(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように使用希望者、例えば運転者毎に車両環境を設定できたとしても、設定変化による影響が複雑な場合には、設定を決定するのが難しい場合がある。そこで、車両環境に関する設定の支援が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、運転者毎に対応した車両設定を行うことを支援することができる車両の設定支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鞍乗型車両の設定支援装置は、車体の走行機能に関する設定である車体設定を変更可能に構成されるものであって、運転者の運転操作に関する運転操作情報を受信する受信部と、前記受信部が受信する前記運転操作情報に基づいて運転者の操作傾向を学習する学習部と、前記学習部が学習した学習内容に基づいて前記車体設定に関する設定情報を作成する作成部と、前記作成部が作成する設定情報を出力する出力部とを備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、運転者毎に操作傾向を学習し、その学習内容に基づいて設定情報が作成して出力されるので、運転者毎に異なる固有の操作傾向を反映した設定情報を提案したり、その設定情報を車体設定に反映させたりすることができる。つまり、運転者毎に対応した車両設定を行うことを支援することができる。
【0008】
また本発明では、繰り返し運転操作情報を取得して学習を繰り返させることによって学習内容を習熟させることができ、運転者の運転操作傾向をより詳しく(例えば、癖や趣向等まで詳細に)学習し、それらを反映した設定情報を提案したり車体設定に反映させたりすることができる。それ故、運転者毎に各々の好みに則した固有の設定情報を提案したり、車体設定に反映させたりすることができる。
【0009】
上記発明において、前記受信部は、前記設定情報に対して運転者が入力する評価である評価指令を受信し、前記学習部は、前記設定情報に対する前記評価指令の傾向を学習し、前記作成部は、学習した前記評価指令の傾向を含む前記学習内容に基づいて前記設定情報を作成してもよい。
【0010】
上記構成に従えば、運転者が設定情報に対する評価を学習部に伝えることができ、学習部は、設定情報に対する評価の傾向を学習することができる。それ故、前記評価に応じた設定情報を作成することができ、更に運転者の癖や趣向に合せた設定情報を作成することができる。
【0011】
上記発明において、前記受信部は、前記運転操作情報以外の外部情報を受信し、前記作成部は、前記学習内容と前記外部情報とに基づいて前記設定情報を作成してもよい。
【0012】
上記構成に従えば、運転操作情報以外の外部情報等も参照することによって、状況に応じた設定情報を作成することができる。
【0013】
上記発明において、前記車体は、複数種類の前記車体設定を設定変更可能に構成され、前記作成部は、前記学習内容に基づいて前記複数種類の車体設定の各々に関する前記設定情報を作成してもよい。
【0014】
上記構成に従えば、複数における車体設定が操作フィーリングに対して相互に影響を与える場合でも、運転操作傾向を学習した上でそれら複数の車体設定を作成することが可能である。このように同時に複数の車体設定を作成することで、運転者の癖や趣向に合った車体挙動を得ることができる。
【0015】
上記発明において、前記受信部は、前記運転者の操作傾向の学習を指示する学習指令を受信し、前記学習部は、前記受信部で受信する前記学習指令に基づいて学習の有無を切換えるようになっていてもよい。
【0016】
上記構成に従えば、運転者は、運転操作傾向の学習が必要な場面と不要な場面とを任意で選択し、それに応じて学習部は、学習の有無を判断することができる。これにより、運転者の意図を反映させた学習結果を得ることができる。
【0017】
上記発明において、前記車体設定の変化を検出して報知する検出報知部を有してもよい。
【0018】
上記構成に従えば、設定情報に従った車体設定の変更が自動二輪車の走行機能においてどのように反映されているかを運転者に積極的に認識させる。これにより、車体設定の変更による走行挙動の違いを運転者に積極的に認識させることができる。
【0019】
上記発明において、前記作成部は、以前に作成した前記設定情報を記憶し、以前に作成した前記設定情報から変更した前記設定情報に関する変更情報を作成し、
前記出力部は、前記作成部が作成する前記設定情報と共に前記変更情報を出力してもよい。
【0020】
上記構成に従えば、運転者は、前記設定情報のうち変更された項目を知ることにより、変更された項目に伴って走行機能がどのように変化するのかを学習することができる。
【0021】
上記発明において、予め定められる識別情報を前記識別情報に前記学習部の学習内容に対応付けて記憶する記憶部を有し、前記受信部は、前記運転操作情報と共に前記識別情報を受信し、前記学習部は、前記受信部が受信する前記識別情報に基づいて前記記憶部から学習内容を取得し、取得した学習内容と前記受信部が受信するセンサ出力とによって運転者の操作傾向を学習してもよい。
【0022】
上記構成に従えば、同一の識別情報を有する運転者が車両を乗り換えた後も以前に載っていた車両において学習させた学習内容を用いることができる。
【0023】
上記発明において、前記学習部は、前記車体から離れている位置に配置され、前記受信部は、前記車体側にある無線通信可能な送信部から送信される前記運転操作情報を受信してもよい。
【0024】
上記構成に従えば、大きな処理能力が求められる学習部及び作成部が車体から離れた車体外に配置されている。鞍乗型車両には、多数の構成部品が所狭しと配置されているため全ての構成に対する設計の自由度が高くなく、大きな処理能力を有する演算処理機器を搭載することができない場合がある。他方、車体外に配置すると、鞍乗型車両に比べて構成部品に対する設計の自由度が高いので、学習部及び作成部を実現する演算処理機器に対する設計の自由度を高くすることができる。それ故、例えば、演算処理能力が高い演算処理機器を採用し、それによって学習部及び作成部を実現することができる。
【0025】
本発明の設定支援方法は、車体の走行機能に関する設定である車体設定を変更可能に構成される方法であって、運転者の運転操作に関する運転操作情報を受信する受信工程と、前記受信工程で受信する前記運転操作情報に基づいて運転者の操作傾向を学習する学習工程と、前記学習工程で学習した前記操作傾向に基づいて前記車体設定に関する設定情報を作成する作成工程と、前記作成工程で作成する設定情報を車体側に出力する出力工程とを備える方法である。
【0026】
本発明によれば、運転者毎に操作傾向を学習し、その学習内容に基づいて設定情報が作成して出力されるので、運転者毎に異なる固有の操作傾向を反映した設定情報を提案したり、その設定情報を車体設定に反映させたりすることができる。また、繰り返し運転操作情報を取得して学習を繰り返させることによって学習内容を習熟させることができ、運転者の運転操作傾向をより詳しく(例えば、癖や趣向等まで詳細に)学習し、それらを反映した設定情報を提案したり車体設定に反映させたりすることができる。それ故、運転者毎に各々の好みに則した固有の設定情報を提案したり、車体設定に反映させたりすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、運転者毎に対応した車両設定を行うことを支援することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態の設定支援装置1について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する設定支援装置1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0030】
