特許第6815211号(P6815211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815211
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】パネル搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20210107BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20210107BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20210107BHJP
   B65G 47/91 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
   G09F9/00 338
   B65G49/06
   !B65G47/91 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-12861(P2017-12861)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-118357(P2018-118357A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 賢俊
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 典彦
【審査官】 谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−141152(JP,A)
【文献】 特開2006−091231(JP,A)
【文献】 特開2001−264721(JP,A)
【文献】 特開2009−156818(JP,A)
【文献】 特開平07−314365(JP,A)
【文献】 特開2011−125989(JP,A)
【文献】 特開2008−242074(JP,A)
【文献】 特開2012−240166(JP,A)
【文献】 特開平05−330833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
B65G 47/00 − 47/96
B65G 49/00 − 49/08
G01J 1/00 − 1/60
G02F 1/13
G09F 9/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の表示パネルを収容可能なトレイに収容された前記表示パネルを搬出するパネル搬送ロボットにおいて、
前記表示パネルを把持するパネル把持部と、前記パネル把持部を移動させる移動機構とを備え、
前記パネル把持部は、前記トレイ内の前記表示パネルの有無を検知するためのパネル検知機構を備え、
前記パネル検知機構は、前記トレイ内の前記表示パネルに向かって光を射出する発光部と、前記表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置される受光部とを有する光学式の検知機構であり、前記パネル把持部が前記トレイ内の前記表示パネルを把持しようとするときに前記表示パネルの有無を検知し、
前記パネル搬送ロボットは、前記パネル把持部が前記トレイ内の前記表示パネルを把持しようとするときに前記パネル検知機構によって前記表示パネルが検知されないと、引き続き、前記トレイ内の別の箇所に収容された前記表示パネルを把持するための動作を行うことを特徴とするパネル搬送ロボット。
【請求項2】
前記パネル検知機構は、前記発光部および前記受光部を有する受発光部と、前記発光部から射出され前記表示パネルで反射された光を前記表示パネルに向かって反射する反射部材とを有する回帰反射型の光学式の検知機構であり、
前記受光部は、前記反射部材で反射された後に前記表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項記載のパネル搬送ロボット。
【請求項3】
前記パネル把持部は、前記表示パネルを吸着するパネル吸着部と、前記パネル検知機構および前記パネル吸着部が取り付けられるベース部材とを備え、
前記受発光部と前記反射部材とは、鉛直方向に直交する第1方向において前記パネル吸着部を挟むように配置されるとともに、第1方向における前記ベース部材の両端側のそれぞれに取り付けられていることを特徴とする請求項記載のパネル搬送ロボット。
【請求項4】
前記パネル把持部は、前記表示パネルを吸着するパネル吸着部と、前記パネル検知機構および前記パネル吸着部が取り付けられるベース部材とを備え、
前記受光部は、前記発光部から射出され前記表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置され、
前記発光部と前記受光部とは、鉛直方向に直交する第1方向において前記パネル吸着部を挟むように配置されるとともに、第1方向における前記ベース部材の両端側のそれぞれに取り付けられていることを特徴とする請求項記載のパネル搬送ロボット。
【請求項5】
前記発光部から射出された光の前記表示パネルへの入射角は、45°以上90°未満となっていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のパネル搬送ロボット。
【請求項6】
前記入射角は、略65°となっていることを特徴とする請求項記載のパネル搬送ロボット。
【請求項7】
前記パネル把持部は、前記表示パネルを吸着するパネル吸着部と、前記表示パネルから引き出される配線を吸着する配線吸着部とを備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のパネル搬送ロボット。
【請求項8】
前記パネル吸着部の吸引圧に基づいて前記パネル吸着部に前記表示パネルが吸着されているのか否かを検知するための第1圧力センサと、前記配線吸着部の吸引圧に基づいて前記配線吸着部に前記配線が吸着されているのか否かを検知するための第2圧力センサとを備えることを特徴とする請求項記載のパネル搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の表示パネルを搬送するパネル搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器等で使用される液晶表示装置の組立ラインに組み込まれる搬送装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の搬送装置は、5個の搬送ユニットを備えており、各搬送ユニットには、液晶表示装置の組立工程における各種の工程が割り当てられている。また、この搬送装置は、トレイに収容された液晶パネルを搬送ユニットに供給する自動ローダーを備えている(特許文献1の図19参照)。トレイには、複数枚の液晶パネルが収容されている。自動ローダーは、トレイに収容された液晶パネルを把持して、ロータリーインデックス上の位置決め用治具に供給する。また、自動ローダーは、トレイに収容された液晶パネルを1枚ずつ位置決め用治具に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/120956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された液晶表示装置の組立ラインでは、トレイの所定の箇所に収容されているべき液晶パネルが、何らかの原因によって、トレイの所定の箇所に収容されておらず、トレイの中のパネルが抜けている場合がある。