(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
連続鋳造工程は、精錬が完了した溶鋼が収められている取鍋(ladle)が連続鋳造装置に載置されて、液体状態の溶鋼が取鍋からタンディッシュ(tundish)を経てモールド(mold)へと移動しながら、固体状態の鋳片に変わる工程である。このとき、浸漬ノズルは、タンディッシュの下部に位置してタンディッシュからモールドへと溶鋼を移動させ、溶鋼に浸漬されて溶鋼と長時間に亘って接することになるため、優れた耐久性が求められる。浸漬ノズルは、主として、耐火性及び溶融金属への耐食性に優れたアルミナ(Al
2O
3)と、介在物(スラグ(鉱滓)成分)への親和性が低く、膨張量が少なく、熱伝導性の良好な黒鉛(C)とを組み合わせたAl
2O
3−C材質により形成される。
浸漬ノズルは、タンディッシュの溶鋼をモールドに供給する流路の役割を担う円筒状の耐火物である。溶鋼が浸漬ノズルの内部に移動する間における温度の落ち込み、溶鋼とノズルの内壁との界面における界面反応、溶鋼中の介在物のノズルの内壁への付着などの理由により、ノズルの内壁からノズルの中心に向かって目詰まり層が成長する。このようなノズルの目詰まり現象は、連続鋳造工程の中断を招いて、生産性の低下及び鋳片品質の低下などの悪影響を引き起こす。
【0003】
そこで、このようなノズルの目詰まりを防止するために、不活性ガスをノズルの内部から溶鋼に供給して、気泡により介在物の付着を防止するポーラス(Porus)型浸漬ノズル、ノズルの目詰まりを引き起こす代表的な酸化物である酸化アルミニウムと反応して低融点化合物を形成する耐火物を導入して、ノズルの目詰まり層がノズル材質と一緒に溶け落ちるようにする溶損型ノズル及び介在物の付着や溶鋼との接触を抑える耐火物材質を導入して、ノズルの目詰まりを低減しようとする努力が絶えず行われている。
そして、ノズルの目詰まりを防止する別の方法としては、ノズルと溶鋼との界面における酸化物の生成を抑止するために、界面において脱酸可能な固体電解質を含むライナーをノズルの内壁に配設することにより、ノズルの目詰まりを低減する脱酸可能なノズルがある。ライナーの材料として用いられる固体電解質としては、ZrO
2系複合酸化物が広く用いられており、ライナーの成形性、連続鋳造工程温度における安定性の確保のために、黒鉛(C)がさらに添加される。
【0004】
ところが、ライナー内に黒鉛が含有された場合、黒鉛の高い電気伝導度に起因して、ライナーへの酸素透過性が失われる虞がある。また、添加された黒鉛がジルコニア粉末粒界に存在して、焼成及び鋳造の間に焼結を妨げて、酸素イオン伝導度を格段に低下させるという不具合が生じる。さらに、酸素イオン伝導度の低下は、ライナーを用いた酸素の除去速度が、溶鋼中の酸素が界面に拡散して供給される酸素の供給速度に比べて低くなる要因となる。なお、これにより、ライナーと溶鋼との界面における脱酸能力が低下して、界面における酸化物の生成によりノズルの目詰まりが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ノズルの目詰まりが抑えられるノズル及びその製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、酸素イオン伝導度の高いライナーを備えるノズル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノズルは、溶鋼の移動が可能な内孔部を有し、溶鋼が内孔部の外側に移動可能な吐出口が形成されるノズル本体と、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)及び酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)の焼結を誘導する焼結添加剤を含む原料により製造されて、ノズル本体の内壁の少なくとも一部を取り囲むように配設されたライナーと、を備えることを特徴とする。
【0007】
焼結添加剤は、ライナーの全体に対して、0mol%超え、10mol%以下で含有されることがよい。
焼結添加剤としては、Bi
2O
3、Al
2O
3及びFe
2O
3のうちのいずれか一種を用いることができる。
【0008】
焼結添加剤がBi
2O
3である場合、Bi
2O
3は、5mol%以下(但し、0mol%を除く)、焼結添加剤がAl
2O
