(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ISO18122:2015に準拠した灰化方法で得られる灰分の組成の酸化物換算で算出したときに、酸化カリウムが20wt%以上となる木質バイオマス原料からなり、固定床方式または固気移動床方式のガス化炉で用いられる成形燃料であって、
1000℃以下のガス化雰囲気となる領域においてカリウム含有化合物と反応する含酸素アルミニウム化合物を含み、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することによりクリンカの生成を抑制するクリンカ生成抑制剤を、該クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.25以上となるように含有する
ことを特徴とする成形燃料。
ISO18122:2015に準拠した灰化方法で得られる灰分の組成を酸化物換算で算出したときに、酸化カリウムが20wt%以上となる木質バイオマス原料からなり、固定床方式または固気移動床方式のガス化炉で用いられる成形燃料の製造方法であって、
前記木質バイオマス原料に、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することにより1000℃以下のガス化雰囲気となる領域におけるクリンカの生成を抑制するクリンカ生成抑制剤を、該クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.25以上となるように添加、混合する工程と、
前記木質バイオマス原料と前記クリンカ生成抑制剤との混合物を成形する工程と、
を含んでおり、
前記クリンカ生成抑制剤は、前記ガス化雰囲気において、カリウムを主成分とするカリウム含有化合物と反応する含酸素アルミニウム化合物からなる
ことを特徴とする成形燃料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して成形燃料及び成形燃料の製造方法並びにガス化方法の実施形態について説明する。なお、以下では成形燃料を燃焼させるガス化装置の一例として、上向き固気並流方式のガス化炉を挙げて説明する。
【0013】
<ガス化炉におけるクリンカの発生>
まず、成形燃料であるバイオマス燃料をガス化させるガス化炉、及びガス化炉内で発生するクリンカについて、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、バイオマス燃料をガス化させる際のガス化炉内部の状態を示す断面図である(より具体的には、特許文献3に記載されているような上向き固気並流方式のガス化炉の模式図である)。
図2は、ガス化時に発生するクリンカの一例を示す上面図である。
図3は、バイオマス燃料の灰分組成における、ガス化炉内の温度と、ガス化炉内におけるカリウム含有化合物の生成割合との関係を示すグラフである。なお、
図2及び
図3は、比較例に係るバイオマス燃料(具体的には、後述するクリンカ生成抑制剤が添加されていないバイオマス燃料)をガス化させた際の様子を示すものである。
【0014】
図1に示すように、バイオマス燃料(例えば、木質バイオマスペレット等)は、ガス化炉10と呼ばれる反応容器の内部でガス化される。具体的には、ガス化炉10にバイオマス燃料が投入されると、熱分解ゾーンにおいて熱分解される。その後、酸化ゾーンにおいて空気等と反応して酸化され、還元ゾーンにおける還元反応を経ることで、可燃性のガスが発生する。このようにして発生したガスは、例えば発電機に供給され発電(即ち、バイオマス発電)等に利用される。
【0015】
図2に示すように、ガス化炉10の内部には、バイオマス燃料がガス化される際の反応(具体的には、還元ゾーンにおける還元反応)によって、クリンカ50と呼ばれる残渣物が生ずることがある。クリンカ50は、灰分を主体としチャーやフライアッシュを取り込んだ凝集物であり、当初は熱分解ゾーン(
図1参照)と酸化ゾーン(
図1参照)もしくは酸化ゾーンと還元ゾーン(
図1参照)の境界に生じるが、ガス化炉10の運転時間に応じて大きくなり、ガス化炉10の断面を埋め尽くすような大きさになることもある。このようなクリンカ50が発生してしまうと、ガス化炉10において正常な反応が阻害され、結果としてバイオマス燃料の正常なガス化が行えなくなってしまう。
