(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、動力伝達装置が、車両用の自動変速機である場合を例に挙げて説明する。
図1は、変速機ケース10を説明する図である。
図1の(a)は、変速機ケース10を、トルクコンバータ(図示せず)側から見た平面図である。
図1の(b)は、変速機ケース10の開口部16を説明する図であって、変速機ケース10を斜め上方から見た斜視図である。なお、
図1の(a)では、変速機ケース10の壁部13における凹部14の領域にクロスハッチングを付することで、凹部14の領域を、他の領域から視覚的に区別できるようにしている。
なお、以下においては、
図1の(a)における変速機ケース10の配置を基準として、各構成要素の位置関係を説明する。
以下の説明において「上側」と記載した場合は、自動変速機の設置状態を基準とした上側を意味し、「下側(下部)」と記載した場合は、自動変速機の設置状態を基準とした下側を意味する。
【0010】
図1の(a)に示すように、変速機ケース10の下部には、差動装置の収容部15が設けられている。この収容部15は、図示しないトルクコンバータ側(紙面手前側)に開口している。
収容部15の中央部には、壁部13を厚み方向(軸線X方向)に貫通する貫通孔130と、この貫通孔130を囲むリング状のボス部131が設けられている。
【0011】
このボス部131では、ファイナルギアFが外周に固定されたデフケース(図示せず)が、回転可能に支持されるようになっている。
ファイナルギアFは、変速機構部(図示せず)から回転駆動力が伝達されて、デフケース(図示せず)と一体に軸線X回りに回転する。
デフケース(図示せず)には、アクスルシャフト(図示せず)が連結されており、変速機構部(図示せず)側から伝達される回転駆動力は、アクスルシャフトを介して駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0012】
軸線X方向から見て、変速機ケース10の周壁部11は、ファイナルギアFの近傍領域が、ファイナルギアFの外周を囲む弧状を成している。
周壁部11では、周方向に間隔をあけて複数のボルト孔12が設けられている。周壁部11の紙面手前側の端面11aは、トルクコンバータ(図示せず)を囲むカバーとの接合面となっている。
【0013】
変速機ケース10では、周壁部11の内側に、ファイナルギアFの側面を覆う壁部13が設けられている。壁部13は、ファイナルギアFよりも紙面奥側で、ファイナルギアFの側面に沿う向きで設けられている。
【0014】
壁部13には、前記したボス部131の外周から径方向に延びるリブ132、133、134が設けられている。これらリブ132、133、134の間の領域Rは、壁部13よりも軸線X方向の厚みが薄い薄肉部となっている。
【0015】
リブ132は、ボス部131の外周から、変速機構部(図示せず)の入力側の回転軸Xaと、出力側の回転軸Xbとの間の領域に向けて延びている。
本実施形態では、リブ132は、ボス部131と、前後進切替機構(図示せず)を囲む周壁部18とに跨がって設けられている。
【0016】
壁部13では、ボス部131よりも図中下側の領域に、側縁部13aが設けられている。側縁部13aは、ボス部131の外周131aの接線L方向(図中、上下方向)に沿う向きで設けられている。
側縁部13aよりも図中右側の領域は、オイルポンプ(図示せず)が設置される開口部16となっている。この開口部16は、紙面奥側に奥行きを持って形成されている。この開口部16の紙面奥側に、オイルポンプ(図示せず)が設けられるようになっている。
【0017】
変速機ケース10の下部には、開口17(
図1の(b)参照)が設けられている。変速機ケース10の下部に固定されたオイルパン(図示せず)が、この開口17を介して、前記した開口部16に連通している。
【0018】
図1の(a)に示すように、変速機ケース10の壁部13では、ボス部131の開口部16側(図中、右側)に、壁部13の面よりも紙面奥側に窪んだ凹部14が設けられている。
紙面手前側(図示しないトルクコンバータ側)から見て、この凹部14は、軸線X周りの周方向で、前記したリブ132から、壁部13の側縁部13aに及ぶ範囲に設けられている。
【0019】
凹部14は、軸線Xよりも図中上側の上側領域14aが、リブ132に沿って、前後進切替機構(図示せず)の周壁部18側に延びている。そして、この上側領域14aの下側に連なる下側領域14bは、前記した壁部13の側縁部13aに沿って周壁部11側に延びている。
【0020】
凹部14の開口部16側の側縁141では、上側領域14aと下側領域14bの境界部141aが、開口部16の図中上下方向の幅を確保するために、図中上下方向で軸線Xよりも上側に位置している。
【0021】
さらに、この境界部141aは、ファイナルギアFの外周に沿う仮想円Im1よりも軸線X(回転軸)側に位置している。
そのため、変速機ケース10の壁部13では、開口部16が、仮想円Im1の内側のボス部131の近傍まで及んでいる。
これにより、図中左右方向における開口部16の幅が確保されている。さらに、軸線X方向から見て、ファイナルギアFの外周側の一部の領域が、開口部16と重なる位置に配置されている。
【0022】
本実施形態では、凹部14における下側領域14bが、支持筒137を設置可能な左右方向の幅を確保しつつ、壁部13の側縁部13aに沿って設けられている。
凹部14には、この支持筒137の他に、さらにひとつの支持筒136が設けられている。
【0023】
この支持筒136もまた、支持筒137と同様に、後記するバッフルプレート5を支持させるために設けられている。
これら支持筒136、137は、凹部14における仮想円Im1の内側に位置する領域から、紙面手前側に突出している。支持筒136、137は、軸線X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
【0024】
図2は、変速機ケース10におけるバッフルプレート5の配置を説明する図である。この
図2では、バッフルプレート5と、ファイナルギアFおよびドリブンスプロケット22との位置関係を説明するために、変速機ケース10の周壁部11の内側を簡略的に表記している。
【0025】
前記したように変速機ケース10では、開口部16内にオイルポンプ(図示せず)が、設置される。
本実施形態では、駆動源の回転駆動力を、回転伝達機構2のチェーン23を介してオイルポンプに伝達して、オイルポンプを駆動する。
回転伝達機構2は、入力軸と一体に回転するドライブスプロケット21と、オイルポンプの出力軸25と一体に回転するドリブンスプロケット22と、ドライブスプロケット21とドリブンスプロケット22とに巻き掛けられたチェーン23と、を有している。