自動二輪車や全地形対応車(ATV)等のような鞍乗型車両では、走行中の運転フィーリングを変えるべく種々の車両設定(後述する、エンジン出力、サスペンションの減衰力等)を変更することができるようになっており、この車両設定を変えることによって走行中における車両挙動が変わる。それ故、運転者Rは、所望の車両挙動を得るために車両設定を変更することがある。所望の車両挙動を得るために、必ずしも1つの車両設定だけを変更するだけでは得ることができず、複数の車両設定を変更することが必要な場合がある。そのような場合にも対応できるように、鞍乗型車両には、所望の車両挙動を得るべく車両設定の選択を支援する設定支援装置1,1A,1Bが利用される。以下では、鞍乗型車両の一例である、自動二輪車2の構成を説明し、その後設定支援装置1の説明をする。
【0031】
<自動二輪車>
図1に示すように、自動二輪車2は、車体3、前輪4及び後輪5を備えており、車体3に前輪4及び後輪5が回転可能に支持されている。前輪4には、前輪4から斜め上方に延在する一対のフロントサスペンション6が設けられている。一対のフロントサスペンション6には、ブラケット7が架け渡されている。ブラケット7には、フロントサスペンション6に略平行に延在するステアリングシャフト(図示せず)が架け渡すように設けられている。ステアリングシャフトは、車体フレーム9のヘッドパイプ10にステアリングシャフトが回動自在に挿通されている。
【0032】
また、ブラケット7には、ハンドルステム12が設けられている。ハンドルステム12には、1本のハンドルバー11が取り付けられている。ハンドルバー11の左右両端部には、ハンドルグリップ11Lが夫々取り付けられている。ハンドルグリップは、運転者Rが両手で各々を把持できるようになっている。運転者Rは、ハンドルグリップ11Lを把持してハンドルバー11を回動操作することによって前輪4を所望の方向へ操舵させることができるようになっている。また、車体3には、ステアリングダンパ34が備わっており、ステアリングダンパ34によってハンドルバー11の操舵に当たってのダンパ抵抗を変えることができるようになっている。また、ヘッドパイプ10には、左右一対のメインフレーム13が一体的に設けられている。
【0033】
左右一対のメインフレーム13は、ヘッドパイプ10から後方へ延びている。メインフレーム13の後端部には、左右一対のピボットフレーム14が接続されている。このピボットフレーム14にはスイングアーム15の前端部が枢支されている。このスイングアーム15の後端部に後輪5が回転自在に軸支されている。更に、スイングアーム15とメインフレーム13との間には、リアサスペンション16が架け渡されるように設けられている。リアサスペンション16は、一対のフロントサスペンション6と共に前輪4及び後輪5が走行する路面の凹凸を吸収する。
【0034】
また、一対のメインフレーム13の上には、ヘッドパイプ10の後方に燃料タンク17が載せられている。この燃料タンク17の更に後方には、運転者用のシート18及び同乗者用の後側シート19が設けられている。また、燃料タンク17の下方であって前輪4と後輪5の間には、エンジンEがメインフレーム13及びピボットフレーム14に支持されている。エンジンEは、スロットル装置31及びエアクリーナが接続されている。エンジンEは、エアクリーナ及びスロットル装置31を介して外気を取り込む構成となっている。スロットル装置31は、左側のハンドルグリップ11Lに回動可能に取付けられたスロットルグリップの回動量に合せてスロットル弁の開閉(具体的には、外気の吸入量)を制御するようになっている。また、エンジンEは、燃料噴射装置32及び点火装置33を有している。エンジンEは、燃料噴射装置32から噴射される燃料を外気と共にシリンダ内に取り入れ、取り入れた燃料と外気との混合気を点火装置33によって点火して燃焼させ、クランク軸を回転させるようになっている。
【0035】
また、エンジンEのクランク軸には、変速装置が接続されている。変速装置は、エンジンEのクランク軸によって出力される駆動力をチェーンを介して後輪5に伝達するようになっており、クラッチ機構及び多段変速機を有している。クラッチ機構は、左側のハンドルグリップ11Lの前方に取付けられるクラッチレバー(図示せず)を操作すると作動して、エンジンEと後輪5との間の動力伝達経路を遮断する。また、多段変速機は、エンジンEの駆動力を減速して後輪5に伝達する。このようにギヤポジションを変更することによって減速比が切換わるようになっている。
【0036】
また、後輪5及び前輪4には、ブレーキ機構(図示せず)が設けられている。車体3には、これらのブレーキ機構を操作すべくブレーキレバー及びブレーキペダル(共に図示せず)が備わっている。ブレーキレバーは、右側のハンドルグリップ(図示せず)の前方に取付けられている。ブレーキレバーは、運転者Rが右手で手前側に引くことで前輪4側のブレーキ機構を操作できるようになっている。また、ブレーキペダルは、搭乗する運転者Rの右側の足元に配置されている。ブレーキペダルは、運転者Rが踏み込むことで後輪5側のブレーキ機構を操作できるようになっている。
【0037】
また、ハンドルバー11の前方Fには、ヘッドランプユニット20が配置され、フロントカウル22には、メータ装置23が取り付けられている。メータ装置23は、計器類及び後述する表示装置25を有しており、ハンドルバー11の前方に配置されている。計器類は、車速、エンジンEの回転数及び油温等を表示するためのものである。表示装置25には、計器類で表示される情報以外の情報を表示するようになっている。
【0038】
このように構成されている自動二輪車2では、一対のフロントサスペンション6、リアサスペンション16、スロットル装置31、燃料噴射装置32、及び点火装置33等の種々の構成の設定、即ち種々の車体設定を変更可能に構成されている。車体設定とは、例えば種々の構成の設定のうち主に走行挙動に影響を与える設定であり、設定によって走行中の車両挙動を変化させるものである。例えば、エンジンEの制御パラメータ等のエンジンEの出力挙動に関する設定や車体3の走行挙動に関する設定がある。エンジンEの出力挙動に関する設定としては、トラクションコントロールのマップ、エンジンEの出力マップ、エンジンEの出力カットのマップ、及びアイドリングストップの動作条件等が挙げられる。他方、車体3の走行挙動に関する設定としては、ペンション6,16の各種設定(初期荷重、減衰力、ばねレート、ストローク長等)、ステアリングダンパ34の減衰力及び動作、車体3のジオメトリ(例えば、キャスター角、車高、ピボット位置)、後述する種々の電子制御装置(ブレーキシステム77、及びAFS80等)の動作が挙げられる。
【0040】
このように構成される自動二輪車2は、一般的に軽量であり、路面との接地面積が小さく、更に走行旋回時に車体3をバンクさせる必要があり、前後の車輪4,5間の距離が短く、更にピッチ動作を伴いやすい。それ故、自動二輪車2では、比較的重量があり、且つロール及びピッチングの影響が少ない自動四輪車に比べて車体設定の変更による自動二輪車2の走行挙動への影響が大きい。また、変更する設定項目と運転者Rの自動二輪車2の走行挙動とは、必ずしも一対一で対応していないことがあり、自動二輪車2の走行挙動を所望の挙動へと変更させるためには複数の項目に関して変更しなければならないことがある。このように設定変更による影響が複雑な場合には、設定変更に伴って自動二輪車2の走行挙動がどのように変化するかは経験則に基づくところが多く、自動二輪車2の走行挙動を所望の挙動へと変更するには豊富な経験を有しなければ、運転者が設定を決定することが難しい場合がある。そこで、自動二輪車2には、車体設定の変更を支援するための装置である設定支援装置1が取り付けられている。
【0041】
<設定支援装置>
