(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の非火薬破砕組成物について詳細に説明する。
【0017】
本発明の非火薬破砕組成物は、テルミット剤とガス発生剤とを混合して造粒することにより得られる。以下、非火薬破砕組成物として、テルミット剤とガス発生剤とを混合し造粒したものを例に挙げて説明するが、造粒したガス発生剤の表面にテルミット剤をコーティングしたものであってもよい。
【0018】
テルミット剤は、酸化剤及び還元剤から構成され、燃焼させたときにテルミット反応を生じさせるものである。酸化剤としては、例えば酸化第二銅、酸化第二鉄、酸化第三鉄、酸化ニッケル(II)又は酸化モリブデン(VI)のいずれか一種類の金属酸化物、又は二種類以上の金属酸化物が用いられる。また、還元剤としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、マンガン、チタン等が用いられる。なお、テルミット反応時の発生熱量やテルミット剤の製造コスト等を考慮した場合、テルミット剤として用いる酸化剤及び還元剤の組み合わせは、酸化第二銅及びアルミニウムの組み合わせが一般的に用いられる。
【0019】
ここで、テルミット剤における酸化剤及び還元剤の配合組成は、用いる金属酸化物や金属の種類によって異なる。例えば酸化第二銅及びアルミニウムを用いてテルミット剤を製造する際の配合組成(重量比:wt%)は、酸化第二銅:アルミニウム=90:10〜60:40の範囲内である。酸化第二銅及びアルミニウムの重量比のより好ましい範囲は、酸化第二銅:アルミニウム=88:12〜64:36の範囲であり、更に好ましい範囲は、酸化第二銅:アルミニウム=81.6:18.4〜77:23の範囲である。なお、酸化第二銅は粒子径範囲0.5〜10μmの粒子を使用し、アルミニウムは粒子径範囲10〜100μmの粒子を使用する。
【0020】
非火薬破砕組成物に用いられるガス発生剤は、テルミット剤のテルミット反応に起因した熱分解反応及び燃焼反応を生じ、熱分解ガスや燃焼ガスを発生する。
【0021】
ガス発生剤は、一種類若しくは二種類以上のカルボキシル基含有化合物、又は一種類若しくは二種類以上のカルボキシル基含有化合物の中和物、又は一種類若しくは二種類以上のカルボキシル基含有化合物と、一種類若しくは二種類以上のカルボキシル基含有化合物の中和物のいずれかが用いられる。カルボキシル基含有化合物は、主に脂肪族多価カルボン酸である。脂肪族多価カルボン酸は、2価以上の飽和脂肪族カルボン酸、2価以上の不飽和脂肪族カルボン酸、1価から2価の不飽和脂肪族カルボン酸の単独重合体、2種類以上の1価から2価の不飽和脂肪族カルボン酸の共重合体、又は1価から2価の不飽和脂肪族カルボン酸とカルボキシル基を含有しない不飽和脂肪族単量体との共重合体のいずれかである。
【0022】
なお、上述した中和物としては、部分中和物と完全中和物とが挙げられる。例えば部分中和物は、アンモニウム塩、又は金属塩のいずれかである。また、完全中和物は、アンモニウム塩である。なお、カルボキシル基含有化合物の金属塩は、中和度が高くなるに伴い、熱分解ガスの引火性が高くなる傾向が認められる。したがって、中和度が低い(未反応のカルボキシル基が多く残存する)ことが好ましい。
【0023】
上述したカルボキシル基含有化合物、及びカルボキシル基含有化合物の中和物は、硫黄元素、ハロゲン元素を含有していないことが好ましい。
【0024】
また、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物は、無水物又は水和物のいずれかであることが好ましい。なお、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物を水和物の形態で利用する場合、使用するガス発生剤によっては、発生ガス中の水素濃度が増加する場合もあることから、発生するガス組成を考慮して水和量を選択する必要がある。
【0025】
また、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物は、非火薬破砕組成物の性能を考慮すると、融点が100°C以上であることが好ましい。
【0026】
ここで、カルボキシル基含有化合物に含まれるカルボキシル基の含有率は、以下の(1)式で表されるときに、
カルボキシル基の含有率=(カルボキシル基含有化合物内のカルボキシル基の数×カルボキシル基の分子量(45.02))/カルボキシル基含有化合物の分子量・・・(1)
カルボキシル基含有化合物に含まれるカルボキシル基の含有率は0.3以上であり、カルボキシル基含有化合物の中和物は、カルボキシル基の含有率が0.3以上となるカルボキシル基含有化合物を
アンモニウム塩又は金属塩にしたものであることが好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有化合物の具体例としては、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、(+)−酒石酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、グルタル酸、コウジ酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、グリシン、L−グルタミン酸L−アルギニン、L−リシンLアスパラギン酸塩、L−リシンL−グルタミン酸塩、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリイタコン酸、アクリル酸/イタコン酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/酢酸ビニル共量合体、アクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸/メタクリル酸エチル共重合体、マレイン酸/イタコン酸共重合体、マレイン酸/ジイソブチレン酸共重合体、マレイン酸/酢酸ビニル共重合体、マレイン酸/メタクリル酸メチル共重合体、マレイン酸/メタクリル酸エチル共重合体、マレイン酸/酢酸ビニル/アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
【0028】