【0016】
図3に示すグラフは、各温度におけるギブスの自由エネルギーが0になる平衡状態を計算する熱力学的平衡計算ソフトウェアを用いて、炭酸ガスを含むガス化雰囲気下でカリウム分を含むバイオマス燃料の灰分組成に基づいて計算したものである。初期条件は、杉が原料である木質バイオマスペレットの蛍光X線解析により測定した元素組成(下記「表1」を参照)を用いている。
【0017】
なお、木質バイマス燃料の元素組成分析をするには灰化を行わなければならないが、正確な測定結果を得るために、ISO18122:2015 Solid biofuels - Determination of ash content に準拠した灰化方法を採用した。即ち、木質バイオマスには基本的にカルシウムとカリウムを主成分としており、このカリウムが800℃以上では揮発してしまう性質をもつため、灰化温℃をISO18122:2015に規定されている通り550℃付近で灰化することにより、カリウムを含めた正確な灰分組成測定の結果を得ることができる。
【0018】
また、表1は灰分組成測定によって得られる無機元素を酸化物換算して表示している。
【0020】
上記の元素組成の特徴として、カルシウム、カリウムが多いことが分かる。なお、雰囲気は炭酸ガスを含むガス化雰囲気下での計算としている。
【0021】
本願発明者の研究するところによれば、クリンカ50が発生する主な原因は、ガス化炉10内部に発生するカリウム化合物(特に、炭酸カリウム(K
2CO
3))の融液であることが判明している。このカリウム化合物は、バイオマス燃料に含まれるカリウムに由来して発生するものであり、ガス化雰囲気(即ち、還元雰囲気)において発生する。例えば、K
2O+CO2→K
2CO
3、或いは、2K
2O+3CO→2K
2CO
3のように、炭酸ガスとカリウム分とが反応することで炭酸カリウムが発生する。
図3のグラフから、液体の炭酸カリウム(図中の点線参照)は、クリンカ50の発生箇所の温度帯に対応する900℃から950℃の温度域において多く発生していることが分かる。即ち、バイオマスボイラ等で問題となるシリカとカリウムによるケイ酸塩によるクリンカではなく、クリンカ50はカリウムが主原因の炭酸カリウムの融液によって発生するものである。炭酸カリウムの融液が900℃から950℃付近で発生することから、特に主なガス化領域温℃が1000℃以下である固定床方式または固気移動床方式のガス化炉において、クリンカ50の発生が問題となる。
【0022】
本実施形態に係るバイオマス燃料は、上述したクリンカ50の原因となる炭酸カリウムの融液が発生するのを抑制するため、製造時にクリンカ生成抑制剤が添加されている。クリンカ生成抑制剤は、木質バイオマス燃料の融点を上げる目的ではなく、ガス化雰囲気における炭酸カリウムが発生する状態を、添加したクリンカ生成抑制剤中のアルミニウムとカリウムとの化合物が発生する状態にするために添加される。このため、バイオマス燃料に添加されるクリンカ生成抑制剤の量はバイオマス燃料のカリウム含有量に応じて設定すればよい。即ち、カリウム含有量に対して所定割合以上のクリンカ生成抑制剤が、バイオマス燃料に添加される。このように、バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加すれば、ガス化時に発生する炭酸カリウムの融液を少なくすることができるため、炭酸カリウムの融液が原因となるクリンカ50の発生を抑制することが可能である。
【0023】
<クリンカ生成抑制剤の添加による変化>
次に、バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加することによるガス化時の変化について、
図4、
図5を参照して具体的に説明する。
図4は、表1の灰分組成に対して、クリンカ生成抑制剤のアルミナ中のアルミニウムのモル量をバイオマス燃料中のカリウムのモル量で除した値が0.46になるように添加したときの炉内温度とカリウム含有化合物の生成割合の関係を表すグラフである。
