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特許6815596コンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815596
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】コンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/10 20060101AFI20210107BHJP
   E04G 9/05 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   E04G9/10 101B
   E04G9/05
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-128803(P2016-128803)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-3354(P2018-3354A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】菅井 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】林 健二
(72)【発明者】
【氏名】松本 信也
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】武田 節造
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 伸二
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−233630(JP,A)
【文献】 特開平05−239914(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3172882(JP,U)
【文献】 特開2011−122346(JP,A)
【文献】 特開平05−179802(JP,A)
【文献】 特開平11−311022(JP,A)
【文献】 特開2011−236672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/10
E04G 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設面に設置される型枠パネルと、
前記型枠パネルを前記コンクリート打設面の反対側から補強する補強材と、
を備え、
前記型枠パネルは、
前記コンクリート打設面に接する平板状の打設面側スキン層と、
前記補強材に接しつつ前記打設面側スキン層と平行をなす平板状の補強材側スキン層と、
前記打設面側スキン層と前記補強材側スキン層との間で、中空の多角柱形状及び中空の円柱形状のいずれかをなす複数のセルが、前記セルの底面のそれぞれの外周部を前記打設面側スキン層及び前記補強材側スキン層に接しつつ、互いに隣接して設置されているセル層と、
を有し、
前記セルの側面のそれぞれは、互いに隣接する前記セルの内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する連通部を含み、
前記型枠パネルは、熱可塑性樹脂により形成され、
前記補強材は、鉄から形成されている、コンクリート打設用型枠。
【請求項2】
請求項に記載のコンクリート打設用型枠を前記コンクリート打設面に設置する型枠設置工程と、
前記型枠設置工程で前記型枠パネルを設置された前記コンクリート打設面にコンクリートを打設する打設工程と、
を備えた、コンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム等のコンクリートによる構造物を構築するためのコンクリート打設用型枠が提案されている。例えば、特許文献1には、透水性及び通気性を有する連通気泡性合成樹脂板から形成され、その一方の端面からもう一方の端面まで連通する複数の中空部を備えたコンクリート打設用型枠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3‐271463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、打設されたコンクリートを養生させる際には、打設されたコンクリートの温度を保つ必要があり、コンクリート打設用型枠には保温性が高いことが望まれる。しかしながら、上記技術のようなコンクリート打設用型枠では、保温性が不十分であり、改善が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、打設されたコンクリートの保温性を向上させたコンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート打設面に設置される型枠パネルと、型枠パネルをコンクリート打設面の反対側から補強する補強材とを備え、型枠パネルは、コンクリート打設面に接する平板状の打設面側スキン層と、補強材に接しつつ打設面側スキン層と平行をなす平板状の補強材側スキン層と、打設面側スキン層と補強材側スキン層との間で、中空の多角柱形状及び中空の円柱形状のいずれかをなす複数のセルが、セルの底面のそれぞれの外周部を打設面側スキン層及び補強材側スキン層に接しつつ、互いに隣接して設置されているセル層とを有し、セルの側面のそれぞれは、互いに隣接するセルの内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する連通部を含むコンクリート打設用型枠である。