【0026】
本実施形態では、車両前進時に、ドリブンスプロケット22が、図中時計回り方向に回転する。ファイナルギアFも、車両前進時に図中時計回り方向に回転する。
自動変速機の駆動時には、変速機ケース10内のオイルOLが、回転するファイナルギアFやドリブンスプロケット22により掻き上げられる。
【0027】
例えば、変速機ケース10内(詳しくは後述するバッフルプレート5よりも紙面手前側となるファイナルギアFおよびドリブンスプロケット22が配置された空間内)のオイルOLの油面OL_levelは、ファイナルギアFが前進方向に回転している際には、ファイナルギアF側が低く、回転伝達機構2側が高くなる(
図2におけるオイルOLの高さを示す線OL_level参照)。
【0028】
図2に示すように、ファイナルギアFの径方向外側には、回転伝達機構2が位置している。
そのため、ファイナルギアFにより掻き上げられて飛散したオイルOLが、ドライブスプロケット21やドリブンスプロケット22に作用すると、これらドライブスプロケット21やドリブンスプロケット22の回転に対するフリクションとなる。
同様に、ドリブンスプロケット22により掻き上げられて飛散したオイルが、ファイナルギアFに作用しても、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなる。
さらに、ファイナルギアFにより掻き上げられて飛散したオイルOLが、ファイナルギアFに作用しても、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなる。
【0029】
そのため、変速機ケース10では、ファイナルギアFとドリブンスプロケット22とが軸線X方向の位置をずらして設けられている。
さらに、ファイナルギアFが掻き上げたオイルOLの回転伝達機構2側への飛散と、ドリブンスプロケット22が掻き上げたオイルOLのファイナルギアF側への飛散を防止するためのバッフルプレート5が設けられている。
【0030】
図3は、バッフルプレート5を説明する図であり、
図3の(a)は、軸線X方向から見たバッフルプレート5の平面図、
図3の(b)は、バッフルプレート5の斜視図である。
図4は、バッフルプレート5を説明する図である。
図4の(a)は、
図3の(a)におけるA−A線に沿って、バッフルプレート5を切断した断面図である。
図4の(b)は、
図3の(a)におけるB−B線に沿って、バッフルプレート5を切断した断面図である。
【0031】
バッフルプレート5は、変速機ケース10におけるファイナルギアFが設けられた領域と、ドリブンスプロケット22が設けられた領域とに跨がって設けられている。
バッフルプレート5は、ファイナルギアFの側面を覆う第1カバー部6と、ドリブンスプロケット22の側面を覆う第2カバー部7とを有している。
第1カバー部6と第2カバー部7は、軸線X方向で位置が異なっており、第2カバー部7のほうが紙面手前側に位置している。
【0032】
平面視において、第1カバー部6は、板状の基部60を有している。
基部60は、ボス部131の外周に沿って、軸線X周りの周方向に延びており、平面視において基部60は、弧状を成している。
【0033】
基部60の内径側の縁には、紙面手前側に突出する内壁部61が設けられている。
内壁部61は、基部60の内径側を、紙面手前側に曲げ起こして形成したものである。
平面視において内壁部61は、ボス部131の外周131aに沿う弧状を成している。内壁部61は、軸線X周りの周方向の全長に亘って、略同じ突出高さで設けられている。
【0034】
変速機ケース10において、バッフルプレート5は、内壁部61を、ボス部131の外周131aに接触させて設けられている(
図2参照)。バッフルプレート5は、ボス部131の外周131aに接触する内壁部61により、軸線Xの径方向の位置決めがされている。
【0035】
図3の(a)に示すように、基部60の外周までの半径Rは、ファイナルギアFの外周までの半径rよりも大きい径に設定されている。
本実施形態では、変速機ケース10におけるバッフルプレート5の第1カバー部6が設けられた領域では、ファイナルギアFの壁部13側の側面が、第1カバー部6の基部60で覆われている。
【0036】
基部60の外径側の縁には、紙面手前側に突出する外壁部62が設けられている。
外壁部62は、基部60の外径側を、紙面手前側に曲げ起こして形成されている。
軸線X周りの周方向における外壁部62の途中位置には、切欠部62aが設けられており、外壁部62は、切欠部62aを境にして2つに分かれている。
【0037】
軸線X方向から見て、外壁部62における切欠部62aよりも上側の領域(第1外壁部621)と、下側の領域(第2外壁部622)は、ファイナルギアFの外周に沿う弧状を成している。
ファイナルギアFの回転方向CWにおいて第1外壁部621は、第2外壁部622よりも上流側に位置している。
図4の(a)、(b)に示すように、第1外壁部621は、基部60からの高さh1が、第2外壁部622の基部からの高さh2よりも高くなっている。
【0038】
下流側の第2外壁部622は、基部60から離れる方向に屈曲しており、屈曲した先が第2カバー部7の基部70となっている。
そのため、バッフルプレート5は、第1カバー部6と第2カバー部7とから一体に形成されている。
本実施形態では、1枚の金属板のプレス成形により、バッフルプレート5における後記するセパレータ75を除いた他の部位が作製される。
【0039】
第2カバー部7の板状の基部70は、第1カバー部6から離れる方向に延びている。基部70は、第1カバー部6の基部60に対して略平行に設けられている。
図1、
図2を参照して、第2カバー部7は、変速機ケース10の周壁部11に沿って、開口部16を、図中左右方向に横断する向きで設けられている。
【0040】
図3に示すように、基部70では、第1カバー部6から最も離れた位置に、ボルト孔70aが設けられている。基部70は、ボルト孔70aを貫通したボルトにより、変速機ケース10に固定される。
【0041】
図3の(a)に示すように、基部70では、紙面手前側に突出する側壁部71が設けられている。この側壁部71は、基部70における変速機ケース10の周壁部11に沿う側縁に設けられている(
図2参照)。
側壁部71は、基部70の周壁部11側を、紙面手前側に曲げ起こして形成されている。
【0042】
変速機ケース10では、第2カバー部7の基部70が、オイルポンプの回転軸Xpを横断して設けられる。基部70における回転軸Xpと交差する領域には、基部70を厚み方向に貫通する貫通孔72が設けられている。
この貫通孔72を貫通した回転軸が、基部70の紙面手前側で、ドリブンスプロケット22に一体回転可能に連結されている。
【0043】