3である場合、Al
2O
3は、0.1mol%以上、10mol%以下、焼結添加剤がFe
2O
3である場合、Fe
2O
3は、0.1mol%以上、5mol%以下、で含有されることが好ましい。
【0009】
本発明に係るノズルの製造方法は、溶鋼の移動が可能な内孔部及び溶鋼が内孔部の外側に移動可能な吐出口を有するノズル本体を製造するための原料を用意する過程と、ノズル本体の内壁の少なくとも一部を取り囲むように配設されるライナーの製造のための原料を用意する過程と、ノズル本体の製造用の原料とライナーの製造用の原料とを、ノズルの製造のための成形型に注入して焼成する過程と、を含み、ライナーの製造のための原料は、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)及び酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)の焼結を誘導する焼結添加剤を含むことを特徴とする。
【0010】
ライナーの製造のための原料を用意するに際して、ライナーの製造用の原料の全体に対して、焼結添加剤は、10mol%以下含有されることがよい。
ライナーの製造のための原料を用意するに際して、焼結添加剤としては、Bi
2O
3、Al
2O
3及びFe
2O
3のうちのいずれか一種を用いることができる。
【0011】
ライナーの製造のための原料を用意するに際して、焼結添加剤がBi
2O
3である場合、Bi
2O
3は、5mol%以下(但し、0mol%を除く)、焼結添加剤がAl
2O
3である場合、Al
2O
3は、0.1mol%以上、10mol%以下、焼結添加剤がFe
2O
3である場合、Fe
2O
3は、0.1mol%以上、5mol%以下、で含有されることが好ましい。
焼成する過程において、1000℃以下の温度において焼成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施の形態によれば、固体電解質に焼結添加剤を用いてライナーとして製造することにより、固体電解質の焼結を誘導し、酸素イオン伝導度の低下を防止し、或いは、酸素イオン伝導度を従来に比べて向上させることができる。
また、本発明の実施の形態に係るライナーの製造用の原料に黒鉛(C)が含まれないため、内壁面に酸化防止剤を塗布する必要がない。このため、酸化防止剤により酸素イオン伝導度が低下する問題を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面に基づいて、本発明の実施の形態についてより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示した実施の形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化することができる。以下に説明する実施の形態は、単に本発明の開示を完全なものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素に対しては同じ符号を付し、図面は、本発明の実施の形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0015】
まず、本発明に係るノズルは、様々な高温の流体を他の容器に注入したり、供給したりするときに使用することができる。以下においては、鋳片を製造する鋳造の際に溶鋼をタンディッシュからモールドに供給する浸漬ノズルについて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るノズルが適用される鋳造装置を示す概略図である。
図2は、本発明の実施例に係るノズルの断面図であって、(a)は長さ方向の断面図、(b)は径方向の断面図を示す。。
図1に示したとおり、鋳造装置、例えば、連続鋳造装置は、精錬を経た溶鋼を収めた容器である取鍋(ladle)から溶鋼60を受け、これを貯留し、分配する役割を果たすタンディッシュ10と、溶鋼60の流量を制御するストッパー20及び摺動プレート30、溶鋼60をモールド50に排出する浸漬ノズル40及び溶鋼60を凝固させて鋳片61にするモールド50を備える。
図1においては、溶鋼の流量を制御するために、ストッパー20と摺動プレート30が両方とも配備される場合を示したが、実際の操業に際しては、ストッパー20と摺動プレート30のうちのどちらか一方を使用することが可能である。なお、鋳造装置は、タンディッシュ10内の溶鋼と浸漬ノズル40に電圧を印加する電源部70を備えることが好ましい。