【0007】
この構成によれば、コンクリート打設用型枠の型枠パネルは、コンクリート打設面に接する平板状の打設面側スキン層と、補強材に接しつつ打設面側スキン層と平行をなす平板状の補強材側スキン層と、打設面側スキン層と補強材側スキン層との間で、中空の多角柱形状及び中空の円柱形状のいずれかをなす複数のセルが、セルの底面のそれぞれの外周部を打設面側スキン層及び補強材側スキン層に接しつつ、互いに隣接して設置されているセル層とを有するため、セルの内部の空気により熱の媒介物を減少させ、熱伝導率を低減し、保温性を向上させることができる。また、セルの側面のそれぞれは、互いに隣接するセルの内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する連通部を含むため、温度の上昇に対する保温性も向上させることができる。
【0008】
この場合、セルの側面のそれぞれは、連続して互い違いの方向に屈曲又は湾曲する一対の波状シートがその屈曲又は湾曲する部位同士で互いに当接し合うことにより形成され、互いに当接し合う一対の波状シートはセルの内圧により互いに離隔し合い、連通部は、一対の波状シートが互いに離隔し合うことにより、互いに隣接するセルの内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通することが好適である。
【0009】
この構成によれば、セルの側面のそれぞれは、連続して互い違いの方向に屈曲又は湾曲する一対の波状シートがその屈曲又は湾曲する部位同士で互いに当接し合うことにより形成され、互いに当接し合う一対の波状シートはセルの内圧により互いに離隔し合い、連通部は、一対の波状シートが互いに離隔し合うことにより、互いに隣接するセルの内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通するため、セルの側面や連通部を簡単に構成することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記本発明のコンクリート打設用型枠をコンクリート打設面に設置する型枠設置工程と、型枠設置工程で型枠パネルを設置されたコンクリート打設面にコンクリートを打設する打設工程とを備え、型枠設置工程では、型枠パネルの打設面側スキン層のコンクリート打設面に接する面にPコンを取付けつつ、上記本発明のコンクリート打設用型枠を設置し、Pコンの打設面側スキン層に対面する部分の直径よりも大きな幅を有する養生ピースをPコンと打設面側スキン層との間に介しつつ、Pコンを取付けるコンクリート打設方法である。
【0011】
この構成によれば、型枠設置工程では、Pコンの打設面側スキン層に対面する部分の直径よりも大きな幅を有する養生ピースをPコンと打設面側スキン層との間に介しつつ、Pコンを取付けるため、Pコンによる打設面側スキン層に対する荷重が分散され、Pコンによる打設面側スキン層の変形を低減し、打設面側スキン層の変形によりコンクリート打設面に凹凸が生じることを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法によれば、打設されたコンクリートの保温性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は実施形態に係るコンクリート打設用型枠をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図2】(A)は実施形態に係る型枠パネルの斜視図であり、(B)は(A)のセルの拡大図である。
図3】(A)はセルの側面を形成する帯状シートを示す斜視図であり、(B)は(A)の帯状シートを屈曲させた波状シートを示す斜視図であり、(C)は(B)の波状シートを互いに当接させてセルを形成した状態を示す斜視図である。
図4】(A)は図1(A)のコンクリート打設用型枠を互いに連結させた物をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図5】(A)は図4(A)の物に横端太を固定した物をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図6】(A)は図5(A)の物に縦端太を固定した物をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図7】(A)は図6(A)の物に足場受材及び足場材を固定した大型スライド型枠をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図8】(A)は図7(A)の大型スライド型枠がコンクリート打設面に設置された状態をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図9図8(B)のPコンの周辺を拡大した図である。
図10】(A)は図8(A)の大型スライド型枠が上方に移動させられた状態をコンクリート打設面の反対側から視た図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の平面図である。