また、カルボキシル基含有化合物の中和物の具体例としては、リンゴ酸一ナトリウム、リンゴ酸一カリウム、クエン酸一アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸二水素一カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸水素マグネシウム、シュウ酸一ナトリウム、シュウ酸一カリウム、シュウ酸一アンモニウム、シュウ酸二アンモニウム、L−酒石酸一カリウム、L−酒石酸一ナトリウム、(+)−酒石酸二アンモニウム、マロン酸一ナトリウム、マロン酸一カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸一カリウム、アジピン酸一ナトリウム、アジピン酸一カリウム、フマル酸一ナトリウム、フマル酸一カリウム、アコニット酸一アンモニウム、アコニット酸二アンモニウム、アコニット酸三アンモニウム、アコニット酸一ナトリウム、アコニット酸二ナトリウム、アコニット酸一カリウム、アコニット酸二カリウム、オキサロ酢酸一ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、L−グルタミン酸カリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸カリウム、オキサロ酢酸一カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム(部分中和物及び完全中和物)、ポリアクリル酸ナトリウム(部分中和物)、ポリアクリル酸カリウム(部分中和物)、ポリアクリル酸マグネシウム(部分中和物)、ポリアクリル酸カルシウム(部分中和物)、ポリメタクリル酸アンモニウム(部分中和物及び完全中和物)、ポリメタクリル酸ナトリウム(部分中和物)、ポリメタクリル酸カリウム(部分中和物)、ポリメタクリル酸マグネシウム(部分中和物)、ポリメタクリル酸カルシウム(部分中和物)、ポリマレイン酸アンモニウム(部分中和物及び完全中和物)、ポリマレイン酸ナトリウム(部分中和物)、ポリマレイン酸カリウム(部分中和物)、ポリマレイン酸マグネシウム(部分中和物)、ポリマレイン酸カルシウム(部分中和物)、ポリフマル酸アンモニウム(部分中和物及び完全中和物)、ポリフマル酸ナトリウム(部分中和物)、ポリフマル酸カリウム(部分中和物)、ポリフマル酸マグネシウム(部分中和物)、ポリフマル酸カルシウム(部分中和物)、ポリイタコン酸アンモニウム(部分中和物及び完全中和物)、ポリイタコン酸ナトリウム(部分中和物)、ポリイタコン酸カリウム(部分中和物)、ポリイタコン酸マグネシウム(部分中和物)、ポリイタコン酸カルシウム(部分中和物)、アクリル酸/イタコン酸共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/イタコン酸共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/イタコン酸共重合体のカリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/イタコン酸共重合体のマグネシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/イタコン酸共重合体のカルシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のカリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のマグネシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のカルシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/酢酸ビニル共重合体のアンモエウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/酢酸ビニル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/酢酸ビニル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/酢酸ビニル共重合体のマグネシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/酢酸ビニル共重合体のカルシウム塩(部分中和物)、アクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、アクリル般/メタクリル酸エチル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/メタクリル酸エチル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/メタクリル酸エチル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/イタコン酸共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン酸/イタコン酸共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/イタコン酸共重合体のカリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、アクリル酸/マレイン酸共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン駿/ジイソブチレン共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/メタクリル酸メチル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン酸/メタクリル酸メチル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/メタクリル酸メチル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/メタクリル酸エチル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン酸/メタクリル酸エチル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/メタクリル酸エチル共重合体のカリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル/アクリル酸エチル共重合体のアンモニウム塩(部分中和物及び完全中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル/アクリル酸エチル共重合体のナトリウム塩(部分中和物)、マレイン酸/酢酸ビニル/アクリル酸エチル共重合体のカリウム塩(部分中和物)などが挙げられる。