【0016】
図2に示したとおり、浸漬ノズル40は、溶鋼が移動可能な内孔部を有し、溶鋼が外側、例えば、モールド50に移動可能な吐出口42を有するノズル本体41と、ノズル本体41の内壁の少なくとも一部を取り囲むように配備され、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CaO stabilized ZrO
2、CSZ)と焼結添加剤を含有するライナー43と、を備えることがよい。なお、浸漬ノズル40は、ノズル本体41の外壁の少なくとも一部を取り囲むスラグライン部47を備えてることが好ましい。
ノズル本体41は、溶鋼の移動が可能な内孔部を有する少なくとも上部が開放された円筒状に形成される。また、ノズル本体41の下部側には、溶鋼が内孔部から外側に吐き出される吐出口42が形成される。ノズル本体41は、Al
2O
3とCを含む物質(Al
2O
3−C)を用いて形成されることが好ましい。ここで、Cは、ノズル本体41に導電性を持たせるものであり、約20〜30重量%含むように形成されることがよい。ノズル本体41を形成する原料にCを添加するのは、浸漬ノズル40と、浸漬ノズル40に沿って流れる溶鋼との間に通電回路を形成するためである。
【0017】
ライナー43は、表面が溶鋼と接触可能なようにノズル本体41の内壁に形成される。より具体的に、ライナー43は、溶鋼が通過するノズル本体41の内孔部を取り囲みながら、その内壁面が内孔部に露出されて、内孔部に沿って移動する溶鋼と接触するようにノズル本体41に嵌設される。
そして、ライナー43は、ノズル本体41の内壁の全体にわたって形成されてもよいが、ノズル本体41の上部側から吐出口42の上部までの間に形成されてもよい。このため、ライナー43は、ノズル本体41の内部にノズル本体41の内壁に沿って上下方向が開口された中空の円筒状に形成することが好ましい。
【0018】
ライナー43は、溶鋼中の酸素イオンをノズル本体41側に移動させる役割を果たす。すなわち、ライナー43は、溶鋼が当接する界面に存在する酸素を取り除く脱酸機能を有している。鋳造装置は、鋳造工程の間、低い界面酸素濃度を保たなければならない。このため、ライナー43は、イオン伝導性に優れており、酸素イオンに対して選択的な透過性を有し、電気化学的な脱酸が可能な固体電解質原料であるジルコニア(ZrO
2)系の複合酸化物を用いて製造される。ここで、使用されるジルコニア(ZrO
2)系の複合酸化物は、固体燃料電池(SOFC)、溶融金属中の酸素の濃度を測定するプローブ(probe)などにも適用される材料である。
【0019】
本発明の実施例においては、ライナーの製造用の原料として用いられるジルコニアジルコニア(ZrO
2)系の固体電解質原料のうち、高温における熱膨張率が低い酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)を含む。そして、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)に焼結反応を誘導する焼結添加剤をさらに含む。すなわち、実施例に係るライナーの製造用の原料は、従来、成形性及び高温安定性のために添加されていた黒鉛(C)をライナーの製造用の原料として用いることなく、黒鉛の代わりに焼結添加剤を添加して、黒鉛(C)による固体電解質、すなわち、CSZの酸素イオン伝導度の低下を防止することができる。
一方、従来では、酸化カルシウム安定化ジルコニア(CSZ)固体電解質に成形性及び高温安定性を与えるために、黒鉛(C)を添加してライナーを製作していた。ところが、ライナーに黒鉛(C)が含まれる場合、黒鉛(C)の高い電気伝導度によりジルコニア(ZrO
2)系の固体電解質の酸素イオン伝導度が低下してしまう。これは、添加された黒鉛(C)がジルコニア粉末粒界に存在し、ライナー43の製造時の焼成過程又は鋳造過程の間に生じる熱によりジルコニア粉末粒子間の焼結を妨げるからである。このため、固体電解質に多量の気孔を発生させる原因となり、気孔は、酸素イオンの伝導を妨げるため、気孔の量が増えるに従って、固体電解質の酸素イオン伝導度が低下する。
【0020】
