【実施例1】
【0017】
図1から
図5を参照して、本発明の第1の実施例の回転電機の特徴量評価システムおよび特徴量評価方法について説明する。
図1は本実施例の回転電機の特徴量評価システムの概略構成を示すブロック図であり、
図2は監視対象となる回転電機の一部断面図である。
図3は本実施例の特徴量評価システムによる解析後のデータ保存時間帯の例を示す図である。また、
図4は運転条件が変化する場合のデータ保存時間帯の例を示している。
図5は本実施例の回転電機の特徴量評価方法を示すフローチャートであり、
図1の特徴量評価システムに対応する本発明の代表的な特徴量評価方法の例を示している。
【0018】
なお、本実施例では、特徴量評価(計測)装置として振動センサをタービン発電機に適用する場合で説明するが、特徴量を評価(計測)することができれば電気センサや磁気センサ、温度センサなどのセンサを適用しても良い。また、本発明はタービン発電機に限定されるものではなく、それ以外の回転電機に適用しても良い。
【0019】
まず、
図2を用いて本発明の対象となる回転電機の構造について述べる。回転電機100は、主として円筒状の固定子110とその内側に回転可能に支持される回転子120とで構成される。固定子110は、固定子鉄心111、固定子コイル112、固定子フレーム113から構成される。固定子コイル112は、固定子鉄心111の内周に形成されたスロットに巻回される。
【0020】
回転電機100の固定子コイルエンド114は、主として固定子鉄心111から軸方向に固定子コイル112が突出した部分とそれを支持する支持部材群とで構成され、運転時に作用する電磁力によって固定子コイルエンド114が振動する場合がある。特に、定格運転時においては電磁力が楕円に変形するように作用し、かつ変形は回転子の回転に合わせて回転することから、固定子コイルエンド部114について径・周方向で構成される面を見た場合に固定子コイルエンド部114が楕円状に変形する振動モードを抑制する必要がある。打撃試験においてはこの固定子コイルエンド114が楕円状に変形するモードが複数存在する。運転2倍周波数と楕円状に変形するモードの固有振動数とが合致する場合、固定子コイルエンド114で大きな振動が発生する。
【0021】
この現象に対して、運転状態を監視するために固定子系である固定子鉄心111、固定子コイルエンド114、固定子フレーム113に振動センサが取り付けられる場合がある。例えば、この振動センサは振動量が大きくなりやすく振動モードが捕捉しやすい固定子コイル112の端部や固定子鉄心111の端部に振動モードや振動の方向性を考慮して複数個取り付けられる。また、固定子鉄心111の振動モードの捕捉をするために固定子鉄心111の振動の節部と腹部などに振動モードや振動の方向性を考慮して複数個取り付けられる。
【0022】
2極の回転電機の場合、固定子コイルエンド部114が楕円状に変形する振動モードが回転2倍周波数で出現する。この振動モードの捕捉のためには、回転周波数の4倍を超えるサンプリング周波数でセンサの特徴量を取得する必要がある。この特徴量を全てのセンサで常時取得し続けるとデータ量が膨大となり、データ保存領域(保存容量)が不足する可能性がある。データ保存領域(保存容量)不足を懸念してデータ保存間隔を任意の時間に定めた場合、データが制限値を上回る等の大きく変化した瞬間にデータ取得が不可能な場合がある。
【0023】
図1に本実施例の回転電機の特徴量評価システムの概略構成を示す。本実施例の特徴量評価システム10は、
図1に示すように、種々のセンサや電磁気的センサ、温度センサなどで構成される特徴量計測装置A1Aおよび特徴量計測装置B1B、データロガーなどで構成されるデータ集積装置2、フーリエ変換器などで構成されるデータ解析装置3、データ判定装置4、ハードディスクなどで構成されるデータ保存装置5が接続されて構成されている。また、運転状態の変化を捕捉する運転状態判定装置6とデータ判定装置4とを接続し、連携を保っている。
【0024】
なお、
図1において特徴量計測装置は複数個示しているが(ここではA,B二つの特徴量計測装置)、特徴量計測装置以外の他の装置(例えばデータ集積装置2やデータ保存装置5)が複数個あってもよい。
