(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815413
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】肝組織損傷及びその関連疾患を予防及び治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20210107BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20210107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20210107BHJP
C07K 14/745 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P1/16
A61P43/00 101
A61K45/00
A61P43/00 121
!C07K14/745ZNA
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-550636(P2018-550636)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-500425(P2019-500425A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】CN2016110451
(87)【国際公開番号】WO2017101869
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/097945
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/097949
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100120293
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】リ ジナン
【審査官】
佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−525798(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101628113(CN,A)
【文献】
特表2010−502600(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0103129(US,A1)
【文献】
特表2010−515694(JP,A)
【文献】
Blood Coagulation and Fibrinolysis, 2008, Vol.19, pp.503-511
【文献】
PNAS, 1999, Vol.96, No.26, pp.15143-15148
【文献】
日本外科学会雑誌, 2000, Vol.101, 臨時増刊号, p.520
【文献】
Gut, 2007, Vol.56, pp.271-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のプラスミノゲンを含有する、放射線によって引き起こされる肝損傷、糖尿病性の肝損傷、急性肝臓中毒の肝傷害、薬物性肝損傷、又は肝臓組織における炎症の予防剤または治療剤。
【請求項2】
前記プラスミノゲンが、配列番号2、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つプラスミノゲン活性を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の予防剤または治療剤。
【請求項3】
前記プラスミノゲンが、プラスミノゲン活性フラグメントを含み、且つプラスミノゲン活性を有するタンパク質であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の予防剤または治療剤。
【請求項4】
前記プラスミノゲンが、Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ(delta)−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の予防剤または治療剤。
【請求項5】
前記プラスミノゲンが、一種類または複数種類の他の薬物と組み合わせて投与されるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の予防剤または治療剤。
【請求項6】
有効用量のプラスミノゲンを含有する製剤、当該製剤を格納する容器、並びに、被験者の、放射線によって引き起こされる肝損傷、糖尿病性の肝損傷、急性肝臓中毒の肝傷害、薬物性肝損傷、又は肝臓組織における炎症を予防及び/または治療するための前記製剤の投与方法を示すプロトコルを含むことを特徴とする、被験者の放射線によって引き起こされる肝損傷、糖尿病性の肝損傷、急性肝臓中毒の肝傷害、薬物性肝損傷、又は肝臓組織における炎症を予防及び/または治療するためのキット。
【請求項7】
さらに一種類または複数種類の他の薬物を含有することを特徴とする、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記プロトコルが、さらに前記プラスミノゲンは前記他の薬物を投与する前、投与と同時、及び/または投与後に投与できることを説明していることを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種原因に起因する肝組織損傷の治療及び/または予防における、プラスミノゲンまたはプラスミンの用途に関するものであり、さらには肝組織損傷及びその関連疾患の治療に対して全く新しい治療ステラテジーを提供する。
【背景技術】
【0002】
肝損傷または肝組織損傷は各種原因によってもたらされる肝臓実質病変であり、肝臓組織炎症、肝細胞の変性、壊死、肝組織の繊維化などの一連の病理的変化の総称である。よく見られる原因は炎症、肝臓うっ血、ウイルス感染、中毒、薬物、放射などである。一部の疾患は肝細胞の損傷を伴い、例えば糖尿病、肝炎、高血圧、アテローム性動脈硬化などである。
薬物は肝組織損傷を引き起こす一つのよく見られる原因である。肝組織損傷を引き起こす常用の薬物は以下を含む:抗結核薬:リファンピシン、イソニコチン酸ヒドラジット、エタンブトール等;抗腫瘍薬:シクロフォスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、カルボプラチン、シスプラチン等;高脂血症治療系:スタチン系(アトルバスタチン、ロバスタチン)、フェノフィブラート、クロフィブラート、ニコチン酸など;ステロイドホルモン:雌性ホルモン系薬物、経口避妊薬、雄性アナボリックステロイド等;心血管薬:アミオダロン、ワルファリン、カルシウムイオン拮抗剤等;抗リウマチ薬:インドメタシン、フェンブフェン、アスピリン、インドメタシン等;抗生剤:クロロマイセチン、ロキシスロマイシン、ケトコナゾール、ペニシリン系、スルフォンアミド系等;抗アレルギー薬:プロメタジン(塩酸プロメタジン)、クロルフェニラミン(マレイン酸クロルフェニラミン)、ロラタジン(クラリチン)等;抗潰瘍薬:シメチジン、ラニチジン、ファモチジン等;抗真菌薬、例えばリバビリン等である。
アルコールは肝臓に対する巨大な脅威であり、長期間または断続的に大量に飲酒することは肝組織損傷をもたらし、飲酒量が大きい、持続的に飲用する時間が長い場合ほど、結果がひどいものとなる。アルコールは直接肝細胞に害を与え、その構造及び機能に影響を与える。
【0003】
アルコール性の肝損傷は慢性中毒性の肝損傷であり、長期にわたり大量に飲酒することによってもたらされる肝臓疾患である。初期は通常、脂肪肝として現れ、さらに進行すればアルコール性肝炎、肝繊維化及び肝硬変にまで進行する。主な臨床症状は悪心、嘔吐、黄疸であり、肝腫大及び圧迫痛を伴うことがある。アルコールの摂取がひどい時は肝細胞の広範囲の壊死を誘発することがあり、場合はよっては肝不全につながる。アルコール性の肝臓疾患は中国でよくみられる肝臓疾患の一つであり、国民の健康を脅かすものである(非特許文献1)。
エタノールによる中毒性の肝損傷以外に、他の「肝臓への親和性が高い毒物」、例えば環境中の化学的な有毒物質及び一部の薬物も肝臓の損傷をもたらすことがある。人体の重要な解毒器官として、肝臓は、肝動脈及び肝静脈という二重の血液供給を有する。化学物質は胃腸管門静脈または体循環から肝臓に入って変換が行われ、そのため肝臓は化学物中の毒性物質によるダメージを受けやすい。大自然及び人類の生産過程においていずれも肝臓への有毒性を有する物質が存在し、「肝臓への親和性が高い毒物」と称し、これらの毒物は集団中で感受性が高く、潜伏期が短く、病変の過程は化学物質の量と直接相関し、肝臓の異なる程度の肝細胞壊死、脂肪変性、肝硬変を引き起こす。病理的な表現は以下を含む:(1)脂肪変性。四塩化炭素、黄リン等はリポタンパクの合成及び運搬を干渉するものであり、脂肪肝となってしまう。(2)脂質の過酸化反応、これは中毒性の肝損傷の特殊な表現形式であり、例えば四塩化炭素は体内で代謝して酸化能力の非常に強い中間生成物を生成し、これにより生物膜上の脂質過酸化をもたらし、膜のリン脂質を破壊し、細胞の構造と機能を改変させる。(3)胆汁鬱滞反応、主に肝細胞膜と微絨毛がダメージを受け、胆汁酸の排泄障害をもたらすことに関連する(非特許文献2)。
【0004】
放射も肝組織損傷をもたらすことがある。一般的に、放射源は天然または人工エネルギー源によって生じる高エネルギー電磁波または高エネルギー粒子である。高線量の放射線の瞬間照射または低線量の長時間照射のいずれもが組織損傷をもたらす可能性があり、放射のエネルギーは細胞の染色体、酵素を破壊し、細胞の正常な機能を乱してしまう。