【0029】
上述したカルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物は、熱分解により脱炭酸を生じやすいため、非引火性で低毒性の二酸化炭素が発生しやすい。また、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物は、硫黄元素及びハロゲン元素を含有しない脂肪族化合物であることから、燃焼反応や熱分解反応時に、硫黄酸化物、ハロゲン系ガス、芳香族成分を発生することはない。したがって、非火薬破砕組成物のガス発生剤として、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物を用いた場合、周囲環境への影響は少ない。
【0030】
さらに、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物として、無水物を用いることで、熱分解による水蒸気の発生量を低減でき、水蒸気の熱分解による水素の発生も比較的低減される。その結果、発生ガスの引火性能が既存製品に比べて低下する。
【0031】
カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物をガス発生剤として用いる場合、一般的に、粒子径範囲は250〜2000μmである。粒度を調整する方法としては、特に限定するものではないが、粉末及び顆粒を加圧成形し、粉砕器で粉砕した後、分級機などを使用して分級する。
【0032】
例えば粒子径範囲が2000μm以上の粒子を用いた非火薬破砕組成物は、テルミット反応で発生した熱量がガス発生剤の中心部分まで伝達されない。その結果、発生するガスの発生圧力が低下しやすい。また、粒子径範囲が250μm以下のガス発生剤を用いた非火薬破砕組成物は、テルミット剤を構成する酸化剤及び還元剤の分散状態に変化が生じ、テルミット反応が発生しにくくなる。
【0033】
上述したテルミット剤とガス発生剤との配合組成について説明する。非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)において、ガス発生剤の含有量が20wt%未満である場合、テルミット剤の発生熱量が過剰となり、発生した二酸化炭素の分解反応(2CO
2→2CO+O
2)が進みやすい。その結果、発生ガスの燃焼性が増加する。一方、ガス発生剤の含有量が60wt%を超過する場合、ガス発生剤が不完全燃焼となりやすく、ガス発生剤の燃焼により発生するガスの発生圧力が低下する。したがって、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=40:60〜80:20の範囲であることが好ましい。
【0034】
次に、非火薬破砕組成物の調合方法を説明する。生分解性材料の一例として、クエン酸を用いた場合を説明する。
1)クエン酸を加圧成形機でペレット成形し、メノウ乳鉢で粉砕する。
2)JIS Z 8801−1(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)に規定されるふるいを用いて、JIS K 0069(化学薬品のふるい分け試験法)に規定されたふるい分け方法により、メノウ乳鉢で粉砕したクエン酸のペレットを分級する。
【0035】
粉砕されたクエン酸を分級する際に、8.6タイラーメッシュ止まりでふるい分けされた粉体を、粒子径範囲2000μm以上の粉体とする。また、8.6タイラーメッシュ通過、60タイラーメッシュ止まりでふるい分けされる粉体を、粒子径範囲250μm以上2000μm未満の粉体とする。さらに、60タイラーメッシュ通過でふるい分けされる粉体を、粒子径範囲250μm未満の粉体とする。
3)アルミニウム粉11.5重量部に対し、鈍感化剤としてステアリン酸カルシウム2.5重量部を同一容器に入れ、粉体の偏りがないように混合した後、酸化第二銅38.5重量部を加えて混合して、テルミット剤を生成する。
4)分級されたクエン酸をテルミット剤に予め設定された量加え、これらを混合する。このとき、最終的に得られる非火薬破砕剤組成物粉体の凝集性や仮比重等を調製したい場合には、例えばポリメタクリル酸、ポリ乳酸などの樹脂をアセトンなどの溶媒に溶かした有機質バインダーを6重量部程度加え、混練、乾燥してもよい。
【0036】
以下、粒子径範囲が異なるクエン酸をガス発生剤として用いた非火薬破砕組成物の性能試験結果を
図1に示す。
図1に示すように、実施例1の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲250μm以上2000μm未満のクエン酸を用いている。実施例2の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲2000μm以上のクエン酸を用いている。また、実施例3の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲250μm未満のクエン酸を用いている。また、比較例1の非火薬破砕組成物は、ガス発生剤としてカリウム明礬12水和物を用いている。なお、実施例1から実施例3及び比較例1に示す非火薬破砕組成物のいずれもが、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=50:50である。なお、比較例1の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物である。
【0037】
性能試験は、非火薬破砕組成物の燃焼時のガス発生量の計測試験、非火薬破砕組成物の燃焼時のガス発生圧力の計測試験、JIS落鎚感度試験、BAM式摩擦感度試験及び小ガス炎着火試験としている。
<燃焼時のガス発生量の計測試験>