設定支援装置1は、走行中において車体設定を変更するための装置であり、車体側設定支援器35とサーバ側設定支援器36とを備えている。なお、設定支援装置1は、走行中において車体設定を変更するものに限定されず、停止中に車体設定を変更するものであってもよい。車体側設定支援器35は、車体3に備わっており、サーバ側設定支援器36は、車体3から離れた位置にあるサーバ、例えばクラウドサーバ37によって実現される。クラウドサーバ37は、種々のクライアントがインターネットを通じてアクセス可能なクラウド上に構築されたサーバである。また、車体側設定支援器35は、運転操作情報検出部41と、車体側無線通信部42と、関連情報検出部43と、アクチュエータECU44と、入力装置45と、表示装置25と、を有している。
【0042】
運転操作情報検出部41は、自動二輪車2を運転する運転者Rの運転操作に関する操作情報(即ち、運転操作情報)を検出する機能を有している。具体的には、運転操作情報検出部41は、運転者Rが自動二輪車2を運転するために操作する操作子(例えば、アクセルグリップやブレーキレバー等)に関する運転操作情報を検出する。また、運転操作情報検出部41は、運転者Rが操作子を操作することによって変化する車両状態に関する情報を検出し、間接的に運転操作情報を検出してもよい。また、自動二輪車2では、旋回時において、運転者Rの体重移動によって操舵を行うことができるので、運転者Rの体重移動及びそれに伴う車両状態の変化を運転操作情報として検出してもよい。
【0043】
このような機能を有する運転操作情報検出部41は、複数のセンサを含んでおり、
図3に示すように、本実施形態では以下の各センサ50〜59が運転操作情報検出部41に含まれている。アクセルポジションセンサ50は、例えば角変位センサであり、スロットルグリップの回動量を検出する。スロットル開度センサ(TH開度センサ)51は、例えば角変位センサであり、スロットル装置31が有するスロットル弁の開度を検出する。
【0044】
ブレーキポジションセンサ52は、例えばポジションセンサであり、ブレーキレバー及びブレーキペダルのポジションを検出する。クラッチセンサ53は、例えばポジションセンサであり、クラッチレバーの操作の有無を検出する。ギヤポジセンサ54は、例えば角変位センサであり、多段変速機のシフトドラムに設けられて変速段を検出する。ステアリング角センサ55は、例えば角変位センサであり、ヘッドパイプ10に対するステアリングシャフトの回動角、即ち、前輪4の操舵角を検出する。
【0045】
荷重センサ56は、運転者用のシート18、後側シート19、及び左右の足元にあるステップ26に夫々設けられ、運転者Rの体重、同乗者の体重、並びに運転者Rが体重移動させた時の左側と右側との荷重の割合を夫々検出する。GPSセンサ57は、自動二輪車2の現在位置を検出するようになっている。ジャイロセンサ58は、車体3における互いに直交する3軸まわりの加速度、速度又は角変位を検出するようになっており、本実施形態では、3軸方向の各々の加速度、例えば車体3のロール角、ピッチ角、及びヨー角を検出する。また、車輪速センサ59は、例えば角変位センサであり、前輪4及び後輪5の各々の回転速度、即ち車輪速を検出する。
【0047】
このように各センサ50〜59は、運転操作情報を直接的又は間接的に検出するようになっている。また、各センサ50〜59は、車体側無線通信部42に直接又は間接的に、例えばバス46を介して接続されており、車体側無線通信部42に運転操作情報を送るようになっている。また、車体側無線通信部42には、関連情報検出部43が接続されている。
【0048】
関連情報検出部43は、運転操作情報以外の外部情報、例えば運転操作に関連する関連情報を検出する機能を有している。関連情報検出部43は、例えば自動二輪車2の周りの環境の情報を検出する。自動二輪車2の周りの環境には、例えば走行地域(平地、山道、路面の傾斜、及び走行国等)、走行路(高速道路、市街地、及びサーキット等)、走行路の舗装状態(アスファルト、石畳、及び砂地等)、走行路の履歴、走行時間(走行日時、走行時間帯、走行曜日、及び走行季節等)、周囲の温度、天気(晴天、雨天、曇天、天気予報、周囲照度等)、及び交通状況等の情報が含まれる。また、関連情報には、運転操作に影響を与えると想定される他の情報、例えば自動二輪車2の装備品に関する搭載情報、搭乗者(運転者R及び同乗者)の搭乗情報、走行速度、及びエンジン回転数等が含まれてもよい。なお、自動二輪車2の周りの環境に必ずしもこれらの全ての情報が含まれている必要はない。
【0049】
このような機能を有する関連情報検出部43は、複数のセンサを含んでおり、本実施形態では、各センサ61〜64が関連情報検出部43に含まれている。エンジン回転数センサ61は、エンジンEの回転数、具体的にはクランク軸の回転数を検出する。ひずみセンサ62は、ステアリングシャフトに作用するトルク、即ちステアリングトルクを検出するべく、ステアリングシャフトの軸線回りの歪み量を検出する。温度センサ63は、車体3周辺の温度を検出し、照度センサ64は、車体3周辺の明るさ(即ち、照度)を検出する。また、GPSセンサ57は、走行地域、走行路、及び走行履歴等を検出すべく関連情報検出部43にも含まれる。同様に、ジャイロセンサ58は、路面の傾斜を検出し、また車輪速センサ59は、走行路及び走行時間等を検出すべく関連情報検出部43に含まれる。なお、荷重センサ56を関連情報検出部43に含み、運転者R及び同乗者の体重を関連情報としてもよい。また、関連情報検出部43は、上記センサ61〜64,57〜59だけでなく、周囲の温度、天気、交通状況、並びにそれらの予想情報等をインターネットから取得する。
【0051】
このように、各センサ57〜59,61〜64は、運転操作に直接関係しないが、運転操作に関連する又は影響を与える可能性がある関連情報を検出する。また、各センサ59〜59,61〜64は、車体側無線通信部42に接続されており、車体側無線通信部42に関連情報を送るようになっている。また、車体側無線通信部42には、2つの検出部41,43以外にアクチュエータECU44も接続されている。
【0052】
アクチュエータECU44は、車体3の走行機能を変更すべく車体設定を変更するためのECUを含んでいる。本実施形態では、以下のECU71〜75がアクチュエータECU44に含まれている。サスペンションECU71は、一対のフロントサスペンション6及びリアサスペンション16に接続されている。一対のフロントサスペンション6及びリアサスペンション16は、いわゆる電子制御式のサスペンションであり、ばねの初期荷重、アブソーバー減衰力、ばねレート、及びストローク長等の設定を変更可能に構成されている。サスペンションECU71は、後述する設定情報に基づいて一対のフロントサスペンション6及びリアサスペンション16の設定を変更するようになっている。エンジンECU72は、スロットル装置31、燃料噴射装置32、及び点火装置33に接続されており、各装置31〜33の動作を制御するようになっている。また、エンジンECU72は、後述する設定情報に基づいてスロットル装置31の開度量、燃料噴射装置32による燃料噴射量、及び点火装置33の点火時期等に関する設定を変更する。
【0053】
また、ブレーキECU73は、ブレーキシステム77に接続されている。ブレーキシステム77は、ブレーキ機構の動作を制御するための装置であり、ABS機能及びCBS機能を有している。即ち、ブレーキシステム77は、ブレーキ機構を作動させた際、前輪4及び後輪5がロックしないようにブレーキ機構の動作を制御してブレーキ力を調整し(ABS機能)、またブレーキレバーの操作に対して、フロント側ブレーキ機構及びリア側ブレーキ機構の両方を作動させ、且つ両方のブレーキ機構に対して発生させるブレーキ力を適正に配分する(CBS)ようになっている。ブレーキECU73は、ブレーキシステム77の動きを制御すると共に、後述する設定情報に基づいてABS機能の作動開始時期、及びCBS機能における配分量等の設定を変更できるようになっている。
【0054】