図5は、アルミナ中のアルミニウムのモル量をバイオマス燃料中のカリウムのモル量で除した値と、ガス化炉内におけるカリウム含有化合物の生成割合との関係を示すグラフである。なお、
図4は、表1の灰分組成に対して、アルミナ中のアルミニウムのモル量をバイオマス燃料中のカリウムのモル量で除した値が0.46になるように添加したバイオマス燃料を初期条件に、
図5は同じく表1の灰分組成に対してアルミナの量を増加させた値を初期条件とし、
図3と同様の熱力学的平衡計算ソフトウェアを用いて計算したものである。
【0024】
図4と
図3を比較すると、900℃―950℃で発生していた炭酸カリウムの融液は発生せず、バイオマス燃料中のカリウムがアルミニウムと反応し、KAlO
2が発生していることがわかる。即ち、上述した通り、ガス化雰囲気における炭酸カリウムが発生する状態を、添加したクリンカ生成抑制剤中のアルミニウムとカリウムとの化合物が発生する状態になっていることがわかる。
【0025】
図5に示すように、本願発明に係るクリンカ生成抑制剤の一例として酸化アルミニウム、即ちアルミナの添加量が増えるほど、即ちアルミナ中のアルミニウムのモル量をバイオマス燃料中のカリウムのモル量で除した値が大きくなるほど、ガス化時に発生する炭酸カリウムの融液の最大量(ピーク時の割合)が減少する。また、バイオマス燃料中のカリウムのモル量に対するアルミナ中のアルミニウムのモル量の比が0.28程度になると、炭酸カリウムの融液の割合は、ほとんどゼロとなる(即ち、少なくとも平衡状態において、炭酸カリウムの融液がほとんど発生しなくなる)。
【0026】
以上の結果から、バイオマス燃料に対して、夫々本願発明に係るクリンカ生成抑制剤の一例として、アルミナを添加した場合、クリンカ50の主成分が炭酸カリウムの融液であることを考えるとクリンカ50を抑制する効果が得られることが分かる。また、バイオマス燃料含有カリウムとアルミニウムを反応させることにより炭酸カリウムの融液の発生を抑制させることから、アルミナの他に、水酸化アルミニウムやアルミニウム元素を含む粘土鉱物(例えば、カオリン、ドロマイト等)を添加した場合でも同様の効果が得られる。更に、これらのクリンカ生成抑制剤を単一で添加してもよいし、複数混合して添加することも可能である。
【0027】
また、バイオマス燃料中の灰分組成、特にカリウムは、樹種やサンプル箇所によって大きく異なる。例えば、表2に4つの異なるサンプル箇所におけるスギサンプル、ドイツ産トウヒの酸化物換算した灰分組成重量割合を示す。酸化カリウムの重量割合から分かる通り、同種のスギでも酸化カリウムの量にばらつきがあることがわかる。本願出願人らによれば、本願発明が有効となるバイオマス燃料のカリウムを酸化物換算した酸化カリウムの重量割合は、20wt%以上であることがわかっている。例えば、表2中のスギサンプルA、Bを用いてガス化炉10を運転した場合、クリンカの発生によるガス化反応の阻害が問題になっており、本願発明技術が有効になるが、スギサンプルCについては、本願発明技術を適用しなくともガス化炉のクリンカの発生によるガス化反応の阻害は問題にならなかった。また、表2からもわかる通り、バイオマス燃料として利用される日本の木材、例えば、スギは、他の地域の木材、例えば欧州のトウヒ、と比較してカリウム化合物の含有量が多いことが知られており、本願発明がスギに対して特に有効であることがわかっている。
【0029】
<クリンカ抑制効果>
次に、バイオマスにクリンカ生成抑制剤を添加することによって得られるクリンカ抑制効果について、
図6から
図9を参照してより具体的に説明する。
図6は、バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加した場合の、クリンカの発生速度の違いを示す表である。
図7は、ガス化炉の連続運転時間と、累積クリンカ発生量との関係を示すマップである。
図8は、バイオマス燃料に対するアルミナ添加量とクリンカ発生速度との関係を示すマップである。
図9は、添加前後の炉内残渣物の蛍光X線解析による元素組成を示す表である。
【0030】