【0025】
図1の構成において、具体的には、回転電機100に取り付けた特徴量計測装置1(特徴量計測装置A1A,特徴量計測装置B1B)で計測されるデータをデータ集積装置2へ一時的に保存し、データ解析装置3にて数値的に解析する。解析後のデータが予め設定していた閾値を超える場合にデータ保存の可否判定をデータ判定装置4で行い、データ集積装置2に保存されていたデータをデータ保存装置5へ保存する。
【0026】
解析後のデータを保存する際、
図3に示すような閾値を超える前後の任意時間帯t1とt2との間のデータを保存し、この時間帯を外れたデータについては棄却(破棄)する。なお、T
1=t
0−t
1とT
2=t
2−t
0とは異なる値であってもよい。つまり、データ保存装置5へデータを保存する時間帯は、閾値を超える前後で同じ長さの時間帯であってもよく(T
1=T
2)、異なる長さであってもよい(T
1>T
2またはT
1<T
2)。
【0027】
また、任意の特徴量が閾値を上回り、他の特徴量が閾値を上回らない場合においても、双方のデータを保存してもよい。特徴量計測装置のサンプリング数は回転周波数の4倍を上回るものとする。また、運転状態判定装置6により運転状態を監視し、回転電機100の回転数や有効電力等が変化する場合も変化した前後の任意の時間帯のデータを保存する。
【0028】
本発明により、回転電機100の運転状態を示すデータ(特徴量)が閾値を超えたり、回転電機100に何らかの異常事象が発生した場合に確実にデータを取得することができ、データ(特徴量)が閾値を超えた原因の究明が比較的容易となる。これにより対策に要する時間の低減を図ることができる。特に、サンプリング周波数を回転周波数の4倍以上に設定しデータ解析装置3で周波数成分を分析することにより、固定子コイルエンド部114の回転2倍周波数成分の電磁振動を漏れなく捕捉することが可能となる。
【0029】
また、運転状態判定装置6で運転状態の変化を監視して運転条件変化時にもデータを取得することにより、現象解明のための物理モデルを取得することができる。
図4に示すように、時刻t
3からt
4にかけて運転条件が徐々に変化する場合、運転条件変化前の任意の時間T
1と運転条件変化時と運転条件変化後の任意の時間T
2のデータ、すなわち時刻t
5からt
6の間のデータをデータ保存装置5へ保存する。
【0030】
例えば、固定子コイル112に流れる電流値が変化する場合、電磁力は電流値の2乗値に比例するため固定子コイル112の振動振幅も電流の2乗値と相関関係を有する。振動現象解明のためには、有効電力や無効電力が変化するような複雑な場合についてもデータを取得する必要がある。
【0031】
ここで、運転状態の変化とは電磁気的パラメータの変化だけではなく、起動や停止のための回転子120の回転数の変化なども含まれる。例えば、励磁機を作動させずに回転周波数のみを変化させて電磁力を作用させない場合にもデータを取得しデータ解析装置3で振動の周波数成分を分析することにより、回転2倍周波数の電磁振動の他に、回転子120の回転やその振動伝達に由来する機械加振による振動現象を捕捉することができる。固定子110には複数のセンサが取り付けられているため、振動モードの取得が可能になるとともに、機械加振の共振周波数を取得することができる。
【0032】
この機械加振は固定子鉄心111と回転子120との間の距離を変化させるため電磁振動にも間接的に影響を及ぼす可能性があり、電磁気的センサの情報を併せて取得して両者のデータを解析することで機械加振が影響する電磁振動の現象を捕捉することができる。これらの振動現象の設計や保守への反映によって固定子系の信頼性向上を図ることができる。
【0033】
上記で説明した特徴量評価システムを用いた特徴量評価方法を
図5のフローチャートに示す。
【0034】
先ず、回転電機100に取り付けた特徴量計測装置(センサ)1により回転電機100の振動や温度などの運転状態を計測する。(ステップS1)
次に、ステップS1で計測した計測データをデータロガーなどで構成されるデータ集積装置2へ一時的に保存する。(ステップS2)