図11】実験例における養生中のコンクリートの温度の履歴を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート打設用型枠及びコンクリート打設方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1(A)、図1(B)及び図1(C)に示すように、本実施形態のコンクリート打設用型枠1は、コンクリート打設面の反対側から視点において、長方形の形状を有する。コンクリート打設用型枠1は、例えば、長さ1500[mm]×幅300[mm]の大きさを有するが、1個のコンクリート打設用型枠1の大きさは適宜変更することができる。
【0016】
コンクリート打設用型枠1は、コンクリート打設面に設置される型枠パネル10と、型枠パネル10をコンクリート打設面の反対側から補強する補強材30とを備えている。補強材30は、例えば、鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム及びこれらの合金や、合成樹脂から形成されている。
【0017】
補強材30は、コンクリート打設用型枠1の外周を覆う平板部材を有する。また、補強材30は、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の短辺に平行に伸び、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の一対の長辺を六分割するように配置された平板部材を有する。また、補強材30は、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の長辺に平行に伸び、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の一対の短辺を二分割するように配置された平板部材を有する。コンクリート打設用型枠1のコンクリート打設面とは反対側において、補強材30に接していない型枠パネル10の部分は露出している。
【0018】
補強材30のコンクリート打設用型枠1の外周を覆う平板部材は、複数のボルト孔部32を含む。ボルト孔部32に挿入されたボルトと当該ボルトに取付けられたナットとにより、複数のコンクリート打設用型枠1は、コンクリート打設の工事現場及びコンクリート打設の工事現場の外部において、互いに連結されることが可能である。また、補強材30及び型枠パネル10は、コンクリート打設の工事現場及びコンクリート打設の工事現場の外部において、任意の大きさに切断及び分割が可能である。
【0019】
図2(A)に示すように、型枠パネル10は、打設面側スキン層11、補強材側スキン層12及びセル層13を有する。打設面側スキン層11、補強材側スキン層12及びセル層13は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されている。打設面側スキン層11は、コンクリート打設面に接し、平板状の形状を有する。補強材側スキン層12は、補強材30に接しつつ打設面側スキン層11と平行をなし、平板状の形状を有する。
【0020】
図2(A)及び図2(B)に示すように、セル層13は、打設面側スキン層11と補強材側スキン層12との間で、中空の正六角柱形状をなす複数のセル14が、セル14の底面のそれぞれの外周部15を打設面側スキン層11及び補強材側スキン層12に接しつつ、互いに隣接して設置されている。図2(B)に示すように、セル14の側面16のそれぞれは、互いに隣接するセル14の内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する連通部17を含む。
【0021】
図3(A)、図3(B)及び図3(C)に示すように、セル14の側面16のそれぞれは、帯状シート160を連続して互い違いの方向に屈曲させることにより製造された波状シート161から形成されている。波状シート161は、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状の起伏が連続して設けられる略波状に形成されており、屈曲する部位である屈曲部位162を含む。図3(C)に示すように、セル14の側面16のそれぞれは、連続して互い違いの方向に屈曲一対の波状シート161がその屈曲部位162同士で互いに当接し合うことにより形成されている。
【0022】
図2(B)に示すように、互いに当接し合う一対の波状シート161はセル14の内圧により互いに離隔し合い、連通部17は、一対の波状シート161が互いに離隔し合うことにより、互いに隣接するセル14の内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する。なお、図2(B)に示すように、セル14の底面のそれぞれの外周部15は、打設面側スキン層11及び補強材側スキン層12と接合されていてもよく、接合されていなくともよい。
【0023】
また、セル14は、中空の正六角柱以外にも、中空の円柱形状、又は、中空の三角柱形状、中空の四角柱形状、正六角柱形状ではない中空の六角柱形状等の中空の多角柱形状を有していてもよく、異なる形状のセル14が混在していてもよい。例えば、中空の円柱形状をなすセル14の側面16のそれぞれは、連続して互い違いの方向に湾曲する一対の波状シート161がその湾曲する部位同士で互いに当接し合うことにより形成されることができる。さらに、セル14のそれぞれの側面は、個々のセル14ごとに独立したセル壁により形成されており、連通部17は、セル壁に設けられた開口部、スリット、弁等により、互いに隣接するセル14の内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通してもよい。