燃焼時のガス発生量の計測試験は、以下の手順で実施された。
1)実施例1から実施例3及び比較例1の配合組成で配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を、管体に装着した後、かしめを行うことで供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)1.93cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させ、管体を破砕して1.93cc密閉タンクに接続されたエアホースに流れ込んだガスを水上置換により捕集し、捕集された燃焼ガスの量を測定する。
<燃焼時のガス発生圧力の計測試験>
燃焼時のガス発生圧力の計測試験は、以下の手順で実施された。
1)実施例1から実施例3及び比較例1の配合組成で配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を管体に装着した後、かしめることで、供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)ひずみゲージ(KYOWA製 PGM−200KE)を取り付けた10cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させることで、管体を破砕して10cc密閉タンクの内部に放出される燃焼ガスの圧力をひずみゲージにより測定する。
<JIS落鎚感度試験>
JIS落鎚感度試験は、周知のように、試験器のかなしきの上に置いた2個の円筒ころの間に試料となる非火薬破砕組成物を挟みこんだ後、鉄鎚を落とし、落下させる鉄槌の高さと爆発の状態との関係から火薬類の感度を調べる試験である。このJIS落鎚感度試験は、JIS K 4810 2003に従って実施される。なお、JIS落鎚感度試験は、例えば試料約0.1mLに重量5kgの鉄槌を落下させる試験を同一高さで6回行い、1回だけ爆発する、または1回だけ爆発すると推定される高さ(1/6爆点)を求め、1/6爆点の高さに基づいた等級を決定する。
<BAM式摩擦感度試験>
BAM式摩擦感度試験は、周知のように、ドイツ材料試験所(BAM)で開発された摩擦感度試験機に取り付けた磁器製の摩擦棒と摩擦板との間に試料となる非火薬破砕組成物を挟み、荷重を掛けた状態で摩擦運動を行って、荷重と爆発の成否との関係から試料の感度を調べる試験である。なお、BAM式摩擦感度試験は、同一荷重で試料に摩擦を加える試験を同一荷重で6回行い、1回だけ爆発する、または1回だけ爆発すると推定される荷重(1/6爆点)を求め、1/6爆点における荷重に基づいた等級を決定する。
<小ガス炎着火試験>
小ガス炎着火試験は、消防法危険物評価試験に準じた試験である。この小ガス炎着火試験は、着火までの時間から危険物(可燃性固体)の消防法上の種別の判定、詳細には、着火までの時間から「燃えやすさ」を評価する試験である。試験の方法は以下の通りである。厚さが10mm以上の無機質の断熱板上に3cm
3の試料を載置する。ここで、試料は乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に温度20°Cで24時間以上保存されているものを使用する。試料が粉状又は粒状の場合には、試料は無機質の断熱材上に半球状に載置される。液化石油ガスの火炎を試料に10秒間接触させる。ここで、液化石油ガスの火炎は、先端が棒状の着火器具の拡散炎とし、火炎の長さが着火器具の口を上方に向けた状態で70mmとなるように調節される。また、上記火炎を試料に10秒間接触させる条件として、例えば火炎と試料との接触面積を2cm
2とし、接触角度は30°とする。火炎を試料に接触させてから試料が着火するまでの時間を測定し、試料が燃焼(炎を上げずに燃焼する状態を含む)を継続するか否かを観察する。火炎を試料に接触させている間に試料の全てが燃焼した場合、火炎を離した後10秒経過するまでの間に試料の全てが燃焼した場合、或いは火炎を離した後10秒以上継続して試料が燃焼した場合、燃焼を継続したものとする。
【0038】
図1に示すように、実施例1の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は193.7cc/0.8g、ガス発生圧力は10.05MPaであった。また、実施例2の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は114.3cc/0.8g、ガス発生圧力は7.28MPaであった。実施例3の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は173.2cc/0.8g、ガス発生圧力は9.49MPaであった。
【0039】
また、比較例1の非火薬破砕組成物、言い換えればカリウム明礬12水和物をガス発生剤として用いた非火薬破砕組成物では、燃焼時のガス発生量は150〜170cc/0.8g(
図1中省略)、ガス発生圧力は8.45MPaであった。
【0040】
図1中「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目において、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0041】
実施例1、実施例3の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物(比較例1の非火薬破砕組成物)の性能に遜色ない性能を有することがわかった。一方、実施例2の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物(比較例1の非火薬破砕組成物)の性能に比べて劣っていることがわかった。上述したように、非火薬破砕組成物の燃焼時において発生するガスの発生圧力は、8MPaが好ましいとされている。このことからも、実施例1及び実施例3の非火薬破砕組成物の性能は良好であることがわかった。
【0042】
なお、上述した実施例1から実施例3のいずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級、小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体となることがわかった。
【0043】