したがって、本発明の実施例においては、ジルコニア粉末粒子間の焼結反応を誘導して、酸素イオン伝導度を低下させず、ライナーの成形性及び高温安定性を確保することが可能な焼結添加剤をライナーの製造用の原料に添加する。すなわち、換言すれば、ライナーの製造用の原料は、従来添加されていた黒鉛(C)を含むことなく、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)と焼結添加剤を含むことができる。
ライナーを用いてノズルの目詰まりを抑えるためには、ライナーにおける酸素の除去速度又は脱酸速度の方が、溶鋼中の酸素がライナーとの界面に拡散して供給又は移動する速度に比べて高くなければならない。なお、このために必要なライナーの臨界酸素イオン伝導度は、0.01S/cmと算出された。
【0021】
そこで、、実施例においては、ライナーを製造する原料の全体を100mol%としたとき、焼結添加剤が0mol%超え、10mol%以下、残部が酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)である固体電解質(すなわち、90mol%以下)含む。より具体的には、本発明のライナーの原料は、焼結添加剤が0.1mol%以上、10mol%以下、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)である固体電解質が90mol%以上、99.9mol%以下で含有される。
例えば、焼結添加剤が10mol%を超えて含有される場合、固体電解質の含有量が少なく、酸素イオン伝導度が0.01S/cm未満と低くなり、ノズルの目詰まりが引き起こす虞がある。また、焼結添加剤の含有量が0.1mol%未満である場合、焼結添加剤による固体電解質の焼結誘導能が低くなり、固体電解質に生じる気孔により酸素イオン伝導度が0.01S/cm未満と低く、ノズルの目詰まりが引き起こす虞がある。
【0022】
ジルコニア(ZrO
2)系の固体電解質粉末の焼結のために求められる温度は、1400℃以上であることが知られているが、ノズル本体41の原料であるAl
2O
3−Cは、温度を1000℃を超えるように高めた場合、焼成過程においてノズル本体41に多量のひび割れが生じる虞がある。このため、実施例においては、ジルコニア(ZrO
2)系の固体電解質粉末の焼結温度(焼結される温度)を1000℃以下に下げる焼結添加剤を用いる。したがって、実施例においては、ジルコニア粉末粒子間の焼結反応を誘導しながら、焼結温度を1000℃以下に下げるように、Bi
2O
3、Al
2O
3及びFe
2O
3のうちのいずれか一種を焼結添加剤として用いる。
焼結添加剤としてBi
2O
3、Al
2O
3及びFe
2O
3のうちのいずれか一種が用いられる場合、Bi
2O
3は、5mol%以下(但し、0mol%を除く)、Al
2O
3は、10mol%以下、Fe
2O
3は、5mol%以下で含有されることが好ましい。より具体的に、Bi
2O
3は、0.1mol以上、5mol%以下、Al
2O
3は、0.1mol以上、10mol%以下、Fe
2O
3は、0.1mol以上、5mol%以下で含有されることが好ましい。
【0023】
上記のとおり、本発明の実施例においては、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)と焼結添加剤を用いてライナー43として製造することにより、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)の粒子間の焼結を誘導することから、酸素イオン伝導度の低下を防止し、さらに、酸素イオン伝導度を従来に比べて向上させることができる。また、ライナーの酸素イオン伝導度が0.01S/cm以上になるようにして、ライナー43における酸素の除去速度又は脱酸速度が、溶鋼中の酸素がライナーとの界面に拡散して供給される酸素の供給速度よりも高くなるようにすることができる。
そこで、酸素イオンがノズル本体41側に移動又は誘導される酸素イオン伝導度が0.01S/cm以上となり、このため、酸素イオンがノズル本体41側に移動又は誘導される酸素の除去速度の方が、溶鋼中の酸素が浸漬ノズルの内壁との界面に拡散して供給される酸素の供給速度に比べて高くなる。したがって、浸漬ノズルの内壁と溶鋼との界面の間において低い酸素の濃度を保つことができ、これにより、浸漬ノズルの内壁に介在物、例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2などの金属酸化物が生じること抑制若しくは防止することができる。
