられる。
【0049】
アニオン界面活性剤は、少なくとも前記のアニオン界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン界面活性剤の含有量は、緻密性の高い膜を有するコンセントリックラメラを形成する観点、ラメラ構造の安定性を向上させる観点、保湿性を向上させる観点から、全成組成中に0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、2質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
【0050】
さらに、本発明の皮膚化粧料は、成分(A)及び(D)以外の固体脂を含有することができる。その含有量は、ラメラ状の構造を安定化する観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらにより好ましい。
【0051】
本発明の皮膚化粧料は、例えば、成分(B)、(C)及び(F)とを混合し、60〜100℃で溶解させ均一にし、水相部とする。成分(A)、(D)及び(E)を混合し、60〜100℃で溶解させ、均一にし、油相部とする。この水相部と油相部とを混合して均一にし、好ましくは5〜30℃に、より好ましくは10〜28℃に、さらに好ましくは15〜26℃に冷却することにより、製造することができる。
【0052】
本発明の皮膚化粧料は、化粧料中で安定なラメラ状の構造体を形成する観点から、25℃において、pH5.5〜8であるのが好ましく、pH6.0〜7.8がより好ましく、pH6.5〜7.8が更に好ましい。本発明において、pHは、pHメーター(F-52
、HORIBA社製)により、25℃で試料を直接測定する。
【0053】
本発明の皮膚化粧料は、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液などとすることができ、クリーム、ジェルとして使用することが特に好ましい。また、織布、不織布等のシート状基材に含浸又は塗布したシート状化粧料とすることもできる。
本発明の皮膚化粧料は、皮膚、好ましくは、頭皮を除く、より好ましくは顔、身体、手足等のいずれかに塗布することにより、使用することができる。
また、本発明の皮膚化粧料は、皮膚に塗布することにより、保湿することができ、なめらかな使用感を付与することもできる。
【実施例】
【0054】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0055】
実施例1〜12、比較例1〜6
表1〜表2に示す組成の皮膚化粧料を製造し、化粧料及び乾燥皮膜におけるラメラ構造の形成の有無を観察した。また、保湿性(水分閉塞性)、なめらか感の耐摩擦性、なめらか感の耐水性を評価した。結果を表1〜表2に併せて示す。
【0056】
(製造方法)
成分(B)、(C)及び(F)を含む水相成分を70〜80℃で攪拌、溶解させて水相部とする。次に、成分(A)、(D)及び(E)を含む油相成分を70〜80℃で攪拌、溶解させて油相部とする。水相部に油相部を70〜80℃で攪拌しながら添加し、更に攪拌しながら室温(25℃)に冷却して、皮膚化粧料(水中油型乳化化粧料)を製造した。
【0057】
(評価方法)
(1)ラメラ構造の確認:
(1−1)小角X線回折法による化粧料の構造解析:
小角X線回折測定により、化粧料及び乾燥皮膜の相状態を解析した。乾燥皮膜は、各化粧料1gを0.1mmの厚さでアプリケーターで伸ばしたものを、20℃20%RH環境下で24時間乾燥させて調製した。得られたX線回折プロファイルにおいて、ラメラ構造に特徴的な繰り返しの回折ピークが観察されたものを「Y」、されなかったものを「N」として示した。
【0058】
(1−2)偏光顕微鏡によるバルクラメラとコンセトリックラメラの存在の確認:
試料(厚さ25mm)を偏光顕微鏡(200倍)で観察し、油滴の周りにマルテーゼクロスが確認されているものは、「Y」(コンセトリックラメラが存在)、されなかったものを「N」として示した。次に、同じ試料を、偏光板を通して観察し、全体的に光って見え、且つ結晶が見えないものは「Y」(バルクラメラが存在)、全体的に光って見えるが結晶が見えるものは「N」、全体的に光って見えなかったものを「N」として示した。
【0059】
(2)保湿持続性(閉塞性):
専門のパネラー10人により、各皮膚化粧料0.5mLを全顔に使用した。5時間後の保湿感を、下記基準に従って評価し、平均値を求めた。
5;保湿感を非常に感じる。
4;保湿感を感じる。
3;保湿感をやや感じる。
2;保湿感をほとんど感じない。
1;保湿感を感じない。
【0060】
(3)なめらか感の耐摩擦性:
専門のパネラー10人により、各皮膚化粧料0.2mLを前腕内側部全体に塗布する。5分後にコットン生地(綿ブロード)を押し当て(30秒、荷重200g、2.5cmφ)、コットン生地を塗布部位に対してさらに5cm移動させた。それを5回繰り返した。その後、塗布部位に対して下記基準に従って、なめらか感の耐摩擦性を評価し、平均値を求めた。
5;べたつきを全く感じず、摩った指が非常になめらかに動く。
4;べたつきをほとんど感じず、摩った指がなめらかに動く。
3;べたつきをやや感じるが、摩った指がなめらかに動く。
2;べたつきをやや感じ、摩った指がややひっかかる感じ。
1;べたつきを感じ、摩った指がひっかかる感じ。
【0061】
(4)なめらか感の耐水性:
専門のパネラー10人により、各皮膚化粧料0.2mLを前腕内側部全体に塗布する。5分後に3L/minの条件で塗布部位に室温の精製水を30秒間流した後、キムタオルを用いて上から軽く押さえつけて水滴を拭った。タオルドライを3回繰り返し、5分後に下記基準に従って、なめらか感の耐水性を評価し、平均値を求めた。
5:べたつきを全く感じず、摩った指が非常になめらかに動く。
4:べたつきをほとんど感じず、摩った指がなめらかに動く。
3:べたつきをやや感じるが、摩った指がなめらかに動く。
2:べたつきをやや感じ、摩った指がややひっかかる感じ。
1:べたつきを感じ、摩った指がひっかかる感じ。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】