したがって、実施例1及び実施例3の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物におけるガス発生圧力を超過している点で、優れた性能を有している。一方、実施例2の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物におけるガス発生圧力の80%を満足する程度の性能であることがわかった。つまり、実施例2の非火薬破砕組成物は、ガス発生時の発生圧力の点で特許文献2に開示される非火薬破砕組成物に劣っているが、この程度の性能低下であれば、非火薬破砕組成物に使用することが可能である。
【0044】
これら性能試験の結果を考慮すると、ガス発生剤の粒子径範囲としては、2000μm以上、250μm以上2000μm未満、250μm未満のいずれか1つの粒子径範囲であることが好ましく、なかでも、250μm以上2000μm未満又は250μm未満の粒子径範囲のいずれかであることが特に好ましいことがわかった。
【0045】
次に、テルミット剤とガス発生剤との組成比(重量比)を変化させた非火薬破砕組成物の性能試験結果を
図2に示す。
図2に示す各実施例にて使用したガス発生剤の粒子径範囲は、250μm以上2000μmである。ここで、
図2に示す各実施例における非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、実施例4はテルミット剤:ガス発生剤=60:40、実施例5はテルミット剤:ガス発生剤=80:20、実施例6はテルミット剤:ガス発生剤=90:10、実施例7はテルミット剤:ガス発生剤=40:60である。なお、実施例1はテルミット剤:ガス発生剤=50:50である。
【0046】
実施例4の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は196.4cc/0.8g、ガス発生圧力は11.33MPaであった。また、実施例5の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は177.1cc/0.8g、ガス発生圧力は11.91MPaであった。実施例6の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は163.8cc/0.8g、ガス発生圧力は9.06MPaであった。また、実施例7の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は127.9cc/0.8g、ガス発生圧力は6.78MPaであった。
【0047】
図2においても、
図1と同様に、「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目を設けている。この項目においては、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0048】
上述した実施例4から実施例7いずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級となることがわかった。また、実施例4及び実施例7における小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体、実施例5及び実施例6における小ガス炎着火試験の結果は第1種可燃性固体となることがわかった。言い換えれば、テルミット剤/ガス発生剤の組成比(重量比)が80/20以上となると、発生ガスの引火性が増加することがわかった。
【0049】
したがって、実施例4から実施例6の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力(8.45MPa)を超過しており、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物の性能に遜色ない性能を有することがわかった。一方、実施例7の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力の80%を満足する程度の性能であることがわかった。つまり、実施例2の非火薬破砕組成物は、ガス発生時の発生圧力の点で特許文献2に開示される非火薬破砕組成物に劣っているが、この程度の性能低下であれば、非火薬破砕組成物に使用することが可能である。
【0050】
これら性能試験の結果を考慮すると、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=40:60〜
80:
20の範囲が好ましく、特に、テルミット剤:ガス発生剤=60:40〜
80:
20の範囲が好ましいことがわかった。
【0051】
次に、異なるガス発生剤を用いた非火薬破砕組成物を燃焼させたときの性能試験結果を
図3及び
図4に示す。
図3及び
図4に示す各実施例にて使用したガス発生剤の粒子径範囲は、250μm以上2000μm未満である。また、
図3及び
図4に示す各実施例における非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比)は、テルミット剤:ガス発生剤=60:40である。
【0052】
ここで、実施例8から実施例22、及び比較例2における非火薬破砕組成物におけるガス発生剤は以下の通りである。
【0053】
実施例8における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤はクエン酸(1水和物)であり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.64である。実施例9における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤はフマル酸であり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.78である。実施例10における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤はコハク酸であり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.76である。実施例11における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤はDL−リンゴ酸であり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.67である。実施例12における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸及びフマル酸の混合物であり、クエン酸及びフマル酸の重量比はクエン酸/フマル酸=50/50、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.74である。実施例13における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体であり、マレイン酸及びジイソブチレンのモル比はマレイン酸/ジイソブチレン=2/1、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.52である。