図6に示すように、本願発明者による実験によれば、バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加しなかった場合、ガス化炉10を166時間連続運転させると、クリンカ50が77.3kg生ずるという結果が得られている。即ち、運転1時間あたり0.47kgのクリンカ50が発生する。
【0031】
一方で、バイオマス燃料に水酸化アルミニウムを添加した場合、ガス化炉10を715時間連続運転させても、クリンカ50は16.6kgしか生じないという結果が得られている。即ち、運転1時間あたりのクリンカ発生量は、0.023kgまで抑制されている。また、バイオマス燃料に水酸化アルミニウムを添加した場合、ガス化炉10を1219時間、即ち約7週間も連続運転させることができた。この際のクリンカ50の発生量は、57.7kg、即ち、運転1時間あたりのクリンカ発生量は、0.047kgまで抑制されている。即ち、クリンカ生成抑制剤を添加しない場合と比べて、クリンカ50の発生速度が1/10のオーダーにまで抑制されている。このように、クリンカ生成抑制剤を添加することで確実にクリンカ50の発生を抑制できることが分かっている。
【0032】
図7に示すように、本実施形態に係るバイオマス燃料は、ガス化炉10を用いた複数回の実験によっても、クリンカ50を抑制する効果があることが証明されている。具体的には、バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加しない場合(即ち、比較例に係るバイオマス燃料を用いた場合)、ガス化炉10の連続運転時間に応じてクリンカ50の発生量も累積して増えていく傾向が明らかである。一方で、バイオマス燃料にアルミナ又は水酸化アルミニウムを添加した場合(即ち、本実施形態に係るバイオマス燃料を用いた場合)、クリンカ生成抑制剤を添加しない場合と比べると、クリンカ50の発生速度は極めて抑制されている。
【0033】
図8に示すように、アルミナ又は水酸化アルミニウムの添加量を増加させていく、即ちクリンカ生成抑制剤中のアルミニウムのモル量と木質バイオマス燃料中のカリウムのモル量の比を大きくしていくと、クリンカ発生速度が指数関数的に減少していることが分かる(図の縦軸は対数軸である)。本願発明者らの実験によれば、ガス化炉10においては、クリンカが約85kg発生するとガス化反応が阻害されやすいことがわかっており、ガス化炉10の理想的な連続稼働時間である650時間以上を達成するには、クリンカ生成速度が0.13kg/時間であればよいとわかっている。(
図10中の点A)。
【0034】
しかし、より安定的なガス化炉の連続運転を行うには、クリンカが約25kg発生するまでに抑えられるとよく、クリンカ生成速度が0.04kg/時間である必要があるとわかっている。即ち、クリンカ生成抑制剤は、クリンカ50のガス化が阻害されずに連続運転するためには、クリンカ生成抑制剤中のアルミニウムのモル量と木質バイオマス燃料中のカリウムのモル量の比が0.25以上、より安定的に連続運転するためには0.9以上になるように木質バイオマス燃料にクリンカ生成抑制剤を添加すればよい。
【0035】
図9に示すように、水酸化アルミニウムを添加しなかった場合と添加した場合とでは、ガス化炉10の運転後における炉内の残渣物(チャー、クリンカ、及びフライアッシュ)の元素組成に明らかな違いが生ずる。なお、ここでの「チャー」とはガス炉10における還元ゾーン(
図1参照)に存在し、バイオマス燃料が炭化したものである。また、「フライアッシュ」とは、同じく還元ゾーンにおいて、チャーが還元反応によりガス化され、粉状になったものが発生ガスともに炉外に排出されるものである。
【0036】
水酸化アルミニウムを添加せずに運転した場合、チャー、クリンカにおける酸化物換算表示のカリウム化合物(K
2O)の含有量が多く、フライアッシュが比較的少なくなっている。一方、水酸化アルミニウムを添加して運転した場合、水酸化アルミニウムを添加した分、チャーに含まれるアルミニウムの量が多くなっており、カリウムの量は多少減っているものの変わらず多い。一方で、クリンカ中のカリウム含有量は大幅に少なくなっている。また、フライアッシュのカリウム含有量が増えていることが分かる。このことから、クリンカの主成分である炭酸カリウムの発生が抑制されることで、カリウム分がクリンカにならず、フライアッシュとしてそのまま、炉外に排出されていることが分かる。
