特許第6815523号(P6815523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815523重質芳香族化合物からベンゼンおよびキシレン類を製造するための統合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815523
(24)【登録日】2020年12月24日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】重質芳香族化合物からベンゼンおよびキシレン類を製造するための統合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20210107BHJP
   C07C 5/29 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 7/08 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 5/13 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 6/00 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20210107BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20210107BHJP
   B01J 29/00 20060101ALN20210107BHJP
   B01J 29/70 20060101ALN20210107BHJP
   C01B 39/00 20060101ALN20210107BHJP
   C01B 39/46 20060101ALN20210107BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   C07C7/04
   C07C5/29
   C07C15/04
   C07C15/08
   C07C7/08
   C07C5/13
   C07C6/00
   C07C9/06
   C07C9/08
   C07C11/04
   C07C11/06
   !B01J29/00 Z
   !B01J29/70 Z
   !C01B39/00
   !C01B39/46
   !C07B61/00 300
【請求項の数】27
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-536120(P2019-536120)
(86)(22)【出願日】2018年1月3日
(65)【公表番号】特表2020-503347(P2020-503347A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】US2018012129
(87)【国際公開番号】WO2018129005
(87)【国際公開日】20180712
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】15/826,117
(32)【優先日】2017年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/442,124
(32)【優先日】2017年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】アブダワウド,ラエド,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ゾンリン
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−516978(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0281750(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0065768(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/025077(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0046544(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0228066(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/003611(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104557434(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/04
C07C 5/13
C07C 5/29
C07C 6/00
C07C 7/08
C07C 9/06
C07C 9/08
C07C 15/04
C07C 15/08
B01J 29/00
B01J 29/70
C01B 39/00
C01B 39/46
C07B 61/00
C07C 11/04
C07C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための重質改質油処理システムであって、前記重質改質油処理システムが、
供給流を受け取るように機能する改質油スプリッターであって、前記供給流が重質改質油を含み、前記改質油スプリッターがさらにベンゼン、トルエン、およびC8+芳香族生成物を生成するように機能し、前記C8+芳香族生成物がキシレンスプリッターに提供される、改質油スプリッターと;
前記キシレンスプリッターからC8芳香族生成物を受け取り、パラ−キシレンを含む第1のキシレン生成物と、オルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物とを生成するように機能する、パラ−キシレン分離装置と;
前記キシレンスプリッターからC10+芳香族生成物を受け取り、第1の脱アルキル化生成物を生成するように機能する第1の脱アルキル化反応器であって、前記第1の脱アルキル化反応器がさらに、
前記C10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成するか、または
水素の不在下で前記C10+芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能する、第1の脱アルキル化反応器と;
前記キシレンスプリッターからC9芳香族生成物を受け取り、第2の脱アルキル化生成物を生成するように機能する第2の脱アルキル化反応器であって、前記第2の脱アルキル化反応器がさらに、
前記C9芳香族生成物および水素からアルカンを生成するか;または
水素の不在下で前記C9芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能し、
前記第2の脱アルキル化反応器から前記第2の脱アルキル化生成物を受け取り、トランスアルキル化生成物を生成するように機能するトランスアルキル化反応器であって、前記トランスアルキル化反応器がさらに、
前記第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成するか;または
水素の不在下で前記第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成するように機能する、トランスアルキル化反応器と
を含む、重質改質油処理システム。
【請求項2】
前記供給流が前記トランスアルキル化生成物および前記第1の脱アルキル化生成物をさらに含む、請求項1に記載の重質改質油処理システム。
【請求項3】
前記トランスアルキル化反応器がさらに、キシレンの異性化を実施してパラ−キシレンの形成を促進するように機能する、請求項1、または2に記載の重質改質油処理システム。
【請求項4】
アルカンおよび未反応の水素を前記第1の脱アルキル化反応器、前記第2の脱アルキル化反応器、および前記トランスアルキル化反応器から受け取るように機能する、圧力スイング吸着(PSA)ユニットを含む、求項1、2、または3に記載の重質改質油処理システム。
【請求項5】
前記第1の脱アルキル化反応器がさらに、前記PSAユニットから回収した水素を受け取るように機能する、請求項4に記載の重質改質油処理システム。
【請求項6】
前記トランスアルキル化反応器がさらに、前記PSAユニットから回収した水素を受け取るように機能する、請求項4に記載の重質改質油処理システム。
【請求項7】
C9/C10+スプリッターを前記トランスアルキル化反応器から下流に含み、前記C9/C10+スプリッターが、前記トランスアルキル化反応器から前記トランスアルキル化生成物の一部を受け取りC9芳香族化合物流およびC10+芳香族化合物流を生成するように機能する、求項1、2、3、4、5、または6に記載の重質改質油処理システム。
【請求項8】
前記トランスアルキル化反応器がさらに、前記C9/C10+スプリッターによって生成された前記C9芳香族化合物流を受け取るように機能する、請求項7に記載の重質改質油処理システム。
【請求項9】
前記第1の脱アルキル化反応器がさらに、前記C9/C10+スプリッターによって生成された前記C10+芳香族化合物流を受け取るように機能する、請求項7に記載の重質改質油処理システム。
【請求項10】
前記トランスアルキル化反応器がさらに、前記改質油スプリッターによって生成されたトルエンを受け取るように機能する、求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の重質改質油処理システム。
【請求項11】
前記第2の脱アルキル化反応器がさらに、前記キシレンスプリッターによって生成されたオルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物を受け取るように機能する、求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に記載の重質改質油処理システム。
【請求項12】