糖尿病性の肝組織損傷は糖尿病によって引き起こされる肝臓組織学及び機能に変化が生じる病変である。糖尿病によって引き起こされる肝損傷は以下を含む:肝酵素学的異常であって、肝細胞内の二酸化炭素の蓄積、酸中毒、酸素供給の減少、酸素消耗の増加を引き起こし、肝臓アミノ基移転酵素の活性を向上させ、ビリルビンの代謝を乱し、ひどいものは肝細胞の壊死をもたらす;脂肪肝、脂肪肝をもたらすすべての病因において、糖尿病は第3位を占め、そのうち、21%〜78%の糖尿病患者は脂肪肝を伴う;肝炎、肝硬変及び肝臓がん、そのうち糖尿病患者におけるウイルス性肝炎の疾患率は健常者の2〜4倍であり、原発性の肝臓がんの発生率は健常者の4倍である。糖尿病性の肝臓疾患は百万単位の患者のクオリティ・オブ・ライフを害するだけでなく、同時に巨大なコスト負担となり、医療保険システムに対しても大変看護の負担を要するものである。
肝臓のウイルス感染も肝損傷をもたらすよくある原因であり、例えばB型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎等である。
肝臓内のうっ血も肝組織損傷をもたらす。血液の肝臓内における鬱滞は以下の幾つかの要因によって引き起こされる:肝中心静脈閉塞症、バッド・キアリ症候群、慢性右心不全及び狭窄性心膜炎である。
如何なる上行大静脈の血液が心臓に戻ることを阻害する疾患も肝臓うっ血をもたらす可能性があり、例えばリウマチ性の心臓弁膜症、慢性狭窄性心膜炎、高血圧性心臓病、虚血性心臓病、肺心症、先天性の心臓疾患等である。
うっ血性の肝損傷は最初に肝小葉の中央域に影響を与え、肝小葉の中央静脈がうっ血、拡張し、肝類洞壁拡張の程度は肝類洞壁から小葉中央静脈の遠近に応じて異なり、小葉中央の肝細胞が圧迫を受け、変形及び萎縮し、細胞液内は顆粒状の変化を呈し、核凝縮、核分裂、細胞壊死が起こり、ブラウン色の色素沈着を伴い、ブラウン色の色素は小葉の中央に位置し、胆の鬱滞により、近接する中央静脈の肝臓の実質変性壊死が最もひどく、うっ血がひどくなることに従い、壊死組織は肝門域に延伸し、重度うっ血患者は肝門域にのみ比較的正常な肝臓組織を有し、時間が長くなることにつれ、中央静脈周囲の網状繊維は陥没する可能性があり、網状繊維組織及び細い繊維束は中央静脈から他の中央静脈に延伸 する。
【0005】
肝組織損傷の治療において、現在は主に病因のコントロール及び治療、及びフォロー治療を行うことである。長期的に、科学者はずっと損傷した肝組織に対して直接的で、優れた修復効果を有する薬物を探してきた。本発明もこれに対してさらに研究を進めている。実験により、人体の体内に天然に存在するタンパク質、プラスミノゲンは、中毒、放射、化学療法薬物及び糖尿病によってもたらされる肝組織損傷に対して優れた修復作用を有することを見出した。プラスミノゲンは肝組織損傷及びその関連疾患を治療する新しいストラテジーとなることが望まれる。
プラスミノゲン(plasminogen,plg)はプラスミンの非活性前駆体であって、単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである(非特許文献3,4参照)。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的なソースである(引用文献5、6参照)。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸−プラスミノゲン(Glu−plasminogen)及びリジン−プラスミノゲン(Lys−plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンはアミノ基末端(N−末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸−プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸−プラスミノゲンはLys76−Lys77においてリジン−プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸−プラスミノゲンと比較して、リジン−プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560−Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす(非特許文献7)。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの同源トリクル環を含み、即ちいわゆるkringleであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringleはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2−APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel−4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントは血管阻害剤と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成されることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Xiao−Lan Lu,Jin−Yan Luo,Ming Tao,Yan Gen,Ping ZHAO,Hong−Li Zhao,Xiao−Dong Zhang,Nei Dong,Risk factors for alcoholic liver disease in China.World Journal of Gastroenterology.2004,10(16)
【非特許文献2】Tim CMA Schreuder,Bart J Verwer,Carin MJ van Nieuwkerk,Chris JJ Mulder,Nonalcoholic fatty liver disease:An overview of current insights in pathogenesis,diagnosis and treatment.World Journal of Gastroenterology.2011,14(16)
【非特許文献3】Wiman,B.and Wallen,P.(1975).Structural relationship between glutamic acid and lysine forms of human plasminogen and their interaction with the NH2−terminal activation peptide as studied by affinity chromatography.Eur.J.Biochem.50,489−494.
【非特許文献4】Saksela,O.and Rifkin,D.B.(1988).Cell−associated plasminogen activation:regulation and physiological functions.Annu.Rev.Cell Biol.4,93−126
【非特許文献5】Raum,D.,Marcus,D.,Alper,C.A.,Levey,R.,Taylor,P.D.,and Starzl,T.E.(1980).Synthesis of human plasminogen by the liver.Science 208,1036−1037
【非特許文献6】Wallen P(1980).Biochemistry of plasminogen.In Fibrinolysis,Kline DL and Reddy KKN,eds.(Florida:CRC.
【非特許文献7】Sottrup−Jensen,L.,Zajdel,M.,Claeys,H.,Petersen,T.E.,and Magnusson,S.(1975).Amino−acid sequence of activation cleavage site in plasminogen:homology with pro part of prothrombin.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 72,2577−2581.
【非特許文献8】Marder V J,Novokhatny V.Direct fibrinolytic agents:biochemical attributes,preclinical foundation and clinical potential[J].Journal of Thrombosis and Haemostasis,2010,8(3):433−444.
【非特許文献9】Hunt J A,Petteway Jr S R,Scuderi P,et al.Simplified recombinant plasmin:production and fu−nctional comparison of a novel thrombolytic molecule with plasma−derived plasmin[J].Thromb Haemost,2008,100(3):413−419.
【非特許文献10】Sottrup−Jensen L,Claeys H,Zajdel M,et al.The primary structure of human plasminogen:Isolation of two lysine−binding fragments and one“mini”−plasminogen(MW,38,000)by elastase−catalyzed−specific limited proteolysis[J].Progress in chemical fibrinolysis and thrombolysis,1978,3:191−209.
【非特許文献11】Nagai N,Demarsin E,Van Hoef B,et al.Recombinant human microplasmin:production and potential therapeutic properties[J].Journal of Thrombosis and Haemostasis,2003,1(2):307−313.