【0037】
以上説明したように本実施形態に係る木質バイオマス燃料によれば、木質バイオマス燃料中のカリウムの含有量に応じてクリンカ生成抑制剤が添加されていることで、ガス化炉10におけるクリンカ50の発生(より具体的には、ガス化雰囲気における炭酸カリウムの融液に由来するクリンカ50の発生)を効果的に抑制することができる。特に、カリウム化合物の含有量の多い原料から製造されるバイオマス燃料については、ガス化雰囲気において発生する炭酸カリウムの融液の量が多くなるため、バイオマス燃料のカリウムを酸化物換算した酸化カリウムの重量割合が20wt%以上の木質バイオマス原料を用いた場合、本実施形態の技術的効果は顕著に発揮される。
【0038】
<バイオマス燃料の製造方法>
次に、バイオマス燃料の製造方法について、
図10を参照して説明する。
図10は、実施形態に係るバイオマス燃料の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0039】
図10に示すように、バイオマス燃料の製造時には、調達されたバイオマス原料(即ち、バイオマス燃料の原料)に対して(ステップS11)、燃料加工プロセス(即ち、バイオマス原料をバイオマス燃料に加工するためのプロセス)を実行する(ステップS12)。例えばバイオマス燃料は、ペレット、ブリケットとして加工される。その後、加工されたバイオマス燃料は、ガス化炉に投入されることになる(ステップS13)。
【0040】
ここで本実施形態では特に、燃料加工プロセス時、クリンカ生成抑制剤を添加する(ステップS14)。例えば、バイオマス燃料がペレットやブリケットである場合には、固着成形時にバイオマス原料に対して、一定の比率でクリンカ生成抑制剤を投入するようにすればよい。
【0041】
<実施例>
次に、本実施形態に係るバイオマス燃料の製造方法の具体的な実施例として、アルミナ又は水酸化アルミニウムを添加したペレットの製造方法について、
図11を参照して説明する。
図11は、アルミナ及び水酸化アルミニウム添加ペレットの製造フローを示すフローチャートである。
【0042】
図11に示すようにバイオマス燃料としてのペレットを製造する際には、まず、バイオマス燃料として調達された原木を(ステップS21)、おが粉製造機でおが粉化し(ステップS22)、原料の含水率が10%前後となるまで乾燥させる(ステップS23)。続いて、乾燥させたおが粉を造粒機に投入しペレット化を行う(ステップS24)。その後、ペレット化されたものをクーラーで冷却し(ステップS25)、ふるい機にかけることで(ステップS26)、所定の長さのペレットが製造される。バイオマス燃料は、この状態でガス化炉に投入されることになる(ステップS27)。
【0043】
本実施例では、おが粉化した原料を乾燥させた後、造粒する前のタイミングでアルミナ又は水酸化アルミニウムを添加する(ステップS28)。より具体的には、造粒機前のおが粉コンベアラインにおいて、アルミナ又は水酸化アルミニウムを添加する。なお、アルミナ及び水酸化アルミニウムは、造粒機に投入されるおが粉の量に対して、一定の比率で投入する。このようにしてアルミナ又は水酸化アルミニウムを添加すれば、フィーダーを用いて投入量が制御できるため、添加量を自由に設定することができる。
【0044】
<バイオマス燃料のガス化方法>
次にバイオマス燃料のガス化方法について説明する。上述したバイオマス燃料製造方法により製造された木質バイオマス燃料を、ガス化炉10を例とする上向き固気並流方式を含む、固定床・固気移動床方式のガス化炉において、いわゆる熱分解、部分酸化、還元ゾーンを含む工程を経て、1000℃以下のガス化雰囲気下でガス化させる方法のことである。
【0045】
特に炭酸カリウムの融液が900℃から950℃付近で発生することから、主なガス化領域温度が1000℃以下であるガス化炉について、顕著にクリンカ抑制効果が発揮される。部分酸化ゾーン等おいて、微視的には1000℃を超える場合があるが、そのようなガス化炉も主なガス化領域温度が1000℃以下であるガス化炉に含まれるものとする。
【0046】
<付記>
以上説明した実施形態から導き出される発明の各種態様を以下に説明する。