すなわち、この液晶表示装置の組立ラインでは、トレイの中でパネル抜けが発生している場合がある。この場合、自動ローダーが、トレイの所定の箇所で液晶パネルを把持しようとしても、液晶パネルを把持することができないため、エラーとなって自動ローダーが停止してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、複数枚の表示パネルを収容可能なトレイに収容された表示パネルを搬出するパネル搬送ロボットにおいて、トレイの中でパネル抜けが発生していても、動作を継続することが可能なパネル搬送ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のパネル搬送ロボットは、複数枚の表示パネルを収容可能なトレイに収容された表示パネルを搬出するパネル搬送ロボットにおいて、表示パネルを把持するパネル把持部と、パネル把持部を移動させる移動機構とを備え、パネル把持部は、トレイ内の表示パネルの有無を検知するためのパネル検知機構を備え、パネル検知機構は、トレイ内の表示パネルに向かって光を射出する発光部と、表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置される受光部とを有する光学式の検知機構であり、パネル把持部がトレイ内の表示パネルを把持しようとするときに表示パネルの有無を検知し、パネル搬送ロボットは、パネル把持部がトレイ内の表示パネルを把持しようとするときにパネル検知機構によって表示パネルが検知されないと、引き続き、トレイ内の別の箇所に収容された表示パネルを把持するための動作を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明のパネル搬送ロボットでは、表示パネルを把持するパネル把持部は、トレイ内の表示パネルの有無を検知するためのパネル検知機構を備えており、パネル検知機構は、パネル把持部がトレイ内の表示パネルを把持しようとするときに表示パネルの有無を検知する。そのため、本発明では、パネル把持部がトレイ内の表示パネルを把持しようとするときにパネル検知機構によって表示パネルが検知されれば、パネル搬送ロボットに、そのまま、表示パネルの把持動作を継続させることが可能になる。また、本発明では、トレイの中でパネル抜けが発生していて、パネル把持部がトレイ内の表示パネルを把持しようとするときにパネル検知機構によって表示パネルが検知されないと、パネル搬送ロボットは、引き続き、トレイの中の別の箇所に収容された表示パネルを把持するための動作を行う。したがって、本発明では、トレイの中でパネル抜けが発生していても、パネル搬送ロボットの動作を継続することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、パネル検知機構は、トレイ内の表示パネルに向かって光を射出する発光部と、表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置される受光部とを有する光学式の検知機構である。また、一般に、表示パネルの表面はガラス面であるとともに、トレイは樹脂で形成されていて、トレイの表面は表示パネルの表面よりも粗面となっている。そのため、本発明では、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合には、発光部から射出され表示パネルの表面で鏡面反射された光が受光部に入射する。一方、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にない場合には、たとえば、発光部から射出されトレイの表面で乱反射された光が受光部に入射する。したがって、本発明では、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合とない場合とで、受光部の受光量に差異が生じやすくなり、その結果、トレイ内の表示パネルの有無を適切に検知することが可能になる。
【0010】
本発明において、パネル検知機構は、発光部および受光部を有する受発光部と、発光部から射出され表示パネルで反射された光を表示パネルに向かって反射する反射部材とを有する回帰反射型の光学式の検知機構であり、受光部は、反射部材で反射された後に表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0011】
このように構成すると、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合には、発光部から射出された光が2回、表示パネルの表面で鏡面反射された後に受光部に入射する。一方、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にない場合には、たとえば、発光部から射出された光が2回、トレイの表面で乱反射された後に受光部に入射する。したがって、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との、表示パネルの厚さ方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合とない場合とで、受光部の受光量に差異が生じやすくなる。そのため、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との、表示パネルの厚さ方向の距離が短くなっていても、トレイ内の表示パネルの有無を適切に検知することが可能になる。
【0012】
本発明において、パネル把持部は、表示パネルを吸着するパネル吸着部と、パネル検知機構およびパネル吸着部が取り付けられるベース部材とを備え、受発光部と反射部材とは、鉛直方向に直交する第1方向においてパネル吸着部を挟むように配置されるとともに、第1方向におけるベース部材の両端側のそれぞれに取り付けられていることが好ましい。
【0013】
このように構成すると、発光部から射出された光の表示パネルへの入射角を大きくすることが可能になる。したがって、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との鉛直方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合に表示パネルで反射された光の光軸と、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にない場合にトレイで反射された光の光軸とのずれ量を大きくすることが可能になり、その結果、受光部に入射する光の光軸のずれ量を大きくすることが可能になる。そのため、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との鉛直方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合とない場合とで、受光部の受光量により大きな差異が生じやすくなり、トレイ内の表示パネルの有無をより適切に検知することが可能になる。
【0014】
本発明において、パネル把持部は、表示パネルを吸着するパネル吸着部と、パネル検知機構およびパネル吸着部が取り付けられるベース部材とを備え、受光部は、発光部から射出され表示パネルで反射された光を受光可能な位置に配置され、発光部と受光部とは、鉛直方向に直交する第1方向においてパネル吸着部を挟むように配置されるとともに、第1方向におけるベース部材の両端側のそれぞれに取り付けられていても良い。