【非特許文献12】Jae Kyu Ryu,Mark A.Petersen,Sara G.Murray et al.Blood coagulation protein fibrinogen promotes autoimmunity and demyelination via chemokine release and antigen presentation.NATURE COMMUNICATIONS,2015,6:8164.
【非特許文献13】Dimitrios Davalos,Katerina Akassoglou.Fibrinogen as a key regulator of inflammation in disease.Seminars in Immunopathology,2012. 34(1):43−62.
【非特許文献14】Valvi D,Mannino DM,Mullerova H,et al.Fibrinogen,chronic obstructive pulmonary disease(COPD)and outcomes in two United States cohorts.Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2012;7:173−82.
【非特許文献15】Karmen A,Wroblewski F,Ladue JS(Jan1955).Transaminase activity in human blood.The Journal of Clinical Investigation.34(1):126−31.
【非特許文献16】Wang CS,Chang TT,Yao WJ,Wang ST,Chou P(Apr 2012).Impact of increasing alanine aminotransferase levels within normal range on incident diabetes.Journal of the Formosan Medical Association=Taiwan Yi Zhi.111(4):201−8.
【非特許文献17】Hua Liu,Zhe Wang,Michael J Nowicki.Caspase−12 mediates carbon tetrachloride−induced hepatocyte apoptosis in mice.World J Gastroenterol 2014 December 28;20(48):18189−18198.
【非特許文献18】Kamyar Zahedi,Sharon L.Barone et al.Hepatocyte−specific ablation of spermine/spermidine−N1−acetyltransferase gene reduces the severity of CCl4−induced acute liver injury.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 303:G546−G560,2012.
【発明の概要】
【0007】
一方において、本発明はプラスミノゲンまたはプラスミンの、被験者の肝組織損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キットにおける用途に係る。本発明はさらに製薬方法に係り、プラスミノゲンと薬学上許容し得る担体を共に、肝組織損傷及びその関連疾患を予防及び/治療するための薬物、製品、薬物キットに製造することを含む。
【0008】
一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は放射または化学物質によってもたらされる肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、放射または化学物質によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患は、がん治療に用いられる放射線化学療法及び薬物である。一つの実施形態において、前記放射は想定外の事故または仕事環境などの他の事件に起因する放射である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は中毒性の肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記中毒性の肝損傷はアルコールを含む「肝臓への親和性が高い毒物」によってもたらされる中毒性の肝損傷である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病によって引き起こされるものであり、糖尿病の合併症の一つである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患はウイルス感染による肝炎によってもたらされるものであり、例えばA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスによってもたらされる肝炎である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は薬物性の肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝臓内における血液の鬱滞(肝臓うっ血)に起因するものである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病性の肝損傷及びその関連疾患であり、中毒性の肝損傷及びその関連疾患、薬物性肝損傷またはその関連疾患、放射性の肝損傷及びその関連疾患、ウイルス感染性肝損傷及びその関連疾患、うっ血性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝組織損傷によってもたらされる肝機能異常、肝臓の酵素学異常、肝臓周辺の不快感と圧迫痛、肝腫大、脾腫大、肝臓脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。
【0009】
一つの実施形態において、前記フィブリンプラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するものである。一つの実施形態において、前記フィブリンプラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然フィブリンプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷の関連疾患または中毒性肝損傷の関連疾患は以下を含む:肝臓の酵素学異常、肝臓周辺の不快感と接触痛、肝腫大、脾腫大、肝脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷及びその関連疾患は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物と共に投与できる。一つの実施形態において、前記他の薬物とは以下を含む:肝臓保護薬、抗糖尿病薬、抗血栓薬、抗凝固薬、高脂血症治療薬、抗心脳血管疾患薬、抗感染薬。
【0010】
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物で、好ましくはヒトである。
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる肝損傷は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンが低下している。具体的に、前記低下は先天的、継発的及び/または局所的である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的(conservative)な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0011】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて使用できる。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm
2、0.001−800mg/cm
2、0.01−600mg/cm
2、0.1−400mg/cm
2、1−200mg/cm
2、1−100mg/cm
2、10−100mg/cm
2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投与は、肝臓域において、プラスミノゲンを含有するガイドチューブを用いることによって行われる。
一方で、本発明は被験者の肝組織損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療する方法に係り、被験者に有効量のプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。本発明はさらにプラスミノゲンまたはプラスミンを被験者の肝組織損傷及びその関連疾患の予防及び/または治療に用いることに係る。
【0012】
一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は放射または化学物質によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、放射または化学物質によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患はがん治療に用いられる化学放射療法及び薬物である。一つの実施形態において、前記放射は想定外の事件によってもたらされる放射である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は中毒性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記中毒性肝損傷はアルコールを含む「肝臓への親和性が高い毒物」によってもたらされる中毒性の肝損傷である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病によってもたらされるものであり、糖尿病の合併症の一つである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患はウイルスが肝臓に感染することによってもたらされる肝炎によるものであり、例えばA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスに起因する肝炎である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は薬物性の肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝臓内の血液鬱滞(肝臓うっ血)によってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病性肝損傷及びその関連疾患であり、中毒性の肝損傷及びその関連疾患、薬物性肝損傷またはその関連疾患、放射性の肝損傷及びその関連疾患、ウイルス感染性肝損傷及びその関連疾患、うっ血性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝組織損傷によってもたらされる肝機能異常、肝酵素学異常、肝臓周辺の不快感と接触痛、肝腫大、脾腫大、肝脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。
【0013】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷の関連疾患または中毒性肝損傷の関連疾患は以下を含む:肝酵素学異常、肝臓周辺の不快感と接触痛、肝腫大、脾腫大、肝脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷及びその関連疾患は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物と共に投与できる。一つの実施形態において、前記他の薬物とは以下を含む:肝臓保護薬、抗糖尿病薬、抗血栓薬、抗凝固薬、高脂血症治療薬、抗心脳血管疾患薬、抗感染薬。
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物で、好ましくはヒトである。
【0014】