【0024】
一方、従来のように、固体電解質と黒鉛(C)を含む原料によりライナーを製造する場合、浸漬ノズルの予熱過程においてCが酸化され燃焼される現象又は脱炭され、これにより、気孔が生じてライナー及び浸漬ノズルの強度が低下するという問題があった。したがって、このような問題を防止するために、ライナーの内壁面に酸化防止剤を塗布していた。ところが、酸化防止剤に含まれているB
2O
3は、ZrO
2系の固体電解質と1000℃以上の温度において反応して、酸素イオン伝導度を低下させる原因となっていた。
本願発明においては、ライナー43の製造用の原料に黒鉛(C)が含まれないことから、ライナー43の内壁面に酸化防止剤を塗布する必要がなくなり、したがって、酸化防止剤のB
2O
3による酸素イオン伝導度が低下するという問題を避けることができる。
【0025】
金属酸化物の生成及び付着を抑えるメカニズムについて説明すると、次のとおりである。
図3は、鋳造中にノズルの内孔部において起こる脱酸反応の模式図であり、(a)は溶鋼中に含まれる酸素が金属酸化物を形成する様子、(b)は溶鋼とノズル本体が通電され金属酸化物が酸素イオンと金属イオンに分解する様子、(c)は酸素イオンがライナーを介してノズル本体に向かって移動する様子を示す。
図3の(a)に示したとおり、鋳造の際に溶鋼中に含有されている酸素は金属酸化物を形成して、ノズル本体41の内壁に移動する。そして、(b)に示したとおり、溶鋼とノズル本体41とが通電すれば、金属酸化物の周りに密集した電子が金属酸化物を酸素イオンと陽イオン(金属イオン)とに分解する。このようにして分解された酸素イオンは、(c)に示したとおり、酸素イオン伝導度に優れたライナー43を介してノズル本体41に向かって移動し、ノズル本体41の気孔を介して抜け出て、酸素ガスを生成しながら外部に排出される。なお、陽イオンは、溶鋼中に吸収される。このような過程、すなわち、脱酸反応を通じて溶鋼中の酸素を溶鋼の外部に排出することで、浸漬ノズル40内の金属酸化物の生成及び付着を抑えることにより、ノズルの目詰まりを抑制又は防止することができる。
【0026】
また、本発明の実施例に係るライナーは、固体電解質である酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)に、従来の黒鉛(C)の代わりに焼結添加剤を添加することにより、黒鉛(C)による酸素イオン移動度の低下及びそれに伴うノズルの目詰まりの発生の問題を低減又はさらに抑制することができる。すなわち、焼結添加剤によりライナーを製造する際、又は鋳造する際に、溶鋼の温度に応じて酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)の焼結が誘導され、これにより、酸素イオンがノズル本体(41)側に移動又は誘導される酸素イオン伝導度が従来に比べて向上する。したがって、酸素イオンがノズル本体41側に移動又は誘導される酸素の除去速度の方が、溶鋼中の酸素が浸漬ノズルの内壁との界面に拡散して供給される酸素の供給速度に比べて高くなる。このため、浸漬ノズル40の内壁と溶鋼との界面の間において低い酸素の濃度を保つことができ、これにより、浸漬ノズル40の内壁に介在物、例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2などの金属酸化物が生じることを抑制若しくは防止することができる。
【0027】
スラグライン部47は、浸漬ノズル40の外壁において、吐出口42の上部側、例えば、モールド内の溶鋼の湯面の周りに形成されて、スラグ又はフラックス、溶鋼などへの耐食性を高める役割を果たす。スラグライン部47は、様々な物質を用いて形成可能であり、例えば、カルシア・マグネシア部分安定化ジルコニア、黒鉛などの混合物質を用いて形成することができる。
【0028】