ダンパECU74は、ステアリングダンパ34に接続されている。ステアリングダンパ34は、いわゆる電子制御式のダンパであり、減衰力を変更可能に構成されている。ダンパECU74は、後述する設定情報に基づいてステアリングダンパ34の設定(即ち、減衰力)を変更するようになっている。更に、AFSECU75は、AFS(Adaptive Front-lighting System)80に接続されている。AFS80は、車体3のバンク角又はステアリング角に応じてヘッドランプ21の照射方向を変更する装置である。AFSECU75は、AFS80の動きを制御し、また指令を受けてAFS80の作動開始条件や照射条件等の設定を変更できるようになっている。
【0055】
このように、各ECU71〜75は、各種構成の動きを制御したり設定を変更したりするようになっている。このように構成される各ECU71〜75は、車体側無線通信部42にバス85を介して接続されており、車体側無線通信部42を介して送られてくる設定情報に基づいて車体設定を変更するようになっている。また、車体側無線通信部42には、運転操作情報検出部41、関連情報検出部43、及びアクチュエータECU44の他に入力装置45、及び表示装置25が接続されている。
【0056】
入力装置45は、運転者Rが種々の情報を入力するための装置であり、表示装置25は、種々の情報を運転者Rに視認させるべく表示する装置である。例えば、表示装置25は、車体側無線通信部42からの指令に応じて質問事項や設定変更情報等を表示し、入力装置45は、表示装置25に表示される情報に対して「はい」及び「いいえ」等を入力する。なお、入力装置45は、必ずしも運転者Rが操作して入力するもの、例えばスイッチなどに限定されず、ヘルメット等に内蔵される脳波センサであってもよい。また、運転者Rの発汗や心拍によって評価を得るようにしてもよい。
【0057】
入力された情報(即ち、入力情報)は、入力装置45から車体側無線通信部42に送られるようになっている。車体側無線通信部42は、図示しない基地局を介してサーバ側設定支援器36と通信可能に構成されている。即ち、車体側無線通信部42は、運転操作情報検出部41、関連情報検出部43、及び入力装置45から送られてくる情報を無線でサーバ側設定支援器36に送信し、またサーバ側設定支援器36から無線で送信される情報を受信してバス46に流してアクチュエータECU44、及び表示装置25に取得させる。このように車体側設定支援器35は、車体側無線通信部42によってサーバ側設定支援器36と情報を無線で送受信するようになっている。
【0058】
サーバ側設定支援器36は、車体側無線通信部42と無線で情報の送受信をすべくサーバ側無線通信部81を有すると共に、更に受信した情報を処理すべく学習部82と、記憶部83と、作成部84とを有している。学習部82、作成部84、及び記憶部83は、互いに情報の遣り取りを行うべく接続されている。また、学習部82、記憶部83、及び作成部84は、サーバ側無線通信部81にも接続されており、車体側設定支援器35から送信される情報を取得するようになっている。学習部82は、車体側設定支援器35で取得し且つそこから送信される運転操作情報及び入力情報を取得し、これらの情報に基づいて運転者Rの操作傾向(即ち、運転傾向)を学習する。
【0059】
学習部82は、例えば、TH開度センサ51からの情報(即ち、スロットル開度)に基づいて運転者Rのアクセルワークの傾向を学習する。即ち、運転者Rは、急峻な加速を求めているか又はゆっくりとした加速を求めているかを学習する。また、1つの検出結果だけでなく、複数の検出結果に応じて更に詳しい運転者Rの運転操作の傾向に関して学習する。例えば、TH開度センサ51からの情報と共にジャイロセンサ58からのロール角の情報(バンク角)によって、直線走行時及び曲線走行時におけるアクセルワークの違い、即ち各々の走行時におけるアクセルワークの傾向を学習する。同様に、学習部は、各種センサ51〜59で検出される運転操作情報に基づき運転者Rの運転操作の様々な項目に関する傾向を学習する。また、設定情報が出力される前に事前に運転者Rへの質問事項(例えば、100項目)に対して入力装置45によって入力される回答にも基づいて運転者Rの運転操作傾向を学習する。なお、質問事項については、表示装置25に1つずつ表示したり、別の紙面等に記載したり、それを見た運転者が入力装置45によって回答を入力する。入力された回答は、入力装置45から学習部82に送信される。また、運転操作傾向の項目としては、例えば、ブレーキ操作の傾向、クラッチ操作の傾向、変速操作の傾向、ハンドル操作の傾向、体重移動操作に関する傾向、及びスリップ率の傾向が挙げられる。
【0062】
例えば、学習部82は、ブレーキ操作の傾向をブレーキポジションセンサ52からの情報(即ち、ポジション)に基づいて学習し、クラッチ操作の傾向をクラッチセンサ53からの情報(即ち、操作の有無)に基づいて学習する。また、学習部82は、変速操作の傾向をギヤポジションセンサ54からの情報(即ち、変速段)に基づいて学習し、ハンドル操作の傾向をステアリング角センサ55からの情報(即ち、ステアリング角)及びGPSセンサ57(主に、走行軌跡)に基づいて学習する。更に、学習部82は、体重移動操作の傾向をジャイロセンサ58からの情報(即ち、バンク角)に基づいて学習し、スリップ率の傾向を車輪速センサ59からの情報(即ち、前後輪4,5の車輪速)に基づいて学習する。
【0063】
このように学習部82は、運転操作情報に基づいて種々の項目の運転操作傾向を学習するようになっている。また、学習部82は、関連情報に基づいて学習するための種々の情報を取得する。例えば、学習部82は、車輪速センサ59からの情報に基づいて自動二輪車2の車速(瞬間的なものから平均走行速度、最大速度、走行中における速度分布)、及び加速度を取得する。また、学習部82は、ジャイロセンサ58からの情報に基づいてバンク状態、ピッチ状態、及び走行路の勾配(坂道及び平路等)を取得する。更に、学習部82は、GPSセンサ57からの情報に基づいて走行軌跡、及び前後の車間距離を取得し、GPSセンサ57からの情報及び後述する記憶部83に記憶されるマップ情報に基づいて、走行路の幅及び路面状態(オフロード、オンロード、又は石畳等)を取得する。なお、情報を取得するとは、他のセンサやECU等の機能部から学習部82に情報が与えられることだけでなく、学習部82が関連情報に基づいて演算することも含む。
【0064】
学習部82は、運転操作傾向を学習する際に取得した情報及び前述の関連情報を含む外部情報を加味する、例えば運転操作傾向の項目を更に細分化するように学習する(即ち、走行速度帯に応じた運転操作傾向、明るさ又は天候に応じた運転操作傾向を学習する)。このようにして学習された複数の項目にわたる運転操作傾向は、その学習の過程と共に学習内容として記憶部83に記憶される。
【0065】
また、記憶部83は、学習内容を車体3毎又は運転者R毎に割り当てられる識別情報に対応付けて記憶しており、多数の識別情報に関連付けて多数の学習内容が記憶されている。そのため、車体側設定支援器35からの各種情報には、前述する識別情報が付されており、学習部82は、識別情報付された各種情報を取得すると、その識別情報に対応付けられた学習内容を記憶部83から取得し、その学習内容と各種情報(即ち、運転操作情報及び外部情報)とに基づいて運転操作傾向を再度学習し直す。そして、学習し直された運転操作傾向がその学習の過程と共に学習内容として記憶部83に記憶されるようになっている。また、記憶部83には、学習内容に対して作成すべき設定情報を示す規則である設定規則が記憶されており、学習内容及び設定規則は、作成部84が設定情報を作成する際に用いられる。
【0066】