【0015】
この場合でも、発光部から射出された光の表示パネルへの入射角を大きくすることが可能になる。したがって、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との鉛直方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合に表示パネルで反射された光の光軸と、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にない場合にトレイで反射された光の光軸とのずれ量を大きくすることが可能になり、その結果、受光部に入射する光の光軸のずれ量を大きくすることが可能になる。そのため、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との鉛直方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合とない場合とで、受光部の受光量に差異が生じやすくなり、トレイ内の表示パネルの有無を適切に検知することが可能になる。
【0016】
本発明において、発光部から射出された光の表示パネルへの入射角は、45°以上90°未満となっていることが好ましい。この場合には、入射角は、たとえば、略65°となっている。このように構成すると、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との、表示パネルの厚さ方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合に表示パネルで反射された光の光軸と、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にない場合にトレイで反射された光の光軸とのずれ量を大きくすることが可能になり、その結果、受光部に入射する光の光軸のずれ量を大きくすることが可能になる。したがって、トレイに収容される表示パネルと、トレイの、発光部からの光が照射される部分との、表示パネルの厚さ方向の距離が短くなっていても、パネル把持部が把持しようとする表示パネルがトレイの中にある場合とない場合とで、受光部の受光量に差異が生じやすくなり、トレイ内の表示パネルの有無を適切に検知することが可能になる。
【0017】
本発明において、パネル把持部は、表示パネルを吸着するパネル吸着部と、表示パネルから引き出される配線を吸着する配線吸着部とを備えていることが好ましい。このように構成すると、パネル把持部が、表示パネルを吸着するパネル吸着部に加えて、表示パネルから引き出される配線を吸着する配線吸着部を備えているため、FPC等の配線が表示パネルから引き出されていても、表示パネルを搬送する際の配線のふらつきを抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、パネル搬送ロボットは、パネル吸着部の吸引圧に基づいてパネル吸着部に表示パネルが吸着されているのか否かを検知するための第1圧力センサと、配線吸着部の吸引圧に基づいて配線吸着部に配線が吸着されているのか否かを検知するための第2圧力センサとを備えていることが好ましい。このように構成すると、パネル検知機構によって表示パネルが検知された後であって、第1圧力センサによってパネル吸着部に表示パネルが吸着されていることが確認され、かつ、第2圧力センサによって配線吸着部に配線が吸着されていることが確認された後に、パネル把持部によってトレイから表示パネルを搬出することが可能になる。したがって、パネル把持部によって表示パネルおよび配線を確実に把持した状態で、トレイから表示パネルを搬出することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、複数枚の表示パネルを収容可能なトレイに収容された表示パネルを搬出するパネル搬送ロボットにおいて、トレイの中でパネル抜けが発生していても、パネル搬送ロボットの動作を継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかるパネル搬送ロボットが組み込まれる搬送システムの側面図である。
図2図1のE−E方向から搬送システムを示す平面図である。
図3図1に示すパネル搬送ロボットの斜視図である。
図4図1に示す供給ユニットの斜視図である。
図5図3に示すパネル搬送ロボットのパネル把持部の斜視図である。
図6図5に示すパネル把持部を別の方向から示す斜視図である。
図7図5に示す配線吸着部および位置調整機構を下側から示す斜視図である。
図8図5に示すパネル吸着部および配線吸着部に接続される配管の経路を説明するための図である。
図9図5に示すパネル検知機構の構成を説明するための概略図である。
図10図5に示すパネル把持部による表示パネルの把持動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(搬送システムの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるパネル搬送ロボット9が組み込まれる搬送システム1の側面図である。図2は、図1のE−E方向から搬送システム1を示す平面図である。図3は、図1に示すパネル搬送ロボット9の斜視図である。図4は、図1に示す供給ユニット11の斜視図である。
【0023】
本形態のパネル搬送ロボット9(以下、「ロボット9」とする。)は、表示パネルである液晶パネル2を搬送するロボットである。このロボット9は、搬送システム1に組み込まれて使用される。搬送システム1は、携帯機器等で使用される液晶ディスプレイの製造ラインに組み込まれている。この搬送システム1は、液晶パネル2を搬送して、液晶パネル2に対して所定の処理を行う処理装置14(図2参照)に液晶パネル2を供給する。
【0024】
液晶パネル2は、長方形の平板状に形成されている。液晶パネル2の厚さは、1(mm)程度となっている。液晶パネル2の、表示領域から外れた箇所には、液晶パネル2の検査データ等のデータが記録されている。液晶パネル2の、表示領域から外れた箇所に記録されるデータは、光学的に読取可能なデータである。本形態の搬送システム1で搬送される液晶パネル2には、ドライバICが実装されている。また、液晶パネル2には、配線としてのFPC2a(図8)が接続されている。すなわち、配線基板であるFPC2aが液晶パネル2から引き出されている。FPC2aは、たとえば、長方形の平板状に形成される液晶パネル2の一方の短辺から長辺に平行な方向へ引き出されている。なお、図2等では、FPC2aの図示を省略している。
【0025】
搬送システム1は、液晶パネル2を収容可能なトレイ3を搬送する2個のコンベヤ4、5を備えている。トレイ3は、樹脂で形成されている。トレイ3には、複数枚の液晶パネル2が収容可能となっている。液晶パネル2は、液晶パネル2の厚さ方向と上下方向(鉛直方向)とが一致するようにトレイ3に収容されている。トレイ3に収容される複数枚の液晶パネル2は、互いに重なっていない状態でトレイ3に収容されている。コンベヤ4、5は、複数段に積み重なったトレイ3(段積みされたトレイ3)を水平方向へ直線的に搬送する。
【0026】