図3(a)に示すように、基部70における第1カバー部6寄りの位置であって、側壁部71側の領域には、ファイナルギアF側の空間と、ドリブンスプロケット22側の空間とを区画するセパレータ75が取り付けられている。
【0044】
セパレータ75は、ファイナルギアFの外周に沿う形状の壁部751と、ドリブンスプロケット22の外周に沿う形状の壁部752と、これら壁部751、752を両側に有する取付部750と、を有している。
【0045】
軸線X方向から見て、壁部751はファイナルギアFの外周に沿う弧状を成している。
軸線X方向から見て、壁部752はドリブンスプロケット22の外周に沿う弧状を成している。
【0046】
図4の(b)に示すように、セパレータ75は、壁部751の外側面751aと、第1カバー部6の第2外壁部622とが略面一となる位置に設けられている。この状態で、取付部750は、第2カバー部7の基部70に溶接などで固定されている。
【0047】
本実施形態では、第1カバー部6の基部60から、セパレータ75の壁部751の上端までの高さが、前記した第1カバー部6の第1外壁部621の基部60からの高さh1と略同じ高さになるように、セパレータ75の壁部751の高さh3が設定されている。
【0048】
さらに、本実施形態では、軸線Xの径方向から見て、ファイナルギアFの外周が、第1カバー部6の第1外壁部621と、第1カバー部6の第2外壁部622およびセパレータ75の壁部751の高さの範囲内に隠れるように、上記した高さh1が設定されている。
【0049】
図3に示すように、第1カバー部6では、基部60の幅方向の略中央部に、紙面奥側に窪んだ凹部63、64が設けられている。これら凹部63、64は、ファイナルギアFの回転方向CW(
図3の(a)における時計回り方向)で間隔を開けて設けられている。
これら凹部63、64は、前記した支持筒136、137に対応して、一対一で設けられている。
【0050】
凹部64は、凹部63よりも、ファイナルギアFの回転方向CWの下流側に設けられている。
凹部64は、基部60をファイナルギアFから離れる方向に窪ませて形成されている。
平面視において凹部64は、ボルトB2の頭部B21を所定間隔で囲む円形を成している。凹部64の中央には、ボルトB2の貫通孔64aが設けられている。
凹部64は、ボルトB2の頭部B21を収容可能な直径方向の幅W2と、深さL2で形成されている(
図4の(b)参照)。
【0051】
図5は、バッフルプレート5の要部拡大図である。
図5の(a)は、第1カバー部6の基部60に設けられた凹部63周りを拡大して示した図である。
図5の(b)は、(a)におけるA−A線に沿って切断した断面図である。
なお、
図5の(b)では、変速機ケース10の壁部13に設けたリブ132と、凹部14周りを仮想線で示している。
図6は、変速機ケース10におけるバッフルプレート5の配置とオイルOLの流れを説明する斜視図である。
【0052】
図3に示すように、第1カバー部6では、基部60の長手方向(軸線X周りの周方向)の一端部601側に凹部63が設けられている。凹部63は、内壁部61と第1外壁部621との間を、基部60の長手方向の他端部602側に向けて延びている。
凹部63は、基部60の幅方向の中央を通る仮想円Im2に沿って設けられており、平面視において凹部63は、略弧状を成している。
【0053】
図5の(b)に示すように、凹部63は、基部60および当該基部60の一端部601に対して略平行な底壁部631と、底壁部631の外周を囲む周壁部632と、を有している。
図5の(a)、(b)に示すように、凹部63では、長手方向の一端部63bに、ボルトB1の貫通孔63aが設けられている。平面視において、凹部63の一端部63b側は、ボルトB1の頭部B11を所定間隔で囲む半円形状を成している。
凹部63もまた、ボルトB1の頭部B11を収容可能な幅W1と、深さL1で形成されている(
図4の(a)参照)。
【0054】
なお、本実施形態では、凹部63の幅W1と深さL1は、凹部64の幅W2と深さL2と同じである。
【0055】
図5の(a)に示すように、平面視において凹部63の他端部63cは、仮想円Im2の直径線Lxに沿う直線状を成している。
図5の(b)に示すように、凹部63の底壁部631を囲む周壁部632では、直径線Lxに重なる領域が取り除かれて、開口部633(ガイド部)が設けられている。
凹部63において開口部633は、ファイナルギアFの回転方向CWにおいて、最も下流側の位置で開口している。
【0056】
ここで、バッフルプレート5は、以下の条件を満たすように変速機ケース10に設けられている。
(a)第1カバー部6の基部60では、凹部63が設けられた領域(基部60の一端部601側の領域)が、ファイナルギアFの回転時に、変速機ケース内のオイルOLの油面(OL_level:
図2参照)よりも上側に位置する。
【0057】
そのため、凹部63における開口部633の位置は、ファイナルギアFの回転方向CWにおける最下流の位置であって、ファイナルギアFの回転時に、変速機ケース内(バッフルプレート5よりも紙面手前側の空間内)のオイルOLの上面(OL_level:
図2参照)よりも上側となる位置に設定されている。つまり、油面OL_levelは車両の走行状態に応じて変動するが、ガイド部となる開口部633は、少なくとも車両の前進走行中における油面高さよりも高い位置にあればよい。なお、ガイド部となる開口部633は車両走行状態に関係なく常に油面よりも高い位置にあることが好ましいため、例えば、油面が最大の高さになるときである停車中の油面高さよりも高い位置に開口部633を配置することが望ましい。
【0058】
図5の(b)に示すように、第1カバー部6では、基部60の一端部601側の領域は、ファイナルギアFの回転軸である軸線X方向で、ファイナルギアFの側面に間隔をあけて隣接している。
【0059】
前記したように本実施形態では、ファイナルギアFが、図中時計回り方向に回転する(
図3参照)。基部60の一端部601側の領域は、他端部602側の領域よりも、ファイナルギアFの回転方向CWの上流側に位置している。
【0060】
本実施形態では、基部60の一端部601に、ガイド65が設けられている。このガイド65は、基部60から延びる帯状片を、ファイナルギアFに近づける方向に曲げて形成される。
【0061】
図5に示すように、ガイド65は、基部60に設けた切欠溝60aの内径側を、切欠溝60aに交差する直径線La(仮想円Im2の直径線)に沿って、紙面手前側(ファイナルギアFに近づく側)に曲げて形成される。
この際に、ガイド65の曲げの基準となる直径線Laが、ファイナルギアFの回転方向CWで、切欠溝60aの端縁60a1よりも上流側に位置するように、直径線Laの位置が設定されている。