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる肝損傷は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンが低下している。具体的に、前記低下は先天的、継発的及び/または局所的である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて使用される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm
2、0.001−800mg/cm
2、0.01−600mg/cm
2、0.1−400mg/cm
2、1−200mg/cm
2、1−100mg/cm
2、10−100mg/cm
2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投与は、肝臓域において、プラスミノゲンを含有するガイドチューブを用いることによって行われる。
【0015】
一方で、本発明は被験者の肝組織損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミンに係り、前記プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、または前記プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する製品または薬物キットを含む。
一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は放射または化学物質によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、放射または化学物質によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患はがん治療に用いられる化学放射療法及び薬物である。一つの実施形態において、前記放射は想定外の事件によってもたらされる放射である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は中毒性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記中毒性肝損傷はアルコールを含む「肝臓への親和性が高い毒物」によってもたらされる中毒性の肝損傷である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病によってもたらされるものであり、糖尿病の合併症の一つである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患はウイルスが肝臓に感染することによってもたらされる肝炎によるものであり、例えばA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスによってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は薬物性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝臓内の血液鬱滞(肝臓うっ血)によってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は糖尿病性の肝損傷及びその関連疾患、中毒性の肝損傷及びその関連疾患、薬物性肝損傷またはその関連疾患、放射性の肝損傷及びその関連疾患、ウイルス感染性肝損傷及びその関連疾患、うっ血性肝損傷及びその関連疾患である。一つの実施形態において、前記肝組織損傷及びその関連疾患は肝組織損傷によってもたらされる肝機能異常、肝酵素学異常、肝臓周辺の不快感と接触痛(圧痛)、肝腫大、脾腫大、肝臓脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんを含む。
【0016】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷の関連疾患または中毒性肝損傷の関連疾患は以下を含む:肝酵素学異常、肝臓周辺の不快感と接触痛、肝腫大、脾腫大、肝脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。一つの実施形態において、前記糖尿病性の肝損傷及びその関連疾患は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物と組み合わせて投与できる。一つの実施形態において、前記他の薬物とは以下を含む:肝臓保護薬、抗糖尿病薬、抗血栓薬、抗凝固薬、高脂血症治療薬、抗心脳血管疾患薬、抗感染薬。
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物で、好ましくはヒトである。
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる肝損傷は糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によってもたらされるものである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンが低下している。具体的に、前記低下は先天的、継発的及び/または局所的なものである。
【0017】
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。最も好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて使用できる。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm
2、0.001−800mg/cm
2、0.01−600mg/cm
2、0.1−400mg/cm
2、1−200mg/cm
2、1−100mg/cm
2、10−100mg/cm
2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
【0018】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投与は、肝臓域において、プラスミノゲンを含有するガイドチューブを用いることによって行われる。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは容器中に分別包装されている。好ましくは、該製品または薬物キットはさらに他の薬物を含み、該薬物キットのその他の容器中に分別包装されている。該薬物キットはさらにプロコトルを含み、前記プラスミノゲンは肝臓組織損傷及びその関連疾患の治療に用いることができると説明するものであり、肝臓組織損傷及びその関連疾患は具体的には、例えば該糖尿病によって引き起こされる糖尿病による肝臓損傷及びその関連疾患、中毒性の肝損傷及びその関連疾患、薬物性の肝損傷またはその関連疾患、放射によってもたらされる肝損傷及びその関連疾患、ウイルス感染によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患、うっ血によってもたらされる肝損傷及びその関連疾患であり、且つさらには、前記プラスミノゲンまたはプラスミンは他の薬物または療法を投与する前、投与と同時、及び/または後に投与できる。
【0019】
本発明は本発明の実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせ後の技術構成は本出願で明確に開示され、前記技術構成が単独且つ明確に開示されているのと一緒である。また、本発明はさらに各実施形態及び要素のすべてのサブの組み合わせをカバーし、さらに本明細書中において開示され、それぞれのサブの組み合わせが単独且つ明確に本明細書中において開示されているのと一緒である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「糖尿病性肝損傷」は糖尿病によって引き起こされる肝臓組織学及び機能変化が起こる病変である。それは主に糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管の病変によるものである。糖尿病が引き起こす肝損傷は以下を含む:肝酵素学的異常、それは肝細胞内の二酸化炭素蓄積、酸中毒、酸素供給の減少、酸素消耗の増加をもたらし、肝臓のアミノ基移転酵素の活性を向上させ、ビリルビンの代謝の乱れを引き起こし、ひどい者は肝細胞の壊死を引き起こすことがある;脂肪肝、脂肪肝のすべての病因において、糖尿病は第3位を占め、そのうち21%〜78%の糖尿病患者は脂肪肝を患っている;肝炎、肝硬変及び肝臓がん、糖尿病患者におけるウイルス性肝炎の疾患率はおおよそ健常者の2〜4倍であり、原発性の肝臓がんの発生率はおおよそ健常者の4倍である。
「化学性肝損傷」または「中毒性肝損傷」は化学性の肝臓毒性物質によってもたらされる肝損傷である。これらの化学物質はアルコール、環境中の化学有毒物質及び一部の薬物を含む。大自然及び人類の工業生産過程において、いずれも肝臓に毒性のある物質が存在し、「肝臓への親和性が高い毒物(肝臓親和性毒物)」と呼ばれている。これらの毒物は人間の集合において感受性が高く、潜伏期間が短く、病変の過程と化学物質の量が直接相関し、肝臓の異なる程度の肝細胞壊死、脂肪変性、肝硬変をもたらすことができる。
【0021】
「肝臓への親和性が高い毒物」は肝臓に対して毒性のある物質の総称である。アルコールは生活において最もよく見られる「肝臓への親和性が高い毒物」である。アルコール以外にも、環境中の化学有毒物質及び一部の薬物も肝損傷をもたらすことがある。人体の重要な解毒器官として、肝臓は肝動脈及び肝静脈の二重の血液供給を有する。化学物質は胃腸道門静脈または体内循環から肝臓に入り変換が行われ、そのため肝臓は化学物質中の毒性物質によってダメージを受やすい。大自然及び人類の生産過程においていずれも肝臓に有毒性を有する物質が存在し、「肝臓への親和性が高い毒物」と呼ばれる。これらは肝臓に入ると、肝臓の異なる程度の肝細胞壊死、脂肪変性、肝硬変をもたらす。病理的な表れは以下を含む:(1)脂肪変性。四塩化炭素、黄リン等はリポタンパクの合成及び運搬を干渉し、脂肪肝となる。(2)脂質の過酸化反応、これは中毒性の肝損傷の特殊な表現形式であり、例えば四塩化炭素は体内で代謝されて酸化能力の非常に強い中間生成物を生成し、これにより生物膜上の脂質の過酸化をもたらし、膜のリン脂質を破壊し、細胞の構造と機能を改変させる。(3)胆汁欝滞反応、主に肝細胞膜と微絨毛がダメージを受け、胆汁酸の排泄障害をもたらすことに関連する。
【0022】
「薬物性肝損傷」とは薬物の使用過程における、薬物自身または/及び代謝生成物または特殊体質によって生じる薬物に対する超感受性または耐受性の低下がもたらす肝損傷を薬物性肝損傷といい、薬物性の肝疾患とも称され、臨床においては各種急性慢性肝疾患として現れ、軽いものは投与を停止した後に自然に回復でき、ひどい者は生命を脅かされる可能性があり、積極的に治療、救命しなければならない。「薬物性肝損傷」は従来の肝疾患既往歴を有しない健常者または元々重大な疾患がある患者において発生する;薬物の用量が過量の場合に発生する場合あれば、正常な用量で発生する場合もある。
「放射性肝損傷」は高エネルギー電気解離放射、α、β粒子、γ放射線、χ放射線及び中子線によってもたらされる放射性のダメージである。高線量の放射線の瞬間照射または低線量の長時間照射はいずれも組織損傷を引き起こすことがあり、放射のエネルギーは細胞の染色体、酵素を破壊し、細胞の正常な機能を乱れさせる。
「ウイルス感染性肝損傷」はウイルス感染によってもたらされる肝損傷の総称である。前記ウイルス感染でよく見られるのはA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスがもたらす感染である。
「うっ血性肝損傷」は血液の肝臓内における鬱滞によってもたらされる肝組織損傷の病変である。いかなる上行大静脈の血液が心臓に戻ることを阻害する疾患も肝臓うっ血をもたらす可能性があり、例えばリウマチ性の心臓弁膜症、慢性狭窄性心膜炎、高血圧性心臓病、虚血性心臓病、肺心症、先天性の心臓疾患等である。
【0023】
「プラスミノゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含む天然ヒト由来プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1−5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1−Gly19を含み、Papは残基Glu20−Val98を含み、Kringle1は残基Cys103−Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184−Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275−Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377−Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481−Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581−Arg804を含む。