以下の説明では、コンベヤ4、5によるトレイ3の搬送方向(図1等のX方向)を「前後方向」とし、上下方向(鉛直方向)と前後方向とに直交する方向(図1等のY方向)を「左右方向」とする。また、前後方向の一方側(図1等のX1方向側)を「前」側とし、その反対側(図1等のX2方向側)を「後ろ側」とし、左右方向の一方側(図2等のY1方向側)を「右」側とし、その反対側(図2等のY2方向側)を「左」側とする。本形態では、搬送システム1の後ろ側に処理装置14が配置されている。
【0027】
また、搬送システム1は、トレイ3が載置される2個のトレイステージ6、7と、コンベヤ4、5とトレイステージ6、7との間でトレイ3を搬送するロボット8と、トレイステージ6、7に載置されたトレイ3から液晶パネル2を搬出する上述のロボット9と、ロボット9から液晶パネル2を受け取って処理装置14に供給する供給ユニット11とを備えている。トレイステージ6、7は、コンベヤ4、5よりも後ろ側に配置されている。供給ユニット11は、トレイステージ6、7よりも後ろ側に配置されている。
【0028】
また、搬送システム1は、コンベヤ4、5とトレイステージ6、7とロボット8と供給ユニット11とが設置される本体フレーム12と、ロボット9が設置される本体フレーム13とを備えている。本体フレーム12の上面は、上下方向に直交する平面状に形成されており、本体フレーム12の上面に、コンベヤ4、5とトレイステージ6、7とロボット8と供給ユニット11とが設置されている。本体フレーム13は、略門型に形成された門型フレームであり、左右方向で本体フレーム12の後端側部分を跨ぐように設置されている。ロボット9は、本体フレーム13の上面部に設置されている。
【0029】
コンベヤ4、5は、複数のローラを備えるローラコンベヤである。コンベヤ4とコンベヤ5とは、左右方向で隣接配置されている。コンベヤ4は、段積みされたトレイ3を後ろ側へ向かって搬送し、コンベヤ5は、段積みされたトレイ3を前側に向かって搬送する。コンベヤ4で搬送されるトレイ3には、複数枚の液晶パネル2が収容されている。一方、コンベヤ5で搬送されるトレイ3には、液晶パネル2は収容されておらず、コンベヤ5で搬送されるトレイ3は空トレイとなっている。
【0030】
コンベヤ4の前端側には、仮置き用の棚(図示省略)から作業者によって運ばれてきた段積み状態のトレイ3が載置される。コンベヤ4の前端側に載置された段積み状態のトレイ3は、後ろ側へ搬送され、コンベヤ4の後端側まで搬送された段積み状態のトレイ3は、後述のようにロボット8によって段ばらしされる。また、コンベヤ5の後端側には、後述のようにロボット8によって空のトレイ3が段積みされる。所定の段数までトレイ3が段積みされると、段積み状態のトレイ3は、前側に搬送される。コンベヤ5の前端側まで搬送された段積み状態のトレイ3は、作業者によって空トレイ用の棚まで運ばれる。
【0031】
トレイステージ6、7には、1個のトレイ3が載置される。トレイステージ6とトレイステージ7とは、左右方向において所定の間隔をあけた状態で配置されている。トレイステージ6は、左右方向においてコンベヤ4と略同じ位置に配置され、トレイステージ7は、左右方向においてコンベヤ5と略同じ位置に配置されている。トレイステージ6、7の上面は、上下方向に直交する平面状に形成されている。
【0032】
ロボット8は、いわゆる3軸直交ロボットである。このロボット8は、門型に形成される本体フレーム15と、本体フレーム15に対して左右方向へのスライドが可能となるように本体フレーム15に保持される可動フレーム16と、可動フレーム16に対して前後方向へスライドが可能となるように可動フレーム16に保持される可動フレーム17と、可動フレーム17に対して上下方向へのスライドが可能となるように可動フレーム17に保持される可動フレーム18と、可動フレーム18に取り付けられるトレイ把持部19とを備えている。また、ロボット8は、可動フレーム16を左右方向へスライドさせる駆動機構と、可動フレーム17を前後方向へスライドさせる駆動機構と、可動フレーム18を上下方向へスライドさせる駆動機構とを備えている。
【0033】
本体フレーム15は、左右方向でコンベヤ4、5を跨ぐように設置されている。可動フレーム16は、本体フレーム15の上面側に取り付けられている。この可動フレーム16は、コンベヤ4、5に載置される段積み状態のトレイ3よりも上側に配置されている。可動フレーム17は、可動フレーム16の右側に取り付けられている。可動フレーム18は、可動フレーム17の後端側に取り付けられている。トレイ把持部19は、可動フレーム18の下端に取り付けられている。このトレイ把持部19は、トレイ3を吸着して把持する複数の吸着部を備えている。
【0034】
ロボット8は、コンベヤ4からトレイステージ6、7へのトレイ3の搬送と、トレイステージ6、7からコンベヤ5へのトレイ3の搬送とを行う。具体的には、ロボット8は、コンベヤ4の後端側まで搬送された段積み状態のトレイ3をトレイステージ6またはトレイステージ7に1個ずつ搬送して、コンベヤ4上の段積み状態のトレイ3を段ばらしする。また、ロボット8は、空になった1個のトレイ3をトレイステージ6またはトレイステージ7からコンベヤ5の後端側に搬送して、コンベヤ5にトレイ3を段積みする。
【0035】
ロボット9は、いわゆるパラレルリンクロボットである。このロボット9は、本体部20と、本体部20に連結される3本のレバー21と、3本のレバー21のそれぞれに連結される3個のアーム部22と、3個のアーム部22に連結されるヘッドユニット23と、液晶パネル2を把持するパネル把持部24(図5等参照)とを備えている。ロボット9は、本体フレーム13の上面部にぶら下がるように設置されている。また、本体部20は、トレイステージ6、7の上方に配置されるとともに、ロボット8の本体フレーム15よりも後ろ側に配置されている。なお、図1図3では、パネル把持部24の図示を省略している。
【0036】
3本のレバー21は、本体部20の外周側へ略等角度ピッチで略放射状に伸びるように本体部20に連結されている。すなわち、3本のレバー21は、本体部20の外周側へ略120°ピッチで略放射状に伸びるように本体部20に連結されている。また、3本のレバー21の基端側は、本体部20に回動可能に連結されている。本体部20とレバー21との連結部には、レバー21を回動させる減速機付きのモータ25が配置されている。本形態のロボット9は、3本のレバー21のそれぞれを回動させる3個のモータ25を備えている。モータ25の出力軸は、レバー21の基端側に固定されている。
【0037】
アーム部22の基端側は、レバー21の先端側に回動可能に連結されている。具体的には、アーム部22は、互いに平行な直線状の2本のアーム26によって構成されており、2本のアーム26のそれぞれの基端側がレバー21の先端側に回動可能に連結されている。ヘッドユニット23は、3個のアーム部22の先端側に回動可能に連結されている。ヘッドユニット23の上端には、モータ27が取り付けられている。
【0038】
パネル把持部24は、ヘッドユニット23の下端に取り付けられている。また、パネル把持部24は、モータ27に連結されており、モータ27の動力によって上下方向を回転の軸方向とする回転が可能になっている。本形態では、本体部20と3本のレバー21と3個のアーム部22とヘッドユニット23と3個のモータ25とモータ27とによって、パネル把持部24を移動させる移動機構28が構成されている。パネル把持部24の具体的な構成については後述する。
【0039】