そのため、切欠溝60aの端縁60a1は、ファイナルギアFの回転方向CWで、ガイド65よりも下流側に位置している。
【0062】
平面視において切欠溝60aは、凹部63の外径側の側縁に沿う仮想円Im3よりも外径側に設けられている。切欠溝60aは、この仮想円Im3に沿う弧状に形成されている。平面視において切欠溝60aは、ガイド65と第1外壁部621との間に位置しており、切欠溝60aと第1外壁部621との間の領域が、変速機ケース10側のリブ132に載置される載置部605となっている。
【0063】
図5の(b)に示すように、ガイド65の先端側は、さらに曲げられている。
本実施形態では、ガイド65は、基部60に直交する向きの第1ガイド651と、この第1ガイド651の先端から延びる第2ガイド652と、を有している。
第2ガイド652は、基部60から所定高さha離間した位置を、凹部63から離れる方向に延びている。
【0064】
本実施形態では、第2ガイド652は、基部60に対して略平行に設けられている。
そのため、第2ガイド652は、基部60の一端部601と、凹部63の底壁部631に対しても略平行に設けられている。
そして、第2ガイド652、基部60(一端部601)、底壁部631の順番で、ファイナルギアFから離れた位置に配置されている(
図5の(b)参照)。
【0065】
さらに、
図5の(a)に示すように、平面視において第2ガイド652の先端縁652aは、仮想円Im2の直径線Lbに沿う直線状に形成されている。
ガイド65の先端縁652aは、第1外壁部621の端部621aよりも、ファイナルギアFの回転方向CWの下流側に位置している。
【0066】
そのため、ガイド65の径方向外側に、第1外壁部621が位置しており、このガイド65の部分でも、ファイナルギアFの径方向外側が、第1外壁部621により覆われるようになっている。
これにより、ファイナルギアFが掻き上げたオイルOLのドライブスプロケット21側への浸入が抑えられるようになっている。
【0067】
本実施形態では、バッフルプレート5の第1カバー部6は、凹部63、64 の部分を支持筒136、137(
図4、
図5参照)に載置したのち、凹部63、64の貫通孔63a、64aを貫通させたボルトB1、B2により、支持筒136、137に固定される。
この状態において、基部60に設けた載置部605(切欠溝60aの外径側の領域)が、リブ132の上面132aに載置されると共に、第2ガイド652が、上面132aとの間に隙間Sをあけて、上面132aに対向配置される。
【0068】
そして、平面視において第2ガイド652の先端縁652aは、ファイナルギアFの回転方向におけるリブ132の幅の略中間となる位置まで及んでいる。
【0069】
以下、実施形態にかかるバッフルプレート5の作用を説明する。
図2に示すように、ファイナルギアFが軸線X回りに回転すると、変速機ケース10内のオイルOLが掻き上げられる。
そうすると、掻き上げられたオイルOLが変速機ケース10内で上方に向けて飛散する。さらに、ファイナルギアF側のオイルOLの量が少なくなる一方で、回転伝達機構2側のオイルOLの量が増加する。これにより、変速機ケース10内のオイルOLの油面OL_levelが、
図2に示すような状態となる。
【0070】
掻き上げられたオイルOLは、軸線X周りの周方向に移動して、バッフルプレート5のガイド65に、
図2における上側から作用する(図中、矢印参照)。
前記したように、ガイド65の第2ガイド652は、リブ132の上面132aとの間に隙間Sを持って設けられており、ガイド65に到達したオイルOLのうち、リブ132に沿って流れるオイルOLは、隙間Sからバッフルプレート5の第1カバー部6の内側(凹部14側)に浸入する。
そして、第1カバー部6の内側(凹部14側)に浸入したオイルOLは、開口部16、開口17を通って、最終的にオイルパン(図示せず)に回収される。
【0071】
ここで、リブ132では、ファイナルギアFの回転方向CWにおける上流側と下流側に、湾曲面132bをファイナルギアF側に向けたR加工が施されている(
図5の(b)参照)。
図5の(b)では、図中左側が、鉛直線方向における上側、図中右側が、鉛直線方向における下側となる。そのため、ファイナルギアFで掻き上げられたオイルOLは、自重により、図中左側から右側に向けて移動する。
【0072】
そのため、リブ132に湾曲面132b、132bのうち、鉛直線方向における上側に位置する湾曲面132b(図中左側の湾曲面132b)に衝突したオイルOLは、当該オイルOLの移動方向がファイナルギアFに近づく方向に変更される。
【0073】
本実施形態では、以下のような作用を生じさせるように、第2ガイド652の基部60からの高さhaと、先端縁652aの位置が、実験やシミュレーションの結果を踏まえて設定されている。
(a)湾曲面132bで移動方向が変更されたオイルOLの多くを、第2ガイド652の内側面652bに衝突させて、隙間S内に誘導する。
【0074】
これにより、より多くのオイルOLが、隙間S内に誘導されるので、隙間S内に誘導されたオイルOLが、第1ガイド651に衝突して、変速機ケース10における凹部14が設けられた領域に向けて排出される。
【0075】
よって、第1カバー部6の外側(ファイナルギアF側)へのオイルOLの流入量が、少なくなる。これにより、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用するオイルOLの量を抑えることができる。
【0076】
従って、ファイナルギアFが掻き上げたオイルOLが、ファイナルギアFに作用して、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなることを好適に防止できる。
【0077】
さらに第1カバー部6の外側面(ファイナルギアFとの対向面)には、凹部63が開口している。そして、この凹部63では、ファイナルギアFの回転方向CWにおける下流側に開口部633が設けられている。
この開口部633が設けられた位置は、凹部63に流入したオイルOLの移動方向の下流側であり、凹部63は、開口部633を介して凹部14側の空間に連通している。
そのため、第1カバー部6のファイナルギアF側に浸入したオイルOLのうち、凹部63内に浸入したオイルOLは、開口部633を通って、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出される。
【0078】
これにより、第1カバー部6のファイナルギアF側に浸入したオイルOLの一部を、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができる。よって、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用するオイルOLの量をさらに抑えることができる。