【0024】
Glu−プラスミノゲンは天然のフルサイズのプラスミノゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)、該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu−プラスミノゲンの第76−77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys−プラスミノゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Δ−プラスミノゲン(δ−plasminogen)はフルサイズのプラスミノゲンにKringle2−Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず(非特許文献8,9)、δ−プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり(非特許文献9)、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7に示す通りである。ミニプラスミノゲン(Mini−plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443−Asn791(シグナルペプチドGlu−プラスミノゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており(非特許文献10)、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノゲン(Micro−plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543−Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu−プラスミノゲン配列のGlu残基が開始アミノ酸である)と文献が報告し(非特許文献11参照)、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531−Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu−プラスミノゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0025】
本発明の 「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノゲン」と「フィブリンプラスミノゲン」、「繊維タンパクプラスミノゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノゲン及びプラスミンをカバーするものである。
循環プロセスにおいて、プラスミノゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD−二量体に加水分解し、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノゲンのPapドメインはプラスミノゲンを非活性閉鎖コンフォメーションに維持する重要な決定クラスターであり、KRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0026】
「プラスミノゲン活性フラグメント」とはプラスミノゲンのタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノゲンの技術構成は、プラスミノゲン活性フラグメントでプラスミノゲンの替わりとする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントはプラスミノゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノゲンは該プラスミノゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノゲン活性を有するタンパク質を含む。
現在、血液中のプラスミノゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノゲン活性化剤の活性に対する測定(t−PAA)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤抗原に対する測定(t−PAAg)、血漿組織プラスミノゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン−抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、その後に分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノゲンの活性と正比例関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0027】
「オルソロジー(orthology)」とは異なる種どうしのオルソログ(ortholog)であり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノゲン活性を有するプラスミノゲン直系同源物または直系同系物である。
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%〜99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換変異体」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素であり、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0028】
「分離された」プラスミノゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノゲンを含む。
【0029】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0030】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要な時にギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は引用配列の適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズを比較することで最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN−2により得られるものである。
ALIGN−2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、アミノ酸配列Aと所定のアミノ酸配列Bのアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bのあるアミノ酸配列と同一性を有する所定のアミノ酸配列Aの占める%)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0031】
そのうちXは配列比較プログラムALIGN−2において該プログラムのA及びBの比較において同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。明確に説明した場合を除き、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN−2コンピュータプログラムによって得られるものである。
本文において使用されているように、用語の「治療」及び「処理」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾病が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況である; (b)疾患を抑制し、その形成を阻害する;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させる。
【0032】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与され、疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現するプラスミノゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0033】
(本発明のプラスミノゲンの製造)
プラスミノゲンは自然界から分離及び精製され、さらに治療の用途に用いられるものであり、さらには標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することができる。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid−Phase Peptide Synthesis;3−284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3−10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723−8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖の機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0034】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノゲンを生産できる。例えば、プラスミノゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然で関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサー素子及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーター系とすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノゲンの収集及び精製の条件下において宿主を維持できる。
【0035】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、外部由来に期待のDNA配列によって形質転換されるそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
大腸菌(Escherichia coli)はクローンするターゲット抗体をコードするポリヌクレオチドの原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と許容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージλ由来のプロモーター系である。プロモーターは通常発現を制御し、遺伝子配列を操縦する場合、さらにリボソームの結合位置配列を有し、転写及び翻訳を起動させてもよい。
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えば出芽酵母(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母はエタノール脱水素酵素、イソ細胞色素C、及び麦芽糖とガラクトースの利用のための酵素のプロモーターによって起動される。
【0036】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノゲンの発現に用いることができる(例えばターゲット抗−Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマである。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合位置、RNAの切断位置、ポリアデノシン酸化位置、及び転写終止子配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