【0054】
実施例14における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体であり、マレイン酸とジイソブチレンのモル比はマレイン酸/ジイソブチレン=1/1、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.39である。実施例15における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体であり、マレイン酸とジイソブチレンのモル比はマレイン酸/ジイソブチレン=2/3、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.32である。実施例16における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体であり、マレイン酸とジイソブチレンのモル比はマレイン酸/ジイソブチレン=1/3、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.20である。
【0055】
実施例17における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸二水素カリウムであり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。実施例18における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸水素二ナトリウム(2水和物)であり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.59である。実施例19における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸三アンモニウムであり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。実施例20における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸水素二アンモニウムであり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。実施例21における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸三アンモニウム及びクエン酸二水素カリウムの混合物であり、クエン酸三アンモニウム及びクエン酸二水素カリウムの重量比はクエン酸三アンモニウム/クエン酸二水素カリウム=50/50、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。実施例22における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸三アンモニウム及びクエン酸の混合物であり、クエン酸三アンモニウム及びクエン酸の重量比はクエン酸三アンモニウム/クエン酸=50/50、また、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。なお、比較例2における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、クエン酸三カリウムであり、ガス発生剤のカルボキシル基の含有率は0.70である。
【0056】
上述した実施例13から実施例16に示すマレイン酸/ジイソブチレン共重合体は、以下に生成した。所定のモル比となるように調合した無水マレイン酸及びジイソブチレンをモノマー量に対して3倍量のベンゼンに溶かし、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として80°Cで4時間重合反応を行った。重合反応の終了後、モノマー量に対して3倍量の水を加えて、80°Cで2時間反応を行った。その後、減圧下50°Cで8時間乾燥させて固形分を回収した。
【0057】
図3及び
図4に示すように、実施例8の非火薬破砕組成物において燃焼時に発生したガスの圧力(ガス発生圧力)は11.8MPaであり、実施例9の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.63MPaであった。実施例10の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は9.03MPaであり、実施例11の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.79MPaであった。実施例12の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.91MPaであり、実施例13の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.77MPaであった。実施例14の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.56MPaであり、実施例15の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.66MPaであった。実施例16の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.79MPaであり実施例17の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.51MPaであった。