【0047】
(付記1)
付記1に記載の成形燃料は、ISO18122:2015に準拠した灰化方法で得られる灰分の組成の酸化物換算で算出したときに、酸化カリウムが20wt%以上となる木質バイオマス原料からなり、固定床方式または固気移動床方式のガス化炉で用いられる成形燃料であって、1000℃以下のガス化雰囲気となる領域においてカリウム含有化合物と反応する含酸素アルミニウム化合物を含み、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することによりクリンカの生成を抑制するクリンカ生成抑制剤を前記木質バイオマス原料中のカリウム量に応じて設定された量だけ含有する。
【0048】
付記1に記載の成形燃料によれば、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することにより、ガス化炉におけるクリンカの生成を抑制することができる。特に、クリンカ生成抑制剤は、木質バイオマス原料中のカリウム量に応じて設定された量だけ含有されているため、カリウムに由来するクリンカを効果的に抑制することができる。
【0049】
(付記2)
付記2に記載の成形燃料は、前記クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.25以上である。
【0050】
付記2に記載の成形燃料によれば、クリンカ生成抑制剤のAlのモル量と、木質バイオマス原料中のKのモル量との割合が適切に調整されているため、より効果的にクリンカを抑制することができる。
【0051】
(付記3)
付記3に記載の成形燃料は、前記クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.9以上である。
【0052】
付記3に記載の成形燃料によれば、クリンカ生成抑制剤のAlのモル量と、木質バイオマス原料中のKのモル量との割合が適切に調整されているため、より効果的にクリンカを抑制することができる。
【0053】
(付記4)
付記4に記載の成形燃料は、前記含酸素アルミニウム化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは粘土鉱物のうち、少なくとも1つからなる。
【0054】
本願発明者らの研究よれば、含酸素アルミニウム化合物として、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは粘土鉱物の少なくとも1つを用いることで、好適にクリンカを抑制できることが判明している。
【0055】
(付記5)
付記5に記載の成形燃料は、前記木質バイオマス原料は、主成分がスギである。
【0056】
本願発明者らの研究よれば、バイオマス燃料として利用されるスギ(特に、日本のスギ)は、相対的にカリウム化合物の含有量が多いことが分かっている。このため、スギを主成分とする場合には、クリンカ生成抑制剤を含有させることで極めて有益な効果が得られる。
【0057】
(付記6)
付記6に記載の成形燃料は、ペレットに成形されている。
【0058】
ペレットに成形された成形燃料は、製造及び取り扱いが容易であり、ガス化炉においてガス化させるのに適している。
【0059】
(付記7)
付記7に記載の成形燃料は、前記ガス化炉は、固気移動床式のガス化炉である。
【0060】
付記7に記載の成形燃料によれば、固気移動床式のガス化炉におけるクリンカの発生を好適に抑制することが可能である。
【0061】
(付記8)
付記8に記載の成形燃料の製造方法は、 ISO18122:2015に準拠した灰化方法で得られる灰分の組成を酸化物換算で算出したときに、酸化カリウムが20wt%以上となる木質バイオマス原料からなり、固定床方式または固気移動床方式のガス化炉で用いられる成形燃料の製造方法であって、 前記木質バイオマス原料に、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することにより1000℃以下のガス化雰囲気となる領域におけるクリンカの生成を抑制するクリンカ生成抑制剤を木質バイオマス原料中のカリウム量に応じて設定された量だけ添加、混合する工程と、 前記木質バイオマス原料と前記クリンカ生成抑制剤との混合物を成形する工程と、を含んでおり、前記クリンカ生成抑制剤は、前記ガス化雰囲気において、カリウムを主成分とするカリウム含有化合物と反応する含酸素アルミニウム化合物からなる。