続いて、データ集積装置2に一時的に保存された計測データに対し、フーリエ変換器などで構成されるデータ解析装置3により数値解析を行う。(ステップS3)
上記のステップS1からステップS3までの処理と並行して、運転状態判定装置6により回転電機100の回転数や有効電力などの運転状態を示すパラメータを監視する。(ステップS4)
続いて、ステップS1からステップS3で取得した解析データおよびステップS4で取得した運転状態に関するパラメータのデータをデータ判定装置4に入力し、入力した解析データおよび運転状態に関するデータの各々と予め設定した閾値とを比較判定する。(ステップS5)
解析データや運転状態に関するデータが予め設定した閾値以上であると判定した場合、閾値を超える前後の所定の時間帯(例えば、
図3のt
1−t
2間や
図4のt
5−t
6間)のデータをハードディスクなどで構成されるデータ保存装置5へ保存する。(ステップS6)
一方、解析データや運転状態に関するデータが予め設定した閾値未満であると判定した場合は、ステップS2でデータ集積装置2へ一時的に保存したデータを棄却(破棄)する。(ステップS7)
以上説明したステップS1からステップS7の特徴量評価方法を、回転電機100の運転中に継続する(繰り返す)ことで、データ容量を抑えつつ回転電機100の運転状態を把握する重要な情報(特徴量)を効率良く取得し、かつ、異常発生時のみの特徴量評価を行って異常発生の原因究明に活用する。
【0035】
以上説明したように、本実施例の回転電機の特徴量評価システムおよび特徴量評価方法によれば、回転電機の運転状態に関する計測データや監視データのデータ容量の増大を抑えつつ重要データを確実に取得し、異常状態の効率的な監視が可能となる。
【0036】
なお、データ解析を行う際は統計処理や物理理論に当てはめた数式処理を行い、相関性を評価するようなデータ解析装置3を用いて特徴量評価システムを構築してもよい。複数の特徴量の相関性を評価することで、制御したい特徴量がある場合に制御可能な特徴量を適切に変更できる。制御したい特徴量が故障に関連する場合は特徴量の制御によって故障を未然に防ぐことが可能となる。
【実施例8】
【0056】
図12を参照して、本発明の第8の実施例の回転電機の特徴量評価システムについて説明する。
図12は本実施例の回転電機の特徴量評価システムの概略構成を示すブロック図であり、上記の実施例1から実施例6の全ての構成を備える特徴量評価システムの例である。
【0057】
本実施例の特徴量評価システム10により、回転電機100の運転状態を示す特徴量が変化した場合に、所定の条件下で当該特徴量のデータを選択的に取得し保存することで、データ容量の増大を抑えつつ重要データを確実に取得し、異常状態の効率的な監視が可能となる。
【0058】
なお、上記の実施例1から実施例6の各実施例において、特徴量の計測は画像認識に基づくものであってもよい。例えば、カメラで計測した振動振幅やサーモグラフィによる温度分布、画像相関法により取得したひずみ分布、粒子画像流速測定法などが含まれ、特徴量が二次元的に評価できれば任意の手法でよい。画像を取得してその画像を解析して閾値を評価することによって現象の捕捉が容易になるため、より信頼性の高い回転電機の設計が可能となる。
【0059】
また、特徴量評価システム10を構成する各装置(各領域)の構成順序(接続関係)は、各実施例の図面において示す構成順序(接続関係)に限定されるものではなく、一部または複数の装置について入れ替えることも可能である。
【0060】
また、上記の各実施例では、特徴量評価システム10がひとつの纏まったシステムとして構成される例を用いて説明したが、例えば、
図1において、特徴量計測装置A,Bおよびデータ集積装置を回転電機が設置される現地に設け、データ解析装置、データ判定装置、データ保存装置、運転状態判定装置の各装置は現地から離れた監視棟内の監視システムとして設けて、現地と監視棟とを無線通信または有線通信で結ぶクラウドシステムとして構成することも可能であり、本発明はこれらの構成も含む。
【0061】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。