【0079】
図6に示すように、ガイド65の外径側には、第1外壁部621が設けられている。
この第1外壁部621は、第1カバー部6の外側に浸入したオイルOLの一部の移動方向を、凹部63に向かう方向に変更できるようになっている。
そのため、第1カバー部6の外側に浸入したオイルOLの一部を、第1外壁部621により、凹部63内に誘導して、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができるようになっている。なお、内壁部61も同様の作用を発揮する。
【0080】
よって、この第1外壁部621によっても、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用するオイルOLの量をさらに抑えることができるようになっている。
【0081】
本実施形態ではバッフルプレート5に、ガイド部(ガイド形状)を設けることにより、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLのうち、バッフルプレート5の第1カバー部6とファイナルギアFの間に浸入するオイルOLの量を抑えることができる。
【0082】
以下、本実施形態にかかるバッフルプレート5を採用した自動変速機(動力伝達装置)の構成を、効果と共に列挙する。
(1)自動変速機は、ファイナルギアF(ギア)と、ファイナルギアを収容する変速機ケース10と、バッフルプレート5と、を有する。
変速機ケース10では、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向で、ファイナルギアFと変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に、バッフルプレート5の第1カバー部6が位置している。
バッフルプレート5の第1カバー部6は、ガイド部(開口部633、ガイド65)を有している。
ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOL(油)は、ガイド部(開口部633、ガイド65)により、バッフルプレート5の第1カバー部6と、変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に導かれる。
ガイド部(開口部633、ガイド65)は、変速機ケース10内(バッフルプレート5よりも紙面手前側の空間内)のオイルOLの油面OL_levelよりも上方に配置されている。つまり、油面OL_levelは車両の走行状態に応じて変動するが、ガイド部(開口部633、ガイド65)は、少なくとも車両の前進走行中における油面高さよりも高い位置にあればよい。なお、ガイド部(開口部633、ガイド65)は車両走行状態に関係なく常に油面よりも高い位置にあることが好ましいため、例えば、油面が最大の高さになるときである停車中の油面高さよりも高い位置にガイド部(開口部633、ガイド65)を配置することが望ましい。
【0083】
このように構成すると、ファイナルギアFにより掻き上げられて落下してくるオイルOLを、ガイド部(開口部633、ガイド65)により、第1カバー部6の内側(凹部14側)に誘導できる。
これにより、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLのうち、バッフルプレート5の第1カバー部6とファイナルギアFとの間に浸入するオイルOLの量を抑えることができる。
よって、ファイナルギアFに作用するオイルOLの量が少なくなるので、ファイナルギアFの撹拌抵抗を低減できる。すなわち、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0084】
ここで、バッフルプレート5とファイナルギアFとの間のオイルOLの量を減らす方法として、オイルOLの浸入を予め抑制する方法と、浸入したオイルOLを排出する方法と、が考えられる。
後者の場合を適用する場合には、一旦オイルOLの量が増えた後に排出が行われることとなる。よって、撹拌抵抗の低減という観点からすると、前者のようにオイルOLの浸入を予め抑制することが好ましく、開口部633(ガイド部)が油面OL_levelより上方に配置されることによりオイルOLの浸入を予め抑制することができる。
【0085】
(2)バッフルプレート5の第1カバー部6は、変速機ケース10内のオイルOLの油面OL_levelよりも上側に位置する一端部601(上端部)を有している。
一端部601は、軸線X方向で、ファイナルギアFの一方の側面に隣接(対向)している。
一端部601は、変速機ケース10内のオイルOLの油面OL_levelに対して、ファイナルギアFの回転方向CWの上流方向(上流側)に位置している。
一端部601は、少なくとも、変速機ケース10からファイナルギアFに向かう方向に折れ曲がったガイド65(第1折曲部)を、ガイド部の一態様として有している。
【0086】
このように構成すると、ファイナルギアFにより掻き上げられて落下してくるオイルOLを、ガイド65に衝突させて、オイルOLを、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができる。
これにより、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLのうち、バッフルプレート5の第1カバー部6とファイナルギアFの間に浸入するオイルOLの量を抑えることができる。
これにより、ファイナルギアFに作用するオイルOLの量が少なくなるので、ファイナルギアFの撹拌抵抗を低減できる。すなわち、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0087】
(3)第1カバー部6は、ファイナルギアFに沿う向きで配置された板状の基部60を有している。
ガイド65は、基部60の一端部601から延びる帯状片を、ファイナルギアFに近づく方向に曲げて形成されている。
ガイド65は、基部60から離れてファイナルギアFに近づく方向に延びる第1ガイド651と、第1ガイド651の先端側を曲げて形成した第2ガイド652と、を有する。
第2ガイド652は、第1ガイド651の先端から、ファイナルギアFの回転方向CWにおける上流側に向けて延びている。
【0088】
このように構成すると、第2ガイド652が、自動変速機の設置状態を基準とした鉛直線方向で、第2ガイド652が第1ガイド651の上側の先端(上端部)から上側に向けて延びるように、第1ガイド651の先端側を折り曲げて形成される。