【0062】
付記8に記載の成形燃料の製造方法によれば、カリウムに由来するクリンカの生成を抑制可能な成形燃料を製造することが可能である。
【0063】
(付記9)
付記9に記載の成形燃料の製造方法は、前記クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.25以上である。
【0064】
付記9に記載の成形燃料の製造方法によれば、クリンカ生成抑制剤のAlのモル量と、木質バイオマス原料中のKのモル量との割合が適切に調整されるため、より効果的にクリンカを抑制することができる。
【0065】
(付記10)
付記10に記載の成形燃料の製造方法は、前記クリンカ生成抑制剤中のAlのモル量を前記木質バイオマス原料中のKのモル量で除した値が0.9以上である。
【0066】
付記10に記載の成形燃料の製造方法によれば、クリンカ生成抑制剤のAlのモル量と、木質バイオマス原料中のKのモル量との割合が適切に調整されるため、より効果的にクリンカを抑制することができる。
【0067】
(付記11)
付記11に記載の成形燃料の製造方法は、前記含酸素アルミニウム化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは粘土鉱物のうち、少なくとも1つからなる。
【0068】
本願発明者らの研究よれば、含酸素アルミニウム化合物として、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは粘土鉱物の少なくとも1つを用いることで、好適にクリンカを抑制できることが判明している。
【0069】
(付記12)
付記12に記載の成形燃料の製造方法は、前記木質バイオマス原料は、主成分がスギである。
【0070】
本願発明者らの研究よれば、バイオマス燃料として利用されるスギ(特に、日本のスギ)は、相対的にカリウム化合物の含有量が多いことが分かっている。このため、スギを主成分とする場合には、クリンカ生成抑制剤を含有させることで極めて有益な効果が得られる。
【0071】
(付記13)
付記13に記載の成形燃料の製造方法は、前記木質バイオマス原料と前記クリンカ生成抑制剤との混合物を、ペレットに成形する。
【0072】
ペレットに成形された成形燃料は、製造及び取り扱いが容易であり、ガス化炉においてガス化させるのに適している。
【0073】
(付記14)
付記14に記載の成形燃料の製造方法は、前記ガス化炉は、固気移動床式のガス化炉である。
【0074】
付記14に記載の成形燃料の製造方法によれば、固気移動床式のガス化炉におけるクリンカの発生を好適に抑制可能な成形燃料を製造することが可能である。
【0075】
(付記15)
付記15に記載の成形燃料のガス化方法は、付記8ないし付記14のいずれか1項に記載の成形燃料の製造方法により製造された成形燃料を用意する工程と、前記成形燃料を1000℃以下のガス化雰囲気下でガス化する工程と、を含む。
【0076】
付記15に記載の成形燃料のガス化方法によれば、ガス化する工程において発生するクリンカを効果的に抑制することが可能である。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う成形燃料、成形燃料の製造方法及びガス化方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【解決手段】成形燃料は、ISO18122:2015に準拠した灰化方法で得られる灰分の組成の酸化物換算で算出したときに、酸化カリウムが20wt%以上となる木質バイオマス原料からなり、主なガス化領域が1000℃以下である固定床方式または固気移動床方式のガス化炉(10)で用いられる。成形燃料は、ガス化雰囲気において、カリウム含有化合物と反応する含酸素アルミニウム化合物を含み、液相の炭酸カリウムの生成を抑制することによりクリンカ(50)の生成を抑制するクリンカ生成抑制剤を木質バイオマス原料中のカリウム量に応じて設定された量だけ含有する。