一旦合成(化学または組み換え方式)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノゲンを精製することができる。該プラスミノゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%〜90%の純度で、少なくとも約90%〜95%の純度で、または98%〜99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、ターゲット抗体以外の大分子などである。
【0037】
(薬物配合剤)
必要とする純度のプラスミノゲンと選択可能な薬用担体、賦形剤、または安定剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド水和物;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルエタノール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルのパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンチルエタノール;m−クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンである;親水性重合体、例えばポリゼニールピロリドンである;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はブドウ糖、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛−タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗−VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0038】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、抗高血圧薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
本発明のプラスミノゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に包まれることができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたはエマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術は以下に開示されている。Remington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)。
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌ろ過膜でろ過することで容易に実現できる。
【0039】
本発明のプラスミノゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過基質を含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98−105(1982))またはポリ(ビニールエタノール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L−グルタミン酸とγメチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン−ビニルアセテート(ethylene−vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸−ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸−ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン−酢酸エチル及び乳酸−ヒドロキシ酢酸は、持続的に100日間以上分子を放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S−S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現する。
【0040】
(投与及び用量)
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内、鼻内、体表または皮内投与または脊髄または脳内輸送により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。エアロゾル製剤例えば鼻噴霧製剤は活性剤を含有する精製した水性またはその他の溶液及び防腐剤と等張剤を含有する。このような製剤を鼻粘膜と許容し得るpH及び等張状態に調整する。
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、エタノール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0041】
医療関係者は各種臨床的要素により用量の案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001〜2000mg/kgであり、または約0.001〜500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)である。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1−50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量の日程表は連続数日1−10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において糖尿病肝臓疾患及びその関連疾患の治療効果及び安全性はリアルタイムに評価、定期的に評価すべきである。
【0042】
(治療効力及び治療安全性)
本発明の一つの実施形態はプラスミノゲンを用いて被験者を治療した後、治療効力及び治療安全性に対して判断を行うことに係る。そのうち前記治療効力を判断する方法は以下を含むが、これらに限られない:1)被験者の肝臓機能に対する検査で、例えば患者体内の酵素学レベル、例えば血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素(ALT)、アラニントランスアミナーゼ(AST)、総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン、アルブミン、グロブリン、コリンエステラーゼ、アルカリ性フォスファターゼ、ペプチド転移酵素などの水準が正常値の範囲内にあるかに対して検査を行い、本発明中のプラスミノゲンを用いて被験者に対して治療を行った後、前記肝機能の数値が正常値に戻るかまたは改善されることを望まれ、例えば、グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(ALT):0〜40μ/L、グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(AST):0〜40μ/L、グルタミルトランスフェラーゼ(GGT):40単位未満、総ビリルビン:3.4〜20.5μmol/Lである;2)被験者のプロトロンビン時間(PT)及び活動度(PTA)に対して検査を行う:PTは肝臓凝血因子の合成機能を反映する重要な指標であり、PTAはPT測定値の常用される表示方法であり、肝臓疾患の進行及び予後の判断に比較的大きな価値を有し、そのうちPTA進行性が40%以下に低下することを肝不全の重要な診断基準の一つとし、<20%の者は肝臓機能が不良であることを示し、本発明中のプラスミノゲン及びそのバリアントを用いて被験者に対して治療を行った後、患者体内のPTAの低下予期が明らかに改善されている;3)映像学検査:腹部の肝胆脾エコー、CTまたは核磁気共鳴を含み、肝損傷の回復の程度を知るためである;4)腫瘍マーカーの検査、例えばアルファ・フェトプロテインAFP、CA199、AFUなどである;5)肝臓組織生検を行い、繊維化及びその他の損傷の回復の程度を判断する。また、本発明はさらにプラスミノゲン及びそのバリアントを用いて被験者に対して治療を行う過程中及び治療後において、前記該治療案の安全性に対する判断は、被験者の血清半減期、治療半減期、半数中毒量(TD50)、半数致死量(LD50)に対して統計を行い、または治療過程中においてまたは治療後に発生する各種望ましくない有害事象例えばアレルギー反応に対して観察を行うことを含むが、これらに限られない。
【0043】
(製品または薬物キット)
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患の治療に用いられる本発明のプラスミノゲンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはパンフレットを含む。適切な容器はボトル、小瓶、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたは小瓶であり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる肝損傷及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液である。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するパンフレットを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを投与した後の体重の変化を示したものである。
【
図2】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを15日間連続的に投与した後の肝臓のヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の観察結果を示したものである。
【
図3】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを15日間連続的に投与した後の肝臓フィブリン免疫染色の顕微鏡による観察結果を示したものである。
【
図4】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の体重変化を示したものである。
【
図5】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の肝臓のヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の観察結果を示したものである。
【
図6】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の肝臓フィブリン免疫染色の顕微鏡による観察結果を示したものである。
【
図7】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の肝臓F4/80免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図8】24〜25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の血清グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(ALT)の測定結果を示したものである。
【
図9】プラスミノゲンを投与した0、2、7日目の、四塩化炭素による急性肝損傷マウスの肝臓ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の観察結果を示したものである。
【
図10】plg
−/−四塩化炭素による急性肝損傷のマウスに対してプラスミノゲンを投与した18、24、48時間後の肝臓ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の観察結果を示したものである。
【
図11】plg
−/−四塩化炭素による急性肝損傷のマウスに対してプラスミノゲンを投与した18、24、48時間後の肝臓フィブリン免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図12】5.0Gy X線照射によるマウスに対してプラスミノゲンを投与10日後の肝臓F4/80免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図13】10mg/Kgシスプラチン化学療法による損傷モデルマウスにプラスミノゲンを投与した7日後の肝臓フィブリンの免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図14】plg