ロボット9では、3個のモータ25を個別に駆動することで、所定のエリア内において、上下方向、左右方向および前後方向の任意の位置へ、かつ、ヘッドユニット23が一定の姿勢を保ったままの状態で(具体的には、パネル把持部24が下側を向いたままの状態で)、ヘッドユニット23を移動させることが可能になっている。ロボット9は、トレイステージ6、7上のトレイ3に収容された液晶パネル2を1枚ずつ搬出する。具体的には、ロボット9は、トレイステージ6、7上のトレイ3が空になるまでトレイ3から液晶パネル2を1枚ずつ搬出する。また、ロボット9は、トレイ3から搬出した液晶パネル2を後述のパネルステージ39へ搬送する。
【0040】
供給ユニット11は、液晶パネル2の位置合わせを行うためアライメント装置30と、液晶パネル2に記録されたデータを読み取るデータ読取装置31とを備えている。アライメント装置30は、データ読取装置31で液晶パネル2のデータが読み取られる前に液晶パネル2の位置合わせをする。また、供給ユニット11は、データ読取装置31でデータが読み取られた後の液晶パネル2を処理装置14へ搬送するロボット33と、処理装置14へ搬送される液晶パネル2から静電気を除去するイオナイザー(静電気除去装置)34と、アライメント装置30で位置合わせされた後の液晶パネル2をロボット33に向かって搬送する搬送装置35と、アライメント装置30で位置合わせされた液晶パネル2を搬送装置35に搬送するロボット36と、これらの構成が載置されて固定されるベース板37とを備えている。
【0041】
アライメント装置30は、ベース板37の右前端側に載置されている。ロボット33は、ベース板37の左後端側に載置されている。データ読取装置31は、ベース板37の左前端側に載置されている。ロボット36は、アライメント装置30の後ろ側に隣接配置されている。搬送装置35は、左右方向において、データ読取装置31およびロボット33と、アライメント装置30との間に配置されている。イオナイザー34は、搬送装置35の上方に配置されている。ベース板37は、本体フレーム12の上面の後端側部分に載置されて固定されている。
【0042】
アライメント装置30は、トレイステージ6、7上のトレイ3からロボット9によって搬出された液晶パネル2が載置されるパネルステージ39と、上下方向を回動の軸方向としてパネルステージ39を回動させるとともに左右方向と前後方向とにパネルステージ39を移動させて液晶パネル2の位置合わせを行う移動機構とを備えている。また、アライメント装置30は、パネルステージ39よりも上側に配置されるカメラ41および照明42を備えている。
【0043】
搬送装置35は、液晶パネル2が載置される4個のパネルステージ52と、4個のパネルステージ52を前後方向へスライドさせる駆動機構とを備えている。ロボット36は、液晶パネル2を吸着して把持するパネル把持部55と、パネル把持部55を上下方向および左右方向へスライドさせる駆動機構とを備えている。ロボット33は、液晶パネル2を吸着して把持する4個のパネル把持部58と、4個のパネル把持部58を上下方向および左右方向へスライドさせる駆動機構とを備えている。
【0044】
ロボット36は、アライメント装置30で位置合わせされた後の液晶パネル2を、前側で停止しているパネルステージ52に搬送する。パネルステージ52に液晶パネル2が載置されると、搬送装置35は、後ろ方向へパネルステージ52を移動させて、液晶パネル2を搬送装置35の後端側まで搬送する。ロボット33は、搬送装置35によって搬送装置35の後端側まで搬送された液晶パネル2を処理装置14に搬入する。
【0045】
データ読取装置31は、光学的に読取可能なデータを読み取るカメラ62と、カメラ62を上下方向、前後方向および左右方向へスライドさせる駆動機構と、液晶パネル2に光を照射する照明とを備えている。データ読取装置31は、アライメント装置30での位置調整後に搬送装置35のパネルステージ52に載置された液晶パネル2のデータを読み取る。上述のように、イオナイザー34は、搬送装置35の上方に配置されている。また、イオナイザー34は、データ読取装置31よりも後ろ側に配置されており、データ読取装置31でデータが読み取られた後の液晶パネル2の静電気を除去する。
【0046】
(パネル把持部の構成)
図5は、図3に示すロボット9のパネル把持部24の斜視図である。図6は、図5に示すパネル把持部24を別の方向から示す斜視図である。図7は、図5に示す基板吸着部72および位置調整機構73を下側から示す斜視図である。図8は、図5に示すパネル吸着部71および基板吸着部72に接続される配管の経路を説明するための図である。図9は、図5に示すパネル検知機構74の構成を説明するための概略図である。
【0047】
パネル把持部24は、液晶パネル2を吸着するパネル吸着部71と、液晶パネル2から引き出されるFPC2aを吸着する配線吸着部としての基板吸着部72とを備えている。本形態のパネル把持部24は、2個の基板吸着部72を備えている。また、パネル把持部24は、パネル吸着部71に対する基板吸着部72の位置を調整するための位置調整機構73と、トレイ3内の液晶パネル2の有無を検知するためのパネル検知機構74とを備えている。さらに、パネル把持部24は、パネル吸着部71、位置調整機構73およびパネル検知機構74が取り付けられるベース部材75を備えている。ベース部材75は、略円形の平板状に形成されており、ベース部材75の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。
【0048】
パネル吸着部71は、ベース部材75の下面側に取り付けられている。このパネル吸着部71は、液晶パネル2の厚さ方向と上下方向(鉛直方向)とが一致するように液晶パネル2を吸着する。パネル吸着部71の下面には、液晶パネル2の上面を吸引する吸引口(図示省略)が形成されている。パネル吸着部71は、液晶パネル2の上面を真空吸着することで液晶パネル2を把持する。以下の説明では、上下方向(鉛直方向)に直交する図5等のV方向を「第1方向」とし、上下方向と第1方向とに直交する図5等のW方向を「第2方向」とする。
【0049】
基板吸着部72は、FPC2aの厚さ方向と上下方向とが一致するようにFPC2aを吸着する。この基板吸着部72は、FPC2aに接触する基板接触部76と、基板接触部76がFPC2aに接触するときの衝撃を緩和する緩衝機構77とを備えている。緩衝機構77は、たとえば、ピストン77aとピストン77aをスライド可能に保持するシリンダ77bとを備えるエアダンパーである。この緩衝機構77は、ピストン77aの移動方向と上下方向とが一致するように配置されている。
【0050】
基板接触部76は、ピストン77aの下端に固定されており、FPC2aの上面に接触可能となっている。基板接触部76の下面には、FPC2aの上面を吸引する吸引口76a(図7参照)が形成されている。吸引口76aの径は、パネル吸着部71の下面に形成される吸引口の径よりも小さくなっている。基板吸着部72は、FPC2aの上面を真空吸着することでFPC2aを把持する。
【0051】
位置調整機構73は、手動式の調整機構である。この位置調整機構73は、シリンダ77bを保持する保持部材78と、保持部材78を第1方向へスライド可能に保持する保持部材79と、保持部材79を第2方向へスライド可能に保持する保持部材80とを備えている。本形態の位置調整機構73は、2個の保持部材78と、2個の保持部材79と、2個の保持部材80とを備えている。
【0052】