これにより、第1ガイド651に衝突したオイルOLが、ファイナルギアFに近づく方向に移動しようとしても、第1ガイド651のファイナルギアF側に第2ガイド652が位置しているので、飛散したオイルOLがファイナルギアFに作用することを好適に防止できる。
これにより、第1ガイド651に衝突して飛散したオイルOLが、バッフルプレート5の第1ガイド651と、ファイナルギアFとの間に浸入することを好適に防止できる。
よって、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0089】
(4)第1カバー部6の基部60は、ファイナルギアFの径方向側面(外周面)を覆う外壁部62(外周側の側面壁部)を有している。
外壁部62は、ファイナルギアFの回転軸である軸線Xの径方向において、基部60の外周縁を折り曲げて形成される。
第1カバー部6の基部60では、ガイド65と外壁部62との間に、軸線X周りの周方向に延びる切欠溝60aが設けられている。
【0090】
外壁部62が、ファイナルギアFの径方向外側(例えば、回転伝達機構2側)から、バッフルプレート5の第1カバー部6と、ファイナルギアFとの間に浸入するオイルOL量を抑えることができる。
これにより、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0091】
(5)切欠溝60aの端縁60a1(先端)は、ガイド65の第1ガイド651の根元よりも、ファイナルギアFの回転方向CWの下流側に位置している。
切欠溝60aの端縁60a1(先端)は、ファイナルギアFの回転方向CWの下流側の端縁である。
【0092】
切欠溝60aの端縁60a1からガイド65(第1ガイド651)の折曲げが始まる形状でガイド65を形成すると、第1ガイド651の根元と切欠溝60aの端縁60a1とが接する部分(ガイド65との境界部分)に応力集中が生じる。
そうすると、応力集中に起因して、例えば境界部分を起点としたクラックなどが生じることがあり、かかる場合には、バッフルプレート5の耐久性に影響が出る。
上記のように構成して、切欠溝60aの端縁60a1から離れた位置から、ガイド65(第1ガイド651)の折曲げが始まる形状でガイド65を形成すると、第1ガイド651の根元と切欠溝60aの端縁60a1とが直接接している場合よりも、応力集中を緩和できる。
【0093】
(6)バッフルプレート5の第1カバー部6では、基部60の内周縁を、ファイナルギアF側に折り曲げて形成した内壁部61が設けられている。
内壁部61は、ファイナルギアFの回転軸である軸線X方向で、ファイナルギアFの側面に対向している(
図4参照)。
内壁部61は、平面視において弧状を成す基部60の内周縁に沿って設けられている。
内壁部61は、ファイナルギアFの支持部(ボス部131)の外周131aに接している。
【0094】
バッフルプレート5の第1カバー部6では、ガイド65を設けたことにより、変速機ケース10側の凹部14と第1カバー部6との間の領域に、オイルOLが誘導されて飛散する(
図5参照)。
基部60の内周縁に、軸線X方向に所定の高さを持つ内壁部61を設けると、凹部14側に誘導されたオイルOLが、基部60とボス部131の隙間を通って、第1カバー部6のファイナルギアF側に漏出することを好適に防止できる。
【0095】
これにより、ファイナルギアFの回転軸である軸線X側(内径側)から、バッフルプレート5の第1カバー部6とファイナルギアFとの間に浸入するオイルOL量を抑えることができる。
よって、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0096】
(7)バッフルプレート5の第1カバー部6には、変速機ケース10の壁部13側(軸線X方向でファイナルギアFから離れる方向)へ向かって窪んだ凹部63、64が設けられている。
凹部63の底壁部631には、変速機ケース10にバッフルプレート5を固定するためのねじ穴(貫通孔63a)が設けられている。
凹部64にも、バッフルプレート5を固定するためのねじ穴(貫通孔64a)が設けられている。
バッフルプレート5は、貫通孔63a、64aを貫通したボルトB1、B2により、変速機ケース10側に固定されている。
バッフルプレート5には、ネジ穴形成用の凹部63の底壁部631(第1表面)と、バッフルプレート5の主表面である基部60(第2表面)と、ガイド65の第2ガイド652(第3表面)とが形成されている。
断面視においてバッフルプレート5では、第2ガイド652(第3表面)は、基部60(第2表面)よりもファイナルギアFに近い位置にあり、基部60(第2表面)は、凹部63の底壁部631(第1表面)よりもファイナルギアFに近い位置にあり、3段階の階段形状を有している。
【0097】
このように構成すると、ボルトB1、B2の頭部B11、B21を、凹部63、64内に収容できる。これにより、基部60におけるファイナルギアFとの対向面から、頭部B11、B21を突出させずにバッフルプレート5を変速機ケース10側に固定できる。
第2ガイド652(第3表面)の基部60(第2表面)からの高さhaを適切に設定することで、ファイナルギアF側に浸入するオイルOLの量を抑えることができる。
【0098】
(8)変速機ケース10の壁部13には、軸線X方向でバッフルプレートに近づく方向に突出するリブ132が設けられている。
断面視においてリブ132では、軸線X周りの周方向に所定幅を有している。
リブ132では、軸線X周りの周方向の両側縁にR加工が施されており、リブ132の両側縁に、断面視において曲面状を成す湾曲面132bが設けられている(
図5の(b)参照)。
軸線X方向から見て、ガイド65は、先端縁652a側がリブ132と重なる位置に設けられている。
【0099】
ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLは、自動変速機の設置状態を基準とした鉛直線方向で、リブ132のR加工が施された湾曲面132bに上側から作用する。
側縁部のR加工は、鉛直線方向で上側から下側に向かうにつれて、変速機ケース10の壁部13から離れる形状(湾曲面132b)を、リブ132の側縁部に形成している。
そのため、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLが落下して、鉛直線方向の上側からリブ132に衝突すると、落下するオイルOLの移動方向が、衝突したリブ132の湾曲面132bにより、軸線Xに直交する方向からファイナルギアFに近づく方向に変更される(
図5の(b)参照)。
【0100】
上記のように、軸線X方向から見て、ガイド65の先端縁652a側がリブ132と重なる位置に設けられていると、リブ132の側縁部で移動方向が変更されたオイルOLを、ガイド65の第2ガイド652の内側面652bに衝突させて、オイルOLの移動方向をファイナルギアFから離れる方向に変更できる。