前記アルカンがエタンおよびプロパンを含む、求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11に記載の重質改質油処理システム。
【請求項13】
前記オレフィンがエチレンおよびプロピレンを含む、求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の重質改質油処理システム。
【請求項14】
重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための方法であって、前記方法が、
改質油スプリッターで供給流を受け取り、前記供給流が重質改質油を含むことと;
前記改質油スプリッターを運転してベンゼン、トルエン、およびC8+芳香族化合物を前記供給流から生成することと;
キシレンスプリッターを運転して前記C8+芳香族化合物を受け取り、C8芳香族化合物、C9芳香族化合物、およびC10+芳香族化合物を生成することと;
パラ−キシレン分離装置を運転して前記C8芳香族化合物を前記キシレンスプリッターから受け取り、パラ−キシレンを含む第1のキシレン生成物と、オルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物とを生成することと;
第1の脱アルキル化反応器を運転して前記C10+芳香族化合物を前記キシレンスプリッターから受け取り、前記第1の脱アルキル化生成物を生成することと;
前記C9芳香族化合物を前記キシレンスプリッターから受け取るように機能する第2の脱アルキル化反応器を運転して第2の脱アルキル化生成物を生成することと;
トランスアルキル化反応器を運転して前記第2の脱アルキル化生成物を前記第2の脱アルキル化反応器から受け取り、前記トランスアルキル化生成物を生成することと
を含む、方法。
【請求項15】
前記第1の脱アルキル化反応器を運転して前記C10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成することと;
前記第2の脱アルキル化反応器を運転して前記C9芳香族生成物および水素からアルカンを生成することと;
前記トランスアルキル化反応器を運転して前記第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成することと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカンがエタンおよびプロパンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
圧力スイング吸着法(PSA)ユニットを運転してアルカンおよび未反応の水素を前記第1の脱アルキル化反応器、前記第2の脱アルキル化反応器、および前記トランスアルキル化反応器から受け取ることを含む、請求項14、15、または16に記載の方法。
【請求項18】
C9/C10+スプリッターを前記トランスアルキル化反応器の下流で運転して前記トランスアルキル化生成物の一部を前記トランスアルキル化反応器から受け取り、C9芳香族化合物流およびC10+芳香族化合物流を生成することを含む、請求項14、15、16、または17に記載の方法。
【請求項19】
前記トランスアルキル化反応器を運転して、前記C9/C10+スプリッターによって生成された前記C9芳香族化合物流を受け取ることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の脱アルキル化反応器を運転して、前記C9/C10+スプリッターによって生成された前記C10+芳香族化合物流を受け取ることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の脱アルキル化反応器を運転して、前記キシレンスプリッターによって生成された前記オルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物を受け取ることを含む、請求項14、15、16、17、18、19、または20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の脱アルキル化反応器を運転して水素の不在下で前記C10+芳香族生成物からオレフィンを生成することと;
前記第2の脱アルキル化反応器を運転して水素の不在下で前記C9芳香族生成物からオレフィンを生成することと;
前記トランスアルキル化反応器を運転して水素の不在下で前記第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成することと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記オレフィンがエチレンおよびプロピレンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記トランスアルキル化反応器を運転して、キシレンの異性化を行ってパラ−キシレンの形成を促進することを含む、請求項14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23に記載の方法。
【請求項25】
メチルエチルベンゼンおよびトリ−メチルベンゼンを含有する重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための重質改質油処理システムであって、前記重質改質油処理システムが、
重質改質油供給物から分離されたC10+芳香族生成物を受け取るように機能する第1の脱アルキル化反応器であって、前記第1の脱アルキル化反応器がベンゼンを含む第1の脱アルキル化生成物を生成するように機能する、第1の脱アルキル化反応器と;
重質改質油供給物から分離されたC9芳香族生成物を受け取るように機能する第2の脱アルキル化反応器であって、前記第2の脱アルキル化反応器がベンゼンおよびトルエンを含む第2の脱アルキル化生成物を生成するように機能する、第2の脱アルキル化反応器と:
前記第2の脱アルキル化反応器から前記第2の脱アルキル化生成物を受け取り、ベンゼン、トルエン、およびキシレンを含む、トランスアルキル化生成物を生成するように機能するトランスアルキル化反応器であって、前記トランスアルキル化反応器がさらに混合キシレン供給物を受け取り、キシレンの異性化を行うように機能する、トランスアルキル化反応器と
を含む、重質改質油処理システム。
【請求項26】
前記第1の脱アルキル化反応器がさらに、前記C10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成するように機能し、
前記第2の脱アルキル化反応器がさらに、前記C9芳香族生成物および水素からアルカンを生成するように機能し、かつ
前記トランスアルキル化反応器がさらに、前記第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成するように機能する、請求項25に記載の重質改質油処理システム。
【請求項27】
前記第1の脱アルキル化反応器がさらに、水素の不在下で前記C10+芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能し、
前記第2の脱アルキル化反応器がさらに、水素の不在下で前記C9芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能し、
前記トランスアルキル化反応器がさらに、水素の不在下で前記第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成するように機能する、請求項25に記載の重質改質油処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に重質改質油の処理に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、重質改質油からのパラ−キシレンおよびベンゼンの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学精製業者は、重質改質油流の利用に関する問題に直面している。政府による環境規制および世界中の地域がガソリン燃料中の芳香族化合物(C6+)含有量を制限している。ガソリン精製業者およびブレンダーは、自動車燃料のオクタン価およびアンチノック性を向上させるために、前記C6−8 BTEX成分(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン類)を含むC6+芳香族化合物を伝統的に使用している。
【0003】
自動車燃料用途がBTEX成分の主な消費先ではあるが、BTEX生成物のそれぞれには、自動車燃料以外にその使用のための代替市場がある。ベンゼンは、多くの化学および溶媒和プロセスに広く使用される前駆体である。トルエンおよびエチルベンゼンもまた、化学および重合プロセスにおける反応体および前駆体でもある。キシレン(C10)の3つの異性体、パラ−キシレン(p−キシレン)、メタ−キシレン(m−キシレン)、およびオルト−キシレン(o−キシレン)は、すべて価値のある石油化学原料である。混合キシレンが接触改質中に生じる場合、3つの異性体間の熱力学的平衡関係のために、商業的価値の低いm−キシレンがp−キシレンまたはo−キシレンよりも多量に生じる。しかし、市場の需要は現在p−キシレンが人気であり、o−キシレンが離れてそれに続く。
【0004】