【0024】
以下、本実施形態のコンクリート打設用型枠1を用いたコンクリート打設方法について説明する。図4(A)、図4(B)及び図4(C)に示すように、コンクリート打設用型枠1が任意の大きさに切断及び分割される。図4(A)、図4(B)及び図4(C)の例では、上述したコンクリート打設用型枠1に加えて、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の長辺が1/5の長さに切断及び分割されたコンクリート打設用型枠1dが用意される。
【0025】
補強材30のボルト孔部32に挿入されたボルトと当該ボルトに取付けられたナットとにより、複数のコンクリート打設用型枠1を互いに連結する連結工程が行われる。図4(A)、図4(B)及び図4(C)の例では、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の長辺に沿った方向に、二つのコンクリート打設用型枠1と、上記の切断及び分割されたコンクリート打設用型枠1dとが互いに連結されている。また、コンクリート打設面の反対側から視点におけるコンクリート打設用型枠1の短辺に沿った方向に、上記の二つのコンクリート打設用型枠1と切断及び分割されたコンクリート打設用型枠1とを連結させたコンクリート打設用型枠1lが10個互いに連結され、コンクリート打設用型枠1Aが形成されている。連結工程は、コンクリート打設の工事現場及びコンクリート打設の工事現場の外部のいずれにおいても行うことができる。
【0026】
図5(A)、図5(B)及び図5(C)に示すように、連結工程でコンクリート打設用型枠1が互いに連結されたコンクリート打設用型枠1Aに、横端太61が不図示のボルト及びナットにより固定される横端太固定工程が行われる。また、図6(A)、図6(B)及び図6(C)に示すように、横端太固定工程で横端太61が固定された物の横端太61に、縦端太62が不図示のボルト及びナットにより固定される縦端太固定工程が行われる。横端太固定工程及び縦端太固定工程は、コンクリート打設の工事現場及びコンクリート打設の工事現場の外部のいずれにおいても行うことができる。
【0027】
図7(A)、図7(B)及び図7(C)に示すように、縦端太固定工程で縦端太62を固定された物の縦端太62に、足場材63、足場受材64及び足場支持枠65が不図示のボルト及びナットにより固定される足場固定工程が行われる。足場固定工程は、コンクリート打設の工事現場及びコンクリート打設の工事現場の外部のいずれにおいても行うことができる。足場固定工程が終了すると、大型スライド型枠100が形成される。
【0028】
以下の工程は、コンクリート打設の工事現場で行われる。図8(A)、図8(B)及び図8(C)に示すように、足場固定工程で足場材63等を固定された大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1Aがコンクリート打設面Sに設置される型枠設置工程が行われる。図8(B)の例では、コンクリート打設の工事現場において、既にコンクリート打設面SまでコンクリートCが打設されており、大型スライド型枠100は、コンクリートCのコンクリート打設面Sに設置される。
【0029】
図8(B)、図8(C)及び図9に示すように、型枠設置工程では、大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1Aの打設面側スキン層11のコンクリート打設面Sに接する面にPコン73を取付けつつ、大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1が設置される。型枠設置工程では、コンクリート打設面S1に埋め込まれた差筋アンカー71から伸びる型枠支保部材72と、大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1とが、Pコン73、養生ピース74、タイボルト75、型枠緊結金具76及びナット77により連結させられる。Pコン73、養生ピース74、タイボルト75、型枠緊結金具76及びナット77が、型枠支保部材72と大型スライド型枠100とを連結する連結部材70として機能する。本実施形態では、差筋アンカー71及び型枠支保部材72は大型スライド型枠100のコンクリート打設面Sの側に配置されている。
【0030】
図9に示すように、型枠支保部材72はPコン73と連結させられる。コンクリート打設面Sの反対側から縦端太62及び型枠パネル10を貫通するタイボルト75は、Pコン73に捩じ込まれる。コンクリート打設面Sの反対側から縦端太62及び型枠パネル10を貫通するタイボルト75と、縦端太62のコンクリート打設面Sとは反対側の面でタイボルト75に取付けられたナット77とにより、大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1がコンクリート打設面Sに固定される。なお、本実施形態では、縦端太62を貫通させたタイボルト75をナット77によりコンクリート打設用型枠1Aに固定したが、縦端太62を貫通させないで、型枠パネル10を貫通させたタイボルト75をナット77により固定してもよい。また、横端太61等の大型スライド型枠100の縦端太62以外の部材、及び型枠パネル10を貫通させたタイボルト75をナット77により固定してもよい。