実施例18の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.87MPaであり、実施例19の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は11.31MPaであった。実施例20の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は10.57MPaであり、実施例21の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.44MPaであった。実施例22の非火薬破砕組成物において燃焼時のガス発生圧力は8.77MPaであった。なお、比較例2の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生圧力は8.59MPaであった。
【0058】
図3及び
図4においても、
図1及び
図2と同様に、「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目を設けている。この項目においては、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0059】
上述した実施例8から実施例22のいずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級となることがわかった。また、実施例8から実施例13、実施例16から実施例20における小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体となることがわかった。ただし、ガス発生剤にカルボキシル基含有化合物の中和物を用いた場合、全般的に着火時間が短くなっており、発生ガスの引火性が増していることがわかった。なお、比較例2は、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級となり、小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体になることがわかった。
【0060】
したがって、実施例8から実施例22のうち、実施例21を除いた非火薬破砕組成物のいずれもが、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力を超過しており、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物に遜色ない性能を有することがわかった。また、実施例21の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力と同等の値となることがわかった。
【0061】
図3に示す性能試験の結果を考慮すると、カルボン酸及びカルボン酸塩をガス発生剤として用いることが好ましいことがわかった。
【0062】
最後に、非火薬破砕組成物を燃焼させたときに発生するガスの組成分析試験を行った。発生するガスの組成分析試験の結果を
図5に示す。ガス組成分析試験は、例えば組成物が燃焼したときの発生ガスを分析して、有害性の指標を求めるものである。
【0063】
ガス組成分析試験は、以下の手順で実施した。
1)実施例4、実施例9、実施例10、実施例12、実施例13、実施例15から実施例17、実施例19、実施例21、実施例22の他、比較例1及び比較例2の配合組成にて配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を、管体に装着し、かしめを行うことで供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)1.93cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させ、管体を破砕して1.93cc密閉タンクに接続された1Lガスサンプリングバッグに流し込んだ燃焼ガスをガスタイトシリンジで50cc吸引し、別のガスサンプリングバッグ内で10倍に希釈する。同様にして、20倍希釈品も調整した。なお、燃焼ガスは、空気を用いて希釈される。
6)ガスクロマグラフ(SRI Instruments,Inc製 MGA♯5,試料導入:10ポートガスサンプリングバルブ、検出器:HID、カラム:0.5m−HAYSEP−D(プレカラム) +3m−MS5A、キャリア:He − 30mL/min)にて、発生ガスの20倍希釈品の分析を行い、発生ガス中のH
2を定量した。
7)ガス検知器(RAE systems社製 MultiRAE Lite及びMiniRAE3000)にて、希釈された燃焼ガスを計測し、燃焼ガスの組成データを記録する。
【0064】
図5に示すように、上述したガス組成分析試験では、総VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の値及び可燃性ガス濃度を測定している。ここで、総VOCの値は、アセトアルデヒド換算した値である。
【0065】
実施例4の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は31.9vol%、ガスの総VOCの値は1280ppmであった。実施例9の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は31.1vol%、ガスの総VOCの値は1140ppmであった。実施例10の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は27.9vol%、ガスの総VOCの値は1050ppmであった。実施例12の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は26.5vol%、ガスの総VOCの値は1520ppmであった。実施例13の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は29.1vol%、ガスの総VOCの値は1470ppmであった。実施例15の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は23.7vol%、ガスの総VOCの値は2170ppmであった。