ナフサ接触改質からの底部生成物である改質油、およびエチレン分解の副生成物である熱分解ガソリン(「パイガス」)は、これらの化合物の通常の供給源である。価値のあるBTEX成分を改質油およびパイガスから抽出することにより重質改質油が残り、これには主にC9+アルキル芳香族化合物が含まれる(以前に分離されていなければパイガスはジオレフィンも含有することがある)。重質改質油は、ナフサからより多くの水素、アルカンおよびオレフィンを生成するためにこれらのプロセスをより高い過酷度(すなわち、温度)で運転することからも形成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の芳香族化合物の処理としては、重質改質油(例えば接触ナフサ改質油)またはストリームクラッカー(stream cracker)熱分解ガソリンからのベンゼン、トルエン、およびキシレン(BTX)の抽出が挙げられる。BTX抽出からのC9+留分は、さらなるBTXを生成するために部分的にトランスアルキル化に送られ、C9+芳香族化合物のより重質な部分、例えばC10+芳香族化合物などは排除される。BTX抽出から抽出されたキシレンは、一般にパラ−キシレン分離工程(混合キシレン流からの吸着または結晶化のいずれか)に向けられ、その後、残りのキシレン異性体およびエチルベンゼンは、独立型のキシレン異性化反応器に送られてキシレンの熱力学的平衡を再確立し、その過程でパラ−キシレンを形成する。ベンゼンは一般に抽出プロセスによって生成され、トルエンの不均化、熱的脱アルキル化、または水添脱アルキル化によって、キシレンを用いて生成され得る。したがって、従来の芳香族化合物の処理は、一般に、ベンゼンを専用の反応において形成するために独立型のキシレン異性化反応器およびC10+芳香族化合物の排除またはトルエンの脱アルキル化を含む。そのような従来の処理は、新鮮または改質油から抽出したトルエンをC9トランスアルキル化プロセスに供給すること(例えば、キシレン収率を最適化するために新鮮なトルエンを添加すること)も含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
有利には、本開示の実施形態は、ベンゼンおよびパラ−キシレンの製造を最大にするために、すべての芳香族炭化水素(C10+芳香族化合物を含む)を使用する。さらに、本開示の実施形態は、有利には、処理条件および脱アルキル化反応器、トランスアルキル化反応器または両方の構成を変えることによって、アルカンの代わりにオレフィンの製造を可能にする。さらに、本開示の実施形態は、例えば一つの反応器内(すなわち、一つのプロセス段階)でC9トランスアルキル化とキシレン異性化を組み合わせることによって、ベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するために使用される反応行程を最小限にする。
【0007】
一実施形態では、重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための重質改質油処理システムが提供される。このシステムには、供給流を受け取るように機能する改質油スプリッターが含まれる。供給流には、重質改質油が含まれ、改質油スプリッターはさらに、ベンゼン、トルエン、およびC8+芳香族生成物を生成するように機能する。C8+芳香族生成物はキシレンスプリッターに供給される。このシステムには、キシレンスプリッターからC8芳香族生成物を受け取り、パラ−キシレンを含む第1のキシレン生成物と、オルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物とを生成するように機能するパラ−キシレン分離装置がさらに含まれる。このシステムにはまた、キシレンスプリッターからC10+芳香族生成物を受け取り、第1の脱アルキル化生成物を生成するように機能する第1の脱アルキル化反応器が含まれる。第1の脱アルキル化反応器はさらに、C10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成するか、または水素の不在下で、C10+芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能する。このシステムにはまた、キシレン分離装置からC9芳香族生成物を受け取り、第2の脱アルキル化生成物を生成するように機能する第2の脱アルキル化反応器が含まれる。第2の脱アルキル化反応器はさらに、C9芳香族生成物および水素からアルカンを生成し、水素の不在下で、C9芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能する。このシステムには、さらに、第2の脱アルキル化反応器から第2の脱アルキル化生成物を受け取り、トランスアルキル化生成物を生成するように機能するトランスアルキル化反応器が含まれる。トランスアルキル化反応器はさらに、第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成するか、または水素の不在下で第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成するように機能する。
【0008】
一部の実施形態では、供給流には、トランスアルキル化生成物および第1の脱アルキル化生成物が含まれる。一部の実施形態では、トランスアルキル化反応器はさらに、パラ−キシレンの形成を促進するためのキシレンの異性化を行うように機能する。一部の実施形態では、このシステムには、第1の脱アルキル化反応器、第2の脱アルキル化反応器、およびトランスアルキル化反応器からアルカンおよび未反応の水素を受け取るように機能する圧力スイング吸着(PSA)ユニットが含まれる。一部の実施形態では、第1の脱アルキル化反応器はさらに、PSAユニットから回収した水素を受け取るように機能する。一部の実施形態では、トランスアルキル化反応器はさらに、PSAユニットから回収した水素を受け取るように機能する。一部の実施形態では、このシステムには、トランスアルキル化反応器の下流にC9/C10+スプリッターが含まれる。C9/C10+スプリッターは、トランスアルキル化反応器からトランスアルキル化生成物の一部を受け取り、C9芳香族化合物流およびC10+芳香族化合物流を生成するように機能する。一部の実施形態では、トランスアルキル化反応器はさらに、C9/C10+スプリッターによって生成されたC9芳香族化合物流を受け取るように機能する。一部の実施形態では、第1の脱アルキル化反応器はさらに、C9/C10+スプリッターによって生成されたC10+芳香族化合物流を受け取るように機能する。一部の実施形態では、トランスアルキル化反応器はさらに、改質油スプリッターによって生成されたトルエンを受け取るように機能する。一部の実施形態では、第2の脱アルキル化反応器はさらに、キシレンスプリッターによって生成されたオルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物を受け取るように機能する。一部の実施形態では、アルカンにはエタンおよびプロパンが含まれる。一部の実施形態では、オレフィンにはエチレンおよびプロピレンが含まれる。
【0009】
別の実施形態では、重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための方法が提供される。この方法には、改質油スプリッターで供給流を受け取ることが含まれる。供給流には重質改質油が含まれ、改質油スプリッターを運転してベンゼン、トルエン、およびC8+芳香族生成物を供給流から生成する。この方法には、キシレンスプリッターを運転してC8+芳香族化合物を受け取り、C8芳香族化合物、C9芳香族化合物、およびC10+芳香族化合物を生成し、パラ−キシレン分離装置を運転してC8芳香族化合物をキシレンスプリッターから受け取り、パラ−キシレンを含む第1のキシレン生成物と、オルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物を生成することも含まれる。この方法にはさらに、第1の脱アルキル化反応器を運転してC10+芳香族化合物をキシレン分離装置から受け取り、第1の脱アルキル化生成物を生成すること、キシレン分離装置からC9芳香族化合物を受け取るように機能する第2の脱アルキル化反応器を運転して第2の脱アルキル化生成物を生成すること、およびトランスアルキル化反応器を運転して第2の脱アルキル化生成物を第2の脱アルキル化反応器から受け取り、トランスアルキル化生成物を生成することが含まれる。
【0010】
一部の実施形態では、この方法には、第1の脱アルキル化反応器を運転してC10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成すること、第2の脱アルキル化反応器を運転してC9芳香族生成物および水素からアルカンを生成すること、およびトランスアルキル化反応器を運転して第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成することが含まれる。一部の実施形態では、アルカンにはエタンおよびプロパンが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、圧力スイング吸着(PSA)ユニットを運転してアルカンおよび未反応の水素を第1の脱アルキル化反応器、第2の脱アルキル化反応器、およびトランスアルキル化反応器から受け取ることが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、C9/C10+スプリッターをトランスアルキル化反応器の下流で運転して、トランスアルキル化反応器からトランスアルキル化生成物の一部を受け取り、C9芳香族化合物流およびC10+芳香族化合物流を生成することが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、トランスアルキル化反応器を運転して、C9/C10+スプリッターによって生成されたC9芳香族化合物流を受け取ることが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、第1の脱アルキル化反応器を運転して、C9/C10+スプリッターによって生成されたC10+芳香族化合物流を受け取ることが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、第2の脱アルキル化反応器を運転して、キシレンスプリッターによって生成されたオルト−キシレンおよびメタ−キシレンを含む第2のキシレン生成物を受け取ることも含まれる。一部の実施形態では、この方法にはさらに、第1の脱アルキル化反応器を運転して水素の不在下でC10+芳香族生成物からオレフィンを生成すること、第2の脱アルキル化反応器を運転して水素の不在下でC9芳香族生成物からオレフィンを生成すること、およびトランスアルキル化反応器を運転して水素の不在下で第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成することが含まれる。一部の実施形態では、オレフィンにはエチレンおよびプロピレンが含まれる。一部の実施形態では、この方法には、トランスアルキル化反応器を運転して、パラ−キシレンの形成を促進するためのキシレンの異性化を行うことが含まれる。