【0031】
タイボルト75が型枠パネル10を貫通するための孔は、コンクリート打設の工事現場において、型枠パネル10の補強材側スキン層12の補強材30に接しておらず露出している部分に任意に穿設することができる。また、縦端太62のコンクリート打設面S0とは反対側の面と、ナット77との間には、型枠緊結金具76が介されている。
【0032】
型枠設置工程では、Pコン73の打設面側スキン層11に対面する部分の直径dよりも大きな幅Wを有する養生ピース74をPコン73と打設面側スキン層11との間に介しつつ、Pコン73が取付けられる。養生ピース74は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から形成された外径80[mm]及び厚さが1〜2[mm]程度の円盤状の部材の中心に、内径が14[mm]程度の孔部を含む物を適用することができる。
【0033】
図8(B)に示すように、型枠設置工程で大型スライド型枠100のコンクリート打設用型枠1の型枠パネル10を設置されたコンクリート打設面SにコンクリートCを打設する打設工程が行われる。例えば、コンクリート打設面SまでコンクリートCが打設される。
【0034】
図10(A)、図10(B)及び図10(C)に示すように、コンクリート打設面S,S,SまでのコンクリートCの打設及び養生が完了すると、大型スライド型枠100を上方に移動させる型枠移動工程が行われる。型枠移動工程により上方に移動させられた大型スライド型枠100について、再度、上述した型枠設置工程及び打設工程が行われる。コンクリート打設の工事現場において、上述した型枠設置工程、打設工程及び型枠移動工程が順次、繰り返して行われる。
【0035】
従来、外気温が0[℃]以下となる冬期などの環境下でコンクリートを打設する場合には、打設したコンクリートの初期凍害の影響を防止するために、コンクリートの強度が5[N/mm]に達するまでの間、コンクリートの温度を5℃以上に保つ必要がある。上記のような環境下でのコンクリートの養生方法としては、加熱養生、断熱養生、被覆養生などの方法がある。このうち断熱養生による方法の一例としては、コンクリートの表面やコンクリート打設用型枠などを断熱性の高い高発泡ポリエチレンシートや独立気泡シートにより覆いつつ養生し、コンクリートの水和熱を利用してコンクリートの温度を5[℃]以上に保つ方法などがある。
【0036】
しかしながら、上記の方法では、コンクリートの表面や型枠などをシートで覆う労力を要する。また、上記の方法では、シートが破れると保温効果が低減し、シートの貼り直しが必要となり、ランニングコストが高くなる場合がある。また、上記の方法では、シートが風で飛散することにより、シートの貼り直しが必要となり、ランニングコストが高くなる場合がある。
【0037】
また、コンクリート打設用型枠については、木製又は鋼製の型枠が知られている。近年では、型枠を用いたコンクリート打設の作業の効率化を目的として、木製の型枠ではなく強度及び転用回数に富む鋼製の型枠を用い、型枠の転用回数の増大や型枠の大型化を図ることが多い。型枠を鋼製にした場合、鉄の熱伝導率が比較的高く(83.5[W/mK])、夏期や冬期などにおいてコンクリート温度の急激な上昇・下降を防ぐために型枠に対しても養生対策が必要となる。型枠に対する養生方法として、型枠の背面に独立気泡シートを取付ける方法や、型枠をポリエチレン等の合成樹脂製のシートで覆った上にアイランプを用いて給熱する方法がある。
【0038】
しかしながら、型枠の背面にシートを取付ける方法の欠点は上述した通りである。また、アイランプを用いて給熱する方法は、アイランプの電気配線に労力を要し、電気ケーブルの材料費によるコストの増大や、アイランプの設置及び撤去の労力を要する欠点がある。また、鋼製の型枠を大型化しようとすると、鉄の比重が7.9[g/cm]と重いため、型枠の重量が大きくなり、型枠を扱うクレーン等の揚重機械も大型化するため狭小部での作業性に不利である欠点がある。また、上述した特許文献1のような中空部を備えたコンクリート打設用型枠では、中空部が一方の端面からもう一方の端面まで連通する筒状になっているため、樹脂板の外周が外気温の影響を受け易く、冬場に中空部の空気が低温になり易いという欠点がある。
【0039】
一方、本実施形態では、コンクリート打設用型枠1の型枠パネル10は、コンクリート打設面Sに接する平板状の打設面側スキン層11と、補強材30に接しつつ打設面側スキン層11と平行をなす平板状の補強材側スキン層12と、打設面側スキン層11と補強材側スキン層12との間で、中空の六角柱形状をなす複数のセル14が、セル14の底面のそれぞれの外周部15を打設面側スキン層11及び補強材側スキン層12に接しつつ、互いに隣接して設置されているセル層13とを有するため、セル14の内部の空気により熱の媒介物を減少させ、熱伝導率を低減し、保温性を向上させることができる。従って、上記の外気温が0[℃]以下となる冬期などの環境下においても、本実施形態のコンクリート打設用型枠1を使用することにより、上記のように従来要していた労力及びコストを低減しつつ、コンクリートの初期凍害の影響を防止するために、コンクリートの強度が5[N/mm]に達するまでコンクリートの温度を5℃以上に保つことが可能になる。また、セル14の側面16のそれぞれは、互いに隣接するセル14の内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通する連通部17を含むため、温度が過度に上昇した場合には、温度の上昇によりセル14の内部の圧力が高まり、側面16は互いにより離間して連通部17を形成し、拡大する。連通可能な連通部17は気体を通過させるので過度な温度上昇を適度に抑制することができる。