保持部材80は、断面形状がL形状をなす細長い板状部材である。2個の保持部材80のそれぞれの一端部は、第1方向におけるベース部材75の両端側のそれぞれに固定されており、保持部材80は、ベース部材75から第2方向の一方側へ伸びている。すなわち、保持部材80は、保持部材80の長手方向と第2方向とが一致するように配置されている。保持部材80には、第2方向を長手方向とする長穴80aが形成されている。長穴80aは、保持部材80の、上下方向に直交する平板部分を上下方向で貫通している。また、長穴80aは、第2方向における保持部材80の略中心と、保持部材80の第2方向の一方側(ベース部材75から保持部材80が伸びている方向の側)の端部との間の全域に形成されている。
【0053】
保持部材79は、断面形状がL形状をなす細長い板状部材である。保持部材79の両端側には、ネジ81がねじ込まれるネジ穴が形成されている。このネジ穴は、保持部材79の、上下方向に直交する平板部分に形成されている。保持部材79の両端側のそれぞれは、上側から長穴80aに挿通されるネジ81によって2個の保持部材80のそれぞれに固定されている。すなわち、保持部材79は、ネジ81によって2個の保持部材80に固定されており、保持部材80の下側に配置されている。また、2個の保持部材79のそれぞれが2個の保持部材80に固定されている。保持部材79は、第1方向と平行に配置されている。すなわち、2個の保持部材79は、互いに平行に配置されるとともに第1方向と平行に配置されている。
【0054】
保持部材79には、第1方向を長手方向とする長穴79aが形成されている。長穴79aは、保持部材79の、第2方向に直交する平板部分を第2方向で貫通している。また、長穴79aは、保持部材79の第1方向の一方側の端部と他方側の端部との間の全域に形成されている。保持部材78は、L形状に折り曲げられた平板状の部材である。保持部材78には、ネジ82がねじ込まれるネジ穴が形成されている。このネジ穴は、保持部材78の、第2方向に直交する平板部分に形成されている。
【0055】
保持部材78は、第2方向の一方側から長穴79aに挿通されるネジ82によって保持部材79に固定されており、保持部材79の、第2方向の他方側に配置されている。また、2個の保持部材78のそれぞれが2個の保持部材79のそれぞれに固定されている。保持部材78の、上下方向に直交する平板部分には、シリンダ77bが固定されている。すなわち、保持部材78には、基板吸着部72が固定されている。
【0056】
本形態では、ネジ82を緩めることで、パネル吸着部71に対する第1方向での基板吸着部72の位置調整が可能となる。また、ネジ81を緩めることで、パネル吸着部71に対する第2方向での基板吸着部72の位置調整が可能となる。すなわち、基板吸着部72は、第1方向と第2方向とにおいて、パネル吸着部71に対して位置調整可能となっている。また、2個の基板吸着部72のそれぞれがパネル吸着部71に対して位置調整可能となっている。
【0057】
図8に示すように、パネル吸着部71と2個の基板吸着部72とは、共通のオンオフ弁84を介して共通の空気の吸引機構85に接続されている。オンオフ弁84は、電磁弁である。また、吸引機構85は、たとえば、真空ポンプである。オンオフ弁84と2個の基板吸着部72との間の配管経路には、流量制御弁86が配置されている。流量制御弁86は、たとえば、流量調整弁や絞り弁である。本形態では、流量制御弁86の作用によって、基板吸着部72によるFPC2aの吸引力は、パネル吸着部71による液晶パネル2の吸引力よりも小さくなっている。たとえば、基板吸着部72によるFPC2aの吸引力とパネル吸着部71による液晶パネル2の吸引力との比は、1:9となっている。
【0058】
オンオフ弁84とパネル吸着部71との間の配管経路には、パネル吸着部71の吸引圧に基づいてパネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されているのか否かを検知するための第1圧力センサ87が接続されている。また、オンオフ弁84と2個の基板吸着部72との間の配管経路には、基板吸着部72の吸引圧に基づいて基板吸着部72にFPC2aが吸着されているのか否かを検知するための第2圧力センサ88が接続されている。
【0059】
パネル検知機構74は、図9等に示すように、トレイ3内の液晶パネル2に向かって光を射出する発光部89と、液晶パネル2で反射された光を受光可能な位置に配置される受光部90とを備える光学式の検知機構である。具体的には、パネル検知機構74は、発光部89および受光部90を有する受発光部91と、発光部89から射出され液晶パネル2で反射された光を液晶パネル2に向かって反射する反射部材(回帰反射板)92とを有する回帰反射型の光学式の検知機構であり、受光部90は、反射部材92で反射された後に液晶パネル2で反射された光を受光可能な位置に配置されている。
【0060】
発光部89は、光源であるLED(発光ダイオード)を備えている。また、発光部89は、たとえば、LEDからの光を伝達する光ファイバーを備えている。受発光部91および反射部材92は、ベース部材75の下面側に固定されている。また、受発光部91および反射部材92は、パネル吸着部71の下面よりも上側に配置されている。受発光部91と反射部材92とは、第1方向においてパネル吸着部71を挟むように配置されている。また、受発光部91と反射部材92とは、第1方向におけるベース部材75の両端側のそれぞれに取り付けられている。
【0061】
発光部89の発光面および受光部90の受光面は斜め下側に向き、反射部材92の反射面は、斜め下側を向いている。また、発光部89の発光面、受光部90の受光面および反射部材92の反射面は、第1方向の内側に向いている。発光部89から射出された光の液晶パネル2への入射角θは、45°以上90°未満となっている。具体的には、入射角θは、略65°となっている。また、本形態では、液晶パネル2に照射される光のスポット径は比較的小さくなっている。
【0062】
パネル検知機構74は、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに液晶パネル2の有無を検知する。具体的には、パネル検知機構74は、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに、受光部90の受光量に基づいて、液晶パネル2の有無を検知する。
【0063】
すなわち、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに、図9に示すように、パネル把持部24の下側に液晶パネル2があれば、発光部89から射出された光は、液晶パネル2の上面で反射され、反射部材92で反射された後、再び、液晶パネル2の上面で反射されて受光部90に入射するが、パネル把持部24の下側に液晶パネル2がないと、発光部89から射出された光は、トレイ3で反射され、反射部材92で反射された後、再び、トレイ3で反射されて受光部90に入射するため、パネル把持部24の下側に液晶パネル2がある場合とない場合とで、受光部90の受光量が異なる。パネル検知機構74は、受光部90の受光量の相違に基づいて、液晶パネル2の有無を検知する。
【0064】