【0011】
別の実施形態では、メチルエチルベンゼンおよびトリ−メチルベンゼンを含有する重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための改質油処理システムが提供される。この方法には、重質改質油供給物から分離されたC10+芳香族生成物を受け取るように機能する第1の脱アルキル化反応器が含まれる。第1の脱アルキル化反応器は、ベンゼンを含む第1の脱アルキル化生成物を生成するように機能する。一部の実施形態では、このシステムには、重質改質油供給物から分離されたC9芳香族生成物を受け取るように機能する第2の脱アルキル化反応器が含まれる。第2の脱アルキル化反応器は、ベンゼンおよびトルエンを含む第2の脱アルキル化生成物を生成するように機能する。一部の実施形態では、このシステムには、第2の脱アルキル化反応器から第2の脱アルキル化生成物を受け取り、ベンゼン、トルエン、およびキシレンを含むトランスアルキル化生成物を生成するように機能するトランスアルキル化反応器が含まれる。トランスアルキル化反応器はさらに、混合キシレン供給物を受け取り、キシレンの異性化を行うように機能する。
【0012】
一部の実施形態では、第1の脱アルキル化反応器はさらに、C10+芳香族生成物および水素からアルカンを生成するように機能し、第2の脱アルキル化反応器はさらに、C9芳香族生成物および水素からアルカンを生成するように機能し、トランスアルキル化反応器はさらに、第2の脱アルキル化生成物および水素からアルカンを生成するように機能する。一部の実施形態では、第1の脱アルキル化反応器はさらに、水素の不在下でC10+芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能し、第2の脱アルキル化反応器はさらに、水素の不在下でC9芳香族生成物からオレフィンを生成するように機能し、トランスアルキル化反応器はさらに、水素の不在下で第2の脱アルキル化生成物からオレフィンを生成するように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態に従う重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための脱アルキル化−トランスアルキル化プロセスのプロセスフロー図である。
図2】本開示の別の実施形態に従う重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための脱アルキル化−トランスアルキル化プロセスのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示はこれから本開示の実施形態を例示する添付の図面を参照してより十分に説明される。しかし、本開示は多くの異なる形態で具体化されてもよく、例示された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示は徹底的かつ完全となり、本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように提供される。
【0015】
本開示の実施形態には、重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンの生成を最大化するためのシステムおよびプロセスが含まれる。ベンゼンおよびパラ−キシレンを重質改質油から生成するためのそのような統合プロセスおよびシステムには、3つの反応器(「段階」とも呼ばれる):C9脱アルキル化反応器、トランスアルキル化/異性化反応器(すなわち、トランスアルキル化と異性化反応の両方を提供するように動作する反応器)、およびC10+脱アルキル化反応器が含まれ得る。一部の実施形態では、C9芳香族化合物(例えば、トリメチルベンゼン(TMB))および水素は、トルエン、未変換C9芳香族化合物、および軽質ガス(例えば、エタンおよびプロパンなどの軽質アルカン、ならびに未反応水素)を生成するために、C9脱アルキル化反応器に供給され得る。C9脱アルキル化反応器からのトルエンおよび未変換C9芳香族化合物と水素は、キシレンの生成を最大化するための反応条件下で、BTX、C9芳香族化合物、C10+芳香族化合物、および軽質ガス(例えば、軽質アルカンおよび未反応水素)を生成するために、トランスアルキル化/異性化反応器に供給され得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器は、C8芳香族化合物(すなわち、キシレン異性体)パラ−キシレンの熱力学的平衡を再確立するために、パラ−キシレン分離装置から受け取ったパラ−キシレンを含まない混合キシレンを異性化してもよい。C10+芳香族化合物および水素は、BTX、C9芳香族化合物、未変換C10+芳香族化合物、および軽質ガス(例えば、軽質アルカンおよび未反応水素)を生成するために、C10+脱アルキル化反応器に供給され得る。C9脱アルキル化反応器、トランスアルキル化/異性化反応器、およびC10+脱アルキル化反応器から生成された軽質ガス(例えば、軽質アルカンおよび未反応水素)は、水素の回収および回収した水素の反応器への再循環のために圧力スイング吸着(PSA)ユニットに供給される。トランスアルキル化/異性化反応器、およびC10+脱アルキル化反応器からのBTXは、改質油スプリッターに再循環させて、ベンゼンおよびトルエンを回収し、次いで下流のパラ−キシレン分離装置からパラキシレンを回収し得る。
【0016】
一部の実施形態では、本開示に記載される3反応器(または「段階」)を用いてベンゼンおよびパラ−キシレンを重質改質油から生成するための統合プロセスおよびシステムは、アルカンの代わりにオレフィンを生成するように構成され得る。そのような実施形態では、C9脱アルキル化反応器、トランスアルキル化/異性化反応器、およびC10+脱アルキル化反応器を水素の不在下で運転して、アルカンおよび未回収水素の代わりにオレフィンを生成し得る。例えば、そのような実施形態では、C9芳香族化合物(例えば、TMB)は、C9脱アルキル化反応器に供給されて、トルエン、未変換C9芳香族化合物、およびオレフィン(例えば、エチレンおよびプロピレンなどの軽質オレフィン)を生成し得る。C9脱アルキル化反応器からのトルエンおよび未変換C9芳香族化合物は、トランスアルキル化/異性化反応器に供給されて、キシレン生成を最大化するための反応条件下でBTX、C9芳香族化合物、C10+芳香族化合物、およびオレフィンを生成し得る。C10+芳香族化合物は、C10+脱アルキル化反応器に供給されて、BTX、C9芳香族化合物、未変換C10+芳香族化合物、およびオレフィンを生成し得る。そのような実施形態では、脱アルキル化反応器は、水素を用いない運転およびオレフィンの生成のために適切な触媒を用いて構成されてもよい。さらに、そのような実施形態では、統合プロセスおよびシステムは、PSAユニットおよび水素の回収を省略してもよい。
【0017】
C10+脱アルキル化反応器で処理するためにC10+芳香族化合物をC9脱アルキル化およびトランスアルキル化プロセスから連続して除去すると、コーク前駆体が存在しないためにC9脱アルキル化およびトランスアルキル化触媒の寿命を増加させる。さらに、C10+脱アルキル化反応器は、BTXの生成を可能にするように構成され得る。そのような実施形態では、トルエンは、BTXから分離され、トランスアルキル化/異性化反応器に供給され得る。さらに、キシレン異性化は、トランスアルキル化/異性化反応器内で行われ、別個のトランスアルキル化反応器を排除する。その結果、C9+芳香族化合物は、C9脱アルキル化およびトランスアルキル化プロセスおよびC10+脱アルキル化プロセスを介してベンゼンおよび混合キシレンを生成するために完全に利用され得る。
【0018】
本開示で使用される用語「混合キシレン」とは、3つすべてのキシレン異性体:パラ−キシレン、オルト−キシレン、およびメタ−キシレンの混合物をさす。本開示で使用されるように、用語「パラ−キシレンを含まない混合キシレン」とは、オルト−キシレンおよびメタ−キシレンの2つのキシレン異性体の混合物をさす。
【0019】
一部の実施形態では、本開示に記載のC10+脱アルキル化反応器の運転条件は、生成物の組成に影響を与えるために(例えば、C10+芳香族化合物からのキシレン生成を最大にするために)変更されてもよい。上記C10+脱アルキル化反応器に供給され得る例となるC10+芳香族化合物流を表1に示す。
【表1】
表1:例となるC10+芳香族化合物流の組成
【0020】
表1に示されるように、ジメチルエチルベンゼン(DMEB)は例となるC10+芳香族化合物流で最も豊富に存在する化合物であり、16重量%から50重量%の間の範囲である。次に豊富に存在する化合物は、テトラメチルベンゼンであり、15重量%から35重量%の間の範囲である。したがって、脱アルキル化反応中にどれだけ多くのアルキル基が取り除かれるかに応じて、C10+脱アルキル化反応器の運転条件および反応範囲を変化させてベンゼン生成またはキシレン生成を最大にすることができる。さらに、図2に例示し、さらに後述するように、C10+芳香族化合物分子に結合した多数のエチル基と、それよりも少数のプロピル基は、脱アルキル化反応が水素の不在下で行われると、エチレンおよびプロピレンなどのオレフィンを容易に形成することができ得る。
【0021】
有利には、C10+脱アルキル化反応器の追加は、C10+脱アルキル化反応器を用いない先行技術のプロセスよりも混合キシレンの収率を増加させ得る。C10+脱アルキル化反応器の追加も同様に、C10+脱アルキル化反応器を用いない先行技術のプロセスよりもベンゼンの収率を増加させ得る。表2は、重質改質油の380キロトン毎年(KTA)の供給量およびトンで表される年間生成物流量に基づく、C10+脱アルキル化反応器を用いない、例となるベンゼンおよびキシレン生成プロセスからの生成物(「ケース1」)、およびC10+脱アルキル化反応器を用いる、例となるベンゼンおよびキシレン生成プロセス(「ケース2」)を示す。
【表2】
表2:C10+脱アルキル化反応器を用いるまたは用いない例となるプロセスからの収率
【0022】