【0040】
本実施形態の型枠パネル10は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から形成されているため、熱伝導率が鉄の83.5[W/mK]に対して、極めて低い0.18[W/mK]であるため、シート等を用いた養生の必要が無い。したがって、本実施形態のコンクリート打設用型枠1だけで、十分な保温養生の効果を有する。
【0041】
また、本実施形態の型枠パネル10は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から形成されているため、比重が鉄の7.9[g/cm]に対して、極めて軽い0.9[g/cm]であり、鉄の比重の約1/9である。そのため、コンクリート打設用型枠1を大型化しても、従来の鋼製の型枠と比較して軽量化を図ることができる。従って、軽量化のために作業性が向上し、再生利用もし易くなる。
【0042】
また、本実施形態の型枠パネル10は、ハニカム構造を有し、型枠パネル10に補強材30を取付けた構造であるため、コンクリート打設用型枠1は必要な強度を有している。また、型枠パネル10のコンクリート打設面Sに設置される面も十分な耐久性を有し、転用回数を増加させることができる。また、型枠パネル10のコンクリート打設面Sに設置される面は平滑であり、変形し難いため、コンクリート打設面Sの平滑性も向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、セル14の側面16のそれぞれは、連続して互い違いの方向に屈曲する一対の波状シート161がその屈曲する部位である屈曲部位162同士で互いに当接し合うことにより形成され、互いに当接し合う一対の波状シート161はセル14の内圧により互いに離隔し合い、連通部17は、一対の波状シート161が互いに離隔し合うことにより、互いに隣接するセル14の内部のそれぞれの間を気体が流通可能なように連通するため、セル14の側面16や連通部17を簡単に構成することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によれば、型枠設置工程では、Pコン73の打設面側スキン層11に対面する部分の直径よりも大きな幅を有する養生ピース74をPコン73と打設面側スキン層11との間に介しつつ、Pコン73を取付けるため、Pコン73による打設面側スキン層11に対する荷重が分散され、Pコン73による打設面側スキン層11の変形を低減し、打設面側スキン層11の変形によりコンクリート打設面Sに凹凸が生じることを低減することができる。
【0045】
(実験例)
以下、本実施形態の実験例を示す。同じ大きさのコンクリート打設用型枠1を用いて、屋外において、コンクリートの打設及び養生が行われ、コンクリートの温度の履歴が測定された。型枠パネル10の厚さが10[mm]及び30[mm]のコンクリート打設用型枠1のそれぞれについて同様に実験が行われた。また、比較のために、同じ大きさの鋼製の型枠を用いて同様に実験が行われた。
【0046】
図11の結果により、本実施形態のコンクリート打設用型枠1による打設及び養生が行われたコンクリートの温度は、型枠パネル10の厚さが10[mm]及び30[mm]のいずれの結果においても、外気の温度の変動に関わらず、打設から2日目以降は22[℃]以上の範囲内に保たれており、保温性の高さを示していることが判る。一方、鋼製の型枠による打設及び養生が行われたコンクリートの温度は、外気の温度の変動に伴い、打設から2日目以降は20[℃]を大きく下回る時刻もあり、保温性の低さを示していることが判る。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、型枠パネル10及び補強材30の全てを合成樹脂により形成することにより、より軽量化が可能となり、作業性が向上し、再利用もさらにし易くなる。
【符号の説明】
【0048】
1,1d,1l,1A…コンクリート打設用型枠、10…型枠パネル、11…打設面側スキン層、12…補強材側スキン層、13…セル層、14…セル、15…外周部、16…側面、17…連通部、30…補強材、32…ボルト孔部、61…横端太、62…縦端太、63…足場材、64…足場受材、65…足場支持枠、70…連結部材、71…差筋アンカー、72…型枠支保部材、73…Pコン、74…養生ピース、75…タイボルト、76…型枠緊結金具、77…ナット、100…大型スライド型枠、160…帯状シート、161…波状シート、162…屈曲部位、S,S,S,S,S…コンクリート打設面、C…コンクリート、d…直径、W…幅。
図1
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図8
図9
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図11