【0101】
これにより、ガイド65で移動方向が変更されたオイルOLを、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させて、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアF側へのオイルOLの流入量を抑制できる。
すなわち、ガイド65の先端縁652a側で、オイルOLを跳ね返らせることで、ファイナルギアF側へのオイルOLの流入量を抑制できる。
これにより、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0102】
図8は、バッフルプレートの作製を説明する図であって、1枚の金属板PLのプレス成形によりバッフルプレート5を作製する場合の、成形範囲を説明する図である。
【0103】
バッフルプレート5は、第1カバー部6と第2カバー部7の部分が、1枚の金属板PLのプレス成形により作製される。
例えば、第1カバー部6は、図中破線に沿って金属板PLの打ち抜きを行う際に、一対の型の間で第1カバー部6の各部位の形状が形成される。
【0104】
例えば、金属板PLにおいて、内壁部61、第1外壁部621、ガイド65に対応する領域61’、621’、65’が、プレス打ち抜きの際に曲げ起こされて、基部60に対応する領域60’に対して直交する向きに成形される。
【0105】
この際に、凹部63となる領域63’における開口部633となる領域633’に、スリットSLを形成したのちに、プレス成形を行うことで、作製されるバッフルプレート5において、凹部63の他端部63cに開口部633を簡単に形成できる。
【0106】
(9)自動変速機は、ファイナルギアF(ギア)と、変速機ケース10と、バッフルプレート5と、を有する。
変速機ケース10では、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向で、ファイナルギアFと変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に、バッフルプレート5の第1カバー部6が位置している。
バッフルプレート5の第1カバー部6は、変速機ケース10内のオイルOLの油面よりも上側に位置する一端部601(上端部)を有している。
バッフルプレート5の第1カバー部6には、変速機ケース10の壁部13側(軸線X方向でファイナルギアFから離れる方向)へ向かって窪んだ凹部63が設けられている。
凹部63は、軸線X周りの周方向に所定の長さ範囲を持って設けられている。
凹部63は、ファイナルギアFの回転方向CWにおける最下流の位置であって、ファイナルギアFの回転時に、変速機ケース内のオイルOLの油面(OL_level:
図2参照)よりも上方となる位置に、開口部633を、ガイド部の一態様として有している。
開口部633は、凹部63内の空間と、第1カバー部6の内側(凹部14側)空間とを連通させている。
【0107】
このように構成すると、軸線X回りに回転するファイナルギアFと連れまわって飛散するオイルOLを、開口部633を介して、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができる。
これにより、軸線X方向で、第1カバー部6の外側(ファイナルギアF側)に浸入したオイルOLの一部を、第1カバー部6のファイナルギアFとの対向面に開口する凹部63と、この凹部63に設けた開口部633により、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができる。
これにより、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用するオイルOLの量をさらに抑えることができる。
よって、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0108】
(10)凹部63内に、バッフルプレート5の第1カバー部6を変速機ケース10に固定するネジ穴(貫通孔63a)が設けられている。
【0109】
バッフルプレート5には、ネジ穴(貫通孔63a)を有する凹部63が設けられている。この凹部63と貫通孔63aは、第1カバー部6を変速機ケース10にボルト止めする際に利用される
そして、この凹部63を利用して、凹部63に流入したオイルOLの排出孔となる開口部633が設けられている。
そのため、凹部63を形成するためのプレス工程において、ネジ穴(貫通孔63a)と同時に、排出孔となる開口部633を形成できる。よって、排出孔となる開口部633を形成するための工程を別途追加する必要がないので、バッフルプレート5の作製コストを上昇させることなく、開口部633を形成できる。
【0110】
(11)バッフルプレート5の第1カバー部6では、ファイナルギアFの回転方向CWにおける凹部63よりも上流側に、ガイド65が設けられている。
基部60を窪ませて形成した凹部63の領域は、開口部633のみを介して、変速機ケース10側の凹部14に連通している。
凹部63では、ファイナルギアFの回転方向CWにおける最も下流側の位置に、開口部633が設けられている。
【0111】
基部60を窪ませて形成した凹部63は、当該凹部63を構成する底壁部631と、この底壁部631を囲む周壁部632とを有しており、底壁部631と周壁部632は、基部60と一体に形成されている。
そのため、凹部63では、周壁部632における開口部633が形成された領域以外の領域が塞がれており、凹部63は、開口部633を介してのみ、変速機ケース10側の凹部14に連通している。
【0112】
そして、凹部63において開口部633は、ファイナルギアFの回転方向CWにおける下流側に位置しており、上流側は、底壁部631と周壁部632により閉じられている。
そのため、基部60から変速機ケース10側に膨出する凹部63では、ガイド65が設けられた一端部63b側に、開口部633に相当するものが設けられていない。
【0113】
よって、ガイド65により第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させたオイルOLが、凹部63の一端部63b側に作用しても、凹部63内に流入しないようになっている。
そのため、ガイド65により第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させたオイルOLが、凹部63内に流入して、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用することを好適に防止できる。
【0114】
なお、本願発明は、自動変速機の製造方法としても特定できる。