作成部84は、記憶部83に記憶される学習内容(主に、運転操作傾向)及び設定規則に基づいて、車体設定に関する設定情報を作成する。例えば、高い車速で舗装路を運転する傾向があることが学習されると、作成部84は、設定規則に基づいてサスペンション6,16の減衰力を強める設定情報を作成する。逆に、石畳のような凹凸が多い路面を低い車速で走行する傾向があることが学習されると、作成部84は、設定規則に基づいてサスペンション6,16の減衰力を弱める設定情報を作成する。また、車体3を運転する運転者Rが大柄な人である、又はタンデム走行が多い傾向があることが学習されると、作成部84は、設定規則に基づいてサスペンション6,16の初期荷重を大きくし、且つ減衰力を強める設定情報を作成する。同様に、記憶部83に記憶される運転操作傾向の各項目に応じて車体3の各種構成(スロットル装置31、燃料噴射装置32、点火装置33、ブレーキシステム77、ステアリングダンパ34、及びAFS80のうちの少なくとも1つの構成)に対する設定情報を作成する。作成された設定情報は、記憶部83に記憶される。なお、作成部84は、車体側設定支援器35から送られてくる情報に付与される識別情報と一致する識別情報に対応付けられた学習内容に基づいて設定情報を作成する。
【0067】
更に詳細に説明すると、作成部84は、以下のような設定規則に基づいて設定情報を作成する。例えば、サスペンション6,16の設定規則としては、走行時における走行速度のレンジが低い場合には、サスペンション6,16の減衰力を弱め、走行時における走行速度のレンジが高い場合には、サスペンション6,16の減衰力を強める。また、自動二輪車2をコーナーに侵入させる際のブレーキング操作に対するサスペンション6の沈み込み不足及び過度な沈み込み、ブレーキング時のピッチング、及びブレーキングの強弱等に応じてフロントサスペンション6の初期荷重を所定域の範囲で設定する。
【0068】
フロントサスペンション6の減衰力は、自動二輪車2のフロント側を中心とする一次旋回操作傾向に応じて所定域の範囲で設定され、また伸張側の減衰力は、スロットル動作による車体3の動的姿勢変化等に応じて設定される。また、リアサスペンション16の減衰力は、自動二輪車2のリア側を中心とする二次旋回操作傾向に応じて所定域の範囲で設定され、また伸張側の減衰力は、路面状態に応じて設定される。更に、リアサスペンション16の圧縮側の減衰力は、走行履歴(例えば、中高速でのコーナリングが多い)及び天候(例えば、晴天又は雨天)等に応じて設定し、特に雨天時は減衰力を弱くしてスライドしにくくする。また、リアサスペンション16の初期荷重は、自動二輪車2をコーナーから脱出させる際のアクセルワーク、及び加速時の沈み込み不足及び過度な沈み込み等に応じてを所定域の範囲で設定する。
【0069】
このように設定さえるサスペンション6,16の初期荷重同士、減衰力同士は、相互に関連させて設定されるように設定規則が決められ、また伸張側の減衰力及び圧縮側の減衰力もまた、互いに関連させて設定されるように設定規則が決め圧れている。更に、サスペンション6,16の初期荷重及び減衰力の各々は、前述する設定規則により所定域の範囲内で大きく(又は小さく)な値で設定し、運転者Rの評価に応じて変更するようにするようにしてもよい。
【0070】
また、スイングアーム15のピボット位置の設定規則としては、走行路に応じて変更し、サーキットである場合、バンク角確保や旋回性を挙げるために自動二輪車2のリア側の高さが上がるように設定される。また、そのような設定に合わせて可変ピボットにより、ピボット位置を下げるように設定される。更に、キャスター角の設定規則としては、高速走行及び直線走行が続く場合、キャスター角が大きく設定され、操舵量が多い、急な操舵操作が行われる場合、キャスター角が小さく設定される。また、タイヤの空気圧の設定規則としては、高速走行及び直線走行が続く場合、空気圧が高めに設定され、凸凹な路面を走行する場合、空気圧が低めに設定される。
【0071】
ステアリングダンパ34の設定規則としては、高速走行及び直線走行が続く場合、及び凸凹な路面を走行する場合、ステアリングダンパ34の減衰力を強くする。他方、操舵量が多い、急な操舵操作が行われる場合、及び運転者Rがハンドルバー11を回動しやすい方が好みの場合、ステアリングダンパ34の減衰力を弱くする。
【0072】
更に、エンジンEの設定規則として、運転者Rが出力より燃費重視の場合、出力変化を小さくするように燃料噴射量等を設定する。他方、運転者Rが急発進及び急減速が多い場合、運転者Rの操作に応じた出力が出るように燃料噴射量等を設定する。また、運転者Rの好みに応じて、エンジンECU72による制御介入する時間を長くしたり短くしたりし、ブレーキング時及びコーナリング時の傾向に応じた車体設定の変更に応じてエンジンECU72によるエンジンEの制御設定を変更するようにしてもよい。更に、サスペンション6,16の設定変更に伴ってエンジンEの出力を変更するようにしてもよい。
【0073】
このように、サーバ側設定支援器36では、学習部82が運転者Rの運転操作傾向を学習し、作成部84が学習した学習内容(学習過程及び運転操作傾向等)と設定規則とに基づいて車体3における各種構成の設定情報を作成する。このような機能を有する学習部82及び作成部84は、例えばニューラルネットワーク又はワトソン(登録商標)等のAI(Artificial Intelligence)を用いた情報処理を実行することによって実現されており、学習部82は、車体側設定支援器35で取得する情報を受信すると前述する情報処理によって運転操作傾向を学習する。また、作成部84は、設定規則を初期設定とし、繰り返しられる学習内容及び後述する提案した設定情報に対する評価等に応じて設定規則を変更していく。そうして、学習部82及び作成部84は、運転者Rの趣味・嗜好に合った車体設定を推定しながら車体設定に関する設定情報を作成するようになっている。また、作成部84は、新たに作成した設定情報と以前に記憶される設定情報とを比較し、変更された点を示す変更情報を作成する。このようにして作成された設定情報及び変更情報は、作成部84からサーバ側無線通信部81に送られ、更にサーバ側無線通信部81を介して車体側設定支援器35に無線で送信する。
【0074】
また、設定支援装置1は、
図1に示すような音声出力装置91及び音声入力装置92を備えている。音声出力装置91は、例えばスピーカーであり、音声入力装置92は、マイクロフォンである。音声出力装置91及び音声入力装置92は、例えばヘルメット93に内蔵され、音声出力装置91によって音声で運転者Rに情報(例えば、設定情報)を伝達し、音声入力装置92によって音声で運転者Rの意思を伝えさせるようになっている。音声出力装置91及び音声入力装置92は、車体側設定支援器35の車体側無線通信部42と無線通信可能に構成されている。
【0075】
また、車体側設定支援器35では、表示装置25が、送られてくる設定情報及び変更情報を表示するともに、表示装置25にて設定情報に従って各種構成の設定を変更するか否かの変更伺いを表示する。運転者Rは、表示装置25に表示された変更伺いに対して入力装置45で回答できるようになっている。入力された回答は、車体側無線通信部42及びサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送られ、学習部82は、設定情報に対する変更の有無に関する回答である(即ち、提案した設定情報に対する評価)の傾向を学習する。評価の傾向も学習内容に含まれ、作成部84は、評価の傾向をも含む学習内容に基づいて設定情報を作成する。
【0076】
また、車体側設定支援器35の入力装置45は、学習部82に運転操作の傾向を学習させることを指示する学習指令を入力できるようになっている。入力装置45を介して入力される学習指令は、車体側無線通信部42からサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送られる。学習部82は、学習指令を取得すると上述するような運転操作の傾向及び評価の傾向の学習を開始し、作成部84が学習した傾向に基づいて設定情報を作成する。
【0077】
以下では、設定支援装置1が運転操作情報及び外部情報に基づいて車体3における各種設定情報を作成して表示または変更する手順(設定支援処理)について