実施例16の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は38.3vol%、ガスの総VOCの値は3170ppmであった。実施例17の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は29.8vol%、ガスの総VOCの値は1420ppmであった。実施例19の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は31.6vol%、ガスの総VOCの値は1690ppmであった。実施例21の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は35.8vol%、ガスの総VOCの値は1580ppmであった。実施例22の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は33.3vol%、ガスの総VOCの値は1410ppmであった。
【0066】
また、これら実施例4、実施例9、実施例10、実施例12、実施例13、実施例15から実施例17、実施例19、実施例21、実施例22の非火薬破砕組成物は、発生したガス中の硫化水素・硫黄酸化物は検出限界以下、言い換えれば発生したガス中にほぼ含まれていないことがわかった。
【0067】
比較例1の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は64.7vol%、ガスの総VOCの値は3040ppmであった。比較例2の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの水素濃度は52.9vol%、ガスの総VOCの値は2610ppmであった。また、比較例2の非火薬破砕組成物では、発生したガス中の硫化水素・硫黄酸化物は検出限界以下、言い換えれば発生したガス中にほぼ含まれていないことがわかった。
【0068】
一方、比較例1の非火薬破砕組成物は、他の非火薬破砕組成物に比べて高濃度の水素が発生している。これは、テルミット反応時は約3000°Cと高温となるため、カリウム明礬12水和物から発生した水蒸気が熱分解したことが主な原因である。また、総VOCに関しては、鈍感化剤及びバインダーの熱分解ガスに由来する。また、比較例1の非火薬破砕組成物は、発生したガス中に硫化水素・硫黄酸化物が含まれており、これらの濃度は200ppm以上であることがわかった。
【0069】
これら非火薬破砕組成物のガス組成分析試験の結果を比較すると、ガス発生剤としてカルボキシル基含有化合物を用いることで、水素発生量を大きく低減できることがわかった。有機材料をガス発生剤として用いているにも関わらず、総VOCの値が低減した原因は、カルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物の熱分解特性が良好であること、これらが共存することで、鈍感化剤(ステアリン酸カルシウム)の熱分解特性が改善したためと予想される。
【0070】
実施例13,実施例14及び比較例2の非火薬破砕組成物のガス組成分析結果を比較すると、カルボキシル基含有化合物のカリウム塩では、カルボキシル基の中和度の増加に伴い、発生ガス中の水素濃度が増加することがわかった。一方、実施例19の非火薬破砕組成物のガス組成分析結果から、カルボキシル基含有化合物のアンモニウム塩では完全中和しても、発生ガス中の水素濃度は低く、さらに総VOCの値も低い値となる。
【0071】
したがって、
図2から
図5に示す性能試験の結果を考慮すると、カルボキシル基の含有率が0.3以上のカルボキシル基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物の中和物を用いることで、従来の非火薬破砕組成物と同様の破砕性能を維持することができ、また燃焼時の発生ガスの引火性を大きく低減させることが可能である。
【0072】
なお、非火薬破砕組成物を製造する際に用いた配合物質を以下に示す。
・アルミニウム:東洋アルミニウム株式会社 商品名PF0100S
・ステアリン酸カルシウム:関東化学株式会社 試薬鹿一級
・酸化第二銅:日新ケムコ株式会社 N-10
・塩基性炭酸マグネシウム:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・カリウム明礬:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・メタクリル樹脂:SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS.Inc製
・クエン酸:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・クエン酸(1水和物):和光純薬工業株式会社 試薬一級
・クエン酸二水素カリウム:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・クエン酸水素二ナトリウム(2水和物):和光純薬工業株式会社 試薬一級
・クエン酸三カリウム:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・クエン酸三アンモニウム:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・クエン酸水素二アンモニウム:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・フマル酸:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・コハク酸:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・DL−リンゴ酸:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・無水マレイン酸:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・ジイソブチレン:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・アゾイソブチロニトリル東京化成工業株式会社 試薬