なお、図9に示すように、トレイ3には、液晶パネル2の外周端部分を支持するパネル支持部3aが形成されている。パネル支持部3aは、長方形の枠状に形成されており、液晶パネル2の外周端部分の下面がパネル支持部3aの上面に接触している。パネル支持部3aの内周側は、下側に向かって窪む凹部3bとなっている。パネル支持部3aの上面と凹部3bの底面との上下方向の距離Dは、3〜4(mm)程度となっている。上述のように、液晶パネル2の厚さは1(mm)程度となっており、トレイ3に収容される液晶パネル2に撓みが生じていない場合には、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面と凹部3bの底面との上下方向の距離は、4〜5(mm)程度となっている。
【0065】
パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに、パネル把持部24の下側に液晶パネル2がない場合には、発光部89から射出された光は、凹部3bの底面で反射される。また、凹部3bの底面で反射された光は、反射部材92で反射された後、再び、凹部3bの底面で反射される。
【0066】
(液晶パネルの把持動作)
図10は、図5に示すパネル把持部24による液晶パネル2の把持動作を説明するためのフローチャートである。
【0067】
本形態では、パネル把持部24による液晶パネル2の把持動作が開始されて、トレイ3内の所定の箇所に収容されている液晶パネル2をパネル把持部24が把持しようとするときには、まず、パネル検知機構74によって液晶パネル2の有無が検知される(ステップS1)。トレイ3内で液晶パネル2の抜けがあって、ステップS1において、パネル検知機構74によって液晶パネル2が検知されないと(ステップS1において、“No”の場合)、ロボット9は、パネル把持部24を移動させて、トレイ3内の他の箇所に収容されている液晶パネル2をパネル把持部24で把持することを試みる(ステップS2)。すなわち、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときにパネル検知機構74によって液晶パネル2が検知されないと、ロボット9は、引き続き、トレイ3内の別の箇所に収容された液晶パネル2を把持するための動作を行う。
【0068】
一方、トレイ3内の所定の箇所に収容されている液晶パネル2をパネル把持部24が把持しようとするときに、パネル検知機構74によって液晶パネル2が検知されると(ステップS1において、“Yes”の場合)、ロボット9は、そのまま、液晶パネル2の把持動作を継続する(ステップS3)。すなわち、ロボット9は、パネル把持部24による液晶パネル2およびFPC2aの吸着を試みる。具体的には、ロボット9は、液晶パネル2をパネル吸着部71で吸着し、FPC2aを基板吸着部72で吸着することを試みる。
【0069】
その後、第1圧力センサ87によってパネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されているのか否かが検知されるととともに、第2圧力センサ88によって基板吸着部72にFPC2aが吸着されているのか否かが検知される(ステップS4)。ステップS4において、第1圧力センサ87によってパネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されていることが検知され、かつ、第2圧力センサ88によって基板吸着部72にFPC2aが吸着されていることが検知されると(ステップS4において、“Yes”の場合)、パネル把持部24による液晶パネル2の把持動作が完了して、ロボット9は、トレイ3からの液晶パネル2の搬出動作を開始する。
【0070】
一方、パネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されていること、および、基板吸着部72にFPC2aが吸着されていることの少なくともいずれか一方が検知されない場合(ステップS4において、“No”の場合)には、パネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されていない状態、および、基板吸着部72にFPC2aが吸着されていない状態の少なくともいずれか一方の状態となっている吸着ミスが所定回数(N回)発生したのか否かが判断される(ステップS5)。たとえば、所定回数である3回、吸着ミスが発生していない場合(ステップS5において、“No”の場合)には、ロボット9は、パネル把持部24による液晶パネル2およびFPC2aの吸着を再度試みて(ステップS6)、ステップS4へ戻る。
【0071】
ステップS6を経た後のステップS4において、パネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されていることが検知され、かつ、基板吸着部72にFPC2aが吸着されていることが検知されると(ステップS4において、“Yes”の場合)、パネル把持部24による液晶パネル2の把持動作が完了して、ロボット9は、トレイ3からの液晶パネル2の搬出動作を開始する。また、ステップS5において、吸着ミスが所定回数、発生している場合(ステップS5において、“Yes”の場合)には、エラーとなってロボット9が停止する。
【0072】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、パネル把持部24は、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに液晶パネル2の有無を検知するパネル検知機構74を備えている。また、本形態では、パネル把持部24がトレイ3内の液晶パネル2を把持しようとするときに、パネル検知機構74によって液晶パネル2が検知されれば、ロボット9は、そのまま、液晶パネル2の把持動作を継続し、トレイ3の中で液晶パネル2の抜けが発生していて、パネル検知機構74によって液晶パネル2が検知されなければ、ロボット9は、トレイ3の中の別の箇所に収容された液晶パネル2を把持するための動作を継続している。そのため、本形態では、トレイ3の中で液晶パネル2の抜けが発生していても、ロボット9の動作を継続することが可能になる。
【0073】
本形態では、パネル検知機構74は、トレイ3内の液晶パネル2に向かって光を射出する発光部89と、液晶パネル2で反射された光を受光可能な位置に配置される受光部90とを備える光学式の検知機構である。また、本形態では、液晶パネル2の表面がガラス面となっている一方で、トレイ3は樹脂で形成されており、トレイ3の表面は液晶パネル2の表面よりも粗面となっている。
【0074】
そのため、本形態では、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合には、発光部89から射出され液晶パネル2の表面で鏡面反射された光が受光部90に入射し、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にない場合には、発光部89から射出されトレイ3の表面で乱反射された光が受光部90に入射する。したがって、本形態では、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合とない場合とで、受光部90の受光量に差異が生じやすくなり、その結果、トレイ3内の液晶パネル2の有無を適切に検知することが可能になる。
【0075】