図4のフローチャートを参照しながら説明する。なお、設定支援装置1では、設定支援処理を開始する前に運転者Rの運転操作傾向を把握するようになっている。例えば、前述するように表示装置25によって質問事項を表示し、質問事項に対する回答を得ておく。例えば、加速重視、乗り心地重視、加速及び乗り心地の双方をバランスよく取り入れる等、車体設定に関する運転者Rの好みに関する質問が含まれ、それに対して運転者Rは入力装置45によって回答を行う。質問事項に対する回答に基づいて運転者Rの趣向及び好み、並びに運転者Rが考えている運転操作傾向を把握し、運転操作傾向を記憶部83に記憶しておく。そして、運転者Rが入力装置45によって学習指令を入力すると設定支援処理が開始し、ステップS1に移行する。
【0078】
情報取得工程であるステップS1では、車体側設定支援器35における運転操作情報検出部41の各種センサ51〜59で検出される運転操作情報、及び関連情報検出部のセンサ61〜64で検出される関連情報を2つの無線通信部42,81を介して学習部82が取得する。学習部82が運転操作情報及び関連情報を取得するとステップS2に移行する。
【0079】
第1学習工程であるステップS2では、学習部82が記憶部83に記憶される運転操作傾向を参照しながら、取得する運転操作情報に基づいて運転者Rの運転操作傾向を学習する。例えば、TH開度センサ51で検出されるスロットル開度に基づいて運転者Rのアクセルワークの傾向を学習し、またTH開度センサ51からのスロットル開度と共にジャイロセンサ58からのバンク角によって、直線走行時及び曲線走行時の各々の時におけるアクセルワークの傾向を学習する。また、学習部82は、外部情報に基づいて運転操作傾向の項目を細分化して学習する。即ち、照度センサ64からの情報(明暗)に基づいて項目を細分化し、明るさ毎のアクセルワークの傾向を学習する。また、温度センサ63からの情報に基づいて項目を細分化し、温度帯毎のアクセルワークの傾向を学習する。このように学習部82が学習し、その学習内容を記憶部83に記憶する。記憶するとステップS3に移行する。
【0080】
作成工程であるステップS3では、ステップS2で学習部82が学習した学習内容に基づいて車体設定に関する設定情報を作成する。例えば、運転者Rのアクセルワークの傾向としてアクセルワークがゆっくりである場合、運転者Rは大きな加速力を求める傾向にないと判断して、スロットルグリップの回動量に対するスロットル装置31のスロットル弁の開閉量を小さくするような設定情報を作成する。逆に運転者Rのアクセルワークの傾向としてアクセルワークがクイックである場合、スロットルグリップの回動量に対するスロットル装置31のスロットル弁の開閉量を大きくするような設定情報を作成し、より大きな加速力を得られるようにする。また、作成部84では、運転操作傾向が外部情報、例えば明るさによって細分化されている場合、取得される関連情報に基づいて対応する運転操作傾向に基づいて設定情報を作成する。例えば、照度センサ64からの情報で明るいと判断されると、明るい場合のアクセルワークの傾向に基づいて設定情報を作成し、他方、照度センサ64からの情報で暗いと判断されると、暗い場合のアクセルワークの傾向に基づいて設定情報を作成する。このように、作成部84は、運転操作傾向が外部情報に基づいてさらに細分化されている場合には、細分化される外部情報を取得し、取得した外部情報に応じて設定情報を作成する。作成した設定情報は、記憶部83に記憶される。また、作成部84は、作成した設定情報と従前に記憶された設定情報とを比較して変更情報を作成して記憶部83に記憶させる。設定情報及び変更情報が作成されると、ステップS4に移行する。
【0081】
表示工程であるステップS4では、作成部84で作成された設定情報及び変更情報がサーバ側無線通信部81から車体側無線通信部42に送られる。表示装置25は、設定情報及び変更情報を受けとって設定情報を表示する。また、表示装置25は、この設定情報に基づいて車体3の各種構成における設定(車体設定)の変更の可否を表示し、入力装置45によって変更の可否に対する回答を入力するように表示する。なお、必ずしも表示装置25にて表示する必要はなく、上述する音声出力装置91によって音声で知らせるようにしてもよい。その場合、回答する方法として音声入力装置92によって音声で回答するようにしてもよい。そして、回答が入力されると、ステップS5に移行する。第1評価工程であるステップS5では、変更を許可したか否かを判定し、その回答を車体側無線通信部42からサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送る。回答が学習部82に送られると、ステップS6に移行する。
【0082】
第2学習工程であるステップS6では、提案する設定情報に対する評価の傾向を学習する。即ち、設定情報に対して変更を許可する回答が得られると、学習部82は、評価の傾向として提案した設定情報のような変更に対する拒否感が少ないことを学習し、提案した設定情報と同様の変更を積極的に提案する。他方、変更を許可しない回答が得られると、学習部82は、評価の傾向として提案した設定情報のような変更に対する拒否感があることを学習し、提案した設定情報と同様の変更に関する提案を控えるようにする。なお、第2学習工程、第1学習工程、作成工程、及び後述する第3学習工程は、上述するニューラルネットワーク及びニュートン(登録商標)等の情報処理による一連の作業として行われ、必ずしもこれら3つの工程が明確に区別されるものではない。評価の傾向を学習すると、ステップS7に移行する。
【0083】
設定前評価判定工程であるステップS7では、ステップS5で選択された評価の可否を判定する。ステップS5で変更を許可しない回答が得られると、ステップS2に戻って再度運転操作傾向を学習し直して設定情報を作成し直す。他方、ステップS5で設定情報に対して変更を許可する回答が得られると、ステップS8に移行する。
【0084】
車体設定変更工程であるステップS8では、送られてきた設定情報に基づいて車体設定を変更する。即ち、送られてくる設定情報をECU71〜75が取得し、ECU71〜75がその設定情報に基づいて車体設定を変更する。例えば、エンジンECU72が設定情報を取得すると、その設定情報に基づいてスロットル装置31におけるスロットルグリップの回動量とスロットル装置31のスロットル弁の開閉量との対応関係(即ち、設定)を変更する。これにより、直前の状態よりスロットルグリップの回動量に対するスロットル装置31のスロットル弁の開閉量を大きく又は小さくすることができる。また、サスペンションECU71が設定情報を取得すると、その設定情報に基づいてサスペンション6,16を動かして、初期荷重、減衰力、ばねレート、及びストローク長等の設定を変更する。このように各ECU71〜75は、設定情報を取得すると、その設定情報に基づいて車体設定を変更する。車体設定を変更すると、ステップS9に移行する。
【0085】
報知工程であるステップS9では、設定情報に基づいて車体設定が変更されたことを表示装置25によって表示して運転者Rに報知する。なお、運転者Rへの報知は、音声出力装置91によって行われてもよい。このように運転者Rに報知することによって、設定情報に従った車体設定の変更が自動二輪車2の走行機能においてどのように反映されているかを運転者Rに積極的に認識させる。これにより、車体設定の変更による走行挙動の違いを運転者Rに積極的に認識させることができる。このように運転者Rに報知されると、ステップS10に移行する。第2評価工程であるステップS10では、車体設定の変更が運転者Rの操作フィーリングに適合するか否かについての質問を表示装置25によって表示する。これに対して、運転者Rは、入力装置45を介して回答し、その回答が車体側無線通信部42からサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送られる。回答が学習部82送られると、その設定情報に対する評価を学習すべくステップS11に移行する。
【0086】