−/−四塩化炭素による急性肝損傷マウスに対してプラスミノゲンを投与した18、24、48時間後及び7日後の肝臓ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の観察結果を示したものである。
【0045】
<実施例>
【実施例1】
【0046】
実施例1は神経損傷が発生している糖尿病後期マウスの体重に対するプラスミノゲンの影響に関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与ループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンを投与する第0、4、7、11、16日目にそれぞれ体重を測定する。その結果は、プラスミノゲン投与グループ及び溶媒PBS投与対照グループは0、4、7、11、16日目に体重(
図1)に明らかな差異がなく、プラスミノゲンは動物体重に対して影響が大きくないことが示されている。
【実施例2】
【0047】
実施例2は糖尿病による肝損傷の末期肝臓組織損傷に対するプラスミノゲンの保護作用に関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。16日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り、10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定した後、肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させてさらにキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入する。
ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の結果が示すように、溶媒PBS投与対照グループにおいて、肝細胞は重度の脂肪変性を示し、脂質が沈着し、細胞核は辺縁部に押され、細胞に軽度な水様変性が起こり、肝索に乱れが生じる;プラスミノゲン投与グループは溶媒投与対照グループに比べ、肝細胞の脂肪変が減軽され、軽度脂肪変となり、中程度の水様変性を主とする。プラスミノゲンは糖尿病による肝損傷の修復を促進できることを示している。
【実施例3】
【0048】
実施例3はプラスミノゲンが糖尿病マウスの肝臓組織フィブリンレベルを減少させることに関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。16日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定する。固定した後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流し、それからTBSで1回洗う。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で200倍にて切片を観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、有機体の損傷に対する刺激応答反応として、フィブリノーゲンは加水分解してフィブリンとなる(非特許文献12〜14)。そのためフィブリノーゲンレベルを損傷の程度の一つの指標とすることができる。
研究により、プラスミノゲン投与グループ(
図3B)と溶媒PBS投与対照グループ(
図3A)を比較した場合、プラスミノゲン投与グループのマウスの肝臓組織フィブリンのレベルが低下し、プラスミノゲンはフィブリンレベルの沈着を阻害する機能を有し、損傷がある程度修復されていることを示している。
【実施例4】
【0049】
実施例4は糖尿病マウスの体重に対するプラスミノゲンの影響に関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを20匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各10匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与ループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンを投与する第0、4、7、11、16、21、26、31日目にそれぞれ体重を測定する。
その結果は、プラスミノゲン投与グループ及び溶媒PBS投与対照グループは0、4、7、11、16、21、26、31日目に体重に明らかな差異がなく(
図4)、これは、プラスミノゲンは動物体重に対して大きな影響がないことが示されている。
【実施例5】
【0050】
実施例5は糖尿病による肝損傷末期の肝臓組織損傷に対するプラスミノゲンの保護作用に関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り、10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定した後、肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させてさらにキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入する。
ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の結果が示すように、溶媒PBS投与対照グループ(
図5A)において、肝細胞は重度の脂肪変性を示し、脂質が沈着し、大きな脂肪空胞となり、細胞核は辺縁部に押され、肝索に乱れが生じる;肝類洞壁が狭窄し、且つ肝索にて数量の異なる炎性病巣(↑)が見られる。プラスミノゲン投与グループ(
図5B)は肝臓に軽度の脂肪変性が生じ、損傷は軽度の水様変性が主であり、細胞液が溶解して主に門脈域と中央静脈中央域に分布し、門脈域及び中央静脈周囲は影響が比較的軽く、同時に肝索域に軽度な炎症性細胞浸潤が見られる、これはプラスミノゲンを投与した後の肝臓は損傷が明らかに修復されていることを示している。
【実施例6】
【0051】
実施例6はプラスミノゲンが糖尿病マウスの肝臓組織フィブリンレベルを減少させることを示したものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で200倍にて切片を観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、有機体の損傷に対する刺激応答反応として、フィブリノーゲンは加水分解してフィブリンとなる(非特許文献12〜14)。そのためフィブリノーゲンレベルを損傷の程度の一つの指標とする。
研究により、プラスミノゲン投与グループ(
図6B)と溶媒PBS投与対照グループ(
図6A)を比較した場合、プラスミノゲン投与グループのマウスの肝臓組織フィブリンのレベルが低下し、プラスミノゲンはフィブリンレベルの沈着を阻害する機能を有し、プラスミノゲンは糖尿病マウスの生体損傷に顕著な修復機能を有することを示している。
【実施例7】
【0052】
実施例7はプラスミノゲンの糖尿病マウスの肝臓組織の炎症の減軽に関するものである。
24〜25週齢のdb/dbオスマウスを10匹選び、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定及びグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンを31日間投与した後にマウスを殺処分して肝臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてから再水和してさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ヤギ抗ウサギポリクローナル抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗う。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流し、透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で400倍にて観察する。
F4/80はマクロファージマーカーであって、炎症反応の程度及び段階を示すことができる。その結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループ(
図7B)と溶媒PBS投与対照グループ(
図7A)を比較した場合、プラスミノゲン投与グループのF4/80陽性レベルは明らかに低下し、これはプラスミノゲンを投与した後の肝臓組織の炎症の程度が減軽されていることを示している。
図7CはF4/80免疫グループ化陽性発現数の定量分析結果であり、プラスミノゲン投与グループのF4/80の発現量が明らかに減少され、且つ統計学的差異を有し、これはプラスミノゲンを注射することで糖尿病マウスの肝臓の炎症の修復を顕著に促進できることを示している。
【実施例8】
【0053】
実施例8はプラスミノゲンの糖尿病マウスの肝損傷の修復促進に関するものである。
25−28周齢db/dbオスマウスを9匹取り、ランダムに2つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ3匹、プラスミノゲン投与グループ6匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスを2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾静脉からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンを31日間投与した後に眼球を摘出して全血を採取し、血清が析出してから4℃、3500r/minにて10分間遠心させ、上澄み液を取って測定を行う。本実験はグルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素測定薬物キット(南京建成生物工程研究所、品番C009−2)であり、ライトマン‐フランケル法(Reitman−Frankel)を用いて血清中のグルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(ALT)の含有量を測定する。
グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素は肝臓の健康状態を示す重要な指標であり(非特許文献15、16参照)、グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素の正常参考値の範囲は9〜50U/Lである。測定結果は以下を示している。溶媒PBS投与対照グループの血清中のALTの含有量は明らかに正常な生理的指標より高く、プラスミノゲン投与グループは既に体内の正常水準に戻り、さらにプラスミノゲン投与グループは溶媒PBS投与対照グループより顕著に低く、且つ統計学的差異を有する(
図8)。糖尿病末期のモデルマウスにおいて、プラスミノゲンを注射することはより効果的に肝損傷を修復できることを示している。
【実施例9】
【0054】
実施例9はプラスミノゲンの急性肝臓中毒の肝臓に対する保護作用に関するものである。
7−8週齢のplg
+/+マウスを18匹取り、オスメスは限られず、ランダムで二つのグループに分け、それぞれ溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ9匹である。二つのグループのマウスを0.5mL/kg体重に応じて経腹部注射により四塩化炭素を投与し、連続的に二日間投与し、急性肝損傷モデルを構築する(非特許文献17、18)。四塩化炭素は使用する前にトウモロコシ油で希釈し、前者と後者の体積比は1:7である。モデル構築当日を0日目とし、1日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスを毎日1mg/0.1mL/匹/日に応じてプラスミノゲンを投与し、溶媒PBS投与対照グループは同じ体積のPBSを投与し、連続的に7日間投与する。0、2、7日目にそれぞれ二つのグループのマウスを3匹ずつ取って殺処分し、解剖して肝臓の状況を観察して記録し、それから肝臓組織を10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入し、顕微鏡下において200倍下にて観察を行う。
ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)の結果は以下のように示している。溶媒PBS投与対照グループ(
図9A−C)及びプラスミノゲン投与グループ(
図9D−F)のマウスの肝臓は0日目に主に中央静脈周囲に砕片状の壊死があり、壊死域において細胞核が破裂し、細胞液が淡く染色され、その他の壊死していない域にも中度の水様変性が見られ、細胞が膨れている;2日目に中央静脈が拡張し、肝細胞の構造が乱れ、少量の炎症性細胞浸潤が生じ、二つのグループに明確な差異が見られない。しかし7日目において、溶媒PBS投与対照グループは依然少量の肝細胞変性が見られ、細胞に軽度な膨れが生じ、肝索が乱れ、肝類洞壁が狭窄し、且つ門脈域周囲に軽度な炎症性細胞浸潤が生じているが、プラスミノゲン投与グループの肝臓は基本的に正常な細胞液の紅染色に戻り、肝索が規則的で、肝類洞壁が明晰である。これによりプラスミノゲンは肝損傷の修復を促進できることが示されている。
【実施例10】
【0055】
実施例10はプラスミノゲンの急性肝臓中毒の肝臓に対する保護作用に関するものである。
7−11週齢のplg
―/―オスマウスを18匹取り、ランダムに二つのグループに分け、それぞれ溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ9匹である。二つのグループのマウスを0.5mL/kg体重に応じて経腹部注射により四塩化炭素を投与し、一回のみ処理を行い、急性肝損傷モデルを構築する(非特許文献17、18参照)。四塩化炭素は使用する前にトウモロコシ油で希釈し、前者と後者の体積比は1:7である。モデル構築が完了した後に30分以内にプラスミノゲンまたはPBSを投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスを毎日1mg/0.1mL/匹/日に応じてプラスミノゲンを投与し、溶媒PBS投与対照グループは同じ体積のPBSを投与し、連続的に2日間投与する。投薬後18、24、48時間後にそれぞれ二つのグループのマウスを3匹ずつ取って殺処分し、解剖して肝臓の状況を観察して記録し、それから肝臓組織を10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入し、顕微鏡下において200倍下にて観察を行う。
結果は以下のように示している。溶媒PBS投与対照グループ(
図10A−C)は18h、24h、48hにいずれも異なる程度の壊死が見られ、18h、24hは片状壊死を主とし、48hにはブリッジ部の壊死が発生し、細胞核が破裂し、細胞液が浅く染色され、且つ損傷が悪化し続け、主に中央静脈周囲に分布し、壊死域には中度の炎症性細胞浸潤が見られる(↓)。門脈域の周囲は壊死が比較的軽く、軽度の水様変性が主であり、軽度の炎症性細胞浸潤を伴い、軽度の胆管増殖が生じている。プラスミノゲン投与グループ(
図10D−F)は18h、24h、48hにおいて対照グループに比較して、いずれも明らかな壊死が見られなく、損傷は軽度な水様変性を主にし、門脈域周囲に分布し、中央静脈周囲の肝細胞は影響されていなく、24h時は18h時より好転し、水様変性が減軽され、中央静脈周囲の肝細胞は軽度な脂肪変性が生じ、細胞液が浅く染色され、軽度の炎症性細胞浸潤を伴う。これによりプラスミノゲンはplg
−/−急性肝損傷モデルのネズミ肝臓損傷の修復を促進できることが示されている。
【実施例11】
【0056】
実施例11はプラスミノゲンの急性肝損傷モデルマウスの肝臓組織のフィブリン沈着を減軽することに関するものである。
7〜11週齢のplg
−/−オスマウスを18匹取り、ランダムに二つのグループに分け、それぞれ溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ9匹ずつである。二つのグループのマウスを0.5mL/kg体重に応じて経腹腔で四塩化炭素を注射し、一回のみ処理し、急性肝損傷モデルを構築する(非特許文献17、18)。四塩化炭素は使用する前にトウモロコシ油で希釈し、前者と後者の体積比は1:7である。モデル構築が完了した後に30分以内にプラスミノゲンまたはPBSを投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスを毎日1mg/0.1mL/匹/日に応じてプラスミノゲンを投与し、溶媒PBS投与対照グループは同じ体積のPBSを投与し、連続的に2日間投与する。投薬後18、24、48時間後にそれぞれ二つのグループのマウスを3匹ずつ取って殺処分し、解剖して肝臓の状況を観察して記録し、それから肝臓組織を10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してから一回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗う。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される (非特許文献12〜14参照)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。
結果は以下を示している。18、24、48時間の三つのタイミングのプラスミノゲン投与グループ(
図11D−F)のフィブリンの陽性着色は明らかに溶媒PBS投与対照グループ(
図11A−C)より浅い。さらに時間が長くなるにつれてフィブリンの着色も次第に浅くなる傾向を有する。これはプラスミノゲンを注射することでフィブリンの沈着を減少させ、肝損傷の修復を促進できることを示している。
【実施例12】
【0057】
実施例12はプラスミノゲンの5.0GyX線照射によるマウスの肝臓組織の炎症の修復に関するものである。
本実験は6〜8週齢の健康なオスC57マウスを10匹取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループに分け、各グループ5匹ずつである。グループ分けが完了した後に、放射損傷モデルを構築し、線形加速器6MV X線を用いて5.0Gyにてマウス全身に対して一回の均一な照射を行い、吸収線量率は2.0Gy/minであり、吸収線量は5.0Gyである(2.5分間照射)。モデルを構築してから、3時間以内にプラスミノゲンを投与する。実験が開始した当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、1日目から放射処理を行いさらにプラスミノゲンまたは溶媒PBSを投与し、投与期間は10日間で投与が完了した後に動物に対して投与停止後11日間観察し、全実験期間は21日である。プラスミノゲン投与グループに対して1mg/0.1mL/匹/日に応じて尾静脈から注射することで投与し、溶媒PBS投与対照グループには同じ体積のPBSを投与する。21日目にマウスを殺処分して解剖して肝臓を取り、それから肝臓を10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してから一回水洗いする。Tris−EDTAで30分間修復し、室温にて20分間冷却してからやさしく洗い流す。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を囲む。10%の健常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスF4/80抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗う。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察する。
F4/80免疫組織染色 (Immunohistochemistry)の効果が示すように、5.0GyX線で照射してモデル構築した後の溶媒PBS投与対照グループ(
図12A)のマウスファージマーカーの発現量はプラスミノゲングループ(
図12B)より高く、これはプラスミノゲンを投与した後に、動物の肝臓組織の炎症が顕著に減軽されたことを示している。
【実施例13】
【0058】
実施例13はプラスミノゲンのシスプラチン化学療法損傷モデルマウスの肝臓組織のフィブリン沈着を減少させることに関するものである。
8〜9週齢の健康なオスC57マウスを10匹取り、ランダムに二つのグループに分け、それぞれ溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹ずつである。グループ分けが完了した後に、化学療法損傷モデルを構築し、10mg/Kg体重に応じて一回のみ経腹腔でシスプラチンを注射する。モデル構築が完了した後にプラスミノゲン投与グループを毎日1mg/0.1mL/匹/日に応じてプラスミノゲンを投与し、溶媒PBS投与対照グループは同じ体積のPBSを投与する。実験開始当日を0日目として体重を測ってからグループ分けし、一日目から腹腔注射してシスプラチンモデル構築を行い、モデル構築後3時間以内にプラスミノゲンまたは溶媒PBSを投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分し、肝臓を取って10%中性フルマリン固定液において24〜48時間固定を行う。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してから一回水洗いする。クエン酸で30分間修復し、室温にて10分間冷却してからやさしく洗い流す。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を囲む。10%の健常ヒツジ血清液 (Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、ウサギ抗マウスフィブリン抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される (非特許文献12〜14)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。
結果は以下を示している。触媒PBS投与対照グループ(
図13A)における肝臓組織中のフィブリンの陽性着色は明らかにプラスミノゲン投与グループ(
図13B)より深い。これはプラスミノゲンが損傷した肝臓組織中に沈着したフィブリンを顕著に減少させたことを示し、プラスミノゲンがシスプラチンによってもたらされる肝損傷の修復を促進できることを示している。
【実施例14】
【0059】
実施例14はプラスミノゲンの急性肝臓中毒の肝臓に対する保護作用に関するものである。
7−11週齢のplg
―/―オスマウスを6匹取り、ランダムに二つのグループに分け、それぞれ溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ3匹である。二つのグループのマウスを0.5mL/kg体重に応じて経腹部注射により四塩化炭素を投与し、一回のみ処理を行い、急性肝損傷モデルを構築する(非特許文献17、18)。四塩化炭素は使用する前にトウモロコシ油で希釈し、前者と後者の体積比は1:7である。モデル構築が完了した後に30分以内にプラスミノゲンまたはPBSを投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスを毎日1mg/0.1mL/匹/日に応じてプラスミノゲンを投与し、溶媒PBS投与対照グループは同じ体積のPBSを投与し、連続的に7日間投与する。8日目にマウスを殺処分し、解剖して肝臓の状況を観察して記録し、それから肝臓組織を10%中性ホルマリン固定液中において24〜48時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化処理した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入し、顕微鏡下において200倍下にて観察を行う。
結果は以下のように示している。触媒PBS投与対照グループ(
図14A)に対して、肝臓中央静脈が拡張し、内皮細胞が壊死し、中央静脈の周囲肝細胞にいずれも大面積の巣状壊死が発生し、細胞核が破砕して深く染色され、その他の壊死していない区域には軽度の水様変性があり、細胞が膨れ、細胞液が透明で、壊死域の軽度な炎症性細胞浸潤を伴う;プラスミノゲン投与グループ(
図14B)において、肝臓に明らかな壊死が見られなく、損傷は軽度の水様変性がメインであり、少量の肝細胞は細胞液の酸嗜好が増強し、赤く染色される。プラスミノゲンの組織損傷は明らかに触媒PBS対照グループより軽く、プラスミノゲンはplg
−/−急性肝損傷モデルのマウス肝損傷の修復を促進できることを示している。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]