また、本形態では、パネル検知機構74は、回帰反射型の光学式の検知機構であり、受光部90は、反射部材92で反射された後に液晶パネル2で反射された光を受光可能な位置に配置されている。そのため、本形態では、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合には、発光部89から射出された光が2回、液晶パネル2の表面で鏡面反射された後に受光部90に入射し、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にない場合には、発光部89から射出された光が2回、トレイ3の表面で乱反射された後に受光部90に入射する。
【0076】
したがって、本形態では、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面と、発光部89からの光が照射されるトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が4〜5(mm)と短くなっていても、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合とない場合とで、受光部90の受光量に差異が生じやすくなる。そのため、本形態では、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、トレイ3内の液晶パネル2の有無を適切に検知することが可能になる。
【0077】
また、本形態では、受発光部91と反射部材92とが、第1方向におけるベース部材75の両端側のそれぞれに取り付けられており、発光部89から射出された光の液晶パネル2への入射角θが大きくなっている。そのため、本形態では、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、図9に示すように、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合に、発光部89から射出され液晶パネル2で反射された光の光軸L1と、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にない場合に、発光部89から射出されトレイ3で反射された光の光軸L2とのずれ量を大きくすることが可能になる。
【0078】
したがって、本形態では、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合とない場合とで、受光部90に入射する光の光軸のずれ量を大きくすることが可能になる。そのため、本形態では、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、受光部90の受光量により大きな差異が生じやすくなり、その結果、トレイ3内の液晶パネル2の有無をより適切に検知することが可能になる。
【0079】
本形態では、液晶パネル2を把持するパネル把持部24は、液晶パネル2を吸着するパネル吸着部71に加えて、液晶パネル2から引き出されるFPC2aを吸着する基板吸着部72を備えている。そのため、本形態では、FPC2aが液晶パネル2から引き出されていても、液晶パネル2を搬送する際のFPC2aのふらつきを抑制することが可能になる。
【0080】
本形態では、第1圧力センサ87によってパネル吸着部71に液晶パネル2が吸着されていることが検知され、かつ、第2圧力センサ88によって基板吸着部72にFPC2aが吸着されていることが検知されると、ロボット9は、トレイ3からの液晶パネル2の搬出動作を開始する。そのため、本形態では、パネル把持部24によって液晶パネル2およびFPC2aを確実に把持した状態で、トレイ3から液晶パネル2を搬出することが可能になる。
【0081】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0082】
上述した形態において、パネル検知機構74は、回帰反射型の光学式の検知機構でなくても良い。この場合には、たとえば、受光部90は、上述した形態において反射部材92が配置されている位置に配置されている。すなわち、受光部90は、発光部89から射出され液晶パネル2で反射された光を受光可能な位置に配置されている。また、発光部89と受光部90とは、第1方向においてパネル吸着部71を挟むように配置されるとともに、第1方向におけるベース部材75の両端側のそれぞれに取り付けられている。
【0083】
この場合であっても、発光部89から射出された光の液晶パネル2への入射角θを大きくすることが可能になるため、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合に液晶パネル2で反射された光の光軸L1と、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にない場合にトレイ3で反射された光の光軸L2とのずれ量を大きくすることが可能になる。
【0084】
そのため、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合とない場合とで、受光部90に入射する光の光軸のずれ量を大きくすることが可能になる。したがって、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、受光部90の受光量に差異が生じやすくなり、その結果、トレイ3内の液晶パネル2の有無を適切に検知することが可能になる。
【0085】
上述した形態において、トレイ3の凹部3bの底面に照射された光が反射部材92に向かって反射されないように、凹部3bの底面に上側に向かって突出する凸部が形成されていても良い。この場合には、トレイ3に収容される液晶パネル2の上面とトレイ3の凹部3bの底面との上下方向の距離が短くなっていても、パネル把持部24が把持しようとする液晶パネル2がトレイ3の中にある場合とない場合とで、受光部90の受光量により大きな差異が生じやすくなる。
【0086】
上述した形態において、FPC2a以外の配線が液晶パネル2から引き出されていても良い。たとえば、FFC(Flexible Flat Cable)が液晶パネル2から引き出されていても良い。また、上述した形態において、パネル把持部24は、基板吸着部72を備えていなくても良い。
【0087】
上述した形態において、ロボット9に搬送される液晶パネル2は、FPC2aが接続される前の液晶パネル2であっても良い。すなわち、トレイ3に収容される液晶パネル2は、FPC2aが接続される前の液晶パネル2であっても良い。また、上述した形態において、ロボット9に搬送される表示パネルは、液晶パネル2以外の表示パネルであっても良い。たとえば、ロボット9に搬送される表示パネルは、有機ELパネルであっても良い。
【0088】
上述した形態では、パラレルリンクロボットであるロボット9を例に、本発明のパネル搬送ロボットの構成を説明しているが、本発明が適用されるパネル搬送ロボットは、2軸直交型ロボットであっても良いし、3軸直交型ロボットであっても良い。また、本発明が適用されるパネル搬送ロボットは、水平多関節ロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0089】
2 液晶パネル(表示パネル)
2a FPC(フレキシブルプリント基板、配線)
3 トレイ
9 ロボット(パネル搬送ロボット)
24 パネル把持部
28 移動機構
71 パネル吸着部
72 基板吸着部(配線吸着部)
74 パネル検知機構
75 ベース部材
87 第1圧力センサ
88 第2圧力センサ
89 発光部
90 受光部
91 受発光部
92 反射部材
V 第1方向
θ 入射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10