表2に示されるように、混合キシレン収率およびベンゼン収率は、C10+脱アルキル化反応器の追加後に増加した。
【0023】
ベンゼン、パラ−キシレン、およびアルカンの生成
【0024】
図1は、本開示の一実施形態に従う重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための、3反応器脱アルキル化およびトランスアルキル化システムの実施形態のための統合プロセス100を示す。図1に示されるように、プロセス100には、改質油スプリッター102、キシレンスプリッター104、パラ−キシレン分離装置106、ならびにキシレンおよびトルエン不均化ユニット108が含まれる。図1に示されるプロセス100にはまた、C9脱アルキル化反応器110、圧力スイング吸着(PSA)ユニット112、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116が含まれる。一部の実施形態では、プロセス100には、トランスアルキル化/異性化反応器114の下流にC9/C10+スプリッター118が含まれてもよい。 後述するように、プロセス100には、改質油供給物を処理し、ベンゼン、パラ−キシレン、およびアルカンを改質油供給物から生成するための3つの反応器:C9脱アルキル化反応器110、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116が含まれる。
【0025】
プロセス100は、C10+脱アルキル化反応器116内でのC10+芳香族化合物の分離処理を含み、C10+芳香族化合物の排除を回避する。さらに、C10+芳香族化合物の分離処理は、C9脱アルキル化およびトランスアルキル化プロセスならびにそれぞれの反応器110および114からC10+芳香族化合物を取り除き、したがってC9脱アルキル化反応器110およびトランスアルキル化/異性化反応器114の反応器サイズの縮小を可能にする。さらに、キシレン異性化およびトランスアルキル化プロセスは、トランスアルキル化/異性化反応器114内で実行されるので、別個の異性化反応器を排除する。さらに、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成され、C9/C10+スプリッター118によって分離された、TMBに富むC9芳香族化合物は、トランスアルキル化/異性化反応器114の入口へ再循環され得、C9脱アルキル化反応器110の反応器サイズのさらなる縮小を可能にする。
【0026】
図1に示されるように、プロセス100の供給流120は、典型的なナフサ接触改質装置からの改質油と、トランスアルキル化/異性化反応器114およびC10+脱アルキル化反応器116からの再循環生成物流122の複合流であってもよい。他の実施形態では、供給流120は、水蒸気分解炉からの熱分解ガソリンと、トランスアルキル化/異性化反応器114およびC10+脱アルキル化反応器116からの再循環生成物流122の複合流であってもよい。
【0027】
図1に示されるように、供給流120は、改質油スプリッター102に供給される。改質油スプリッター102は、供給流120からベンゼン124とトルエン126の生成物流を分離し生成し得る。理解されるように、改質油スプリッター102には、ベンゼンおよびトルエンを供給流120から抽出するために適した分離プロセスが含まれ得る。例えば、改質油スプリッター102には、溶媒抽出法を用いるベンゼンの抽出および分画カラムを用いるトルエンの分離が含まれ得る。改質油スプリッター102からのトルエン流126放出は、トルエン不均化ユニット108に供給され得る。トルエン不均化ユニット108はトルエン流126をベンゼンおよびキシレンに変換することができ、それは一部の実施形態では、改質油スプリッター102に供給され得る(例えば、再循環生成物流204に示される通り)。一部の実施形態では、改質油スプリッター102からのトルエン放出の一部128は、さらに後述するように、トランスアルキル化効率を改善するために、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。改質油スプリッター102は、飽和液体炭化水素(例えば、ナプテン(napthenes)およびパラフィン)も取り除き得る。改質油スプリッター102からのC8+芳香族化合物130放出は、キシレンスプリッター104に供給され得る。
【0028】
キシレンスプリッター104は、改質油スプリッター102から受け取ったC8+芳香族化合物流130からC8芳香族化合物132(例えば(キシレンおよびエチルベンゼン)、C9芳香族化合物134、およびC10+芳香族化合物を分離し得る。例えば、キシレンスプリッターは、カラムの上部からのC8芳香族化合物132、カラムの側流からのC9芳香族化合物134、およびカラムの底部からのC10+芳香族化合物136を分離し得る。図1に示されるように、C8芳香族化合物132は、パラ−キシレン分離装置106に供給され得、C9芳香族化合物134は、C9脱アルキル化反応器110に供給され得、C10+芳香族化合物136は、C10+脱アルキル化反応器116に供給され得る。
【0029】
パラ−キシレン分離装置106は、改質油スプリッター102から受け取ったC8芳香族化合物流132から、パラ−キシレン138およびパラ−キシレンを含まない混合キシレン140(すなわち、オルト−キシレンおよびメタ−キシレン類)の生成物流を分離し生成し得る。一部の実施形態では、パラ−キシレン分離装置106は、吸着プロセスまたは結晶化プロセスであってもよい。一部の実施形態では、パラ−キシレン分離装置106によって生成されたパラ−キシレンを含まない混合キシレン流140は、キシレン異性体のC8芳香族化合物の熱力学的平衡を再確立し、さらなるパラ−キシレンの形成を促進するために、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。さらに、またはあるいは、パラ−キシレンを含まない混合キシレン流140の一部142(または、一部の実施形態では全部)は、その後の、キシレンの異性化により適し得る触媒(例えば、より狭い細孔の触媒)での異性化のために、C9脱アルキル化反応器110に供給され得る。
【0030】
後述するように、PSAユニット112は、C9脱アルキル化反応器110、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116から軽質ガス(例えば、軽質アルカンおよび未反応水素)を受け取り得る。PSAユニット112は、反応器によるさらなる使用のために軽質ガスから水素を回収して追加の水素要求量を最小限にし得る。PSAユニット112はまた、加熱源として使用するためにパージされるかまたは回収され得る、水素を含まないガス143(すなわち、反応器110、114、および116から生成されたアルカン)の生成物流も生成し得る。
【0031】
図1に示され、既に考察されたように、C9脱アルキル化反応器110は、キシレンスプリッター104からC9芳香族化合物134を受け取り、トルエン148、未変換C9芳香族化合物150、および軽質ガス146(例えば、エタンおよびプロパン、および未反応水素などの軽質アルカン)の生成物流を生成し得る。図1にも示されるように、C9脱アルキル化反応器110は、PSAユニット112によって回収され、それから放出される水素の水素流144を受け取ってもよい。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110は、水素源から追加の水素145を受け取ってもよい。一部の実施形態では、上記のように、C9脱アルキル化反応器110は、パラ−キシレン分離装置106からのパラ−キシレンを含まない混合キシレン流140放出の一部142(または、一部の実施形態では全部)を受け取ってもよい。C9脱アルキル化反応器110は、メチルエチルベンゼン(MEB)に富むC9芳香族化合物、例えば、エチルトルエン、イソベンゼン、およびプロピルベンゼンの、トルエン、ベンゼン、およびアルカン(例えば、エタンおよびプロパン)への変換を最大にするのに十分な反応条件を達成するように構成され得る。
【0032】
C9脱アルキル化反応器110によって生成された軽質ガス流146は、PSAユニット112に供給され得る。PSAユニット112は、軽質ガス146から水素の生成物流を分離し生成することができ、前述のように、水素流144は、C9脱アルキル化反応器110に再循環させ得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110は、次の条件下で運転し得る:約200℃〜約540℃の範囲内の温度、約10bar〜約50barの範囲内の圧力、約1hr−1〜約20hr−1の範囲内の液体時間速度、および0〜4の範囲内の水素対供給流比。
【0033】
一部の実施形態では、水素による水添脱アルキル化のためのC9脱アルキル化反応器110において使用される触媒は、二元機能触媒を含み得る。C9脱アルキル化反応器110で使用される水添脱アルキル化触媒は、MEBおよび水素をトルエン、ベンゼンおよびアルカンに選択的に変換する能力があり得る。一部の実施形態では、水添脱アルキル化触媒は、適切な反応運転条件で、かなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のMEBを、トルエン、ベンゼン、およびアルカンに変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスの脱アルキル化部分を実施するための適切な市販の水添脱アルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切な水添脱アルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、脱アルキル化段階の運転条件、供給原料組成、MEBに対する水素の比、望ましい変換有効性および効率、脱アルキル化段階の滞留時間、および脱アルキル化段階の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110で使用される触媒には、フッ素化ゼオライト触媒が含まれてもよい。一部の実施形態では、ゼオライト触媒には、触媒の結晶構造に組み込まれた金属イオン(例えば、Ni2+)が含まれ得る。一部の実施形態では、金属イオンには、その他の8族、9族、および10族遷移金属、例えばコバルトおよびパラジウムが含まれ得る。