第3学習工程であるステップS11では、車体設定の変更が運転者Rの操作フィーリングに適合するか否か、即ち第2学習工程と同様に設定情報に対する評価の傾向を学習する。評価の傾向を学習すると、ステップS12に移行する。設定後評価判定工程であるステップS12では、ステップS10で選択された評価の可否を判定する。ステップS10で車体設定の変更が運転者Rの操作フィーリングに適合する回答が得られると、車体設定を変更したままステップS2に戻る。他方、ステップS10で操作フィーリングに適合しない回答が得られると、ステップS13に移行する。車体設定戻し工程であるステップS13では、各ECU71〜75によって車体設定を変更前の状態に戻す。戻すと、ステップS2に移行する。
【0087】
このように構成されている設定支援装置1は、運転者Rの学習部82で操作傾向を学習し、学習した学習内容に基づいて作成部84が車体設定に関する作成情報を作成する。そして、作成された情報を表示装置25で表示したり、作成情報に基づいてECU71〜75及び電子制御装置77,78が車体3の設定状態を変更したりする。即ち、運転者R毎に操作傾向を学習し、その学習内容に基づいて設定情報が作成されるので、運転者R毎に異なる固有の操作傾向を反映した設定情報を提案したり、その設定情報を車体設定に反映させたりすることができる。また、繰り返し運転操作情報を取得して学習を繰り返させることによって学習内容を習熟させることができ、運転者Rの運転操作傾向をより詳しく(例えば、癖や趣向等まで詳細に)学習し、それらを反映した設定情報を提案したり車体3の設定に反映させたりすることができる。それ故、運転者R毎に各々の好みに則した固有の設定情報を提案したり、車体3の設定に反映させたりすることができる。
【0088】
また、本実施形態の設定支援装置1では、運転者Rが設定情報に対する評価を学習部82に伝えることができ、学習部82は、設定情報に対する評価の傾向を学習することができる。それ故、前記評価に応じた設定情報を作成することができ、更に運転者Rの癖や趣向に合せた設定情報を作成することができる。また、設定支援装置1では、運転操作情報以外の外部情報も参照することによって傾向の項目を細分化させて学習し、その学習内容に基づいて設定情報を作成することができる。それ故、状況に応じた設定情報を作成することができる。更に、設定支援装置1では、複数の車体設定が操作フィーリングに対して相互に影響を与える場合でも、運転操作傾向を学習した上でそれら複数の車体設定を同時に変更させることが可能である。このように同時に複数の車体設定を変更することで、運転者Rの癖や趣向に合った車体挙動を得ることができる。
【0089】
更に、本実施形態の設定支援装置1では、大きな処理能力が求められる学習部82及び作成部84が車体3から離れたクラウドサーバ37に配置されている。自動二輪車2では、多数の構成部品を所狭しと配置しているため全ての構成に対する設計の自由度が高くなく、大きな処理能力の演算処理機器を採用することができない場合がある。他方、クラウドサーバ37に配置すると、自動二輪車2に比べて構成部品に対する設計の自由度が高いので、学習部82及び作成部84を実現する演算処理機器に対する設計の自由度を高くすることができる。それ故、例えば、演算処理能力が高い演算処理機器を採用し、それによって学習部82及び作成部84を実現することができる。
【0090】
また、本実施形態の設定支援装置1では、入力装置45によって学習の有無に関する学習指令を入力することによって運転操作傾向の学習を開始して設定情報を作成する。それ故、運転者Rは、運転操作傾向の学習が必要な場面と不要な場面とを任意で選択し、それに応じて学習部82は、学習の有無を判断することができる。これにより、運転者Rの意図を反映させた学習結果を得ることができる。また、設定支援装置1では、作成部84が変更情報を作成して表示装置25によって変更情報を表示するようになっている。これにより、運転者Rは、前記設定情報のうち変更された項目を知ることにより、変更された項目に伴って走行機能がどのように変化するのかを学習することができる。なお、作成部84は、変更情報において前記項目が変更された理由を含むようにすると、前記項目の変更に伴う走行機能の変化の意義をより深く理解することができる。
【0091】
また、本実施形態の設定支援装置1では、記憶部83において、学習内容が識別情報と共に記憶されている。それ故、同一の識別情報を有する運転者Rが車両を乗り換えた後も以前に載っていた車両において学習させた学習内容を引き継ぐことができる。
【0092】
<第2実施形態>
第2実施形態の設定支援装置1Aは、第1実施形態の設定支援装置1と構成が類似している。従って、設定支援装置1Aの構成については、第1実施形態の設定支援装置1と異なる構成についてだけ説明し、同一の構成については、説明を省略する。
【0093】
第2実施形態の設定支援装置1Aは、車体側設定支援器35A、サーバ側設定支援器36、及び携帯端末38を備えている。車体側設定支援器35Aは、運転操作情報検出部41、車体側無線通信部42、関連情報検出部43、及びアクチュエータECU44を有しており、携帯端末38は、端末側通信部47、制御部48、及び入力表示部49を有している。端末側通信部47は、車体側無線通信部42と近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標))可能に構成され、サーバ側無線通信部81と電話回線等を用いて無線通信可能に構成されている。また、端末側通信部47は、制御部48に接続されている。
【0094】
制御部48は、車体側設定支援器35Aの運転操作情報検出部41及び関連情報検出部43から車体側無線通信部42及び端末側通信部47を介して運転操作情報及び関連情報を取得し、これらの情報を端末側通信部47及びサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送るようになっている。また、作成部84は、作成した設定情報及び変更情報をサーバ側無線通信部81及び端末側通信部47を介して制御部48に送るようになっている。制御部48には、入力表示部49が接続されており、制御部48は、入力表示部49に作成した設定情報及び変更情報を表示する。
【0095】
また、入力表示部49は、この設定情報に基づいて車体3の各種構成における設定(車体設定)の変更の可否を表示される。入力表示部49は、例えばタッチパネル方式の入力機能も有しており、変更の可否に対する回答を入力することができるようになっている。また、制御部48は、回答があると、その旨の回答を端末側通信部47及びサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送る。学習部82は、この回答に基づいて設定情報に対する評価の傾向を学習する。変更を許可する回答である場合、制御部48は、更に設定情報を端末側通信部47及び車体側無線通信部42を介してバス46に流し、各ECU71〜75が設定情報に応じて車体設定を変更する。
【0096】
このように構成される設定支援装置1Aでは、通信に関して車体側設定支援器35Aとサーバ側設定支援器36との間に携帯端末38が介在するものの、第1実施形態の設定支援装置1Aと同じような設定支援処理を行う。即ち、学習指令を入力すると設定支援処理が開始されるとステップS1に移行する。情報取得工程であるステップS1では、車体側設定支援器35Aからサーバ側設定支援器36の学習部82に携帯端末38を介して運転操作情報及び関連情報が送られる。第1学習部であるステップS2では、学習部82が取得した運転操作情報及び関連情報に基づいて運転操作傾向を学習する。
【0097】
作成工程であるステップS3では、ステップS2における学習内容に基づいて設定情報及び変更情報を作成する。表示工程であるステップS4では、作成部で作成された設定情報及び変更情報がサーバ側無線通信部81から端末側通信部47を介して制御部48に送られ、制御部48が入力表示部49に設定情報及び変更情報を表示すると共に、変更の可否に対する回答を求める。
【0098】