(12)自動変速機は、ファイナルギアF(ギア)と、変速機ケース10と、バッフルプレート5と、を有する。
変速機ケース10では、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向で、ファイナルギアFと変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に、バッフルプレート5の第1カバー部6が位置している。
バッフルプレート5の第1カバー部6は、変速機ケース10内のオイルOLの油面よりも上側に位置する一端部601(上端部)を有している。
バッフルプレート5の第1カバー部6には、変速機ケース10の壁部13側(軸線X方向でファイナルギアFから離れる方向)へ向かって窪んだ凹部63が設けられている。
凹部63は、軸線X周りの周方向に所定の長さ範囲を持って設けられている。
凹部63は、ファイナルギアFの回転方向CWにおける最下流の位置であって、ファイナルギアFの回転時に、変速機ケース内のオイルOLの油面(OL_level:
図2参照)よりも上方となる位置に、開口部633を有している。
開口部633は、凹部63内の空間と、第1カバー部6の内側(凹部14側)空間とを連通させている。
自動変速機のバッフルプレート5は、金属板PL(素材板)のプレス成形により作製されたものである。
バッフルプレート5は、
図8に示すように、金属板PLにおける凹部に対応する領域63’の開口部633(排出孔)に対応する領域に切込み(スリットSL)を入れたのちに、金属板PLのプレス成形を行って、凹部63と開口部633とを同時に形成したものである。
自動変速機は、このようにして形成したバッフルプレート5を変速機ケース10に組み付けて作製されたものである。
【0115】
このように構成すると、開口部633を有する凹部63を簡単に形成できる。
【0116】
図7は、変形例にかかるバッフルプレートのガイド部66を説明する図である。
前記した実施形態では、ガイド65が、帯状片を2回で屈曲させて形成した場合を例示した(
図5の(a)参照)。ガイド部は、前記した実施形態の態様にのみ限定されるものではない、2回以上屈曲させて形成したガイド部としても良い。
【0117】
さらに、帯状片を、基部60の一端部601との境界部を起点として曲げることで、一端部601(凹部63)から離れるにつれて、ファイナルギアFに近づくように傾斜したガイド部66としても良い。
【0118】
変形例にかかるバッフルプレートのガイド部66は、基部60の一端部601から、凹部63から離れる方向に延びている。
図7に示すように、ガイド部66の先端縁66aは、ファイナルギアFの回転軸である軸線X方向で、第1カバー部6の基部60よりもファイナルギアF側に位置している。
ガイド部66は、当該ガイド部66の先端縁66aが、基部60から所定高さha離間した位置に配置されるように、ガイド部66の基部60に対する交差角が設定されている。
【0119】
そのため、リブ132の湾曲面132bで移動方向が変更されたオイルOLの多くを、ガイド部66の内側面66bに衝突させて、隙間S内に誘導することができるようになっている。
ガイド部66の内側面66bが、基部60に対して所定角度傾斜していることで、ガイド部66とリブ132の間の隙間Sが、基部60に近づくにつれて狭くなっている。
そのため、隙間Sに浸入したオイルOLの移動を妨げることなく、凹部14(上側領域14a)側に誘導できるようになっている。
【0120】
このように変形例にかかるバッフルプレート5は、以下の構成を有している。
(13)ガイド部66の先端縁66aは、基部60の凹部63から離れるにつれて、ファイナルギアFに近づく方向に傾斜している。
【0121】
このように構成することによっても、ファイナルギアFにより掻き上げられて落下してくるオイルOLを、ガイド部66に衝突させて、オイルOLを、第1カバー部6の内側(凹部14側)に排出させることができる。
これにより、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLのうち、バッフルプレート5の第1カバー部6とファイナルギアFとの間に浸入するオイルOLの量を抑えることができる。
これにより、ファイナルギアFに作用するオイルOLの量が少なくなるので、ファイナルギアFの撹拌抵抗を低減できる。すなわち、ファイナルギアFの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0122】
前記したガイド65の場合には、第1ガイド651と第2ガイド652の両方を、外壁部62の第1外壁部621に接触させた状態で、バッフルプレート5を形成することが難しい。
同様に、第1ガイド651と第2ガイド652の両方を、第1外壁部621と一体に形成することが難しい。
そのため、ガイド65と第1外壁部621との間に、軸線Xの径方向の隙間が生じてしまう。
【0123】
図7では、図中左側が、鉛直線方向における上側、図中右側が、鉛直線方向における下側となる。そのため、ファイナルギアFで掻き上げられたオイルOLは、自重により、図中左側から右側に向けて移動する。
【0124】
そのため、基部60の凹部63から離れるにつれて、ファイナルギアFに近づく方向に傾斜しているガイド部66を採用すると、自重により移動するオイルOLを、ガイド部66の内側面66bに衝突させることができる。
これにより、オイルOLの移動方向を、第1カバー部6の内側(凹部14側)に向かう方向に変更することができる。
これにより、ファイナルギアFにより掻き上げられたオイルOLを、第1カバー部6の内側(凹部14側)にスムーズに排出させて、バッフルプレート5とファイナルギアFとの間の領域に流入するオイルOLの量を抑えることができる。
よって、ギアの撹拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0125】
前記した実施形態では、発明にかかるガイド部として、バッフルプレート5の第1カバー部6に設けた開口部633とガイド65を例示した。
すなわち、2系統(ガイド65(折曲部)と開口部633(排出孔))のガイド経路を有するガイド部を開示したが、いずれか一方のみのガイド部としても良い。
【0126】
前記した実施形態では、動力伝達装置が、車両用の自動変速機である場合を例示した。本願発明の動力伝達装置は、車両用の自動変速機のみに限定されない。
複数のギアから構成されるギア列であって、少なくとも1つのギアが、ギア列の収容ケース内のオイルを掻き上げ得るように構成された装置にも適用可能である。このような装置として、入力された回転を減速して出力する減速装置が例示される。
【0127】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。