【0034】
一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110において脱アルキル化を行うために使用される触媒は、パラ−キシレン分離装置106からのパラ−キシレンを含まない混合キシレン流140の一部142(または、一部の実施形態では全部)がC9脱アルキル化反応器110に供給される実施形態におけるキシレン異性化を行う能力もあり得る。C9脱アルキル化反応器110によって生成されたトルエン流148および未変換C9芳香族化合物流150は、下流のトランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110によって形成されたベンゼンも、これらの生成物流とともにトランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。
【0035】
トランスアルキル化/異性化反応器114は、C9脱アルキル化反応器110から液体排出物(すなわち、トルエン流148および未変換C9芳香族化合物流150)を受け取り、BTXおよびC9+芳香族化合物156の生成物流ならびに軽質ガス158(すなわち、軽質アルカンおよび未反応水素)を生成し得る。図1に示されるように、トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、PSAユニット112によって生成された水素152流、およびパラ−キシレン分離装置106によって生成されたパラ−キシレンを含まない混合キシレン流140を受け取り得る。同様に図1に示されるように、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、改質油スプリッター102からトルエンの一部128を受け取り得る。C9/C10+スプリッター118を含む一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114は、C9/C10+スプリッター118によって生成された再循環C9芳香族化合物流154を受け取り得る。
【0036】
トランスアルキル化/異性化反応器114は、未変換TMBに富むC9芳香族化合物およびトルエンのトランスアルキル化を最大にしてキシレンを生成するように構成されてもよい。トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、パラ−キシレンを含まない混合キシレン流140の異性化を行ってC8芳香族化合物の熱力学平衡を再確立し、パラ−キシレンの生成を促進するように構成されてもよい。トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成された軽質ガス流158は、上記のように、水素の回収のためにPSAユニット112に供給され得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114は、次の条件下で運転し得る:約200℃〜約540℃の範囲内の温度、約10bar〜約50barの範囲内の圧力、約1hr−1〜約20hr−1の範囲内の液体時間速度、および0〜4の範囲内の水素対供給流比。
【0037】
トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用されるトランスアルキル化触媒は、TMBおよびトルエンを混合キシレンに選択的に変換する能力があり得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用されるトランスアルキル化触媒は、適切な反応運転条件の存在下で、C9芳香族化合物流中のかなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のTMBを、混合キシレンに変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスのトランスアルキル化部分を実施するための適切な市販のトランスアルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切なトランスアルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、トランスアルキル化運転条件、供給原料組成、TMBに対するトルエンの比、望ましい変換有効性および効率、段階の滞留時間、およびトランスアルキル化触媒を用いるTMBおよびトルエンの混合キシレンへの変換を支持するための第2段階反応器の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用される触媒には、ケイ素、リン、ホウ素、マグネシウム、錫、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ゲルマニウム、インジウム、ランタン、セシウム、およびその任意の酸化物からなる群から選択される活性促進剤を有するベータゼオライトが含まれてもよい。
【0038】
図1に示されるように、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたBTXおよびC9+芳香族化合物流156は、ベンゼンおよびトルエンの回収とそれに続くパラ−キシレン分離装置106を介するパラ−キシレンの回収のために改質油スプリッター102に再循環され得る。他の実施形態では、プロセス100には、トランスアルキル化/異性化反応器114の下流にC9/C10+スプリッター118が含まれてもよい。そのような実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたBTXおよびC9+芳香族化合物流の一部157が、C9/C10+スプリッター118に供給され得る。例えば、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内の反応条件がトランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたC9芳香族化合物の大部分としてTMBをもたらす場合に、C9/C10+スプリッター118が含められ得る。C9/C10+スプリッター118は、C10+芳香族化合物からC9芳香族化合物を分離し、C9芳香族化合物154とC10+芳香族化合物160の生成物流を生成し得る。そのような実施形態では、C9/C10+スプリッター118によって生成されたC9芳香族化合物流154は、トランスアルキル化/異性化反応器114に再循環され得、C9/C10+スプリッター118によって生成されたC10+芳香族化合物流160は、C10+脱アルキル化反応器116に供給され得る。
【0039】
図1に示されるように、C10+脱アルキル化反応器116は、キシレンスプリッター104からC10+芳香族化合物流136および水素流162を受け取り、BTX、C9芳香族化合物、および未変換C10芳香族化合物164の生成物流ならびに軽質ガス166(すなわち、軽質アルカンおよび未回収水素)を生成し得る。代替実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、水蒸気源から水蒸気を受け取り得、水蒸気脱アルキル化プロセスを実施し得る。C9/C10+スプリッター118を含むプロセス100の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、C9/C10+スプリッター118からC10+芳香族化合物流160を受け取ってもよい。C10+脱アルキル化反応器116は、芳香族ベンゼン環に結合したアルキル基を取り除いてベンゼンに富む生成物流を生成するように構成されてもよい。例えば、2つの芳香環をもつ化合物、例えばナフタレンなどは、一方の環が飽和およびクラッキングして軽質ガスおよびベンゼンを生成する。C10+脱アルキル化反応器116によって生成されたBTX、C9芳香族化合物、および未変換C10芳香族化合物流164は、ベンゼンおよびトルエンの回収とそれに続くパラ−キシレン分離装置106を介するパラ−キシレンの回収のために改質油スプリッター102に再循環され得る。C10+脱アルキル化反応器116によって生成された軽質ガス流166は、水素回収のためにPSAユニット112に供給され得る。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、次の条件下で運転し得る:約300℃〜約450℃の範囲内の温度、約10bar〜約40barの範囲内の圧力、約0.5〜約3の範囲内の重量時空間速度(WHSV)、および2〜4の範囲内の水素対供給流比。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、水蒸気脱アルキル化プロセスを実施してもよく、水蒸気および水蒸気脱アルキル化触媒を用いて以下の条件および手順下で運転され得る:最初に約315℃〜約510℃の範囲内の温度で約30〜約180秒の範囲内の時間の間運転し、その時間の間、水蒸気脱アルキル化触媒の活性は、原料芳香族化合物の脱アルキル化生成物へのモル%転化率で測定して、初期活性の約90%未満に低下し得る;水蒸気脱アルキル化触媒の活性が約90%未満に低下した場合に供給芳香族化合物の流れを中断する;そして、水蒸気脱アルキル化触媒を、約315℃〜約510℃の範囲内の温度の水蒸気と接触させて、触媒をその初期活性の約75%まで再生し、脱アルキル化生成物を回収する。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、約480℃〜約550℃の範囲内の温度で運転され得る水蒸気脱アルキル化プロセスを実施することができる。
【0040】