第1評価工程であるステップS5では、制御部48が入力表示部49を介して回答が入力されたか否かを判定し、入力された回答を端末側通信部47からサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送る。また、変更を許可する回答が得られた場合、端末側通信部47から車体側無線通信部42を介してバス46に設定情報を送る、第2学習工程であるステップS6では、学習部82が取得する回答に基づいて提案する設定情報に対する評価の傾向を学習する。設定前評価判定工程であるステップS7では、ステップS5で選択された評価の可否を判定し、変更を許可しない回答の場合ステップS2に戻り、変更を許可する回答の場合ステップS8に移行する。
【0099】
車体設定変更工程であるステップS8では、アクチュエータECU44がバス46を流れる設定情報を取得し、設定情報に基づいて車体設定を変更する。車体設定を変更した後、アクチュエータECU44から車体側無線通信部42及び端末側通信部47を介して制御部48に変更完了の情報が送られる。報知工程であるステップS9では、変更完了の情報に基づいて車体設定が変更されてことを表示装置25によって表示して運転者Rに報知する。そして、第2評価工程であるステップS10では、車体設定の変更が運転者Rの操作フィーリングに適合するか否かについての質問を制御部48が入力表示部49によって表示し、また、制御部48は、それに対する回答を端末側通信部47及びサーバ側無線通信部81を介して学習部82に送る。
【0100】
第3学習工程であるステップS11では、車体設定の変更が運転者Rの操作フィーリングに適合するか否かに関する回答に基づいて、設定情報に対する評価の傾向を学習する。設定後評価判定工程であるステップS12では、ステップS10で選択された評価の可否を判定し、変更を許可する回答の場合ステップS2に戻り、変更を許可しない回答の場合ステップS13に移行する。車体設定戻し工程であるステップS13では、各ECU71〜75によって車体設定を変更前の状態に戻す。
【0101】
このように構成される設定支援装置1Aでは、設定情報、変更情報、質問事項、及び変更伺い等を携帯端末38の入力表示部49に表示させることができる。それ故、車体側設定支援器35Aの処理負担を更に低減することができると共に、車体3側で表示させるより入力表示部49に表示させる文字や映像等に関する自由度を価格することができる。
【0102】
その他、第2実施形態の設定支援装置1Aは、第1実施形態の設定支援装置1と同様の作用効果を奏する。
【0103】
<第3実施形態>
第3実施形態である設定支援装置1Bは、第1実施形態の設定支援装置1と構成が類似している。従って、設定支援装置1Bの構成については、第1実施形態の設定支援装置1と異なる構成についてだけ説明し、同一の構成については、説明を省略する。
【0104】
第3実施形態の設定支援装置1Bは、車体側設定支援器35Bを有している。即ち、車体側設定支援器35Bは、運転操作情報及び関連情報の取得だけでなく、これらの情報に基づいて運転操作傾向を学習し、且つ学習内容に基づいて設定情報を作成するようになっている。車体側設定支援器35Bの構成について以下で説明する。
【0105】
車体側設定支援器35Bは、運転操作情報検出部41、関連情報検出部43、アクチュエータECU44、表示装置25、入力装置45、学習部82、記憶部83、及び作成部84を有しており、それらがバス46によって繋がっている。各機能部分は、第1実施形態の設定支援装置1に備わる機能部分と同じ機能を有しており、運転操作情報検出部41及び関連情報検出部43の各々は、各々で検出する運転操作情報及び関連情報を学習部82に送り、学習部82は、取得する運転操作情報及び関連情報に基づいて運転操作傾向を学習する。記憶部83は、学習内容等を記憶し、作成部84は、学習内容に基づいて設定情報及び変更情報を作成する。表示装置25は、設定情報、変更情報、質問事項、変更伺い等を表示し、入力装置45は、質問事項及び変更伺いに対する回答を入力できるようになっている。また、アクチュエータECU44は、設定情報に基づいて車体設定を変更するようになっている。
【0106】
このように構成される設定支援装置1Bは、無線通信部42,81ではなくバス46によって情報の遣り取りを行うことを除いて、第1実施形態の設定支援装置1と同様の手順で設定支援処理が実施される。
【0107】
このように構成される設定支援装置1Bでは、クラウドサーバ37を用いることなく自動二輪車2において設定支援が行われるので、設備費用を低減することができる。
【0108】
その他、第3実施形態の設定支援装置1Bは、第1実施形態の設定支援装置1と同様の作用効果を奏する。
【0109】
<その他の実施形態>
第1実施形態では、車体側設定支援器35とサーバ側設定支援器36とを備えたものが設定支援装置1であると説明されているが、設定支援装置1は、必ずしも車体側設定支援器35及びサーバ側設定支援器36の両方を備えていなくてもよい。即ち、
図7に示すようにサーバ側設定支援器36のクラウドサーバ37だけを設定支援装置1Cとしてもよく、設定支援装置1Cと車体側装置35C(車体側設定支援器35と同じ構成)との間で運転操作情報、関連情報、及び設定情報等の情報の送受信することによって、自動二輪車2の車体設定の支援を行うことができる。
【0110】
第1乃至第3実施形態の設定支援装置1,1A、1Bでは、種々のセンサ51〜59、61〜64を有しているが、更に前後輪4,5に取付けられる空気圧センサ、また運転者Rのヘルメットに取付けられるジャイロセンサを有してもよい。後述のジャイロセンサは、運転者Rの顔の向き及び視線等を検出することができる。また、エンジンECU72から出力されるエラー情報を検出するようにしてもよい。空気圧センサ及びジャイロセンサから検出される情報、並びにエラー情報は、学習部82に送られて学習する際に外部情報として参照される。また、音声入力装置92によって入力される音声情報、またセンサによって運転者Rの健康状態を取得しそれらを学習する際に参照してもよく、学習する際に種々の情報を参照することができる。逆に、各実施形態の設定支援装置1,1A、1Bでは、上述する全てのセンサ51〜59、61〜64を備えている必要はなく、変更可能とする車体設定や自動二輪車2の構成に応じて備えるセンサの種類を選択されていてもよい。
【0111】
また第1乃至第3実施形態の設定支援装置1,1A、1Bでは、主に入力装置45に対する入力によって評価の傾向を得ているが、音声入力装置92に入力される回答によって評価の傾向を得るようにしてもよい。この場合、学習部82が音声認識ソフト(例えば、IBM(登録商標)社のViaVoice(登録商標))によって回答をテキスト化し、テキストマニシング技術によって回答に肯定的又は否定的な内容が含まれているか否かを判断する。その内容に応じて評価の傾向を判断して提案を行うようにする。
【0112】
また、学習部82が音声認識ソフトによってテキスト化した音声情報に含まれる車体設定に関する関連キーワードの頻度に基づいて車体設定の嗜好などを探るようにしてもよい。また、音声情報に含まれる関連キーワードだけでなく、単語同士の「係り受け」方を解析することによって、関連キーワードに対する動作、評価等をより高度に理解することができる。
【0113】
第1乃至第3実施形態の設定支援装置1,1A、1Bにおいて、シフターECUを設けてもよい。シフターECUは、ギヤシフタに接続されている。シフターECUは、予め定められた条件を充足するとギヤシフタを動かして変速段を切換えるようになっている。また、シフターECUは、設定情報に基づいてギヤシフタの作動条件に関する設定(例えば、変速段を切換える条件)を変更できるようになっている。
【0114】
また、第1乃至第3実施形態の設定支援装置1,1A、1Bでは、ECU71〜75が設定情報に基づいて車体設定を変更しているが、必ずしもその必要はない。即ち、設定支援装置1,1A、1Bでは、設定情報を表示装置25で表示するだけで、設定情報に基づく車体設定の変更を運転者Rやその他の者(例えば、整備士)に委ねる、つまり手動で車体設定の変更を行われてもよい。