電源部70は、タンディッシュ10内の溶鋼と浸漬ノズル40とを通電させる。このため、タンディッシュ内の溶鋼に電圧を印加するための第1の電極72が配備されることがよく、第2の電極として浸漬ノズル40を使用することができる。タンディッシュ10内の溶鋼に電圧を印加するためには、第1の電極72は、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬されて配備されることがよく、第1の電極72は、浸漬ノズル40、すなわち、ノズル本体41と同じ物質で形成されてもよい。また、電源部70は、第1の電極72と第2の電極(浸漬ノズル40)に電源、例えば、電圧又は電流を印加し、第1の電極72を負極(cathode)として、第2の電極を正極(anode)として電圧を印加する。このため、第1の電極72と第2の電極に電圧を印加すれば、電子が第1の電極72から第2の電極に向かって移動し、溶鋼と浸漬ノズル40との界面において分解された酸素イオンが電子の移動方向、すなわち、溶鋼からノズル本体41に向かって移動することになる。したがって、溶鋼中の酸素イオンがライナー43を介しノズル本体41側に移動して外部に排出可能になり、このような過程を通じて、浸漬ノズル40の内孔部に金属酸化物が付着してノズルの目詰まりが生じる現象を抑制、若しくは防止することができる。
【0029】
図4は、本発明の実施例に係る方法により製造されたライナーのサンプル写真であり、
図5は、本発明の実施例及び比較例に従って製造されたライナーサンプルのイオン伝導度の測定結果を示すグラフである。
図6は、実施例に係る方法により製造されたライナーサンプルをノズル本体の内壁に配設した状態を示す横断面の写真である。
実施例に係るライナーサンプルは、固体粉末状態の酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)に焼結添加剤としてBi
2O
3(実施例1)、Al
2O
3(実施例2)、Fe
2O
3(実施例3)のそれぞれを混合し、黒鉛(C)を添加することなく製造した。このとき、Bi
2O
3は、5mol%、Al
2O
3は、10mol%、Fe
2O
3は、5mol%含有するように添加した。そして、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)と焼結添加剤が混合された粉末を成形した後、摂氏950度(950℃)の温度において3時間かけて焼成して、ライナー試片を製造し、これに対する酸素イオン伝導度を測定した。
【0030】
そして、比較例として、酸化カルシウム(CaO)安定化ジルコニア(CSZ)に焼結添加剤を混合することなく、同じ条件である摂氏950度(950℃)の温度において3時間かけて焼成して、ライナー試片を製造し、これに対する酸素イオン伝導度を測定した。
比較例に係るライナーサンプルの場合、相対密度が40%のレベルに未焼結圧縮状態に保たれているが、実施例1に係るライナーサンプルの場合、相対密度が69%のレベルと高く、イオン伝導度は摂氏1500度(1500℃)において0.27S/cmと高い。
【0031】
図5に示したとおり、第1から第3の実施例及び比較例に係るライナーは、測定温度の上昇に従って、イオン伝導度が増加する傾向を示す。このとき、測定温度が1300℃を超える温度からは、第1から第3の実施例に係るライナーのイオン伝導度が比較例に比べて大きい。特に、ライナーは、鋳片の鋳造中の酸素イオン伝導度が重要であるが、鋳造温度である1500℃以上において、第1から第3の実施例に係るライナーの酸素イオン伝導度が比較例に比べて大きく、そして、鋳造温度である1500℃以上においては、第1の実施例(Bi
2O
3)、第2の実施例(Al
2O
3)、第3の実施例(FeO
3)、比較例の順に酸素イオン伝導度が大きいということが分かる。
【0032】
以下では、本発明の実施例に係るノズルを製造方法について説明する。
本発明の実施例に係るノズルは、浸漬ノズル40を形成するための原料を用意する過程と、浸漬ノズル40を形成するための成形型に原料を注入し且つ加圧して成形体を形成する過程と、成形体を焼成して浸漬ノズル40を形成する過程と、を含む。
原料を用意する過程は、ノズル本体41を形成するための原料と、ライナー43を形成するための原料と、を用意する過程を含む。
【0033】
原料が用意されれば、成形型にそれぞれの原料を注入して、浸漬ノズル40の成形体を形成する。このとき、成形型の内部に円筒状の芯材を嵌入し、ライナー43を形成するためのスペーサーを芯材の外側に離れるように嵌入してもよい。そして、スペーサーと芯材との間にはライナー43を形成するための原料を注入し、スペーサーと成形型との間にはノズル本体41を形成するための原料を注入する。次いで、スペーサーを取り外した後、成形型の内部に注入された原料を加圧して、浸漬ノズル40を形成するための成形体を形成する。
次いで、成形型から成形体を取り出し、焼成炉において成形体を約1000℃以下の温度において焼成して、浸漬ノズル40を製造する。