C10+脱アルキル化反応器116内で使用される水添脱アルキル化触媒は、C10+芳香族化合物(例えばDMEBおよびテトラメチルベンゼンなど)および水素をベンゼン、キシレン、およびアルカンに選択的に変換する能力があり得る。一部の実施形態では、水添脱アルキル化触媒は、適切な反応運転条件で、かなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のC10+芳香族化合物を、ベンゼン、キシレン、およびアルカン(例えば、エタンおよびプロパン)に変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスの脱アルキル化部分を実施するための適切な市販の水添脱アルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切な水添脱アルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、脱アルキル化段階の運転条件、供給原料組成、C10+芳香族化合物に対する水素の比、望ましい変換有効性および効率、脱アルキル化段階の滞留時間、および脱アルキル化段階の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116で使用される触媒には、フッ素化ゼオライト触媒が含まれてもよい。一部の実施形態では、ゼオライト触媒には、触媒の結晶構造に組み込まれた金属イオン(例えば、Ni2+)が含まれ得る。一部の実施形態では、金属イオンには、その他の8族、9族、および10族遷移金属、例えばコバルトおよびパラジウムが含まれ得る。
【0041】
ベンゼン、パラ−キシレン、およびオレフィンの生成
【0042】
本開示の実施形態には、水素の不在下でC9脱アルキル化反応器110、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116を運転することによる、アルカンの代わりにオレフィンを生成することも含まれ得る。図2は、重質改質油からベンゼンおよびパラ−キシレンを生成するための、3反応器脱アルキル化およびトランスアルキル化システムの別の実施形態のための統合プロセス200を示す。図2に示される構成では、改質油スプリッター102、キシレンスプリッター104、パラ−キシレン分離装置106、およびトルエン不均化ユニット108は上記のように作動し得る。一部の実施形態では、プロセス200には、トランスアルキル化/異性化反応器114の下流にC9/C10+スプリッター118が含まれてもよい。後述するように、プロセス200には、改質油供給物を処理し、ベンゼン、パラ−キシレン、およびオレフィンを改質油供給物から生成するための3つの反応器:C9脱アルキル化反応器110、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116が含まれる。C9脱アルキル化反応器110、トランスアルキル化/異性化反応器114、およびC10+脱アルキル化反応器116は水素の不在下で動作し、水素の回収は行われないので、プロセス200はPSAユニットを省略してもよい。
【0043】
図2に示されるように、統合プロセス200への供給流202は、典型的な接触ナフサ改質装置からの改質油と、トランスアルキル化/異性化反応器およびC10+脱アルキル化反応器116からの再循環生成物流204の複合流であってもよい。一部の実施形態では、供給流202は、水蒸気分解炉からの熱分解ガソリンと、トランスアルキル化/異性化反応器114およびC10+脱アルキル化反応器116からの再循環生成物流204の複合流であってもよい。
【0044】
図2に示されるように、供給流202は、改質油スプリッター102に供給される。改質油スプリッター102は、供給流202からベンゼン206とトルエン208の生成物流を生成する。改質油スプリッター102からのトルエン208放出は、トルエン不均化ユニット108に供給され得る。一部の実施形態では、改質油スプリッター102からのトルエン流208放出の一部210は、本開示に記載されるように、トランスアルキル化効率を改善するために、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。改質油スプリッター102は、飽和液体炭化水素(例えば、ナプテン(napthenes)およびパラフィン)も取り除き得る。改質油スプリッター102によって生成されたC8+芳香族化合物流212は、キシレンスプリッター104に供給され得る。
【0045】
キシレンスプリッター104は、改質油スプリッター102から受け取ったC8+芳香族化合物流212から、C8芳香族化合物214(例えば(キシレンおよびエチルベンゼン)、C9芳香族化合物216、およびC10+芳香族化合物218を分離し得る。図2に示されるように、C8芳香族化合物流214は、パラ−キシレン分離装置106に供給され得、C9芳香族化合物流216は、C9脱アルキル化反応器110に供給され得、C10+芳香族化合物流218は、C10+脱アルキル化反応器116に供給され得る。
【0046】
パラ−キシレン分離装置106は、改質油スプリッター102から受け取ったC8芳香族化合物214から、パラ−キシレン220およびパラ−キシレンを含まない混合キシレン222(すなわち、オルト−キシレンおよびメタ−キシレン類)の生成物流を分離し生成し得る。パラ−キシレン分離装置106よって生成されたパラ−キシレンを含まない混合キシレン222は、キシレン異性体のC8熱力学的平衡を再確立し、さらなるパラ−キシレンの形成を促進するために、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。さらに、またはあるいは、パラ−キシレンを含まない混合キシレン流222の一部226(または、一部の実施形態では全部)は、その後の、キシレンの異性化により適し得る触媒(例えば、より狭い細孔の触媒)での異性化のために、C9脱アルキル化反応器110に供給され得る。
【0047】
図2に示されるように、C9脱アルキル化反応器110は、キシレンスプリッター104からC9芳香族化合物216を受け取り、水素の不在下で、トルエン228、未変換C9芳香族化合物230、およびオレフィン232の生成物流を生成し得る。一部の実施形態では、上記のように、C9脱アルキル化反応器110は、パラ−キシレン分離装置106からのパラ−キシレンを含まないキシレン222放出の一部226(または、一部の実施形態では全部)を受け取り得る。前述のように、C9脱アルキル化反応器110は、MEB(例えば、エチルトルエン、イソベンゼン、およびプロピルベンゼン)などのC9芳香族化合物の、トルエン、ベンゼン、およびオレフィンへの変換を最大にするのに十分な反応条件を達成するように構成され得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110は、次の条件下で運転し得る:約200℃〜約540℃の範囲内の温度、約10bar〜約50barの範囲内の圧力、および約1hr−1〜約20hr−1の範囲内の液体時間速度。
【0048】
理解されるように、C9脱アルキル化反応器110の構成および触媒配合組成は、C9芳香族化合物216が水素の不在下で処理される場合には異なってもよい。一部の実施形態では、水素の不在下でC9脱アルキル化反応器110内で使用される触媒には、単官能性触媒が含まれ得る。そのような単官能性触媒には、触媒配合組成中に金属成分を含まない脱アルキル化触媒が含まれ得る。C9脱アルキル化反応器110で使用される脱アルキル化触媒は、MEBをトルエン、ベンゼンおよびオレフィンに選択的に変換する能力があり得る。一部の実施形態では、脱アルキル化触媒は、適切な反応運転条件で、かなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のMEBを、トルエン、ベンゼン、およびオレフィンに変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスの脱アルキル化部分を実施するための適切な市販の脱アルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切な脱アルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、脱アルキル化段階の運転条件、供給原料組成、望ましい変換有効性および効率、脱アルキル化段階の滞留時間、および脱アルキル化段階の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110で使用される触媒には、フッ素化ゼオライト触媒が含まれてもよい。
【0049】
さらに、そのような実施形態では、水素の不在下でオレフィンを生成するように動作するC9脱アルキル化反応器110は、触媒にコークが堆積することによる急速な触媒の失活を克服するために、流動床反応器または移動床反応器であり得る。一部の実施形態では、C9脱アルキル化反応器110において脱アルキル化を行うために使用される触媒は、パラ−キシレンを含まない混合キシレン222の一部226(または、一部の実施形態では全部)がC9脱アルキル化反応器110に供給される実施形態で、キシレン異性化も行う能力があり得る。C9脱アルキル化反応器110によって生成されたトルエン流228および未変換C9芳香族化合物流230は、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。さらに、C9脱アルキル化反応器110によって形成されたベンゼンも、トランスアルキル化/異性化反応器114に供給され得る。C9脱アルキル化反応器110によって生成されたオレフィン流232は、その他の生成されたオレフィン流と組み合わせてその他のプロセスまたはシステムに供給されてもよい。
【0050】
トランスアルキル化/異性化反応器114は、C9脱アルキル化反応器110から液体排出物(すなわち、トルエン流228および未変換C9芳香族化合物流230)を受け取り、BTXおよびC9+芳香族化合物234の生成物流およびオレフィン236を放出し得る。図2に示されるように、トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、パラ−キシレン分離装置106によって生成されたパラ−キシレンを含まない混合キシレン222を受け取ってもよい。同様に図1に示されるように、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、改質油スプリッター102からさらなるトルエン流210を受け取ってもよい。C9/C10+スプリッター118を含む一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、C9/C10+スプリッター118によって生成された再循環C9芳香族化合物238を受け取ってもよい。
【0051】
以前に考察したように、トランスアルキル化/異性化反応器114は、TMBに富むC9芳香族化合物およびトルエンのトランスアルキル化を最大にしてキシレンを生成するように構成されてもよい。トランスアルキル化/異性化反応器114はまた、パラ−キシレンを含まない混合キシレン222の異性化を行ってC8芳香族化合物の熱力学平衡を再確立するように構成されてもよい。図2および再循環流204に示されるように、BTXおよびC9+芳香族化合物234は、ベンゼンおよびトルエンの回収とそれに続くパラ−キシレン分離装置106を介するパラ−キシレンの回収のために改質油スプリッター102に再循環され得る。トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたオレフィン流236は、その他の生成されたオレフィン流と組み合わせてその他のプロセスまたはシステムに供給されてもよい。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114は、次の条件下で運転し得る:約200℃〜約540℃の範囲内の温度、約10bar〜約50barの範囲内の圧力、および約1hr−1〜約20hr−1の範囲内の液体時間速度。
【0052】
トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用されるトランスアルキル化触媒は、TMBおよびトルエンを混合キシレンに選択的に変換する能力があり得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用されるトランスアルキル化触媒は、適切な反応運転条件の存在下で、C9脱アルキル化反応器110からのC9芳香族化合物230放出中のかなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のTMBを混合キシレンに変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスのトランスアルキル化部分を実施するための適切な市販のトランスアルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切なトランスアルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、トランスアルキル化 運転条件、供給原料組成、TMBに対するトルエンの比、望ましい変換有効性および効率、段階の滞留時間、およびトランスアルキル化触媒を用いるTMBおよびトルエンの混合キシレンへの変換を支持するための第2段階反応器の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内で使用される触媒には、ケイ素、リン、ホウ素、マグネシウム、錫、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ゲルマニウム、インジウム、ランタン、セシウム、およびその任意の酸化物からなる群から選択される活性促進剤を有するベータゼオライトが含まれてもよい。
【0053】
図2に示されるように、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたBTXおよびC9+芳香族化合物流234は、ベンゼンおよびトルエンの回収とそれに続くパラ−キシレン分離装置106を介するパラ−キシレンの回収のために改質油スプリッター102に再循環され得る。他の実施形態では、プロセス200には、トランスアルキル化/異性化反応器114の下流にC9/C10+スプリッター118が含まれてもよい。そのような実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたBTXおよびC9+芳香族化合物流235が、C9/C10+スプリッター118に供給され得る。例えば、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内の反応条件がトランスアルキル化/異性化反応器114によって生成されたC9芳香族化合物の大部分としてTMBをもたらす場合に、C9/C10+スプリッター118が含められ得る。以前に考察したように、C9/C10+スプリッター118は、C10+芳香族化合物からC9芳香族化合物を分離し、C9芳香族化合物238とC10+芳香族化合物240の生成物流を生成し得る。C9/C10+スプリッター118によって生成されたC9芳香族化合物流238は、トランスアルキル化/異性化反応器114に再循環され得、C9/C10+スプリッター118によって生成されたC10+芳香族化合物流240は、C10+脱アルキル化反応器116に供給され得る。例えば、一部の実施形態では、トランスアルキル化/異性化反応器114内の反応条件がTMBをトランスアルキル化/異性化反応器114から放出されたC9芳香族化合物の過半数としてもたらす場合に、C9/C10+スプリッター118が含められ得る。
【0054】
図2に示されるように、C10+脱アルキル化反応器116は、キシレンスプリッター104からC10+芳香族化合物流218を受け取り、液体炭化水素242およびオレフィン244の生成物流を生成し得る。代替実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、水蒸気源から水蒸気を受け取り得、水蒸気脱アルキル化プロセスを実施し得る。C9/C10+スプリッター118を含む実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、C9/C10+スプリッターからC10+芳香族化合物流240を受け取ってもよい。C10+脱アルキル化反応器116は、芳香族ベンゼン環に結合したアルキル基を取り除いてベンゼンに富む生成物を生成するように構成されてもよい。さらに、C10+芳香族化合物分子に結合したエチル基およびプロピル基は、エチレンおよびプロピレンなどのオレフィンを形成し得る。C10+脱アルキル化反応器116によって生成された液体炭化水素242は、再循環流204によって示されるように改質油スプリッター102に再循環され得る。C10+脱アルキル化反応器116によって生成されたオレフィン流244放出は、その他の生成されたオレフィン流と組み合わせてその他のプロセスまたはシステムに供給されてもよい。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116は、次の条件下で運転し得る:約300℃〜約450℃の範囲内の温度、約10bar〜約40barの範囲内の圧力、約0.5〜約3の範囲内の重量時空間速度(WHSV)、および2〜4の範囲内の水素対供給流比。
【0055】
一部の実施形態では、水素の不在下でC10+脱アルキル化反応器116内で使用される触媒には、単官能性触媒が含まれ得る。そのような単官能性触媒には、触媒配合組成中に金属成分を含まない脱アルキル化触媒が含まれ得る。C10+脱アルキル化反応器116内で使用される水添脱アルキル化触媒は、C10+芳香族化合物(例えばDMEBおよびテトラメチルベンゼンなど)をベンゼンおよびキシレンに選択的に変換する能力があり得る。さらに、C10+芳香族化合物分子に結合した多数のエチル基と、それよりも少数のプロピル基は、脱アルキル化反応が水素の不在下で行われると、エチレンおよびプロピレンなどのオレフィンを容易に形成することができる。しかし、理解されるように、C10+脱アルキル化反応器116が水素の不在下で運転される場合に急速な触媒の失活が起こり得る。そのような実施形態では、水蒸気をC10+脱アルキル化反応器116に導入することができ、C10+脱アルキル化反応器116を、流動床または移動床触媒反応器として構成することができる。
【0056】
一部の実施形態では、脱アルキル化触媒は、適切な反応運転条件で、かなりの部分の、そして一部の実施形態では全部のC10+芳香族化合物をベンゼン、キシレン、およびオレフィンに変換する能力があり得る。当業者であれば、過度または必要以上の実験をすることなく、プロセスの脱アルキル化部分を実施するための適切な市販の脱アルキル化触媒を選択し得ることが理解されよう。理解されるように、適切な脱アルキル化触媒の物理的属性、選択性属性、および活性属性を選択する際のそのようなパラメータには、脱アルキル化段階の運転条件、供給原料組成、望ましい変換有効性および効率、脱アルキル化段階の滞留時間、および脱アルキル化段階の物理的属性が含まれ得る。一部の実施形態では、C10+脱アルキル化反応器116で使用される触媒には、フッ素化ゼオライト触媒が含まれてもよい。そのような実施形態では、ゼオライト触媒は金属イオンを含まないことがある。
【0057】
範囲は、本開示において、大体一つの特定の値から大体もう一つの特定の値まで、またはその両方として表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記範囲内のすべての組合せとともに、ある特定の値から、他の特定の値まで、またはその両方であることを理解されたい。
【0058】
本開示の様々な態様のさらなる修正および代替実施形態は、この説明を考えると当業者には明らかであろう。したがって、この説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示に記載の実施形態を実行する一般的な方法を当業者に教示する目的のためである。本開示に示され説明された形態は、実施形態の例として解釈されるべきであることは当然理解される。要素および材料は、本開示において例示および説明されたものに代えてもよく、部品およびプロセスは逆にするか省略してもよく、特定の特徴は独立に利用されてもよく、すべてはこの説明の利益を得た後に当業者に明らかになるであろう。変更は、添付の特許請求の範囲に記載の本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示に記載される要素にもたらすことができる。本開示に記載される見出しは、編成の目的のためだけのものであり、説明の範囲を限定するために使用されることを意味するものではない。

図1
図2